Reader Store
中国が宇宙を支配する日―宇宙安保の現代史―(新潮新書)
中国が宇宙を支配する日―宇宙安保の現代史―(新潮新書)
青木節子/新潮社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

7件)
3.8
0
4
1
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    中国マニア的にタイトルに釣られて購入。内容としては、中国が云々というよりは、米ソの宇宙開発の歴史、日本、そして中国の台頭といったところか。元々はnippon.comに連載していたものを追記、まとめたものを出版という流れらしい。しかしまあ中国という国にとっては宇宙も外交の手段の一つでしかなく、他のさまざまな方面と同じような方法・手段を用いるのだなということがわかる。 それにしても日本の宇宙開発の歴史は、アメリカの危惧と安価な液体燃料ロケットの技術提供で自立的でなくなったという件は興味深い。国産OSだのは無理矢理開発をやめさせたというような行で語られることが多いが(実際に私はあまり詳しくないので知らんが)、それよりは比較的おとなしい手法で牙を抜かれたのか。もっとも非軍事開発の縛りが別の足枷だったのかもしれないが。それにしても日本のロケットは成功率が世界一というのは驚いた。なんか幼少期のイメージだと種子島から打ち上げるたびに失敗していたんだけどな。。。HⅡAロケット、HⅡBロケットは値段は高めだが、発射予定日から遅れても1週間以内に発射できる率と成功率が高いのだとか。 著者の日本もずいぶん考え方を始め進化させたが、世界はもっと進化しているという言葉はやはり”遅い”日本を象徴しているように思えてならない。 P.34 強靭な宇宙産業を育成することが、とりもなおさず宇宙における軍事食を高めることになり、軍と軍事産業をユーザーにできるなら宇宙産業はさらに伸びるという良循環が成り立つことは世界で実証されています。中国も米ロ欧に範を取り、拍車をかけて宇宙利用の技術を伸ばそうとし、より大胆な軍民融合を進めました。中国の「民」がどこまで民間といえるか、という問題は別途ありますが、むしろ自国のインフラ整備、外交力、むきだしの軍事力の呈示として宇宙を活用していったあたりから始まったように思われます。 P.54 もともと中国は、米国の輸出管理体制では、「グループD5国」という武器禁輸国に位置付けられています。米国は、相手国が核、生物・化学兵器、ミサイル、通常兵器についての4つの国際輸出管理レジームに入り、米国と同じ趣旨で輸出管理を行っているか、米国の安全保障を害するような政策をとっていないか、などさまざまな基準により、もっとも輸出管理の緩やかな「グループA1国」(通常兵器までの4つの輸出管理レジームに入っている国で、具体的には、日本を含む西側諸国の多くがこれに当たる)から「グループE2国」(米国が国連制裁対象などとは無関係に独自に禁輸を行う国で2020年現在はキューバのみ)まで扱いをかえています。(中略)中国は米国にとって矛盾した存在です。安全保障という観点からは、テロ指定国家の「グループE国」よりは上ですが、「グループD国」の中でもかなり厳しい扱いを受ける潜在的敵国で、冷戦後のロシアよりも厳しい扱いを受ける対象です。しかし同時に、その市場や中国が提供できる安価で一応は信頼のおける先端技術を備えたサービスが米国にとっての魅力で、米国産業界は中国にどんどん吸い寄せられていくことにもなったのです。 P.65(アジア初の政府間国際宇宙組織APSCO) 欧州宇宙機関(ESA)の「アジア太平洋」版を標榜して出発したとはいうものの、地理的なまとまりがある組織ではありません。(中略)APSCOの実態は、ありていにいえば米国や欧州の法規制に縛られない、また縛られたくない国や、欧米の影響力を忌避する国を、中国が束ねたものとみることもできます。(中略)参加国の多くは、中国との間で宇宙技術をめぐって埋めきれない格差を抱えています。中国との「協力」とは名ばかりで、現実には支配と従属の関係に入ります。 P.73 中国は、10年間で宇宙法研究者を100倍に増やし、国際宇宙法形成に影響を与える計画を立てたとされます。2010年ごろのことです。現在、国際宇宙法の形成には国連、特に国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)が大きな力をもっています。そこで、中国が国連との連携を深めることは、単に国連で影響力を増す、活動に国連のお墨付きと国際公共性を与えるためだけはなく、COPUOSでの議論を通じて、新たな宇宙法形成に向けて、着実に地歩を獲得する努力を行なっているということになります。 P.96 宇宙開発は歴史的事実として、核兵器開発、ミサイル戦力の構築とわかちがたく結びついていたのです。 例外は日本だけです。史上、日本だけが科学目的で、国産ロケットを開発し、国産技術のみで科学衛星を開発しました。 P.179 国際環境の変化として最も需要なのは、宇宙の安全保障環境がいっそう悪化し、脅威が増加しているという点です。そのため、宇宙安全保障の確保が今まで以上に重要となりました。米国の国家宇宙戦略(18年)では、宇宙は「戦闘領域」となったと宣言され、NATOの外相会議では、宇宙を「作戦領域」(19年)と位置付けました。米国の宇宙軍(19年)やフランスの宇宙司令部(19年)をはじめ、最近、各国で宇宙での不測の事態に備える動きが活発化しています。 第4次宇宙基本計画全文でも、宇宙が「戦闘領域」とみなされる時代となったことに言及していますが、宇宙基本計画で「戦闘」という言葉が詩買われたのは初めてのことです。 P.206 2015年ごろからは、新たなタイプのビジネスを目指す動きが、特にベンチャー企業により見られるようになりました。 軌道上のデブリをレーザーや、銛型、紐型、網型など、さまざまん装置で大気圏内に再突入させる積極的デブリ除去(ADR)ビジネスもそろそろ実証実験を終え、本格的に、ビジネスとして開始されそうになっています。また、静止軌道の大型衛星であれば1機200億円以上することも珍しくないため、燃料補給をしたり修理したいして長く使うことが望ましいといえます。軌道上での燃料補給や修理などを提供するサービスも開始寸前です。

    0
    投稿日: 2025.02.09
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    宇宙の開発の現状と歴史が分かって良かった。I-spaceの活躍を見て読んでみたいと思った。宇宙関連のビジネスはドンドン広がっていて、ベンチャー企業も出てきている。その背景が分かった気がした。最初は軍需産業を相手にしていた半導体産業のように今後は大きく発展するのかもしれない。日本がアメリカとの関係の中でロケットや衛星の開発にブレーキが掛けられていたことも知った。高度に政治的な分野なんだと思った。これからは宇宙の時代になっていくのかな。そう思わせる内容だった。

    0
    投稿日: 2023.07.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    宇宙における最新の安全保障環境と今後の展望が書かれています。 宇宙や安全保障の入門書としていいのではないかと思います。

    0
    投稿日: 2023.05.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    主題は非常に扇情的であるが、内容的には副題の方が正しい。 米ソ、中国、そして日本の宇宙に関する政府及び最近の民間の関与の歴史をわかりやすくまとめている。 宇宙に関しては、ともすれば専門用語が多く、かつ政府や軍に関する活動が主なため、公式の堅苦しく退屈な話が多くなりがちであるが、流れをうまく整理した記述となっていたため、退屈せず読むことが出来た。

    0
    投稿日: 2022.03.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    聞き慣れない言葉が多くて読むのに苦労した。 しかし、宇宙でも米中の争いが。 軍事利用を目的としない日本の役割は非常に重要になってくる。

    0
    投稿日: 2021.10.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    現役時代スペースデブリに携わっていたので、会合等で著者を何度がお見かけしたが、宇宙関連の動きを法的な観点から解説した好著だ.傍若無人とも言える中国の活動は、2007年1月の衛星破壊による大量のデブリ発生で全世界から非難を浴びたものの、着実に成果を上げているのは脅威だと感じている.日本も"平和利用"の軛から解放されたことで、世界と同等な活動ができるようになったのは、ある意味で進展だと思うが、あまり認知されていないのも気になる.

    0
    投稿日: 2021.09.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    我が国の宇宙法の第一人者である青木先生による、宇宙安全保障の歴史と今後について。 簡潔に宇宙安全保障の現状と我が国の現在位置を教えてくれている。

    0
    投稿日: 2021.04.03