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総合評価

185件)
3.8
42
59
55
5
1
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    生体解剖実験に携わった人たちの話。 罪への向き合い方、命そのものについて深く考えさせられた。自分の罪を責める人の苦しい心情が伝わってきて読んでいて苦しくなることもあったけれどいい学びになったと感じた。また読みたい

    0
    投稿日: 2025.12.02
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    名作だった。 戦時中、捕虜となった白人を生体解剖するという、倫理的問題を真正面から描いた作品。 実際の事件を基にしている。 どうせ死ぬ命なら、実験で多くの人の役に立てるほうが良いとして行われた行為に対し、勝呂医師は深い葛藤を抱く。 一方、戸田医師は自分には心がないのかと良心の呵責を求めて実験に参加するが、恐怖も罪悪感も湧かない自分に気づき、諦めにも似た無感情な境地に至る。 時代背景や環境の影響が、人の倫理観をどれほど左右するのかを考えさせられる。 著者の遠藤周作はクリスチャンであり、キリスト教には明確な倫理規範があるが、日本人にはそうした指針が乏しいため、流されやすいのではないかと彼は考えていたらしい。 重く暗い題材ながら、深く考えさせられる価値のある作品だった。

    19
    投稿日: 2025.10.20
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    勝呂は一番欲しかった普通の生活を得ることが出来なかった。特に言及はないが戸田も所謂、普通の生活は出来なかったのではないかと思う。どういう状況であれ、後の歴史が証明してくれることを信じて不本意なことはしないように生きたい。 看護長と上田の対比については幻想を持つこととニヒリズムに支配されることは現実を見てないという点で同じだと思う。何事も距離感が大事。

    1
    投稿日: 2025.10.08
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    ドキュメントとして読むべきか、創作として読むべきか。結局のところ時代背景なのかなとも思う。結局みんな死ぬから命が軽い。命を奪うことに罪の意識がない。ましてや米兵。なのに、病院内の権力争いには固執していたり、男女のいろんな執着心も持っている。どうせみんな死ぬと思うのに、執着だけはあるんだ。自分はこの先も生きていくんだとも思っているあたり、よくわからないけど人間って感じ。

    9
    投稿日: 2025.09.22
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    日本人の精神性を追求する」といった解説もあるけれど、罪の意識や良心は国籍や宗教に規定されるだろうか。むしろ先天的な資質の影響が、環境や教育など後天的な影響より大きいと感じる。時代や国境を越えて読み継がれているのも納得の一冊。

    1
    投稿日: 2025.09.14
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    ほんとに本って忘れちゃう、 すごく陰のある話だったけど読んで受けた衝撃がすごかった。 個人的には芥川の人間失格と近いものを感じた

    1
    投稿日: 2025.09.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    再読 戦争末期の異常な状態であっても心を失わなかった勝呂研究生が、 初めての患者として気にかけていたおばはんの死によって、波に飲まれるように自分の意思を無くし、蔓延する毒の中に身を委ねた 「おばはんも一種、お前の神みたいなものやったのかもしれんなあ」 信仰は持たなかった勝呂だけど、心の拠り所にしていたものが崩れ落ちた瞬間に罪の意識を失い、足を踏み外してしまった

    0
    投稿日: 2025.08.28
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    罪悪感って外からは見えないけど、本人の中では一生消えない重りになる。しかも裁判とか法律で裁かれる以上に、ずっと自分自身に裁かれ続ける。

    0
    投稿日: 2025.08.27
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    第二次世界大戦中の1945年に、福岡県福岡市の九州帝国大学(現九州大学)医学部の解剖実習室で、アメリカ軍捕虜8人に生体解剖(被験者が生存状態での解剖)が施術された事件を元に書かれた小説。解剖実験に疑問を抱く勝呂、逆に全く疑問も良心の呵責もない戸田という2人の研究生を軸に話が進む。 戦時中の人体実験が、731部隊以外にも国内で行われていた事実にまず驚いた。 異常な状況下において正常であろうとする者、自分が異常であると認識しつつも正常にはなれないジレンマに苦しむ者、異常であることに気付いてすらいない者、様々な人間の心模様が交錯する。戦後80年の節目に読めて良かった。

    1
    投稿日: 2025.08.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    現在から過去の回想に入り、それぞれの人物の手記、最後は戸田から教えてもらったあの詩で締めくくられる。この構造が非常におもしろかった。 全体的に陰鬱な、そして人の生命の重みについて考えさせられる。そして、何かと冒頭の語り手「私」と回想での勝呂が「平凡が一番、幸福」と似たようなことを言っているところが印象に残っている。 (また、勝呂に対して「しばたたきながら」という表現が多用されている点が少し気になった。)

    1
    投稿日: 2025.08.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人は、信仰を持たないと罪の意識も持てないのだろうか。 信仰の有無とは違う、という感覚は覚えるけれど、それならばどうやって裁きを受け入れるのだろう。反省して罪を償おうと思えるのだろう。 “信仰”で捉えるのも二元論的なのかなぁ。 無理…と押し潰されてしまう勝呂も、良心の呵責を期待して果たせなかった戸田も、両方とも読んでいる自分から距離はありませんでした。 上田看護婦すら、わからなくもない…という存在。 特にこの3人の心情がひしひしと生々しく伝わってきます。 そして、終わらない空襲と敗戦の予感の、疲労と諦念があれば、わたしも容易に傾いていきそうという怖さがあります。 加えて、F県在住なので、移転前の九大箱崎キャンパスにあったコールタールで塗られた校舎を見かけ、空襲避け本当にやってたんだ…と思ったり(今は撤去済)、 母方の大叔父がこの時の九大に通っていましたので(文系学部だったので学徒勤労動員で長崎にいたそうです。8/9にも)、 勝呂や戸田が眺めていたあの海も街も身近に感じられます。 生体解剖を「これは正義だ。神もお赦しになる」と言われたら、信仰を持つ人はどうするのだろう、と思いました。 善悪の判断の軸を信仰に置くのもなんだか……日本人は無宗教と思ってしまうほど信仰(神道、仏教、アニミズム)が体に染み込んでるだけだと思いますし。 違う形の苦悩を抱える人間ドラマが面白いけれど、信仰がないから罪の意識が〜について色々考えさせられてしまう作品でした。 再読だったけれど、何度でも読めます。 映画も観よう。若い頃はナヨナヨしてた記憶がある(『もう頬杖はつかない』参照)奥田瑛二さんが勝呂、若い頃はたぶん観たことない渡辺謙さんが戸田かぁ。

    3
    投稿日: 2025.07.30
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    血や内臓などの描写が極端に苦手なこともあり、 ホラー映画やグロい映画はなるべく避けてきた 私にとってなかなか厳しい描写もあったけど、 読んでよかったと本心で思う。 人がバタバタと死んでゆく時代に生きていたら、 今のように好きに文学に触れたり、 人とは何かということを考えたりする余暇さえ 与えられないだろう。 現代がいかに守られているか痛感するとともに、 この本から重苦しいほど罪の意識の手触りを感じて心がどんよりと重い。また罪の意識を感じることができないことも余計にリアルで心がざわついた。 エーリッヒ・フロムの悪について、で書かれていたことをぼんやり思い出した 当時だからこそ描かれたものであるだろうし、 こういう事は現代の私たちにとって知りに行こうとしないと触れることができないからこそ、いろんな文学に触れようと思う。

    4
    投稿日: 2025.07.15
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    もう一回読もうと思うけど、文章の作り方が面白い。 「私」視点だったのが色んな人の手記になっていって… 統一されてるのは戦争の時代の仄暗い、常に死と隣り合わせの暗くて冷たい雰囲気。 上田看護婦の腹の底からのドス黒い怒りや憎しみや悲しみに、僅かながら共感してしまうところがあった。

    3
    投稿日: 2025.05.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    某大学の某捕虜解剖事件を元にした小説 淡々と進む グロテスクな要素はあまりない あらすじで物語全部解説しちゃってるじゃん! って思ったら全然違ったしあらすじはガチであらすじだった 勝呂の読み方が全く覚えられなくて、出てくるたびに読み方を調べていた バカ 「これ、俺じゃん......(自分が常々考えていることが、近しい形で出てきたという意味)」と思いながら読んでました

    0
    投稿日: 2025.05.05
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    戦争文学の面白さが詰まった作品 共テ演習とか二次国語で扱われる小説の中でも戦争文学は群を抜いて自分を引き込むものがある。日本史選択で戦争へ向かっていく日本をマクロ的な視点でしか勉強していないせいでミクロ的な視点でその時代に生きる人々の生活文化を知ることは難しいが、戦争文学はそれを媒介してくれる。 この作品は実際の事件を取り扱っている。勝呂は冒頭では面白みもない貧しい町医者として描かれているが、医学生時代を中心に書いた物語の中盤以降では自分にとって彼が人情深い人物に映った。 彼の心を変えたのが生体解剖事件に関与したことであることは確実。 遠藤周作について。 名前しか知らないが、本をほとんど読まない自分にとって名前がわかるということは明らかに有名人。 読んでいて引き込まれるというより、臨場感が素晴らしいし、あちらこちらに心情とか時代を理解する手助けになる描写が散りばめらている。 中でも自分の中でも唸ったものが一つ。 海の波の描写。 戦時中の大学病院で研鑽を積んでいくにつれて、彼の中にある医学の在り方が変わっていく。戦争も形勢が悪くなっていく。医学部内の対立も深まっていく。それにつれて海の波は押し寄せるように感じる。 Surge という英単語がもっとも説明がきくだろうか。 医学部に進学する人、人と接する仕事をする人には、人を世話をすることとはどういうことかを捉え直す良い機会になると思うので手に取って読んでみるべき。

    1
    投稿日: 2025.03.20
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    戦時中に九州で行われた捕虜に対する人体実験。 それに関わった人たちの、心情変化がメインテーマと感じた。 病院で死なないのなら市街地の空襲で死ぬ 大陸で人を何人も殺めた そんな、死が日常にある時代。 自分の努力では何ともならないことだらけだった時代。 それでも医師が死を前提とした人体実験をするということは異常。 読者の感情を揺さぶるのではなく、何かを投げかけるような文章。

    0
    投稿日: 2025.03.20
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    戦時中の異様な環境と異常な振る舞いが生々しい。時代の大きな流れにただ飲まれるだけの絶望感の中に、立ち止まって孤立する主人公に自分もなれるだろうかと考えさせられる。

    0
    投稿日: 2025.03.13
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    #海と毒薬 #読了 戦争や権力争いメインの小説ならこれ程心が虚ろになることはなかった。 人を生きたまま解剖する行為に立ち合うとはどれ程の精神があればできるのだろう。 自分ならば、、、

    0
    投稿日: 2025.01.19
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    治療や解剖の様子が妙にリアルに書かれていて、読んでいる此方まで体が痛くなってきた。 解剖に参加した人間が単なる異常者というわけでもなく、放心状態で促されるままの人、自分の立ち位置のために心を押し殺した人など、日本人の特質が垣間見えるように書かれていた。 自分の行為に良心を見つけようとする姿は本当におどろおどろしい…

    0
    投稿日: 2025.01.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    オーディブルで聴いた。 戦時中の病院で、アメリカ人捕虜を生体実験をして殺してしまう医者と看護師の話。 最後がよく理解できないまま終わってしまった。

    7
    投稿日: 2025.01.06
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    医学の進歩のために捕虜の生体実験が行われた、これがこの海と毒薬のテーマ。フィクションだが九州大学で同様の事件が起きているらしい。ナチスもそんな非道な実験は行なっている。 眉を顰めるような酷い所業を感覚が麻痺した人間なら誰しもやってしまうかもしれない、っという恐怖を感じた。

    0
    投稿日: 2024.12.20
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    生々しい描写が多々ある。特に男女の感情や愛着の描写、なにかに翻弄される心情の描写にぞっとする。 でもついまた読むと思う。そういう本。

    0
    投稿日: 2024.11.16
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    人は誰かから罰せられるから罪があるのか、罪が先か罰が先か。 良心の有無に限らず、誰しも罪を犯す可能性はあると言う事だ。どれだけ良心の呵責に苛まれようとも、結局犯した罪の重さは一緒。 罪を犯してしまうのは環境のせいではなく、各々の選択の結果である。

    0
    投稿日: 2024.11.07
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    頭が疲れていたので、言葉が綺麗な本を読みたいなと 思い、図書館でパラパラと立ち読みをしていました。 そんな中初めて遠藤周作さんの本を借り、そこから貪るように毎日読んでいます。 この歳になり、まだ新しい出会ったことのない衝撃と芸術があった、出会えた。と嬉しい。 短編集を読んだ後、名作の海と毒薬を手に取りました。 毎日、仕事の休憩時間が楽しみでした。 まだまだこれから、遠藤さんの世界を味わいたいと思います。 「良心」とはなんだろう、と考えさせられました。 なんで自分には「良心」があるんだろうと。 戸田のように「良心の無さに絶望する生」も、勝呂のように良心に苛まれる生も、ヒルダのように「人を殺めてはならない!」と声高に叫びながら、結核病棟を後にするとき消毒する生も、全部おんなじ、生きているということで、良心など形がないもので、私たちを踏み止まらせるものはなんであっても構わなく、正解はない、ひとつではない。でも良心があってもなくても人は生きる。 ていうことまでだけ、読み終わって感じています。 とても深くて、しばらく考えてしまうだろうテーマと、 人間の弱さをどこまでも味わうことで、逆に勇気を 貰ってしまった。 書ききれない素晴らしい内容です。

    1
    投稿日: 2024.11.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    尊敬する人が遠藤周作さんの本がお好きとのことで読んでみました。 戦争時の生体解剖に関わった人の話。 実際に起こった事件から、少し内容等変えて書かれているそうですが(解説で知りました) 本当に起こっているかのような表現に、ドキドキハラハラしながら読みました。 途中良心が痛みすぎてしんどくてなかなか読み進められないところがありましたが、勝呂さん、戸田さんそれぞれの心境がよく書かれていて、私は勝呂さんの方にとても感情移入しましたが、戸田さんのような人も中にはいるのだなぁと思いました。 勝呂さんもこのようなご経験があったから、冒頭のような生活をしていたのか…などと後でつながりました。 戦争時の心理状態では人命を尊重することが薄れてしまうのかな、と戦争を経験したことがないですが思いました。

    0
    投稿日: 2024.10.17
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    序盤から最後まで全体が乾いてる印象を受けた、 けれど手術の場面では水、汗、血、が滴る感覚と 同時に緊張感を感じて名作と呼ばれる所以を感じた

    2
    投稿日: 2024.09.29
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    全体的に流れている作風が、 乾いた感じ。 何にも心を動かさないキャラクターも いて、なんともいえない空気感が漂う。 この当時にこんな作風で 書かれている遠藤周作先生に 感銘です。

    0
    投稿日: 2024.09.07
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    戸田と勝呂が対比され、戸田の他の人と比べて欠損している感情が浮き彫りになるがその2人の行為に対する考えがどうであれそのした行為にはなにも異なる部分はない。今後戸田はその罪をどう意味付けて生きていくのか。

    0
    投稿日: 2024.09.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    出だしの文章から海と毒薬はどう関係してくるのだろうと疑問に思った。 言葉通りの「海」と「毒薬」というものが直接的に作品に出てくる訳ではなく 話中において戦争が蔓延る海という世界で人間の為す罪や罰を毒薬として表しているのだと読み終えてから知るのである。 目の前で人が殺されようとしているところを 自分は手を加えていないから悪くないと、何もしていないのだとこれから起こることに自身だけ目を背ける勝呂の心情こそが人間の罪や罰、つまり毒薬になり得るのだと私は感じた 勝呂は何もしていないのだ 何も 目の前で捕虜が解剖されるというのに 何もしなかったのである 何もしていないから悪いのでは無い 何もしなかったのが悪いのだ、と私は考える 自分の行動を正当化しようとする勝呂こそ 戦争で死んでいく人間が沢山いる中で 研究に回され解剖される捕虜をただみているだけだった勝呂こそ 広い海に落とされた数滴の毒薬なのだ。

    2
    投稿日: 2024.08.18
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    戦時中、捕虜の米兵を使って人体実験を行うという物語。 戸田のキャラクターというか考え方が非常に自分自身に重なって刺さりました。その瞬間・瞬間には罪の意識を強烈に感じるけども、ふとしたきっかけでコロッと忘れる。ほんとにあるある過ぎて自身の性格を言語化されたみたいでした。 また、ドイツ人の看護婦さんがよかれと思って洗濯したりクッキーを配っている行いが鼻つまみものにされてるのも日本だなぁと思いました。

    0
    投稿日: 2024.08.13
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    重い内容、暗い話で終始どんよりした雰囲気の小説だと感じた。人間の汚い内面が色々見えて共感出来たり出来なかったり…。 思っていたよりも分かりやすくて読みやすかった。勝呂と戸田の対比が面白いし、上田の醜いところなんかは多少なりとも共感出来る人も多いんじゃないかと感じた。

    0
    投稿日: 2024.08.13
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    面白いと思った。導入から本編に入る所は頁を捲る手が止まらなかった。170頁ほどで、2時間半ほどで読み終えれるのに対しての満足感、読み応えを確り感じることが出来た名作。第二章が特に良かった。分かりやすいもので例えるとすると夏目漱石のこころと通じるような、日本人らしい後ろめたさのある心情を上手く掬いとっているように感じた。欧米人である女性と、日本人である女性の対比、誰しもが感じた事がありそうで頭の奥に閉まっている浅ましい考え、これを真正面から描けることの出来る作家は少ない、内容が内容なだけに現代人には"ヤバい"で済まされそうな作品ではあるものの、実際に合った事件が元、という作品背景を描いた筆者の確かな覚悟を知った上で読むとさらに良い。遠藤周作は侮れないと感じた

    2
    投稿日: 2024.07.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ・あらすじ 終戦直後の日本、東京。 私は気胸治療を受けるために勝呂という陰気で無愛想な町医者の元を訪れる。 治療は的確だが、どこかその「手」に冷たさと不気味さを感じるその医者は、戦中の大学病院で起こった生体解剖事件に関わっていた。 3章仕立てで2、3章はその生体解剖事件に関わった勝呂、看護婦の上田ノブ、医局生の戸田それぞれの思惑、過去、悔恨などが綴られる。 ・感想 実際に起こった事件(相川事件)をもとに書かれた作品。 現代では到底倫理的に受け入れられない言動が多々出てくる…けどこれがこの「時代」だったんだろうな。 生命倫理、医療倫理…人の命が軽すぎた時代、簡単に失われる時代にあって「倫理」なんてあったもんじゃないだろうけど。 人が簡単に死んで、助けられない命が多すぎる日々に苦悩していた勝呂に、この事件は医学的実験という名目で能動的に「自分が人を殺す」という立場に追い込む。 結局、勝呂は手術室では何もできず目をつぶって現実を否定していたのみで、止めることもできず拒否して退出もできず中途半端に罪を背負う形になった気がした。 登場人物のなかでこの事件が「転機」となったのは勝呂のみ。 他の2人は特に何とも思ってなさそうというか、戸田は「己の他人への無関心さ」を改めて自覚するんだけど、上田はただ強烈な嫉妬心と場違いな優越感でしかこの出来事をとらえてない感じがして1番嫌悪感抱いた。 戸田に関しては人間なんて大体こんなもんだろうと思ってるから特段何とも思わず「普通の人間だな」という感想を持った。 「人間の良心なんて考えよう一つで、どうにも変わるもんやわ」という人間への過度な期待や理想が詰められてない現実的なセリフ。 「倫理」を調べると「善悪、正邪の判断において普遍的な基準」と書かれているけど人間なんかに「普遍的な基準」なんて持てるもんなんだろうか?

    1
    投稿日: 2024.05.20
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    目を背けたくなるくらいリアルな情景描写だった。映画とはまた違うグロさや赤裸々な人間味があり、名作と言われる所以を随所に感じた。 3.2

    0
    投稿日: 2024.05.15
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    「しぬことがきまっても、殺す権利はだれにもありませんよ」と言うヒルダさんの良心が信仰によって導かれているのに対し、手術の当事者は医学の進歩を建前とすることで自身の良心をねじ曲げ、残虐行為に及んだ。 この違いは信仰神の有無なのだろうか。結局我々は、神の教えが無ければ都合良く良心の書き換えを行い、道徳に背いた行為に及ぶのだろうか。 作品を通して、多神教である日本での幼少期における道徳教育は何よりも大切なのではないかと思った。自身のこれからの良心が相手の立場になって考えることに基づくものでありたいと強く思う。

    5
    投稿日: 2024.05.04
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    ☆4.2 なんとなくで手に取った本だったけど、こんなに心に残る時間になるとは思っていなかった。 どんな年齢の時に読んだとしても、必ず読んで良かったと思うことだろう。 続編があるとは知らなかったので、その続編『悲しみの歌』もきっと読もう。

    0
    投稿日: 2024.04.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    実際にどのように死体解剖が行われていったかではなく、参加していた一人一人の心情を描写するで読者でも有り得るのではないかと問題を提起するスタイルがとても面白くて新鮮だった。 1番印象的だったのが戸田の過去で、死体解剖のような大きな出来事ではなくても、日常生活の中で責任感や良心が欠けているときが信仰の不在から起きているということを痛感した。 深い河もそうだったけど、本当に人の痛い部分に目を向けて言語化するのがうますぎる。

    0
    投稿日: 2024.04.05
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    解説が分かりやすかった。 生体解剖の恐ろしさを伝えるのが目的ではなくて、それはあくまでも、良心を持たない日本人というものをあぶり出すために扱ったんやね。 でも私はその事件の気持ち悪さがしんどくて、それに気持ちを持って行かれて、本当に伝えたい感情のところまで思いを馳せるのが大変やった。 一神教のような神を持たない日本人 世間を恐れるがそれ以外に恐れを抱かない日本人 最近、同調圧力って本を読んで、そこでも世間について書かれてたから通ずるものがあった。

    0
    投稿日: 2024.03.31
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    タイトル含め、色々と考えさせられる作品。とても暗く重々しいけれど、読みやすく 苦痛なく読めた。実話をもとに書かれており、その事件について調べてみたら 自分なりに感じるものがあり、もう少し深く知りたいと思った。

    7
    投稿日: 2024.03.09
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    戦時中に行われた人体実験についての物語。 する側の人物たちの心情が表現されていた。 異常事態の中で、どうやって正常を保つのか。 正常とな何か。等、考えさせられた。

    10
    投稿日: 2024.03.05
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    有名な作品だけど、初めて読んだ。 解説がわかりやすかった。実話をもとにしていること、しかし、戦争という異常時の話としてではなく、設定を平常化することで罪責意識について問うているという内容はなるほどと首肯した。

    10
    投稿日: 2024.02.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    中古で買って期待してなかったが面白かった。実話を元にしている点、福岡の話である点が地名などもわかり面白い。

    0
    投稿日: 2024.01.08
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    戦時中の九州大学医学部で行われた捕虜解剖実験が元となった話。捕虜を解剖しそれに対して罪の意識を持つ勝呂と罪を持たない戸田の対比が描かれている。戦時中という非常事態とはいえ生体解剖を行なってしまう人の思考みたいなのがそれぞれの人物に描かれていて読み応えあった。勝呂のような意識にみんながなぜならないのか、戸田のように良心が麻痺してしまうのはどうしてなのかを考えさせられた。戸田に関しては昔からそういう風に生きているのが手記から伝わった(先生の蝶標本を盗んだり、従姉と体の関係を持ったり、妊娠させた下女を堕させたり)

    9
    投稿日: 2024.01.01
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    かなり重たいテーマの古い本だが、不思議と読みにくさはなく一気読みした。 実際に起こった、異常な状況における異常な事件をもとにした作品。 非人道的な内容であるがために、人間というものが浮き彫りになっているように感じた。 そうだからと言って決して許されるわけではないが、戸田の言葉にある「みんな死んでいく時代」、本当にそういう時代だったのだと苦しく思った。

    0
    投稿日: 2023.12.31
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    初遠藤周作。すごい本だった。 戦時下という特殊な状況において行われた人体実験。けれど関係者各々の胸中にはもともと別々の理由で暗い諦めと空虚があった。彼らの心情が滔々と語られていて、こっちの胸も暗く重く塞いでくる。特に戸田の章で彼のよどんだ目が自分に向けられたとき、思わず本を持つ手が震えました。自分はそんなんじゃない、と言い切る自信がなかった。 主人公の勝呂が良心を捨てず、苦しみ、ずっと「どうすれば良いんだろう」「どうしたら良かったのだろう」と自問しているところにこの本のテーマを感じる。解説もありがたい。「罰は恐れながら罪は恐れない日本人の習性がどこに由来しているか、を問いただす〜」て本当にその通りだと思う。ことあるごとに読み返したい作品。 作者はキリスト教徒の方なんだね。罪の意識について問い直すという視点はなるほどと思うかも。 ⚫︎あらすじ 不朽の名作『海と毒薬』が新装版で登場! 腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院時代の忌わしい過去があった。第二次大戦時、戦慄的な非人道的行為を犯した日本人。その罪責を根源的に問う、不朽の名作。 (KADOKAWA HPより引用)

    0
    投稿日: 2023.12.19
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    物語の構成がうまく、世界に引き込まれ一気に読んでしまった。特に、第二章の解剖事件に関わった看護婦・戸田の手記は、彼らの思考や生い立ちの描写が濃厚で、没入してしまうほど。(個人的には同じ女性として、看護婦の壮絶な過去には胸を痛めるものがあった) 事件自体の描写や物語の雰囲気は、想像していた過激さや生々しさはあまりなく淡々と綴られている印象。関わった人々も、戦争中という過酷な時代の中でも決して特異な状況にあったわけでもなく、海の潮の満ち引きのように自然と流されて事件に手を染めることになってしまったことが、とても恐ろしい。

    9
    投稿日: 2023.11.25
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    恐れるのは罪ではなく罰。戸田の内面の描写を読んでいると自分もそうなのではないかととても不快になる。 良心とはなんなのか、ということを考えさせられる話。

    1
    投稿日: 2023.11.18
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     九州大学生体解剖事件を題材とする小説作品。読む前に軽く辞書アプリで調べてみたところ、生命の尊厳や戦争の狂気を描いた文学作品という記述が見付かった。戦争。なるほど文学作品のテーマとしてはセンセーショナルで分かりやすい。  だが一読して抱いたのは一抹の違和感であった。確かに生命の尊厳も戦争の狂気も描かれている。だがそれだけでは些か表面的に過ぎるのではないか。  現代日本に生きる我々にとっては戦争は非日常である。勿論いまも世界各地で絶えず武力による抗争が繰り広げられ、無辜の人々が犠牲になっているのは知っている。然しどうしても自身の体験としては実感し得ない。本書は戦争の悲劇を忘れかけている我々に対する戒めだろうか。否、何も戦争などという特別なものを持ち出す必要など無いのだ。戦争とて本作を構成する舞台装置の一つに過ぎない。  自分が本作で最も印象に残っているのは第二章に於いて綴られる戸田の半生である。このパートには直接戦争の影が描かれることは無い。戦争を主題に据えるなら余り描く意味の無いエピソードにも思える。然しながらこの部分こそが最も作品の主題に肉迫する部分では無かろうか。  ここではごく普遍的な良心の危機が描かれる。時代背景を抜きにして、何時、何処でも、誰の身の上にでも起こり得る良心の危機である。無論それは直接戦争と関わりを持たない現代の日本人に対しても生々しい実感をもって突きつけられる。  戦争という特別な出来事など無くとも、日常の生活の全てに良心の危機は潜んでいる。  本作に登場する人間は殆ど全員が罪を背負っているといえるだろう。  戦争で人を殺すのは罪である。人命を出世栄達や実験の道具として弄ぶのも罪である。だが真に重い罪は犯した罪から目を背け、己の良心を欺くことではないだろうか。  その意味で戸田は言うまでもなく、土壇場で解剖手術への参加を拒絶し、己の罪から逃避しようとした勝呂もまた一人の罪人と言えるだろう。

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    投稿日: 2023.11.12
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    実在する事件を材にとってるだけあってとても読みやすい。章立ても視点ごとに変わっており、登場人物それぞれの「心の呵責」がよく読み取れる。 テーマは暗いのに、なぜか暗く重たい感じがしないと思った。 「私」を用いた導入、海の使い方、占領地でのこと、戦争、医学、故意の殺しとそうでない殺し、そして神。 新潮解説では「平凡になる」と書かれていたが様々な軸、伏線があって掘りがいがあると思った。

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    投稿日: 2023.11.08
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    戦時は人殺しが善となり平時は人殺しが悪となる。 そもそも日本やドイツの非人道行為が表立って 取り沙汰され裁かれるのは両国が敗戦国だからだろう。

    0
    投稿日: 2023.11.06
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    人の良心とは何か… タイトルもシンプルですがとても深い 色んな解釈が出来るとは思いますが、私は… 広大な海に毒薬が流れ込んだ場合、それは海全体が汚染させられたとみるか、いや、汚染は広い海の一部分に過ぎないから目をつむっても大丈夫だろうとみるか… 「海」は人のこころをさしているんじゃないかなと感じました 「毒薬」は普段の生活や行動で発生した人の良心に反したもの 人の良心に反することをしていても、葛藤に悩む人もいればケロッとしている人もいる 再読してさらに深く読み解きたいです

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    投稿日: 2023.10.28
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    思っていたのとは少し違いましたが人の闇を生々しく描かれています。 悪人が悪だけではなく、どうしようもない事をする人が優しさが全く無いわけではなく。 何故こうなってしまったのか、どうすれば良かったのか正解が分からないのは皆同じなのだと。 人のいやらしい一面も読んでいてイラッとしてしまう位に書かれています。 ただ救いはあるのかが分からないまま終わってしまうのが残念でした。

    22
    投稿日: 2023.10.15
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    戦時下、貧困、キャリアの挫折といった特殊な状況下で行われた生体解剖。 特に戦時下という状況は当然医師だけでなく、都心郊外に住むガソリンスタンドの主人や洋服屋の亭主も人の命を奪ってる。 命に対する価値観が揺らぐ状況で行われた実験。 戸田の言葉がとても印象的で、「彼らの恐怖は世間や社会の罰に対してだけだ。自分の良心にたいしてだけではないのだ」という一節に怖さを感じた。 罰に対する恐怖と、罪への意識の希薄さが気味悪く描かれていた。

    0
    投稿日: 2023.10.14
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    戦前〜戦中の生活が描かれている小説とかエッセイ、もっと色々読みたい。 信仰(や倫理観、良心など呼び方は何でもいいけど)が行動を制限できることはないと個人的に思っていて、「信仰が〇〇だから行動は◇◇」という全く同じ形式を取っているのに時代・文脈・属性などで◇◇の内容180度変わりますやんとということが多い気がする。 あと、戦争って“そういうこと”をやるものだという個人的な認識があるので、「日本人がいかなる人間か」ということを考える時に戦時中の異常行動を例に出して考えるのもなあ〜と思ってしまった。(異常事態でも権力争いや自分のポストのことを気にする、という意味では戦時下ということが重要?) ↑こういう感想が出てきてしまうのは、どうしても日本人を批判されているように感じて、自分の中の愛国精神が傷ついているからかも。 遠藤周作の本他のも読んで自分の考えまとめたい。

    1
    投稿日: 2023.10.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最初から最後まで辛気臭い話だった。 この本と実際に起きた事件に対して、日本人は無神論者だからこんなことが出来るんだキリスト教を信じる欧米人なら自分たちの神に誓ってこんなことはしないみたいな乱暴な言葉を見たけどそんなん、そんなんお前米国人だって日本に原爆二つも落として効果を試して、捕虜を実験台にして殺した日本人と何が違うって言うんだ!と思ったりもした。

    2
    投稿日: 2023.09.25
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    新潮文庫にて。 暗く重たい話だった。 人間の慣れや欲は恐ろしい。 他者に対する共感力のなさは恐ろしい。 しかし、それは私たち全員が持つ弱点なのだ、と思う。 小説の構成は、シーンがいろいろ変わって面白いが、ざわざわした荒い感じもした。

    0
    投稿日: 2023.09.11
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    どんどん流れてくる汗を拭き取るくだりが凄くハラハラした。 当時の独特な擬音や、喋りかたが怖さを倍増させていた。 読んでいて知らない漢字が沢山出てきました。 安価で読み応えもあるので不気味な話が好きな人に読んで欲しいです。

    19
    投稿日: 2023.09.07
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    現代ならあり得ないであろうことも、時代と環境が異なれば、倫理観、生死観、優先順位何もかもが違う。しかし、その時代においても人による部分もある。その時人間は、自分ならどうするのか? と思いながら読みました。

    0
    投稿日: 2023.08.18
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     日本は恥の文化、西洋は罪の文化。  戦時中という日常とは異なった状況だから人体実験を行うことができたのか?  違う。日本人には罪の意識が無いため、「世間が許してくれるなら」なんだってできる、という結論が本書には書いてあったと思う。  だが、本当に日本人には罪の意識が無いのか?西洋のように絶対的な「神」という人々の道徳観念を日本人は持っていないが、「天罰が下る」や、江戸時代、それ以前からも罪と罰という概念はあったと思う。  では、これらも法として働いているだけで、日本人の心には「他人に見られなければ、他人と一緒ならば、何をしても良い」というような観念が心にあるのだろうか?  「赤信号、皆で渡れば怖くない」や、「バレなきゃ犯罪じゃない」という言葉はよく聞く。蓋し、これらは日本人の性質を表しているものであり、単なるギャグとして使われる言葉ではない。  これらの言葉を聞いた時、私は反論でもなく肯定でもない、「納得」の二文字が心に浮かんだと思う。  「確かにそうだが、合ってる訳でもない。グレーゾーンだな」こんな風に思った。  多分、これが一般の感性なのだと思う。  だとするならば、やはり、戦時中という異様な環境が日本人にある根本的な観念を増長させるのだと思う。  大いなるものの前では、人は無力だ。自分の意志を出した所でなにも変わらない。      

    0
    投稿日: 2023.08.16
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    もし日常の僅か先にある仄暗い道に足を踏み入れたとしたら?平成の平和な世に生まれた私には、作者の問いにわからないとしか答えられない

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    投稿日: 2023.08.05
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    登場人物全員病んでる 最高 私もどっちかっていうと戸田寄りの人間なので 戸田に感情移入した結果 彼が最後まで良心を見つけられなかった事に すごい揺さぶられた また読みたいけど 古傷を抉られる感じがするから嫌かも でも絶対に手放したくない 人間の闇をどんよりと描いてる おすすめです心から

    1
    投稿日: 2023.08.03
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    夏なので。 恥ずかしながら、はじめてこういう戦争に纏わる本を読んだ。 すごく臨場感があって、描写の輪郭がはっきりしていて、ちゃんと気分が悪くなりました。 解説引用 全体として作者は罰を恐れながら罪を恐れない日本人の習性がどこに由来しているのか、を問いただすために、生体解剖という異常な事件を、一つの枠組みに利用した形跡がある。ここに事実とはまるで異なるこの長編の独創性と特異性がある。 なるほど、と思った。 自分の価値観を試される作品かもしれない。

    2
    投稿日: 2023.07.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    講談社文庫版巻末の夏川草介さんの解説にあったが、「神を持たない日本人」には欧米諸国のような絶対的価値観が存在しないらしい。 ヒルダのように神を信じる人は日本では異質な存在かもしれないが、私の身近には昔から割りと多くいる。 私の母はヒルダのように神を信じていて、自分の絶対的価値観を悪意無く押し付けてくる所に日頃から少々腹立たしさを感じていた。 でも同時に確固たる軸があるのを羨ましいとも思う。 この本を読んで衝撃を受けなかった私は、やはり絶対的価値観が無いようだ。 戸田や上田ノブにも普通に共感できる。 私の仕事は畜産関係で、学生の頃に小動物の生体解剖もやったし、家畜が殺される現場も見てきた。 実験体にされた米兵の描写で、殺される直前の家畜を思い出した。 これから殺されるとまでは、おそらく思っていないだろう様子を。 殺すのが家畜でなく人間だから恐ろしいのか。 戦場で兵器で殺すのと、病院内の実験で殺すのはどう違うのか。 命令する軍人と、実際に施術する医師はどちらがより罪深いのか。 本自体は思ったよりずっと読みやすかった。 遠藤周作さんの他の本も読んでみたい。

    2
    投稿日: 2023.07.25
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    平野氏の解説にある、「罰は恐れながら罪は恐れない日本人の習性」という言葉にはっとしてしまった。 非日常が集団意識を強め、暴力性をはらむというのは、現代の社会問題とも通ずる。

    2
    投稿日: 2023.07.24
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    戦時中に捕虜を人体実験に使った事件を元にしたお話 実際に起こった事件は九州大学生体解剖事件 薄めた海水を血管に注入していく実験、肺を切除していく実験などが行われたようだ 実験そのものよりは、日本人の倫理観とキリスト教徒の対比になっている 宗教による明確な行動規範がない日本人にとって、行動を規律するのは集団心理やその場を形成する雰囲気に流されるのではという疑問 問われているのは、日本人にとっての「罪」とは?でしょうか 流されるままに人体実験の手術に立ち会った勝呂医師 上司の妻のヒルダがキリスト教徒の例として描かれている 「死ぬことがきまっても、殺す権利は誰にもありませんよ。神さまがこわくないのですか。あなたは神さまの罰を信じないのですか」 キリスト教の神を信じていない者にとっては、目の前の事態にどう対応するのか、自分の立場を守るためにはどうすべきなのかを考えるのは当然であり、むしろ楽にしてやるという意識もあるでしょうね 日本人は社会的な流れに従いがちだけど、キリスト教とてその倫理観が絶対に揺らがないものでもないけどね 解釈により如何ようにも変わっている 殺人にしたって、異教徒なら殺して良いという解釈をする奴らの倫理観もどうかと思うけどね 安楽死にしても、日本では認められていないけど、キリスト教圏でも認めている邦や地域はあるし 「自殺」をどう定義するかによってその解釈は変わる キリスト教とて絶対的な倫理観なんて存在しないんじゃないのかと思う 遠藤周作はこれの他に「沈黙」しか読んでないけど、キリスト教の一側面からしか描かれていないので、読了後に反論したくなる何かがある

    2
    投稿日: 2023.07.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    重苦しいじっとりした空気感がある。 罪の意識と恥の意識。 他者から罰せられることに対する恥の意識の日本人的感覚は確かにある。 自分の良心に対する呵責なのか、罰せられなければ何もも思わないのか…。 ラストの戸田の言葉は考えさせられる。 殺したのではなく生かした 良心なんて考えよう一つでどうにでもなる。 俺たちを罰する人たちも同じ立場になったらどうなるか分からない、世間の罪などそんなもの。

    0
    投稿日: 2023.06.18
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    なんといっても名作。 これは感想を書きたくない。感想を書くと自分の中の評価が固まってしまいそうな気がする。これは読むたびに自分の状況と照らし合わせて内省したい小説。

    1
    投稿日: 2023.05.15
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    出てくる登場人物が皆、自分が思う典型的な日本人のように感じ、戦中の話なのに70年以上経ったいまでも変わらないように思う。それぞれに事情があったからと言って、善悪の線引きが変わるものなのだろうか。

    0
    投稿日: 2023.03.26
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    海は運命の流れ、毒薬は信仰のようなものを指すと仮定した。 人生の中での様々な困難(海)が押し寄せてきた時、毒薬(勝呂にとってのおばはん、戸田にとっての己)を上手く使えば乗り越えられるが、使い方を誤ると人間は追い込まれる。信仰対象を信じれなくなった時、善悪の区別がつかなくなる。 戦時中、人が当たり前のように死ぬ中ではその現象が起こりやすかった。

    0
    投稿日: 2023.03.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦争真っ只中。そういう時代であった事。 それは頭に入れて読み進めていた。常識が常識ではない時代。 まだまだ医学の進歩もなく、毎日が死ぬか生きるかの時代。 実話という事で興味が湧いて読んだ。 勝呂は立ち会う事しかできなかった事は意外だった。 根は真面目なのだなと感じた。 あの中で1番人間だったと言うか。。

    0
    投稿日: 2023.01.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦時中の病院内の描写は、よもやホラー小説の様を呈する。特に前半の田辺夫人の描写はグロテスクで、背筋がぞっとした。 しかしもちろんこの小説の本題はそこになく、人間の罪業、呵責への挑戦的な問いかけである。 戦地で人を殺めるのと、手術で患者を死なせること、何もせず見殺しにすること、生きたまま解剖することは何が違うのか。 登場人物は皆、自分本位である。立身出世や人より優位に経つこと、自己保身で心は満たされており、罪の意識が入る余地がない。 その意味では勝呂もまた、ナイーブな自己憐憫に囚われている。 そして本題の解剖実験は意外にもあっけなく、静かに終わる。肩透かしを食らったようだが、故に田辺夫人の激烈な死に様との対比が際立つ。彼女は、生体解剖された捕虜と対の関係にある。 どうしても生かしたかった人を死なせて生を繕う一方、まだ死ぬ必要のない人の生を奪う。これが同じ手術室で、同じ人間によって行われている矛盾。 戸田の最後の台詞「俺たちを罰する連中かて同じ立場におかれたら、どうなったかわからんぜ。」、これが真理と思う。

    0
    投稿日: 2022.08.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読むのがしんどかったのであまり読み易くはない。終始暗いしスッキリもしない。 一皮むけば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。この文章は印象に残った。

    0
    投稿日: 2022.07.12
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    異常な状況は人間をどれほど狂わせるのか、それは体制が、国が、時代が、そうだったから、だから仕方がないのだろうか?誰でもこうなりえてしまうのだろうか? そんな中で、この異常な事件を淡々と、それぞれの視点から、一般的な感覚に落とし込み、(派閥争いや人間関係)平常化することによって、この事件は日常の延長線上に存在すると思わせているかの様に、我々に感じさせる。 時代は正義の名の元に価値観と環境と大衆で簡単にひっくり返りながら進んできた。だとすれば、せめて自分が正しいと思うものに最後まで従いたいが。。人間はそこまで強くはないから、勝呂のことも分かる。どっちかに振り切るのにはやはり勇気がいることも事実だ。 罰は恐れながら罪は恐れない日本人の習性。

    0
    投稿日: 2022.01.21
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    ■実際にあった生体解剖実験が題材。救いのない運命に息苦しさを覚える■ 太平洋戦争も末期、本土空襲が繰り返される異常な状況を背景に、実際にあった米軍捕虜の生体解剖実験を題材として、それに関わる人物とその内面をそれぞれの立場から描く(登場人物はあくまでフィクション)。時代背景や登場人物の過去も含め、最後まで暗く重苦しい空気が立ち込めているようだった。 撃ち殺すでもなく、斬り殺すでもなく、猟奇殺人でも無差別テロでもない。医療関係者としては捕虜に対する恨みも憎しみもなければ、殺す理由もない。実験従事者は決められた計画のもと、あらかじめ予定した手順に即して、実験対象に淡々とメスを入れる。そして心臓の鼓動が止まるまでの過程を冷静に観察、記録する。術後は、後悔も罪の意識もなく、それぞれの物憂い日常に戻っていく。 一体なぜ、そんな恐ろしい非人道的な行為が可能なのか。 それはこの小説の世界に呑み込まれてみると感じることができるだろう。 僕も案外平然とやってのけたかもしれない。あるいはそんな度量もなく、何もできずただ傍観するしかなかったかもしれない。

    0
    投稿日: 2021.05.21
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    「九大生体解剖事件」の当事者であった東野利夫氏が亡くなったとニュースで見た。事件を元に、戦争と事件の悲惨さについて伝えてきたと聞く。この本はその事件を元にした本だと聞いた。東野氏の活動は、事件に関わり後悔しているからこその活動であると想像した。なぜ事件に手を染めたのか興味を持った。 結論的には解釈の余地があると思う。戦争下で、いつ死んでもおかしくないなら、いまでもいいという言い訳が通る環境。エリートの医者の持つ患者への蔑視。私怨。自分がどれほどひどい人間なのかを確かめるため。昇進のため。想像力の欠如。すでに罪を犯してきた自分に対する諦めなど。 歯止めとなるのは勇気や信仰か、遠藤周作はキリスト者としてそのようなことを考えるのだろうか? また、世間からの断罪は相対的なものに過ぎないから気にしない、という姿勢の登場人物に危なさと同時に真実味を感じる。自分が結局どうしたいか(理想の追求)という主体性を放り投げてしまうほどの圧倒的に強く悲惨な迫り来る現実が、この「毒薬」なのかもしれない。 内容は簡潔で読みやすい。ただし旧字体や古い言葉遣いが出てくるから、このままだと将来の世代にこの本は残らないと思う。過去の反省を伝えるため、国語教育や読書文化は必須と感じる。

    1
    投稿日: 2021.04.19
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    5年ほど積読だったのをようやく読んだ。 戦時下の大学病院で実際に行われた事件である、外国人捕虜の生体解剖実験と、それに携わった医師や看護師の苦悩が綴られている。 どす黒い海に呑みこまれていくような、じっとりとした恐怖と気持ち悪さを感じた。 特に、私は主人公の勝呂よりも、同僚医学生である戸田の方により感情を寄せられながら読んだ。太宰の人間失格に近いものがあるのかな。 今日死なせてしまった患者の顔も、明日には忘れる。社会的な罰を恐れるが、罪を恐れているわけではない。自分がしてきたことは醜悪だとは思うが、そのことで苦しみはしない。 良心の呵責に苛まれる勝呂、良心の片鱗もみつからない自分を改めて実感する戸田。 でもフィクションじゃない現実でも思うのは、人間は誰しも、本当の本当は他人の死、他人の苦しみに無感動なのではないか、ということ。 私はどうだろう?これまでの人生、どれだけの罪を犯して、平気な顔でそれを忘れてきただろう?

    7
    投稿日: 2020.08.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    実話を元にした小説。 戦時下の末期という特殊な環境下、敵国の捕虜、権威の失脚、逆らえない軍からの要請という特殊な環境下で起きてしまったのか。 罪の意識に苛まれる主人公が淡々とした描写ながらよく分かる。 また副主人公の気持ちも。 運命として受け入れるか、自身の選択によって直面した状況として判断するかは人それぞれだなと感じた。

    0
    投稿日: 2020.08.04
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    実話を元にした小説だけあって、読み手に対しても罪の意識を感じさせるものがあった。どうしてか勝呂の気持ちが凄く分かってしまった。

    1
    投稿日: 2020.07.07
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    淡々とした筆致ながら、人の本性を抉り出す筆力がすごい。主題とは直接は無縁の、登場人物の過去の日常の書きぶりに共感する箇所多々。戸田医師の小学生時代とか。それだけに、ちょっとした(というには戦争は巨大だが)きっかけで、人間性と言われるべきものがいとも簡単にひっくり返る様は強烈なインパクトだった。

    1
    投稿日: 2019.06.28
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    そういう時代だった。そう言われてしまえばそうなのかもしれない。上から落ちてきた一滴の毒薬を、意思の力で無効にできる人間がどれだけいるのだろう。毒薬が落ちてきたことすら知らずにそれに染まってしまったのが、日本人という国民性ゆえだと思いたくはない。戦争で敵を倒すこと。あるいは医療の進歩のために実験をすること。彼らの思う罪とはなんだっただろう。治験の大事さも私は身をもって知っている。でも、それはこんな風に起こっていいことではないはずだ。海はまるで心を映すように、見るものによってその色を変えていく。

    3
    投稿日: 2019.06.14
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    苦悩する人としない人の差とはなんだろう。 罪とはそもそも人の決めた倫理の中にあるから、 その範疇に収まらなければ、 感じるとこはできないんだろうなと思った。 チャンスがあるからものにしたい。その欲求のみ。 ただ、読んでくときの違和感はぬぐえませんでした。たぶん、フィクションとノンフィクションの違いなんだろうけど、生体解剖事件の本を読んでからだったので、各関係者こんな複雑な思い抱えて、参加してたとは思えませんでした。

    0
    投稿日: 2018.09.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦時下での人間の罪や良心について考えさせられる作品でした。 外国人捕虜の生体解剖について関係者の十人十色の感情が描かれています。 生きた人間を医学の進歩の為に解剖することは、殺人と同義ではないのか?それとも、医学の進歩の為に欠かせないことなのか? 戦争という時代背景で、実験体が敵である捕虜だから死ぬことを前提として解剖しても良いのか?同じ日本人であればそのようなことは出来ないのか? 結核治療の為に必要な実験だとして、私個人としては 如何しても殺人の概念が頭から離れず恐怖や呵責で苦しみ逃げてしまう勝呂は正解だと思うし、 未来の人の病気を治す為に致し方ないと割り切れる助教授や看護婦長も正解だと思うし、 戦争という激動の時代で死の価値観が屈折している戸田も正解だと思いました。 おそらく程度は違えど現代にも同じようなことはあって、 まさに人類の苦悩の核心を突いていると感じました。

    1
    投稿日: 2018.09.11
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    以前に一度読んだことがあったのだが、恥ずかしながら残酷だなぁという感想しか抱けなかった。 ただ、医学生になった今読み返すと少し違った気持ちを抱いた。まず、以前より専門用語がわかるようになったため、手術の生々しさが伝わってきてより、強烈に感じる。そして、生体解剖など絶対に間違ってる、決して行ってはならないことだと強く思った。心臓が少しドキドキした。

    0
    投稿日: 2018.08.12
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    実話に基づいている小説とのこと。「重い」小説で、読むと気持ちが沈む。 死刑が決まっている人間に対し、眠らせて安楽死(と言えるかは謎)させる、そしてその実験により多くの人間を救うことができる、といった状況を正当化しようと葛藤する登場人物。 それの何が悪いのか、自分としては説明ができないが、その状況に直面した場合、自分も同じように苦しむだろう、と考えた。

    0
    投稿日: 2018.04.24
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    この作品からの問いかけに面と向かって大見得を切れる人がどれだけいるだろうか違和感を覚えつつも雰囲気に流されてしまう人の弱さと怖さ。本当に何か感じられるかどうか自信が持てるだろうか。そういう人の危うさを自覚させられる。ための殺人。戦争もそうだ。理由はある。そんな時、戦地から帰ってきた死んだ祖父が夜、時折、うなされていたという話を思い出す。一方、割りきれてしまう人もいるというのは恐ろしいことだとこの作品は教えてくれる。

    0
    投稿日: 2017.12.18
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    医者がどんな気持ちで患者の自分に向き合っているのか、これからそんな事を無駄に気にしながら恐る恐る診察してもらう事になりそうだ。

    0
    投稿日: 2017.09.24
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    戦時下という一種異常な状況における人命の扱われ方、その尊厳のなさ、命には優劣があり、対する疑問や憤りもやがて諦観に覆われていく、物語全体に漂うその虚無感、が印象的な作品だった。私は幸運にも今この「時代」に生きていられるから、人命第一という価値観のもと過ごしていけるが、戦時下という「時代」のもとならばどうだろうと、考えさせられた。けれど同時に、人間に時に垣間見える残酷さ、残忍さ、残虐さ、他人を陥れるときの仄暗い喜びや、他者を攻撃する際の高揚感を、「時代」のせいにしてはいけないとも思う。罪ではなく罰を恐れる自分の心を肯定してはいけない、ということを、頭ではなく心で感じるには、どうすればいいのかなあ。

    0
    投稿日: 2017.06.13
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    登場人物を混同しそうになるけれど、なるほど、代表作とされるだけある。たんたんと進むため、意外と気持ち悪さなどはあまりないが、そのぶん、生体実験の怖ろしさを思う。

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    投稿日: 2016.02.23
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    死というテーマが呑まれるような日本海の暗さで覆われていた。 ただ罪深き行為と死、だけでないところに名作と呼ばれる所以があるのではなかろうか。

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    投稿日: 2016.02.11
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    1945年第二次世界大戦末期に九州大学医学部で行なわれた「生体解剖事件」を題材にしたもの。相川事件というそうだが。短編小説だけど、多方面からの人物の描写と心情が描かれている。知らずに読んだので、読んでいる間結構しんどかったかも。神とは、良心とは、呵責とは、責められるようでテーマが重すぎる。戦争という時代が作り出した悪魔のようだった。史実を基に描かれているようなので、それが一層深く感じられた。

    0
    投稿日: 2015.11.12
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    心をえぐっていくのがうまい.登場人物の心の中身には,遠藤周作が過去に触れた感覚が宿っているのだろう. ただこの本は精神的に余裕のあるときに読みたい.陰鬱な力が強く疲弊してしまう.

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    投稿日: 2015.08.31
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    「木は森に隠せ」そう言ったのは推理作家のチェスタトン 「毒は海に捨てろ」これはぼくの創作したことわざ 「海と毒薬」を書いたのは遠藤周作である 悪は人の心の中にまぎれていて、見出すことができない だけどそんなつもりで、軽い気持ちで、みんなの心をよせあえば 公害級のでっかい悪になることだってあるのさ それはもう大学病院の中だけに限定された話じゃない 戦争という、生と死のグレーゾーンを現世に呼びこんだ 悪の歴史の物語である

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    投稿日: 2015.03.27
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    バーコード検索で出てくる表紙が違う…借りたのは濃い浅葱に黄色の字の表紙。 三回目くらいなんですけど、相変わらずものすごく陰鬱。ちょっとなかなかわかりかねて再読を繰り返してる。分量自体は短くて読みやすい。 1958年発表とのことで戦後すぐではないんですね。これだけ薄暗いなら戦後すぐくらいのやつなのかと…

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    投稿日: 2015.02.24
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    実話をもとに書かれている。なぜ。彼らはそれで良かったのだろうか。戦時中で、多くの人々が亡くなり、身近なところに人を殺したことがある人がいる、そんな時代だったから、人を殺すことを簡単に考えられたのだろうか。どうせ死ぬ命だと割り切れたのだろうか。たくさんの人の死が、医学を進歩させてきた。それと、健康な人に積極的に死を与えることは別の話なのに、なぜ混同して語っているのだろうか。ちょっと医者不信になりそうです。

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    投稿日: 2015.01.18
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    戦時中実際にあった出来事をモチーフにして綴られる、戦争下の医師をめぐる物語。 異常な時代における人間の平常心とは、良心とは、罪とは何なのだろうか。 現代と過去の両方でそれぞれの登場人物が語る「考えるのをやめた」という言葉が、とても意味をもっているように感じた。 考えないということは罪なのだと思う。 あとがきの「日本人は、罰はおそれるが罪は恐れない」という言葉が印象的だった。

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    投稿日: 2014.12.19
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    独白部「こういう人間にはこういう背景があって、ね?分かるでしょ?」と誘導する雰囲気が性に合わず不愉快さ満点。主題は蝿の王と同じ。

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    投稿日: 2014.11.12
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    対照的な2人の患者。裏切られていく予想。最初のほうと比べて情景描写が少なくなっていくように感じとた。視点が幾つか変わっていくが、それぞれの半生が非常に興味深い。手術のシーンは目をそらしたくなる描写だった。嫌でも生と死を感じさせられた。 (2014.11.11)

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    投稿日: 2014.11.11
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    中盤から手術に参加する人たちの背景が書かれていてそれぞれの考えることが見えてくる。 そこから3章はページを繰る手が重くなった。 ずっと物語がモノクロで進むような地味ではあるが強烈な小説でした。

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    投稿日: 2014.08.12
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    罪には二種類ある。一つは社会的な罪、もう一つは個人の意識下の罪。本当の意味で人を苛むのは後者でしかありえないのだろうと思う。 この作品は戦時中という異常な状況で、ある意味で社会的な罪が薄い状況と言える。そのなかでなされた所業に恥や罪を問う意識の動きが精緻に描かれた名作だった。

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    投稿日: 2014.07.19
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    戦争という非日常が人間性を奪っていく・・・ そんな風に伝えたい作品かと思ったが、解説を読んでそれは作品の一面でしかないということを感じた。 世間体や罰だけを恐れ、自分の内面に罪の意識、反省の意識というものが日本人にあるのか?という作者の問が含まれているらしい。 それは、なにもこの著者やこの小説の登場人物だけが対峙する問題ではない。 事の大小はともかく、日常でふと私たちも対峙しているが、事の小ささと忙しさに押し流されて曖昧にしたままでいるような気がする。 また、上の命令には考えることなく従ってしまう、恐怖。 それは度々ニュースで目にする組織絡みの不祥事もこんな感じなのだろうかと頭によぎらせる一冊だった。

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    投稿日: 2014.06.12