
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ドイツ人作家にしか描けないミステリだった。ミステリの核となる法律は、ナチスの命令に従うしかなかった当時のドイツ人を救うという目的もあったのではないかと思うが、そんなことは被害者にしてみればどうでもいいことである。被害者にとって重要なのは、害を与えた人がきちんと裁かれたかどうかなのだから。そういう難しさ、やるせなさをきちんと描いてくれるこの作者の作品は、やっぱり好きだと実感した。
0投稿日: 2025.11.09
powered by ブクログ解説の冒頭そのままで、「文庫版で二〇〇ページ弱と決して長くはない小説なのに、濃密な大作を読んだかのような衝撃が残される。」、そう言うお話です。でも、これを皮切りに、この主人公が活躍する連作シリーズが出てくると、もっと楽しめるのですが、そうはならないのでしょうね。ネットでみると、2019年には映画が出ているようです。でもページ数が少ないので、本の方がおすすめです。
0投稿日: 2025.06.22
powered by ブクログシーラッハに魅せられて、これで6作品目。 これまで読んだ短編に比べると、少し物足りなさを感じなくはないが、でも悲惨な出来事であっても登場人物の中にずかずかと踏み入るような事はせずに淡々と書くシーラッハならではの感触が心地よい。
0投稿日: 2025.04.04
powered by ブクログ単なる推理小説かと思ったら、ナチスの影はまだヨーロッパにも残ってるんだと知った。悪法に対して、こうやって変えていく声の出し方もあるんだ。それにしても切ないわ。責任を背負って生きていくのね。全員よ。背負ってない人なんかいない。 90
0投稿日: 2025.01.07
powered by ブクログ(2013/5/27) 「ドイツの法律を変えた!」という書評に興味を持って読んだ。デイキャッチで豊崎さんが絶賛してた。 結末を読んで思ったのは、この事件、記憶にある、ということだった。 結末のどんでん返しがこの小説のすべてなので、ネタバレは避けたほうがいいのだろうが、、、 どの書評も結末は書いてない。 どう描いていいかわからないから、まずはDBから。 内容(「BOOK」データベースより) 2001年5月、ベルリン。67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。 被害者は大金持ちの実業家で、新米弁護士のライネンは気軽に国選弁護人を買ってでてしまう。 だが、コリーニはどうしても殺害動機を話そうとしない。さらにライネンは被害者が少年時代の親友の祖父であることを知り…。 公職と私情の狭間で苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で公訴参加代理人になり裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが、 法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。 コリーニを凶行に駆りたてた秘めた想い。そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。 刑事事件専門の著名な弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く、圧巻の法廷劇。 最後ライネンは殺人動機を突き止める。 ドイツの悲しい歴史。 しかしそれでもなぜ今なのかはわからない。 最後コリーニがつぶやく。 ドイツの歴史と、家族への思いが複雑に、残酷に絡まった結末、といっておきましょう。 戦争が人間を狂気に追い込むのか。 理性の中でそれが出来たのか。 日本が「空気」の中で、負けるとわかっている戦争に突入したのと同列にできるのかどうか。 東条英機はA級戦犯にさせられたが、天皇の信頼を得て、なんとか戦争を停めようとしていたとも聞く。 いわゆる南京大虐殺、従軍慰安婦。戦後のアメリカの日本洗脳で、戦前の日本がすべて否定された。 侵略戦争は欧米も同罪。橋下の言うことは正しい。公人が公式の場でいっていいことかどうかは別だが。 我々は江戸時代、戦前の日本の良いところは取り戻さなければいけない。 話がそれたが、ドイツはドイツで過去の清算をしている、ということだ。
0投稿日: 2024.09.04
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・あらすじ ドイツのベルリンが舞台。 実業家の男がホテルのスイートルームで殺害された刑事事件を新米弁護士のカスパーが担当することになった。 加害者は自ら出頭してきたファブリツィオ•コリーニ。 カスパーにとって父親同然だった男を殺害した加害者を弁護するにあたり、事件を起こした動機を調査することになるが、被害者と加害者の関係、被害者の知られざる真実が発覚する。 ・感想 映画がすごく好きだったので原作読んでみたいと思ってたところ本まつりで見つけたので購入。 映画の方はよりやっぱりドラマティックになるように改変してるなーって思った。 原作は淡々とした文章で結構印象が変わる。 1番印象が違ったのがマッティンガーで、映画版だとよりドラマティックにするために割食わされた感じがした。 原作も映画もどちらも面白かった。 著者の経歴を知ると読了後より色々考えさせられるし、著者の他の作品も読んでみたい。
2投稿日: 2024.03.03
powered by ブクログ英小説は邦訳が読みにくくて苦手意識を持っているのですが、ドイツ小説はそうでもありませんでした。やはり言語にも相性はあるんですね。 帯のとおりのあらすじです。刑事を担当する新米弁護士が一番最初に弁護人となったのは殺人事件の被疑者(被告人、コリーニ)でしたが、その被害者は実は親友の祖父だった、と。これだけ読んで、てっきり刑事弁護人の立場からくる心の葛藤を描いたものだと思っていました(それにしては政治を動かしたとは…程度で)。しかし、読み進めるにつれ、それだけではないことに気が付きました。コリーニが頑なに犯行の動機を口にしない理由が何だったのか、法廷の弁論で漸く明らかにされます。まるで自身も傍聴人のように弁論に現れるストーリーにのめりこんでしまいました。 とりあえず、知識不足を感じたドイツ史を勉強しておきます。
1投稿日: 2024.02.10
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2013年日本刊行、シーラッハの初長編作品とのこと。 『禁忌』は読んだことあったけど、あれよりもこちらの方が前だったとは。 やっぱりこの文体は好き。 どこか不穏でぴりっとした緊迫感が終始漂う。 決して奇をてらった表現や独特な言い回しがあるわけではないのだが、何がどうしてこの著者特有の雰囲気が生まれているのだ。 すごく物語世界に没入させられる。 訳者、酒寄さんの力量、推して知るべし。 ある夜ホテルで一人の大物実業家ハンス・マイヤーが元自動車組立工の年老いたイタリア人コリーニに殺される。 そこには強烈なまでの憎しみがあった。 殺害後自ら警察を呼ぶが、その後は黙して何も語らない。 新米弁護士のライネンは、コリーニを弁護することを決意するが、その後殺された実業家が幼なじみの祖父であることがわかり心が揺れる。 だが、原告側弁護士であり、この道の大先輩であるマッティンガーに「依頼人への責任」を諭され、全力を尽くすことに。 最終的に明らかになる真実は、その題材とミステリを絡ませる趣向は数多くあるため、そこまで意外ではないのだが、著者自身の家系の来歴やハンスの孫ヨハナが語る「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」の名言、現実のドイツ政界をも動かした糾弾姿勢でくるまれたこの物語は、その月並みとすら思える展開に比して奥深い。 今年『珈琲と煙草』、『神』と2作も出版されている著者。 改めてミステリベスト10を賑わすことになるのか。
49投稿日: 2023.11.04
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故殺:一時的な激情によって殺意を生じ、人を殺すこと。 謀殺:あらかじめ計画して、人を殺すこと。 故殺と謀殺で、判決が変わる。 それはわかった。 果たして、この犯人は、どちらなのか。 なによりも、殺人にいたった経緯を言わない。 そんな事件の被告側の弁護人となる新人弁護士。 引き受けたはいいものの、後から被害者が、昔可愛がってもらった人物だと知る。 断ることも考えた。 けれど、受ける事にした。多くの葛藤はあった。 公判は進む。 なにかがひっかかっているが、それが何なのかわからないまま。 ある日、突然、何かに気づく。 そこから一気に「なぜ、殺したのか」を理解した新人弁護士。 戦犯が、守られるような法律が、戦犯によって立憲され、誰にも吟味されることなく行使されていた事実。 それはあまりにも衝撃的だった。 そんなことがまかり通っていた事実。 殺人行為に時効が適応される。 彼の人生は、戦犯を告発する為にあった。 あと一歩の所で、時効と、紙切れ一枚で通知がきたら、 それは、どれほどの、怒りと悲しみと絶望が襲い掛かってくるのだろうか。 実行にうつしたのが今だったのはなぜか。 その答えは、胸をかきむしられるほどの感情が伝わってきて涙こらえきれなかった。 戦争は、人を狂わせる。 人は、歴史から学ばなければならない。 おなじ過ちを繰り返してはいけない。 戦争は 謀殺だ。 この物語が、ドイツの法律を変えるきっかけになったというのは、ドイツという国が、過去と真正面から向き合っているという事なのだろう。
1投稿日: 2023.04.28
powered by ブクログドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の長篇ミステリ作品『コリーニ事件(原題:Der Fall Collini)』を読みました。 『罪悪』に続き、「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の作品です。 -----story------------- 新米弁護士の「ライネン」は大金持ちの実業家を殺した男の国選弁護人を買ってでた。 だが、被疑者はどうしても動機を話そうとしない。 さらに「ライネン」は被害者が少年時代の親友の祖父だと知る。 ──公職と私情の狭間で苦悩する「ライネン」と、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士が法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。 犯人を凶行に駆り立てた秘めた想い。 そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。 刑事事件弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く圧巻の法廷劇。 訳者あとがき=「酒寄進一」 解説=「瀧井朝世」 *第4位『週刊文春 2013年ミステリーベスト10』海外編 *第8位『ミステリが読みたい!2014年版』海外編 *第16位『このミステリーがすごい!2014年版』海外編 ----------------------- 2011年(平成23年)に刊行された「フェルディナント・フォン・シーラッハ」初の長篇作品… といっても200ページくらいなので、短めの長篇ですかね、、、 ボリュームが、ちょっと物足りない感じもしますが… 気合いを入れなくても一気に読めるので、これはこれで読みやすかったですね。 2001年5月ベルリン、67歳のイタリア人「ファブリツィオ・アリア・コリーニ」が殺人容疑で逮捕された… 被害者は大金持ちの実業家「ジャン=バプティスト(ハンス)・マイヤー」で、新米弁護士の「カスパー・ライネン」は気軽に国選弁護人を買ってでてしまう、、、 だが、「コリーニ」はどうしても殺害動機を話そうとしない… さらに「ライネン」は被害者が少年時代の親友の祖父であることを知り、公職と私情の狭間で苦悩する。 そんな状況下で公判は始まり「ライネン」と被害者遺族の依頼で公訴参加代理人になり裁判に臨む辣腕弁護士「リヒャルト・マッティンガー」は、法廷で緊迫の攻防戦を繰り広げることに… 「コリーニ」を凶行に駆りたてた秘めた想い、そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは、、、 地味な感じのリーガルサスペンスですが、「シーラッハ」らしい研ぎ澄まされ淡々とした筆致が物語にリアリティを与え、犯行動機が徐々に明らかになる中盤から終盤は、どんどん先を読みたくなるような展開でしたね。 そして、第二次世界大戦下のイタリアで起こった悲劇… パルチザンに対するナチスの非情な措置や、戦後のドイツ法改正によりナチス戦犯の犯罪が時効扱いとなった歴史的な問題を告発するような作品でした、、、 「コリーニ」がずっと心に抱き続けていたのは、姉の姿だったんでしょうね… 読み進めるうちに、残忍な殺人者が、血肉の通った人間だと気付かされ、印象が360℃変わってしまう展開、最後の写真のシーンが印象に残りましたね。 以下、主な登場人物です。 「ファブリツィオ・アリア・コリーニ」 元自動車組立工 「カスパー・ライネン」 弁護士 「ジャン=バプティスト(ハンス)・マイヤー」 マイヤー機械工業元代表取締役 「ヨハナ・マイヤー」 ハンス・マイヤーの孫 「フィリップ・マイヤー」 ヨハナの弟 「ケーラー」 捜査刑事 「ライマース」 上席検察官 「リヒャルト・マッティンガー」 弁護士 「ホルガー・バウマン」 マイヤー機械工業法律顧問 「ヴァーゲンシュテット」 法医学者
1投稿日: 2023.03.25
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中編ほどのページ数で、わずかな登場人物。それでいて、ちょっと何かを触れるとネタバレになりそうなくらいの緊張感を含んだ良質のミステリー。 これは素晴らしい!しかもこの本が売れたことで、本国ドイツでは現実が動かされ始めているという。 こんな本、日本では絶対出ないだろうなぁ。書ける作家は要ると思うが、大手出版社は絶対躊躇する(統一教会がらみですらもあの朝日が汚れるんやで)やろし、まして現実が動くなんて根性座った政治家も法律家もちょっと見当たらへんなぁ。
3投稿日: 2022.08.25
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法律論を、マッティンガー vs. ライデンの痛快な法廷劇に仕立てつつ、戦時の罪について現在とつながった話として問い続ける。
1投稿日: 2022.05.28
powered by ブクログわずか190ページの長編(?)だが、重い。 舞台はドイツ。 新人弁護士の主人公が担当してしまったのは、家族同然の友人の祖父を殺害した男の弁護だった。 ネタバレになるのでこれ以上は慎みますが、付いている帯を読むと予想できてしまう。 が、分かっていてもおもしろい。 いや、おもしろいなどという感想は不謹慎かな。 腹にズシンとくる重みがあります。
29投稿日: 2022.03.05
powered by ブクログ筆者のフェルディナント・フォン・シーラッハさんのファンで、自分が小説を書くならこういうのが書きたいと思ったのがシーラッハさんの「罪悪」でした。 著者が勝手に盛り上がらずに、読者の気持ちを盛り上げてくれるのが読んでて落ち着く。
1投稿日: 2021.12.26
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冒頭、当番弁護士の感じが日本と同じだー、と面白かった。ドイツから学ばせてもらったんだったか。 話自体も面白かった。孫との関係は正直要らんかなと思ったけど(映像化が意識されていそうなのは苦手)。ざ・ドイツ、というお話と思う。そんな法改正がなされるのも凄いと思うけど、その後に検討委員会が作られるのも凄いと思った。日本では前者だけで終わりそう。
1投稿日: 2021.05.05
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事件が進むにつれ、一見残忍に見える犯人が、法の僅かな落とし穴によって如何ともし難い苦痛を味わっていることに気づく。重厚な後味を残す一冊でした。 所々、表現が長ったらしく退屈する文があったので星4にしました。
2投稿日: 2021.02.24
powered by ブクログドイツの映画を観たいと思い探していたところ、このタイトルに行きつき、原作であるこの小説をまず読んでみることにした。 理解したことを書いてみると、戦争中の殺人は、命令だから罪にならない。指導者側にいたとしても時効がある。 そのような現代の法と照らし合わせた矛盾を暴く、重いストーリーだった。 私のこのような理解があっているのかどうかわからない。 映画を観てみたい。
3投稿日: 2021.02.08
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前情報なしで読み始めたので、そんな話だったのか!と驚き、あとがきで作者の出自を知ってさらに驚いた。 知らないまま読めてよかった。 知ったうえで読み返すと、最後のヨハナとライネンのやり取りがますます胸に迫る。 淡々とした語り口なのだが、続きが気になってスルスル読めてしまう不思議な魅力を感じた。他の作品も読んでみたい。
6投稿日: 2021.02.06
powered by ブクログこのドイツ人著者の作品を読んだのは「犯罪」に続いて2作目。この作品をきっかけにドイツ政府も動いたというから衝撃作ですね。殺人事件の裁判を通して、過去のナチ時代と向き合った今作は、ページ数も少ない分内容も凝縮されている。
4投稿日: 2020.11.12
powered by ブクログドイツ語と日本語両方で読み、ドラマも視聴した。 日本であれば、短編と言われるほど薄い本。すぐに読めてしまうが、ドイツらしい読了後に非常に考えさせられる作品だった。彼の作品は、単調な日々の中でも倫理とは、正義とは、人生とはなどをふと立ち止まって考える機会を与えてくれる良書である。
1投稿日: 2020.11.08
powered by ブクログ映画が気になってたのですが劇場に行けず。なので、原作を読んでみました。 全くと言っていいほど無駄がなく、淡々と物語が進みます。一気読みです。面白かった!著者の他の作品も読んでみたい。
2投稿日: 2020.09.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
話の内容自体は重めですが、先が気になりすぎて一気読みしてしまった一冊です。 ドイツの歴史や法律、それぞれの登場人物の恋愛・人間模様など、色々なトピックを扱っていながら、どのトピックも面白く、かつ程よい分量で書かれているので、読み飽きないと思います。 そもそもレビューを書いている今この時から、多分半年以上前くらいに読了していて、それくらい時間があくと、本の内容をはっきりと覚えていないことが多いんです。。 ですが、この本は興味深いトピック(特にラストは、結局時効問題に行き着くという、一昔前の日本の殺人事件のようで、考えさせられました)を多く扱っていて、内容を大体思い出せました! これを機に、シーラッハ著の本を何冊か読んでみようと思います!!
1投稿日: 2020.08.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
法廷もの。しかも過去と現代を行きつ戻りつするのにすごく読みやすくておもしろかった。 映画化されてますね。顛末をわかっていても観てみたくなります。 「やがて来る者へ」というイタリア映画に第三帝国時代のドイツの蛮行が描かれています。 併せて観るとコリー二の無念さがより浮かび上がってくると思います。
1投稿日: 2020.08.24
powered by ブクログ新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、その男に殺されたのはライネンの親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、自分の祖父同然に思っていた人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされた事件の驚くべき背景とは。 映画が公開されるのか、最近コマーシャルをよく目にするので、読んでみた。中編とも言える長さだが、重い。
3投稿日: 2020.06.14
powered by ブクログ映画が先か原作が先かいつも悩むところではあるけれど フェルディナント・フォン・シーラッハの世界は昔から好きなので 原作を先に読んでみた。 いつもどおり一筋縄では解決しない事件。 戦争犯罪・愛憎・過去・現在、そして法律が込み入った世界を作り出していく。 そして作者の視線は常に弱者に温かい。 読了して映画はもういいかな?と思ったが訳者のあとがきを読んで思い直した。 事件の背後にあるドイツの歴史をまったく知らない私は小説の細かい伏線が読めていなかった。あとがきを参考に映像でさらに奥深い世界を体験してみたい。
4投稿日: 2020.06.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公・ライネンは、弁護士になってやっと42日。 初めて殺人犯の国選弁護人になったが、容疑者、いや、犯人は犯行を認めるものの、動機を明かさない。 犯行に至るまでのどんな背景が事件にはあったのか、そして、なぜ犯人は動機を明かそうとしないのか。 何を書いてもネタバレにかすってしまうので、感想を書くのが難しいなあ。 これから読もうと思う人は、この先を読まないでね。 いまだにドイツに影を落とし続けているのが、ナチス時代に行った数々の非道。 犯人であるコリーニがなぜ殺人を犯さなければならなかったのか。 それもまた、現在に残るナチスの影のせい。 ナチの生き残りが作った戦後ドイツの法律が、ナチの犯罪をなかったことにする。 余談だが、この小説の出版がきっかけで、ドイツはナチの過去再検討委員会を立ち上げたという。 小説が政治を動かしたのだ。 閑話休題。 犯人は結局最後まで多くを語ることはなかった。 作者としては、その存在が、訴えたいことのすべてだったのかもしれない。 そもそもなぜイタリア人の犯人は、ドイツに暮らし続けたのか。 ずっと癒えない傷を忘れないためにそうしていたのか。 犯人の心のうちにあったものは、恨みだったのだろうか、それとも今は亡い人たちを慕い続ける思いだったのだろうか。 生涯独身を貫いた犯人は、愛する人を持つことはなかったのだろうか。 自分自身を生きることはできたのだろうか。 多くの疑問が頭の中をぐるぐる回るけれど、簡単に答えを出すことではないとも思う。 「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」 「きみはきみにふさわしく生きればいいのさ」 それほど長い作品ではないのに、ずっしりと重い読後感が残された。
2投稿日: 2019.12.21
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国選弁護人を引き受けた事件の被害者は親友の祖父だった―。それだけでも十分ドラマ性があるのに、後半の思わぬ展開に、読み終わって呆然としてしまった。語り口も淡々としていてそんなに長い小説でもないのに、じわじわ迫ってくる筆致がすごい。この小説がドイツの政治を動かしてしまったということのもうなずける。 そして小説で政治が動いてしまうドイツという国もすごい。そのことは日本でもよく問題になるけど、責任の取り方というかそれに対する責任の捉え方が、本当に全然違うんだよなぁ…
2投稿日: 2019.10.26
powered by ブクログフェルディナンド・フォン・シーラッハの長編作品を初めて拝読した。 この小説は彼の「懺悔」だ。祖父が元ナチスの高官であるシーラッハが抱えていたものを、私たちは計り知ることは出来ない。 その「苦悩」がこれを書かせたのではないか。作中の主人公コリー二と同様彼も、先の大戦を根強く引きずっていた。 彼の短編作品と比べると、若干の「キレのなさ」を感じさせつつも、コリー二の動機が明るみになるにつれ増してくる、スリルは極上。 やはりこの著者は、ただ者ではない。
1投稿日: 2019.08.12
powered by ブクログ「テロ」があまりにも名著だったためこちらも読みました。なるほど小説としては荒削り感は否めないものの、「テロ」にも通じる法律の是非を問うメインテーマの壮大さと深い理解とは流石というほかはない。良い作品でした。
1投稿日: 2019.07.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
鳥肌が立つ。 この小説を読み私が体感したものの一つ。 ドイツの法廷劇であり、筆者の淡々とした語り口が、読者とほどよい距離感が保たれており、ページを進めずにはいられない。そして、扱うテーマがとてつもなく奥深く過去の暗い歴史へといざなわれる。読者は自らこの重みを受け止め、対処せざるを得えない。物語の登場人物と、語り手の距離感がそうさせるのだと思う。 この重厚なテーマをこのページ数で語ることが、著者のすごいところ。ドイツの戦争との向き合い方について、我が国でも参考にするべきことがあるかもしれない。
1投稿日: 2019.07.13
powered by ブクログ証拠も証人もそろい、わからないのは動機のみ。 そして被害者は、子どもの頃世話になった人だった。 たとえば司法解剖に立ち会ったあとのライアン。 〈シャツの縞の数を数える。外階段での熱気。タバコ入れの冷たさ。震える手。〉 カメラワークのような目線、心の動き。 この作者らしい無駄のない焦点を絞ったような文体は今回も。 詳しくないながらも弁護士の関わり方もドイツと日本ではずいぶん違うようで、そこもまた興味深かった。 3冊目のシーラッハ。長編(といっても190ページほど)も楽しめました。
1投稿日: 2019.06.11
powered by ブクログSNSで誰かが感想を書いていた。どんな感想だったか、あまり記憶がないが、題名が強烈に残っていた。 海外小説はあまり得意ではなく、強烈な記憶であっても読むのを敬遠していたのだが、ある時図書館でなんとなく眺めていると背表紙が目に飛び込んできた。 暗く重い話である。 読み終えて最初に感じたのは、「無念」だった。 次に感じたのは、「無力感」。 かと言って、つまらないのではない。そう感じざるを得ないのだ。 ぜひ多くの人に読んでほしい。
1投稿日: 2019.03.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。 無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。 小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的だったので、深読みしてしまった…嫌いじゃないし、著者が何となく答えを教えてる、ちっとな文章と中々良かった! 読んだ事の無いタイプの本。外国作品は、登場人物ごちゃごちゃになるので、あんまり読まないが、この作品は数人だけで読みやすくて良い。 気になったら読んでみてください!
4投稿日: 2019.02.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
禁忌と同じタイミングで読んだため、すこしキャラクターが混じってしまった。 基本的にこの人の作品では、警察、法曹界野の人たちは常に善良に自身の仕事と向き合っていて、嫌な人間がいないところが良い。 被害者の二面性、被告人の救われなさ、さすが弁護士、と感心した。おまけに、これは自分自身の話でもあるなんて。すごい。
1投稿日: 2019.02.10
powered by ブクログ以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読ませていただいています。 本書は、先生がFBで推薦されていたドイツのリーガルミステリー。 作者のシーラッハは著名な刑事弁護士。短い文章をテンポよくつなぎ、結末まで一気に読ませます。 ベルリンの高級ホテルの一室で、高名な老人が命を奪われます。容疑者として逮捕されたのは、イタリア人の元職人コリーニ。 国選弁護に指名された新米弁護士ライネンは、被害者が幼馴染ヨハナの祖父であることを知り、個人の感情と職業的使命感の板挟みになりつつも弁護を決意します。状況からコリーニの犯罪は決定的。にもかかわらず動機について硬く口を閉ざすコリーニ。被害者遺族側には辣腕弁護士マッティンガーがつく圧倒的に不利な状況の中、ライネンは真相を追います。 背景には第二次大戦時の出来事がからみ、ドイツ刑法学の権威ドレーアーが大きな鍵を握っています。物語は裁判を縦糸に、ヨハナとの葛藤を横糸に展開します。ミステリーとしても一級品で出版後たちまちベストセラーになりました。また、本作がきっかけでドイツ政府が調査委員会をもうけるなど、実際に社会を動かす結果となりました。シーラッハ自身、祖父が戦争に関与していて、過去の戦争とどう向き合うのか問う側面もあり、多面的な読み方ができます。 S先生とは、ある規制を巡って長時間議論させていただきました。守るべき法益は何か、安易に規制を持ち出していないか。趣味の話と打って変わって、学者としての厳しい問題意識を教えていただいたのが懐かしい思い出です。久しぶりに一献傾けながら、お話をお伺いしたいものです。
5投稿日: 2018.11.07
powered by ブクログ「訴訟はひっきょう正義を求める戦いだ、法を定めた先達はそう意図していた。決まりは明快で厳密だ。それが考慮されるときのみ、正義が生じる」 67歳のイタリア人元労働者コリーニが、85歳のドイツ人実業家マイヤーを惨殺する。 弁護士となって最初の仕事に、コリーニの国選弁護人を引き受けたライネンだが、マイヤーは少年時代の親友の祖父であり、恩人でもあった人だった。公職と私情の間で心は揺れる。 コリーニはなにも語らず、マイヤーは非の打ちどころのない人間だった。 本来犯人と被害者の間にあるはずの接点も、殺害の動機もなにひとつ見出せぬまま時間だけが過ぎていく。 何より、「弁護を望んでいない人間をどうやって弁護したら」良いのかわからない。 裁判には負ける。誰の目にもそう見えていた。しかし覚悟を決めたとき、ライネンはひとつの手がかりを掴む。 “彼は生涯待ちつづけ、つねに黙して語らなかった。” やがて法廷で明らかになる、ドイツの暗い過去の向こうに萌芽していた悲劇のきっかけ。コリーニはなにを待ち続け、なにに口を閉ざし続けていたのか――。 刑事事件弁護士でもある著者が描く法廷劇。実際に施行されている法律の落とし穴を突く展開は流石。あとがきで判明する著者の出自も作品に説得力を与えていると思われる。 200ページに満たない短篇とは思えない闇の深さに圧倒される。
1投稿日: 2018.07.28
powered by ブクログ人生の成功者で、地位のある老人が殺害されました。犯人はすぐに捕まり、素直に犯行を認めましたが、動機については話そうとしません。被告の国選弁護人となった新米弁護士は学生だった頃、被害者である老人にずいぶん世話になった旧知の仲でした。 若き弁護士は、悩みながらも被告の動機を明らかにしていきます。簡単に終わると思われていた裁判は、意外な展開を見せ始めます。 ヨーロッパならではの法廷劇です。傷ましく、悲しい物語でした。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
1投稿日: 2018.07.10
powered by ブクログ「犯罪」「罪悪」などの短編集で人気を得た著者の初長編。とはいっても200ページもない。短編と中編の間といってもいいくらい短い。しかし内容は深い。 (簡単な物語の導入部の紹介) 自動車組立工だったコリーニの職場での評判は、いたってまじめで、勤務態度は申し分なかった。定年まで勤めあげた彼が殺人を犯すとは、誰も思いもしなかった。 処刑スタイルで頭に銃弾を撃ち込まれたあげく、絶命後も激しく顔を踏みつけられ原型をとどめないほどの憎悪を向けられた被害者マイヤー。大手機械工業の代表取締役として世間にも顔を知られた実業家であり資産家。 犯人と被害者の接点はどこにあるのか… 資産家の惨殺にスキャンダルの臭いを嗅ぎつけマスコミは群がる。しかし犯人は黙秘を続け、動機を一切語らない。国選弁護人として弁護を引き受けたのは新米弁護士ライネン。意気揚々と初仕事に挑む。犯人との信頼関係を構築しようと努める。だが問題が判明した。殺された資産家はライネンがまだ少年だったころ、よく遊んだ友人の祖父だったのだ。 そんな犯人を自分は弁護できるのだろうか… 果たして彼の決断は… ここから下は完全ではないけどネタバレ気味。 本の帯から引用 「本書はドイツで一大センセーションを巻き起こし、作中で語られたある事実がきっかけとなり、ドイツ連邦法務省は省内に調査委員会を立ち上げた。まさに小説が政治を動かしたといえる」 そうなのだ。この作中で語られた事実に触れないと感想が書けないのだ。法律の瑕疵とでも言っておこうか。実際に1960年代後半に改正されドイツの法律に意図的に組み込まれたある条項によって、ある人たちの罪が免責されてしまったのだ。 ああ、書きたい。トリックを書きたい。 日独の比較とか認識の違いとか、うだうだうだうだ書き綴りたい。 書評欄に、途中から黒塗りする機能とか追加できないでしょうか? もしそれができるなら、疑惑を追及されて渋々役人が提出してくる内部文書くらい真っ黒にできる自信がある。 この著者の作品は犯罪を扱っているのに、どこか人間味がある。それは短編集の2作を読んでも感じたことだったけれど、この長編にもそれは感じる。 サイコパスやシリアルキラー全盛のミステリー界において、「太陽にほえろ!」に登場してきた犯人たちのように、犯人たちにも赤い血が流れているのを感じる。犯人に共感してはいけないんだけれど、どこかにそんな気持ちが芽生えてしまう。そんな感情と理性のゆらぎをこちらに起こさせるようなミステリーやドラマが昔は多かったような気がするが、どうして廃れてしまったんだろう… 動機が人間らしい。これだけで読む価値がある。
1投稿日: 2018.04.27
powered by ブクログ中編、というぐらいの分量。法廷劇。読み終わったとき、込み上げてくるものがあって涙しそうでした。ネタバレになるのであまり書きませんが、色々と他人事ではないと思います。本国ドイツではこの作品の影響で政治が動いたとか。良い作品でした。
1投稿日: 2018.03.01
powered by ブクログ日本でこういうテーマのミステリってあるんでしょうかね。書けそうもない気がします。 ドイツの裁判制度は面白いですね。 裁判官、参審(市民)検事、弁護士に加えて被害者の代理人(弁護士)も参加し被害者の利益を守るようです。
1投稿日: 2018.01.30
powered by ブクログこの本を読んでいる時には、犯人が被害者を殺害した時には、犯人が実際には手を下してはいなくて、それを主人公であるライネンが暴いて弁護するのだろうかと思いましたが、いい意味で予想が裏切られました。トリックではなく、大きな歴史がその前に横たわっているとは予想だにしませんでした。
1投稿日: 2018.01.30
powered by ブクログシーラッハ作品の魅力は、地の文で極力内面描写を行わずに読者に登場人物の心情を想像させ、物語のフレームを描かせるところにあると思っています。本作は初の長編になりますが、短編集『犯罪』『罪悪』で見せてくれた筆致は本作でも健在で、総じて楽しめました。訳者あとがきや瀧井朝世さんの解説が充実しているのも嬉しいです。 一方で、必要な部分だけに削ってシンプルにした短編と違い、長編では読者に見えるところが多いぶん、いくつか気になるところもあったり。一番気になったのは法廷でライネンが最後に放った一矢で、正直肩透かしを食らった気分になりました。いくら何でも法曹界の人間がそんな基本的なことに気付かないわけないと思うけどなあ。コリーニが黙して語らない理由や、ライネンが真相に気付いたきっかけもいまひとつピンとこなかったですし。あと帯にでかでかとある「この小説が政治を動かした。」は無いほうがよかったんじゃないでしょうか。別にそこは売りにするところじゃないと思うので。 本作のメインテーマについても思うところがあるのですが、困ったことに正面からこれを書くとネタバレになってしまうので、私にはマッティンガーの考えのほうがしっくりくる、とだけ述べておきます。
1投稿日: 2018.01.09
powered by ブクログフェルディナント・フォン・シーラッハ『コリーニ事件』創元推理文庫。 著者にとっては初の長編であるが、200ページ足らずの作品なので、中編だと思えば間違いないだろう。簡単に内容を紹介すれば、新米弁護士が殺人犯の弁護を引き受けるのだが、その被害者は少年時代の恩人だったことから、苦悩しながら旗色の悪い過酷な裁判を闘うというストーリーである。 冒頭に描かれる殺人の場面は『犯罪』『罪悪』に描かれたような淡々とした無機的な感じである。ところが、新米弁護士のライネンが登場するや場面に彩りを感じるのだが、どうにもしっくり来ない。所々に淡々とした無機的な場面が登場し、例えるなら演歌とジャズをアレンジ無しに無理矢理継ぎ接ぎしたように感じるのだ。 結末もそうなるであろうなという所に落ち着き、無難と言えば無難なのだが、『犯罪』や『罪悪』に比べると心に響くものが何もないという作品だった。 嫌いな作品ではないのだが、難しい…
3投稿日: 2017.12.20
