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大忙しの蜜月旅行
大忙しの蜜月旅行
ドロシー・L・セイヤーズ、猪俣美江子/東京創元社
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総合評価

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    シリーズ第十一弾。 ついに結婚へと至ったピーター卿とハリエット。 従僕のバンターと三人でハネムーン先として買い取ってあった〈トールボーイズ〉と呼ばれる田舎の農家へ向かいますが、到着してみると家は施錠されていて、待っているはずの前所有者も見当たらない状態。 何とか入れてもらった室内も整っておらず、“話が違う”感満載でとりあえず滞在していたら、地下室から前所有者の死体が発見されて・・。 まず序章での社交界を飛び交う手紙のやりとりが、「ピーター卿ついに結婚!!」というニュースのセンセーショナルな様子が伝わってきます。 個人的にはここで、"手紙といえばこの人!"の(?)、クリンプスン嬢のお手紙も載せて欲しかったところですけどw そして、ピーター卿の母上・デンヴァー先代公妃の日記も、彼女のチャーミングな人柄が表れていますね。 そんなブライダルニュースに湧く面々をよそに、まったりとハネムーンを過ごす予定だったのに、滞在先の家は閉まっているわ、室内は整っていないわ、前所有者の債権者は押しかけてくるわ、挙句死体はみつかるわ・・等々で、 「こんなハネムーンは嫌だ。どんなハネムーン?」 という大喜利のお題の解答にもなりそうな、ドタバタ顛末になってしまい、なんともお気の毒なピーター卿&ハリエット夫妻ですが、いうても二人はラブラブですし、例によって調査に乗りだす"謎解きがお好き"な御前様。 何気に一番災難だったのはバンターで、新婚夫婦の衣食住を整える為にもう大忙しでございます(まさに大活躍)。 そんな孤軍奮闘している彼の地雷を踏みまくるラドル夫人に、さすがのバンターもブチギレる一幕も。 以前『ナイン・テイラーズ』のレビューで"キレるバンターが超レア"と書かせて頂きましたが、今回はその時以上に"バンター、おかんむり"でした(;'∀') あと、このシリーズで引用が多いのはいつものことなのですが(カーク警視が"受けて立つ"からまた・・汗)、それに加えて今回はミュージカルばりにいきなり歌いだす場面が多めだな・・と思っていたところ、本作は元々舞台劇だったようで、確かに全体的に演劇チックだったな~・・と納得です。 そんな訳で、「大忙しの・・」というより「"大騒ぎ"の蜜月旅行」を、私も〈トールボーイズ〉に一緒に滞在しているような気分で、恋愛&ミステリを堪能させて頂きました。 オマケの短編「〈トールボーイズ〉余話」では後日譚として、三人の子どもに恵まれた、ウィムジイ家の様子が楽しく描かれていて、微笑ましいエピソードでしたね。 ということで、本作がシリーズ最後の長編となってしまい、寂しい気持ちでいっぱいです。 セイヤーズの書きかけの原稿を『イモージェン・クワイ』シリーズでお馴染みの、ジル・ペイトン・ウォルシュさんが引き継いだ長編作品があるようなのですが、こちらはまだ翻訳されていないのですかね? とりあえずは、短編集『ピーター卿の事件簿』を読むことで心の隙間を埋めたいと思います~。

    29
    投稿日: 2025.02.15
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    図書館で。 ようやく結婚にこぎつけたウィムジィ卿とハリエットさん…らしい。確かにラブロマンスの合間にちょこちょこと推理やミステリーが入る感じ。 それにしても当時のイギリスは殺人の有罪判定=死刑なんだなぁ。探偵が意気揚々と犯人を特定し、事件を解決する作品を数多く見てきましたが、その後の刑罰執行で探偵が悩み苦しむ姿を描いた作品を見たのは初めてかも。ゲーム感覚で解いた事件が本当に真実なのか、計画的犯行ではなく偶然の積み重ねだったりしないのか。正義と悪を完全に2つに分け、探偵が絶対に間違っていないという姿勢を崩さないのはちょっと怖い考えでもありますしね。 オマケのような短編も面白かったです。というか、ホント昔の奥様ってなにもしなかったんだな~とぼんやり思います。いや、使用人の監督とか人を使うのも大変だったでしょうが、でも子育ては乳母や家庭教師がついてるし、料理は料理人が居るし、掃除や洗濯と言ったことをする人も居るし、庭師も居るし、来客の応対をしたり使用人を取りまとめる執事も居る。正直、奥さん業と作家業に苦しむとか言われてもぶっちゃけ「そうなの?」としか思えないというか。まぁ今よりは一つ一つの作業に時間はかかったでしょうがそれでもねぇ?

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    投稿日: 2021.04.22
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    なかなか続きが出なくって 前作までの訳者さんが 亡くなってしまわれたのは少し残念。 一応、新婚旅行で滞在する屋敷で 前の持ち主が死んでいるのが見つかる という事件は起こりますが 作者が「推理もある恋愛小説」と言ってるように メインはお貴族様と結婚した 女流作家の気苦労やら、なんやら(笑) まぁ、シリーズを通して読んできた読者への ファンサービスな一冊ですね。 御前様は相変わらずだし。 新婦のハリエット嬢と執事のバンターが うまくやっていけそうで良かった(*^0^*) 「田舎者」のご近所さんに振り回されて ついにキレるバンターに驚いたわ…。

    1
    投稿日: 2020.11.12
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    初めて読んだシリーズですが、この本が最後らしいです。推理小説なんだけど、恋愛成分多めでした。ピーターとハリエットがハネムーン(と言っても引っ越で、買い取った家に執事と一緒に向かう)に行きます。中々犯人が特定されず、色々あって買った家を出ることになってようやく犯人が分かりました。トリックというより仕掛けでした。ピーターの性格が少し怖かったのと、ワインの件でバンターが本性が出たところが印象的でした。

    1
    投稿日: 2020.04.08
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    サブタイトルが「推理によって中断する恋愛小説」とありますが、まさにコレです。読後感はロマンス小説を読んだ感覚。 イギリスの田舎の風俗描写と、新婚旅行で周囲そっちのけでキャッキャウフフするピーターとハリエットが凄い。この二人のファンなのでとっても楽しめたのですが、これは絶対にシリーズの最後に読むべき本で(ストーリーやキャラクターが繋がってる事もあり)、絶対最初に手に取っちゃいけない奴ですねw この作品、元が舞台脚本だっただけあって、今までの作品と一味違ってうっすら舞台の痕跡みたいなのが感じられて面白い。(例えば、居間にカメラが固定されてそこに次々キャラが出入りするような演出になってて、とても舞台的なんです)また、バンター単品の登場シーンも多く、よりウッドハウスのジーヴスばりの従僕っぷり描写が多くてびっくり。 ピーター卿の母上のキャラクターがとっても良い。 後日譚「トールボーイズ余話」も収録。これも幸せそうでとても良い短篇だった。

    1
    投稿日: 2020.03.25