
総合評価
(61件)| 26 | ||
| 18 | ||
| 8 | ||
| 0 | ||
| 0 |
powered by ブクログフォロワー視点 川上未映子が村上春樹に心酔し、フォロワー視点で村上春樹を持ち出すので、全体的に褒めの姿勢っていふか、公平ではないかんじがする。のれんに腕押しで、ちっとも鋭くない。 『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』は村上春樹からあけすけに話してゐたのに、こちらはまったくのらりくらりとした印象。 それはやっぱり、村上が能動的に話を聞きに行った前者、ファン熱を帯びた川上と、むしろ受動的な村上といふ後者の違ひだらうかとおもった。もしかしたら、河合が村上にとって目上だとか、そんな意識も働いてゐたのかもしれない。 川上未映子は自分をフェミニストを称する一方で、松田青子のやうな〈村上春樹の女性描写にイラッとした〉と語るフェミニスト作家もゐる。だから、川上は村上に寛容なほうだ。 しかし、村上自身は《あらゆる「イズム」は信用するなということです》と不信感を抱いてゐる旨、しっかり表明してゐて、おいおい、フェミニズムはイズムではないのかよ。と思ってしまった。 むろん、川上が村上にしつこく作家の矜持について尋ねる。といふことはやってゐて、しかしそれはむしろ川上の性格が浮き彫りになったインタヴューだった。 途中で川上が言及する「顔写真付き女流作家」といふのは、大杉重男がブログでいったことだ。(http://franzjoseph.blog134.fc2.com/blog-entry-100.html) しかし川上未映子はインスタグラムで顔写真を上げてゐるし、顔写真付き男流作家も現実として島田雅彦などが該当するだらう。最近は帯に顔写真を載せてゐる作家も結構ゐるし。
0投稿日: 2025.09.07
powered by ブクログ少し前に読んだ「騎士団長殺し」 に関する対談多め 意外にシャーマンチックな所が ある人なんだな〜と思った もしくは煙に巻いているのか? 普通は小説やエッセイより 対談の方が読みやすいけど...今回は逆! いつもの村上文体と違うので なんだかちょっと読みづらかった
7投稿日: 2025.06.14
powered by ブクログ今1番気になってる作家のお2人の会話が読めてとても嬉しい。特に「騎士団長殺し」を最近読み終えたばかりだったので、インタビューの内容もついていきやすく良かった。 川上未映子さんだからこそできる質問や、かなり深入りする質問がとても面白かった。特に村上春樹さんの小説の中での、女性の描かれ方についての突っ込んだ質問。めちゃくちゃ良かった。 村上春樹さんの今まで読んだ(まだ数は少ない)小説は、どれも私はとても好きだったのだけれど、女性目線で読むと少しモヤモヤするところがあって、その霧が晴れたような気持ちになり、本当にこのインタビューを読めて良かったと思う。 村上春樹さんへは、川上未映子さんがそう感じたように、「信頼関係」を築いて良いんだと感じた。 そして何よりも私が腑に落ちたのは、村上春樹さんは「本当の出来事とか、本当にそこで血が流れたような出来事とか、悲しみや恨みとか、そういったものを自分の物語に利用することはできない。」というところ。もし題材にするなら、スピーチやノンフィクションとしてやると。 私は虐待やネグレクト、性同一障害などの社会的テーマを表面的に小説に「利用」しているかのように取り入れてる作品にとても嫌悪感を抱くので、何だかこれを読んで少しスッキリした。 これから、ブローティガン、カフカ、ディケンズ、メルヴィル、フィッツジェラルド、チャンドラー、サリンジャー、トルストイを読みたい。
1投稿日: 2025.01.09
powered by ブクログすらすらと楽しく読めた。 村上さんの熱心な読者であり自身も作家である川上さんの問いは、情熱的・具体的・切実でありながら楽しそうだ。質問と回答というより、二人がかりで一つの答えを求めて分け入っていくような。 村上さんのファンとしてはこういうものを読むことには少々躊躇いもあったが(個人対個人の体験でなくなってしまうような気がして)、普段は一人で好きなように見ている美術館を、学芸員さんと一緒に巡るような……自分を遥かに上回るオタク(失敬)の話を聞く楽しさもあった。 心に残ったフレーズは「信用取引」、「悪しき物語/開かれた・善き物語」。 「騎士団長殺し」を読み返したくなった。免色さんってやっぱりちょっと、そういうとこあったよな~
0投稿日: 2024.12.01
powered by ブクログ途中からほぼ『騎士団長殺し』の話でこれ絶対『騎士団長殺し』読んでからがいいじゃんと思い一旦やめたんだけどなんとなく再開したら最後まで読んでしまった。『騎士団長殺し』は今日から読みます。ジョン・チーヴァーなどの翻訳作品も読みたくなったし小説も書きたくなった。村上春樹も川上未映子も小説も書くことも好きな私にはとても興味深く心地の良いインタビュー本でした。
0投稿日: 2024.09.26
powered by ブクログ村上春樹さんの小説は好きだが、このインタビュー本は、読みきれなかった。 多分、知りたくない、と思った。 文章の作られていく過程とか、村上さんの想いとか。 村上さんも、ほんとのことはいいたくないんじゃないかな、いいたくなくて、しらを切ってる感じもあった。全部ネタバラシ、しちゃったら、つまらないよね。 村上さんの作品を読む時は、ただふわふわと、村上ワールドに漂いたい。
4投稿日: 2024.07.14
powered by ブクログ単行本で読んでいたが、文庫版のためのちょっと長い対談が読みたくて、文庫版で読んだ。村上春樹が文章以外にラジオでの活動、父親のメモワールを書いた経緯などが分かって良かった。
0投稿日: 2024.05.09
powered by ブクログ注! インタビュー本なのでネタバレ設定にしていませんが、内容にかなり触れています。 年末(2023年のw)、本屋をブラブラしていた時、表紙のフクロウ(あ、みみずく…、ねw)が、なぜかミョーに気に入ってしまって、ついつい衝動買いしちゃった本。 ちなみに、フクロウとミミズクの違いは、羽毛が耳のようにちょこんと出ているのがミミズクで、頭が丸いのがフクロウということらしいけど。 ウチに時々やって来るのは頭が丸い方なせいもあって、ミミズクよりフクロウの方が好きだ(^^ゞ ……って、最近は、文章の終わりに「。」をつけたりすると怒られたり(ニュースで見た)、「、」や絵文字が多いと“おじさんの文章”とバカにされるらしい(『脳の闇』で中野信子が自分だってチューネンのクセに変に上から目線で書いていたw)が、今は多様性が尊重される時代だ(爆) 文章の終わりに「。」をつけるのは、自分にとっては長年の習慣だし。 また、あふれるネットの文章(情報)に、誰もがテキトーに読みがちなネットの文章だからこそ、書いている意図を少しでもわかりやすくするために「、」は、(読みにくかったとしても)あった方が意図が伝わりやすくていいと思う。 絵文字は、エラそぶって書いてるけど、所詮は普通のバカが書いていることだよw、とわかってもらうために、じゃんじゃん多用することとする(^^)/ (ま、例の「。」ハラは、あくまでLINE等、連絡アプリでの話なんだろうけどね) ま、それはともかく(^^ゞ←だから、絵文字多すぎw 本を読むのが好きな人には、本そのものは好きだけどそれを書いた作家には特に興味を感じないという人も多いらしいけど、自分は作家の人となりや考え方にすごく興味を持つ方だ。 読んで面白かった作家は、「作家の読書道」に載ってないか必ず見て、その作家がどんな本を読んできたのかを知るのが楽しいし。 テレビ等で作家のインタビューがあると、知らない作家でもとりあえず録画して見る。 その作家がこれまでどんな風に生きてきたのかとか、世の中をどう思っているかとか、人生観や恋愛観、思想等々、興味があることはイッパイあるが、特にその作家の小説を書くスタイル…、つまり、普段どういう風に小説を作っているか?ということに、すごく興味をおぼえるのだ。 いや、ノウハウ云々ではなく(たぶん、小説を書くのにノウハウはない)。 その作家が小説をどういう風に書いているかの一端を知ることで、あの小説のあの急展開はどの時点で決まったんだろうか?とか、この小説はどんなことを意識して書いていたんだろう?といったことを想像するのが楽しいのだ。 ついでに言うと、その作家が、まがりなりにも作家としてメシ食ってけるまでの苦労話や、業界、さらに読者への恨みつらみの話も大好きだ(^^ゞ ただ。 村上春樹のそれに興味があるか?っていうと、まー、ない(爆) もちろん、それは自分が村上春樹の小説に興味がないからなんだけどさ。 とか言って、実は村上春樹は、例の『1Q84』が出た時、世の中の大騒ぎがすごく不思議で、逆に興味を覚えて何冊か読んだ。 ちなみに、今、ウィキペディアを見ながら確認してみると、その時読んだのは、『羊をめぐる冒険』、『ダンス・ダンス・ダンス』、『スプートニクの恋人』、『アフターダーク』、『海辺のカフカ』。 あと、短編集の『中国行きのスロウ・ボート』、『カンガルー日和』、『螢・納屋を焼く・その他の短編』、『回転木馬のデッド・ヒート』、『パン屋再襲撃』、『レキシントンの幽霊』、『東京奇譚集』だったから、まぁー、そこそこ読んだ。 その時に思ったのは、村上春樹って、面白いのは面白いんだけど。『1Q84』が出た時の、あのバカ騒ぎする面白さというよりは、物語として普通に面白い小説を書く人なんだなということだった。 だから、あのバカ騒ぎっていうのは、(メディアを含めた)騒ぎたい人たちの騷ぎたい人たちによる騒ぎたい人たちのためのネタってことか…、と気付いた。 ていうか、なんであんなに騒いでるんだろう?という不思議さはどーでもよくなって、(バカ騒ぎしていた人たちではなく、たんに)村上春樹の小説を面白く読んでいる人はこれらの小説のどこをどういう風に面白いと思っているんだろう?という興味に変わった記憶がある。 というのは、自分にとって村上春樹の小説っていうのは、面白いのは面白んだけど、でも、妙に「つるんとした小説」なんだよね。 面白く読めるんだけど、触感が「つるん」としているから印象に残らない。 印象に残らないから、頭の中にある好きな本、好きな作家の棚に入らない。 変な話、村上春樹の小説には「ペ●ス」って言葉がよく出てくるけどw、読んだ触感が「つるん」とした感じがするというのは、その語感とどこかダブっている気がする(^^ゞ だってさ。日常で、あるいはエッチの場面で、それをその言葉で言う人っている? いや、他の人がエッチしている時にそれをどんな言葉で言っているかなんて、わかるわけないんだけどさw でも、なんとなく、エッチの時にその言葉を口にしている人っていなさそうな気がしない? そんな言葉を言われたら、むしろ恥ずかしいっていうか、生物学用語で会話しながらエッチしている気がしちゃうっていうか(・・; とにかく、村上春樹の小説っていうと、その言葉の音感も相まって、「つるんとした小説(てろんとした小説って言った方がいいかもしれないw)」というイメージが強い。 それは、不思議なくらいコーフンを催さないエッチのシーンのあの感じと大いにダブるしw また、小説って、読んでいると頭の中にその情景が自然にバァーっと浮かんでくるものだけど、村上春樹の小説の場合は、それが昔の漫画のような画(藤子不二雄みたいな画?)で浮かんでくる、あの感覚ともダブる。 そんな村上春樹だけど、デビュー作の『風の歌を聴け』は、出た当時、本屋に並んでいたのを見て、妙に引っかかったのを憶えている。 それは、本屋で村上春樹のそれを見た時、1979年というその時代の空気を感じたからだ。 つまり、(そのタイミングで自分が読んでいたかどうかは定かではないが)同じ群像新人賞の中沢けい『海を感じる時』のような、いわゆるその当時の一般常識での「文学」とは全然異なるもののように見えたのだ。 だから、本屋で『風の歌を聴け』を見ても、手にとろうとはしなかった。 1979年当時のあの時代に流行っていたものと同じもの、今で言う「シティポップ」とか、やたらと目にしていたカリフォルニアや海辺のリゾートをイメージしたイラストとか、CMに出てくる渡辺貞夫や浅井慎平、なにより当時人気だった片岡義男っぽいアホバカなカッコつけや気取りを感じて、子供ながらに「ダッセーっ!」のひと言で片付けた(爆) そんな流行りっぽくて「ダッセーっ!」のひと言で片付けた村上春樹wが、ミョーに一昔前の文学っぽさをまとった『ノルウェイの森』を出した時は呆気にとられたのを憶えている。 『ノルウェイの森』は1987年くらいだっけ? ウィキペディアで見てみると、87年の9月とあるけど、自分が読んだのは年明けだった記憶があるから、ということは、88年の初めだったのかな? もちろん、上下で赤と緑という、やたら当時っぽいクリスマスカラーな表紙も相まって、秋には本屋に置かれているのを見て気づいていたけど、それにしても9月には出ていたんだ。 その時、『ノルウェイの森』を読んだのは、もちろん流行っていたからだ(^^ゞ ただ、今思い返すと、それよりも、その当時の自分のミョーにうら寂しかった毎日になんかしら彩りが欲しくて、あの赤と緑を手に取ったのかもしれないな?なんて思う(爆) 87年の秋っていったら、個人的には大貫妙子の「スライス・オブ・ライフ」と、やたら地味だったスプリングスティーンの「トンネル・オブ・ラブ」なのだが。 そうか。それらと『ノルウェイの森』って、なーんか、それにある何かと通ずるものものがあるような、ないような……w その『ノルウェイの森』だが、内容は全然憶えていない。 憶えているのは、読み終わった後、友だちにビートルズの「ノルウェイの森」ってどんな曲だっけ?と聴かせてもらって。 なんだ、それならウチにある「ビートルズ・バラード・ベスト20」に入ってたじゃん、と思ったことだけだ。 ただ、読み終わって、悪い感想を持ったわけじゃないんだろう。 だから、ビートルズの「ノルウェイの森」が気になって、どんな曲だっけ?って聞いたんだと思うのだ。 でも、今となっては、「ノルウェイの森」を読んでその時どう思ったか?なんて全く憶えていない。 確かなのは、村上春樹の他の小説を読んだりはしなかったことくらいだ。 そんな村上春樹(の小説)が自分の人生に登場(?)するのは、社会人になって3、4年も経った頃だったと思う。 同僚に、やたらと優秀なヤツがいたんだけど、彼は某国立の文学部出身で。 ある時、彼が村上春樹を語りだしたのを聞いていて、「なんだ。コイツって、村上春樹とか好きなダサいヤツだったんだ」と、心のなかでほくそ笑んでしまったのだ(爆) (ちなみに言っておくと、後に彼は親しい友人になったw) 村上春樹のイメージを自分史的に見るとそんな感じだ(^^ゞ 面白いのは面白いんだけど、なんか「つるんとした小説」か「てろんとした小説」を書く人で。 それがあるから、読み終わった後、「あぁー、面白かったぁーっ!」と、素直に言う気にならない(なれない?)作家。 だから、村上春樹本人にも何の興味も感じない。 言ってみれば、「ジャズファンなんでしょ? なら、ジャズでも聴いてればぁ?」って感じ?←ジャズ嫌い(^^ゞ そう、あと、『1Q84』の大騒ぎで村上春樹の本を読んだ時、ウィキペディアを見たら、レディオヘッドが好きみたいなことが書いてあって。 (レディオヘッドが大嫌いな自分としては)ダッサぁ〜とか思っちゃったこととかw そんな自分が村上春樹を見直しちゃったんだから、この本はスゴい!(爆) なにがスゴいって、P145にある、“物語というのは、解釈できないから物語になるんであって、これはこういう意味があると思うって、作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなもの面白くもなんともない。(中略)作者にもよくわかってないからこそ、読者一人ひとりの中で意味が自由に膨らんでいくんだと僕はいつも思っている”は、目ウロコで、ものすごくエキサイティングだった。 バカな話だけど、村上春樹のイメージが540度くらい変わった。←180度でいいだろ!w そう。そういう意味では、この本は第二章に入ってからの方が面白い。 第一章は、インタビュアーの作家がファンであるがゆえに、村上春樹を奉りすぎちゃってて、言ってみれば「村上春樹さまからご託宣を聞く」みたいになっちゃっているのに対して。 第二章以降は、村上春樹 > ファンの関係は引きずりつつも、なんとかかんとか、村上春樹 vs 作家・川上未映子の話として形になっているように思う。 というのは、読んでいると、村上春樹が大人気(オトナゲねw)を出して、少しでもこのインタビューが形になるようにと、インタビュアーの反応を見ながら発言しているように感じるんだよね。 変な話、へぇー、村上春樹って、こんな風な人だったんだ…、と意外な気がしたって言ったらいいのかな?(^^ゞ もっとも、第一章にも面白いところはある。 小説(フィクション)におけるリアリズムへの意識の差…、未だ”今”を意識することから逃れられないことにジレンマを抱える川上未映子と、批判されることで"今”を解脱してしまった村上春樹の意識の違いは興味深いし(ま、現在の日本の本の世界において、村上春樹は絶対神になっちゃったからっていうのもあるのか?w)。 初期の頃、たぶん批判に嫌気がさして海外にいっちゃう前の村上春樹が持っていた、"前の時代に対する反抗心”なんかは、ちょっとワクワクする。 こんなことを書くと怒り出す80年代アレルギー過多の人wもいるかもしれないけど、村上春樹というのは、戦前からずっと引きずっている日本の文学(純文学?)にあった、あの「貧乏=正義」ではなく、(70年代の終わり〜)80年代以降今に続く、日本の現在の豊かなライフスタイルの肯定で小説(文学)を書き始めた作家のように思うのだw ただ、それと同時に、戦後の進歩的文化人的なあの感覚(=それまでの日本文学)から逃れられない人でもあるような気がするんだよね。 その、60年代でもなく80年代でもない、言ってみれば、宙ぶらりんな70年代的な位置?、視点?、基点?こそが、今の豊かな暮らしを享受しつつも80年代を全否定する人(というよりは時代?)の感性にすごくフィットするんだと思うのだ(^^ゞ そんなことを書くと、「村上春樹は海外にもファンが多いじゃん」と言う人もいるかもしれないが。 そっちは、「都市化」や「中産階級化」が進むと、村上春樹の小説の感覚がフィットするようになるってことなんじゃない? それは、今、都市化や中産階級化が進んでいるアジア諸国で「シティ・ポップ」がウケているあの感覚と同じだと思う。 あまりいい例えではないけれど、イスラエルには村上春樹のファンはいるけど、パレスチナにはおそらくいない。 そういうことだと思う。 そういえば、終わりにある「文庫版のためのちょっと長い対談」で、インタビュアーだった川上未映子がインタビュアーではなく川上未映子として、“『ノルウェイの森』の世界観や時代みたいなものを、30歳くらい年の違う私が10代で読むわけです。私たちの青春とは違うのに、なぜか自分の話として読めてしまうところがあります。文化的なディティールは共有できないのに、不思議ですよね”と言ってるんだけど。 それなんかは、まさにそういうことのような気がするかな? ただ、川上未映子はその後、“逆に90年代について書かれている小説も結構あるんですけど、まったく自分の青春として読めないのも不思議なんですよね。渋谷とか、ファッションでもいいんですが、90年代の文化ってあるじゃないですか。私が本当に18、19でリアルに聴いた音楽とかリアルなものがリアルに思えない”と言っているように。 村上春樹の書く小説にある、60年代でもなく80年代でもない、ある意味、宙ぶらりんな70年代的なナニカが今の時代にフィットするのは、それは、あくまで村上春樹を読む(好む)人の感覚、さらには、本を読むのが好きな人の感覚であって。 インタビュアーと同世代だけど本を読まない人からしたら、『ノルウェイの森』よりも、自分が90年代にリアルに体感してきたものにこそ、自分の青春を感じるんじゃないのかな? それは、第三章のP277でインタビュアーが、“(『風の歌を聴け』が出た時)最初から若い読者が興奮した、という話をよく聞きます。「来たな、俺たちの時代が来たな」と激烈に感じた人が、今の50代半ばくらいに多いです”と言っているのを見てもそう思う。 1979年頃といったら、一般的な感覚としては文学の本なんて読んでいたら、即「ネクラ(←死語w)」とバカにされた時代だ。 そんな時代に『風の歌を聴け』を読んで興奮していたような人は、大学生等、ごく一部のスノッブな文学ファンのはずだ。 おそらく、インタビュアーは作家であるがゆえに、業界の人の話を聞くことが多いんだろう。 でも、業界の人=一般の人ではないし。 もし、今の50代半ばくらいの一般の人に、『風の歌を聴け』が出た時に“俺たちの時代が来た”と感じた人が多いのだとしたら、それは、今の世に「村上春樹のファンであることは、なぁ〜んかカッコイイこと」という情報(空気)がネットに蔓延しているからにすぎないんじゃないのかな?w それは、渋谷陽一がなにかにつけて言っている、「当時はビートルズファンはマイノリティだった」っていうのと同じだと思う。 ていうか、インタビュアーが、『ノルウェイの森』を世代が違うのに自分の話として読めるのが不思議だ、と言っていたことに戻るけど。 メールだ、連絡アプリだ、チャットだ等々、いくらコミュニケーションが便利に密に出来る、今の時代になっても、恋愛がうまくいかないものであるのは、昔と変わらないわけだ。 人間関係が、今も昔もギクシャクしがちなのも同じだ。 つまり、世の中がどんなに変わって便利になろうとも、人間そのものは結局同じで。 『ノルウェイの森』の世界観を文化的なディティールは共有できないのに、自分の話として読めるのを“不思議”だと感じるのは、いつの時代にもある、その時代の人による昔への上から目線にすぎないように思う(^^ゞ ま、それはともかく。 今の村上春樹の人気っぷりっていうのは、今が”何をするにもまず情報”という面が前提としてあるのは確かだと思うけど、なにより今の感性や感覚に合うってことが大きいんじゃないのかな? だからって、村上春樹を好まない人が、今の感性や感覚からズレているっていうことでは決してなくて。 村上春樹を好まない人というのは、今の感性や感覚に内包される60年代的なもの、あるいは80年代的なものといった、村上春樹の小説にある特定の要素に過敏に反応してしまうってことのように思うんだよね。 60年代も、80年代も、ある意味どちらもスノッブだから(爆) すごくスノッブであり、その反面、スノッブでない、今みたいな世の中を生きているからこそ、同じ感性や感覚を持っていたとしても、ある人は村上春樹の小説にあるナニカが心地よくフィットするし、ある人は受け入れられないっていうのはあるんだと思う。 それこそ、村上春樹の小説を読んで「面白かった」という人、「面白くなった」という人に、なぜそう思ったのか?を聞くことで、その人が「今の世の中」をどう捉えているか、あるいはライフスタイルや消費スタイルが見えてくる…、みたいなマーケティング的な指標をつくることだって出来るかもしれない。 そういう意味では、村上春樹っていう人は、今を解脱しちゃったようでいて、実はその時代の影響をものすごく受けてしまうタイプの人なんだと思う。 村上春樹がマスコミ等のインタビューを受けないようにしている等、(たぶん)意識して自分が世の中に露出しないようにしているのは、自らにそういう面があることをわかっているからなのかもしれない。 繰り返しになるが、第二章にある、“物語というのは、解釈できないから物語になるんであって、これはこういう意味があると思うって、作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなもの面白くもなんともない。(中略)作者にもよくわかってないからこそ、読者一人ひとりの中で意味が自由に膨らんでいくんだと僕はいつも思っている”という、言ってみれば、いい意味での読者への突き放し発言wは、ものすごくエキサイティングだった。 それは、やっぱり第二章で、“「これは出産のメタファーだな」と考え出したりしたら最後だから”、“頭を使って考えるのは他の人に任せておけばいい。それは僕の仕事じゃない”と語っているように。 村上春樹っていうのは、もしかしたら、作家がやることは、あくまで物語を書くことであって。 物語を「文芸」にしてはならない。それを「芸」とするのは他の人、つまり、評論家や読者に勝手にやらせておけばいい、という考え方なんじゃないだろうか? それは、元々ファンであり、なにより、インタビュアーとして、このインタビューの前に過去の作品を念入りに復習してきたであろう川上未映子の追求wに、あっさりと「忘れたよ」と答えたのをみてもそんな気がする。 インタビュアーとしては、あるいは、この本を企画した編集部、さらにはファンからしたら、あの小説のここはどんな意味があるのか?とか、あの小説のこれはどんな意図で書かれているのか?という村上春樹本人による「正解」を期待していたところなんだろうが。 書いた当の本人からしたら、場面場面での意図や意味は瞬間的に頭の中にあったとしても、それは、あくまでその瞬間にあった意図や意味にすぎなくて。 そんなものは、書いた当の本人ですら、時期やタイミングによって全然変わる、言ってみれば、後付けの正解(のようなもの)にすぎないってことなんだろう。 そういえば、篠田節子が、“小説は書き終えるまでは100%作家のもの。書き終えた瞬間、100%読者のもの”みたいなことを言っていたけど、それは村上春樹の「忘れたよ」に通じているんだろう。 ていうか、自分が書いた小説をそういう風につき離せるか否かが、作家の一つの分かれ目なのかもしれない。 そういう意味でも、村上春樹に好感を持った。 自分が文学を読んだのは、せいぜい大学生くらいまでで。 それ以降は、海外ミステリーを中心にエンタメ小説ばかり読んできたわけだが、村上春樹のそれによって、自分がいかにエンタメ小説のお決まりやルールこそが小説(物語)の常識だと勘違いしてきたかを思い知らされた気がする。 物語の中で語られてきたパーツ、パーツが一つ、一つ、収まるべきところに収まっていった結果、読者が今まで見えてなかった大きなストーリが見える、もしくは、読者が思ってもみなかったストーリーに変わるみたいな小説っていうのは、もちろんそれはそれで面白いし、自分もそれを楽しんできたわけだが。 でも、そういう小説っていうのは、本来は小説の中の一つのタイプにすぎないわけだ。 そういうタイプの小説こそが優れた小説だという価値観は、(読者によって)それはそれでアリなんだろうけど。 そういう小説じゃない、読者それぞれに捉え方が違う、あるいは、同じ人が読んでも、読んだ時期やタイミングで印象が違ったり、全然別の捉え方が出来る小説があるというのは、子供の頃、小説を読み出していた頃はおぼろげながらに知っていたはずなのに。 面白い小説、面白い小説と求めている内に、いつの間にか忘れてしまった小説の楽しみ方を思い出させてくれたような気がするかな。 表紙のフクロウ(みみずくねw)で衝動買いしてしまったこの本だけど、そういう意味では、とっても有意義な衝動買いだったと言える(^^)/ そんなこの本は、全体については村上春樹についての本であり、部分的には『騎士団長殺し』についての話であり、また、作家同士の裏話だったりもするわけだけど。 読みようによっては、これからの時代に人は仕事にどう向き合っていったらいいのか?というヒントが書かれている本でもあるように思う。 働き方改革がどんなに進もうと、IT技術によって仕事がどんなに省力化効率化されようと、それは仕事だ。 必死こかなきゃ、お金は貰えない。 なにより、必死こかなきゃ、仕事は絶対面白くならない。 村上春樹の小説が面白いのは、村上春樹が面白くなるように必死こいて書いているからだと思うんだけど、そういう意味でこの本は、「村上春樹流、仕事で楽しく必死こくヒント集」として読んでも面白いように思う(^^ゞ それは、インタビュアーである川上未映子(と出版社の担当者)がこの村上春樹へのインタビューを面白いものにするために、いかに必死こいたか?ということにも通じている。
9投稿日: 2024.05.01
powered by ブクログ村上春樹さんの作品は最近読んでなくてご無沙汰してたけど、この対談は村上さんのコンセプトとか頭の中をのぞいてる感じがして面白かった。しっかり言語化できていてそれがわかりやすいのと村上さんの感性も伝わってきて読んでいて楽しかった^ ^
10投稿日: 2024.05.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
川上未映子さん以上のハルキストはいるのだろうか。 村上春樹さんが忘れていることまで、ディテールまで覚えていてたじたじの場面も。でも、のらりくらり「覚えていない」という春樹さんは本当に覚えてないのかもしれない。 それにしても鋭かった。特に村上作品における女性の描き方、女性の見方についてのところ。 村上さんは、文章を書くのが大好きで基本ポジティブだということ。地下一階の自我の葛藤には興味がなく、地下二階に降りようとしていること。集団的無意識みたいなところに。 文章を読んだら、カキフライが食べたくなるような文章を書きたいというのが、村上春樹さんの目指すところ。 それと忘れちゃいけない直接的なメッセージは決して書かないけど、フィクションの中でかなりポリティカルということ。 この本を読んでさらに村上春樹さんの魅力が浮き彫りになった。川上さんのファンにもなった!
43投稿日: 2024.03.16
powered by ブクログ村上先生の本ということでこの本を読み、川上未映子先生を知りました。 村上先生のファンで小説家になった方なんですね。 小説家は「洞窟内でのストーリーテラー」という言葉が、情景が目に浮かんできました。 お二人の対談が読者に対してすごく誠実で真摯だなと思いました。すてきという言葉では言い表せないくらい、「ああ、こんなことを考えて書いていらっしゃるんだな」というのを文章で読めました。 またいつかどこかで、お二人が対談した記録が本になったらいいなと願っています。
8投稿日: 2024.02.11
powered by ブクログずっと読みたかった本。内容が騎士団長殺し関連の会話が多いので、騎士団長殺しをちょうど読了したタイミングで読み始めた。川上未映子が村上春樹ファンということで濃い内容であったし、そういうの聞きたかったって内容をずばずば質問していて良かった。ラジオ感覚ですらすらと読めた。
16投稿日: 2024.01.24
powered by ブクログ春樹&未映子さんの対談集。両作家とも好きなので購入。ちょうど『騎士団長』を読了直後で、裏話的なこともわかりとても良かった(^^) 鋭い質問も多く、さっすが未映子さん(ハルキストですものねw)と言ったところ…(*´꒳`*) ハルキ作品をもっと読みたいなぁと思わせる良書でした♪
4投稿日: 2023.12.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
予想以上に川上未映子が突っ込んだインタビューをしていて、かなり読み応えがあった。 あの村上春樹が、作品や過去に受けたインタビューで答えた内容との矛盾?を川上から指摘され、ややたじろぐ様な場面もあり、読んでいる方がハラハラ。それでも飄々と村上節でかわしていく?様子はさすがだなと。だけど終始和やかな雰囲気で、2人の信頼関係がこちらまで伝わってきて、作家として人間としてリスペクトし合っているのがめちゃくちゃ伝わってくる。 さすがというか、とにかくインタビューの内容が濃い。かなり勉強になりました。 家に例えると、その人の普段の生活や考えてることを1階とすると、日本の近代文学は地下一階を扱っていて、村上春樹は地下二階を書こうとしているという話。 リアリズムをリアリズムの文体で書くことを試みたノルウェイの森、テーマやストーリーよりも文体が先であること、物語というフィクションは過去から現在、未来に至るまで一番強いポリティカルであり得るのではないか、ここに書き出したらキリがないくらいの興味深い話が繰り広げられて。 ほんまに?!何この人本気なん?!と川上未映子と一緒に村上春樹の井戸に入って何が見えたのか、私は入ってみて本当に良かったです。 さてさて、来年は村上春樹をしっかり読んでみようか!
2投稿日: 2023.12.24
powered by ブクログ「村上春樹解体新書」 純文学という枠には収まり切れない村上春樹の文学。 彼の思考、発想、文体。 本著では、その片鱗を拾い集めるような、重厚な読書体験ができます。 当方、恥ずかしながら川上未映子さんのご著書を拝読しておらず。いち村上春樹ファンの作家さんが当人にインタビューしたものとして読みました。 数日かけて読了し、 彼女の鋭い洞察と、村上春樹の淡々とでもどこか文章に対する並々ならぬ情熱を感じることができました。 日本の私小説への傾倒、テーマありきの作品という業界の動き。 もっと率直に文章に向き合って読書したい。 そう思わせてくれる一冊でした。 現在進行系で村上春樹の著書を読んでいるので、頭の片隅に読むことの面白さを置きつつ読んでいきたい!
9投稿日: 2023.09.11
powered by ブクログこれまで村上春樹の作品を読んで感じてたこと、例えば表層的なヘンテコな出来事の下層に通底するものに読者は共感するのだろうだとか、リアリズムにはフィクションやメタファーによってより迫ることができるのだろうだとか、そこらへんの漠然と抱いていた印象が、村上春樹の語る「地下二階」の話やコンラッドの引用などと符合して興味深く思った。 以前、海外の読者とのやりとりで以下のように書いたら、まったくその通りだと同意してくれたことを思い出した。著者と読者、読者と読者は、村上春樹という励まし、肯定で通底していて、それを確信している。 “Shadow” he mentioned in his speech reminds me of his work "Hard-Boiled Wonderland and The End of the World". "Dreamlike realism" is the very expression which explains his works in short. It is "his" realism that makes us readers connect through the bottom and share kind of agreement, even in his realm of dreamlike metaphors. 川上未映子のインタビューは、村上春樹が小澤征爾にしたインタビューくらいいい仕事をしたと思う。
2投稿日: 2023.08.26
powered by ブクログ【読もうと思った理由】 そもそもの購入理由は、村上春樹氏のことをもっと知り、苦手意識を払拭するためだった。ただ、いちど購入後すぐ読了し、そこから長編小説の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と「街とその不確かな壁」を読み、長年に渡る村上春樹氏の苦手意識を完全に払拭できてしまった。なので、本書の感想もブクログに書いていなかったが、当時読みたい本がかなり溜まっており、感想を書くことを完全に後回しにしていた。そして何ヶ月も経過すると、内容を結構忘れかかっている。今ちょうど自分の中で積読本の解消期間のため、再読するならこのタイミングしがないと思い、再読するに至る。 【川上未映子氏って、どんな人?】 (1976年8月29日〜) 大阪府生まれ。「乳と卵」で芥川賞、『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、『夏物語』で毎日出版文化賞など受賞歴多数。『夏物語』は英、米、独、伊などでベストセラーとなり、世界40ヵ国以上で刊行が予定されている。世界でもっとも新作が待たれている作家のひとり。他の作品に『すべて真夜中の恋人たち』、『あこがれ』、『ウィステリアと三人の女たち』、『みみずくは黄昏に飛びたつ』(村上春樹との共著)などがある。 【村上春樹氏って、どんな人?】 早稲田大学在学中にジャズ喫茶を開く。1979年、『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。1987年発表の『ノルウェイの森』は2009年時点で上下巻1000万部を売るベストセラーとなり、これをきっかけに村上春樹ブームが起きる。その他の主な作品に『羊をめぐる冒険』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』『1Q84』などがある。 日本国外でも人気が高く、柴田元幸は村上を現代アメリカでも大きな影響力をもつ作家の一人と評している。デビュー以来、翻訳も精力的に行い、スコット・フィッツジェラルド、レイモンド・カーヴァー、トルーマン・カポーティ、レイモンド・チャンドラーほか多数の作家の作品を訳している。また、随筆・紀行文・ノンフィクション等も出版している。後述するが、ビートルズやウィルコといった音楽を愛聴し自身の作品にモチーフとして取り入れるなどしている。 【本書概要】 ようこそ、村上さんの井戸へ—— 川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと…。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。10代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なきロングインタビュー。 【感想】 いや〜、しかし川上氏って、村上春樹氏の知識が半端なくすごいんだと、若干引いたのを再び思い出した。作品の内容を村上氏本人より、圧倒的に知り尽くしている。そう、僕が引くぐらいに。本当のファンの人って、こういう人を言うんだなぁってまざまざと感じた。僕もそういうタイプなので、村上氏の気持ちは凄くよく分かる。何のことかというと、一度その仕事が終了し、次の仕事に取り掛かると、以前に取り組んだ仕事のことは、どんどん忘れていく。過去書いた作品の登場人物のことで村上氏が「あれっ、誰だっけ?」というと「〇〇さんですよ」と言うツッコミが、川上氏から入る。インタビューはだいだいそんな感じで、アットホームな雰囲気で進められる。 本書は470ページ弱あり、本来であれば決して薄くない本だ。だが、ファンである川上氏が村上氏にインタビューをする形式なので、この上なく読みやすい。村上春樹氏のことを書いたエッセイ及び対談本は、この本を読む前に二冊(「職業としての小説家」と「村上さんのところ」それぞれの本の感想欄に感想も書いてます)既に読了しており、村上氏の人物像はけっこう把握出来ていた。 ただロングインタビューなので、とうぜん新しい発見や気づきも多い。再認識したことだが村上氏は小説に対しては、この上なく真摯に、そしてこだわりを持って取り組んでいる。職業としての小説家や村上さんのところにも、推敲に関して書いてあったが、本書でも推敲に関して触れている。 書き直しに関してだけは、唯一自慢出来ると、村上氏は話していた。また第一稿を書くときには、多少荒っぽくても、とにかくどんどん勢いに任せて片っ端から書いていくんだと。ただそれだと、話がとっ散らかって矛盾するけど、気にせず書いて後から調整すれば良いと。大事なのは自発性なんだと。なぜなら自発性だけは、技術では補えないからと言う。 実はこの話を学んでから、仕事で文章を書くときや、ブクログで感想を書くときにも応用している。村上氏の言う様に、まずは話の整合性など一切気にせず、思いつくままに書いている。ある程度、頭の中にある書きたいことを書ききってから、そこから推敲に移っていく。そうしないと、文章に勢いがまったく出ないのだ。なので、最初に頭の中で整理してから書いた文章を後から読んでも、まったく面白くない。 本書でもみっちり書いているが、文章を書くということに関して、村上氏は本当に好きなんだと断言している。自分が好きな文章を書いて、生活できている。最高じゃないかと。「好きこそ物の上手なれ」とは、物事を上達する秘訣だと、再認識できる本だと思った。けど、好きなことを仕事に出来ている人などほんの一握りじゃないかと、おっしゃる方が多いかもしれない。いま取り組んでいる仕事が好きになれない方は、以前感想を書いた「人間の建設」に、養老孟司氏と岡潔氏の考えを融合した考えを書いています。気になる方はご覧くださいませ。 実は本書で、めちゃくちゃ日常生活で使える技を教えてくれている。以下だ。 村上氏は本書で、文章を書くときのコツを伝授してくれた。それはたった2つしかないんだとか。一つは会話に動きを生み出すことだと言う。具体的に例を出してくれている。ゴーゴリーの「どん底」という小説で、乞食(コジキ)が話している。「おまえ、俺の話、ちゃんと聞いてんのか」って一人が言うと、もう一人が「俺はつんぼじゃねぇや」と答える。※つんぼとか乞食は今は差別用語で使えない言葉だけど、昔は使っても良かったと村上氏はフォローしている。 これが普通の会話なら「おまえ、俺の話聞こえてんのか」「聞こえてら」で済む会話だ。でもそれだとドラマにならないという。「つんぼじゃねえや」と返すから、そのやり取りに動きが生まれるんだと。単純だけどすごく大事な基本なんだと。実はこれが出来ていない作家が、世間には沢山いると村上氏はいう。 また2つ目は比喩表現だという。チャンドラーの比喩で、「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というのがある。これがもし、「私にとって眠れない夜は稀である」だと、読者は特に何も感じない。すっと、読者に読み飛ばされてしまう。でも、「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というと、「へぇー!」っと思う。「そういえば太った郵便配達って見かけたことないよな」みたいに。それが生きた文章なんだと。そこに反応や動きが生まれる。「つんぼじゃねぇや」と「太った郵便配達人」、この二つが村上氏の文章の書き方のモデルになっているんだという。そのコツさえつかんでいれば、けっこういい文章が書けると、村上氏は話していた。 この二つのコツを読んだときに、文章を書くこととコミュニケーションは、本当に似ていると再認識した。比喩は「たとえ話」とも言い換えられる。ある芸人が昔言っていたが、トークが面白い人は、もれなく「たとえ話」が面白いと。また「武士道」の感想でも書いたが、アインシュタインの名言で「6歳の子供に説明出来なければ、理解したとは言えない」というのがある。この名言の本当に伝えたいことは、難しい内容や専門知識を、いかに素人の人でも理解できるように、分かりやすい言葉に変換して伝えるということだ。分かりやすい言葉に変換するときに、例え話を活用すれば、より納得感が得やすい。 実はコミュニケーション本にも例え話を会話に活用することは、よく書かれている。なるほど。それを文章を書くときにも流用すれば良いんだ。今回めっちゃ良いことを教えてもらった。いきなり明日から実践投入していこうと思った。 また村上氏は文章を書く練習として、牡蠣フライについて書くことは、非常に難しいので練習になるという。具体的には、牡蠣フライがどんなふうに美味しいか、どんなふうに揚げるときにジュージューという音が美味しそうに響くかとか。それをできるだけ文章で、ありありと書き込む。それは村上氏にとって、文章を書くための大事な訓練だと言っている。 この部分を読んだときに、そりゃ、村上氏はいつまで経っても文章力がアップデートされ続ける訳だわと、感服した。牡蠣フライのことを具体的に文章に書こうとするなんて、年がら年中、文章のことをずっと考えてないと、そもそも思いつきもしない。つまり村上春樹氏は、何十年にも渡って、毎日どうやったら文章が上手くなるのかを常に考え続けているということだ。 以前「ヒエログリフを解け」の感想にも書いたが、天才と呼ばれる人は例外なく、一つのことに何十年も集中して取り組み続けている。ニュートンも、アインシュタインも、養老孟司氏も、そしてもちろん、村上春樹氏も。だからだろう、アインシュタインの以下の名言が染みわたる。「私は、それほど賢くはありません。ただ、人より長く一つのことと付き合ってきただけなのです。」 【雑感】 次は、「文学の淵を渡る」を読みます。この本は、大江健三郎氏と古井由吉氏の対談本だ。実は二人を知ったきっかけは、伊坂幸太郎氏が編者として携わったアンソロジーだ。(「小説の惑星」という本です。)実はこの二人とも短編を数本しかまだ読めていない。古井由吉氏と大江健三郎氏は、僕が今後、真剣に読んでいきたいと思っている作家だ。 大江健三郎氏はノーベル文学賞を受賞しているので著名だが、古井由吉氏はどちらかというと、知る人ぞ知る作家だと思う。この方は僕のような素人ではなく、プロの作家が次の新作を心待ちにしていた作家だったらしい。(詳しくは、平野啓一郎氏の「小説の読み方」の感想に書いています。)あの伊坂幸太郎氏が、古井由吉氏の「先導獣の話」を読んで、完璧な小説と絶賛していた。(「小説の惑星 ノーザンブルーベリー編」) ただこの本、パラパラと読んでみたが、二人が過去に読んだ日本の作家の感想をメインで語っている。その作家が、僕がまだまだ手を出せていない近代の作家が多い。なので、近代の作家をある程度読んでから手を出す方が良いかなとも思った。だがそうなると、この本を読めるのが数年後になってしまう。それなら積読本解消のこのタイミングで、読んでしまおうと思った。
88投稿日: 2023.08.06
powered by ブクログこんなに話し手の意図を話し手と同じ次元で汲み取れて、聴ききれなかったと思ったらそこで怯まずに踏みとどまってさらに聴きなおすことができて、こんなすごいインタビュアーさんがいるなんて……。川上未映子さんだから聴けたお話ばかりで、ほんとうに面白かった。
3投稿日: 2023.03.10
powered by ブクログ村上春樹の底の底にまで迫ったインタビュー。 以前読んだ春樹と龍の対談本『ウォーク・ドント・ラン』と比べても、圧倒的に深い。春樹氏のインタビューでこれまでこんなに深く潜ったようなものは読んだことがなかった。村上春樹の地下一階を暴いていると思うし、なんなら地下三階くらいまで行ってそう。 インタビュアーの川上未映子は春樹の大ファンらしく、村上作品に対する愛着、記憶、理解力どれもすごいのだが、何より感心したのは、え!そこまで突っ込んで聞いていいの?というところまで踏み込んでいく川上さんの勇気というか率直さというか。まさに読者が春樹氏に聞きたかったことを代弁してくれている気がする。村上春樹ファンなら楽しめること間違いなし! 『騎士団長殺し』を上梓した前後のインタビューだと思うので同作に対する言及が多めだが、『騎士団長殺し』を未読だった僕でも楽しめた。読むたびに違う発見がありそうな本でした。
5投稿日: 2023.02.22
powered by ブクログ芥川賞作家の川上未映子さんが村上春樹氏に4回にわたりインタビューする対談集。内容は、主に村上氏の小説の書き方、文章へのこだわり、スタンス、特にインタビュー直前に発行された「騎士団長殺し」について、様々な角度から切り込む形である。 村上氏は過去の著作をあまり振り返って読まないそうで、その理由は今ならもっとうまく書けるのにと思ってしまうからとのこと。本書の中でも、「え、そんなこと言ったっけ?」とか、小説の登場人物の名前を忘れたり、覚えていないこともたくさんあった。 私はわりと最近「村上さんのところ」を読んだので、彼の人柄や考え方は入っていた。基本的なところは一貫している。 本書では、川上未映子さんの事前準備に驚かされた。村上氏の過去の著作を短編含めてすべて読みこなしているだけでなく、発表した順番やスタイルの変化など研究し尽くしていた。それだけでなく、村上氏の愛読書や翻訳書、好きなジャズ音楽や哲学書についても勉強してあって、彼女のプロ意識が感じられた。 小説家というのは、たとえ稀有な才能があっても大変な職業なんだな、と改めて感じた。
3投稿日: 2023.02.13
powered by ブクログめーっちゃ面白かった。 川上さんだからこそインタビューを受けたそうで、かなりグイグイ突っ込んでいて村上さんもタジタジ笑 小説を創作する上でどんな手順を踏んでいるのかすごく気になっていたけどビックリするくらい自由だった。 リアリズムな印象な村上さんだけど、小説を書く際はイタコみたいなものに憑依したりもしくは何かを降ろして?書いているらしい。 その現実と非現実の間の境目に自分の影があるんじゃないかと言っていて、なるほど〜ってか天才すぎて言ってることが訳わからないって笑っちゃった。 だってイデアとメタファーを理解してなくて騎士団長殺しを書いたらしいですよ。 もう川上さん口あんぐりだっただろうな、、、。
3投稿日: 2022.12.31
powered by ブクログ2022年の150冊目。 川上未映子さんが、村上春樹さんの井戸に一緒に入ることを試みた対談集。かなり、井戸の深いところまで二人で潜っている、そんな印象だ。 川上さんは鋭くつっこみ、村上さんが楽しそうに真剣に受け答えたり、華麗に受け流したり、そんな展開で、飽きることなく(文庫本だが)437ページの対談を読み切った。 特に、面白かったのは、村上作品に出てくる女性について「男性の自己実現のために、血を流して犠牲になっている」例が多いと言及しているところ。 川上さん、強いなあ笑 「女の人が性的な役割をまっとうしていくだけの存在になってしまうことが多い」とか 「井戸とかに対しては惜しみなく注がれている想像力が女の人との関係性をおいては発揮されていない」とか、けっこう言いたい放題。 それに対する村上さんの受け答えは見ものです。 あと、村上さんから「僕より小説をうまく書ける人というのは、客観的に見てまあ少ない」という発言を引き出した川上さんはインタビュアーとしてすごい!
59投稿日: 2022.12.18
powered by ブクログ村上春樹がよくインタビュー等で言ってる物語の作り方は、こっちからするとそんなんウソだろという感じなのだけど、同じ点を川上未映子が再三ツッコんでいるのが良かった。
0投稿日: 2022.05.23
powered by ブクログ深読みしすぎな人、もうちょっと肩肘張らずに読めば良いのにとか思うくらいの村上さんの語りと、それを引き出す川上さんの対話が魅力的だった。 文体が最優先だから、中身が正確に思い出せないのかと勝手に納得
3投稿日: 2022.03.30
powered by ブクログ村上春樹さんが文章を書く上で大切にしていることをを、聞いて目から鱗が落ちた。 大事なのは語り口。小説でいえば文体です。 信頼感とか、親しみとか、そういうものをうみだすのは、多くの場合語り口です。まず、語り口に魅力がなければ、人は耳を傾けてくれない。 できるだけわかりやすい言葉で、できるだけわかりにくいことを話そうと。 確かに好きな作家を選ぶ時、私の場合ストーリーというより、文体やリズムが合うみたいなことを本能的に感じとっている気がする。
3投稿日: 2022.03.07
powered by ブクログ「物語は簡単には無くならない」…! 身体を使って(?)生きていきたいと思い続ける、思い続けたい 飲み込むように読んだ
1投稿日: 2022.01.16
powered by ブクログのらりくらりとした師匠と優秀な弟子の対談みたいな、2人のやり取りが絶妙。 村上春樹の読者は内的な読書を求めてるとか、壁抜けの話とか、今まで村上さんの小説を読みながら感じていた感覚が言語化されていくのが面白い。本人の言葉だから納得感もある。 女性の描かれ方について聞くところは、川上さんのストレートな質問がスリリングで、でも村上春樹小説の理解者としての部分も聞き手として見えてきて、絶妙なバランス感覚で面白かった。 最終章、小説の書き進め方を数字のメモを見返しながら話していくところは、ものづくり論としても興味深かった。「書き飛ばし」のくだりとか。 村上春樹さんの本も川上未映子さんの本ももう一度読みたくなったし、なにより村上春樹のことも川上未映子のことも好きになった。そんな本でした。
3投稿日: 2022.01.16
powered by ブクログ村上春樹さんの作品はジャンル問わずほとんど読んでいると思うけど、これは読み切るのに時間がかかった。普段からインタビューを読みつけていないからか、「もう少しそこは踏み込んでほしい・角度を変えて問い直してくれないかな」などと考えてしまって入り込めなかったのが原因かもしれない。 「多くの人は締切りありきで、背中を押されるようにして書いているから、時間をかけて自分の作品を読み込む、検証するということがあまりできないんじゃないかな」とか、「行為総体から切り離された分析は、根を引っこ抜かれた植物のようなもの」とか、書くことと考えることの相違に関する記述とかは、文章を書くものとして身につまされる部分があった。 後は、SNSを純粋な消耗と言い切れる村上さんの年代が羨ましい。SNSに関しては若年層はそんなに割り切れる立場にいない。
2投稿日: 2022.01.15
powered by ブクログ村上春樹は「物語の力」を信じているし、読者との「信頼関係」を重んじている。だからいつも、安心して読める。そういう作家はきっと稀有なのだ。 彼の人格、主義、主張の是非など一切問わず、一読者としてのまっさらな川上未映子がするすると切り込んでいくさまは、いっそ気持ちいい。
1投稿日: 2022.01.08
powered by ブクログ読み応えあり!積読していてやっと読了。川上未映子訊く、村上春樹氏が語る。 デビュー当時から騎士団長殺し、村上RADIO、村上ライブラーまでのロングインタビュー。川上未映子さんの鋭いツッコミがとても良かった。 題名は突然浮かんできて、そこから物語が始まるとは驚いた。村上春樹氏の事が良くわかる貴重な本だと思う。ミネルヴァの梟の事は知らなかった。 大切なのは文章、そしてリズム。それが村上春樹のこだわり。
7投稿日: 2022.01.06
powered by ブクログ騎士団長殺しの政策秘話が聞けて良かった。 文章力とは読みやすさを追求していく事である。心に響く語り手とは謙虚であり誠実なんだと痛感した。 読みやすくて心地よい二人の対談に癒された。
2投稿日: 2021.12.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
川上さんと村上さんの対談記録。川上さんの質問がかなりパーソナルな部分にも迫るものだったから(フェミ的観点からの指摘の部分なんか特に)たじたじしつつ受け答える村上さんが浮かぶようで新鮮でした。
1投稿日: 2021.09.21
powered by ブクログ村上春樹さんにとって小説とは何なのか、について、川上未映子さんが質問攻めにしている本でした。 村上さんは、読みやすい文体を大事にされてること、物語にメッセージや意味を込めたり伝えたりしようとはしてないこと、自我に関する悩み(やその解決)という次元で書いてはいないこと、それよりもっと、無意識(深層心理?)に近い領域で物語をかいていること、読み方は読者に委ねていること、などがわかりました。 川上さんの質問が鋭く熱心なのに対する村上さんの脱力加減というか自然体加減がすごい。面白かった。言及される作品も読みたい気持ちになった。 村上さんが人として謙虚だが小説家としてはプロ意識・自信に満ちてるところも読んでて楽しい理由かもと思った。
2投稿日: 2021.09.05
powered by ブクログ作品全体に暗喩の雰囲気が漂う村上春樹がよもやプラトンについて明るくないどころか洞窟の比喩も知らないとは、、、、。 徒然に、ある種、語感だけでメタファーとイデアを持ち込んで騎士団長殺しを執筆していると考えると身震い。作品を読むたびにこの人物が象徴しているものはなんなのかなあ、わかんないなあとか思ってたけどそんなこと考える必要もないんだな。 「もやっとした総合的なものを読者がもやっと総合的に受け入れるからこそ、それぞれ自分なりの意味を見出すことができるんです。」 わかりやすいステートメントではなく、善き物語としての小説、それもわりかし長い小説という形で発信を続けていく村上春樹の作品を今後も追い続けていきたいと感じた。
2投稿日: 2021.09.01
powered by ブクログ対談である。そして、その作品として「騎士団殺し」があげられている。自分は未読なので、内容を理解できないと思われた。あとで機会があれば読み直したい。
0投稿日: 2021.08.16
powered by ブクログ「騎士団長殺し」についてのインタビューなので、読んでないとわからないと思う。半分ぐらいで停止。そのうち再読する。
0投稿日: 2021.08.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「対談」って手抜きで本を作ってテキトーに売ってる印象があって普通は読まないんだけど、村上主義者なのでこれは読みました。 対談じゃなくてインタビューですね。村上春樹を死ぬほど熟読して、どこに何が書いてあるかも、小説の登場人物についても知り尽くし、村上春樹がどこぞのスピーチで何を言ったかもフォローしている川上未央子氏の、一作家として、読者として、ファンとしてのすごいインタビュー。「騎士団長殺し」に出てくる「イデア」と「メタファー」についても一体何なのか(多くの読者が聞きたいところ!?)掘り下げて聞く。 …まぁ答えは例によって「僕にもわからない。」なんだけど。 一番心に残ったのは、あぁつまり、村上春樹は本当に小説のテーマとか構造とかそんなものはどうでもよくて(どうでもいいというか二の次で)、ただ単に「文章を書くのが好き」という話。「文章を書くのが好き」。「なんでもいいから何か書きたい」。「なんかフレーズが頭に浮かんで、そこから物語が発展する」。 大学で文芸サークルみたいなのに所属していたとき、みんなそういう感覚だったな、と(もちろん本物の作家とは全然レベルは違うんだけど)思った。 私も文章書くのが好き。読んで、書くのが好き。だから読書のレビューもこうしてコツコツ書くし、新聞に投書したりする。あとけっこうこまめに人に手紙を書きます。素敵な自分らしい文章をこれからも書きたいな。
4投稿日: 2021.08.08
powered by ブクログ読み始めは「???」だったけど、読み終わった時は定期的にやって欲しいと思いました。 「そんな質問しなくても」とか「失礼じゃない?」って思う質問も慣れてくると(ってなんか変な言い方だけど)面白くなってきた。 小説を読んでいる感じで、インタビュアーの川上未映子さんに自分がなって村上春樹(ここは敬称略)に聞きなさたいこと聞いているような。 そんな感じです。
1投稿日: 2021.05.30
powered by ブクログhttps://yoshimor.hatenadiary.jp/entry/2021/03/22/053000
0投稿日: 2021.04.26
powered by ブクログ『思いもよらないことが起こって、思いもよらない人が、思いもよらないかたちで死んでいく。僕が一番言いたいのはそういうことじゃないかな』 『僕の文章というのは、基本的にリアリズムなんです。でも、物語は基本的に非リアリズムです』 『つまるところ、小説家にとって必要なのは、そういう「お願いします」「わかりました」の信頼関係なんですよ』 『物語とか、男性とか井戸とか、そういったものに対しては、ものすごく惜しみなく注がれている想像力が、女の人との関係においては発揮されていない…いつも女性は男性である主人公の犠牲のようになってしまう傾向がある』 『トロントの新聞によると、トロントの書店で盗まれる本は村上春樹が圧倒的に多い』 『紙がなくなっても、それが善き物語であれば続く…たとえ紙がなくなっても、人は語り継ぐ』 川上未映子さんが村上春樹さんに13時間に及ぶインタビュー。 村上さんの文章に対する思いや、川上さんの鋭い問いかけ(得に女性について)がイイ‼️ 『騎士団長殺し』を読み直すはめになりそうだ。
1投稿日: 2021.04.21
powered by ブクログ★★★2021年4月★★★ 読み終わってからだいぶ経つ。 本に入れた折り目を見直しつつ、印象に残ったことを書いていく。 村上「本当のリアリティっていうのは、リアリティを超えたもの」 「ボイスをよりリアルなものにしていく。それが僕らの大事な仕事」 「学生運動の頃の、言葉がまったく無駄に終わってしまったことへの怒りみたいなものが強くあった」 「トランプは人々の地下室に訴えることだけを言いまくって、それで勝利を収めたわけ」 「日本人の感覚では、あの世とこの世が行き来自由なわけです」 「僕にとっては文章がすべてなんです」 「自分がそうであったかもしれないけど、実際にはそうではない自分の姿」 「『つんぼじゃねえや』と『太った配達人』、この2つが僕の文章のモデルになっている」 「物語の『善性』の根拠は何かというと、要するに歴史の重みなんです」 川上「その物語自体を自分の経験として引き寄せていた」 「そう、まあ、ごく控えめに言って最高ですよね(笑)」 「神話や歴史の重みそれ自体が無効になっているとは思われませんか、村上さん。」
1投稿日: 2021.04.11
powered by ブクログ村上春樹さんと川上未映子さんのロングインタビューを1冊にまとめた本書 村上さんの文章に対するひたむきさや川上さんの鋭い質問、読んでいて楽しかったなー。 あの特徴的な比喩も村上さんの小説を書く上で意識していることで、小説を作る上での裏側を興味深かった。 たとえ紙がなくなっても人は語り継ぐ このセリフいいです。 次に本を読むときは文体を意識して読んでいきたいな。
1投稿日: 2021.02.06
powered by ブクログ前半面白い。村上春樹も川上未映子も好きな作家だ。川上さんのサイン本持ってる。でも、本作の内容はかなり文学?に精通していないと、私のように置いてきぼりをくらう箇所も多いのかな?
0投稿日: 2021.02.02
powered by ブクログ川上未映子による、村上春樹へのインタビュー本。 とても興味深いのだが、おそらく1割程度しか理解できていない。でも楽しい。 父親の書斎で高等数学の本を見つけてほとんどわからないくせに背伸びして真剣にわかるところをたぐりながら読みすすめるような感覚で、ところどころ現れる「ここは何となくわかる!」をモチベーションに、思考停止を繰り返しながら文字を追った。 実はノープランで書きながらの肉付け(削り)とか、似たパターンも文章が変化していれば進化だとか、地下二階に降りていく話、壁抜けの意味、言いたいことは言わない、優れたパーカッショニストは大事な音を叩かない、悪いようにはしなかっただろ?という信頼関係、etc インタビュアーの川上未映子の図々しさがとても良い方向に働いていて(笑)、村上春樹の本音を聞けた気がして、貴重な体験になった。お互い認めあっているからこそのインタビューでむしろ対談といっても不足ない内容だった。1割しか理解してなくて言えた立場じゃないけど。
3投稿日: 2021.01.18
powered by ブクログ村上作品がどうしてこんなに他の作家の作品と違うのか。手法を明らかにしたところで、それをできる人はそうそういない。
0投稿日: 2020.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
予想外に楽しめる一冊。作家同士の対談で、川上未映子の村上に対するリスペクトと深読みがわかる。 一方村上は、過去の作品につての記憶が薄れているとのこと。ありえそう。 作品への姿勢は、終始変わらない。70歳の村上の作品は、あと10年は楽しみたい。
1投稿日: 2020.12.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
川上未映子氏が村上春樹氏にインタビューを行う対談集。 川上氏の作品は一度読みかけて放り出した記憶があり、本書も少しとっつきにくいかと思ったものの、作者の口語ならと思い購入。 村上作品のファンであり、自身も作家である川上氏の質問・対話の切り口は非常に面白くて、結果として買って良かったと思います。 特に「女性が性的な役割を担わされ過ぎていないか」という点について川上氏が村上氏に切り込む件はなかなかスリリングでした。
1投稿日: 2020.10.25
powered by ブクログ文庫化されたので実に3年ぶりに再読。 どんなこと書いたっけなぁと思ってレビューを読み返そうとしたら何も書いてなかった。そうだそうだ、あまりに濃密で果敢で超絶怒涛のインタビューに圧倒されて言葉が出てこなかったんだ、と思い出した。 インタビュアーとしての川上未映子さんの資質には、ほんとうに驚くべきものがある。 この本をまだ読んでいなかった2016年頃、NHKのSWITCHという番組で「君の名は。」の公開間近だった新海誠監督にインタビューをしている未映子さんを見たことがあって、彼らはイノセンスについての話をしていたのだけど、未映子さんはそのとき新海誠監督が話すイノセンスに「季節は?」ってさらに突っ込んだ質問をしたのね。 私はそれをきいたその瞬間に、全信頼を未映子さんに寄せたのを確かに覚えている。イノセンスの季節を知ろうとする人を私は絶対的に信頼する。 この本の中で村上春樹さんも言及していることだけれど、作者と読者の間に必要なのは信頼関係だと強く思う。 「どや、悪いようにはせんかったやろ?」というあれ。 それにしても3年前に読んだ時と今とでは、やっぱりあらゆる変化(成長といってもいいかもしれない)がある。 川上未映子さんの小説はすべて読んだし、村上春樹さんの猫を棄てるだってンダーグラウンドだって読んだし騎士団長殺しだって読み返したし。グレートギャツビーもキャッチャーインザライも読んだ。村上RADIOも聴いた。 とにかく前回とは比べられないほど深い次元で吸収することができた気がする。地下二階の話が特に興味深くて、あぁ私がなぜ村上春樹をこんな好きかって地下二階に連れて行ってくれるからなんだ、って気づけた。 大切な言葉はいくつもいくつもあった。 「大切なのはうんと時間をかけること、そして「今がその時」を見極めること。村上さんはくりかえしそれを伝えてくれたように思う。ミネルヴァの梟がそうであるように、物語の中のみみずくが飛びたつのはいつだって黄昏、その時なのだ。」
9投稿日: 2020.10.07
powered by ブクログ川上さんの質問すごい、ほんとうによく準備してきたのがひしひしと伝わる。自身の考えも織り交ぜつつ、うるさいほど肯定するわけでも否定するわけでもない姿勢がまずすてきだなあと思った。地下2階の話、おもしろいです。村上春樹作品を読んでいて感じる、「どうして自分だけが考えていたことがここに?」の理由がすこしわかった気がします。
2投稿日: 2020.10.04
powered by ブクログ感想=https://twitter.com/lumciningnbdurw/status/1301308382616276992?s=21
1投稿日: 2020.09.03
powered by ブクログステキな2人の対談、楽しみにしていたけど予想以上によかった!川上さん、相当準備したんだろうなと節々で感じる。話の引き出し方が秀逸。これまでみたこともない村上さんの顔が見えたように思う。
0投稿日: 2020.06.18
powered by ブクログとても読みやすく面白かった。 なるほど、と思うこともあれば、なんだこれ、と思うこともあり、そのバランスが心地よかった。 村上春樹の考えや人となりを知るにはとてもいいと思う。
0投稿日: 2020.04.12
powered by ブクログ重厚なインタビュー。 川上未映子さんは村上春樹さんの小説とその熱心な読者たち(或いは村上春樹読書としての自分自身)について鋭い考察がなされている。 p40『村上春樹をめぐる読書は「内的な読者」というニュアンスが強いと思うんです。面白い何かを外に取りに行くっていう感じじゃなくて、そこに行けば大事な場所に戻ることができる』 まさに熱心な村上春樹の読者はこの感覚が強いのだろう。 だから、原初的な、最初に村上春樹を体験した感覚を大切にしているし、まるで愛着障害かのように引きずってさえもいる。 従って、新しい長編が出るたびに村上春樹らしかった、とからしくなかった、とか言って満足したり、裏切られたように哀しくなることもある。 あの時読んだ村上春樹はもうここにいないんだ、とか。 川上未映子・村上春樹両者の物語の作り方が大きく異なる事も明らかになったように感じる。 村上春樹はこの本の中でも語っているように、「洞窟の中で語るストーリーテラー」的な語り部であるという点。 この点においては一種の集合的無意識が村上春樹という語り部を通じて春樹の小説という元型として表出していると考えることもできるだろう。 従って、世界の多くの人が共感可能となる交換可能な主人公が生まれる。 それ故にバルガス・リョサやガルシア・マルケスのような南米文学、レイモンド・チャンドラーやらサリンジャーのような北米の物語性とも連なっているのだろう。 一方で川上未映子においては、集合的無意識ではなく、個人的無意識に抑圧された葛藤や、実存が物語となっていそうだ。 p.234『何かものを書く時って、鮮烈な体験がベースにあったりしませんか。(中略)それらの関係を克服する行為だったりもする訳じゃないですか。-村上 そうなの?』 従って、両者は物語を書くにあたっての根底が大きく異なっている。 このインタビューの中で村上春樹は自身について『どこまでも個人的な人間だと思っている』と語っているが、およそ表現された物語は川上未映子の方がどこまでも『個人的』と捉えることができる。 とはいえ、これはどちらが優れているとか言う優劣の次元では比較できない。それこそイデアであるかもしれない。 ではなぜ、物語を求めるのか。 物語よりも、How To本や自己啓発本、株で儲けるテクニック云々が書かれた本の方が、役に立つではないか。 小説を読む理由がわからない、と言う人は一定数存在する。むしろ増え続けているとすら感じる。 しかし、物語には役に立つ・立たないとか、ある考え方が好きか嫌いかと言う二元論の次元を超えた力が存在する。 P.462『村上ー 今のSNSもそうだけど、みんな自分の好きな意見だけ読む訳ね。自分の嫌いな意見には悪口をいっぱい書くわけじゃない。そういうものに対抗できるのはフィクションというか、物語しかないと僕は思っている。』 物語を通す事で一定の距離が置かれて事象を眺める事ができる。 同じ文章でも自己啓発本やhow-to本、ヘイト書籍やそのカウンターヘイト書籍、Twitter等々の文章は唯一の立場に依って立つ他ない。 しかし、物語ではその構造から距離を置くことができる。 ほどよい母親と言ったのはD・ウィニコットだった。曰く、子どもはほどよい距離の中で安心感と自立欲求を満たすことが出来る。 物語を通して見ることで、自身の考え、筆者の考え、社会一般通念や価値観とをそれぞれ冷静に眺める事ができるようになる。 かつてニーチェもパースペクティブの重要性を説いていたように。 およそ、2010年代から徐々にパースペクティブやほどよさが損なわれ、よりわかりやすい極端さを求めるようになっていないか。 余裕よりも集約、寛容よりも排斥、科学よりも願望。 我々はスマートデバイスを手にしてプレモダンへ退行してしまったようで。 その他 嫉妬心について、牛河のセリフ。懐かしい。よく覚えている。 P185『「それは自分自身が欲しくて欲しくてどうしようもないもの、死んでも手に入れられないかどうかわからないものを、いとも簡単に手に入れている人を見た時に湧き上がる感情ですよ」 バーで飲んでいて、隣の女性と話しが弾んだと思ったら、さらにその隣の男性に話題を持っていかれ、一人で会計を済ませる感覚だろうか。
4投稿日: 2020.03.16
powered by ブクログ面白かった。川上さんの鋭い質問、疑問を感じると諦めずに何度もぶつかっていく姿勢が新鮮で、村上さんが少し答えに窮している感じも初めて見ました。ライブ感が伝わってきて読み応えあります。 川上さんは小説家で元々村上春樹作品の熱心な読者とは言え、インタビューをする側の事前準備としてはこのレベルまで行かないと、深い話は聞き出せないんだと感じました。準備の質と量が凄いです。
2投稿日: 2020.03.10
powered by ブクログ村上さんは、本当に誠実な方だな、と改めて思った。 川上さんの質問は、インタビューという枠を超え、作家としてその創作のあり方を「知りたい」気持ちそのままに、どんどん追求していく感じで、そこまで聞く?とハラハラするくらいだけど、村上さんがどこまでも答えてくれるからこそ、だと思う。
3投稿日: 2020.03.07
powered by ブクログ対談物をあまり読まないが、テンポよくスルスル読めた。 不思議と読みやすい。 鋭い質問をどんどんしていて、こんなふうに小説書いていたのかと感じることができた。
0投稿日: 2020.02.27
powered by ブクログいやあ、語ってますね、村上さん。川上さんが聞き上手なのか、村上さんが70歳を迎えて思うところがあるのか。今まではぐらかされていた様々なことを、川上さんがズバズバと切り込んでくれています。なぜ文壇や私小説が嫌いなのか。なぜ主人公は30代なのか。なぜ登場する女性が性的な役割を担わせられるのか。などなど。読み応えありました。しかも堅苦しくなく、ユーモア満載の軽快な会話の中で。 「物語」に対する村上さんの熱い思いにも、心を打たれるものがありました。本当に物語の追い求めている作家さんなんだな、と。なんだか『サピエンス全史』の「認知革命」を思い出しました。「物語」を創れることは、人類の根源的な力なんだという話。村上さんの次の「善き物語」を期待しています。
3投稿日: 2020.02.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
再読。やはり川上さんの予習量が半端なく膨大で恐れ入る。ファン目線と作家目線の両方からの遠慮のない質問が村上さんの答えを豊かに引き出している。村上さんも答えるのが楽しそうなのが伝わってくる。作家にとって書かれた小説がすべてであることはわかっているけれど、たまには小説家自身の声も聞いてみたいという欲求を十分にかなえてくれた。対談ではなくインタビューという形式なのがまたよかった。
3投稿日: 2020.01.21
powered by ブクログ村上春樹のインタビューとしては聞いてみたいことを聞いてくれていると感じた。まあ帰ってくる言葉はいつもの村上春樹さんの小説方法論でブレないといえばブレない。目新しさはそんなにないと言えばない。ジェンダーに関する部分は川上未映子さんならではのポイントだったのだろうけど、そこはある意味はぐらかされている印象。これは村上春樹さんの年齢を考えると突っ込んでも詮無いエリアの様な気がする。
1投稿日: 2019.12.20
powered by ブクログそうか、こういうタイトルだったんだ。村上春樹がどこかで書いていたのだろうか。川上未映子が前書きで書いただけだろうか。とにかく、情報量が多過ぎて、頭に残っていることがほとんどない。もう、知らないことが多すぎる。村上radioはまだ続いていたんだ。文庫版の付録を読むと、この2年で相当たくさんの仕事をされているとのこと。お父様について書かれたものは少し立ち読みをしたけれど、それ以外はほぼ気付いていない。雑誌まで追いかけていると身がもたない。まあ、とにかく文庫になったものだけは読み続けよう。あとは翻訳をどうするか。すでに何冊かはスルーしてしまっている。「村上春樹が好きなものは全部自分も好き」って言いたいところだけど、翻訳はどうも違うなあって思うことがあって、すべてはフォローし尽くせていない。「心臓を貫かれて」とかむちゃくちゃ良かったけど。「スタン・ゲッツ」の本は文庫になれば必ず読もう。本書と同時に「レンマ学」を読んでいて、地下2階の話が非常に興味深かった。何がどうつながっていくのかはわからないのだけれど。無意識のさらに奥を意識しようと思う。(意識できないのか。)本書を通して、「ねじまき鳥・・・」を再読しようと思った。ただ、このころだけは単行本を買っていて、持ち運びができない。枕元にどんと積もうか。あっ、それから、どうして文庫版の付録対談では春樹さんになったんだろう???川上未映子という女性にもちょっと興味がわいた。いつか読んでみよう。
0投稿日: 2019.12.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
村上春樹のインタビュー集。聞き手は川上未映子。 長編のインタビューというのも珍しいが、それが1冊に纏まるというのも、昨今ではなかなか無いことだろう……というか、村上春樹じゃなきゃあ1冊には纏まってないような気がする。 川上未映子の質問もユニークで面白かった。
0投稿日: 2019.11.28
