Reader Store
日本社会の歴史 上
日本社会の歴史 上
網野善彦/岩波書店
作品詳細ページへ戻る

総合評価

22件)
3.5
4
4
10
2
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    たまたま入れた奈良の豊住書店で見つけた新古本。著者自身が「むすびにかえて」で書かれているが、社会の歴史というよりは政治の歴史が主な内容になってしまっている時代もある。さらに、江戸時代の後半からは展望という形で軽く触れられているだけだ。としても、自分の中では多くの学びがあった。だいたい、そんなことは当たり前のことなのだろうが、日本という国ができたと言っても、きっとそう思った人がいたというだけで、多くの日本列島に住む人々は、そんなこと関知せずに生きていたのだろう。時間的にも空間的にもずいぶんとあいまいなわけだ。いまのように、ここからここまでが日本国であるとか、誰が日本人であるとかはっきりしていたわけではないのだろう。それから時代区分にしてもそうだ。語呂合わせとかで年台を覚えていたとしても、そこからはっきり鎌倉時代や室町時代が始まるわけでも終わるわけでもないのだろう。だいたい、京都で元号を変えたとしても、他の場所ではそれに従わないで、自分勝手に決めていたというようなことも、何度もあるようだ。そんなこと、日本史の勉強をちゃんとしている人は分かっているのかもしれないが、僕にとってはとても新鮮な話だった。さて政治の歴史を読んでいても事実の羅列で頭をかすめていくだけなのだけれど、大河ドラマで見ている時代だけは立体的に浮き上がってきた。道長の時代、鎌倉殿の時代、真田丸の時代(真田という名前は本書には登場しなかったと思うが)。西郷どんの時代はさらっとしか触れられていないので立ち上がっては来なかったが。明治についてはかなり批判的に書かれている。いろいろな仕組みを西欧から取り入れて、追いつけ追い越せとやってきたように言われることが多いが、たとえば経済についての用語など、市場とか手形とか株式とか全く翻訳語がなく、日本で独自にそういう考え方をしていたのだ。こういう点は梅棹忠夫もよく言っていた。大陸の西の端と東の端で同じように歴史は進んでいったと。それから、海上を通してのいろいろなやりとりが早い時代から頻繁に行われていたという。また、百姓というのは農業をする人のみを指すというわけではなかったという。このあたりは網野善彦の他の著書でも読んでいた内容だが、復習になった。そして今回一番の疑問点として出てきたのが、定子や彰子の読みについてである。「さだこ」「あきこ」とふりがながある。それはどこまで一般的なのであろうか。先日、源氏物語を専門にされている先生が、大河ドラマ「光る君へ」で「さだこ」「あきこ」と呼んでいるが、そんなことはあり得ないです、とはっきりおっしゃっていた。次に会ったときに質問する材料としておこう。いやあ、まだまだ知らないことがいっぱいあっておもしろい。当たり前だけれど。

    0
    投稿日: 2024.06.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

     久しぶりに日本史の通史を読んでいます。それも,網野史学です。  網野さんの本は,さすがに視点が違います。それは初っぱなからわかります。網野さんは「はじめに」で次のように述べています。 「日本社会の歴史」と題してこれからのべようとするのは、日本列島における人間社会の歴史であり、「日本国」の歴史でもないし、「日本人」の歴史でもない。これまでの「日本史」は、日本列島に生活をしてきた人類を最初から日本人の祖先ととらえ、ある場合にはこれを「原日本人」と表現していたこともあり、そこから「日本」の歴史を説きおこすのが普通だったと思う。いわば「はじめに日本人ありき」とでもいうべき思い込みがあり、それがわれわれ現代日本人の歴史像を大変にあいまいなものにし、われわれ自身の自己認識を、非常に不鮮明なものにしてきたと考えられる。  そして,そのことば通り,まだ日本ではなかったころの日本社会の歴史を,東アジア全体の歴史的地理的観点から書き進めてくれています。だから,もう40年以上前に習った教科書で学んだだけの断片的なできごとでできあがっているわたしの中の日本の歴史が,世界とつながりながらつながっていく楽しさがありました。  本著作は上中下の3部作ですが,第3部の最後までいっても17世紀前半までらしいです。どんな話題が展開されるか,続編がたのしみです。

    2
    投稿日: 2022.11.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    さすがに網野氏の書く歴史は、表層だけではなく、社会の深層からの分析が多く、新鮮な感覚で読むことが出来る。この巻は、有史以前の日本列島の成り立ちから当時の人類の動きにまで話が及ぶ。しかし、逆に人物像としては、大化の改新後の中大兄皇子が自ら天皇位に就かず、対立する古人大兄王子、蘇我倉山田石川麻呂、孝徳天皇などを排斥していく過程の描写は詳しく、天智天皇は陰湿な人物との印象を受けた。日本の古代は8世紀に多く登場した女性天皇の存在に見られるように女性の社会的地位が外国と比べて相対的に高かったとの説明は現在と比べて、皮肉なことである。

    1
    投稿日: 2022.02.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    中世を主要なフィールドとして、従来の「日本史」の枠組みの見なおしをおこない、「網野史学」と称される新しい観点を提出したことで知られる著者による日本通史の試みです。ただし17世紀の後半から現代にかけては、「展望」というかたちで著者の問題意識が示されるにとどまっています。上巻では、古代から平安時代初期までがあつかわれています。 著者は「はじめに」で、従来の日本史のとらえかたが「はじめに日本人ありき」というべきものになっており、そのことがわれわれの歴史像をあいまいなものにしてきたと述べています。著者は、古代から日本列島とその周辺の地域とのあいだに切り離しがたいつながりがあったことに注目するとともに、日本列島の西と東、あるいは東北・北海道や沖縄の歴史のあゆみにも目くばりをおこない、日本の歴史がまさにその展開を通じてしだいにかたちづくられていったものであることを論じています。

    0
    投稿日: 2021.11.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    網野善彦さんの日本の歴史概説書。 従来の日本史では捉えられなかった事象にスポットを当てるという意味を込めて、タイトルを「(日本列島の)日本社会の歴史」にしたそうである。 上中下巻に分かれており、上巻は人類誕生〜9世紀の弘仁貞観の頃まで。 古墳や鉄器などへの朝鮮半島や大陸の影響、中央に従わない東北地方への遠征など、周辺への視点が多いのが網野さんらしい。 高校日本史的な知識が多いので、日本史を復習したい方にもおすすめである。

    0
    投稿日: 2021.11.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    古代から九世紀まで。 それにしても、古代社会の歴史をこんなに断定的に言い切るのも凄い。最近の研究で根底から覆される記述は多いのでは?

    0
    投稿日: 2020.12.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    有史以前から平安初期まで。 日本の歴史ではなく、日本社会の歴史というタイトルにするだけあり、社会の運用と展開に焦点が当てられ、記述が進められている。日本社会と稲作の深い結びつき、それを基盤とした朝廷の統治形態について言及しつつも、決してそれだけでは片づけられない多様な要素の集合体が古代日本であったことも意識的にしっかりと書き出している。

    1
    投稿日: 2020.04.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本人でも日本国でもなく、“日本社会“に関する通史。上巻は9世紀末、宇多天皇の治世まで。文化や技術、制度がどのよう変遷してきたかがよくわかる。

    1
    投稿日: 2017.08.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ☆☆☆☆ この程度の深さで、日本の成り立ちから平安時代初期までを振り返れたこの一週間は貴重な時間だった。 「日本」という国の成り立ち、大陸(中国)や半島(朝鮮)との関係やその力関係による緊張感に影響される日本のありようは、昔に学んだ学校での歴史とは違った種類の知識を与えてくれた。 また、国の型ができ、その組織が作られ、複雑になっていく過程では、権力闘争が繰り返されていく。穏やかな時代の印象持っていた平城、平安時代においても、どの時代、どの国の歴史同様の血生臭い権力欲をみせられた。 この本が優れているのは「日本社会」の歴史を描いているところで、歴史のメインストリームに主眼が置かれているわけではなく、読んでいると「社会」の動き、そのそれぞれの時代を暮らす人々の姿が想像できるところが良い。(これはゆっくりと時間をかけて読んだために得られたのかもしれない) でも、次に『日本社会の歴史』(中)・(下)を読むのはいつになるかはわからないなぁ。 網野善彦氏は、この膨大な歴史のなかから、よく社会を見つめるための筋を提供してくれている。 2017/04/22

    1
    投稿日: 2017.04.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    20170215読了。そちら地方の出身だが「浜北人」については知らなかった。「三カ日人」は知っていたが。その時代から平安京までが上巻。だーっと時が進む印象の本だが、歴史を前にすると自身の人生は無いに等しいと感じ、そこがトリガーとなって中・下巻へと読み進めたくなる。が、手元にはまだない。

    1
    投稿日: 2017.03.09
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    平易な文章だが内容が難しくて1回読んだだけでは頭に入ってこない。大好きな持統天皇のことについても少し書いてあった。天武は持統天皇(鸕野讚良)以外の女性との間に十数人の王子がいたこと。後継者は持統天皇との子草壁王子に決まっていたものの、天武は(持統天皇の姉との間にもうけた)大津王子を高くかっていたこと。持統天皇と草壁王子は天武の葬儀の最中に大津王子を自殺に追いやったこと。その翌年には草壁も亡くなっていること、など。 いや、もっと高尚な話がたくさんたくさん書いてあったのだが、知識を自分のものにできなかった。

    1
    投稿日: 2016.09.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    これまでの一般向けの歴史の記述は政治や権力機構が中心になっていたが、この著書の視点はこれまであまり目配りされなかった周辺地域や庶民、非差別民にも及んでいる。従来歴史という物は政治の道具であった。政治というのは日の当たる部分である。しかしその背後には必ず陰の部分がある。そして中心機構としての政権はもれなく周縁の力を利用してきた。この事はオフィシャルな歴史には登録されない。また一方でそういった周縁の種々雑多な物というのはわかりやすい歴史の構図には向かないものでもある。それにもかかわらずこれまでに記録の端々に姿をちらちら表してきた不思議なものをつなぎ合わせると何かしら新しく面白い像が浮かんでくるのではないだろうか。そしてその存在を知ったとき「今」の世の中のしくみへの理解が一段と深い物になるような気がする。

    1
    投稿日: 2016.04.24
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    何の因果か再読。 いつも不思議というか驚くのは、いわゆる縄文時代のような時代に海上交通(しかも長距離)が活発だったということ。博物館的な場所で見かける昔の船(あるいはその模型)で行き来することなんて今の(あるいは当方の)感覚からは信じ難い。人間の行動力ってのは凄いもんです。 あとは昔から中韓とは色んな駆け引きがあったんですなぁ、改めて他の社会との関わりというのはなかなかに骨が折れると感じずにはおれません。

    1
    投稿日: 2015.03.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本の歴史の入門署として、岩波新書で井上清の著作があったが、イデオロギーにとらわれがちだった。本書は日本が農業国であるとの常識とされていたのを覆し、百姓を天皇が臣下へ与えた姓と主張した。

    1
    投稿日: 2013.11.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    歴史小説を、時代を追いつつ読んでいくのと同時に、 手引きとして併読した。 上巻は平安時代初期まで。 通史のためか、読むのが面白くてページがすすむ、 というわけではないが、 前半の「はじめに日本人ありき」という思い込みをなくし、 日本列島の上で歩まれた社会を見ていこう、 といった内容は面白かった。 「日本」で縄文→弥生とひとまとまりに推移したわけではなくて、 東と西では歩みの速さも違う。

    0
    投稿日: 2013.03.20
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    上中下巻読了。大和王権成立に至る世情や、治世から戦国乱世へと移り変わる世の中のウネリのようなものがおぼろげながらわかった。社会史という学問は面白いな。ただ、文章が読みにくい。一文400字とかザラ。長すぎて主語と述語の把握に苦労する。

    0
    投稿日: 2012.09.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読者感想文指定の本。 今まで読んだことのないジャンルだったけれどおもしろかった。 教科書の行間を読んでいるよう。

    0
    投稿日: 2012.04.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

     日本史学における碩学が送る、日本社会の歴史の概説書。日本と朝鮮半島、済州島、対馬、壱岐、北九州、瀬戸内海など諸地域の海を通じての人的・文化的交流について比較的多めにページが割かれている。  最近日本史を勉強し直しているが、こういった視点から考えてみるのも非常に面白い。  気になった点 ・倭王武は宋の皇帝に「東は毛人を征し、西は衆夷を服し…」と上奏したが、実態は逆で、東西の動乱鎮圧のため助けを借りる目的で宋に使者を派遣したとされる ・大化改新直前の643~44年にかけて新羅、高句麗では相次いでクーデターが起こり、日本でも熱狂的な呪術信仰が流行って平民の間でも社会転換を待望する空気があったこと ・7~8世紀の北海道は渤海と交易を行っていた ・長岡京、平安京遷都を行ったことで有名な桓武天皇は朝鮮から来た渡来人の地を引くとされ、百済王の子孫を重用した。同じく重用された藤原種継も渡来人系の秦氏と血縁関係にあった。早良親王や大伴家持は平城京の寺院と関係が深かったために遷都に消極的だったとされる。渡来人の子孫と寺院との間には何らかの溝があった?

    1
    投稿日: 2011.06.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    [ 内容 ] 現代の日本人・日本国は、いかなる経緯をへて形成されたのか―。 周辺諸地域との海を通じた切り離しがたい関係のなかで、列島に展開した地域性豊かな社会と「国家」とのせめぎあいの歴史を、社会の側からとらえなおす。 十数年にわたる学問的営為の結実した本格的通史。 上巻は列島の形成から九世紀(平安時代初期)まで。 [ 目次 ] 第1章 原始の列島と人類社会 第2章 首長たちの時代 第3章 国家形成への道 第4章 「日本国」の成立と列島社会 第5章 古代小帝国日本国の矛盾と発展 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

    0
    投稿日: 2011.05.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    日本列島は古代から北東アジアと支那や東南アジアを結ぶ橋としての役割を持ち、百姓=農民、ではなく狩猟、漁業、流通に携わる多くの民が広範なネットワークを持ち社会を形成してきた。 「日本人が孤立した島国で農耕を営む単一民族」といった安易な解釈がいかに無意味なものかがわかる。

    0
    投稿日: 2011.05.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    教科書では勉強しなかった日本の歴史についての言及もある。 いつから「日本国」になったか。 いつから「天皇」になったか。 自分が無知であることを、深く痛感するとともに、学びの意欲をさらに掻き立てられる作品。 古墳時代等には今まで興味が持てなかったが、それは「無知」であることが原因の一つでもある。 食わず嫌いをせずに、このような作品を読み込んで知識の幅を広げたい。

    0
    投稿日: 2011.05.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    教科書的な歴史ではなく、人々の生活側から見た歴史。日本の多様性が描かれた、単一民族・統一国家・島国日本、といった概念がすりこみでしかないことに気づかされる。

    1
    投稿日: 2007.06.05