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ブルース
ブルース
桜木紫乃/文藝春秋
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総合評価

31件)
3.6
4
12
10
2
1
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    魔性の男とでも言えそうな男に集まる女性たちの連続短編集。 表紙絵のように白黒な作品だなと思っていたら思いがけず最終話に白と黒というワードが出てきて間違った解釈はしてなかったのかなと勝手に自己満に浸ってしまった(⌒-⌒; ) ただ、この作品は男性より女性の方がより深く読み込めるものだなと思う。

    14
    投稿日: 2024.01.13
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    生まれつき両手両足に6本の指をもつ影山博人。 釧路の暗い長屋で育った寡黙で早熟な少年は、やがて釧路を初めとする北海道の裏社会でのし上がっていく。 作者の独特な昏い世界観が、今まで読んだ作品の中で一番魅力的に感じられた。博人が彼女を選んだ理由や、女たち一人一人の物語にはまだまだ謎が残ったままで、アナザーストーリーのようなものを欲してしまう。

    1
    投稿日: 2023.11.11
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    人にはそれぞれ身体的特徴があります。背が高い人、目がパッチリした人、耳が大きい人…。人が生物である限り、全く同じ身体を持つはずはなく、それぞれ生まれ持った身体とともに一生を生きていくことになります。それは、個性でもあり、そのパーツ、パーツの集合体がその人を特定するものとなり、他人にその人を紹介する時のキーワードにもなっていきます。 では、あなたは『面白い子がいるんだけど、どう』と次のような紹介を受けたとしたらどんな感情を抱くでしょうか? 『その子、指が六本あるの。で、すごく巧いの』。 『すごく巧い』という言葉には笑う他ないかも知れませんが、それ以上に『指が六本』という言葉に引っかかりを感じます。 『あの指、試し甲斐があると思うの』、『おすすめよ』 そんな風に続ける相手にあなたは、なんと返事をするでしょうか…。 さてここに、『男には六本の指がある。ためらいのない指先に拓かれ、快楽の亀裂がいっそう深くなる』という先に、一人の男に魅せられていく八人の女性たちを描いた物語があります。『六本の指』という言葉が深く刻み込まれるこの作品。八人の女性たちそれぞれの人生に思いを馳せるこの作品。そしてそれは、「ブルース」の流れる物語の中に『六本の指』を持つ謎の男の影を感じる物語です。 『午後四時』になり『「球体関節人形(ビスクドール)教室」の明かりを半分に落とした』のは主人公の柏木牧子。そんなところに『お茶のペットボトル、おにぎりとお新香が載った盆を持っ』た『夫の輝義がアトリエに入ってき』ました。『今夜は遅くなるかなと思って』と労う輝義に『夜中まではがんばらないつもり』と返す牧子。『親が遺した』『会社を畳』み、『親の身代を食いつぶすと決めたふたり』は、『子供もな』く『思い煩うこと』のない夫婦生活を過ごしています。『まだ夫が代表取締役だった』頃に東京で『人形作りの技術を得』た牧子は、『夫が母屋に戻ったのを確かめて』、『部屋の隅にある窯の前に立』ち、作業を始めます。『年に数体買い手がつくようにな』った『ビスクドール』のパーツを持ち、『そら豆大の手から指を一本削り始め』た牧子。そんな中に中学時代を振り返る牧子は、『道東の港町のはずれには「高台」と「下の町」があった』ことを思い出します。『官舎、役所や小中学校、高校、一戸建ての家が並』ぶ『高台』に対して、『赤い土が露出した崖肌からは雨が降るたびに赤い泥水が流れ落ち』る『下の町』。『長屋の青いトタン屋根が横一直線に伸び』、『「共同便所」や「炊事場」に、下着同然の姿で出』歩く人たちが暮らす『下の町』へは、決して行かぬよう大人たちに言われて育った牧子。そんな牧子が『中学三年の夏休み』に『行き交うトラックの荷台から』『鱗の光る魚がばさばさと道路に落ちる』のを目撃します。そんな魚を『長屋の子供たちが先を争って拾い集め』る中、『子供のひとりが、左右も確かめずに飛び出し』ます。牧子が叫ぶ中に『道路を突っ切ってゆく乗用車からその子を助けたのが七組の影山博人』でした。『肘から下に手のひら大の擦り傷』を見て『ハンカチを取り出し』『長屋のほうへと歩き出し』た博人を追う牧子。『なんの用だ』と長屋の戸の前で博人は振り返ります。そして、牧子が『無言で差し出した』ハンカチを『げらげらと笑いながら』『ひったくった』博人。そんな『博人の手には、指が六本あ』りました。場面は変わり、二学期になり『初雪が降るころ』に博人からハンカチを受け取った牧子は薄着の博人が気になります。そして『クリスマスイブの日』、長屋を訪れ『これ、使って。このあいだ、寒そうだったから』と『黒い毛糸の手袋』を差し出します。家の中に入ることになった牧子が『ご両親は、お仕事中なの』と訊くも『そんなもん、いない』と返す博人は、母親が『化粧水飲んで自殺しようとして、救急車で運ばれたきり戻ってこない』と話します。その後、二人の話が続かない中、『壁ががたがたと動き』、『やがて女の声と男の声が折り重な』って聞こえてきました。『ここか、いいの、ここか』、『まだいくな、おれがいくまでだめだ。さきにいったらころす』と聞こえてくる声に『なにをしているのか』『だいたいの想像はついた』という牧子は『オーバーのポケットに』『避妊具が入って』いることを思い出します。『真面目だとばかり思っていた姉の学生鞄から出てきた手紙と避妊具』を見つけ『いつ避妊具が消えたことに気づくだろう』と『考えるだけで愉快』になりながら持ち出した牧子。『毎日だ、毎日毎晩、これだ。ほかにやることねぇのかよ』とため息を吐く博人に『面白いじゃない。わたしたちもやってみようか』と返す牧子。そんな牧子に『俺の手、見ただろう』と言う博人に『なんとも思わないよ、わたしは』と答える牧子。『ゆっくりと押し倒され』ながら『このひとは既に知っている』と思う牧子は、『ゴムの緩んだ下着も一緒に剝がされ』、『指先が薄い草むらを上から下へと撫で』るのを感じます。そして、父親が転勤となり一人地元の高校に進んだ牧子が博人と再会するために長屋を訪れると『ここにいたやつらぁ、みんな立ち退き喰らった』と『見張り番』という男から説明を受けます。『ここに住んでたガキが壁に火を点けた』と続ける男。行方知れずとなった博人を思うそれからの牧子の人生が描かれていきます…という最初の短編〈恋人形〉。謎の主人公とも言える影山博人の原点を見る好編でした。 “霧たちこめる釧路で生まれた男が、自らの過剰を切り落とし、夜の支配者へとのしあがる。男の名は影山博人。貧しく苛烈な少年時代を経て成熟していった男は、女たちに何を残したのか ー。謎の男をめぐる八人の女たちの物語”と謎めく内容紹介がとても気になるこの作品。作者の桜木さんが暮らされている釧路を舞台にして、独特な雰囲気感の中に八つの短編が連作短編を構成しながら展開していきます。 まずは桜木さんの作品ならではの北海道を感じさせる物語の中から風景ではない部分で三つほど印象に残った箇所を抜き出しておきましょう。『内地』と表現される本州へ行ったことのない主人公がその『内地』へと渡る感覚をこんな風に言葉にします。 ・『この土地から出たことのないまち子にとって津軽海峡は、けっこう幅の広い「しょっぱい川」なのだ』 どこの街へと行き場を求めれば良いかわからなくなる中に、『いっそ内地へ行ってしまおうかと思』うも『ためらいがそれを覆う』という感情の中にこの表現が登場します。次は、自動車が頼りの日常生活について語られた箇所です。 ・『この街では歩いて十分かからぬ場所でも車を使う。鉄道は遠い街へ行くためのもので、バス路線にはひとつのドル箱もない。生活に困窮しても、みな車だけは持っている。中古車輛販売と板金工場が多いのは、自家用車しか信頼できる移動手段がないからだ』。 北海道をレンタカーなしで旅したことがありますが、その広大さに戸惑った記憶があります。そこで生活するとなると尚更であり、これはそんな土地に暮らされる桜木さんのリアルな感覚だと思います。最後にもう一つ、そんな釧路の昼と夜を表すこんな一言です。 ・『港町の経済のおおかたは夜に動いている』。 たった一言ですが、それでもこれは釧路という街の今を朧げながらに感じさせてくれます。兎にも角にもあらゆる表現がそこにリアルに暮らす桜木さんが故の説得力を持って迫ってくるところがこの作品の根底に流れるものを支えているように感じました。 そして、そんな作品の一番の特徴は、八つの短編にそれぞれ登場する主人公たちとは別に、影の主人公が存在するという点です。それこそが影山博人という男であり、物語はこの博人が八つの物語全てに登場することを共通として連作短編を構成しています。そんな物語のポイントは、本来、主人公であっても良いはずの博人には決して視点が移動しないというところです。このようなスタイルをとる作品として、桜木さんには、須賀順子という女性を影の主人公にして展開する「蛇行する月」があります。須賀順子の25年の人生を追っていく物語ですが読者としては、そんな人物に視点が移らないもどかしさの中での読書を強いられます。また、視点が移らないという点では、異性である男性に影の主人公を置いた作品も思い起こされます。川上弘美さん「ニシノユキヒコの恋と冒険」、もしくは柚木麻子さん「伊藤くんA to E」といった作品です。いずれもさまざまな女性が登場し、一人の男性の姿をどんな風に見ていくかが描かれ、そんな男性から影響も受けていく物語です。そんな他の作品に比して、この作品で桜木さんが描く影の主人公像はさらに強力です。関わる女性たちの人生を大きく変え、時には悪役、時には正義の味方、スーパーヒーローのような立ち回りを演じていくのが特徴です。では、そんな八つの短編に登場する女性たちを見てみましょう。 ・〈恋人形〉: 柏木牧子が主人公、52歳、中学校時代に博人と出会う、ビスクドール教室を営む ・〈楽園〉: 三上敏江が主人公、28歳、八上染物店の事務員 ・〈鍵〉: 柿沼美樹が主人公、34歳、主婦 ・〈ブルース〉: 田所圭が主人公、32歳、主婦 ・〈カメレオン〉: まち子が主人公、32歳、スナック「ダニエル」のママ ・〈影のない街〉: 絵美が主人公、23歳、喫茶「ムーンライト」の店主 ・〈ストレンジャー〉: 千雪が主人公、33歳、ピアノバー「アダージョ」のピアニスト ・〈いきどまりのMoon〉: 莉奈が主人公、27歳、写真家 八つの物語は、八人の女性たちがそれぞれ主人公となる物語です。しかし、読者の興味は博人がどのような形で登場し、彼女たちにどのように関わっていくかです。そんな中に博人の存在を象徴するキーワードのように登場するのが博人の身体的特徴です。 『影山博人には両手の指が六本あった。足の指も六本』。 一度見たら忘れられないこの身体的特徴に八人の女性たちはそれぞれに囚われていきます。 ・『男には六本の指がある。ためらいのない指先に拓かれ、快楽の亀裂がいっそう深くなる。漏れた自分の声に身を縮める』。 ・『指先の美しい男だった。もとは六本あったという指の、切断面はつるりとした瘤になっている。美しいせいで、余計に瘤が目立っている』。 ・『博人を見ていると、余分なはずの指を切り離して数を合わせた両手には、失った六本目の指でしか握りしめられなかったものがあったのではないかと思う』。 『六本の指』を持つ博人ですが、上記引用の二つ目、三つ目では指が五本になっていることがわかります。この壮絶な経緯は是非本編をお読みいただきたいと思いますが、女性たちだけでなく、間違いなくこの作品を読む読者の中にも博人の『六本の指』は強烈に印象付いていくはずです。そして、もう一つ印象的なのは、そんな『六本の指』を持つ博人による官能の場面です。少しだけ覗いてみましょう(笑)。 『背後から回った博人の右手が、膝から内側へと滑り込んだ』、『包帯を巻いた左手がブラウスの上から胸を包む。正座したままじりじりと膝の位置をずらした。男の指先が亀裂を割った』という中に『指先の動きに耐えきれず、腰を上げる』敏江は『立ち膝で男の手を受け入れ』ます。そして、『下着を剝がしてすぐに、男の腰が敏江を裂いた』という中に桜木さんならではの表現が登場します。 → 『近づいている。もうすぐだ、もうすぐあの場所へ行ける。男の指先が繫がりの周囲を滑り、別の扉を圧した。敏江はすぐに楽園の白い空間に放られ、上下も左右もなくなった』。 八つの物語では博人と主人公となる女性との官能シーンが美しく描かれます。読んでいただくとわかりますが、いやらしいといういうよりは恍惚感が神がかったように描かれるのがこの作品の魅力です。そして、八つの中で二つの物語だけは官能シーンが登場しません。これが何故なのか、なるほど、と桜木さんの物語構成の上手さを見せていただく物語がそこにはあります。これから読まれる方はこちらも是非楽しみにしてください。 そんな物語は、それぞれの人生を生きる女性たちの前に現れた博人が、彼女たちの人生に大なり小なりの影響を及ぼしていく様が描かれていきます。それこそが何度も記す通り、影の主人公としての博人の存在です。そんな博人に視点が決して移動しない以上、読者は女性たちが博人に感じる思いの中に博人という人物を浮かび上がらせる他ありません。もちろん、主人公の年齢も境遇も異なる中には、その見方も異なります。しかし、そこに見えてくる博人像は思った以上に一つにまとまってもいきます。最後にそんな博人像を抜き出しておきましょう。 ・『内側に火を溜めたような体つきや、風貌から受ける印象は決して明るくはない。影山博人は、人の群れから切り離されたような空気を纏っていた』。 ※ どこか影のある存在、群れを好まない孤高の存在を思わせます。 ・『夜の街にいれば夜の顔になり、昼は昼の顔ができる。こんなカメレオンみたいな男は、やっぱりろくなもんじゃない』。 ※ 博人が見せるさまざまな表情を上手く表現しています。実際、物語中にさまざまな役割で顔を出す博人を見ていると、敵なのか味方なのかわからなくてなってもきます。同性としては、このような男は絶対に敵には回したくないですね(笑) ・『夜の街の女たちがこぞって手に入れたがるのは、影山博人本人ではなくて、彼が見せる影なのかもしれない』。 ※ これはかなり抽象的な表現ですが、作品後半にいくに従って、圧倒的な力を見せていく、博人の底知れぬ力への憧れのようなものを感じます。 ・『莉奈の知る限り、夢をみなくても生きていられる男は、影山博人ひとりだった』。 ※ これはもう圧倒的な表現だと思います。莉奈との関係性含め、最終章に相応しい主人公と物語展開にこの言葉はよく似合います。 また、この作品は書名の「ブルース」に表される通り、各章にブルースの音楽が登場します。「Love is Blind」、「Fly Me to the Moon」、そして「ラストタンゴ・イン・パリ」といった音楽が流れるそれぞれの短編に、さまざまな悩み苦しみの中に生きる主人公たちの姿が描かれてもいくこの作品。そんな主人公たちの前に現れる影の主人公・博人が起点を作っていく物語は、それぞれの主人公たちに人生の起点を作っていきます。全編で文庫本250ページ余りの作品の中に八人もの主人公の物語が描かれるとすると、それぞれの物語は薄っぺらくなるようにも思います。しかし、この作品にそのような印象は全く当てはまりません。主人公たちの多くを描かないで、全体としての巧みな雰囲気感の中に、まるで八つの長編小説を読んでいるようにさえ感じる濃厚、濃密な物語は、読者の中に思った以上に物語を深く刻んでいきます。影山博人という影の主人公の存在が深く刻まれる物語、読者を酔わせる桜木さんの手腕に改めて感じ入りました。 『影山博人は、いいことも悪いこともすべて詰まった男だ。今まで行ったどの国にも、彼のような男はいなかった』。 “影山の指が六本なのは、より多くの困窮にあえぐ者にチャンスを与えるために余分に備わったのではないか”と〈解説〉の壇蜜さんがおっしゃる通り、この作品には、『六本の指』という象徴的な身体的特徴を持つ影の主人公・影山博人が北国の街で出会う八人の女性の物語が描かれていました。道東の街の独特な仄暗さが物語の雰囲気感を作っていくこの作品。影の主人公・博人に感じる無双感と悲壮感の背中合わせな物語が読者を惹きつけてやまないこの作品。 桜木ワールドここにあり!魅力溢れる物語に、すっかり酔わせていただいた素晴らしい作品でした。

    197
    投稿日: 2023.10.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    霧が立ち込める、寒々しい北の歓楽街。今でこそ人口が減少し寂れてしまったが、炭鉱やパルプ産業で活気があった昭和の北海道を感じさせる小説。 戦後の日本、特に北海道が発展した裏側では、光の当たらない、悲しい出来事が沢山あったのだろう。演歌を通り越して、まさにブルースである。 白黒の寂しい街角を思わせる表紙と、裏表紙の紹介文から、登場人物の設定やストーリーの展開は容易に想像できた。それでも、ついつい、博人の人生に引き込まれ、読み進んでいく。結局、「濡れ場」中心に物事が進んでいく展開は気に食わないのだが、まだまだ謎が多い博人の人間性に迫るために、もう一度読むか、続編も手に取りたい。(漫画の方は後にしようと思う) 桜木さんによる街の描写はとても美しい。グーグルマップのストリートビューで、釧路の写真を何度も確かめながら読んだ。博人が指を捨てた幣舞橋付近の、釧路川の淀んだ黒い色。高台から見下ろす背の低い街並み。気動車が行き交う釧路駅。 釧路を訪れるなら、一気に冷え込み、霧が立ち込める秋口が良いと思う。

    17
    投稿日: 2023.06.11
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    [図書館] 読了:2023/4/14 漫画版よりさらにドライなんだなぁ…。ミトンの話も彼女らのその後も分からんまま。

    2
    投稿日: 2023.04.15
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    生と性への執着と欲望が濃縮されている。 北海道の釧路の下町で、地を這うような暮らしをしていた、影山博人。 6本指、美しい風貌、それを活かし男娼をして生き抜くしかなかった青年期。 彼を巡る女性たちから見た8話の連作短篇集。終始、博人の目線で語られることはないのに、彼の人生を知ることとなる。 暗く、やらせなさに満ちながら、女性たちの振り切った【すれっからし】に逞しさを感じた。 そして、博人の魅力に私も絡めとられてしまったのだ。 魂が叫ぶような生き抜くための『ブルース』  解説は壇蜜。R-18(勝手に!)

    13
    投稿日: 2023.01.29
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    それぞれの過去がある男と女が影山ヒロト と言う町の闇を担う男の幻影に囚われ ながら、その町で生きている。 ヒロトの義理の娘莉奈は、ヒロトを亡くした 事でヒロトの代理を自ら担い町の暗部で 生きる事を選択した。 釧路と言う海辺の町で、ヒロトの幻影に 縋りながらそこから動く事も出来ず 冷たい湿った釧路の海風が莉奈やヒロトを 逃すまいとしている様だ。

    0
    投稿日: 2022.09.21
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    『ラブレス』(新潮文庫、2013)が面白かったので立て続けに同じ著者の小説を読んだ。こちらもなかなか。 影山博人という両手両足の指が6本ある男の人生が、人生のそこここでかかわりのあった数人の女たちの視点を当てながら描かれる。顔がよくてセックスもうまかったみたいだけど、悲しい生い立ちを背負ってダークな仕事に身を染めてという人生は決して魅力的には思えない。北海道内でほぼ話がまとまっているのでスケール感もそんなに大きくない。でも、北海道が舞台というのが効いていると思う。自分にとっては現実離れした奇譚があたかもあり得そうで、ちょっと幻想的な気分を伴いながら読んだ。

    0
    投稿日: 2022.07.10
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    私の期待してた終わり方ではなかったけど、1人の男が年齢を重ねて色んな女性と関わっていくという書き方は好きだった。影山博人さんという1人の人生を見ているのに、視線がその時々の女性たちなのが面白い。ちょっと影がある人がモテるってほんとだよなーと思った。笑 私の中で影山博人という人物像が出来上がりすぎているので、実写化はして欲しくないタイプだ。笑

    0
    投稿日: 2022.05.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    図書館にて。 最近図書館に行った際には必ず1冊桜木さんの本を借りることにしている。 不幸な生い立ちと6本の指を持つ少年の半生記。 そしてその少年とかかわる女たちの物語。 動物的だなと思った。 物事が動いていく時ほとんど何らかの体の交わりがあり、正直少々辟易したが、人間は結局体のつながりが弱点なのではないかと思った。 尊厳や理性は貧しさの前では屈服せざるを得ず、最後に残った体を使い欲望と残酷さを糧に生きていくしかないのか。 そのせいか表題作「ブルース」が個人的にはすごく人間的で、温かみのある物語に感じた。 続編があるらしいことがさっき分かった。 ぜひ読もうと思う。

    0
    投稿日: 2022.05.06
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    まさに“男の美しさ” ゴミ溜めのようなところで育った男が闇の帝王に まで成り上がる、劇画のような世界観 まったくカタギじゃないのに女たちは皆、彼の危険な香りを意識し繋がる姿を想像する 表紙の森山大道先生の写真が雰囲気にぴったり ハマる

    3
    投稿日: 2022.03.05
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    北海道、釧路が舞台。 一度しか行ったことがないため、 地図、写真を眺めながら読んでみる。 時々、出てくる曲を聴きながら 読み進めると当時の釧路の湿っぽい(失礼かな?)雰囲気を感じることができたような気がする。 続編も読もうかな。

    0
    投稿日: 2022.01.23
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    出会った女性、出会った女性に忘れられない感覚だけ残して、次の場所へ消えていく。欲からする行為っていうより、相手に図らずも記憶させてしまう行為。

    0
    投稿日: 2022.01.22
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    わたしやっぱり紫乃さんすきだなぁ。 そしてこの湿度がたまらなく好きだわ。 本棚のすみっこに『桜木紫乃』とあると気持ちが落ち着く。決して人を癒すような物語ではないのに、どうしてかわたしは救われたと思ってしまうんだよ。

    2
    投稿日: 2021.12.15
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    1人の男性を女性からみた視点で次々と繋がっていくストーリー。 北海道での話し。 たばこ、酒、欲望、女、男、雪、夜 桜木さんの本を読むといつもこんなキーワードが出てくる。 頭の中に私の知らない夜の街が次々と浮かんできて読み進めていくのが楽しい。 最後は身体の関係ではなく、心で繋がっていたような関係だったけれど、何も刺されなくても〜!と思ってしまった。ハッピーエンド好きな私は。 でもそれもまた良い終わり方でした。 自分とはあまりにもかけ離れた話のようであるけれど、心がの根底は繋がっている話しであるようでいつも桜木さんの本はすいすいと読めてしまいます。

    3
    投稿日: 2021.11.29
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    昭和の高度経済成長期の北海道を舞台に、貧困の底辺に産まれ、育った彼は、成長と共に、釧路の夜の支配者へ登り詰めていくことに。 彼と関わりのある女性は、どこか芯が強く、母親とは正反対、自身の過剰な指を事故でなくし、もう片手は自ら切り落とし、新たな人生をスタートさせることに。 どこかに闇を抱え、生きていく様は、華やかさの反面、刹那さと儚さに充ちている……

    0
    投稿日: 2021.11.28
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    影山博人と八人の女たちの物語。それぞれの物語が救いようのないくらい暗いけれど、小さな幸せを感じられる。壇蜜さんの解説も素敵。

    0
    投稿日: 2021.11.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「あれこれ考えるなら明日の自分のことにしろ」 影山の言葉。いろいろな過去、影を背負っている男が言うと響く。多くを語らない男が唯一、感情があり、相手のために自分の思いを語る。 「慣れる、人間、血が通っている限りだいたいのことには、慣れるようにできている」 今、現在にも響く言葉だ。 影山と言う男が魅力的だ。影のある男で信じたらよくないと思っても信じてみたくなるような、たまに見せる笑顔がずるい。悪い男だからこそか、彼の優しさか、女の寂しさ悲しさにすぐ気がつき、女の心の器を満たす。感情が薄いようにみえるが誰よりも熱く、読まれたら潰されることを知っているから、表に出さないだけ。感情を見せられない環境にいただけ。敵にするのはこわいけど、最期どういう姿でどう立ち回るか見てみたいと思ってしまう存在。性別関係なく惚れてしまうだろう。

    1
    投稿日: 2021.08.28
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    「男の美しさ」をすべて持っている男。本作のあらすじを簡単に言い表すならば、そんな男の少年時代から命を落とすまでの連作短編集。 彼には生まれつき6本の指があり、愛想はなく、色気がある。その時々に彼にハマった女たちの目線で描かれます。 表紙から想像する雰囲気も、話中で流れる音楽も、何かにつけて昭和の色が濃いなぁと思ったら、テレビのニュースから舞台が昭和であることがわかる。 映像化したらR-18指定になりそうだけど、桜木紫乃の世界はいつもエロティックなのに品があって、薄っぺらさを感じない。なんだかとても哀しくなる。

    0
    投稿日: 2021.07.06
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    作品紹介では影山博人を中心に描かれた印象を受けるが、実際に読むと女性側からその影山、というか男性との関係をそれぞれの価値観や距離、その人がその関係に至るまでの人生過程が程よい描写で描かれている。北海道のなんとも言えない風景が映し出される作品。男性が読むとより女性ってそういう視点を持ち合わせているのかと考えさせられるような印象の文脈も。

    0
    投稿日: 2020.11.22
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    人々の闇の部分、あったかさ、弱さ、いろんな面がみれた。底辺から這いつくばって生きていく主人公。切なくも温かい、どうか幸せに生きてほしい。

    0
    投稿日: 2020.11.18
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    霧がたちこめる釧路で生まれた六本指の男・影山博人。貧しく苛烈な少年時代を経て夜の支配者にのしあがった男は、女たちに何を残したのか。謎の男をめぐる八人の女たちの物語。 とにかく影山の存在感が圧倒的。冷酷で感情がないように見えて、何故か一部の女たちの心を救っていく。そのルーツは母に対する憎しみから生まれたコンプレックスなのか。それとも、一種の罪滅ぼしなのか。

    1
    投稿日: 2019.02.11
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    闇にどんどん引き込まれてしまうような一冊。 性、金、血、ドロドロと渦巻く汚い泥のような生活を、淡々と綴る筆者の描き方が、とっても爽やかで大人の青春というのか、ダークファンタジーのような本。 つい、深入りして、つい、目が離せなくなって、つい、追体験をしそうになる。 あとがきが壇蜜で、私もこの中の女の一人で、、、 っていうあとがきは、なんだかなるほどなぁ。たしかに、なんかわかるかも。と、思ってしまう説得力のある内容で、壇蜜なかなかやるな。と、思ってしまいました。笑笑

    1
    投稿日: 2018.04.07
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    同じ桜木紫乃さんの小説で、似たようなつくりの作品を読んだことがある。 軸にあるのは1人の人物で、主役を変えつつその1人の人物について語るような内容の短編集なのだけど、最後までその人物が語る場面は出てこないから、その人物が実際は何を思っていたのかは分からないまま…という実に謎めいたつくり。 前読んだ作品は女性がその“軸”だったけれど、今回の“軸”は男性。 生まれつき手足の指が6本あり、恵まれない家庭で育った影山博人。彼はとても人の目を惹く容姿をしていて、そして女を抱くのがとてつもなく巧い。 影のある少年だった影山は、男娼を経て、裏社会を牛耳る大物となる。 その影山と関わった女たちが語り部となり(それは過去の話だったり現在の話だったりするのだけど)誰の心にも濃く残る影山とのエピソードを語る。 時系列が行ったり来たりするところも、バラバラな感じで影山という男の雰囲気によく合っている。 桜木紫乃さんの描く北海道のモノクロな感じの描写がとても好き。出てくる女たちが総じて何かしらに困窮しているから、その描写からとても寒々しいものを感じ取れる。 影山はけして彼女たちを見える形で救うわけではないのに、彼に惹かれ彼に焦がれることが、もしかしたら彼女たちを救ってきたのかもしれない。 良い思い出とは言えないのに忘れることが出来ない。それくらい、強烈な魅力のある男なのだと思う。 桜木作品を、私はたまにとても欲する。 それは綺麗すぎない世界なのに、登場人物たちがある種の綺麗さを捨てきれていないせいなのかも。 諦めと祈りに、とても近い。

    1
    投稿日: 2018.02.28
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    いつもの桜木紫乃とはちょっと違う。 桜木紫乃が描く塗れ場は 全く色がなく ラブシーンを書かせたら こんな下手な作家はいないといつも思っていた。だけど ブルースは どの話も色がある。 桜木紫乃が描く話には 男女問わず 好感を持てる人が登場しない。好きになれないから 感情移入できない。それでも読ませるのだから それはそれで相当な腕だといつも思っていた。 だけど 影山博人は魅力的だ。非情だったり 優しかったり そのときどき いろんな顔をみせるけど それこそカメレオンのように どの顔も魅力的だ。 なぜ まちこなんだろう。関係とタイミングで言えば 圭の方が自然な流れじゃない?と思うけど 圭じゃ 博人のそばにいるには 弱くて優しすぎるのか。 まちこは博人に似てるのかな?それにしても ここまで家族になれる?最終話がちょっとゴーインな気はするものの 読後感が良いのも ちょっと今までと違う。 変わらぬものは しぶとく たくましい北のオンナたち。 そして釧路の湿った空気。

    3
    投稿日: 2018.01.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    北海道や釧路を舞台にした、恋愛小説、いや違うな。影のような男に惹かれる女たちの内面を、釧路の重たい曇と湿った空気の中で、淡々と綴ってゆく作品。これは恋愛小説じゃないな、でも何だろう?主人公は、短編それぞれの女性たちだが、長篇としてとらえば、主人公は影山博人、ということになる。この影山、極貧から裏社会をのしあがっていくのだが、しかし、そののしあがるプロセスそのものは、ついぞ語られない。一方で最も印象的なのは、影山が子供の頃住んでいた「下の町」、長屋が並んだ、小さな集落の描写だ。なぜだろう。そこに、彼の原点があり、この小説の源泉があるように感じるから、だろうか。その影山の一生は、ただ、各々の短編で、その断面が切り取られて描かれるのみだ。したがって、影山に感情移入は進まない。もちろん、短編の主人公である女性たち、への感情移入も、ない。そして、物語のスパイスは、裏社会で疲労される暴力。その暴力の描き方は、伊坂幸太郎にも似た、かなりリアルで厳しいもの。辛い。暴力を経験したことがない人間には余計、刺激が強い。自分の弱さを感じる。物語をつらぬく、凄まじい寂寥感。そう、寂寥感という言葉がぴたりとあてはまる。暗さ、重さ、暴力。それらを包む、寂寥感。女性が読んでどう感じるのかも聞いてみたい小説。

    3
    投稿日: 2018.01.05
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    北の大地に生まれた指を6本持つ男の奇妙な物語。バラックで生まれ異常な環境で育った影山博人が、出会う女たちを虜にしていく。各エピソードに出てくる博人だが、毎回時代が違うので、雰囲気もだいぶ違う。あるときは寡黙な青年、あるときはヤクザ、あるときは実業家として現れる。短編をまとめたようなので、物語のリンクが薄く物足りなさもある。1話の冒頭で博人が死ぬことを予告される。最期は意外な形だった。桜木が描く北の大地はいつも悲しい。

    2
    投稿日: 2017.12.22
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    あらすじ(背表紙より) 没落した社長夫人が新聞に見つけた訃報、それはかつて焦がれた六本指の少年のものだった。霧たちこめる釧路で生まれた男が、自らの過剰を切り落とし、夜の支配者へとのしあがる。男の名は影山博人。貧しく苛烈な少年時代を経て成熟していった男は、女たちに何を残したのか―。謎の男をめぐる八人の女たちの物語。

    1
    投稿日: 2017.12.17
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    指が六本あった男を柱とした女たちの物語。そして、舞台は釧路。もうどっぷり桜木さんの世界。ウラルの相羽と霧を思い出す。影山の魅力と道東の空気、女、充分味わえました。

    1
    投稿日: 2017.11.16
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    桜木紫乃『ブルース』文春文庫。 極貧の中から這い上がる影山博人という孤独な男と、彼に溺れる女たちの姿を描いた連作短編集。 霧の立ち込める釧路で極貧の中、六本の指を持って産まれた影山博人。自ら六本目の指を切り落とし、夜の支配者としてのしあがる。物語は影山の人生の外堀しか描いておらず、物足りなさを感じる。こういうテーマを選択したのであれば、もっと泥々したドラマにしても良かったのではないかと思う。 8編の中で『影のない街』だけは『エロスの記憶』に収録された短編であり、既読だった。

    8
    投稿日: 2017.11.11
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    【著者の新境地にして釧路ノワールの傑作、誕生──】貧しさから這い上がり夜の支配者となった男。彼は外道を生きる孤独な男か? 女たちの夢の男か? 謎の男をめぐる八人の女の物語。

    0
    投稿日: 2017.11.01