Reader Store
わたしが行ったさびしい町
わたしが行ったさびしい町
松浦寿輝/新潮社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

8件)
4.0
2
2
2
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    タイトルどおり、筆者が旅行や出張で訪れた国内外のふつうでさびしい町について語られてる。 旅行本ってガイドブックだけじゃなかった!

    0
    投稿日: 2025.10.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    内容はタイトルそのまま。筆者が訪れたことのある、さびしい、つまりごくふつうの町について、記憶の海からすくいあげるように綴られている。内省的かつ散文的な文章が時にその町の心象の中に沈みこんでいく、距離感の揺らぎがなんだか心地いい。自分もこれまでのさびしい町の記憶がぽつぽつと蘇るようだった。 日常生活では雑事にかまけて紛れているだけで、人の世の底には常にさびしさが流れていて、旅の途上ではそれと純粋に向き合えるのだ、という意見にはしみじみ同感。

    0
    投稿日: 2025.04.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    蓮實重彦や吉田健一が書いたような「手すさび」「随筆」を想起しつつ、しかしこの著者が記すものにはそうした「人を食った」「悪意」がないなと思う。こちらが思わずむかついたり笑ってしまったりするような底意地の悪さがなく、代わりにどこか実直な生きづらさ・生真面目さを感じたのだった。その意味では意外とこれは堀江敏幸のような書き手の誠実・篤実な回想に通じるものであり『おぱらばん』『熊の敷石』が好きな人なら気に入るものなのかもしれない。ここにいる、ということそれ自体も疑わしくなり掘り返す記憶がどこかの別世界・妄想の彼方へ

    1
    投稿日: 2023.08.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    いつも行く図書館にイベント棚があり、そこで『旅の本』として紹介されていた一冊。 パラパラと中を見ると、国内外の19の町+夢での町を書いた旅エッセイのよう。 いくつか気になる町があったので借りてみた。 「さびしい町」とは、どうということのないふつうの町のこと。 と著者は書いている。 ごく当たり前に人々が生活している町です。 そしてもちろん、さびしい町が好きだから、このエッセイを書いたのでしょう。 著者の松浦さんはフランス文学者でもあるので、フランスはもちろんの事、多くの国々を訪れている。 これは、かつて通り過ぎたさびしい町のあれこれについての「昔話」だそう。 なので旅の詳細は曖昧なのに対し、くっきりと記憶に刻まれているその町の空気や感じた事などは丁寧に記されている。 そしてほとんどの旅は、奥様と一緒なのが素敵。 連れがいるからこそ出来る体験もあるはず。 中には「まだ妻ではなくガールフレンドだった女性」とのワクワクした旅もあった。(韓国・江華島) ーーーあの韓国旅行はわたしにとっての「始まり」の……人生にいくつもある複数の「始まり」の……一つだったと今改めて思う。(p190) どの町も細かく描写されている訳ではないが、奥行きのある文章が心に染みる。 読者は昔話を聞きながら、自分の内側を見つめ、人生と向き合う(振り返ったりこの瞬間を感じたり、明日を想像したり)一冊になるのかもしれない。

    57
    投稿日: 2023.05.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    220607*読了 江國香織さんの講演会で、2021年に読んだおすすめの本として紹介されていたのがこの本。 うらやましいほどにたくさんの国、町を訪れられていて、いかにも観光っぽい場所にももちろん行かれている。 でも、ここで綴られているのは、「さびしい」町。 この「さびしい」というのは、わざわざ訪れたのに見たいものが見れなかったり、人気がなかったり、果てしない道のりを車で運転してやっと辿り着いた町がうらぶれていたり…。 そして、地域色はあるものの特徴に乏しい「普通」の町だったり。 江國さんも印象的なシーンとしてあげられていた、ナイアガラフォールズ事件は、この連載の初回、この本の冒頭の町に選ばれているだけあり、私の心にも深く残っています。 私が思い出す「さびしい」町は外国だと、真冬のフィンランドのロバニエミ。 氷点下25度、あたり一面雪で覆われた道路を肩をすくめて渡る人。さびしいショッピングモール。 そんな、読み手にとってのさびしい町を思い出させてくれる本でもあります。 松浦さんは大学の教授をされていたし、詩人でもあり、小説家でもあり、書き続けてこられた人。 そんな人ならではの豊富な語彙で語られる「さびしい」町は、確かにさびしいんだけれど、行ってみたくなります。 賑やかな観光地も素敵だけれど、そのすぐ近くにそっとある「さびしい」町にも訪れたい。 記憶に蘇る「さびしい」町って、なんだかとても愛おしい。 雨の降る日にお家にこもって読みたい本だなぁ。 江國さんに教えていただけたからこそ、知って読めた本。そのご縁に感謝。

    2
    投稿日: 2022.06.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    村上春樹ライブラリー階段の本棚にあったのをパラパラめくり、ぜひ読もうと思った一冊。 名著『名誉と恍惚』の作者による、紀行文…なのかな。 旅の本が好きなのだが、この本は単なる町の風景や出来事の描写だけでなく、様々な思索やよしなしごと(と本人は仰るだろう)が織り交ぜられた文章が魅力である。 一番行ってみたいと思ったのは新京=現・長春であるが、そんな感想を持つべき本ではないような気もする。 「吉田健一にとって余生とは、何かが終わった後の時間である以上に、むしろ何かが始まる時間のことだった」 「『余生があってそこに文学の境地が開け、人間にいつから文学の仕事ができるかはその余生がいつから始まるかに掛かっている』」 というような言葉と引用、 そして早世した私小説作家阿部昭への思いなどが印象に残った。

    1
    投稿日: 2022.04.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    おそらく、旅に関するエッセイとしては極上の部類に入るのではないか。その旅の細部はほとんど忘れてしまっても、その中でくっきりと記憶に留まっている事柄の記述は、読者があたかも追体験するような錯覚を起こさせる。

    0
    投稿日: 2022.04.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    講演会で江國香織さんがオススメしていた旅エッセイ。旅エッセイというと旅行先で起きた事件を面白おかしく綴っているものが多いイメージだけどこれは旅行先で筆者が味わったひたすら寂しい気持ちが綴ってある。読んでると「何やってるんだ…」ってなんかいたたまれない気持ちになる。読んでて台湾に行く時に飛行機のエンジントラブルで乗る予定だった便が欠航になった時を思い出した。言われてみれば旅行での楽しい記憶よりそういう寂しい気持ちになった時の記憶のほうが明確に残ってる。他人の寂しい気持ち知る機会なんてあんまりないからそういう意味では新鮮な作品、でも知らない土地の知らない人の寂しい話だからちょっと読み辛さはあった。

    2
    投稿日: 2021.12.31