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総合評価

65件)
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    岸さんの物語けっこう切なくてすきだった 同時収録の岸さんのエッセイは岸さんてかなり変わった人なんだな友達でいたらドン引くかもと思った

    1
    投稿日: 2025.09.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    小学生の豊かな想像の世界観、それから筆者の実体験でありながら、喧騒を感じられる大阪の景色を思い浮かべられる、懐かしいだったり、ノスタルジックを思い浮かべる1冊です!

    0
    投稿日: 2025.08.03
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    50歳女性の一人暮らし。 スタートが心地よく、どんな話なんだろうと思ったのですが なんだか広げるだけ広げて 「えっ、ここで?」という感じで終わってしまい、残念でした。 エッセイは求めていたものと違うので途中で読むのをやめました。

    0
    投稿日: 2025.05.21
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    50歳の女性が11歳のころを回想する物語。いつになったらおもしろくなるのだろうと読み進めるうちに読了。私には合わなかったな。

    1
    投稿日: 2025.05.20
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    すごく濃密な時間を過ごしたのに連絡先も交換せず、二度と会わなかった二人。なのに、名前も知らないただすれ違っただけのワンカップおじさんのことはなぜかいつまでも鮮明に覚えている。そういう綾が人の一生には縦横無尽に張り巡らされている。われ知らずとも。これが表題作『図書室』にも、続くエッセイの『給水塔』にも、通底しているテーマだと思った。自分の中の、二度と会わなかった人、忘れ得ない名も知らぬ人を数えて読後感をしばらくかみしめよう。 印象的だったのは、『図書室』のふたりの会話。内容は年相応でありながら、なんだか名人芸の上方漫才を聴いているようで、絶妙だった。いとこい師匠(夢路いとし・喜味こいし)が笑いを取らず世間話したらこんなんなるんかなってくらい。あり得ないことを真剣に思い詰めているのに、重くならないのは、このいい塩梅が効いているからだ。

    1
    投稿日: 2025.02.03
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    「図書室」がとてもよかった。自分の子どもの頃の記憶。大事ななにか。それを抱えて人は大人になっていくんだね。静かにでも強く根底に眠る思い出に生かされているんだね。「給水塔」も物語だと思って読んでいたらこれはエッセイだった。淡々とでも確実に読ませる。これは「図書室」の物語の岸さんバージョンなんだな。

    1
    投稿日: 2025.01.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読んでいて、ファンシーショップに行きたくなった。 本好きボーイが太陽爆発を語り死の予感をさせてくるのもなんだか覚えある。 スーパーマリオより先に 謎ルールの遊びで「イッキニキ」という命があって負けるたびに死んでた。 子どもなのに日々死にまみれていた。  命の復活も簡単だった。 大阪の土地て、どんないい加減なところも受け入れる器がある。  えらいとかえらくないとかでなく、みな横並びで、高級とかでなく、安いほうがありがたられる世界。 あの頃の自分を懐かしく思い出すと共に、 ハラワタのような苦みのある読後感。 でもなんだか、読み返したくなる。 岸政彦は優しい。

    2
    投稿日: 2024.11.07
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    母子家庭で母はいつもカレーやおでんを作り置きしてくれて、それを食べていた小学生の頃の記憶。 家に出入りしていたたくさんの猫たちと一緒に寝ていたこと。 仕事で疲れている母を気遣って行き始めた図書館で出会った男の子。 男の子とたくさんの空想の世界の話をして、真剣に世界が滅亡したときのことを考えて話し合っていたこと。 大晦日に男の子と缶詰を買い込んで、河川敷の小屋で過ごした記憶。 大人になって、一緒に過ごした人たちとも別れ、一人暮らしで猫を飼いたいという気持ち。 思い出が、その人を生かしているんだなあ。 大好きだった母、大好きだった猫たち、男の子。 最後、小屋の中にいるところを図書館でいつも寝ているおじいちゃんたちに発見されるのほっこり。優しい話。 給水塔はエッセイかな? 著者が大阪で過ごした日々のこと。 大阪という町。ドカタの仕事をしていたころ。 おはぎときなこの猫たち。空き巣のこと。 猫の名前可愛いな。

    2
    投稿日: 2024.09.29
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    小学生のあの頃、、、 懐かしい記憶が蘇る、、、 そんな一冊 土曜日は半ドン 昼から半日だけが休みだった 途中から第2、第4土曜は休みになったはず 給食の牛乳は複雑な三角形をしたパック 途中からビンに変わったはず 好きな女の子にちょっかいを出す 度が過ぎて泣かしてしまう 途中から後悔したはず 違う小学校に友達ができる サッカーをしていたから 最初の頃は話はしないけど 途中からめっちゃ仲良しになったはず 嫌な感じのおばちゃん先生がいたり、、、 ときどきうんざりする友達がいたり、、、 学校は楽しいけど行きたくないときがあったり、、、 あの頃の懐かしい記憶が蘇る、、、 そんな一冊 (個人的にだけど)

    37
    投稿日: 2024.08.28
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    「給水塔」がとても良かった。世間にはいろいろな人がいる。しかし、表現は辛口だけど、大阪や、そこに住んでいる人間を肯定的に捉えているように思う。よしもとばななさんのエッセイの人間讃歌を辛口にしたような感じ。 「大学の四年間はいろいろなことをした。膨大な量の音楽を聴き、本を読み、酒を飲み、ゲロを吐き、たくさんの女の子と付き合い、いろんなバカなことをしたが、その四年間のなかでもっとも良い思い出、美しい記憶になっているのは、わずか三十分の散歩である。」

    7
    投稿日: 2024.08.25
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    図書の後半のくだりは、涙が目に溜まりながら読み終えました。 この方の会話の間?コミュニケーションの空気感?がすごく伝わってきていて。どの作品も関西出身の自分には合っているのか、毎回、入り込んでしまいます。

    0
    投稿日: 2024.07.11
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    岸政彦先生の小説をまた読んだ。岸先生、生活史を研究しているだけあって綴られる話もただひたすらにそこに生きる人たちが日々の生活を営んでいて、そのなかで出会う人や些細な出来事を書いてくれている そういう話を読んでいると特に何のおもしろみもないような自分の1日や1週間、一ヶ月がこの本に綴られている内容のように苛烈ではなないけれどおもしろいことなのかもしれないと思わせてくれる 自分がただ営む生活も小説のように大切に読まれるような、そういうものだと想ってもいいのだ。なんとか生きている自分のことをもえらいよ、よくやってるよと言いたくなってくるのだ また「給水塔」という書下ろしエッセイも入っているのだけど、書いたタイミングのためにすでに亡くなった岸先生の愛猫のことが書いてあり、先に「にがにが日記」にてその愛猫への愛情を知っていたからこそ余計に胸にきた…

    1
    投稿日: 2024.04.12
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    岸政彦の文章には、いつも不思議な魅力を感じる。そこには、何か結論めいたものや、明日から役に立つ学びといったものがある訳ではない。もとい、ないと断言するのは語弊があるし、実際に学びもあるのだが、決してそれは合目的的なものなどではなく、そこに何かがただ〈ある〉という、普段は意識することのない存在そのものに気づかせてくれる。 収録されている中編の『図書室』は、大阪で暮らす一人の中年女性が、小学生の頃をふと思い出す話。生活のなかには、辛いことや幸せな瞬間も沢山あるし、大部分は何でもない日常に過ぎない。そんな何気ない一瞬一瞬と邂逅が、市井の人々の暮らしの中に、それぞれ違った形状で織りなされていく──。それが人生というものなのだろう。慌しく日々を過ごしていると、そんな当たり前のことをつい忘れてしまいがちだが、読み終わって本を閉じると再び、若干のノスタルジックな成分とともに、何でもない日常の大切さがじんわり滲み出てくるようだ。 併録されている『給水塔』は、人に人生があるように、街にも人生があるということを感じさせてくれる素敵な自伝的エッセイだった。様々な偶然が積み重なって、たまたま住み着いた街。そこに〈ある〉、人々の暮らし。お気に入りの場所。たまたま行った場所。思い出。記憶。月日を経て、変化していく街並み──。たとえ、むかし住んでいた街に、いまは新しいマンションや家々が立ち並んで周りの様子が一変していたとしても、その場所に私たちの暮らしがあったことは確かだし、その場所はまた別の人々の暮らしとともに、新たな当たり前の風景として「街の人生」も織りなされていくのだろう。

    0
    投稿日: 2024.03.16
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    岸政彦「図書室」https://www.shinchosha.co.jp/book/350722/ 岸政彦の著作を泣かずに読めたことがない 内容がとくに抒情的なわけでも感傷的なわけでもないし文章が詩的なわけでもないのに、読むといつも胸が詰まって涙が出る どちらかというとたとえばこの表紙の写真そのものみたいな内容なんだけど 社会学者 岸政彦はわたしのアイドル、一生すきです

    1
    投稿日: 2024.03.02
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    誰にでもありそうな思い出の断片を淡々と綴ったストーリーが、どうしてこんなに惹きつけられるのだろうか。 この人の作品を読むとつくづく思う。

    0
    投稿日: 2024.02.16
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    二つの作品が収録されてます。大きな事件が起きるというより、訥々と、何があったか、どんな場所で、どんな人がいたかとかが語られていきます。力みのない書き振りのためか、水が流れるとか風が吹くみたいな自然な、独特の落ちつく感じがありました。 日々の生活の中での、何気ない、でも大事な思い出とかワンシーン、ってあるよなあと思いました。

    0
    投稿日: 2023.09.10
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    中編が2つ.表題作は二人の男女の小学生が公民館の図書室で出会い、本からの知識に沿った人類滅亡への対応行動を淡々と描いている.大晦日に食料として缶詰を買い込んで河川敷の小屋で夜を過ごすものの発見され連れ戻される.小屋での話に図書室を作ることが出てくるが、意図のつかめないままだった.「給水塔」は大阪に惚れた男の話で著者の回想みたいな感じだ.ウッドベースが出てきて驚いた.私も持っているからだ.バブル時代の浮かれた話やバイトで飯場にいたことや子猫の話などエピソードが次々に現れて楽しめた.昔ピカピカだった町が寂れてしまう現実を的確に描写している点が良かった.

    1
    投稿日: 2023.02.03
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    小学生の頃に通った図書室の回想とそこそこに歳を重ねてひとり暮らす主人公の何でもない静けさが良かった。作者の自伝エッセイも良かった。

    0
    投稿日: 2023.01.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2部構成の話になっている 1部目は「図書室」というタイトル 大阪の別々の学校出身の小学生2人が、世界から人がいなくなって自分達2人しか生きていないことにして、スーパーで缶詰を買い淀川の河川敷にある小屋でお話しする話 特にこれといった内容は無いけど、2部で著者が何もないことを、特別じゃないことを、書き出したいって言うことをお話しされていて、 何もないことだけど実はそれぞれの人生の背景に何かがあったり 文字の羅列の出来事からは想像もできないことが人の歴史にあったりするから 一部を一発目に読んでうーんと思ったけど、2部の「給水塔」を読むと1部をもっと違う読み方で読めると思った 2部「給水塔」めっちゃ面白い っていうのも著者岸さんの学生時代から今に至るまでの話だから。 なんで著者の話が面白いかっていうと、 私も著者と同じく「大阪」に 「東京的なものが嫌いで、もっとアジア的なもの、もっと風変わりなもの、もっと混沌とした、危険な、自分勝手なもの」(p.117)を求めてるからだと思った 大阪をすっごい美化?してるけど でも、1部の話って大阪の話やん? 面白くないってさっき自分言ったじゃん? 完全に見落としてた、今気づいた ーーーー それと、岸さんがPodcastに出てたときの番組で、司会の女性が「世界っていうけど、それってその場所のローカルなんだよね、ローカルはグローバルだし、グローバルはローカル」っていうの聞いて、ちょっと感動した 他者(人にかかわらず)に変な期待抱くのやめるようになったかもしれない ーーーー 作中で紹介していた「小松左京」の「少女を憎む」気になった、sf 作家みたい 日本沈没も書いてるんや 他にも色々と解決策が思いつきました。 あとやっぱりエッセイ好きだな

    4
    投稿日: 2022.12.11
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    社会学者・岸政彦による小説「図書室」と、自伝的エッセイ「給水塔」からなる。個人的に「給水塔」が面白く、この作品があることで、「図書室」の面白さが増すような気がした。「給水塔」の最後が、そのまま「図書室」につながっていく。「図書室」は小説としては読みやすいが、やや淡泊。もっともっとドラマを込められるだろうが、そこは社会学者による小説、ということでかろうじて我慢できる。たとえ小学校高学年であったとしても、男女が小屋にこもったら、肉体的な触れ合いの、そのヒリヒリ感ぐらいもっと描けよ、と突っ込みたくなったが、まあいいか。これが庶民ということか。

    0
    投稿日: 2022.07.26
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    ひとりの女性のノスタルジックな過去の追憶。ふたりの空間が可愛くて儚くて愛しくて夢を見ているような気持ちになった。

    1
    投稿日: 2022.07.13
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    「図書室」主に会話で綴られる、あるかつての女の子の出会いと別れ、そこにあった図書室の話。私は少女の語りを男性にされると違和感を覚えてしまうタチなのだが、こちらは全く違和感なく読んだ。大阪の持つ、あのうら寂しさや切なさが胸に迫る。外向きに演出された大阪じゃないのが嬉しくて、好きだ。 「給水塔」後半に収録されたエッセイ。大阪へのものすごい愛。読みながらぐずぐずに泣いてしまった。大阪に帰りたくて。街の空気を吸いたくて。

    3
    投稿日: 2022.01.25
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    ●『図書室』 一人暮らしの50歳の女性、子供の時に図書館で知り合った少年との会話を思い出す。 大人になって淡々と生活している今の自分の生き方に少年との思い出が繋がっていたことを懐かしく思い返す。 誰でも子供の頃、遊んだ友達、秘密基地していた場所、笑い転げたこと、大泣きしたことなどの思い出がある。なんであんなに笑ったのか、泣いたのか、思い出せないけど自分達の世界で何も疑うことなく一生懸命に生きた時間。 2度と戻ってこない時間だからこそ、大人になってとても懐かしく胸が熱く感じる。 あの時の友達は、あの場所はどうなっているのか、、自分の子供の頃も思い出しながら暖かい空気感の中に引き込まれまる。 家族や出会った人やペット達。もう会えないが、今の自分の中に確かにいる。 そんなことを感じさせてくれる本でした。 自分の心の中を見つめ直しこれからも大切に生きていくことを思う本です。 ●『給水塔』 著者の自伝的エッセイ。 大阪の街を背景に将来や生きることに悩みながらも前を向いて歩いていくことを描いた話。 日雇い労働をしながら1日1日を生きる為に働いてきた著者。 絶望のような日々の中で学生時代に通った道、駅までの道、光、空気から生きていく光を見つけ出していく。確かに自分が歩いてきた道があったことに気づいていく。 「暗い穴の底のようなところで暮らしていても、いろんな偶然が重なって何か自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が誰にでもある」 「飼っていた犬の世話を通してこの世界には何か温かいもの、嬉しいもの、楽しいもの、好きなものが存在するのだと言うことを教わった」と著者は経験から語る。 この言葉に救われる気持ちになる。 生きていく希望が自分の周りにたくさんあることを教えてくれる本。 たくさんの人に読んで欲しい一冊。

    12
    投稿日: 2022.01.24
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    <大阪の下町>という場所に宿るノスタルジックな感傷を綴った二編。 時代も生まれも育ちも違い、縁がないはずなのに、なんだか「ここに帰りたいなあ」と思ってしまう不思議な魔力がありました。 子ども時代や青春の回想って、たとえ見知らぬ場所だったとしても、その土地に根付いた暮らしが丁寧に描写されるほど、心の繊細な部分を呼び起されるなあと思います。

    1
    投稿日: 2022.01.18
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    「図書室」は以前読んだリサ クライン・ランサムの「希望の図書館」に似ている。孤独な少女が居場所としての公民館の中にある日当たりの良い図書室との出会い、そこで出会った少年との出会い。なんか切ない。 書き下ろしの自分史的な「給水塔」を読んで、岸政彦さんに興味を持ってしまった。大阪人より大阪ラブな人やな。あびこの居酒屋におったら会えるかな(^^ )

    3
    投稿日: 2022.01.09
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    ◆もし他の人がみんな死んだらどうする?◆ 大事件ではないけれど、何度も思い返している記憶ってありませんか。本作の語り手が雨の日に思い出すのは、小学生の頃に通った古い公民館の小さな図書室にまつわる出来事。そこで出会った少年と、人類が滅びた世界でどうやって生きるかを考えた…  こんな突飛な空想を真剣にしていた頃が私たちにもきっとあった。そう、今ではすっかり忘れてしまっている些細なことが今の自分を形作っているのだ。過去を前向きに見つめ直せる小説。

    2
    投稿日: 2021.10.20
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    説明がつかないけどすごく好き。朴訥とした文章が好き。風景、記憶の切り取り方が私と似ている気がする。最後のあの波は良かった。のラストになんだか泣きそうになる。 人が一生をかけて手に入れたいと願う幻のキノコみたいなものをこの人は小学生で手にしてしまった。この人は、このまま一生ひとりなんじゃないかな。

    2
    投稿日: 2021.09.20
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    一気に読んだ。読みやすい。記憶のこと考えるきっかけもらった。ノスタルジックで人に対して優しい視点のお話だった。

    0
    投稿日: 2021.09.18
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    一人暮らしの女性が、40年前くらいの小学生だった頃を回想する話とエッセイがひとつ。 スナック勤めの母親。でも、寂しい小学生時代とは感じられなかった。この子には図書室があった。猫もいた。母の作ってくれたカレーもあった。 母親を早くに亡くしてしまっても、引き取ってくれた親戚の人達は良くしてくれたし、今、この歳で独身でも決して不幸ではない。 人によって、価値が異なるということを強く感じた。 何が幸せなのかは、自分で決めるものなんだなぁ。

    0
    投稿日: 2021.09.12
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    表題作の方は、小学生の会話と行動がどうにもしっくりこず、最後まで入り込めなかった。土曜日の半ドンの風景や空気感のリアリティは自分も同様の経験がありよく描かれていると思えるのだが、小学生二人の距離感と感情の細部が読み取れなかったのが残念。 給水塔の方は小説ではなく、著者の実人生と大阪の街々との関わりを描くエッセイ。80年代から今までのが街の変遷やそれでも変わらない性格が浮かび上がる。

    0
    投稿日: 2021.09.12
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     主人公は40代くらいの女性。小学校の頃に通い詰めていた図書館で出会った、同級生の男子ちの思い出の回想。  「死ぬこと」について一緒に考えて、自分たちだけが生き残った後の世界を想像して、スーパーで有り金をはたいて缶詰を買い込み、廃墟となった建物の中で「これから」のことについて思いを巡らせる。大晦日の夜。水商売をしていて帰ってこない(でも愛はある)母親。馴染めない学校生活。秘密の友達。急に現れて、急にいなくなった友達の記憶。止まらない想像、、、  幼い頃、本当に短い時間しか共にしていないはずの友達(と呼べるのかも定かではないくらいの存在)との記憶が分不相応に鮮明で、ふとした瞬間に思い出したとき「なんでこんなこと覚えてるんだろう」と怯む瞬間がある。印象的な出来事が起こったわけではなく、今でも親しくしているというわけでもなく(むしろほとんどの場合、今となっては名前も見た目もどこの誰かもわからない)、ただあのときあの場所で一緒にいた、という記憶だけがあまりに鮮明に刻まれている。たとえば、小学生のときに母に連れられて行ったクラブメッドサホロの託児施設で数日間だけ一緒に遊んだ少年とか、一時期文通していた東北地方のジャニーズオタクの女の子とか(どんなきっかけで出会ったのかすら思い出せない)。この本を読んでいたら、そういうような、脈絡なくときどき急に蘇ってくる記憶と、そこからくる怯みについて考えていた。岸さんの小説には、明確なテーマやゴールがないと思う。あえて設けていないのだとわたしは思っている。今回はこのことについて書きますよわたしは、っていうんじゃなくて、なんとなく生きていると目にも止まらないような、「まあそういうこともあるよね、で?」で終わってしまうようなことに注目して掘り下げるというか、切り取ってスポットライトを当てるというか、そういうことができる岸さんはやっぱりすごいし、素敵だと思った。流れてっちゃうからね。何もなかったと言えちゃう。意味とか変化とか目に見えるものはない。でも確かに起こった出来事たち。記憶たち。

    0
    投稿日: 2021.09.02
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    「ふだんどれだけ荒んだ、暗い穴のようなところで暮らしていても、偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る。私はそれが誰にでもあると信じている。」 小説の方が淡々と、薄暗い印象だったので、エッセイでのカラリと明るいお人柄に和む。 とはいえその小説も、こういった街の人々の、同じアパートや電車の隣の人の人生に想いを馳せているからこそのディテール、肌触りのある文章だよな。 悲しい事件も多いけれど、想像力を忘れずにいたいと思う。

    0
    投稿日: 2021.08.24
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    50歳独女が昔を回顧する内容。感情の吐露はなくただ思い出が溢れてくる。今の主人公は傍から見れば独り寂しい大人に見えるかも。だが読者は彼女が内包するものの煌めきを見る。 もう関わらぬ相手でも互いに影響を与えていたり、何十年経ってもふいに思い出されたり。人の数だけ、連なる人達や思い出がある。それを知らせてくれる本だった。(図書室・給水塔、両方) 私もこの先、良かった記憶が不意に思い出される大人になれるだろうか。人の人生が知りたい、自分の思い出もたまに取り出して温めたいと思った。人の数だけ物語がある。誰の人生も軽くはないと思わせられた。

    2
    投稿日: 2021.07.11
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    ネタバレ注意 読書開始日:2021年4月28日 読書終了日:2021年4月29日 所感 図書室 回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。 自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。 お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。 まさに作中の2人もそれだった。 「私たちは、相手が吐き出した息を口から吸い込んでまた吐き出すように、お互いの言葉をやりとりしていた。」この一文で自分の記憶を言語化できた。 その会話の中心に、「子どものころに一度は訪れる死や地球滅亡への恐怖」を据えることで、さらになつかしさが増す。 歳を重ねるにつれ、気遣い、配慮が比率を増していき、会話が自然と溶け合う機会も少なくなっていった。 そんな時にふと思い出すのは、当時の友人と突拍子もない話しから、大それたことをしでかした記憶。 ノスタルジックな気持ちなった。 給水塔 作者のエッセイ。 いつもこの作者は自分がもやもやと考えているようなことをパッと言語化してくれるのでとても好きだ。 作者は肉体労働を「民主的で業績主義的で合理主義的で個人主義」と表現していたが、 自分も学生時代、バイトではあるが肉体的な日雇い労働をしていたこともあって、辛い部分が大半を占めるが、辛い以外に感情を持たなくていい部分が少し好きだったことを思い出した。 大阪に対しても作者は、手加減抜きにリアルに分析しているところも面白いと思う。 関東に住み続ける自分には大阪の愉快で、愉しい印象しか持てないのであるが、 大阪のフィールドワークを重ねる作者は、「要するに大阪という街について言われていることの、大半が虚構の、無意味な、ありきたりな、紋切り型の、たわごとでしかない」と表現していて、読み進める度にリアルに感じられる。 そんなリアリストな作者が作中で唱える確証は無いが、祈りのような一文にはいつも希望を感じさせられる。 「普段どれだけ荒んで腐った、暗い穴のようなところで暮らしていても、偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る。私はそれが誰にでもあると信じている」 とても好きな一文。

    0
    投稿日: 2021.04.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    図書室 岸政彦著 2019年6月25日発行 新潮社 「ビニール傘」と併録「背中の月」を読んで、すっかり岸政彦にはまった。近所の書店にあったから、珍しく購入して読んだ。100ページほどの中編小説「図書室」と自伝エッセイ「給水塔」併録。 エッセイから読んでびっくり。立命館大学教授で社会学者の筆者は、名古屋出身。念のため調べると中高の9年後輩だった。大学で大阪に来て、今は、私が30年近く住んでいるまちを舞台にした小説を書く。 「図書室」は、大阪の福島駅と野田駅の間にある長屋に住む小学生の女の子が主人公だけど、彼女は毎日、地元の公民館と同じ建物内にある図書室に通う。私が毎日のように通り、よく入館する区民会館と区図書館を思い浮かべてしまう。この福島と野田の間にある長屋はやがてなくなる設定なのだが、小説「背中の月」で主人公が環状線から毎日眺めていた廃屋に通じるものがある。あの時の廃屋には、この少女が住んでいたのかも、と思える。1階が焼肉屋になっている大国町の賃貸マンションというのも複数作品に出てくる。こういう共通項が岸作品の面白さの一つでもある。 岸作品は、大学は出たけれどエリートではなく、ぎりぎりの貧しい不安定な生活をする若者を描いているものが多い。隣室との壁に隙間があるような貧民アパート暮らしではなく、汚く狭く古いが、一応は鉄筋のマンションに住む。しかし、日雇い派遣などひとたびその不安定な仕事が崩れると、彼等は行き場を失う。昔の小説に出てきた貧民アパート暮らしの者にあった、路上生活をしてでも生き延びる"安心感”のようなものはそこになく、存在そのものが否定され、否定するもろさを感じる。 小説「背中の月」では、30代の若者と推測される主人公は、理不尽なリストラを突きつけられた時に妻の言葉が唯一の支えになったが、10年一緒に暮らしたその妻が急逝する。最後は自死を強く臭わせながら話を閉じている。自伝エッセイ「給水塔」では、研究者としての職が見つからず、毎日、現在の妻と暮らしていたマンションの屋上に出て死ぬことばかりを考えていたと語っている。大卒、大阪、ニュープア。彼自身の体験でもあった。 以下、メモ(ネタ割れ注意) 「給水塔」 USJの入り口西九条は、かつてはテーマパークをあてこんだ街づくりを目指していたが、いまではただの静かな商店街だ。 ↑ 全くその通り、地元民の私と同じ思い。桁外れにがめつい外資は、地元に1円たりとも福音をもたらせなかった。 30年以上大阪に住んでいると、「大阪人の性」だの「大阪人のDNA」だのというものが、戯言でしかないことが分かってくる。大阪に生まれた大阪人でも、おもんないやつはたくさんいるし、几帳面で規則にうるさいやつもいる。 ↑ これまた全く同感。 バブルの頃、学生だった著者は、ジャズの演奏(ウッドベース)をする仕事をしていた。新神戸オリエンタルホテルの吹きさらしでクリスマスソングの演奏をしていた時、すらり並んだおっさんたちは、電通の下請け、孫請け、ひ孫請け等々の会社のひとたちだった。この演奏会を企画した会社か。著者のような日雇い現場ミュージシャンでも、3人で6万円ももらえた。電通はいくらで受けて、間に何社入って、ピンハネしてるんだろう。 毎週金曜日に神戸のサテンドールで演奏すると1万円、安い安いと評判だった梅田のドンショップは6000円だった。さらに、今ではそういう固定ギャラはなくなり、完全にチャージバックとなったため、ミュージシャンの手取りは1000円以下ということもある。 「図書室」 スナックを経営し、必死に子育てをする母親。その娘が主人公。小学校の時、毎日、地元の図書室に足を運んで読書。すると、同い年の男の子がいつも本を山積みにしている。彼は、太陽は将来爆発する、と勉強の成果を披露する。すると少女と少年は、そうなったらどうなるかと想像しはじめ、現実か妄想か分からないようなストーリーの展開になる。 この世には二人きり。缶詰を買い込み、淀川沿いの小屋に入って、それを少しずつ食べて生き延びようとする。そこに、いつも図書館で寝ている二人のおじいさんが訪ねてきて・・・

    0
    投稿日: 2021.03.29
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    図書室。50代の女性の子供時代、母との貧しい暮らし、公民館図書室、仲良くなった男の子との思い出。 と、作者本人の大阪に対する想いを書いた給水塔。 関西に馴染みがないのでなんとなく読んだ。 これが自分の地元だともっとしっくりくるのか? 大学を出て、飯場を転々とは作家としては珍しい?

    0
    投稿日: 2021.02.25
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    ダヴィンチのプラチナ本オブジイヤーから。同コーナーで取り上げられたものは、結構積極的に読むようにしていて、それなりに当たりが多い印象を持っている。で、その中でもその年一番ってだけに、期待は大きくもなる。でもこれはダメ。少なくとも個人的には全くハズレ。今、文学モードじゃないってのも大きいのかもしらんけど、何が良いのかさっぱり。表題作の中編小説と、あと一本はエッセイが入ってるんだけど、そちらもイマイチ。大阪への思い入れの違い、って部分も大きいのかな。

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    投稿日: 2021.02.15
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    TVで岸さんが猫と戯れているのを観て、この人の本が読んでみたいと思った。空気感とはよく言ったもので、小説もエッセイも日常を描いていながら、どこか遊離したような心地よさがある。ユーモアと諦観と、他者へのまなざしを感じる本だった。

    0
    投稿日: 2021.01.31
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    併録の『給水塔』というエッセイの『もういちど大阪にバブルが来ればいいと思う。』(p.147 「北新地、一九八九年ごろ」)という一節を読んで、1989年に生まれた私は生まれてこの方本当に景気の良い日本を知らずに生きてきたのだなと実感した。 生まれた年にバブルがはじけた。 大学生になった年にリーマンショックがあった。 就活の真っ只中で東日本大震災が起きて就活は一時ストップした。 運良く就職して十年目のコロナ禍。 別に不幸だとか、苦労したとか、そういうことを言いたいわけではない。ただ純粋に、日本全体が華やいで高揚していた空気というのはどんなものだったのだろう、と思う。江戸時代や縄文時代を思うような遠さで。もしかして東京五輪に浮かれていた空気感はそれに近いのだろうか。だからおじさんたちは東京五輪に執着するのだろうか。あの頃の日本を、羽振りの良かった自分たちを再び、と願って。 『図書室』も『給水塔』も、街と人の人生の物語で、この本の前に読んだ岸本佐知子さんの『死ぬまでに行きたい海』と少しずれながら緩やかに繋がっているきがした。 『図書室』の二人はウイルスで人類が滅亡した後の世界を想像しているが、今この時代に同じように想像を巡らせている子どもたちもいるだろうなと思った。

    1
    投稿日: 2021.01.11
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    大人になった今はもう得られない、かけがえのない大切な時間。 現実味のないことに真剣に頭を悩ます二人が微笑ましい。 その人を形作る過去の思い出。 トラウマ的なことではなくこういう何でもない日々から人生を見つめるのもいいもんですね。

    2
    投稿日: 2020.10.08
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    地球と一緒に歳をとってるわたしたち。図書室から始まった小さな2人の人類滅亡の秘密。生殖が何かもわからないまま、それでも子供を作ることを考えてしまうのは、自分達の死後もこの地球を見る視線が欲しいからだろうか。 「地球やな」「うん、地球や」 岸正彦の文章は、視線の飛躍に驚かされる。彼女たちが見ていたのは、読者の想像では補完できないほど広い景色。 帰り道に拾った猫に架空の娘の名前をつけて、なんとなく元彼といった海で見た波を思い出す。全て地続きで、この地球上の話。

    1
    投稿日: 2020.05.15
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    子供2人の会話のテンポが良くとてもいい作品だった。 子供の頃を思い出す、大人の女性。 自分の母親の事、猫の事。 そして図書室でいつも出会う男の子の事。 その子との不思議な冒険。 後半は作者のエッセイ。 私の知らない大阪がいっぱい。

    10
    投稿日: 2020.03.31
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    定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室のこと― ひとりの女性の追憶を描いた中篇「図書室」と自伝エッセイ「給水塔」の2編収録。 まるで自分史のようだと思ってしまった。どうしてあの頃の私の気持ちも、今の私の気持ちも、こんなによく知っているの?と驚いてしまうくらい。 これと言った期待も希望も無いのに、「求められている」というステイタス欲しさに惚れた腫れたを経て、40にしてひとり暮らしを満喫する主人公。 胸いっぱいに感じる自由と孤独が、子どもの頃、公民館の図書室で覚えたソレと重なる。 『クラスの誰も知らない場所で誰も読んだことのない本のページを開いているのは、すごく寂しい気持ちとすごく自由な気持ちが混じって、それまでの生活で経験したことのないような、頭の肌がじんじんとしびれるような、痛快な気分がした』 アラフォー・独身・ひとり暮らしって、まさにこれだ。 孤独で自由で未知で痛快だ。 惚れた腫れたとは違う、母性本能とも違う、何かを溺愛したい衝動に駆られるのもよく分かる。その願望が本作の主人公みたく猫に向かう人も居れば、「推し」に向かう人も居るだろうし、選択肢はそれぞれ。 子どもの頃に読んだ本や通った図書室(学校の図書室も好きだったけれど、私も本作に出てくような公民館の図書室にも大変お世話になった)、秘密基地や初恋の男の子を今も胸の奥にしまっている人になら、確実に響く一冊。 (「給水塔」は途中までで離脱してしまった。大阪出身なら身を入れて読めると思う)。

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    投稿日: 2020.03.16
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    中篇「図書室」と、エッセイ「給水塔」を収録。 どちらもとてもよかった。 私が知っている少し前の大阪が詰まっていました。 懐かしく、自分も一緒にその時代を過ごしたような楽しさ、もう2度と戻ることができないと知ってしまった寂しさ、その両方を大切に心にしまうことができる時の流れも感じ、こころが温まるような気がしました。 エッセイの中で、万博公園にある大阪国際児童文学館について書かれていることが嬉しかったです。私の人生にも大きな影響があった場所だったので、居心地の良い閲覧室や静かな研究ブースの思い出、そこがなくなってしまったこと、今は廃墟のようになっていることを書いてくださっていたことが、とても嬉しかったです。

    3
    投稿日: 2020.03.05
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    自分にとって、とても理想的な小説の形をしています。直近で西加奈子『円卓』を読んでいたこともあり、関西の、小学生の女の子と男の子の会話、動物、公団住宅などの共通が目につきましたが、こちらの方が写実的で、語りそのものに重点が置かれているので現実感のある空気を見つけられます(優劣ではない)。育った土地にへの愛情が端々に感じられる一方で、幼少の思い出を過度にノスタルジックに神格化しないラストは上質な趣があってとても好みでした。(みゃーつき)

    0
    投稿日: 2020.02.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「何かを激愛する、ということを久しくしていない。何かを激愛したい。それで振りまわされたり、困らせたり、たまに泣かされたりしたい」 50歳、独り暮らしの独身女性の美穂。 定職もあり貯金もあり、何不自由なく日々を平穏に暮らしている。 けれど、ふと思い出すのは11歳の頃の出来事。 近所の公民館の小さな図書室で、毎週土曜日の午後になると一人で本を読んでいたっけ。 そこで出逢った同い年の少年と共に過ごした淡い記憶は、今となっては追憶に空想が混じった曖昧なものもあるかもしれない。 けれど大人になった今もはっきり思い出すのは、二人が共に体感した"地球の終わり"。 家族も友達も猫も全てを置き去りにして、二人きり、世界の果てで真剣に語り、不安になり泣いたあの夜の出来事は、心の奥で今なお生きている。 あの一瞬の激情があるから今がある。 今振り返ると、ほんまあほみたいやけど、あの時二人で相談して決めた娘の名前は、40年経った今でも忘れない。 美穂の終始淡々とした語り口が、余計に切なく心に刺さった。 後半は自伝エッセイ『給水塔』。 大阪の街っておもろいな。 「どんなひとにも人生があり、どんなひとにも内面がある」 「どの街にも、その街の人生がある」

    20
    投稿日: 2020.02.09
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    何かの書評で面白いかもと思い読みました。幸せと言い切れないが、取り立てて生活に不満は持っていない中年から初老になりつつある女性が小学生のある時期を思い出すと言うストーリーです。既に初老になってしまった私(性別は違いますが)にとって、そう言う状況に大いに頷ける部分があります。淡々とした物語の展開が心地よいです。物語に登場する淀川の河川敷も懐かしく読めました。それと作者によるエッセイが、面白い。作者が、あまり勉強はしなかったが進学できた大学が私の母校であり、10歳ほど年下の作者の青年時代と重なる部分も多々あり、懐かしい場所も登場して、いたって個人的ではありますが、いい読書ができました。

    5
    投稿日: 2020.01.01
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    岸さんの本を読むといつも何かを思い出す。 遊びに行くのは好きだけど住みたいとは思えなかった大阪。 途中まで読んで積読にしてて内容うろ覚えだったので最初から読み直しました。

    0
    投稿日: 2019.11.24
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    1人暮らしの50歳の女性が小学校の頃通った公民館の図書室のことを追憶する物語。 小学生の頃、秘密基地を作って遊んだことを思い出した。 印象に残った文章 ⒈ 私たちはもう10歳かそこらで、男というものに絶望していたような気がする。 ⒉ 図書室に行くと、彼はいつものようにベンチの上に本を積み上げて、本のなかに頭から潜水するみたいにして読みふけっていた。 ⒊ 人類が滅亡したあとの世界を考えるということは、テレビ映画の話題から始まって、なんとなく私たちの「テーマ」みたいになっていた この本には、自伝エッセイ「給水塔」も収録されている。 私も学生時代を大阪で過ごしたので、地名など懐かしく読んだ。 私的には、「給水塔」のほうが面白かった。 「給水塔」の印象に残った文章 ⒈ 言わないと誰も助けてくれないし、言えば言ったでなんとかなるのが大阪 ⒉ 誰でもない、何も持ってない、何もできない、ただ時間だけがある感覚 ⒊ 偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る

    3
    投稿日: 2019.10.11
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    大阪に短い間ですが住んでいたので、なんとなく懐かしく、でも新しく感じました。 ひとりで生きるということは、ものすごく寂しい訳じゃない。空気感がすごくわかる。言葉にしにくい感覚が描かれている気がします。

    1
    投稿日: 2019.10.06
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    世界の終わりを過ごす少女と少年を描いた表題作「図書室」。「給水塔」は著者の大阪を語るエッセイ。両方ともねこねこしていて、すごく好き。

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    投稿日: 2019.09.29
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    中編1編、エッセー1編 小説の方は公民館の図書室で出会った男の子との思い出を中心に、エッセーは本人の自伝的なあれこれだが、どちらも主人公は大阪、淀川、千里山、など登場する土地の纏う雰囲気、人情で、文章から大阪への「愛」が伝わってくる。本当に懐かしい。

    0
    投稿日: 2019.09.14
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    読み始めてから、何度も表紙を見返してしまった。 この作者は本当に男性なのか?!・・・と(失礼m(__)m) それほど、子どもの頃に確かに感じていた孤独や希望やさみしさが主人公の少女を介して 私の中に溢れて止まらなくなってしまったのだ。 小説の中にも出てくるけれど、 その年ごろの男の子は『アホウ』だからそんな気持ちは理解できないだろうと思っていたのに。 物語の世界に心地よく浸っていたら、 後半は著者のエッセイになっていてちょっとびっくり。 でも、この物語の生まれた背景や物語の舞台である大阪について深く理解できると思えばまたエッセイも興味深く 読むことができました。

    2
    投稿日: 2019.09.08
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    オーラルヒストリーの聞き取り調査等の方法論を得意とする社会学者であり、かつジャズベースのアマチュアミュージシャンであり、そして作家。3つの顔を持つ著者による表題作の中編小説と、自伝的エッセイをまとめた一冊。 岸政彦の小説やエッセイに流れる視点は常に一貫している。それは徹底的に我々の日常の意識を再現するという視点である。決してカッコつけたり、合理的に見せようという努力は意識的に排除される。我々は自身の姿を誰かに見せる際に、どうあがいても自身の姿をよく見せたいという欲望から離れられない。その一方で、自身の内面では非合理なものも含めて、生々しい思考が繰り広げられる。 著者の作品の登場人物は誰一人、変にカッコつけたり合理的に行動するわけではない。なぜそういう行動を取るのかよくわからないが、取ってしまう。そうした人間の限定合理性も含めて、人間の営為というものが美しいのだということを教えてくれる。それが著者の一連の作品の魅力である。

    1
    投稿日: 2019.09.01
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    大阪淀川を背景に、主人公の根底にある大きな寂寞を、静かに洗い出したような社会描写、心理描写はなんとも胸を強く掴まれる。

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    投稿日: 2019.08.28
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    小説もさることながら、高台の新興(だった)住宅地で育った者として、エッセイ「給水塔」がたまらない気持ちになった。 “ふだんどれだけ荒んだ、腐った、暗い穴の底のようなところで暮らしていても、偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る。私はそれが誰にでもあると信じている。” 淀川の小屋や万博公園、吹田の30分にあたる景色がわたしにもいくつか思い浮かぶ。あの静かで穏やかな、何も言わないひらけた視界こそが、自分へのまぎれもない肯定だったのだなと思う。

    0
    投稿日: 2019.08.27
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    大阪弁の小説が苦手だった。ワタシは生まれが東京なのでたぶん自分ではそこまで考えてなかったけれど基本的に思考は標準語で巡らせていて、今はもう大阪に住んでいる方が長いので違和感は感じなくなったけど、それでも苦手だった。小説を書くようになって、そうしたら会話はやっぱり大阪弁なのが普通で、ワタシって関西人やねんなーとわかった気がしてた。この『図書室』も『給水塔』もワタシの知っている場所のことが書いてある。東京はほとんど分からなくなって知っているのは数ヶ所。それに比べてここに書かれている大阪は梅田、中津、天王寺、心斎橋、長堀橋、福島、天満、吹田市、千里ニュータウン、千里山、関大前、豊津等々、知ってる場所ばっかりだ。場所は知っている、でもたくさんの人が生活していて、美穂だってきっとどこかのURの、団地に住んでいるって息をしているみたいに信じられた。記憶のなかの出来事と、毎日過ぎていく時間にちょっとだけノスタルジアを感じた。ワタシも美穂のように生きていけたらいいな。

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    投稿日: 2019.08.27
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    これぞ大阪という小説と自伝エッセー。 図書室の子供どおしの大阪弁での会話が 懐かしく、これが自分たちの子供のころの大阪弁での 会話だったなあと思えてきます。 エッセーでは、大阪市内。北摂など自分の原風景を丁寧に 描いてくれている感じがします。年代もほぼ同じ(ちょっと 私のほうが年配ですが)です。 今度から久しぶり大阪での勤務が決まったこの時期に、 出会った本で感慨深く読めました。 今住んでいる東京の世田谷のほうが、好きなところが 多いように思っていますが、自分の血の中は この本に描かれている大阪の血が確実に混ざっているのを 思い出した感じです。

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    投稿日: 2019.08.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    小学生の頃通った図書室で出会った少年。10年一緒に暮らした彼。母との記憶。大阪の風景。それら懐かしい思い出を振りかえる主人公の姿に、読んでいる自分も懐かしさを感じ、穏やかな時間が流れた。

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    投稿日: 2019.08.19
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    誰の心の中にもある、原風景みたいなもの。 ときにそれは、何の意味も持たない風景だったり、ぼんやり夢想した事だったり。 案外人は、そういう何でもない記憶を拠り所に生きているのかもしれない。

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    投稿日: 2019.08.15
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    社会学者の筆者が書いた小説です。 「断片的なものの社会学」はとてもいい本で、認識するという事で初めて存在するという概念を静かに語りかけてくる本でした。 そんな学者さんの小説なので難解なのかなと思いましたが、しみじみとした良作でした。これは表題作の「図書館」だけなら☆4つ上げたかった。 恋や友情を取り上げた本は世の中に沢山ありますが、これはどちらかというとシュールかもしれません。ユーモラスで悲哀が有って、読んでいてそんなに感情が波立つわけでは無いのですが、なんだか「分かる」という気がしました。 冴えない中年女性になった元少女の回想から始まります。本編(回想)の瑞々しい思い出が胸に響く美しさで、中年になった女性の中に少女を見ている自分がいます。誰でも連続した時間の中で大人になっていますからね。おっさんになった僕の中の少年が反応しました。

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    投稿日: 2019.08.12
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    いつものように週末したの子を連れて近所の図書館分館にでかけたときに,新刊コーナーで見つけたのでかりてきた. 新潮社の考える人のWEB版でよめる「にがにが日記」という連載というか日記が面白かったのをきっかけに,岸さんの本をこうして見つけてはかりている. 標題作の「図書室」がレコードのA面(レコード聴かないけど)だとすると,B面の「給水塔」は著者の自己紹介のような大阪をめぐるエッセイで,大阪という街をめぐる昔の記憶と,その追憶を支える当時の大阪という都市というか街の骨格の描写がすばらしくて,これはなかなか読めないいいものだった.

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    投稿日: 2019.08.01
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    「図書室」と「給水塔」の2編で構成されている。前者は公民館の図書室で過ごした小学生の想い出を描いた作品。後者は大阪の町に憧れて関西大学に入学し、現在は大学の非常勤講師をしている作者の自伝エッセイ集。

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    投稿日: 2019.07.17
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    三島賞候補となった表題作と自身の大学以降の題材にした自伝的エッセイの2作品。 私の好みの作品ではなかった。

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    投稿日: 2019.07.16
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    淀川を眺めるたびに、悲しくてさみしいけど、暖かくて、あらゆるものすべてを受け入れて佇んでいるような気持ちになることを思い出した。

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    投稿日: 2019.07.06