
総合評価
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powered by ブクログホラー要素は今でこそありきたりな表現と感じられるがこの作品群こそがその元ネタなのだと感動した。 海外文学故に読みづらさを感じる部分ではあるがホラーを語る上で外せない作品達だとおもう。
0投稿日: 2025.10.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初クトゥルー神話。独特の雰囲気で、唯一無二の気味悪い世界観を丁寧に構築している。 個人的にベストは「闇にささやくもの」と「インスマスの影」。 ○異次元の色彩 隕石の落下によって変質していく郊外の土地と、そこで暮らす一家の悲劇を描いた物語。主人公である測量士の語りによって、農家の井戸の近くに落下した隕石から放たれる「異次元の色彩」が、土地と生物、そして人間をも侵食し、徐々に正気を奪い、破滅へと導く様子が描かれる。 ○ダンウィッチの怪 マサチューセッツ州のダンウィッチ村で、妖術を操る一家の血を引くウィルバーという少年が、人間離れした成長と行動を見せる怪奇譚。ウィルバーは人智を越えた怪物を呼び出すための鍵となる≪ネクロノミコン≫を閲覧しようとし、最終的に、父である異次元の魔神の力によって生み出された巨大な怪物が出現し、村は壊滅の危機に瀕するが、アーミテッジ博士らの活躍により退けられるという物語。 ○クトゥルーの呼び声 主人公が亡き大叔父の遺品から発見した粘土板やメモから、かつて宇宙から飛来した邪神クトゥルーとその教団の存在を知り、深淵なる「宇宙的恐怖」に触れていく物語。世界中で同時多発的に夢を見る人々や、海底都市の浮上、謎の怪物の出現といった不穏な現象と連動し、最終的に主人公は人類の存在が取るに足りないものであるという真実を悟る。 ○ニャルラトホテプ エジプトから来た高貴な姿の人物が、人々を奇妙な現象の渦中に引きずり込み、最終的に宇宙的な恐怖へと導く物語。主人公は友人とともに講義を見学し、そこでニャルラトホテプを侮辱したことで追い出され、その後、人々は次々と不可解な現象に見舞われ、最終的に主人公だけが宇宙の彼方の恐怖を目にする結末を迎える。 ○闇にささやくもの 民俗学者のウィルマートが、洪水の後に河原で発見された蟹に似た奇妙な死体の調査を始める。調査を進めるうちに、彼は「ミ=ゴ」と呼ばれる異星生物の存在と、その生物が人間から脳を摘出し、宇宙旅行を可能にする手術を行っていることを知る。最終的に、ウィルマートはエイクリーという人物がミ=ゴと和解したことを信じ、彼の家を訪れるが、そこで恐ろしい真実を目の当たりにして逃亡する。 文通でストーリーが進んでいく過程がとても楽しめた。 ○暗闇の出没者 若い怪奇作家ロバート・ブレイクが、プロビデンスの廃教会堂で宗教団体「星の知恵」の秘密に触れ、古代の存在を知る中で、やがて自身も「闇」に囚われ怪死を遂げるという物語。 ○インスマスの影 語り手が旅の途中で立ち寄った、住民の奇妙な容貌と町全体に漂う不穏な雰囲気で知られる港町インスマスを舞台にした物語。語り手がインスマスを調査するうちに、この町に隠された、人間ではないものとの血縁に由来する忌まわしい過去と秘密に触れることになり、最終的には自分自身もその影に蝕まれていく恐怖を描いている。 ホテルから脱出後、町全体で執拗に追いかけられる描写が怖すぎた。
0投稿日: 2025.09.22
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ずっと読みたいと思いつつも、読んでいなかったラヴクラフト作品。 面白かった。 訳文も良かった。 幽霊やお化けが出て来るようなホラーは苦手だけれども、怪奇小説は面白い。 これが映像や漫画だったら、きっと見ないし読まないだろう。 小説だからこそ、存分に楽しめるのだ。 『異次元の色彩』 クトゥルー神話の始まりとも呼べるような作品(だと個人的には思っている)。 太陽系よりもっと遠い宇宙からやって来た神々。 それは人間の文化や文明とはまったく違う感覚を有していて、何より人間がちっぽけでもろくて何の役にも立たないような存在であることを知らしめる。 神々を前にした時、人間には太刀打ちなど出来ないのだ。 出来るのは、ただおびえて、神々が眠り続けることを願うのみだ。 『ダンウィッチの怪』 え、双子だったの? ほのめかされるだけで、ウィルバーの片割れの姿は分からない。 見えない恐怖と、あまりにも大きな力がすべてを飲みこむ。 『クトゥルーの呼び声』 「ル・リエーなる館にて、死せるクトゥルーは夢見て待つ」 同時多発的な夢? 幻覚? あるいは何かの予兆。 時が満ちつつあるような怖さがある。 『ニャルラトホテプ』 ニャルラトホテプは、どこにでも現れる。 『闇にささやくもの』 結局のところ、ウィルマースは何も見ていないとも言える。 すべてはエイクリーの妄想かもしれない。 恐怖の中で、周りのすべてに疑いを持っていただけかもしれない。 人々の語る神話は幻想にすぎないと考えていた現実的なウィルマースが、どんどんエイクリーに感化されていく。 そしてエイクリーの恐怖が、ウィルマースにも移っていく。 本当のことは何なのか。 もうウィルマース自身にも分からない。 『暗闇の出没者』 いかにも怪しげな、朽ちた教会に入っていくブレイク。 やめておいた方が良いのではないか、と思うのだけれども、ブレイクは貴重な本があることにも心惹かれて、どんどん中へ入っていく。 そして触れてはいけないものに触れてしまうのだ。 それも結局は、ブレイクの妄想だったのかもしれない。 『インスマスの影』 なぜこの手記が書かれたのか。 それこそが、このインスマスへの旅と、そこから持った疑念に対する答えであり、決意表明だった。 なんだか気味の悪い町を訪れただけでは終わらなかった。
0投稿日: 2025.09.03
powered by ブクログホラーは苦手なので読めるかなと思ったが読むことが出来た。 読みづらさはあったが、、嫌いではない。 異次元の色彩が1番印象に残った。 ゾクッとさせられた。
0投稿日: 2025.08.17
powered by ブクログ近年各方面に広がっているクトゥルー神話の原典から、有名どころをピックアップした作品集。名前だけ知っていたけれど、詳細は知らない、といったものを一通り読めるという意味ではとても助かった。 ただ、やはりアメリカンホラーはあんまり私の趣味には合わないらしい…。
0投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ図書館の本を選びに本屋さんに行こう! 2025年6月27日(金)14:00-15:30 SASYU鎌田店 学生が選んだ本 ーーーーーーーーーーー 宮代キャンパス ーーーーーーーーーーー インスマスの影 クトゥルー神話傑作選 https://fclib.opac.jp/opac/Holding_list?rgtn=3022513
0投稿日: 2025.07.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
クトゥルー神話傑作選。 TRPGやゲーム、漫画などでよく見るけど原作は未読だったので読んでみた。 表題のインスマスの影がなんだかんだ一番好きだったかも。 名状し難い冒涜的なものに近づいてしまう人間の描写がじわじわくる恐ろしさ。 ニャルラトホテプ、めちゃくちゃ短い! ショゴスとかミ=ゴとかうっすら覚えてるのが出てくるとテンション上がる。 他の話も気になる。どこまで設定とかあるのか色々調べてみようかな〜。
0投稿日: 2025.05.18
powered by ブクログ2021年の新潮文庫の100冊。3年半積んでた。 様々なゲームやアニメの下地となっているクトゥルー神話。その原点をまとめた短編集。7篇収録。→ 表題作「インスマスの影」が一番好き。ホラー×サスペンス。ハラハラした後のラストにはゾクリとする。上手すぎる〜!! 「異次元の色彩」もいい。寓話感がたまらん。 「ダンウィッチの怪」や「暗闇の出没者」は怖さが半端ない。ホラー感がすごい。 途中、あまりの不気味さに一旦読むのを→ やめようかなぁ、と思ったんだけど、最後まで読んだらまだまだ続きが読みたくなった。なにこの中毒性の高い世界観(笑) とりあえず新潮文庫から出てるラヴクラフトは次の100選になってたら買おうかな。
9投稿日: 2025.01.27
powered by ブクログクトゥルフ神話の中でも ネームバリューの高い「クトゥルフ」や「ニャルラトホテプ」が出てくる作品、他にも有名な作品が8作収録されている 異形の描写が読んでるだけで怖気立つほど精細で鬼魅の悪さが引き立たされる クトゥルフデビューとしておすすめ シリーズの最初だからか、「ダンウィッチの怪」や表題作の「インスマスの影」とかやたら有名なやつを収録しててクトゥルフ神話に手を出したい人を惹き付けようとする努力が見えた気がした
0投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログ深い恐怖と興味の入り混じった作品でした。 特徴的なホラー要素が詰まった物語に、一瞬で異様な世界へと引き込まれます。 登場する街は全て、その描写からして非常に不気味で異様な雰囲気を漂わせています。廃墟となった建物や奇妙な住民たちの描写を通じて、常に一貫した不安感を与えられました。特に、町の住民が人間ではない何かに変わりつつあるという事実が明らかになる場面が恐怖の頂点です。 また、文体と想像力にも魅力を感じます。 非常に細かい情景描写に、まるでその場にいるかのような感覚を味わえました。クトゥルフ神話の一端が垣間見え、インスマスの秘密が明らかになるにつれて、未知の恐怖に対する好奇心が止まらなくなります。 全体を通して、単なるホラー小説以上に人間の深層心理に潜む恐怖や未知への不安を描いた作品と感じました。その異様な雰囲気とインスマスという町の存在は未だに心に残っています。
0投稿日: 2024.07.21
powered by ブクログ申し訳ないけど、結局最初から最後までよく分からん感じだった。いや、神話的な小説ってのはわかるんだけども。。正直最後まで読むの結構辛かったです。ごめんなさい。
0投稿日: 2023.08.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
■「異次元の色彩」 ・他の邦題に「宇宙からの色」。 ・ニコラス・ケイジ主演の「カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-」はバカ風味も程よい映像化だった。 ・モノそのものの恐さだけでなく、怖いのに離れられないという姿勢もまた、怖い。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E8%89%B2 ■「ダンウィッチの怪」 ・他の邦題に「ダニッチの怪」。 ・かなり面白い。 ・成長の具合がおかしい少年?のウィルバーが魅力的で、伊藤潤二が漫画化すればコワカワだろう。場面も映像的。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81%E3%81%AE%E6%80%AA ■「クトゥルーの呼び声」 ・他の邦題に「クトゥルフの呼び声」。というかラヴクラフト作品全般に、発音が不明瞭(人間の文化の外)ということの面白みがあるんだと今回知った(CTHULHU……YHWH)。 ・調査するという小説の面白み。 ・文書や文字やへの偏愛からは、ボルヘスを連想。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%95%E3%81%AE%E5%91%BC%E3%81%B3%E5%A3%B0_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC) ■「ニャルラトホテプ」 ・他の邦題に「ナイアーラソテップ」「ナイアルラトホテップ」。 ・「這いよれ!ニャル子さん」(阿澄佳奈)だ! ・短い散文詩のような美しい文章。 ・にして、人間に化けるという点で、面白いキャラクターを知る事もできた。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%BD%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%97_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC) ■「闇にささやくもの」 ・さすが文通魔の著者だけあって、文通を通じて相手のことを想像することの面白さがあって、かなり好き。 ・実際に会いに来るよう誘われるときの、罠にハメられそうな感じもまた、いい。 ・動きの少ない相手の絵は、またも伊藤潤二っぽく再生されたが、作品名を思い出せず。 ・水槽の中の脳という面白ギミックにも漫画っぽさを感じたが、90年前の読者はどう感じたのだろう。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%97%87%E3%81%AB%E5%9B%81%E3%81%8F%E3%82%82%E3%81%AE ■「暗闇の出没者」 ・他の邦題に「闇をさまようもの」。 ・作家仲間に似た名前のキャラクターを出して殺す、という身内ネタでもある。短め。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%97%87%E3%82%92%E3%81%95%E3%81%BE%E3%82%88%E3%81%86%E3%82%82%E3%81%AE ■「インスマスの影」 ・他の邦題に「インスマウスを覆う影」。 ・ポッドキャスト番組「ハードボイルド読書探偵局」にて、本作品と、佐野史郎主演「インスマスを覆う影」(原作は小中千昭「蔭洲升を覆う影」)の特集あり。 ・超傑作。 ・前半で街の細かい描写がかったるいが、地図ができているからこそ後半の脱出劇が活きる(宮崎駿「魔女の宅急便」でも時計台が序盤にキチンと描かれていた)。その上ツイストもある。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%BD%B1 ◇編訳者解説 南條竹則
6投稿日: 2023.05.30
powered by ブクログラブクラフトは初体験だが、翻訳ものの小説でここまで一気に読めたのは久しぶりという気がする。何かが起こりそうな予感が濃密な書きぶりに惚れ惚れする。
0投稿日: 2023.03.26
powered by ブクログクトゥルーやラブクラフトの名前は知ってるけど、よく知らないという状態で挑戦。 これは面白い! 化物じみた「名状しがたい」あれやこれやが出てくるのも面白いが、その前のじわじわじわじわやってくる心理的恐怖、雰囲気や舞台設定がたまらなくいい…! 怖いけど、気になる。でも見てしまうと、アワワワワ…。 日本の湿度満点なジャパニーズホラーに通じるところがあるのかも? 何度か他の本で読んでいますが、南條先生の訳も変わらず読みやすくていいですね。
0投稿日: 2022.09.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
クトゥルー神話は作家が創造した架空の神話ということを初めて知ったので相当驚いた。それだけ広くさまざまな創作の元になっている存在。 SFホラーといった内容だった。 この中では表題作が1番読みやすかった。旅行で訪れた先で恐ろしい体験をして逃走劇が繰り広げられるシーンも良かったが、更に自分との血の繋がりに話が発展していくのが良かった。伏線の回収もあり、面白く読んだ。 「あの深きものらの棲処で奇蹟と栄光に囲まれ、とこしえに暮らすであろう」こんなラスト想像していなかった。あれほど忌み嫌った存在そのものになることをもう受け入れていてゾクゾクする。
0投稿日: 2022.09.12
powered by ブクログ初出1920-1936年のラヴクラフト短編小説を集めたもの。昨年読んだ『狂気の山脈にて』と同じく新潮文庫版「クトゥルー神話傑作選」。 ラヴクラフトの文章はどこか変で、つながりが悪く、明らかにおかしな箇所もあったがそれは原文のせいか翻訳のせいか分からない。いずれにせよ悪文に属する文体だろう。読みにくいし、エンタメ系小説ではこんにちのものならことさらそうであるように、登場人物たち相互の会話で話がどんどん進んでいくのが定石なのに、ラヴクラフトにおいては、人物同士の会話が極度に少ないか、あるいは皆無である。その分、叙事的な文体なのだと受け止められる。 悪文にもかかわらず、本書中の作品には、「ホラー」のプロトタイプと呼びうるような、非常に優れたものが感じられた。 特に「異次元の色彩」(1927)、「ダンウィッチの怪」(1929)はホラーの範とすべき傑作と思う。「クトゥルーの呼び声」(1928)と「インスマンスの影」(1936)は後半部分がやはりホラーとして傑出していた。 いったいに、クトゥルー神話という「体系」には私は全く興味が無いので、単にホラー小説としてどうか、と言う点に着目している。上述の作品は、最近のマンネリすぎる欧米ホラー映画なんぞより数段上にある。 物語の「先」の方に、忌むべき全容=「不在のシーニュ」が控えていることを、語り手主体は予感している。それはおぞましく不快極まりないものと思われるので、当然拒絶したいところだが、その一方で、何となくそんなカタストロフを待望する欲動も密かに底流している。 おぞましさに向けて、奇異な事象が次々と現れてくる時、観察者主体の情動の「ストッパー」が漸次的に外れてゆく。この情動のストッパーということを、私は読みながら考えていた。 おおむね怪奇・ホラー小説は最初から暗澹としていて、音楽で言えばマイナー・キーのロマン派音楽の様相を呈している。が、無意識のバランスを取っているべき情動のストッパーが、恐怖の対象であるような事象の積み重ねによって解除され、怒濤のような情動の嵐が現出してくる。ここまで来ると、ロマン派音楽の枠を超えて「表現主義音楽」に至る。ホラー小説とは、表現主義音楽への到達を目指す情動的記号論理の組成体である。 文字通り血みどろのショッキングな映像を重ねてゆく近年のスプラッター系ホラー映画では、生理的な不快さを突き詰めてゆく表現主義-情動論理であろう。いっぽうラヴクラフト作品のような古典的小説においては、「おぞましいもの」と主体が規定した「不在のシーニュ」を目指して、想像上の恐怖・不安のストッパーが外されてゆくのだが、それは語り手主体が不快と定義しているだけであって、読者にとってただちに生理的に不快であるわけではない。直接的な生理的反応ではなく、あくまでも想像上・意味論上の記号が追求されていくわけだから、これは記号論的な世界構築に属している。ホラー文学は、記号論的に理解しうるはずなのだ。 ただし、凡庸でつまらないホラー小説では、この記号論組成がうまくいかず、どんな小説にも増してくだらない、無残な結果に終わってしまう。この場合は、表現主義音楽が聞こえてこないのである。 ラヴクラフトは悪文にもかかわらず、ホラー小説として理想的な達成をしばしば成し遂げている。三十数年前に創元推理文庫で3冊のラヴクラフトを読んだ時、読みにくさでつかえてしまい私はその良さに気づくことができなかった。現在の私は、ラヴクラフトをこのように把握することが可能になったようだ。
3投稿日: 2022.01.05
powered by ブクログ暗黒神話クトゥルー初体験。少し古すぎるのか、怪奇文化の違いか、怖くない。さあ、これ怖いでしょって、差し出されている感じ。 著者が、自分の創作を神話と表現している事は、アメリカの歴史が神話世界まで遡れない葛藤があったのかなあ。
6投稿日: 2021.11.24
powered by ブクログなんでコッチ系って、ヌルヌル系や海鮮系なのかしらねー。 雰囲気はB級映画。S・キングとか。ウルトラQとか。 ゲームのブラッドボーンがちょっと似てる。 あっと驚く仕掛けがあるでもなし、芸術性があるでもなし。何となく思想が偏っている。キリスト教圏の人が書くとこんなものか。 たまーにネットやゲームで見かけるクトゥルー(フ)神話ってどんなものか、ちょっと知りたいなら読んでみるといいかも。 有名な《窓に! 窓に!》がなかったのが残念。
0投稿日: 2021.10.13
powered by ブクログクトゥルー神話(クトゥルフ、ク・リトル・リトルなどの表記もあり)で知られるH.P.ラヴクラフト(1890-1937)作品の新訳版。 「神話」を象徴する7篇(「異次元の色彩」、「ダンウィッチの怪」、「クトゥルーの呼び声」、「ニャルラトホテプ」、「闇にささやくもの」、「暗闇の出没者」、「インスマスの影」)を収める。 生前は不遇であり、存命中に出た単行本はわずかに1冊。 だが、彼の描く独特の怪奇世界は、死後、徐々に受け入れられ、多くの作家にも影響を与えた。クトゥルーの名はゲームやアニメなどにも取り入れられ、予想外の広がりを持つことになった。 普通の町、普通の村に、不吉と捉えられる場所がある。そこに近づいてはならない。そこは危険だ。けれども必ず、誰かが近寄ってしまう。 不吉な影の気配は次第に濃くなり、やがて闇は姿を現す。 黒々とした奇怪な形。蠢く多数の脚。ぬめぬめとしたゼリー状の肉。「千の墓をあばいた」ような悪臭。 それは時に空から、時に地中から来る。 太古の邪悪なもの。禁断の書から呼び出されたもの。宇宙から召喚されたもの。 邪悪なものが現れた恐怖の極限で、物語はぷつりと終わる。 こんなものが現れたら世界は終わるだろう。その恐怖の崖っぷちで、作品世界はぴたりと止まる。だからこの恐怖はある意味、永遠に続く。 邪悪なものは、クトゥルー(Cthuluh)、ニャルラトホテプ(Nyarlathotep)、ヨグ・ソトホート(Yog-Sothoth)などと呼ばれる。どう読むのかには諸説あるのだが、巻末解説によると、そもそもラヴクラフトは、これらの名前を「人間には発音できない、音声かどうかさえ定かでないものを便宜的に表記しているだけ」なのだという。 真の闇の中、人は叫ぶ。 怪物の、ごつごつとした、読めない名を呼ぶ。 深く黒い闇はその声も飲み込んでしまう。 闇はどこから来るのか。闇に飲まれた世界はどうなるのか。
5投稿日: 2021.08.16
powered by ブクログ怪奇小説。白日夢に見そうな話だ。あまり読まないジャンルでなかなかページが進まなかった。視覚だけでなく、聴覚、嗅覚、それに気配が、耐えられない気分にさせられる。2021.8.7
0投稿日: 2021.08.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
-- ロックやで。 つい数年前までクトゥルフって北欧神話とかケルト神話とかと同じくらいの位置付けだって本気で信じてたんですよ…恐ろしいことに… なんというか、二次創作だと必ずキワモノ設定盛られる愛されキャラ的なものだと。 だって中学の図書館に普通にネクロノミコンあったよね? クラスで飼ってた猫の名前ニャルだったし。 さてどこまでがほんとうでしょうか。 そんなわけでラヴクラフトの傑作選。とても読みやすくポイントを抑えているシリーズで、研究者でもなければこれを読んでいれば充分かなと思います。創元の全集は…うん…欲しいんだけど読むかといわれると…ね? 注釈少なくて飛ばそうと思えば飛ばせるけれど深入りもできる、というのは読み物としてナイス。 訳文もテンポよく、ラヴクラフトらしいスムーズな仄暗さ、気付いたら来た道が無くなっているような感覚で入り込みやすかったです。 これから始める方にはおすすめ。何を始めるんですか? ☆3.4
0投稿日: 2021.07.06
powered by ブクログはじめてのクトゥルー。傑作選。めっちゃ怖いと思ってたらそうでもなかった。 何かが木をゆらしたり、匂いを発生させたりしつつも姿が見えない、というのは面白かった。作中の「冒涜的な」「這い寄る混沌」「名状しがたい」などの言葉が中二心をくすぐるというか…いいですね…
0投稿日: 2021.05.09
powered by ブクログ大半の作品が創元推理文庫版の全集いらい数十年ぶりの再読だったが、内容をほぼ(覚悟していたもののそれ以上に)憶えていなかったことに驚く。特に「インスマスの影」こんな逃走アクション場面あったっけ⁈ 私、TVドラマ版とだいぶ混同してたかも。
0投稿日: 2021.05.08
powered by ブクログ装丁がふと目に留まり、ラヴ・クラフトのクトゥルー神話に手を出しました。 翻訳モノは苦手意識があるので、最初の方は読み進みが遅かったけど、クトゥルフの概念・展開が分かってきてから中盤~後半の話は、不穏に付きまとう影を追いたくて、ページをめくり続けてしまいました。 同シリーズ「狂気の山脈にて」も読んでみようかと。
0投稿日: 2021.01.28
powered by ブクログクトゥルーの神々、おぞましさがうまく想像できないけれど、おぞましさが文章の端々から滲み出ていました。面白かったです。 神話というのが良いです。 「異次元の色彩」「ダンウィッチの怪」「クトゥルーの呼び声」「インスマスの影」が特に好きでした。 みんなして「私も……」「実は私も……」と冒涜的な何かについて話始めるの良かった。 「インスマス面」とは一体……怖いけど見てみたいです。
0投稿日: 2020.07.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「異次元の色彩」「ニャルラトホテプ」が読書会の課題図書でした。以下、そのときのメモです。 ちゃわん: 本屋でたまたまみつけた。読書会用に購入。最近出版されている。作家としてはかなり昔の人。ニャルラトホテプ、ニャル子の元ネタ。異次元の色彩は、初読では頭に入ってこなかった。一度入ったら、頭に残る。これと、短いからという理由でニャル。 小谷: ニャルラトホテプ――悪夢。実像がつかめない。 異次元の色彩――SCP読んでたから一応入り込めた。代表作を集めたのがある。 水無月: エンタメあんまり読まない。ホラーは怖いから読まない。しかし、異次元の色彩は案外読めた。ニャルラトホテプは意味分からん。 アミ老人から聞いて、という体裁。想像させる余地があるから怖い。不気味だった。灰色になった死体。不思議な色彩。オーロラのびらびら。植物が動きその先に燐光が光る。映画の様な直接的な怖さはない。井戸がある。次なる被害者。水を介して広がる。ニャルラトホテプは散文詩。意味はもう放棄して読んだ方が良いと思う。エジプトから来た神様。悲鳴だの絶叫だのさせながら、宇宙人の植民地的な。世界観が広いな。形が知りたい。 三上: ほんとに初心者で……。価格の割には長い。異次元の色彩は入るのがしんどかった。匂いという言葉がすごい出ていたが、どんな匂いだったのか。興味はある。よっぽどすごい匂いなんだな、と。かいだことのない匂い……ゆえに、自分がかいだなかで一番ひどい匂いを想像する。そこを喚起させたのがすごいな、と。救いはない。理屈もない。意味を追い求めてはいけない作品なんだな、と思った。ニャルラトホテプ、主人公はどうなったんだろう。お話的にはどうでもいいんだろうけど。次の闇に囁くものの方が分かりやすかった。 早高: 半年くらい前に買って読んでいた。ちゃわんさんとの組み合わせは意外。 異次元の色彩:最初は入りにくかった。すごいゆっくり始まる。ゴシック感のある、古き良きホラー。得体の知れないものに対する恐怖。読んでるうちから、どんどん汚染されていく、というのが、放射能のようなものをイメージした。深刻故に、お話として面白く読めなくなった。恐怖は去ってなくて、これからじわじわと広がっていくかも……というのも、典型的だが怖い終わらせ方。 ニャルラトホテプ:かわいいのか怖いのか分からない。世界が広がった。ニャがつくだけで猫を想定してしまう。読み方はどうなのか。散文詩として書かれた、と読んだら読みやすい。純文学的。頭のおかしい人の世界観が美しく描かれている。P211電灯が消え始めると~路面電車が~場面の印象が急に変わる。異世界にいっちゃったのか。得体のしれない恐怖感。どこにつれていかれるのか分からない、という暗い終わり方も好きだ。面白い夢。そこから想像力を広げていけるのは、羨ましい。 全体読んだら、後半の方が読みやすい。分かりやすい。インスマスの影が一番好き。未読の方はこれだけでも。 黒田: 文化的なバックボーンが作者と我々で違いすぎる。ので、あまり恐怖感は覚えなかった。当時のアメリカの農村となれば、金銭的な意味で移動などできないし、警察や行政の助けも期待できない。全部自分でやらなければならない、という状況下の、得体のしれない理不尽さは、たいそう恐ろしいものだとは思う。とはいえ、同時期に読んでいたホットゾーン(エボラ出血熱を描いたノンフィクション)のほうが自分にとってはずっと恐ろしく、放射能を連想した人にとっても同様だろう。現実に劣るなら、恐怖感を期待するのであれば、このような不可解だがリアリティのある設定は不要な気はする。真価は恐怖感じゃないんだろうけど、そのところがいまいちわからず、良い読者になれたとはいえない。 ニャルラトホテプは初読では意味不明だったが、意味を理解することを放棄して語感を楽しむのなら、表現の端々が素晴らしくて楽しめた。リズム感があり、なんとなくいい、という感じだ。 津木林: クトゥルフは全然知らなかった。ゲームとかアニメとか知らないから。 課題作だけ読んだ。 異次元の色彩:怪奇小説だけど、あんまり怖いという感じはしなかった。原発のことを感じた。 実際、放射能が元ネタなんじゃないかと思う。石牟礼道子の『苦海浄土』を彷彿とさせた。もっと怖がらせよう、ということを外した方が良かったと思う。すっと読めた。 ニャルラトホテプ:読みにくいが、カフカの『家父の気がかり』のオドラデクという奇妙な生物を思い出した。ニャルラトホテプのやってることは、ニコラ・テスラのことを考えた。
1投稿日: 2020.06.18
powered by ブクログクトゥルー神話傑作集。一応「ラヴクラフト全集」はひととおり読んでいるので、有名どころを再読でおさらい、という印象。たしかにこれを一冊読めば、重要なキーワードと枠組みはだいたいわかるのでは。 やっぱり「インスマスの影」が一番好き……というよりは、嫌ですね。あの町の陰鬱とした雰囲気といい、不気味な住人といい、主人公に襲い来る恐ろしい真実といい。どこをとっても嫌としか言いようがない! そして宇宙からやってくるものよりは、海からやってくるもののほうが距離感が近い分恐怖を感じるような気もします。
2投稿日: 2020.02.24
powered by ブクログ最近ではTRPGなどサブカル界隈でよく知られている〈クトゥルフ神話〉。ラヴクラフトの作品群は、その原典だ。あの奇怪な架空の神話体系は、ひとりの男のパラノイア的妄想に端を発しているのである。 …人類の誕生よりはるか昔、宇宙の彼方から地球に降り立った異形のモノたち。その存在は謎に包まれており、彼らの正体を暴こうとする者には死が待ち受けている。〈Cthulhu〉ーークトゥルフ或いはクトゥルーと仮称される、〈それ〉は人外の秘境に身をひそめ、復活の時を待っている。〈大いなるクトゥルー〉が目覚める時、地上には災いが満ち人類は滅亡するという… …こう書くとB級SFホラー感満載だが、実際に読んでみるとSFというよりは、ポーやドイルの怪奇小説の雰囲気に近く、もっと言えば聖書に出てくる黙示録のようでもある。太古から存在する人智を超えた絶対者と、それに翻弄され滅ぼされる宿命の人類ーー。評論家の諏訪哲史先生が、書評集『偏愛蔵書室』の中で、CTHULHU(クトゥルフ)とYHWH(ヤハウェ)の類似性について言及していたのを思い出す。 舞台設定や登場人物は作品ごとに異なるが、全編を通して執拗に描かれるのは、未知なる絶対者への畏怖と、人間という存在の寄る辺なさだ。主人公は絶対者に抗うものの、最終的には抹殺されるか、彼らに取り込まれてしまう。この絶対的な無力感、〈存在すること〉に対する根源的な恐怖。或いはそれは、あらゆる神話や宗教に伏流する通奏低音であるのかもしれない。
23投稿日: 2019.08.25
powered by ブクログ掘り出し物。 ラブクラフトは読んでみたかった作家だった。 すべてクトゥルーに関する恐怖小説。 怖い、すごい、忘れられない。 この本を読む時は、グーグルで航空地図を見ながら読むことを進める。 特に「インスマスの影」はマサチューセッツの地図でグロテスクな海岸沿いを見ながら読むと恐怖が倍増する。
12投稿日: 2019.08.17
powered by ブクログ単純に趣味嗜好の部分で、自分はSFホラー的な物語は苦手なのだと思う。 夜、寝る前にリラックスするための読書としては特にお勧めできない。 とても夢見が悪かった。 創作されて約100年しか経っていないにもかかわらず神話として人気があるのは、この物語の世界観がまるで本当に起こった事のように詳細に描かれ、すぐそこに臭いや恐怖を感じることが出来るから。 暗闇に感じる気配は常に自らの隣に潜んでいる。
0投稿日: 2019.08.15
powered by ブクログラヴクラフトの傑作ばかりを集めた贅沢な1冊。しかも新訳なので、再読勢も楽しめます。 収録作は、異次元の色彩、ダンウィッチの怪、クトゥルーの呼び声、ニャルラトホテプ、闇にささやくもの、暗闇の出没者、インスマスの影、の7篇。ね、どれも傑作揃い。 一通り読んでみて「やはり何度読んでもインスマスの影は名作だ……」と再認識しました。 巻末の解説も丁寧で、他社のラヴクラフト関係の全集などについても触れていますので、とりあえずなにかクトゥルー神話を読んでみたい、全集は冊数が多すぎてちょっと…という入門者にもオススメできる1冊です。
1投稿日: 2019.08.10
powered by ブクログ小説家・翻訳家の南條竹則=編、新訳ラヴクラフト選集、全7編。 旧約と比べて遙かに文章がこなれていて読みやすいが、 そこはやはりラヴクラフト、 少しページを捲ると眠気を催すことに変わりはなかった(笑)。 しかし、ゆっくり時間をかけて満喫。 ■異次元の色彩【既読】 「宇宙からの色」の邦題で知られる "The Colour out of Space"(1927年)。 語り手はボストンの測量士。 派遣先の荒廃ぶりに驚き、地元の老人から話を聞き出すと、 事件は1882年に起こったとの答え。 農夫ガードナー家の井戸の傍に隕石が落下したのが発端で……。 我々が知っている「神」の叡智が及ばない 外宇宙から飛来した物体によって水が汚染され、 それを吸い上げた植物・農作物も、 その水を飲んだ人間も 本来の姿とは違う存在になっていくというホラー。 後年の部外者による聞き書きという体裁のため、 冷静かつ淡々とした筆致で、 それが却って読者の恐怖感を煽る。 ■ダンウィッチの怪 "The Dunwich Horror"(1929年)【既読】 マサチューセッツ州の農村部、 ダンウィッチ村に生まれたウィルバー・ウェイトリーは 異様に成長が速く、一族秘蔵の魔術書を耽読したため、 周囲から気味悪がられていた。 彼はミスカトニック大学図書館の蔵書である 『ネクロノミコン』ラテン語版に執心し……。 ウィルバーの日記を読んだ大学教授らが、 ウェイトリー家の屋根裏で育った彼の「弟」の正体を暴く。 最初にこのストーリーに触れたのは、 ダニエル・ホラー監督の同タイトルの映画でだった。 映画ではウィルバーが原作とは大違いのイケメンで(笑) 彼と交際することになった女子大生が頼まれて 『ネクロノミコン』を持ち出すという流れになっていた。 面白かったが、かなり違う話(ぐぬぬ)。 https://booklog.jp/item/1/B073Q5BQGQ 2017年にDVD化されたので喜び勇んで購入したが、 まだ鑑賞していない(ぐぬぬぬ)。 品川亮監督の画ニメ 『H.P.ラヴクラフトのダニッチ・ホラーその他の物語』 もシブい。 https://booklog.jp/item/1/B000SKNPSG ちなみに、水木しげる大先生も舞台を鳥取県に移した 翻案マンガ「地底の足音」を描かれた。 https://booklog.jp/item/1/4834274586 こちらも一種の「珍品」として愛読している。 ■クトゥルーの呼び声 "The Call of Cthulhu"(1928年)【既読】 故人の手記が開陳されるという体裁の短編。 フランシス・ウェイランド・サーストンは 大伯父である故ジョージ・ギャマル・エインジェル教授の 遺品の謎を解くべく、関係先を飛び回った。 若き彫刻家ヘンリー・アンソニー・ウィルコックスが、 さながらオートマティスム(自動書記)のような調子で 彫り上げた粘土板と、 ジョン・レイモンド・ルグラース警部が 捜査の過程で押収した石像の共通点、 遭難した船から救出された グスタフ・ヨハンセンが書き残した、未確認の島の話―― それらを突き合わせたフランシスは、 太古の邪神の秘密を知ってしまい……。 ■ニャルラトホテプ "Nyarlathotep"(1920年)【既読】 またの名を「ナイアルラトホテップ」。 幻想的な掌編。 エジプトからやって来たという ニャルラトホテプの科学的な見世物に魅了される人々。 旧約よりも滑らかな文章で、幻惑的。 ■闇にささやくもの "The Whisperer in Darkness"(1931年) 【既読】 ウィルマース教授はバーモント州の怪物伝説を蒐集していて、 現地在住の老民俗学者エイクリーと文通することに。 エイクリーは、 バーモントの深山には宇宙から来訪した生物の 拠点があると述べ、また、物的証拠を得た自分は 何ものかにつけ狙われていると伝えてきた。 郵便物の不配や偽の電報など、不審な出来事を経て、 事態が好転したから来てくれと告げるエイクリーだったが……。 クライド・トンボーが冥王星を発見した翌年に、 それをモチーフ(の一つ)として書かれた作品で、 謎めいた天体に、地球人と接触しようとする 外宇宙生命体の前線基地のイメージを付与。 周囲の怪事に怯え、必死で身を守ろうとしていた人物が、 ある日不意に「もう大丈夫」と、 それまでの肉筆の手紙とは違う タイプライターの文書を送付してきて、しかも、 自身のサインの綴りを誤っている――という、 別人格に肉体を乗っ取られたかと受け取れる条(くだり)が、 個人的に最も怖い。 ずっと後に出た作品だが、先に読んだブラッドベリ 「ぼくの地下室へおいで」を連想してしまう。 ■暗闇の出没者 "The Haunter of the Dark"(1936年)【初】 ロードアイランド州プロヴィデンスに部屋を借り、 由緒ある大学街の風情を楽しんでいた 小説家兼画家のロバート・ブレイクは、 フェデラル・ヒルの廃教会の威容に惹かれ、 足を踏み入れたが……。 ラヴクラフトの生涯で最後に発表された作品で、 旧来「闇の跳梁者」あるいは「闇をさまようもの」の 邦題で知られてきた小説。 年少の友人ロバート・ブロックに 作中で自分を殺すことについて許可を与えたラヴクラフトが、 お返しに彼になぞらえたキャラクターを登場させたが、 ブレイクの人物造形はラヴクラフトの自画像に近いらしい。 古代に地球を訪れた異星生命体によってもたらされた、 暗黒神を召喚する力を持つ物質 「輝くトラペゾヘドロン(Shining Trapezohedron)」が登場。 ■インスマスの影 "The Shadow Over Innsmouth" (1936年)【既読】 一人旅を楽しむ語り手の青年は、 興味本位で退廃した港町インスマスへ。 漂う腐臭、陰鬱な雰囲気、敵意の籠もった住民の視線を受け、 早々に立ち去るつもりだったが、 泥酔した老人に街の来歴を聞く。 バスの故障でその日のうちに出発できなくなった青年は、 やむなく見すぼらしいホテルに宿泊。 深夜、何故か自分を襲おうとする者たちの気配を察して 脱出したが……。 ラヴクラフト創作活動末期の一編で、 読者によって好みの違いはあるだろうが、 他の作品と比べて明らかに、数をこなし、書き慣れて、 技術が向上したかに見える佳品。 サスペンスフル、かつ、読みやすくて面白い。 旧訳で二度読んでいたが、今回の新訳読了で、 この作品の舞台を日本に移したドラマ、 佐野史郎主演『インスマスを覆う影』を、 また鑑賞したくなった。 長い時間をかけてシェアワールド化し、 二次創作、三次創作(?)の人気も高いクトゥルー神話だが、 それらに夢中な人たちの原典既読率が低い印象を受ける。 大体どういう話かわかっているし、 全体のムードや邪神のキャラクターが 好きなだけだから別に構わない――という言い分も もっともだけれども、 せっかくどこかで取っ掛かりを掴んだのなら、 ラヴクラフト本体も読まなければもったいないよ、 面白いんだから、と言ってあげたい。 その際は是非、取っつきやすい翻訳になった このニューバージョンで……と、お勧めしておく。
8投稿日: 2019.08.09
powered by ブクログ宇宙的恐怖(コズミックホラー)の始祖 売れ出したのは死後らしいですが、 他の作家たちが、話を広げていったエピソードが、ファンが2次創作で広がっていったスターウォーズの流れにも似てます。 そんな、作家の入門編 表現しづらい見えない怪物(蟹、鳥、烏賊蛸、菌、山のキメラっぽいやつなど様々)、怪奇現象に気づいてしまった、巻き込まれてしまった人々の恐怖を様々なパターンで描きます。 暗躍する怪物の名から「クトゥルフ神話」と呼ばれているシリーズ キングやクーンツなどのモダンホラー(古!)を読んでる私としては、どの話も真面目に「ボブは自分の体が、首の無い状態で倒れかかってくるのを見る羽目になった。何故なら、首から上は地面に転げ落ちて自分の体を見上げていたからだ…」みたいなふざげた描写は皆無 で、ビシビシ恐怖が描かれていく感じが新鮮でした。そしてやや退屈でもある。 何篇かありますが「ダンウィッチの怪」なんか、これを映像化するとやはりどうしても恐怖感よりB級ホラー感が強くなるんだろうな…という印象 よくある映画の流れなんだけど面白かったです。 上記のはラヴクラフト作品としては珍しいほうで…基本的にX-ファイルの様に、うやむやか最悪の結末で終わる話が多かった, 恐怖から生き延びれない限りは語ることもできず物語にもならない。形に残って語り継がれることがない。 または語ったとしても狂人の扱いを受けて消えてしまう。 なので、本当は記録には残らないもっと多くの犠牲者が歴史上に悍ましい量いたのではないか?などど妄想してしまう。おすすめ。 たぶんこのラヴクラフトの築いた 真面目なコズミックホラーに、どんどん下品な要素を足してエンタメにしてったのが今のホラーモノなんだろうなぁ…それにしても哲学的な言い回しや、難しい表現も多く、真面目に話してんだけど度が過ぎてて「狂ってる?」って聞きたくなるくらい。 追記:脳が何者かに支配されているのか読書中、無意識に昼食に「げそ天そば」を頼んでしまい 神話に出てくる怪物達が頭をよぎり なんか後悔…
4投稿日: 2019.08.08
powered by ブクログ南條竹則編訳のラヴクラフト選集。 創元版の全集は持っているのだが、ラヴクラフトと書かれているとつい買ってしまう……。収録作も名作と言われているものばかりで、入門編としても再読編としてもお買い得な1冊だろう。南條竹則訳でもう1組、全集出して欲しいぐらいだ。
3投稿日: 2019.07.28
