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幽女の如き怨むもの
幽女の如き怨むもの
三津田信三/講談社
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総合評価

33件)
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    「刀城言耶」シリーズ“長編”第六弾。 今回の舞台は遊郭。 「遊郭」というと、江戸時代の吉原が思い浮かびますが、本作では昭和初期ーー戦前・戦中・戦後と三つの時代にまたがって、〈桃苑〉という廓町にある遊女屋で起こった不可解な身投げ事件を巡るお話でございます。 第一部は、遊女・初代緋桜の日記(戦前〈金瓶梅楼〉) 第二部は、遊郭の女将・半藤優子の語り(戦中〈梅遊記楼〉) 第三部は、作家・佐古壮介の原稿(戦後〈梅園楼〉) ・・という、それぞれ異なった形式で構成されていて、いつものパターン(刀城言耶が直接現地で事件に巻き込まれる)とは毛色が異なる展開となっております。 (※因みに第四部は「刀城言耶の解釈」という言耶の推理パートとなっています) 屋号は時代ごとに変えているとはいえ、同じ妓楼で起こった身投げ事件の謎・・(しかもそれぞれ三度づづ、計九度の身投げという・・)、事故?自殺?他殺?はたまた“幽女”の呪いなのか・・? ふぅ・・どっぷりとのめり込んで読ませて頂きました。 特に第一部の、初代緋桜こと桜子の視点で綴られる、苦界の生活ぶりは、その過酷さと遊女たちの抱える事情の哀しさに、やるせない気持ちでいっぱいになりましたね。 とりわけ、月影さんが堕胎させられる場面は辛かったですし、桜子の父が娘に黙って廓に追借金をしていたことが判明したときは、“コラー!オトン!!娘を売るだけでは物足りず、追加で借金して娘の年季を延ばすなんて、マジであり得へんし(ꐦ°᷄д°᷅)!!”と、つい激オコしてしまいました(汗)。 そんな訳で物語の世界に没入しつつも、途中までは“今回は謎解き要素は薄めなのかな・・”と思いながら読んでいたのですが、第四部の言耶の推理パートでは、ちゃんとミステリとして楽しめたのでその辺も満足でございます。 結局“幽女”とは何だったのか、〈金瓶梅楼〉の女将や遣り手の“おばやん”がひた隠しにしていた事柄の真相は明確には解らないままでしたが、「追記」での“匂わせ”が、何とも言えない余韻を残した印象ですね。 ・・ということで、読み応えガッツリのホラー&ミステリin遊郭を堪能させて頂きました~。 さて、次は長編『碆霊の如き祀るもの』を読もうか、短編集『生霊の如き重るもの』にしようか、ワクワクしながら迷っております~。

    31
    投稿日: 2025.07.26
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     遊郭に入り、花魁となる少女の日記に始まり、内容の多くが遊郭と、その遊郭を通した事件のことで書かれています。そこのパートも普通に興味深く面白く読め、最後にはすっきりする謎解きからのプラスアルファ。今のところ読んだ、刀城言耶シリーズで一番か二番に面白かった一作です。

    0
    投稿日: 2025.04.13
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    昭和の遊郭をよく調べられたようで、細部まで考証の行き届いた世界観にどっぷり入り込める。怪異の存在は仄めかされるばかりでなかなか正体が見えてこないが、小野不由美の屍鬼的な薄気味悪さやじわじわ感が際立ち、かなり好み。言い換えれば怪異の存在なしでも読み進めるドラマの面白さがある。 今回は事件が単純な分謎解きパートも控えめで、いつもの二転三転する展開はないし、ちょっと強引な結論も多いのでそこはマイナス。第三部もやや蛇足に思える。 シリーズでは異色で外伝的だが十分な面白さ。これはこれでいい。

    0
    投稿日: 2024.11.23
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     戦前、戦中、戦後の三軒の遊郭で起こった三人の花魁『緋桜』が絡んだ三つの身投げ事件が三回も繰り返され、それは『幽女』という謎の怪異が為せる業なのか、という謎と怪異の融合が素晴らしく、また『緋桜』という源氏名の三人の花魁の数奇かつ過酷な運命を鮮明に描写されていて、遊郭という特殊な場所での物語という側面も面白かった。

    0
    投稿日: 2024.07.10
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    さすが〜刀城言耶シリーズめちゃおもしろい!! しかしね…今回は…めちゃ重い……笑 でも!おもろい!! 舞台は男と女の愛憎渦巻く豪華爛漫な世界、 遊郭ッッッッ!うぇぇい!となるところだが、 今回は女性目線で遊郭の裏側の話になっていて 、、、、中々のヘビィな話でしたね…(T ^ T) 初めて花魁という仕事知り… 姐さん達からの陰湿ないじめ… 終わりなき借金地獄…などなど 前半はイゴール・ボブチャンチンの ロシアンフックを喰らう如き、(#)Д`;;) 中盤から話の展開がスピードアップし、 読む手は止まらない…不可解な身投げも止まらない!笑笑 そして後半、満を辞して刀城言耶登場!! そう、今回は後半から登場するんですけど いつ出るの?いつ出るの?と期待を膨らませただけに、 登場した瞬間に、一気にテンション上がる事、間違いなし!! そして圧巻の考察にはもう〜面白くてしゃーない!! 今回は700ページもある大変ボリューミーな作品 なのだが中だるみなく終始楽しめた! ミステリーを楽しめただけでは無く、 花魁という仕事を改めて知ることが出来て 良かった。…φ(..)メモメモ 怖さというよりも、悲しさが強かった。 でも面白いから、めちゃおすすめです!( •̀ᴗ•́ )و

    0
    投稿日: 2024.06.12
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    ある花魁の生い立ちをなぞっていくようなお話。もちろん今までのように怪異はあるのだけど、背景情報から、さもありなんという気になった。 ミステリーホラー感は薄いが、話としては面白く一気に読み進められた。

    0
    投稿日: 2024.01.08
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    身を売られた花魁の哀しい運命(T-T) さすが三津田作品。意外な真相、お見事です! 花魁は華やかな世界で接客をするお仕事。 13歳の少女には、憧れの世界だった。 緋桜という源氏名をもらい、花魁となった16歳の桜子は、過酷な現実に失望する。 正直、前半は読むのが辛かったです( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`) 下働きは辛く、多額の借金に逃げ場がありません。 かと言って足抜けは重罪で、下手をすると追い借金を科されます。 戦前・戦中・戦後と、名前を変えて営業する遊郭で、『緋桜』という同じ源氏名を持った3人の遊女が絡む、怪死事件。 時代を跨ぎ、戦時の遊郭の様子がとても詳しくわかります。 特に遊郭内での遊女達の噂話や決まり事などは非常に興味深かった。 17時に全員で神棚にお参りをするのですが、神棚に飾ってある御神体が『木彫りされた細長い茸のようなもの』笑 遊女達が天気が良い時にお日様にお股を広げて寝る『お秘所の天から干し』。 これをしておくと、冬場でも風邪をひかないらしい。ホントかな…(・_・; 廓に現れる『幽女』の謎。 刀城言耶がきっちり解き明かしてくれます。 戦争前後の情勢に翻弄され、ミステリもまた時代を跨ぎ少しずつ真相が分かっていく話、大好きです! めちゃめちゃ面白いです!!(≧∇≦)

    17
    投稿日: 2023.07.23
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    このシリーズは必ず購読しているのに、どうしてこれだけ見逃してしまっていたのか謎だが、一気に読み終えた。ほぼぶっ通しで6時間くらい。あぁ、やっぱりいい。記憶を消して初めから読み直したいくらい。同じシリーズの他の作品とは少し違ったホラーテイスト?味があった。こういったホラー系のものが苦手な人はこの作品から読んだらすんなり読めるんじゃないかな、っと思った。全くおどろおどろしい感じや、いわゆるホラーものを読んでいる時のようなぞくぞくするような怖さは全然感じなかった。 まぁ、遊郭や遊女ものが好きなので、かなりはまった。

    1
    投稿日: 2023.06.09
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    刀城言耶シリーズ第六長編。戦前、戦中、戦後の三つの時代の遊郭を舞台に、連続する遊女の身投げ事件。刀城言耶が導いた解釈は、幽女と化したものの怨みによるものだった。この作品は最後まで本物の幽女の正体が明らかにされず、それ故に恐ろしさが残った。

    4
    投稿日: 2023.05.15
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    花魁テーマは大好き。 ミステリ絡まなくても楽しく読める。 多分、多くの人が犯人の見当はつくと思う。 そう考えさせないようにする描写が、少し無理があるような。

    2
    投稿日: 2023.01.16
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    ★3.7 初代緋桜の日記がとても重く、やりきれなくなる。読み物として勉強になることも多く面白かった。

    0
    投稿日: 2022.10.08
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    今回はちょっとホラー色薄めかな〜と思いながら、読み終わって本を閉じた丑三つ時。 手洗いに立った私は、なるべく窓の外に目を向けないように不自然に顔を背けていました。だって………。 …………窓のすぐ外側から、誰かの顔が覗いてるような、そんな気がしたんです………… キャーーー!!!!!(うるさい やっぱり三津田先生の刀城言耶シリーズは鉄板に面白い。程良く怖い。怖すぎないんだけど、なんか時間を置いてジワジワくる怖さがある。 本作は「遊女」をテーマにした不可解事件。 戦前、戦中、戦後。時代を経て三度繰り返される転落事件の謎を、刀城言耶が解き明かします。 テーマがテーマなだけに、遊女になった少女目線で描かれる前半がかなり読んでてしんどいんですが、相変わらず抜群のリーダビリティでグイグイ読ませてくれます。

    0
    投稿日: 2022.02.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦前から戦後にかけての遊郭が舞台となるミステリーで、日記やインタビュー形式で物語が進んでいく。本来の謎の部分だけでなく当時の遊女の暮らしの部分にグッと引き込まれる。 今回はあまりグロくなく、切ない真相だった。

    0
    投稿日: 2021.03.21
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    今回は『首なし…』同様、いささかイレギュラーな構成で刀城さんの出番は少なめ。 毎回のおどろおどろしい事件をこの主人公のキャラクターが些かなりとも緩和してくれており、良い意味で物語にメリハリを生んでいると思う。 と、ここではその刀城さんのボリューム少なめで、ひたすら苦界での花魁達の暮らしぶりが生々しく綴られており、後半は食傷気味。  一応 既刊のシリーズはひと通り読み終えて、やっぱり三津田信三さん面白い! 近くまた刀城先生と偲さんにお目にかかれる事をせつに願う!

    0
    投稿日: 2019.11.21
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    刀城言耶シリーズはいつも引き込まれる。戦中戦後の廓町の様子がわかって興味深い。花魁の日記が出色。廓での生活が克明に描かれていて、その辛さにいたたまれなくなる。全体の謎の解明にはすっきりしないところもあるが、してやられた感あり。さすがにうまい。

    0
    投稿日: 2019.11.18
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    このシリーズは以前読んだが、事件の関係者の扱いがおざなりだったのが不満だった。 怪異を体験する視点人物としてメインで描写され、読者も感情移入していたキャラなのに、事件後のフォローが至らないというかなんともお粗末というか「トリックと犯人はわかったけどそれでこの子はどうなったのそれが気になるのに!」と消化不良でじたじたしたのを覚えている。 本書ではそのモヤモヤがほぼないので満足。 遊郭を舞台にしたホラーとしても面白く、それにも増して遊女たちの嫉妬や裏切り、駆け引きを主軸に据えた愛憎ドロドロの人間ドラマにひきこまれる。遊郭でのみ通じる隠語など、当時の世情も垣間見えて勉強になる。 結局真相がなにもわからないじゃないかと不満な向きもあろうが、思春期の多感な少女が過酷な境遇に抑圧されていたとすれば、事の発端も大体わかるように書かれている。 終盤のどんでん返しは三回名前を変えながら本質は変わらず在り続けた建物と人の歴史がオーバーラップし、なるほど、ちゃんと伏線になってたんだ!と感嘆した。 いわゆる幽霊よりも、生きてる人間の情念や数奇な偶然が怖い系なのだが、遊郭を扱ったエンターテイメントしても完成度が高くそちら方面が好きな方にも勧めたい。 欲を言えば、時代を跨いで遊郭で働き続けた遊女たちのその後をもう少し掘り下げてほしかったが無粋だろうか。 時代や社会に翻弄され続けた女たちの余生は、想像に任せた方が余韻を残すかもしれない。

    0
    投稿日: 2019.09.21
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    久しぶりの本シリーズ。大好きで、文庫版は揃えてあるんだけど、なかなか手が回らない。で、私的ホラー特集の一環も兼ねて、このたび読了。いやいや面白し。普段とはちょっと趣向が違うのも素晴らしい。どこまで霊的な影響が残るのかが見ものだったけど、最終的にはかなりの部分が理論的に解明されて、逆に意外な感じもした。でも考えたらやっぱり不思議な現象とか、追記としての不気味な内容とか、そのあたりの余韻はならでは。相変わらず満喫させてもらいました。他には最新の長編と短編集だけど、今度はもっと早めに手を伸ばそうかな。

    0
    投稿日: 2019.08.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    刀城言耶シリーズ 第6長編。 戦前、戦中、戦後の遊郭を舞台にした物語で、1章は花魁となった女性の日記、2章は女将と刀城氏の会話、3章は作家 佐古荘介の原稿、そして4章で事件の種明かしを刀城氏が行うという設定になっている。 特に印象深かったのが、1章の花魁の日記で遊郭での壮絶な生活の様子が描かれている。 本題である事件よりこちらの内容の方が頭に残っている。 各章で女将(経営者)が代わり各々建物の名前も変わるのだが、商売の形態は同じで、別館3階より転落しする事件、事故が3階づつ起こる。 最後の種明かしは圧巻で謎解き自体も「あっ!」と驚く解決が待っている。 ただ1つ 追記とされる章だけが この話を怪談にしようとするわざとらしさが好きになれなかった。 

    0
    投稿日: 2018.10.19
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    幽女の怪異よりも、花魁の逃げ道のない人生に打ちのめされる。民間療法的な堕胎もキツイ…。なんというか、あまり知ってはいけない世界の話だった。最後に少しは希望があるところが救いだなぁ。

    0
    投稿日: 2018.04.09
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    花魁の壮絶なる人生、三代にわたる身投げの謎はかなりのボリュームがあって、内容も濃厚だったけど、それを感じさせない力強さ。言耶ががっつり絡んでないし、伝聞が多いせいか、いつもよりもほわほわした推理になってしまったのは致し方ないかな。

    0
    投稿日: 2017.09.14
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    このミス2013年版4位。遊郭で3世代に渡って発生する身投げ事件。いままで読んだこの人の本の中で一番良かった。いつも終盤がどんでん返しの大安売りとなってもう勝手にやってよ状態になるんだけど、今回は一発で結構あっといわす結末になってる。緻密な構成と意外性のある展開で本格ミステリとしてとても良くできてるし、この作家のこだわってるとこと思うんだけど、自分的には第一部が一番良かった。ミステリアスな雰囲気につつまれた普通の物語として秀逸。第一部だけで普通の長編小説ぐらいの分量があるし、はらはらしながらグイグイ引き込まれて止まらなくなって最後はほっとする感じがすごく良い。2部、3部はそれに比べるとまんねり感がでてきて少し長さがこたえた。まあ最後が良かったのでまだゆるせるけど。

    0
    投稿日: 2017.04.11
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    ミステリーとしては、家族のように暮らしていた人たちが気づかないわけはない、とつっこみを入れたくなる謎である。でもいつもとは違った趣向の語りがなかなか面白く、ある花魁の人生に思いをはせるラストはなかなか感慨深い。遊郭の歴史を学ぶという意味でも楽しめた。男ってやつは。

    0
    投稿日: 2016.12.25
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    最後の謎解きはこんなもんかという感じ。ただこの作品はそこだけでなくいろんな楽しみ方がある。 何よりも、知らない遊女の世界が濃密に描かれている。ノスタルジーを感じる年ではないが面白く読めた。 出戻りする花魁の哀しみに心打たれ、敢えて、金儲けに徹底するやり手婆アに、そこはかとない優しさも感じた。 解決編の肝に少し無理があるかな。

    2
    投稿日: 2016.04.13
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    第一部と第二部から感じられる湿った厭な空気に背筋を寒くしつつ、第三部に衝撃を受けた。その分、第四部の謎解きは面白かったが、怪談めいた恐ろしさは感じられなかった。 ラストの怖さはあまりないものの、言耶でも説明しきれない怪異は依然として残っており、読後じわじわと恐怖を煽ってくるのはお約束。

    0
    投稿日: 2015.11.15
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    相変わらず面白かったです。 このシリーズは個人的に外れがなくていいです。 三部(四部?)構成になっていて、一部で遊廓に売られてきた少女が緋桜という遊女になる話。二部がその郭の女将さんからの視点の話、三部が時が過ぎひょんなことからその郭の後に出来た店で取材をはじめた作家さんの話。そして最後がいつもの刀城言耶の謎解き。となっています。 どの話もとても面白くほんのりと不気味で、雰囲気がたっぷりでよかったです。読む前は刀城言耶が出てこない本編なんてどんなものだろうと思っていましたが心配は全くの杞憂でした。 遊女たちの哀愁が強く漂っていました。人間的な哀しさがあります。 そしていつもの謎解きなのですが、いつもよりも怪異が「説明のつかない」よりいっそう得体の知れない、形のないものに思えました。それこそ幽霊のような。そんな話でした。 とても面白かったです。シリーズ続編もとても楽しみです。

    0
    投稿日: 2015.10.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    今回は珍しく舞台が山村じゃなくとある遊廓。 前半はホラー色が強く、人為的な要素が加わる余地を探りながらどこまでが怪異なのか、どこからが事件なのか考えつつもサクサク読めた。

    0
    投稿日: 2015.08.31
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    三津田信三お変わりなくの『如き』シリーズ第六段。 一年に二回くらい来る金田一耕助(と言うより山の中、閉ざされた未開の集落、伝承怪異)を求める心を絶妙に満たし続けてくれるこのシリーズ。 いつまでも続いてほしい。 今回は廓町のとある置屋が舞台。 閉ざされ感がないかと思ったらきちんと閉ざされ、その中で蔓延する怪異、伝承、不気味な隠語。 きちんとニーズを満たしてくれている。 謎解き自体は若干緩めではあるものの、最後に『緩めである理由』もきちんと記されていて好感度大幅アップ。 ガチガチのミステリではなく、人と人が織りなす美しかったり悲しかったり恐ろしかったりする柄と、そこにできた皺、そしてその皺に潜む人ならざる存在を感じたい。 そんな夜にオススメの一冊。

    0
    投稿日: 2015.08.29
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    事件の真相として呈示されたものにそこまでの驚きは無く、また一応の説明はつくもののすっきりしないことが多いので、読後にミステリーを読んだという感じがあまりしない だが、本シリーズは謎の幾つか或いは全てが敢えて有耶無耶にされたままになるのも醍醐味であり、何より今作品は遊廓という特殊な場所で怪異が影を覗かせながら事件が起こっていく、その過程の叙述自体が一番の読み所なのではないかと思った

    0
    投稿日: 2015.08.06
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    大筋のトリックはなんとなくよめた。 さらにどんでん返しがあることを期待したが、特に大きな変化は無し。 思ってた通りの解決編で、騙される快感が少なかった。 最後はシリーズおなじみの怪談調の締めくくり。

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    投稿日: 2015.08.03
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    刀城言耶シリーズ第六長編。 今回はミステリというよりもホラー寄りな感じがした。 そのわりには、ホラー小説みたいに怖いってほどではなかったから怖がりの私には読みやすかった。 当時の遊女の人たちは想像していたよりとてつもなく心身共に辛かったんだなぁと思うと読んでてこっちも辛かった。 それにしても刀城言耶が630ページ過ぎないと出てこないというのには驚いた。 ちょっといくらなんでも遊女についてが長かったかなぁという気がしないでもなかったな…興味深かったし読みやすかったから苦痛というわけではなかったけども。 最後はシリーズならではの怪異が残ってモヤっとする感じ。 ★3.5…かな

    0
    投稿日: 2015.06.28
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    十三歳で遊女となるべく売られた少女。“緋桜(ひざくら)”と名付けられ、身を置いた世界は苦痛悲哀余りある生き地獄だった。戦前、戦中、戦後、三つの時代の謎の身投げの真相は“幽女(ゆうじょ)”の仕業か、何者かの為せる業か。謎と怪異に満ちる地方の遊郭を舞台に、ミステリランキングを席巻した“刀城言耶(とうじょうげんや)”シリーズ第六長編、文庫降臨。

    0
    投稿日: 2015.06.19
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    事件より怪異より、心を磨り減らしながら体を張る稼業の辛さに暗澹たる思い。 時代を跨いで不可解な身投げが続くにつれ、第四部の刀城氏登場が待ちきれなくなってくる。 秘めた伏線には感嘆。巡り会った大切なものを守るために…緋桜の時を越えたひたむきさに涙が滲む。日記であれ、愛してくれる人であれ、自分を見失わずにいられる存在と出会った彼女はひたすらに強かった。

    0
    投稿日: 2015.06.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    文庫版・刀城言耶シリーズの最新作。 戦前・戦中・戦後の三代に渡って、とある遊郭で発生した事件の謎を解く、というのが大まかなプロット。故に、今作では『刀城言耶がフィールドワーク先で事件に巻き込まれる』ではなく、過去の事件に合理的な解決をつける、安楽椅子探偵ものに近い構成になっている。 まず、『遊女』の表記を一文字だけ変えて『幽女』としたタイトルが印象的。『苦界』とも言われた遊郭の世界では悲惨な出来事が多くあり、『非業の死を遂げた遊女が化けて出ても不思議ではない』という雰囲気がある。前作までとは構成が異なっていることもあるのだろうが、本作では、遊郭や赤線地帯が持つマイナスのイメージが上手く利用されていた。 刀城言耶シリーズでは、解決編としてラストに合理的な説明が用意されている。本作でもその結末は踏襲されているが、これまでよりも、『何かすっきりしない、全て解決したとは言いがたい読後感』が強調されていた。

    0
    投稿日: 2015.06.14