
総合評価
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powered by ブクログニューヨークの街並み、96丁目を曲がってとか109丁目の角を曲がってとか、ほとんど街並みのイメージが出来なかったけど、依頼を受けた私立探偵の動向が気になって仕方なかった。ドン・キホーテの解釈や失楽園、新バベルがとうとか難しい話も出てくるけど、そこはあまりこだわらなければ十分楽しみた。物語に著者のポールオースター自身が登場すると言う変わり種の本。のめり込んで自分を失う怖さを味わった。
4投稿日: 2025.11.15
powered by ブクログデビュー作から異彩を放っているポールオースター。先が気になる予想できない展開に加えて類稀なる表現力と文章力。訳者もすごい。最後の物語の締め方も良かったです。
11投稿日: 2025.10.29
powered by ブクログアメリカの近代作家オースターのニューヨーク三部作、鍵のかかった部屋と幽霊たち、とで3冊。 話的には繋がってはいないけれど、3冊に共通するのは、ニューヨークという現実の世界の中で感じる非現実感。読み進むと、幻想的な迷路にはまってしまったような感覚に陥ります。 どの話も推理小説のようであって推理小説ではありません。主人公は、誰かを探す、観察する、探偵、という体裁をとりながら、ひたすらある人を追ってニューヨークブルックリンの街を徘徊します。 相手を知ろうとすればするほど他人とは何かと考え始め、他者の不確かさが深まり、延いては自分と他者との境界はあるのか、自分とは何か、となります。 結論もなければ謎の解明もありませんが、3冊を通して読んだ時に、3冊の中に隠れた言葉の巧みな関連性、積みあがった言葉が消えていく感覚、最終的に自分と他者の境界が消失する、という不思議な感覚を体験することができます。 とても不思議な世界観。
0投稿日: 2025.10.15
powered by ブクログクインの失われた息子と妻の話は最後まで語られない。その説明の不在こそトラウマの証拠だろう。 ピーターとヴァージニアは、おそらく彼の失われた家族を暗喩している。 ダニエル・クインのイニシャルが、ドン・キホーテと同じであるように、これは狂人、あるいは狂人に見える人の物語であり、孤独に陥っていく「浮浪者」あるいは「狂人」の内面を描いた物語だろう。 最初は、ピーターの父である教授がそのように見える。しかし次第にクイン自身がそれと同じ境地に陥っていくのである。 教授と同じ顔をした(立派なみなりをした)別の人間は、おそらくそうではなかった別の人生を生きる自分の暗喩である。クインにとってのオースターも同じであった。
0投稿日: 2025.09.10
powered by ブクログポストモダン的な話とかドンキホーテの話とか聖書の話とか教養がないからむずい。これ推理小説なのか? ムーンパレスと雰囲気近いけど、ムーンパレスの方が読みやすかった気がする。 ニューヨーク行く機会あったらもう一回読みたい。
6投稿日: 2025.09.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ある小説家クインがポール・オースターという探偵に間違えられた電話が来て、演じ切ることを決意する。幼少期から言葉を与えずに監禁された子供と、そうすることで神の言語が現れるとした父親に関する事件だ。数年前に父親から殺害予告じみた手紙がきて、もうすぐ精神病院から父親が帰ってくるから監視及び警告してくれという依頼だ。クインはそれに則り数週間スティルマンをつけることにする。最初にスティルマンをみつけ駅でつけていた時に、スディルマンは2人に分裂していた。クインは直感的に古びたように見える方のスディルマンを選ぶ。そこから奇妙な歩き方をし、ガラクタをひろうスディルマンを、赤いノートにしるしながらつける。ストーキングというものは相手と一体になることだ。しかし一切怪しさがなく、2週間が経った時とうとう接触してみることにした。最初にはベンチで、次は喫茶店、最後に大岩の上?(うろ覚え)。話しかける度にスティルマンはクインのことを忘れていた。最後の時には息子を名乗ってみたら信じ込み、格言と謝罪と愛を与えてくれた。 ここから話が急カーブ。スティルマンを1晩のうちに見失ってしまった。それをヴァージニア(依頼人の嫁)に伝えることを渋り、本来のオースターという探偵を探すことにする。同姓同名の人物がいたので尋ねてみると、自分の本を読んでいる作家だった。ここで劣等感を感じ、さらにはヴァージニアからのでうわを無視してしまい転落し絶望。何とか気を取り戻して、ヴァージニア夫妻の家を衣食住を犠牲にしながら2ヶ月見張り続けた。ある日金が尽きてそれも終わり、オースターに依頼金の譲渡を取り消す用取り測ろうと電話をしたところ、スティルマンの自殺を告げられる。自室呆然としつつもなんとか我が家に帰ると、そこは取り払われ、新しい女が住んでいて、今は亡き息子と嫁の写真諸共すてられていた。最後にヴァージニア夫妻の家を尋ねるも又もぬけの殻。そこで、スティルマンをつけていた時にや事件記録として最初から使っていた赤いノートに思考を書きながら、終わる。オースターの友人がこの赤いノートを発見し、このガラスの街という本を書いた。 ものすごい急展開。ポール・オースターの本は前半と後半で内容がうってかわり驚く。神の言語やスティルマンの不気味さは後半には消えていて、1度の間違いや怠慢自己欺瞞が招く悲劇や、オースターによく見られる父性愛がでてきた。これを味わいたいので良し。たださすがに前半後半どちらも不完全燃焼感がある。1連の物語を読むと言うよりも、文章や断片的な情景を楽しんだ方が良さそう。探偵小説は全てに意味があるからいい、だとか、言語についての言及や、神の言語だとか、放浪だとか、なにより老人と中年男性の親愛だ
0投稿日: 2025.08.07
powered by ブクログ思索の過程に浮かんでは消えてゆく言葉の数々を残らず捉え、文字として残す。それら言葉の連なりは、もしかしたらそれ自体が物語なのではあるまいか。もう一人の自分が居るとして、その存在を捉えることができたなら、僕は彼の人生を同じく歩いて行くことができるだろうか。世の中は不思議で、不思議なものだと決めてかかれば、さほどでもなく、何事にも頓着しなければ、しないなりに、どうにも説明のつかない事態に巻き込まれてしまうこともある。先入観では語り尽くせないのが人生で、世界は、その目に映るすべての物事でしかない。想像はあくまで想像で、現実にリンクしたら、それは想像ではなくなってしまう。あれは、こうだ。それは、ああだ。皆最初から決めてかかるけれど、ならば答えは、すでに目の前にある。
1投稿日: 2025.07.06
powered by ブクログほぼジャケ買いで購入。 色々な謎が残り読後何ともモヤモヤする。 そもそも事件そのものもはあったのか。 主人公の見ていたものは、全て孤独な彼自身が生み出した幻覚ではなかったか? 最後に出てきた一人称の「私」は誰なのか、「私」が書いた体になってるが作者はポール・オースターなのはなぜなのか。 ものすごく自分が落ちたとき、また読みたい。
0投稿日: 2025.06.07
powered by ブクログひょんな間違い電話から探偵家業に手を出し、奇妙な白紙の世界に足を踏み込んでゆくダニエル・クイン。 この物語は必ずしもバッドエンドではないと憶測する。僕にはクインが、初めからこの謎の世界に憧れていたと思えるのだ。 映像でしか見たことのない、レンガとガラスの壁に囲まれたニューヨークの街並みが朧げに眼前に迫ってくる。憧れと不思議な懐かしさを覚える風景。 僕はまた、この本を一種のオジサン文学の萌芽と見たい。勘違いしたクインが、若い女性に蔑まれるシーンがあり、滑稽な笑いをもたらしている。 この人の作品を、もう少し読みたくなった。
4投稿日: 2025.06.07
powered by ブクログ探偵小説と言われれば眉をひそめたくなるし、純文学かと言われれば「純文学って何ですか?」と言い返したくなる。 ほんのイタズラや出来心に端を発した物語を読者は追うだけだが、大きな事件など一個も起きないのに不思議と先が気になって仕方がない。 一応、謎はあちこちに出てくるが推理小説のようにトリックや伏線として活かしていくわけではない。余白か、あるいは主人公の思考を観察・あるいは描写するものとして登場するのみだ。 そんな不思議でヘンテコな物語なのに結末では奇妙な寂しさがあった。
0投稿日: 2025.05.18
powered by ブクログある日、ミステリ作家のクインのもとに間違い電話がかかってきた。電話の向こうの人が発した第一声は、「ポール・オースターですか?」。私立探偵のポール・オースターとやらをクインは知らなかったが、常々ミステリを執筆するとき探偵になってみたかったため、その私立探偵のふりをすることにした。そこから不思議な依頼をうけ、歯車が狂い出してゆく。みなさんも知っている通り、ポール・オースターはこの本の作者の名前でもある。私好みのメタ・フィクションの香りがするぞ……。ページをめくる手が止まらず、秀逸な展開に唸った。
1投稿日: 2025.05.04
powered by ブクログ探偵小説だとは感じなかった。入れ子構造になった物語で、途中、ジョイス的なものが顔を覗かせてから一挙に面白くなった。
0投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログ妄想と現実が入り混じり、 探偵小説の体から始まるが、途中から 己の狂気に閉じ込められた人間像について、 リアルに描かれていて文学作品のよう。 途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、 最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、 ポールオースターの友人なる『私』の存在が、 明らかになる。 まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が ストリーテラーだったというオチ 同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ とあるように、幾十にもなっている入れ子の 小説になっている。 読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る 読書感だった。
19投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログ最後まで真相は掴めず。それが読み手の想像を掻き立てるのだろうが、不完全燃焼にもなってしまう。 なかなか強敵だった。ポールオースター著書は繰り返し読むと新しい考察が生まれるから、少し時間を置いて再読したい。 叶うならニューヨークの街の中で読めたら最高ですね。
1投稿日: 2025.04.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2025/3/20読了 『ムーン・パレス』以来のポール・オースター。 探偵小説みたいな粗筋だが探偵小説ではない。そもそも、主人公のクインは“探偵”としては何も解決しないし、読者に対しても何があったのかは明らかにされない。もっと言えば、ポール・オースターの友人である「私」がクインの書き残した赤いノートの内容を元に書き起こしたというこの物語の体裁からすると、全てがクインの妄想の可能性もある。示唆的なのは、(作中人物)ポール・オースターによる『ドン・キホーテ』論で、ナンセンスな言動でもそれが人を愉しませるものなら許容されるということを、ドン・キホーテ自らが狂気に墜ちたフリをして実験していたというもの。クインもドン・キホーテも、片や探偵、片や遍歴の騎士という物語中の人物になりきった点で似た様な存在として描かれている(作中でもいわれているが、2人共イニシャルはD・Q:Daniel QuinnとDon Quijote で、類似性が強調されているように思われる)とすれば、この物語はクインの“自作自演”の可能性もありそうだ。――と、色々解釈の余地がありそうなお話だったが、真相は、個々がガラスのように無機質で透明になってしまう都会の中に消えてしまって、そのまま……?
16投稿日: 2025.03.23
powered by ブクログクインという作家が残した赤いノートをもとにオースターの友人である「私」という人がこの物語を書いた体になっている。けど、そもそもクインの体験したことが本当かどうかも分からないし、仕事をクインに依頼したピーターたちの存在、尾行対象だったスティルマン自体が本当に追っていた人物かどうかも、なにもかもがあやふやで消え入りそうなお話だった。それはまるで冒頭のニューヨークという街の特性を表すかのように。 (途中色んな古典作品の話(ドン・キホーテなど)がでてくるのだけれど、それも知っていたらもっと面白く読めたのかもしれない)
18投稿日: 2025.02.13
powered by ブクログ以前から気になっていた作家の一人、P・オースター。お亡くなりになったタイミングで手に取ることになったことを激しく後悔した。これは20代から30代のうちに出会いたかった作品で、作家だった。ニューヨークの街の迷路へ入り込んでいく。こんなにもみずみずしくニューヨークの街が描かれている作品があるだろうか。とらえどころのない物語。ちょっとした狂気を感じられるのけれど、それがホラーやサスペンス調ではない。だからこそ、凄みを感じた。アメリカ文学を深掘りしたくなったし、それとは別にドンキホーテをちゃんと読みたくなった。
1投稿日: 2025.01.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
物語の中に著者が出てくるメタ要素がある中で、同じくメタ要素のあるドン=キホーテをとりあげるというユーモアさもありつつ、妻と息子を失った主人公の虚無感ゆえの自己の抽象化と、そこから起こる探偵物語のような展開に惹き込まれる。 どうなっていくんだろうと没入するほど、奇妙に歪められた世界を見ることになった。 結論から言うと解決はされていない。 俎上に載せられた問題は何もわからないまま、物語の幕は閉じる。 真実の物語なのだから、常に答えが用意されているとは限らないよね、という感じなのか。 それでも、面白い。 個人的な読字体験として、プルーストとイカ〜読字は脳をどのように変えるか〜を併読していて、文字や言葉を人間がどのように習得していくのかについて考えていたので、作中のスティルマンが犯した実験や考察については興味深く読めた。 読書を通じて得られる、別の物語が別の物語とシンクロする体験は大好きだ。
1投稿日: 2024.12.15
powered by ブクログ探偵小説のようでそうでもない ひとりの男の「間違い電話から始まった」 物語 「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路」 やっぱり気になる 読み終えたあともっと 気になる ゼロは始まりか否か
41投稿日: 2024.12.08
powered by ブクログミステリーなのか、自分には読解しきれない本だった。訳ではなく原文で読めばわかるだろうか。 でも、これを書ける人もまた異常だと思う。
0投稿日: 2024.11.23
powered by ブクログポール・オースターの小説はいつも破滅的で諦観していてある程度一貫性が無く、実際に起こる出来事ではなく物語は人の脳内で進むので、現実逃避に効く。 radioheadの小説版って感じ。 本書はオースターの中では比較的理路整然としてビギナー向けといった印象。
2投稿日: 2024.10.15
powered by ブクログオースター初期、ニューヨーク3部作のうち「孤独の発明」と「幽霊たち」は読んだ記憶があるのだが本作は未読。追悼特集で平積みになっていたところでついに手に取った。 探偵小説のような体裁で書かれているが、探偵小説のような謎解きも、事態の進展もない。 馴染みがありそうな例えをするならば、村上春樹的な不思議空間に迷い込み、探偵のようなことをさせられた男の物語といったところだろうか。 いささか実験的小説のような印象も受け、いろんな手法とテーマが混ざり合っているのだが、敢えて軸となるテーマを探し出すとするのであれば「言葉」と「狂気」と「認識」だろうか。 虐待を受けて育ったクライアントが用いる違和感のある言葉。 虐待を与えた側が過去に記した言語をテーマにした(バベルの塔)論考。 そして物語終盤で取り上げられる、ドンキ・ホーテの狂気に関する論考。 最終盤で狂気の領域に陥った主人公の、狂気ではないように見える認識。 合ってるかな、わからないな。 オースターなので、初期の作品とはいえ文章はとても整っており美しく、読みやすい。 ただし、読みやすいのと理解しやすいのは全く別。 本を閉じた後、だいぶ考えた。 もちろん、こういう考える時間があるのは読書の醍醐味であり、それを提供してくれたという点でとても素晴らしい作品だと思っている。 「オースター読んでみたい!」という人に最初にお勧めできる作品ではないが、彼の作品が好きで、より彼の作品を深く吟味したいと思う人には是非読んでみて欲しい。 短いし、チャレンジはしやすいと思う。
14投稿日: 2024.09.22
powered by ブクログ主人公ダニエルはその目を通してニューヨークを見つめ、その耳でさまざまな声を聞き取る。言うなれば感覚器官を総動員させて外部に自分を同化させんと試みているかのようだ(ただし執拗な描写というよりは、むしろスパスパと端正に整理していく文体を選択しているところがいかにもオースターだが)。その外部に自分を委ねる作業を通して、ダニエルは自分自身を構成する要素が次第にほどけていき自分が「ゼロ」「虚無」になるのを感じるだろう。そうして途方もない世界の広がりの前に敗北を喫する作品として読むと、世界の持ちうる魅力に気付かされる
0投稿日: 2024.09.07
powered by ブクログ9/5 人はみなあるべき姿を偽装して生きている。この作品の中のニューヨークは透明で人は卵が並んでいるかのように瓜二つ。自分に課された仕事の成果を、不透明な成果を追い続け街と一体になる。 スティルマンが行った子供に対する使命的な虚飾は、クイルが触れてしまった折にその運命に執着する。クイルの空っぽだった心に芽生えた萌芽を最後まで疑いつつも捨てきれず、引きずり回し擦り切れたクイルの心身は自らを透明な街に消えていった。 著者の人生感は途方に暮れているが、文章はステージを駆け回るダンサーのように自在に語っている。苦い終わり方だけが執拗に頭に残ってなんだかモヤモヤしている。
0投稿日: 2024.09.05
powered by ブクログ難解だと感じるのに面白いからかするする読み進められた。 いかにもミステリーといった始まり方だったから途中まではこの事件の真相は一体どこにあるんだろう、どうやって解明されるんだろうとワクワクして読んでいたけどそういう次元の話ではなかった。 最後の方急に物語が動くけどラストシーンであれはあの時の伏線だったのか!と思う瞬間がありそれがとても楽しい。 結局どこに行ったんだろうね。途中で語られてた街にいる様々な人たちと同じようにニューヨークの街に溶けて消えてしまったみたい。 三部作は幽霊たちを先に読んだんだけど本作も同じく書くことの苦悩を感じた。
0投稿日: 2024.07.30
powered by ブクログ読書会課題本。正直、あまり楽しめなかった。謎解き要素は無理やり感があるし、精神を病んでいる人のセリフを何ページもダラダラと書く意図もよくわからず、ただ不快なだけだった。読書会自体も「意味不明」という感想が多く、あまり盛り上がらなかったと思う。
0投稿日: 2024.07.28
powered by ブクログ出だしの一節は印象的だ。物語が進んでいくと、私立探偵、殺人、監禁生活等ミステリー要素の言葉が出てくる。癖のある人物が登場することもあり、何かしらの事件が軸になるものと思いきや、安部公房さん的な不思議な物語に転換していく。 都市生活における存在とは何だろう。空想と現実の境界が溶けきるころに物語が終わる。
0投稿日: 2024.07.04
powered by ブクログニューヨークに暮らすダニエル・クインは、かつて探偵小説で名を馳せた作家だった。しかし今では、世間を驚かせるような作品を書く気力もなく、匿名でミステリーを書いて生計を立てている。そんなクインの元にある日、助けを求める電話がかかってくる。「探偵のポール・オースター氏に事件を解決してほしい」という依頼だ。しかし、ポール・オースターなる人物には全く心当たりがない。間違い電話だと思って切ってしまうが、その後も何度も同じ電話がかかってくる。仕方なくクインはポール・オースターという探偵のふりをして、電話の主に会うことにする。 待ち合わせ場所でクインを迎えたのは、ヴァージニアという女性だった。彼女は依頼人のピーター・スティルマンの妻であると言う。スティルマンは幼い頃から外界から隔離され、暗い部屋で過ごした過去を持つ人物だった。そんな彼を救い出したのは彼の父親であるスティルマン氏だが、現在は精神病院に入院しているという。スティルマンは闇の中で育ったせいで他者とのコミュニケーションが困難で話も支離滅裂なありさまだった。そこでクインは妻のヴァージニアから依頼内容を聞くことにする。ヴァージニアの依頼は、間もなく退院する父親から夫を守ってほしいというものだった。 …‥‥・・‥‥………‥‥・・‥‥…… 「そもそものはじまりは間違い電話だった」という書き出しから始まる本書は、いかにもミステリー仕立てという感じで、レイモンド・チャンドラーのようなハードボイルドな探偵小説の雰囲気を漂わせています。しかしそれも最初のうちだけで、探偵小説やミステリーの趣からは徐々に離れ始めます。というのも、ミステリー作家であるクインが、自分のペンネームの「ウィリアム・ウィルソン」と、小説に登場する探偵「マックス・ワーク」について思弁し、やたらと2人の人物を引き合いに出すことが増えてきて、雲行きがだんだん怪しくなってくるからです。クインにとってのウィリアム・ウィルソンはあくまで小説を出す時に名を借りる抽象的な人物であり、これに対しあくまで小説の登場人物に過ぎない探偵のワークが、なぜか実体を持っているかのように生き生きと存在感を増してくるわけです。ウィルソンがまるで人形遣いで、クイン自身は人形、そしてワークは次第にこの物語に目的をかのような生気に満ちた役回りを与えられるのです。 物語が進むにつれ、クインとウィルソンそしてワークという3人の人物によって、次第に錯綜し始める物語。このことから私は、自分自身や他者との継続的に変化し続ける対話のプロセスによって個人のアイデンティティは定義されるという、ミシェル・フーコー的なものを感じました。加えて、スティルマンに迫る父親が宗教学の権威の元大学教授というのも本書のディテールにまた彩りを加えます。スティルマン教授は自身の著書『楽園と塔』の中で、第二のエデンの園を来るべき新世界のビジョンとして描き、バベルの塔の崩壊の原因となった人々の言語の混乱を堕落したアダムと重ね合わせて論じます。そして、真の言語の復活により世界は新たな楽園として再臨すると綴り、息子への仕打ちは、エデンの園で人間が堕落する前の神の言語を発見するための実験であったという事が示唆され始めるのですが。 旧約聖書の引用からのビジョンを多分に含む本書は、象徴に富んでおり、ディック作品にみられるアイデンティティーの揺さぶりとも相まって、今までに味わったことのない不思議な雰囲気をもつ一冊と言えます。故にミステリや探偵小説を期待するとかなり面食らうことになり、決して読みやすい内容とは言えません。しかし、読んでいくうちにどんどん錯綜していくテーマだとか、主人公のアイデンティティが喪失していく(ネタバレになっちゃうのでこれ以上は書けない)展開を期待する人にとってはまたとない一冊になると思います。
0投稿日: 2024.01.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ニューヨーク三部作の一作目。 ポール・オースターに間違われた作家クインが、他人に成り代わり探偵の真似事を始める。 自分がクインであるという事実が、気が付かないうちに次第に薄れていく。肌身はなさず持っていた赤いノートだけが証拠に。まさか、こんなに儚い話だとは思わなかった。 オースターの文だから?それとも柴田さんの訳だから?流れるような文体が心地良かった。
0投稿日: 2024.01.13
powered by ブクログ2つの世界線に生きるオースターさんの邂逅で笑った。ドン・キホーテ自演説を解説し始めた時はなんでわざわざここでそんなことにページ割くんだと思ったけど、最後まで読むとその意味がなんとなくわかった、気がした。 序盤のピーター・スティルマンの独白がだいぶ狂っていた。
0投稿日: 2024.01.07
powered by ブクログあるひとが、そのひと自身であること。 それは本人がしっかり把握している限り問題にならないのかもしれない。 が、本人の把握がゆらげば、あっという間に何者かはわからなくなってしまう。 いや、何当たり前のこと言ってるんだ、と言われそうだが。 この小説を読むと、このことを考えさせられるのだ。 主人公のダニエル・クインの視点から語られるこの物語。 詩人としての活動をやめ、今は探偵小説を書いて、そこそこの評価を得ている。 ある日、彼のところに、仕事を依頼する間違い電話がかかってくる。 相手の女性は彼を私立探偵「ポール・オースター」と思っており、義父スティルマンを尾行してほしいと依頼する。 最初は人違いとして断ったクインも、ふとした思い付きで、オースターとして探偵を引き受けてしまう。 複雑な話で、あらすじなどまとめようもない。 スティルマンはヘンリー・ダークなる聖職者の書いた新バベル論に影響され、やがて神の声が聞こえるように、幼い息子、ピーターに言葉を教えないよう監禁する。 闇の中で13年を過ごしたピーターは、火事により救出され、治療を受け、彼の言語訓練士だった女性ヴァージニアを妻として暮らしている。 ピーターが「僕の名前はピーター・スティルマンです。でもそれは本当の僕の名前ではありません」と繰り返すことばが意味深長だ。 神の言葉のために、ことばを奪われて育ったピーターは、自分と世界を安定いて関わらせることができない。 けれども、これはピーターだけの問題でもない。 クインも、オースターとして動くうち、「オースターの体に入っている」ような気持になってくる。 また、自作の主人公である探偵、マックス・ワークとの境も(意図的にかもしれないが)曖昧になっていく。 ことばあるいは名前と実体との関係が錯綜していく。 その舞台が、ニューヨークというのも面白い。 かつてヘブライ人ができなかったバベルの塔を、新大陸に移民したアメリカ人が築くという妄想と、ニューヨークの摩天楼が重なって感じられる。 直線的な「アヴェニュー」が走る、人工的な街区を持つ街が、古代の神話(聖書だが)的な世界に結び付く意外さ。 とどめは、ポール・オースターなる存在。 本書のカバーに「著者名」として書かれている名前でもある。 物語終盤になり、オースターに呼び出された「私」なる作家が、クインの手記を入手し、再構成したのが本書だ、と明かされる。 画面がすっと後ろに下がって、カメラを回している人物までが登場人物だった、と明かされたような不思議な感覚だった。 十二分に本書を読み解けたかどうか怪しいが、頭がくらっとするような、不思議な感覚が味わえた。
1投稿日: 2023.12.03
powered by ブクログ「アンダルシアの犬」とかいったシュルレアリスム的な感じですごい良い 平々凡々な言い方すると熱出た時にみる夢みたいやね
0投稿日: 2023.02.11
powered by ブクログアメリカの現代美術を見るような感じで現実から乖離したストーリーや描写にはついていけない。P.オースターは高く評価されているようだが他の作品を読む気にはなれない。翻訳者の解説で表現力の透明性といわれるがそうは思えない。
0投稿日: 2023.02.02
powered by ブクログ思っていたよりずっと面白かった。 もちろん例外はあるにせよ、私は「いろいろなことが起こりすぎる小説」があまり好きではないが、この小説は色々なことが起こりすぎるにも関わらず好きだと思った。 多分徐々に狂気の方向に傾いていく描写が良かったのと、自分という存在がリアルでなくなっていくことへの内省の描写がよかったからだとおもう。 クンデラの存在の耐えられない軽さっぽい雰囲気を感じる箇所もあった。 あと柴田元幸、大変訳がうまい気がする。 ピーター・スティルマンのおかしな独白など、大変面白く読んだ。
0投稿日: 2023.01.22
powered by ブクログ「試写室の旅」を読んだら、久しぶりに読み返したくなった。初読時は主人公がどうなっていくのかにハラハラして一気に読んだ。 改めて読むと、言語や存在を巡る考察も楽しく読める。 新訳で読めたのも嬉しい。
3投稿日: 2023.01.13
powered by ブクログ挿画と著者に惹かれて。 ある表現がとても印象的で 今年はまさにそういう一年だった、 きっとしばらくそう。
5投稿日: 2022.12.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
借り物。 読む前に想像してた結末とは違って少々混乱。 文は読み易いのに内容は難解で、余韻があるところは村上春樹に似てるような気もする。 スティルマン父との接触シーンは、ドキドキかつ知的な感じ。ラストはまさに狐につままれたようなという言葉が似合う。 著者と同名のポール・オースターが作中に登場する。ドン・キホーテの件を踏まえると、これはポール・オースターが赤いノートに書いた作り話なのだろうか。作中のポール・オースターが書いたものを現実のポール・オースターが書いている。
1投稿日: 2022.12.14
powered by ブクログストーリーを掴むのが目的か、 雰囲気に酔うのが目的か。 デュラスの「愛人(ラマン)」を読んだ時にちょっと似た読書感。ついていけている、といい気分でいると、ガガッと突き放される。慌てながら必死で追うとまた追いつけるんだけど、たちまち引き離される。その繰り返し。 けれど、悪くない、この心地。 次に読んでいる小川洋子の「ことり」のお兄さんの喋るポーポー語が、もしかしたらスティルマン氏の切望する神の言葉かもしれない、などと全く異なる小説を連続で読んだところから連想する。
0投稿日: 2022.11.02
powered by ブクログ①文体★★★★★ ②読後余韻★★★★★ ニューヨークの都市が舞台となっている小説です。読んでみると一見探偵ものに見えます。ストーリーは尋ね人の姿を追い街を歩く主人公の視線と彼の自問自答、思考の振れ、感情の起伏が重なりあいながら、推理小説っぽさを醸し出します。 ストーリーのなかで登場人物の存在や名前の境界がぼやけていき、物事は何も解決していきません。主人公はニューヨークという都市に取り残されてゆきます。都市に迷い、その存在に溶けて消えてしまう主人公。都市に生きることの漠然とした不安感や匿名性がこの小説には表現されているような気がします。 私も訪れたことがあるのですが、たしかにニューヨークのマンハッタンって、街区が碁盤上になっていて一見わかりやすそうなイメージなんですが、歩いてみると意外に混乱しやすい場所であったりするんです。でも、そんな混乱のストーリーと都市の雑踏のなか、この作家のすたすたと歩いていくような透明感あるリズミカルな文体がとてもマッチしていて、なぜか心地よく読み進めてしまいます。それが虚像に溢れ、現実感のないニューヨークという都市に生じる歪みとストーリーにひそむ孤独、喪失感を研ぎ澄ましています。
0投稿日: 2022.10.29
powered by ブクログ探偵宛にかかってきた間違い電話をある作家が受け、面白半分に探偵のふりをして依頼人の相手をしたところ、思いもよらない運命にまきこまれる。 依頼人の希望通りにターゲットの尾行をするあたりは普通の探偵小説っぽいが、それ以外は普通とは異なる。 軟禁状態で言語コミュニケーション抜きで育てられたためコミュニケーションが不思議な男、妻であり元看護師の女(依頼人)、実験のために男を軟禁して育てた男の父(ターゲット)と登場人物が独特。 文章は詩的で深みがある。 そして、ターゲットを見失った後に作家に訪れる運命は強烈。 いつものオースターらしい落差のある展開に引き込まれた。
0投稿日: 2022.08.17
powered by ブクログ入れ子構造をどう考えるか? 探偵小説家が探偵をする。 ドン・キホーテ論から書くということの実在性の持たせ方を立論する。 ポール・オースターが作中にも登場して、構造を撹乱する。 虚構の実在。実在の虚構。 末路は、哀れなようでわからない。非実在なのだ。ノートを除いて。 現代芸術の意味で、これは現代文学だ。問題を提起されているように思う。
0投稿日: 2022.05.21
powered by ブクログ不条理? リアリティ? どう受け取っていいかわからないものを受け取ってしまった気分だが、老教授とクインの対話、オースター家でのクインの気持ち、老教授の行動など、個々のエピソードはとても印象に残る。 「言葉」というものがその人を縛っていく場合もある。 言葉に無頓着である人は幸せ者なのかもしれない。
0投稿日: 2021.12.19
powered by ブクログ間違い電話から始まったストーリーではあるが、割と分かりやすい設定で話は進んでいくが、途中から転落や泥沼に嵌るとも違った、矛盾の深淵に沈んでいくような、暗いのになんとも心地よい文体に引き込まれる。 映像で見たい。
0投稿日: 2021.11.13
powered by ブクログミステリーといえばミステリー。 間違い電話から始まったある出来事との関わり。 ニューヨークの街で紙一重の繊細さでこの世との関わりを持ち営んでいた均衡が破綻するミステリアスな話。 辛うじてガラスの繊細さで営む生活が、ちょっとしたきっかけで一線を超えていく物語。 おへそ書房にて。
1投稿日: 2021.09.19
powered by ブクログ<ニューヨーク三部作>の第一作目。あとがきの冒頭部にもある通り、今作は一種の自伝的メタフィクションでもある様だ。探偵小説のフォーマットに則りながらも、主人公・クインの行き過ぎた行為によって物語は不条理さを増していく。大きな喪失を経たのち<死後の生>を生きるクインの戯れは皮肉にも自らの理想を体現する人物との邂逅を齎すのだが、他者との関係を以てして認識する己の実存性という件はデビュー作から一貫しているのがよく窺える。クインのその後は読者に委ねられているが、街の片隅で彼はまたノートの続きを書いているのだろうか。
0投稿日: 2021.08.29
powered by ブクログ「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開―。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!
0投稿日: 2021.08.07
powered by ブクログ2021/06/26 およそ10年ぶりに再読。やっぱ最高やなオースター。 なんなんだろう、この本は。ひどく無意味に見えて、同時に深淵でもあるような事件。物語に関係のないように見えて、実は密接に関連している可能性を孕む種々の二面性。あれとこれが似ていること、まったく別のもの同士が共通する面を持っていること。そういうものの連続でこの本はできている。 突き放した言い方をすれば、思わせぶりの連続。結論の見えない可能性たちの連なり。そこに物語としての解決などありえない。主人公はただ思索を続け、ニューヨークを歩き続け、だんだん壊れていく。自分のやっていることがまったくの馬鹿げたことと思いながら、それゆえに重大であるかもしれないと認識させられる矛盾に満ちている。矛盾がほんとうに矛盾であるかどうかの検討が必要なため、思索はどんどん込み入ってきて、また新たな矛盾にぶち当たり、……。
0投稿日: 2021.06.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ポールオースターの処女作にして代表作の一つとして新聞の書評欄でとりあげられていたので読んでみました。 探偵物の体裁を取っていますが、難しかったです。いろいろと変わった出来事が起こるのですが、ちっとも解決しません。 主人公は妻と息子を亡くした小説家、探偵小説を書いて暮らしているが、世間との付き合いは断っている。 そこに父親から虐待を受けて精神に障害を負った男性の依頼人から父が出所してくれるので守って欲しいとの依頼を受ける。しかし依頼主は主人公のことをなぜかポールオースターと勘違いしている。 主人公は出所してきた父親の逗留先のホテルを毎日路上から見張ることとする。しかし、父親はいなくなり(のちに自殺と判明)依頼主もいなくなり、主人公もいなくなる。 父が子供を虐待した背景には人間性と言語の関係はどうあるべきたとう深淵な問題があるようで。父親は完全な言語を求めようとしていたことが想像されます。 文章の一文一文は読みやすく、街の描写などは生き生きとしているのですが、話のストーリー生き生きとはしておらず、話のプロットは追いにくいです。 まるで村上春樹の小説のようでした。 当初17もの出版社に出版を断られたのも頷けます。17断られたのに諦めなかったことがすごいね。
0投稿日: 2021.05.10
powered by ブクログこの作家の物語は、後半になるとなんとなく似た話になるようだ。それが読みたくて読んでいる節もあるけどね。
0投稿日: 2021.04.24
powered by ブクログニューヨーク三部作の一作目。 深夜の間違い電話をきっかけに、探偵になりすましてニューヨークの街並みを彷徨する主人公。何が真実なのか?最後まで何も解決しないミステリー。現実と虚構が入り乱れ、主人公は破滅の道へと突き進む。クセになりそうな独特の世界観。
0投稿日: 2021.04.19
powered by ブクログ流れるような読みやすい文章を書く作家だなと思いました。はじめから終わりまでスピード感があり、読後感はずっしりと来る。読みごたえのある作品です。ポール・オースターは初めて読みましたがストーリーも面白く、文体も自分に合っていたので、他の作品も読んでみたいです。
1投稿日: 2021.04.16
powered by ブクログクインという作家が、“ポール・オースター”という探偵を演じながら、標的である“ピーター・スティルマン”を追います。謎が謎のままで、私にはクイン自身が一番の謎でした。ノンジャンルと言いたくなる物語に惹かれたのは確かで、再読したいとも思うのですが、どうしてそう感じるのかを説明できません。訳者の言葉を借りるなら“透明感あふれる文章”も理由のひとつですが、読んでみてくださいとしか言えない一冊です。
0投稿日: 2020.12.21
powered by ブクログポールオースター、ニューヨーク三部作の一作目 奇妙な物語。 読みながら、この物語はどのように成立しているのか、ということがだんだん気になり出しました(というか物語として最終的に成立するのか?)
2投稿日: 2020.09.11
powered by ブクログオースターの長編デビュー。既訳は読んでおらず、原文でのみ読んでいた。柴田氏の翻訳で読み直し。原文の時は感じ取れていなかった滑稽みのある部分などが、訳文のおかげで感じ取れたように思う。
1投稿日: 2020.09.01
powered by ブクログ主人公である作家は、言葉を失ったとき、ガラスのように透明になって消えてしまったのか? 街も人も、何をかも為さず存在すら不透明な世界。
15投稿日: 2020.08.24
powered by ブクログポール・オースターという私立探偵と話したいという全くの間違い電話を受けた作家クイン。とりあえずポール・オースターという私立探偵であることを認めて、ある人のボディーガードを引き受けることになる。話しを読んでいくうちに、自分の存在があやふやになり、時間軸は飛び越え、かっての居場所も失ってしまう主人公クイン。なんか存在があやふやになっていくんだよなぁ…
0投稿日: 2020.08.04
powered by ブクログ自分とは何者なのか。 名前は自分の存在を証明してくれるものではない。 存在の入れ替えさえも可能。 何を以て自分とするか。 色々考えているうちにあっという間に読み終わった。
0投稿日: 2020.07.04
powered by ブクログ街。社会。 その言葉が持つ、誰にでもなれる匿名性と 誰でもない記名性という矛盾を痛感した。 こと現代社会では、ネットやSNS等で 自分ではない誰かになることが容易である。 それが故に、本当の自分を見失ったり、 無意識のうちに人々の意識外にいたり することがある。 オースターが描いた街や社会は 現代社会の鏡だと思う。 物語を読み進めるうちに、薄ら寒い感覚を 持ち、最終的には、今の自分はどうか と思いを馳せていた。 一読の価値は十二分にあると思う。
0投稿日: 2020.05.10
powered by ブクログポールオースターこれしか読んでないけど全然面白くなかったんだよなぁ、柴田さんの訳がにがてなのか…むにゃむにゃ。
0投稿日: 2020.03.12
powered by ブクログ★★★2020年2月★★★ 読み始めた時の感じと、読み終えた時の感じ。 この差がこんなに隔絶した小説がほかにある? 「そもそもの始まりは間違い電話だった・・・」で始まり、人違いから探偵役を演じることになった小説家のクイン。彼の手記をもとにこのストーリーは出来ている、というのが設定。 ああ、きっとこの偽探偵クインが事件に挑み、なぜ探偵役をすることになったのか?とか、謎が明かされていくんだろうな、と思った。 ところが、全然違う。 こういうのが良い、という人はいいのだろうが 僕にとってはモヤモヤ感が残る。 この小説では、クインがあまりにも可哀そうで。 特に彼が3歳の息子を亡くしていることを思うとつらかった。
0投稿日: 2020.02.09
powered by ブクログ今「ガラスの街」はニューヨーク三部作の第一作ということで記録されている。 「孤独の発明」「鍵のかかった部屋」「ムーン・パレス」「偶然の音楽」「幻影の書」と読んできて初期の作品を二冊残していたのは、中篇であり初期に書かれたもので、先に読んだ作品で感じた、私の中の名作「孤独の発明」が次の作品がどういう形で書かれたかにも興味があった。 ただ既読の5冊の中には、共通する実態の掴みにくい孤独感はが相変わらず座り込んで在り、それを包むように明晰で分かりやすい言葉が連なっている。 次第にストーリー性が増し、明確な風景の中から物語が立ち上がってきている。そういう傾向に移行したのかと感じたのだが。 ニューヨーク三部作の頃にはまだ主人公の回りは常に現実との境が曖昧で、存在自体も、本人にさえも見えない部分がある。 主人公たちは、その見えない部分を自分中や知り合った人たちに見たり触れたりしてして、鑑に写したように実感を得ようとしている。だがそれも次第に薄れていく。 ストーリーは、夜中の間違い電話が何度も懸かるので、「ポール・オースター?」ときかれ「そうだ」と答えてしまう。 実はダニエル・クインという探偵作家で、ペンネームはウィリアム・ウィルソンでありその陰に隠れていれば、エージェントとは私書箱を通しての付き合いで、顔を出すことがなかった。彼は半月書き、余った時間を自由に暮らしてきた。 間違い電話の主ピーター・スティルマンは子供のころ幽閉されていた過去がある障害者だった、世界に散見する研究対象で、誘拐されて見つかった子供のように、9年間、言葉や光のない部屋で育ち、父親に実験的暴行を受けて、13年間父が捕まっていたとき、今結婚している妻が教育してきた。父親が釈放される日が近いので殺されないように保護して欲しいと言う。 彼は満足に話せない。 ---これはいわゆる話すという行為です。そういう呼び方だと思います。言葉が出て宙に飛んでいって、束の間生きて、死ぬ。不思議じゃありませんか--- 彼は電話を受けた手前、彼は作中の探偵ワークとはもう架空の者ではなく、いつの間にか一体感を持っていたし、現在の状況は三人の人格が合体したものに感じられた。 --- 探偵とは、全てを見て、全てを聞き、物事や出来事がつくりだす混沌の中を動き回って、これらいっさいをひとつにまとめ意味を与える原理を探し出す存在にほかならない。実際、作家と探偵は入れ替え可能である。--- 出所した父親らしい人物を見張り始める。安ホテルに泊まった老人はニューヨークを徘徊する。彼も後ろから歩いていく。何も怪しいそぶりもなく日が過ぎ。ついに彼は接触を試みる。老人は新しい言葉を作り出そうとしていた。彼は老人の意識を確かめるために話しかけるがもう既に過去のハーバードの秀才教授ではなかった。だが彼の知識の片片から生まれる物語は魅力的で、その奇妙な世界を聞きに何度も出会うようになる。 ---ポー作品でデュパンはなんと言っているか?「推論者の知性を、相手のそれに同一化させる」ここではそれは、スティルマン父に当てはまる。」おそらくその方がもっとおぞましい。--- 父親はかってヘンリー・ダークという名前で、今ここではないかつての楽園を作るために、乱れた言葉を元に戻すことを解く「新バベル論」について書いていた。その小冊子を見つけた。 赤いノートに記録しながらクインの尾行は続いた。 赤い手帳にはその日の出来事を書きながら見張っていたが老人は消えた。ホテルで聞くと投身自殺をしたそうだ。 くクインは依頼者のスティルマン夫婦のところに行くとマンションは誰もいない空室になっていた。 クインはついに、ポール・オースターを訪ねる。彼は全く何も知らなかった。 そして今書いているのは何かといといに答える。 「ドン・キホーテ」論だという。これはセルバンテスの作ではなくアラビアで書かれ、セルバンテスは翻訳されたものを編集したもので、そういうことは事実を語るのに疑いを挟ませない理由だと言った。そしてドンキ・ホーテは物語に魅せられた。しかし原作のアラビア人は登場する四人の組み合わさったものではないか」 クインの部屋は他人が入っていた。彼は依頼者のスティルマンがいた狭い窓にない部屋で眠る。次第に彼が何もかも億劫になり消えた。 オースターのところに来た友人にこの話をすると、友人はクインを心配して探してみたが彼のいた部屋は赤いノートだけが残っていた。 一人でいることは自由だと言うことだが、それが続くとクインはソローの本を探して読んでみたりする。この自由とは違う。 それでも過去にはウィリアム・ウィルソンであり、創作した探偵ワ-クであり、ミステリ作家のダニエル・クインであった。その頃は快い孤独感とともにニューヨークの町を歩いて楽しむことが出来た。 だが、ふと電話に出て見知らないポール・オースターになり、書く事をやめウィリアム・ウィルソンから離れてしまった、そのとき自分と一体であったものを切り離したあとの独り、このクインとは一体何者だろうか。 仕事だと思った老人の追跡が意味のないものになり、町は次第に陰をなくし、それに連れて存在も希薄になる。孤独というものの実感さえ浮かばなくなり生存するということが抜け堕ちてしまう。それがどんな意味があるのかとさえ考えることのないところに入ってしまう。究極の言葉によって形作られるみえない深い悲しみや空虚感が見事に作品になった、珍しい文学的な前衛だという言葉が分かる、初期ポール・オースターの作品だった。 この形式とセルバンテスの部分は少し共通の部分もあるように思うがここまでにする。
0投稿日: 2020.01.05
powered by ブクログワタシの好きな柴田元幸の著作を読んでいて、いつか手にしようと思っていたのがポール・オースター。そう思ってからずいぶん長い時間が経ったが、「柴田元幸待望の新訳×ポール・オースターのデビュー作」という帯の惹句を見て、遂に購入。 SFとかファンタジーに分類されるものを除き、小説を面白いと感じるポイントのひとつは、現実感と非現実感のブレンド具合、とワタシは思っている。深夜の間違い電話をきっかけに私立探偵になってゆくというこの小説は、その点において実に絶妙なブレンド具合になっている。小説の舞台設定というのはかなり重要な地位を占めていて、ここに非現実感が多くブレンドされると、設定だけでウケを狙おうとしているような気がしてワタシとしてはもうその先を進む気が起きなくなってしまう。(ワタシが伊坂幸太郎を好まない理由はココ。ファンの皆さん、ごめんなさい。) あぁ、もっと早くオースターを手にすればよかった。本書を第一弾とした「ニューヨーク三部作」の第二弾・第三弾は早速ポチッとした。しばらくはオースターを読み続けることになりそうな予感。
0投稿日: 2018.11.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ニューヨーク3部作のひとつ。この作家の小説は初めて読みました。もと詩人だったからでしょうか? 言葉が自由に飛翔します。134頁のスティルマン氏の言葉が秀逸でした。 依頼を受けてスティルマン氏の足取りを辿りつつ、ニューヨークの街を彷徨するクイン。作者と同じ名前のオースター氏とその家族に出会う場面がありますが、クインの失望が大変鮮明に描かれています。これは作家の仕掛けたトリックで、本作が書かれた意図がここにあることに、あとがきを読んで気づきました。 ミステリー小説のようなストーリー構成もあって最初から引き込まれて読めました。
1投稿日: 2018.11.10
powered by ブクログ初めて読んだポール・オースター初期作。 冒頭数ページ、クインがニューヨークの街を散歩する節でがっつり惹きこまれていった。その辺り特に、初めての作品であるのに既読感に襲われてなんでだろうと考えていたら、以前何か(これが思い出せない)の書籍で引用を目にしていたからで、確かこの書籍は写真関連のものだったように思う。そのこともあってかなくてか、この散歩のシーンはすごく写真的、というかカメラ的か、澄んだイメージが抵抗なく身体に入ってきた。でもきっと写真をやっていなくとも同じ感覚になるだろう。 「ニューヨーク三部作」の第1作目だそうだが、一見探偵ものなのかな?と思いきや、探偵ものの体を半分成しながら全く異なる不思議な物語であった。自己の消失と物語が持つ認識のトリック、ドン・キホーテや創世記の引用や解説が本作の中で意味があるのかないのか、探偵小説に不可欠な答えや真相は一切語られないまま私たちの頭の中で問われ続ける。 読み終えて最初の感想は「これは誰の物語か?」
1投稿日: 2018.05.30
powered by ブクログ探偵小説のようだが、何も解決せずぐるぐる主人公のクインが回っている小説。クインはドンキホーテか?「幽霊たち」の幽霊なのか?読みやすかったのは、訳者が柴田元幸のおかげかな。
0投稿日: 2018.05.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ダニエル・クイン(主人公)は、ウィリアム・ウィルソンの名前で推理小説を書くことで生計を立てているのだが、あるとき、私立探偵ポール・オースター宛ての間違い電話に出たことがきっかけで、ポールに成りすまし、依頼を受ける。マックス・ワークは彼の小説の主人公。 かなり序盤のほうから、このウィリアム、ポール、マックスの間でクインがアイデンティティ崩壊して自分が何者なのかわからなくなるのだろうなー、と思ったら、やはりそういう感じで、なんというか、 よくわからなかった。 依頼されておいて結局何もしてないし。老人スティルマンの足跡がThe Tower Of The Babelとなっていたのも、結局は謎のまま。 二時間おきに電話をかけると言ったのに、かけないでオムレツなんて食べて他人の生活に嫉妬しているところは、本当にこの人どうなのかと思った。 安部公房の燃えつきた地図や、ロブ・グリエの消しゴムを彷彿とさせる出口のない街。
0投稿日: 2018.03.31
powered by ブクログ人間にとって言葉とは何か ことばから逃げてしまうと、現実からも逃げてしまうことになる。そんなことを考えてしまった。作中にオースターなる人物が出てくるのがポストモダン的なのか……。
0投稿日: 2018.03.24
powered by ブクログ豊かな音楽的な言葉の数々。 人は言葉によって自分が何者であるかを認識するし、ここがどこであるかを定義する。 自分自身の存在があやふやに感じることもあれば、物語のなかの人物が生き生きと存在感を表すこともある。 言葉に、フレーズに、音に、小説に、真摯に素直に向き合った作家と、翻訳家の妙技をただただ芳醇な香りのように、音楽のように味わうことができた。
0投稿日: 2017.12.02
powered by ブクログ(ハードカバー読了) オースターが妻と出会っていなかったらどうなっていた可能性があったかを書いたと言われる(後書きより)。 クインという一人の作家の出来事と関わった作中のオースター(作者とは別人の設定かは不明)と、それとは別にこの物語を書いた作者がいて、クイン自身が書き続けた赤いノートなどの事実をもとにしているという。 最初から予想はできるだろうが、スティルマン事件は結局、事件でもなんでもない。最後の方でクイン自身が述懐しているように、「人生における別の場所へ至るための橋」だったにすぎない。 この「別の場所」とは、世界の外のことで、クインが最後にたどり着いた場所なのかもしれない。 スティルマンの問題に執拗にこだわり続け、ピーター・スティルマンのマンションの近くで路上生活をし始めるまでに陥った(クイン自身が自分を「落ちてい」ると感じているにもかかわらず)。最終的には、資金が尽き、自分がかつて住んでいた部屋も別の人物に使用され、なにもかも失って、ピーター・スティルマンとその奥さんが住んでいた部屋にたどり着き、赤いノートに記述を続けた。 オースター自身がが幸福でクインがそうではない、として書かれたのかもしれないが、本当にそうであるかどうかはわからない。
0投稿日: 2017.09.06
powered by ブクログ本書は主人公の意識と登場人物の会話で大部分が成り立っているのだが、読み進むにつれて、真実と虚構の区別があいまいになってくる。そのような文章は通常読みにくいものだが、本書は逆にわくわくしてくる。そのようなことを楽しむ作品なのだろうと思う。
2投稿日: 2017.06.21
powered by ブクログあるミステリー作家にかかってきた間違い電話から始まる不思議な物語。 途中から「あれ?」「え?」って動揺することが増えてきて、最後は「で、お前は誰よ」ってなる。 なにがどうなったんだか最後までわからないどころか謎が投げっぱなしなんだけど、文章がとても美しくて読みやすかった。頭の中はぐるぐるしてるけれども…。
0投稿日: 2017.04.28
powered by ブクログ不思議なお話でした。自分がどんどん無くなっていくような。主人公のクインの、スティルマンとの会話が面白かったです。ハンプティ・ダンプティと、ドン・キホーテ。最後まで読んで、クインのこれまでがとても辛く感じられました。わたしも、クインの幸せを願います。
0投稿日: 2017.04.10
powered by ブクログ最初は面白かった。でも後半はイライラした。はっきり言って、絶望した人間が、中国午後がどうとか考えるわけがない。と思ってしまった。 ニューヨークの街並みの描写は好き。
0投稿日: 2017.03.21
powered by ブクログ対象を追いかけて追いかけて自らを堕ちるまで追い詰める。大体このパターンやね。そして自分を登場させるという不思議なやり方。
0投稿日: 2016.11.27
powered by ブクログ柴田元幸さんは、日本語に翻訳しているというよりも、物語に翻訳しているといった感覚を持つ。 素敵だなあ。
1投稿日: 2016.11.14
powered by ブクログ衝撃的に面白かった。 孤独な男の元へ来た間違い電話は、 ほんの序章に過ぎず、 少なくとも4つの入れ子みたいな、 予測不能な落とし穴のような展開に、 読み進めるほどにはっとし、 清涼感と荒涼感を同時に体験するという、 不思議な読後である。 * 海外文学はあまり読んでいないのだが、 ポール・オースターはじめ、 フィリップ・ロスといい、 マイケル・カニンガムといい、 現代アメリカ文学は実に面白い!!
0投稿日: 2016.11.03
powered by ブクログこれもまた空虚な作品で、でも自分がこの男の立場だったらどうなってしまうのだろうと考えると怖くなる物語だった
0投稿日: 2016.04.24
powered by ブクログhttp://kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-9ef0.html
0投稿日: 2016.02.19
powered by ブクログ探偵小説? ミステリー? 間違い電話をきっかけに「ポール・オースター」として探偵の真似事を務める羽目になり、次第に数奇な運命に巻き込まれていく。 日常から引き剥がされていく不安と孤独が詩的で軽やかな文章で流れるようにするすると綴られていく様に引き込まれました。 都市の乾いた空気と、相容れない者同士それぞれの孤独が鮮やかに切り取られる。 物語全体を通して語りかけてくるのは「私」とは何なのか、「私」を私たらしめているものとは? という問いかけなのだろうか。
0投稿日: 2015.06.24
powered by ブクログこの小説、括りはミステリなのだろうか。著者はミステリにカテゴライズされることに不満を持っていたらしいけど。 不思議な物語だった。 問題が解決されないまま終わるのはミステリ的じゃないけれど、つくりというか、物語自体に大きな仕掛けがあって、それがすごく面白かった。 読み終えたあとの余韻。 空虚感? 空白感? 何にも残らないのに、しばらく引きずるような感覚。 …感想になってないけど今回はまぁいいか(笑) この著者の他の小説も読んでみたい。
4投稿日: 2015.05.02
powered by ブクログニューヨークという大都会に行き交う、何か不思議な縁。さりげなく、透明で、不思議な、ニューヨークの心象風景とでも言えばいいのか。赤いノートがクインの生きた証として、妙に心に残る。このノート、モレスキンの赤いノートかなあ、と、勝手な想像をした。
0投稿日: 2015.03.08
powered by ブクログ海外の現代作家の作品を読むことって、 あまりなかったりませんか? 何かと古典ばかり読むようにしていたりしがちなのは、 僕だけではないはず。 それで、じゃあ、現代の海外の作家にはどんな人がいるのかと調べてみると、 いろいろ出てくるのでした。 その中でも、新潮文庫のメールマガジンに載っていたのが本書です。 よさげだ、と、びびびっと来て購入しました。 思っていたように、やっぱり面白かったですね、現代作家の作品は。 村上春樹さんだとか、日本の現代作家の本が面白いんだもの、 外国人のが面白くないわけがない。 とはいえ、本作は30年くらい前の作品なんですけどもね。 探偵小説の皮をかぶってるオオカミみたいな作品かなあ。 オオカミまで行かなくても、我が強くて人なれしないネコが 正体として皮をかぶっているようなイメージでも持ってもらうといいのかな。 本性としては、探偵小説ではないです。 では、なにかと問われると、もう、ポール・オースターというジャンルだとしか、 僕のように現代小説を読んだ経験の浅い人には言えないですね。 アメリカ的な純文学とでも言えばいいのか。 時折出てくる内面描写が秀逸で、 「そういう気持ちわかるわー」と思う箇所がいくらかありました。 なかでも、とある作家の家族と主人公が逢う場面で、 家族という温かさに疎遠な主人公が、その作家の家族愛の幸福さを目にして、 「食中り」ならぬ、「幸せ中り」を起こすところが僕には共感できてしまった。 何気ない描写も、すんなり気持ちに入ってきて、 著者は詩人でもあるとのことなので、そのあたりのセンスなのかもしれないです。 本書の最初のほうに書いてあるセンテンスこそが、 この物語の読み方を表していると思うので、 それを抜き書きして終わりたいと思います。 ___ 問題は物語それ自体であり、 物語に何か意味があるかどうかは、 物語の語るべきところではない。 ___ そんな小説でした。 面白かった。
0投稿日: 2015.02.24
powered by ブクログ何だったんだろう、この小説は。 一切の謎が解かれぬまま、最後のクインが感じていたであろう虚空の余韻と、“今まで綴ってきた私とは誰なの?”というまた新たな謎と共に消えていった。
0投稿日: 2015.02.03
powered by ブクログアメリカの著名な作家のNY3部作ということで購入。作家本人と登場人物、主人公が作家でその作品の登場人物などが複雑に絡み合う、探偵小説っぽいが不思議な読後感。
0投稿日: 2015.02.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
柴田元幸の訳による、ポール・オースターのニューヨーク三部作の一作目。探偵小説、と言えるのかどうか。ある作家の元にかかってきた間違い電話から始まったある事件の捜査。果たして謎はとけたのか?事件は存在したのか?なんとも不思議な小説である。しかし面白いから困ってしまう。
0投稿日: 2014.12.31
powered by ブクログそして、何より大事なこと- 自分が誰なのかを忘れないこと。 自分が誰だということになっているかを忘れないこと。これはゲームだとは思わない。とはいえ、はっきりしたことは何もない。
0投稿日: 2014.12.23
powered by ブクログ「鍵のかかった部屋」、「幽霊たち」、と「ニューヨーク三部作」を読み進めて(順番逆だけど)きて、本作。とても面白くてのめり込むように読んだ。主人公クインがそうであったように、読者である私もたびたび思考は彼方へと飛んでしばらく彷徨った。おかげで通勤電車はあっという間に目的地に着いてしまう日々。 はなから妻子を失っているクインがさらに全てを失っていくさまにぞっとしたが、不思議と彼は、失えば失っていくほど純化していくようだった。失っていくということは、変化していく過程であり、常に変化していく状態こそが本当の自分であるとしたら、彼は失っていった分獲得していったのだろうか。 クインの、そして私たちのいくつものエイリアス。それは不器用な人間の生きていく知恵だが、たまに、全てを捨ててしまいたくなる時もある。全てを失い、しかしどこか満足気に都市に溶けていった彼は本望だっただろうか。彼にはもう幸せなど意味が無いかもしれないけれど。
0投稿日: 2014.12.09
powered by ブクログ訳書らしい、透明感のある綺麗な文章の作品。 最終的に何かが解決したり解明されたりする訳ではないが、後味の悪い読後感ではない。 不思議な話で、他のポール・オースターの話も読みたくなる。
0投稿日: 2014.10.01
powered by ブクログピーターの語りはだめだよ。 読んでるうちに眠りに落ちたが、すごく混乱した嫌な眠りだった。じぶんが本当に狂ってしまったかと思った。
0投稿日: 2014.09.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ニューヨークに生きる作家クイン。彼のもとにかかってきた電話。彼を探偵のポール・オースターと信じてかかってくる電話。依頼人ピーター・スティルマンの語る生い立ち。ピーターの命を狙うというかピーターの父親スティルマン。小切手を受け取りスティルマンを 探すクイン。スティルマンとクインの会話。消えたスティルマン。本物のオースターに依頼するクイン。クインの世界。
0投稿日: 2014.05.22
powered by ブクログ「そもそものはじまりは間違い電話だった。」 雑多な人々が暮らすニューヨーク。そこで孤独に生きる作家クインの身に起きた、まるで万華鏡のような物語です。出だしはハードボイルド・テイストと思いきや、次第にオカルト・ミステリー・テイストも加わって、これが映画ならぞくぞくするような展開なのですが、よほど上手く結末を持っていかないと、映画の観客には許してもらえないような・・・。(笑) 主人公のクインが様々な仮面を被り、幾重にもスライドする可能性がある個人という趣向はなかなか面白いです。また、人生を孤独に生きていると思いきや、お茶目ぶりや没頭していく様など性格設定的にもなかなか親しみが持てますね。(笑)それに登場してくる個性的な面々。破天荒な話ぶりの調査依頼主に加え、尾行対象の破天荒なふるまいにどんどんと物語に引き込まれていきます。そして深まる謎・謎・謎・・・。 繰り返される街の描写に、そこに行き交う人々、メシ屋の雰囲気にニューヨーク・メッツの話題など、書名のごとく透き通るように描かれる街・ニューヨークの片隅でクインが出くわした事件には、ジャズ・トランペットのBGMがよく似合っています。 物語の方はだんだんと錯綜の度合いを含めていき、ポール・オースター本人(?)が語るドン・キホーテ論とのパラレルな世界の中で、幾重にも施される主体の転回が読者を幻惑させ、一層、万華鏡の迷路の世界へ引きこまれていくかのようです。 世の中とそれまでの個から分離すると一体どこへ向っていけるのか・・・?謎なんてさして重要なものではないのかもしれない。
22投稿日: 2014.04.27
powered by ブクログ本日読了。 この街も人も世界も、少しずつ自分の知覚から冷たくはがされ、自分自身からは実存の証さえ希薄になっていく。 追い求めていたはずの誰かと自分との区別も曖昧になって、孤独を孤独とすら感じられぬ絶対的な孤独だけが残される。 そんな物語。 前半は探偵小説風の体裁がとられている。 謎解きの好奇心で物語に誘いこまれる。 しかし、読み進めるうちに、薄暗の出口無き迷路に閉じ込められてしまう。 村上春樹に比較される事も多い小説家で、強迫的なまでに孤独や喪失のモチーフを繰り返すなど、確かに共通点も多いと感じる。 でも、オースターの描く、否、抱える孤独は、もっと深遠で、感傷よりもずっと絶望に親しい。
0投稿日: 2014.03.17
powered by ブクログあたかも探偵小説の様相で始まる物語。 人間は「思い込み」という卵の殻を破れないもので、見えない真実にやきもきせずにいられなかった。 『ムーン・パレス』の主人公が、物の形が文字どおり「目に浮かぶほど」詳細に述べようとしたのと同じくらいの精緻さで状況が描かれていてなお、最後まで分からないままだなんて… それなのに、こんなに面白いなんて… さすがポール・オースター。
0投稿日: 2014.03.08
powered by ブクログどこかモヤのかかったような物語の中、やけに彩りを放つ人達が現れながら話は進んでいきます。 モヤの向こうに何があるのかはあまり気にしないのもよし、想像するのもよし、いつか月日が経ったらまた読み返したいと思います。 「書く」ことで残る何かについても考えさせられました。 自分も何か書いてみたくなりました。 できれば赤いノートに。
1投稿日: 2014.02.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
文庫版は出たばかりということで図書館の新着コーナーにあったので借りて読んだ。 ポール・オースターの文章も、柴田元幸さんの翻訳も素敵で満足。 話も、独自の探偵の仕事が始まってからはどんどん引き込まれた。 最後もすごいオチ。 今でこそ有名な作品だけれど、自分で出版社をまわって13社も断られたのもわかる気がする。
0投稿日: 2014.02.02
powered by ブクログ最初はぐいぐいと読み進めることができて、はてさてどうなるのかと思っていたけれど、だんだんと読んでいるこちらも不安になり、うつろな気分になった。 孤独だけれど一人でも平気と思っていて、自信がなくて、でも認められたくて、そしてやっぱり寂しくてって感じがどんどん重なって押し潰されてしまったような。 語り手が意外で、ああそうなのとびっくりした。 初めて読んだポール・オースターだったので他の作品も読んでみたいと思う。
0投稿日: 2014.01.25
powered by ブクログオースターのニューヨーク3部作の1つ。「幽霊たち」と同じく、冒頭の文章から非常に力があり、引き込まれる。後半、物語の進行とともに思索的、哲学的な文章が多くなり、読むほうも主人公と同じ思考を強いられる。 主人公が、亡くした妻と息子のことを回想する箇所は、本当につらい。訳者による解説を読み、本書が生まれた意図を知って、深く納得。 (2014.1)
0投稿日: 2014.01.11
powered by ブクログ探偵小説と思いきや、そうではなかった。 はじめの書き出しの文章から引き込まれた。 雑踏に埋もれる自分に安心感を覚える、あの感覚。 物語もだけど、文章力が凄くて、どんどん読み進めてしまうのだった。 あの夫妻は結局、何者だったのか、太った女は偶然なのか、とか、謎なところも多くて気になるのだけど、主人公は自分とは何か、という問いを突き詰めた究極形に思えてならなかった。誰にでも主人公のようになる可能性はある訳で、ちょっとぞっとした。
1投稿日: 2013.11.10
powered by ブクログ誰でもなくなる、アイデンティティーがなくなるというと不安になりそうだがさらに突き抜けると不安さえ感じないのか。禅のさとりにも似ている。 一面では、繁栄するニューヨークで誰でもなくなったように扱われる弱者のことに作者は、心を痛めている。
0投稿日: 2013.10.06
powered by ブクログなんて表現したら良いんでしょうね…という小説 文章も話の流れも綺麗だしぐいぐい引き込まれて でも最後に私の疑問には何も答えてくれない すっきりはしないんだけどそれはそれでいいような… ミステリーや探偵小説を装った『ひとりの孤独な男の物語』と思えばいいのかな ちょっと不思議な世界観 またこの人の小説が読みたいと思った
1投稿日: 2013.10.03
