
総合評価
(8件)| 1 | ||
| 3 | ||
| 2 | ||
| 1 | ||
| 0 |
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
鏡合わせの世界とは不思議に魅力的なものであるが、半円の鏡と半円の鏡を向かい合わせて球体の鏡を作ったとするならば、その玉の中心から見えるのはどのような景色だろうか。この物語は、そんな誰でも思いつくような、しかし決して実行することはないような想像を、実際に試してしまった人物についての物語であった。 人が発狂するまでを丁寧に追っていて、まるで隣で知り合いが狂っていくのを見ているようだった。と同時に、彼が思考実験の末にたどり着いたその世界はとても綺麗だろうなとも感じた。ついに球体鏡の中に入り、発狂した友のことを、「怪物の世界に足を踏み入れた」と表現しているところもよい。 そうして、人間ほどの大きさの玉が、ただ部屋の真ん中に、ごろりごろりと転がっていたのだ。 この物語は読んですぐよりも、読み終わってからのほうが後を引いている。球体の鏡の中に、入ってみたい…見てみたい…と、次第に強く思うのである。なぜだかとても美しいような気がするのである。このように己の思考の移りゆく様こそが、江戸川乱歩の書いた恐怖なのかもしれない。人ひとりを狂気にいたらしめる恐ろしさがあると、このように目撃しているのに…
1投稿日: 2025.08.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
本とに乱歩は好奇心をそそるようなゾッとさせるような設定を作るのがうまいなと思いました。 球体の中に自分も入ってみたいと感じました。
1投稿日: 2025.06.30
powered by ブクログどの物語も、人間の執着心がキーになっている気がした。 執着して、こだわりがあって、譲れないものを抱えながら生きている人には惹かれるものがある。
1投稿日: 2025.03.13
powered by ブクログ人間の狂的行為、エログロなど江戸川乱歩が織り成す世界観がどストライクな1冊だった。 『人間椅子』の作中の書簡体形式が個人的に恐怖心を抱かせる良い書き方だな、と思った。
1投稿日: 2024.08.14
powered by ブクログ江戸川乱歩の傑作怪奇小説集。「人間椅子」「鏡地獄」「人でなしの恋」「芋虫」「白昼夢」「踊る一寸法師」「パノラマ島奇談」「陰獣」の八作品収録。各作品について、「狂気」や「愛欲」といった言葉がキーワードのように思う。どの作中人物も「愛」を根底に「狂気」とも取れるような行動を取る。特に「人間椅子」「鏡地獄」「陰獣」の3作品はその傾向が特に強いように感じる。「人間椅子」は何度読んでも意外性のある結末を迎え、「鏡地獄」は鏡に魅入られた人間の壮絶な最期に戦慄し、「陰獣」はラストのどんでん返しで狂気性が明らかにされる。数多くある乱歩の傑作の中でも上位に位置する作品たちが収められ、何度読んでも面白い。
9投稿日: 2024.07.25
powered by ブクログ文ストとのコラボだったので買いました。やっぱり江戸川乱歩が好きだなぁ。「人間椅子」は本当に怖くて鳥肌がたった。
3投稿日: 2023.08.26
powered by ブクログ某漫画から江戸川乱歩に興味を持ち、かつ表紙買いという不純とも言える動機で購入。ホラーは苦手だから楽しめるか不安だったけど、先が気になって一気に読めた。(随時更新中) 【人間椅子】 タイトルを見てまず頭を過ぎったのが「人体が材料に使われてるってオチでは…??」という猟奇的な発想(完全に漫画の影響)。でも全然違った。今まで読んだことのある耽美的な作品は、好きか嫌いか(自分の性癖に合うか合わないか)が極端に区別されたけど、この作品は好き嫌い以前に単純に面白かった。前置き(ホテルでの話)が相乗効果となってじわじわと恐怖心を煽られる感覚があって、それが良かった。1通目の手紙(一番盛り上がる場面)で終わってても十分面白かったと思うけど、2通目の手紙の描写がまた別の恐怖心を芽生えさせてきて、新鮮だった。
1投稿日: 2021.02.21
powered by ブクログ表題ほか、「人間椅子」、「芋虫」など著名な中短編を収録。 人間の極端に偏執狂的な行為を描く奇談で集成。多くの作品で見られる淫靡さも特徴。エログロな見世物の雰囲気が漂う。現在は差別的として使われない言葉も多く見られる。以下、個別に簡単な紹介文。 ---------- 「人間椅子」 美しい閨秀作家である佳子に届いた、家具職人だという男からの手紙は、自らの奇矯な行いを告白するものだった。単に椅子の中に入れるだけで、座っている人間の感触は伝わらない椅子と記憶していたが、違っていた。さすがに気付くでしょうと、無粋に思ってしまう。 「鏡地獄」 友人Kの不思議な話。Kの友人は子供のころからレンズに人一倍興味をもち、両親が亡くなって莫大な遺産を受け継いだ後はガラス工場の経営を始めるが、奇行がいっそう目立つようになる。ガラスの球体の中がどのように見えるか、現在の科学なら検証できるのだろうか。 「人でなしの恋」 お多福な京子が美男子で家柄もある夫の門野に嫁ぎ、幸福な日々を過ごすが、唯一夜更けに離れの蔵に通う夫の行動が気になっている。本書内では比較的大人しい話。 「芋虫」 戦争で両手両足を亡くし身体中に傷を負って口も利けなり、まるで芋虫のように変わり果てた元軍人の夫と暮らす女の話。過去に読んで強い印象を受けたが、今回の再読も相変わらず強烈だった。芋虫となった夫の描写そのものより、妻が夫の身体で唯一生き生きとしている眼に抱く、悪意に慄く。 「白昼夢」 薬屋の主人の演説の告白を聞く男の話。タイトル通り、夢のような印象。10頁足らずと最も短い。 「踊る一寸法師」 緑さんと呼ばれる小人の男が、一座のメンバーに嬲り者にされている。それを受けて、緑さんが美人玉乗りのお花に取った行動は。「白昼夢」に続いて悪夢のような作品。 「パノラマ島奇談」 30越えて仕事もない男は、かつての同級生で彼と瓜二つの富豪の死を聞き、復活を装い遺産を手に入れる計画を思いつく。本書中で最も長い中編の約140ページ。男が築き上げるパノラマ島の描写は、個人的には冗長だった。 「陰獣」 中編ミステリー作品。主人公の寒川に悩み事を依頼するのは美しい人妻の静子。静子は遠い過去に恋人だった、いまは著名なミステリ作家である平田という男の異様なストーカー行為に悩んでいる。同じく推理作家の寒川が、静子の依頼を聞き入れて平田と対峙する。本書中もっとも凝った作品。著者の複数の他作品を平田作という設定とし、その仕掛けに触れるといった、自作への自己言及の側面をもつ。
9投稿日: 2021.01.28
