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魔術師(乙女の本棚)
魔術師(乙女の本棚)
谷崎 潤一郎、しきみ/リットーミュージック
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総合評価

20件)
3.4
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    谷崎潤一郎作 魔術師 谷崎潤一郎初めて読みました。 旧漢字で語句も難しいですが、挿絵によって内容が今風に変わってみえてよかったです。

    6
    投稿日: 2025.11.23
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    2025/11/08 p.20  やや長い間、私は唯、無数の人間の雲の中を嫌応なしに進みました。行く手を眺めると、公園は案外近い所にあるらしく、燦爛としたイルミネエションの、青や赤や黄や紫の光芒が、人々の頭に焦げつく程の低空に、炎々と燃え輝いているのです。道路の両側には、青楼とも料理屋ともつかない三階四階の楼閣が並んで、華やかな岐阜提灯を珊瑚の根掛けのように連ねたバルコニイの上を見ると、酔いしれた男女の客が狂態の限りを尽くして野獣のように暴れていました。彼らの或る者は、街上の群衆を瞰おろして、さまざまな悪罵を浴びせ、冗談を云いかけ、稀には唾を吐きかけます。彼等はいずれも外聞を忘れ羞恥を忘れて踊り戯れ、馬鹿騒ぎの揚句には、蒟蒻のようにぐだぐだになった男だの、阿修羅のように髪を乱した女だのが、露台の欄杆から人ごみの上へ真倒まに落ちて来るのです。そうして見る見る野次馬のために、顔を滅茶苦茶に搔き挘られ、衣類をずたずたに引き裂かれて、或る者は悲鳴を放ちながら、或る者は絶息して屍骸のようになりながら、水に浮かぶ藻屑の如く何処までも何処までも運ばれて行くのです。私は、自分の前へ落ちて来た一人の男が、逆立ちになって二本の脛を棒杭のように突き出したまま、止めどもなく流れて行くのを見ていました。その男の足は、四方八方から現われて来る無頼漢に手に依って、最初に先ず靴を脱がされ、次にはズボンをぼろぼろに破られ、果ては靴足袋を剝ぎ取られて、打ったり抓ったりされるのでした。それから又、酒ぶくれに太った一人の女が、ジオヴァンニ、セガンティニの「淫楽の報い」という絵の中にある人物のような形をして、胴上げにされながら、「やっしょい、やっしょい」と担がれて行くのも見物しました。 「この町の人たちは、みんな気が違っているようだ。今日は一体、お祭りでもあるのかしら。」 と、私は恋人を顧みて云いました。 「いいえ、今日ばかりではありません。この公園へ来る人は年中こんなに騒いでいるのです。始終このように酔払っているのです。この往来を歩いている人間で、正気な者はあなたと私ばかりです。」

    0
    投稿日: 2025.11.08
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    乙女の本棚シリーズの一冊。 谷崎もこんな作品を書いていたんだね。 乙女ではない者からいくつか言わせてもらうと、まずは現代の読者が読むのに、難しい言い回しがある。なんとなく意味はわかるものも多いので、このままでもいいといえばいいのだけど、これは新字体にしたほうがいいのではないかなとか、ルビをふったほうがいいのではないかなとか、読んでいる間にちょっとだけ気が散ってしまう時間ができてしまったかと。 二つ目。表紙で魔術師の容姿を見せてしまうのはどうなのか。魔術師という言葉から受ける印象と、実際に魔術師を見たときのギャップも、登場人物の心理に関わっているはず。読者にもそのギャップを感じさせたほうがよかったように思うのだけど、表紙をこのような感じにしたいのは理解できる。乙女の本棚なんだもの。 三つ目。注や解説をつけないのはポリシーなのかもしれないけど、やっぱりなんかほしいのよ。この短編が谷崎の中ではどんな位置づけにあるのかとか、こういうところに気をつけて読むとより作品を楽しめるとか、次に読むならこの作品とか、そういうこと。 けっこう人生経験を積んだ私でも、読めない漢字がいくつかあったことは内緒にしておきたい。

    0
    投稿日: 2025.06.14
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    谷崎潤一郎の『魔術師』と素敵なイラストがコラボする、乙女の本棚シリーズ17巻です。 ヨーロッパから遠く離れたどこか…東京のような都で仲良く歩く「私」と恋人でしたが、恋人が公園へのデートを提案したことで物語の歯車が回り始めます。 「私」は町に公園があることを知りませんでしたが、そこに人々を魅了する「魔術師」がいることを恋人が語りだします。 広場を抜けて魔術師の幻惑を求める群衆が集まる小屋へ入る二人。 生きた蛇の冠を頭に巻き、ローマ時代のトーガを身に着け、黄金のサンダルを穿いた魔術師がそこにいました。 男性なのか女性なのかわからない、両性の美しさを持つ魔術師に「私」は…。 不可思議で美しい純文学を不可思議で美しいイラストが彩り、世界観を更に色濃く描く良書です。

    15
    投稿日: 2025.04.29
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    幻想的な絵が素敵だが男の人があまり好きじゃない。 3冊目でお腹いっぱい。の乙女の本棚、まだまだあるが全巻読みたいがいい回しが分からなすぎて挫折しそう。

    1
    投稿日: 2024.08.11
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    しきみ先生の魔術師、すごく…イマドキです…。 終わり方がなんかいいよね、これも…。 2人はどうなってしまったのか、それは魔術師のみが知る…。

    0
    投稿日: 2024.08.09
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    谷崎潤一郎文学忌、潤一郎忌 1917年の作品 お耽美 美こそ至宝 夢か幻想か 魔術師の小屋ある公園 そこはエキゾチックな多国籍 集まる観客の人種さえもわからない 魔術師はあらゆる種族の美を併せ持ち 中性的な小悪魔的魅了 美しい者による洗脳 彼の美への生贄 自ら生贄となる者達 コラボはしきみさん いーね! 谷崎潤一郎は、とにかく綺麗がお好きなのだ

    71
    投稿日: 2024.07.30
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    結末に驚いてしまっイラストもあるからなんとかついていけてるなぁと読んでいたら、予想外の結末だった。幸せになっているといいな。

    6
    投稿日: 2024.06.13
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    浅草の繁華街と、本当にはないテーマパークのような存在のある世界観が、同じ乙女の本棚のシリーズにある江戸川乱歩の「押絵と旅する男」と似ている気がした。 この彼女の存在がすごく嘘っぽい。本当に彼のことを好きなの? 何で魔術師のところにそんなに行きたがるの? とよくわからない。そして、二人で魔術師のもとにたどり着き、すぐに魔術師に魅了されて半獣人にしてほしいと言い出す彼も彼だ。そんなに、今に不満足だったのだろうか。 この作品は正直、何を言いたいのかちっともわからなかった。ファンタジーは、世界観を楽しむものなのだと思うが、何か教訓めいたものがないと、私は物足りなさを覚えてしまうようだ。そのことに気がつけたのは収穫だった。 最後に、二人で半獣人になったのを見ると、彼女はやっぱり彼のことを好きだったんだと思える。けれど、蝶になった奴隷や、虎の敷物や燭台になった彼らは、魔術師の近くにいられて使ってもらえるなら人間でなくても幸せと言っていたが、ホントなのだろうか。人間のほうがよくないですか? と思ってしまった。 イラストが綺麗なのはとてもいい。人間としての生を手放してもいいと思わせてしまう魔術師の力の恐ろしさが、妖しく描かれている。 この話は、安易に手放しちゃいけないものもあるよ、人として生きられれば素晴らしくない? と教えてくれているのだろうか。 他の方の感想を知りたくなった作品だった。

    4
    投稿日: 2024.06.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    は? そこで終わりですか?? 愛、というより執着の話かなぁ? 【暫くの間、私は有頂天になって、嬉し紛れに舞台の上を浮かれ廻っていましたが、程なく私の歓びは、私の以前の恋人に依って妨害されました。 (中略) いきなり自分の頭の角を、私の角にしっかりと絡み着かせ、二つの首は飛んで跳ねても離れなくなってしまいました。】 魔術師に魅了された男は、恋人を振ってまで醜い異形(半羊神)の姿にしてもらい魔術師の奴隷にしてもらって歓んでいたのに、恋人が追っかけて来て同じ姿にしてもらってくっついてくる、という。 ストーカー? 違うか。諦めの悪い彼女。 まあ、いろいろやってもそのうち姿は戻るだろうし、むしろ戻ってからの方がゴタゴタしそうだよね。別れるの、別れないの、取ったの、取られたの、と。 魔術師さんがうんざりしそう(笑)

    23
    投稿日: 2024.04.24
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    現代語訳で絵まであり、絵は有名なデザイナーさんが描かれていて美しいです。最初は不思議な国に迷い込んだような不思議な感覚から最後は愛の物語だと受け取りました。

    0
    投稿日: 2023.10.29
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    わからん ちーーーーーっともわからん ただただ美しい文章を書きたかっただけなんじゃね?と思ったりしました だとしたらとても美しい世界観がとても美しい文章で綴られていると思いました あれ?案外この感想って的を得てるんじゃね? 潤ちゃんどうなのよ?(馴れ馴れしい) というわけで乙女の本棚シリーズ10冊目は谷崎潤一郎の『魔術師』でした

    53
    投稿日: 2023.10.06
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     乙女の本棚シリーズから、谷崎潤一郎さんとしきみさんのコラボ作品「魔術師」です。しきみさんのイラストは本当にいいです。今作は可愛い感じですね。  ストーリーはある恋人たちの話…。ある公園の一角に小屋を出している魔術師の妖艶な魅力により、どんなに愛し合う恋人達でも、その仲を引き裂かれてしまう噂を聞いた2人…。こんなに愛し合っているのだから、魔術師のされるがままにはならない…と、彼女は言いだしそれを確かめてみようと一緒に魔術師の小屋を訪れる…。二人の愛の行く末は??  今回はネタばれしません(^-^;)。前に読んだ「秘密」でもそうだったけれど、彼女はどこまでも健気で愛を信じているのに…なんで彼は??あちゃ…これ少しネタばれしたかなぁ!少し魔術師の元へ行くまでが長く感じしました。でも、どこまでも彼女の愛の清らかさが引き立つ作品だと感じました。ラストのページがすごくいいです。

    43
    投稿日: 2023.07.20
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    呆気なく男性が魔術に墜ちてしまう。恋人の彼女の決断はあまりにも重い。彼女の気持ちを考えるとあんまりだ…とも思うけどこの結末の未来がそれで良かったと言えるかはわからないが彼女が望んだなら良いのかな…って何とも寂しいきもちになりました。 魔術師は罪深い。

    0
    投稿日: 2023.06.26
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    乙女の本棚シリーズ。 或る怪しい公園に小屋を出した若い美しい魔術師に会いに『私』は恋人を伴って行く。 物語が唐突に終わるのでこんな幕の下ろしかた有りなの?と呆けた。 初めて谷崎氏の作品を読んだが耽美の一言に尽きる。

    1
    投稿日: 2023.03.14
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    或る繁華な街区の果ての、物淋しい一廓に存在する妖しい見世物小屋では、魔術師による魔術を披露する舞台が公演されている。 そういうものに惹かれる好奇心旺盛な彼氏にくっついて、どこまでも添い遂げるつもりの彼女がいじらしくて可愛かった。恋してる乙女はたしかにこんな感じなのかもなぁ。 〈「わたしにはあなたという恋人があるためなのです。恋の闇路へ這入った者には、恐ろしさもなく恥かしさもない。」と云うでしょうか。〉 そうやって盲目状態のまま二人で永遠になれたら、それはそれである種の恋の完成なのだと思う。

    6
    投稿日: 2021.11.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「乙女の本棚」シリーズ。谷崎潤一郎『魔術師』とイラストレーター・しきみ、編。 恋人と公園の魔術師の小屋を見に行って、二人して半羊神になっちゃった話。幻想的な小説。正直、よくわかんないけど。イラストがなかったら、全然理解できないかも。ただ文章はやはり美しくて、街の描写とか面白いよね。基本、昔の文学って、そういうのを楽しむもんだと思っている。

    2
    投稿日: 2021.06.03
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    <乙女の本棚>シリーズの谷崎潤一郎第2弾。今作の絵師はしきみ。妖しい、妖しい。惹きつけられる。そして、狂おしい。これでは魔術師の意のままに操られてしまう。自分も魔術にかかったか。

    21
    投稿日: 2021.05.13
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    めくるめく官能と妖艶さの渦巻く大人のファンタジーです。日本人青年が麗しの恋人に誘われ、異国の街のとある公園を訪れます。公園のいたる処では、男女入り乱れての酒池肉林、阿鼻叫喚の宴が繰り拡げられいました。先導役の彼女が目指したのは<魔術師>の館で、貴族や麗人たちがひしめき合いながら、固唾を飲んで壇上の魔術に魅せられているのでした・・・。 至高の愛のあり方とその行方を、華麗で幻想的なマジシャンの手さばきで<谷崎潤一郎>が披露した<乙女の本棚シリ-ズ>の一冊です。

    4
    投稿日: 2021.03.27
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    年中お祭りのように騒がしい公園、夢の中のやうな重苦しい感じ。 大きな赤鬼の頭のような入り口の魔術師の劇場。 その中では、王のような魔術師がいて(イケメンだという)魔術師の暗示で観客全体に錯覚がおき、時間短縮の妖術をかけられる。 魔術師は人の姿を変える術が使える。 観客の女性がクジャクに変えられてしまう。 主人公の彼も彼女と一緒に半羊神にされてしまう。 怖いが美しい文章と美しいイラストに引き込まれた。 日本の名作に今時のイラストがついた「乙女の本棚シリーズ」他の作品も読んでみたい。

    2
    投稿日: 2021.03.23