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ミッテランの帽子
ミッテランの帽子
アントワーヌ・ローラン、吉田洋之/新潮社
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総合評価

62件)
3.8
14
21
20
1
2
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    おしゃれな小説なんだけど、固有名詞が多すぎた。フランスの歴史や文化、ブランドを知らないから、いまひとつ魅力を味わえなかった。分かる人なら、たぶん、エモさ、あるいはレトロ感を味わえる作品なのだと思う。

    0
    投稿日: 2025.10.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    フランス大統領ミッテランの帽子を出にした人たちの運命が変わっていくストーリー。ファニーの話が1番好き。 最後始まりのダニエルに戻ってきて、そこからミッテランに返す話の収まり方が綺麗だった。ミッテランが実は帽子の行方を追跡していたことにはびっくりした!

    0
    投稿日: 2025.09.01
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    ミッテラン大統領の帽子が狂言回しで,ミッテランがブラッセリーに置き忘れた帽子が何人もの人々の手を転々とする間に,なぜか不思議なことに,その人たちそれぞれに成功をもたらす. 飄々としたタッチで語られているのだが,なんとも言えない味わいの,おとぎ話.

    1
    投稿日: 2025.08.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ミッテラン大統領の帽子を持つと持ち主の運命を変えていく、、、という話。 途中までは普通に帽子が持ち主を変えて、その持ち主にいろいろ起こるという、少し短編みたいな内容なのかな?と思っていた。 ただ、ダニエルの行動力がすごすぎてびっくりした。帽子を追い求めるために広告をだしたり、顧客名簿をみたり、、盗んだり、その行動力あったら、帽子なくても出世するよ。 帽子は単なるきっかけにすぎず、みんな幸せになってよかった。特に、ファニー。 最後、ミッテラン大統領は帽子をなくした1時間後にはすでに帽子のありかを知っていて、ずっと追跡していたことには本当に驚いた。 面白かった!!

    0
    投稿日: 2025.07.24
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    タイトルのフランスの有名な大統領の名前ではなく、おとなのおとぎ話という文言に惹かれて読んでみた。 偶然自分の手元に置かれることになった大統領の帽子を巡って、拾い主が転々としていき、そのそれぞれの拾い主にドラマがある落とし物小説。わらしべ長者というよりは「風が吹いたら桶屋が儲かる」に近いかもしれない。 帽子を通して読む、拾い主である全く別の人々がそれぞれ持つ誰かとの繋がり。食事、人々の会話、挟まれる当時の風俗や、音楽や絵画の芸術の話題が息づくように描写されている。 まるで、当時のパリの街並みや生活の中へ、自分も帽子と共に飛び込んだみたいに。 夜寝る前にふと読んで心が少し暖かくなる、そんな小説だった。 同著者の『赤いモレスキンの女』も楽しみ。

    0
    投稿日: 2025.05.11
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    ミッテランが忘れた帽子の持主の移り変り。財務部ダニエル/秘書ファニー/調香師ピエール/裕福なベルナール。悩める人達が帽子に導かれ運命を切開く。不調で惨めな調香師の奇跡の復活が印象的。読後幸福感。

    12
    投稿日: 2024.12.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    1980年代のパリが舞台。ミッテラン大統領がブラッスリーに置き忘れた帽子を手にした人の人生が良い方向に変わっていく。帽子の持ち主が次々代わる経緯が面白く、テンポ良く進むストーリーにどんどん引き込まれていった。エピローグで明かされる裏話にはびっくり。訳者あとがきまで読むと、歴史的背景などが良くわかる。 「赤いモレスキンの女」と同じくらい面白くて、私にとっては再読間違いなしの作品。

    1
    投稿日: 2024.11.11
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    調香師ピエールに帽子が渡るところまでは、ありがちだけどドラマチックな展開でワクワクした。 その分、後半の政治思想に関する感覚は、馴染みがないこともあってよく分からなかった。 ダニエルのミッテランや帽子に対する執着は、ちょっと異様な気もするが、 大統領が話していたように、1つの帽子が旅をし色んな人であったと考えると素敵だなと思った。

    0
    投稿日: 2024.11.05
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    大統領のフランソワ・ミッテランが、お店に置き忘れた帽子を再び手にするまでのお話。 帽子は、会計士のダニエル・メルシエ、不倫相手との関係を断ち切ることができないファニー・マルカン、心療内科に通い悶々とした日々を過ごす元天才調香師ピエール・アスラン、代々続く名家のベルナール・ラヴァリエールの4人にそれぞれ、良い変化をもたらしていく。 その帽子を持つだけで人生の正解がわかったかのように、考えや行動が変わっていき、結果、全てが良い方向へ向かうという、まさに魔法の帽子で、ファンタジーなお話だった。 フランスについてあまり知らないので、なんとなくでその時代のフランスを見ていたが、もし詳しく知っていたら、物語の情景を想像することができ、もっと世界観を楽しめるように感じた。 ダニエル・メルシエは帽子によって人生がうまくいったかもしれないが、帽子に取り憑かれた行動の描写が多く見受けられ、個人的にはその少し異常に感じる行動の方が気になってしまい、物語の主軸を楽しむことができなかった。

    1
    投稿日: 2024.09.01
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    【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB27527486

    0
    投稿日: 2024.07.01
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    現実とおとぎの世界が混ざり合っているのがおもしろい。持ち主を虜にするミッテラン帽子、私も手にしてみたい。あとパリのブラッスリーで牡蠣とサーモンを食べたくなった。

    0
    投稿日: 2024.06.20
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    「その帽子を手にした日から、冴えない人生は美しく輝きはじめる。」 元フランス大統領フランソワ・ミッテランが置き忘れた帽子をきっかけに、くすぶっていた4人の人生が大きく変化していきます。 1人1人にどのように帽子が渡っていくのか、そして何をきっかけに離れてしまうのかもこの本の見どころの一つです! あまりフランス文学は読んできていませんが、この本はトップクラスに気に入りました。 本編を読んだなら、是非訳者あとがきのところまで読んでほしいです!

    12
    投稿日: 2024.03.06
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    1980年代パリ。冴えない会計士ダニエルは、予約なしで訪れたブラッスリーで大統領フランソワ・ミッテランの隣の席に案内される。 ミッテランが置き忘れた帽子から始まる四つの物語。 一人目のダニエルはちょいとどうなの?的な行動が目に余るけど(リアルな人間らしさはある)二人目以降はフィクション感があって楽しい。私は三人目の調香師の話が好き。四人目になると一気に政治色が出るけど、それもまた良し。 何より、実在する大統領がこんなかたちでフィクションに登場するのが→ 楽しい。日本にはない感覚な気がする(日本の大臣を物語に脇役としておしゃれに登場させる国内作品、私は読んだことないけどあるのかな?) 政治が日常にある好例ではないかと。 それにしても、著者はミッテラン大統領が好きなんだろうなぁ。良き。

    4
    投稿日: 2024.02.27
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    https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/essays/tanoshimi/book7.html

    0
    投稿日: 2024.01.30
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    帽子という魔法をいい意味で言い訳にして、登場人物たちが一歩踏み出してゆく。でも、帽子は意思を持たないため、変わるきっかけは誰にでも眠っていることを教えてくれる。

    1
    投稿日: 2024.01.09
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    ミッテラン大統領の帽子を手に入れたとたん、つまらない人生が輝き始める。手違いからいろんな人の手に渡り、それぞれに変化を起こし…意外なラストへ。 なんでこれ映画になってないの? 『ミセス・ハリス』みたいな良い映画にすべきよ。 いわゆる「大人の童話」だけれど、「帽子」という小道具がなくても、ものの見方と自分の意識を変えれば人生動き出すよな、と、元気がもらえました

    0
    投稿日: 2023.08.27
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    自分の好みでは無かったので最後で読み切ることができなかった。 ミッテランの帽子に特別なパワーがあり、その帽子を偶然入手した人の行動が変化する。という概要だが、ミッテランの帽子によってなぜ各人の行動に変化が起きるのか?の繋がりが分からず、ずっとピンとこなかった。 ミッテラン=勇気や変革の代名詞という前提なのか?とにかく話に入っていけなかった。 何の変哲もない日常に小さな変化が起きる。という話ならジム・ジャームッシュの映画作品の方が良い。

    0
    投稿日: 2023.08.12
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    何も特別な事件は起こらない。 でも、読ませる、止まらない面白さ。 小説はこうでないと! ただ、個人的にはエピローグはなくても良かったな

    0
    投稿日: 2023.06.16
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    読書記録 2023.6 #ミッテランの帽子 #アントワーヌ・ローラン '80年代のフランス文化が鮮やかに描写される中、4人の男女の手から手へ旅する黒いシルクハット。 些細なきっかけで人生は変わる、というお伽話かと思ったら、ラストは意外な方向へ。 前日読了した#イクサガミ との落差がすごい #読書好きな人と繋がりたい #読了

    3
    投稿日: 2023.06.01
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    80年代後半から90年代前半にフランス語やフランス文化を学んだ自分としては、物語が醸し出す雰囲気がそこはかとなく懐かしく、それでいて、ストーリー展開がミステリーチックで面白い。 フランス語でも読んでみたいと思った1冊。

    0
    投稿日: 2023.04.01
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    フランス人にとって、ミッテラン大統領は特別な存在なのでしょうか。 帽子が去ったあとの人々の人生も描かれていて、帽子により人生が変わった人々のその後も興味深いです。 今は上手に感想を言えませんが、何年後かに再読し、未来の自分がどう感じるのかが気になる後味でした。

    2
    投稿日: 2022.12.30
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    物語は1980年代、携帯電話もインターネットも、もちろんSNSもない時代が舞台。 ミッテランがブラッスリーに置き忘れた帽子を、隣席の男が盗んでしまう。そこから帽子の旅が始まる。幸運にもミッテランの帽子を手にした4名は、それぞれの停滞していた人生が思いがけないかたちで好転していく。 1986年議会総選挙で大敗したミッテラン大統領が再びその座を取り戻すまでの2年間、帽子が本当の持ち主から離れ、手にした4人が感じた帽子の不可思議な力。 まるで帽子に意思があるかのように人々を旅して行くが、その行方は。 夏以来の海外小説、フランスはパリが舞台なので、フランス国民じゃないと分からないような表現もあり、訳註がついている。海外の小説ってそうだったそうだった!いちいち小説の世界観が中断されちゃうけれど、よく分からないまま読み進んでもなんなのでふむふむと消化。 4人の人生がそれぞれが変わって行くところまで読んで、すこしダレた。この調子が続くんだろうか。かったるいなー と、思いきや、最初に帽子を盗み、電車に忘れてしまった男が帽子に執着し探しはじめ、とうとう見つけ出す。 その先からまた頁を捲る手が止まらなくなった。 物語は意外な方向へ進み、読了後は作者の巧みさに唸ってしまった。 さらに訳者あとがきも作品を理解するのにとても役立ち、作者と実際のミッテランの帽子との意外なつながりにも驚いた。 この世の不思議さよ。作者もミッテランの帽子に選ばれたのかも知れない。 アントワーヌ・ローランはTwitterで流れてきて知った。 新潮クレスト・ブックも初めて知った。このようなシリーズがあったとは!迂闊でありました。 手に取ったときの適度な柔らかさ、大きさ、装丁の知的でおしゃれな感じ、さあこれから落ち着いて本を読むぞ、という静かな決意へと導いてくれる。 どんな世界に導いてくれるんだろう、わくわくさせてくれる。 やっぱり紙の本が好きだなぁ。

    0
    投稿日: 2022.12.24
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    こんな“最強”の帽子があったら俺も欲しいよな。ミッテランも物語の背景のフランスも全然知らないから、随所に描かれる背景は退屈だし、ストーリーもまぁ何というか、格段におもしろいというわけでもない。だけど、TVでヨーロッパの石畳の広場を囲む歴史的な建造物のある風景を見る度に、なんだか知らないが憧れのようなものがあって、死ぬ前に一度実際にあの場所に立ってみたいなという思いがあるせいなのか、最後まで読んでしまった。

    1
    投稿日: 2022.12.12
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    1986年のパリ。 仕事場で自分の意見を上司の顔色を伺うことでなかなか言えず、やや鬱屈とした気持ちを払拭しようとたまの贅沢のために高級レストランにやってきた、会計士のダニエル。 運良くたまたまキャンセルが入り、予約なしで案内してもらえることになった。 そして新しく入ってきて、彼の席の隣に座った客人は、なんと時のフランス大統領、フランソワ・ミッテランであった。 ドギマギしながらミッテランたちの会話に聞き耳を立てつつ、ゆっくりゆっくりと食事をするダニエル… ここから紆余曲折あって、ミッテランの帽子の旅と、ダニエルを始めとしたミッテランの帽子を受け取った大人たちの、幸福へと導かれる物語がバトンのように引き継がれていく。 帽子がどのように次は引き継がれていくのか、次はどのような人の元に辿り着くのかが気になりつつ楽しむ。 この調子でミッテランの帽子はいったいどこへ行ってしまうのか…? 1980年代のフランスの、行ったこともない地の情景を味わいながら、ついわくわくして読み進める。 帽子はまさかの軌道を辿って物語は終わる! 終盤に行くにつれて盛り上がるワクワクドキドキ。 とても面白かった。 エピローグとても好き。 そして帽子に出会った人々の物語やその後の話も、愛着が湧く。 さまざまな登場人物に幸福をもたらしていった帽子。 本書背表紙に、大貫妙子さんの書評があり、引用させていただくと、「帽子が幸運をもたらしたとしても、それは本当は、それぞれの人に眠っていた力なのだ」。 たしかに、きっと帽子がもたらしたのは、登場人物たちが自信をつけたり決断をしたりするキッカケだった。そしてそのキッカケをかれらはモノにした。 なんだか素敵な愛用の帽子を一つ、買いに街へ出たくなるお話でした。 あと牡蠣、今まで食あたりが怖くてなんとなく避けて食べたことなかったけど、本書を読んでいたら(そんなに美味しいのか…?)と少し食べたくなりました。 さすが美食の国… あと訳者あとがきも、ミッテランや当時のフランス情勢について軽く解説してくれていて読むとお得だ。 しかしそのあとがきの中で一番驚いたのは、他ならぬ本書の原作者、アントワーヌ・ローランとミッテランの帽子との出会いについてなのだ! その出会いを通じて、単行本のカバーには本物のミッテランの帽子が使われることになったとのこと…ロマンだ。 そうだ、この物語すべてが、ロマンに溢れている。 

    14
    投稿日: 2022.11.18
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    フランスのミッテラン大統領が無くした帽子が持ち主を替えながらその人たちの人生を動かしていく。最後の持ち主からの流れは意外な展開で楽しめた。 同じ著者の赤いモレスキンの女を先に読んだが、個人的にはこちらの方が好きだった。

    0
    投稿日: 2022.11.16
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    面白くて一気に読んでしまった。物語としては、赤いモレスキンの女の方が好きだけど。 1986年から1988年の物語。ミッテラン大統領は名前しか知らなかった。テロが多かったことも初めて知った。興味はどんどんと広がっていった。

    1
    投稿日: 2022.11.03
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    1980年代フランス、時の大統領ミッテランの帽子を巡る物語。 15区の高層マンションに住むダニエル、バティニョール地区で密会を重ねるファニー、モンソー公園を散歩するピエール、パッシー通りのベルナール… 昨日すれ違ったあの人かもしれない!と思わせる、登場人物たちの息づかいが感じられるような一冊。

    0
    投稿日: 2022.11.02
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    持ち主を次々と変えた帽子が運んでくる幸運。 こういう設定好きです。 帽子の最初の持ち主は会計士・ダニエル。次は、止めたいのに不倫を続ける女性・ファニー。ファニーから、長らくスランプ中の調香師・ピエールへ。そして名家の資産家ベルナールへと持ち主は変わっていく。 何だか不思議な展開。 大きな変化のきっかけ・幸運の種は、実はほんの小さな偶然の出来事。そしてそれがもたらした気持ちの変化だったりする。 本来知るはずのない舞台の裏側を覗いてしまった気分で楽しい。 夢中…とまではいかなかったけど、ワクワクしながら読みました。 「大人のおとぎ話」という表現がしっくり。 個人的な感想ですが、「持ち主が変わる」で近藤史恵さんの旅小説「スーツケースの半分は 」が思い浮かびました。 お気に入りの1冊です♪

    3
    投稿日: 2022.10.01
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    お洒落なパリで暮らす夢のようなひとときを疑似体験。 訳者あとがきが読み応えあった。日本語の文章も、しばしば入れられている注釈も、とても良かったと思う。ほかの翻訳本も読んでみたい。

    1
    投稿日: 2022.08.07
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    お洒落な大人のおとぎ話と紹介されているように、読み進めてほっこりと優しい気持ちになりました。 物語は、ミッテラン大統領がブラッスリーで帽子を置き忘れたところから始まります。 新たに帽子の持ち主になった人たちは、それをきっかけに人生を好転させていきます。 能力の低い同僚に出世をこされた男、不倫を切れない小説家志望作家、スランプ中の天才調香師、固定概念に囚われたブルジョワ男、そして最後に手にするのは…? 舞台は1980年代のフランス。 今でいうハイテク機器がない時代の、帽子を介した不思議な巡り合わせが素敵な設定です。 読みながら当時のフランスの政治的背景や生活を知ることができてとても興味深かったです。 フランス小説は初めてだったけど、温かみのある文章でまた他の本も読みたくなります!

    0
    投稿日: 2022.06.24
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    ずっとずっと気になっていた本。 恥ずかしながら、ミッテラン大統領が実在したことを物語の途中で知ったのであった… ミッテランが置き忘れたフェルト帽子が 予期せず4人の手に渡っていき、 それぞれの人生を良い方向へ変えていくという ストーリー。 海外文学は、当時の国の情勢や考え方もわかるから、訳者のあとがきが楽しみだ。 吉田さんのあとがきは、ストーリーを時代と照らし合わせ細かく分析した解説に、 ローラン作品への尊敬と愛がたっぷり染み込んだ優しさを感じる。 それにしても、 実在のフェルト帽子が辿り着く、 数奇すぎる運命に鳥肌が。。 何度も読み返したい。

    3
    投稿日: 2022.06.19
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    「洒脱な大人のおとぎ話」と表現されているけれど、本当にそのとおりだった。 オシャレで不思議で、でも少し無理がないかなぁ?と思うような「おとぎ話」で、とても楽しかった。 一つの物が人の運命を変えるなんてことがあるのなら、私も1度くらい経験してみたいなぁと思う。

    1
    投稿日: 2022.06.09
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    史実に基づき、教養を得られる刺激があります。そして、 生き方が変わるような、素晴らしいファンタジーでもありました。この作者がとても好きです。

    0
    投稿日: 2022.05.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    フランス大統領、フランソワ・ミッテランの帽子を手に入れた人たちに起こる人生の転機。 一つの帽子が人から人の手へと渡って物語を動かしていく。 わたしもミッテランの帽子を手に入れたいな。笑 普段、帽子はあまり被らないけど、読んでたらほしくなってしまいました。 エピローグ、ミッテラン視点が入ってることが、この物語をさらに私好みにしてくれました。 訳者あとがきもよく、この訳者さんの他の本も読みたいですし、アントワーヌ・ローランの他の作品も読みたいです。 帽子の愛好家がメモを帽子に挟む、というアイディアは帽子好きかつ、いい帽子ならではだな、と。

    1
    投稿日: 2022.02.23
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    『赤いモレスキンの女』以来、久々に戻ってきた。 心が浮き立つような大人のおとぎ話。店先から漂う料理のいい匂い同様、表紙の装丁から既にいい出会いの予感がする…… 「(一部を除き)みんな盗癖ありすぎ笑」 小説は好きだし読後感に浸ることもザラにあるけれど、「いやちょっと待て」とツッコミを入れることも多い。今回はまさかの初っ端からツッコミを入れるハメになったものの、物語が進展するにつれ、そうも言ってられなくなった。 帽子の渡り方(?)が毎回違っており、「次は誰がどうやって?」と前の人のエピソードが終わる前から予測していた。会話の鉤括弧が(敢えて)抜かれているせいで誰の発言か分からなくなることもあれば、無理やり運命を動かそうとして失敗しないかと心配をしたりと思考を巡らすのに忙しい。 でも帽子を手にした彼らはもはや無敵。こちらのハラハラを尻目に「心配ご無用」と軽快に切り抜けて見せる。 「運命と言う偉大なGPSが決めてくれた経路をたどらない時、帰還不能を示す標識も見当たらない」 帽子を手にした人々の運命を(その人達にとって)プラスの方向へと導く帽子。 単なる偶然なのか。吉田氏(翻訳者)が仰るように「謎めいた力が宿っている」のか。そして何故ミッテラン大統領の帽子という設定にしたのか。帽子の持ち主はミッテランじゃなきゃ駄目だったのか。 小説好きの人が聞いたら呆れるであろう、つまらない疑問の山をこしらえてもいた。これらの疑問はエピローグ・あとがきで明らかになるのだが、そこで語られるエピソードを知ってしまえば「タネを明かせ!」と躍起になっていたことが恥ずかしくなる。 タネも仕掛けもない作用。一杯食わされた感じだけど、麗しの都って作用も働いているからか何だか悪い気がしない笑

    47
    投稿日: 2022.02.10
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    転がっていく帽子を追いかけていく感じがとても楽しかった!しかもたどり着いた先は、まさかのあの人❗自分の人生にもミッテランの帽子みたいなきっかけがあるかも。その時慌てないように、この小説が教えてくれたのかもね。

    4
    投稿日: 2022.02.01
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    一つの黒い帽子の周りで起こる小さな奇跡の連続の物語。 クスッと笑えたり登場人物の発言や環境から「フランス」を感じたりと軽く楽しくサクッと読めてよかった〜

    1
    投稿日: 2021.11.22
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    1980年代のパリ。ミッテランが置き忘れた帽子…次々と持ち主が代わっていく。 その度に彼らの人生が変わるほど不思議な力を持っている。 生きている中でそれと意識することのない度重なる偶然が人生を大きく変えるなんて… まさしく大人のおとぎ話。 現実、自分なら拾わないだろうけど(苦笑)

    6
    投稿日: 2021.09.29
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    こんな事が起きれば良いのに、と思わせるファンタジー。しっかりとした現実の生き苦しさが描かれててるから単なる絵空事に終わってない。しばし心を遊ばせるのに最適。

    4
    投稿日: 2021.09.07
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    ミッテランがブラッスリーに置き忘れた黒いフェルト帽を 偶然隣席に座っていたダニエルが持ち帰るところから始まるオムニバス形式の4つの物語。

    1
    投稿日: 2021.08.16
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    (あらすじ) 冴えない会計士のダニエルは妻子が帰省している間ちょっと贅沢なレストランで夕食を取っていた。隣のテーブルに後から来た客を見て驚愕した。その中の1人は事もあろうにミッテラン! ミッテランが帰ったあと椅子の上の忘れていった帽子をダニエルはこっそり拝借してしまった。すると、何故か自信が出てきてこれまで逆らった事のない上司に自分の意見をはっきり言い切った。それがきっかけになって出世の道が開けた。 この帽子が人から人へ渡るたびに、それを手にした人の生活に変化が起こる。不倫関係から抜けられなかった若い女性、スランプの陥ってる調香師、古い慣習に縛られてる上流階級の男。 ーーーーーーーーーーーーーーーー コメディー映画のようの帽子が人から人へ思いもしない形で渡っていく。最初のダニエル以外はその帽子がミッテランのものだとは知らないのだが、それを手にした事で運が開け、いわゆるラッキーアイテムとして扱う。 最後の章はちょっと…どうかな…?と思うけど、ま、いいかな。

    5
    投稿日: 2021.06.08
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    ミッテランの置き忘れた帽子を盗んだ会計士はそれ以来勇気を得て人生が変わる。そしてまた帽子は不倫している女性、才能の枯渇した調香師、旧態然とした落ちぶれ貴族と持ち主を変え、また彼らの運命も良き方へ導く。最後の納まり具合も納得の物語。この時代のパリの雰囲気もありありと伝わって来た。

    2
    投稿日: 2021.04.17
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    始まりはかなり身勝手ではあるものの 一つの帽子が数人の人生に関わり、 運命を劇的に変えていく…、 実に美しく、シックな物語だった。 読み始めは、カタカナ名や単語が 多く現れる度に混乱しそうだったが 読み進めていくと、重要な人物は 自然と名前と共に印象が残っているし そうでないものは今留めなくても良い、と 軽い気持ちでストーリーを楽しむことが出来た。 背景となる地や風景への描写が多彩なため 映像化されたらより美しいだろうな、とも。

    6
    投稿日: 2021.04.16
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    ミッテラン大統領(今では「元大統領」だけれど)の帽子が不思議な力を持つラッキーアイテムとなり、手にした人々の人生を少しずつ変えていく物語。 お伽話ではあるのだけど、おそらく、それだけでないなにかがあるのだろうと思う。 私は、過去にも散々書いているが、世界に関してとことん無知なので、この時代のフランスがどんな国だったかについてはもちろんのこと、ミッテラン大統領についても何となく顔と名前が一致する程度にしか知識がない。 それでもきっと、ミッテラン大統領が愛されていた存在ー少なくとも作者にはーであるのだろうと思えるような物語であった。 帽子ひとつをめぐってこんな出来事が起こるという物語は、フランスという国をとても上手に表現しているようにも思える。 作者のアントワーヌローランの逸話も洒落がきいていてとても面白い。

    2
    投稿日: 2021.02.20
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    注釈が多すぎてストーリーを楽しめない。だからといって注釈がないと、それはそれで楽しめないような。こういう訳は自分には合わなかった。

    1
    投稿日: 2021.02.19
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    フランスの大統領ミッテランの帽子がめぐる物語。些細なことから巻き起こる人々の交流と、80年代のパリが作者の温かい眼差しで描かれる。これはファンタジーであり、歴史の1ページでもある。

    2
    投稿日: 2021.02.12
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    読んでいて、とても心地良い。 帽子を介して偶然か運命なのか、 展開していく物語。 フランスの人々を垣間見た感じ。 独特のオシャレさと表現が良かった。 翻訳もとてもわかりやすく、あとがきも素敵だった。

    2
    投稿日: 2021.01.25
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    国父と称されるミッテランが、黒いフェルト帽を置き忘れる。その帽子は何人かの手に転々と渡る。帽子は人々に自信や勇気を与え、くすぶっていた日常を好転させる。 帽子を手にした一人、ファニーが、未来のない不倫を断ち切る場面がかっこよくそして爽快だった。 そこのくだり、「人はどうしたら他人の人生からいとも簡単に姿を消すことができるのだろう。それはたぶん他人の人生に入り込むのと同じくらいに簡単なことなのだ。偶然に交わされた言葉、それが関係の始まり。偶然に交わされた言葉、それが関係の終わり。その前は無、その後は空」。 ミッテランの帽子は四葉のクローバーのよう。 少し自信喪失して元気のない人、この本を読んでみるといいかも。四葉を探す感覚で。

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    投稿日: 2020.11.29
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    書き出しは、一人の会社員が黒い帽子を被って、妻と子を迎えにいくところから始まる。でもこの会社員は、主人公ではない。 久々の「独身」を楽しむため訪れたレストランで、偶然隣り合わせになったフランス大統領が忘れた帽子を、この会社員はつい持ち帰る。すると目の前が開け、これまでできなかったことも…。 帽子は、偶然手にする人々の運命を次々に「好転」させていく。嫌な上司を排除しての出世、不倫状態からの決別、長いスランプからの脱出、疑いもしなかった古い価値観からの脱皮。 人々は、いずれも帽子から奇跡や特別な啓示を受けたのではなく、「偶然、帽子を手にしなければ変わることがなかった。」と感じただけなのに、何故か帽子の不思議な力を感じてしまう…。読んでるだけで、こちらもワクワクしてくる。 特に、長期スランプで精神すら病んでいるとされ、どん底の生活をしていた調香師が、帽子を手にした時から、ヒゲを剃り、服装を変えて、再び「香り」に目覚めていくさまは、パリの街の風景や、妻エステールの奏でるメロディーと合わせて、映像的な感動すらある。 オシャレで軽快な語り口で、ときおり社会風刺も交えながら、爽やかに読み進めると、新潮クレストブックス特有の装丁やカバーデザインと相まって、「紙の本」を読み終わったときの余韻をも感じることができる。 その後帽子はどうなったかって? 帽子を失ったあとのミッテランは、保守派で政敵のシラク首相とのギクシャクした2年間ののち、見事にシラクを破り大統領再選を果たす。 その時、頭には再び黒い帽子があったとか、なかったとか…。

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    投稿日: 2020.07.17
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    登場人物が親しみをもてるキャラだし、価値観が変わる瞬間に立ち会えるのが嬉しい。 実際の歴史に合わせた時間軸というおまけもいい。

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    投稿日: 2020.04.08
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    ミッテラン以外の登場人物も実在しているような感覚で読み進められた。高級な帽子をあつらえるとかフランス的で興味深い。元々の所持者のパワーを秘めた帽子が手に渡った人々の人生を後押ししていく。そんなアイテムが自分にも欲しくなる。ミッテランの名前自体は知っていたか人物をよく知らなかったので調べてみたら、なかなか波乱万丈な人物で。不倫で世間に袋叩きになる日本ではまず輩出されないタイプだと思う。

    3
    投稿日: 2020.02.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    手にすると不思議に自信がみなぎり、それまでのくすぶっていた生活に彩りを取り戻すことのできる大統領の帽子。 うっかり置き忘れ、意図的な決別、偶然の取り違えにより様々な人の手を渡っていく。 この手の大人の第六感ファンタジーで珍しい要素としては、帽子に執着し、追う者がいるということ。 たいていはあの力は何だったのだろうと余韻に浸るのが王道だろう。 ましてや。。。 最後のひねりはなかなかシュールで嫌いではない。

    3
    投稿日: 2020.02.15
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    1980年代のフランスの社会の雰囲気が伝わってくる作品で、大人のお伽話といった感じ。たいへん面白かった。伝説の調香師や、元貴族達の上流階級の人達など、日本人としては馴染みのない登場人物の話が特に印象に残った。上流階級の人達の話を読んで、以前ちょっとフランスワインメーカー関連で仕事をした時に、この業界の人達には馴染めない、感覚が合わないと思ったのは、上流階級の人達が多かったせいだったんだなと思った。

    2
    投稿日: 2019.12.14
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    アーティストや上流階級など、自分の知らない世界を見せてもらった。 おしゃれでさらっとしていて読みやすい。ちょっとしたきっかけから一歩踏み出せば自分の人生も変えられるかもしれないと、爽やかに背中を押してくれる本。

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    投稿日: 2019.10.24
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    ミッテランの帽子を手に入れたことをきっかけにそれぞれ新たに進んでゆく人生。偶然の重なりではあるけれど、それが背中を押してくれたのだと思いたい。実在の人物や出来事を背景に気持ちよく動き、読後感が気持ちよかった。

    2
    投稿日: 2019.09.27
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    パリのとあるブラッセリーにミッテラン大統領が置き忘れた帽子が運んだ幸せの話。 実在する人物とその持ち物をモチーフにしたフィクションが新鮮だった。 ミッテラン大統領はもちろん、80年代フランスの政治や社会、文化に関する知識があったらもっと楽しめそう。 ファニーとピエールのエピソードが好き。

    2
    投稿日: 2019.09.16
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    時の大統領、ミッテランが忘れた帽子がいろいろな人の手に渡り、帽子を手にした人が幸せになっていく物語。

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    投稿日: 2019.07.17
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    ミッテラン大統領の帽子と、それを次々手にすることになった人たちのお話。心が温かくなった。最後の最後で意外なストーリーが出てきて、良い意味でやられた感。私はこういうお話し大好きです。

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    投稿日: 2019.04.28
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    フランス大統領のミッテランとブラッスリーで隣の席になった男は、ミッテランが忘れていった帽子を持ち帰ってしまう。その日から男の運が変わり、ヘッドハンティングされた。しかし幸運を運んできたミッテランの帽子を列車に忘れてしまう。次にその帽子を手にしたのは、恋人との密会に行く作家志望の女性だった。こうして、ミッテランの帽子は次々と人の手に渡っていくのだが、どの人にも新しい人生を開くきっかけを与えていく。 最後は、最初に帽子を持ち帰った男がミッテランの帽子を探し出すが、結局ミッテランに帽子を返しに行く。 帽子が繋ぐ人生の転機を迎えた人々。最後のオチもしゃれていてフランス文学らしさを感じる。

    0
    投稿日: 2019.03.15
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    ストーリーは、持ち主の変遷に伴い、幸運や不幸が舞い込んで来るという定型パターンの作品の亜種といった作品。 ただ、ぼく自身にワイン・香水・フランス料理などのフランス圏文化全般に関する深い造詣がないためか、特に面白い作品だとは思わなかった。

    0
    投稿日: 2019.02.13
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    80年代のパリを舞台にとった、往年のフランス映画を見ているような、小粋で洒落たコントになっている。近頃の小説は、どこの国のものを読んでも大差がなく、深刻で悲劇的、ネガティヴな印象を持つものが多い。時代が時代なので仕方がないこととは思うが、毎度毎度そんな話ばかり読んでいると気がくさくさしてくる。せめて本を読んでいるときくらい、クスッとしたり、元気を得たりしてみたいと思う、そんな人にお勧めの一篇。 ミッテランといえば、ある年代の人ならすぐ思い出すのが、元フランス大統領、フランソワ・ミッテランその人である。一度は選挙に破れるものの無事返り咲いて社会党政権を率いた世界のリーダーの一人だった。ルーブル美術館の前庭にガラスのピラミッドを作ったのも、新凱旋門を建てたのもミッテラン政権のときだった。これは、そのミッテランが大統領であった当時の物語。当然、帽子の持ち主のミッテランは大統領のことである。 昔話によく出てくる「呪宝」と呼ばれるものがある。樹々や鳥の話す声を聞くことができる「頭巾」(ききみみ頭巾)や、それを着ると姿が見えなくなる「蓑」(天狗の隠れ蓑)などがそうだ。力を持たない民衆のあこがれやはかない願望を託された、今ふうにいえば魔法のアイテム。この話の中では何の変哲もない黒いフェルトの帽子がそれにあたる。ただ一つ、それがそんじょそこらにある帽子とは帽子がちがう。裏の折り返しに金字でイニシャルが、F.M.と入れてある。ミッテラン大統領愛用の帽子である。 ブラッスリー、というのは元はザワークラウトなんぞをあてにビールを飲ませる店のことだったが、今では一流レストランやカフェも、ブラッスリーを名のる。予約を確認しているところから見て、この話に出てくるのは、かなり高級レストランだろう。なにしろ、隣の席で大統領が食事をしているというのだから。それにしても、SPもつけず、一般人と一緒に食事を楽しむとはさすがに左派の大統領だ。気さくさを宣伝する散歩に、SP で脇を固めるどこぞの首相とは大違いだ。 その大統領が店に置き忘れた帽子を手に入れたのが、ダニエル・メルシエ。ソジェテック社の社員である。人事問題でストレスを感じていた彼は新しい一歩を踏み出すためにこのブラッスリーを訪れ、この帽子に巡り会う。自分のもののような顔をして帽子を手にしたダニエルは意気揚々と我が家に帰る。その次の日からダニエルは人が変わったように会議で自分の意見を遠慮なく発表し始め、いつの間にかルーアン支社を任されるまでになる。 どうやら、この帽子はそれを手にする者の裡に秘められた潜在的な資質を表に出すため、背中をひと押しする役割を担っているようなのだ。ところが、ダニエルは大事な帽子をル・アーブル行きの列車の網棚に置き忘れてしまう。丁度降ってきた雨を除けるために、それを手にしたのがファニー・アルカン。本を読んだり書いたりするのが好きで作品を書きためている。現在は先行きの見えない既婚男性と不倫関係にある。 もうお分かりだと思うが、ファニーが帽子をかぶると、不倫相手は別の男のプレゼントだと勝手に思い込んで別れ話を始める。ファニーはファニーで、出て行った男に未練を感じることもなく、帽子と出会ってからの経緯を手持ちのノートに書きはじめる。やがてそれは一篇の小説となり、文学賞を受賞することになる。この調子で、帽子は次々とちがう人物の手に渡り、それぞれの人物の運命を変えてしまうことになる。 帽子を手にすることになるのは四人の人物で、あとの二人は香水の調香師と資産家のブルジョワである。天才的な調香師だったピエール・アスランはいくつかの名作を世に出したものの、ここのところは長いスランプに苦しんでいた。ところが、公園のベンチで二つの香水の薫りが混じりあった帽子を見つけてからは生活が一変する。道行く人の香水をあてるゲームもかつてのようにできるようになり、新作まで思いつく。 ブルジョア階級の夜会に退屈しきっていたヴェルナールは、ふだんなら聞き流していた会話にひっかかりを感じ、猛然と反論を始める。反動の人士が集まるその席では、大統領のことをミットランとわざと発音を替えてからかうのがならいだった。ところが、ブラッスリーでクロークが取り違えた帽子を渡されたヴェルナールは俄然ミッテラン擁護の論陣を張る。さらに翌朝、いつもなら右寄りのフィガロを買うのに、なんと左派のリベラシオンを買って帰る。 このヴェルナールの変貌ぶりが80年代フランスのブルジョア階級の暮らしと文化をカリカチュアライズしていて、アンディ・ウォーホルやバスキアまで登場するパーティーのドタバタ劇がとことん笑わせてくれる。さらに、アメリカのTVドラマ『ナイトライダー』まで登場するのはご愛敬だ。当時フランスではテレビのチャンネルが限られていて、特別なチャンネルに加入しないと見られない番組があったらしい。 エスプリがきいた軽いタッチで洒落のめしながらも、勢いのあった80年代フランスの人々の日常スケッチを通し、料理やワインの蘊蓄を傾けながらもさらりと流し、最後には水の都ヴェネチアのカフェ・フロリアンで、帽子が大統領のもとに帰るまでをノンシャランに描いていく。軽い気持ちで立ち寄った店で思わぬ拾い物をしたような気にさせてくれる上質のフランス製のコントである。

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    投稿日: 2019.02.05
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    さらっと読めるフランス小説 歴代最高と言われるミッテラン大統領が、忘れてしまった帽子。それを手にする人全てを、幸せにする物語。 うだつの上がらない生活が、帽子を手に入れることで、少しの勇気と新しい世界を歓迎していく。 メッセージでもある、視点を少しを変えるだけで、良き方向へ進んでいくのが心地よい。 途出てくるワインや絵画が、実在しているので魅力的。ワイン好きなので、ブルゴーニュ産のプイィはぜひ飲んでみたい。

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    投稿日: 2019.01.03