Reader Store
愚者の毒
愚者の毒
宇佐美まこと/祥伝社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

85件)
3.9
22
35
22
1
1
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    古い時代設定と地方の方言など、読みにくさは否めない。1章から3章まで時代や場面が切り替わり、少しずつ繋がっていく感じが読み取れる。暗いテーマであり酷なシーンも多い。丁寧な描写で意外な展開もあるが、少々長いなと思った。

    11
    投稿日: 2025.11.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    師匠が先日宇佐美さんを読んでおられ、積んであった中から宇佐美さんを選びました。 職安で葉子と希美が出会うところから物語の幕が開く。 2人とも過去に何があることが匂わされるのだが、真実はジワジワと開示されていく。この辺りを読んでいる時は、遠田潤子先生のような感じの本かな?と感じていた。 第一章は葉子目線で、葉子の過去が明らかに。 第二章から舞台が一気に変わり、希美目線で、壮絶な希美の過去が少しずつ明らかになっていく。 宇佐美さんはこういう古い時代の描写がお得意なのかしら?まだ数冊しか読んでいないのでわかりませんが、昭和の時代の重たい描写が非常に巧みで、巧み過ぎて感情移入型の私は苦しくて苦しくて。゚(゚´ω`゚)゚。 愚者の毒。何故愚者の毒なんだろう? 考えますよね。 おびのりさんのレビューを読み直して、読み方が流石だなぁ、、、 考察が深いなぁと感心しました。 それから師匠のレビューを見たら、素晴らしいことが書かれていて。 たまに良いこと書かれていますが、流石師匠!って思いました。 暗くて辛くて疲れる描写が多いですが、宇佐美さんは注目していきたいなって思いました。 三連休ですね(*´꒳`*) 特に予定はありませんがお休みは嬉しいです♪ 先日から何故か鰻が食べたくて仕方ないです。 鰻食べたいなぁ。。。

    98
    投稿日: 2025.09.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    個人的・夏のホラー特集。旅行の供として持って行ったんだけど、ちょっと合わなかった。シチュエーションが違えば印象も違ったんだろうけど…。出だしは面白く読み進めていたんだけど、炭鉱の章が自分には合わず、そこでかなりのトーンダウン。終盤に向けてだいぶ持ち返すんだけど、炭鉱が足を引っ張ってしまい、総合評価もいまひとつ。残念。

    0
    投稿日: 2025.08.19
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    二章からなまりが酷すぎて、何言ってるか分からないし、暗いし、気の毒で、読む気が失せた。 達也の事だけが気になり、無理して最後まで読んだ。 とにかく重くて暗い。好みじゃない

    3
    投稿日: 2025.04.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    タイトルの意味やら伏線回収やら誠に綺麗に収まった 1章〜3章まで全て面白かった 1章と3章で「希美」の印象がらっと変わる 最後の数ページ、本当予想してない展開だったし、「あなたのしたことは正しかった」がすごく刺さる そして個人的には3章と飛行機事故と炭鉱事故の対比にはっとしました 完全初見でレビュー買いしたけれどもとても良かった 確かにテーマはものすごく重いけどもおすすめ 面白かった満足

    3
    投稿日: 2025.04.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    ラストは想像だにしてなくてすごく面白かったけど、とにかく読みづらくて重くて読み進めるのがしんどかった…

    2
    投稿日: 2025.02.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    他の方のレビューから興味を持った作品。 カバーイラストの不穏さがすごい! タイトルの「愚者の毒」は作品の中でひとりの登場人物によって語られるもので、理解するのがちょっと難しい内容だった。 弱い立場にいるもの(愚者)であっても 己の中に何か武器となるもの(毒)を持て、的な感じかなと理解していた。 この人物は作中では善人として描かれていて、 暗く悲惨な宿命をかかえる者たちの中において 唯一の癒しとなる存在。 にもかかわらず、 このことがのちのち与える影響を思うと、 励ましのつもりで言ったことも 受け取る側の捉え方によって変わるものであり、 なんだか皮肉だ。 最後の伏線回収の章は あらかたそうだろうな、と わかっていたことの重複となっていて ドキドキ感はあまりなく、残念。 あれこれ起こった現在の事件よりも 過去の炭鉱爆発や、そこに関わり悲惨な日々を送った人々の描写の方により心をえぐられた。

    26
    投稿日: 2024.12.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    第70回日本推理作家協会賞受賞作とのこと。 この作者の本は初めて読むが、暗い物語だった。 三つの時代にまたがって話が進む。老年となり過去を回顧している2015年、主人公の女性二人が出会った1985年、そして廃坑集落での子供時代の1965年。 後半1/3くらいからは読むスピードが上がったが、それまでは悲惨だった子供時代など暗いトーンで話が進む。それだけ丁寧に書き込んであるということだが、暗く重いので好みは分かれるでしょう。

    1
    投稿日: 2024.10.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    『愚者』『毒』そして表紙のカラス。 薄暗さしか感じない‥‥ しかし、思いがけずなんともほんわかとした第一章。 職安でたまたま出会った二人の女性、葉子と希美。二人はお互いに惹かれ合い親友になっていき、発達障害の疑いのある幼い甥の達也を連れた葉子は住み込みの家政婦の仕事に就く。 この雇い主の理科の教師をしていたという難波先生と達也のやり取りがとても心温まるもので、訳あってここに辿り着いた葉子と達也を取り巻く人たちとのほっこりなお話なのでは?と勘違いしてしまいました。 第二章からのあまりのトーンの違いに、読むスピードがガクンと落ちてしまった私。しかし、ミスリードに気付かされた途端に「は?どういうこと?」と超特急で読み進めました。 賢者と愚者、薬と毒。 どちらに転ぶかはその人次第。 全てが回収されて無駄のない文章。 読み応えたっぷりでした。

    105
    投稿日: 2024.09.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    老人ホームに入った裕福なお婆ちゃんの回顧録 と思って読み進めたら、想像以上の人生だった…。 明らかな悪人はいるのだけど、あの二人はどうなの?悪人…か?でも、遺された側からすると…やはり悪人か。。 些細なボタンの掛け違いで起こってしまった気もする。 けど、当事者によって捉え方は違うから、ラストのああいう行動をしたのも仕方ない気もするし。

    1
    投稿日: 2024.08.25
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    初読みの作者さん。フォローしている方々のレビューに惹かれて買ってみた。 1985年、たまたま上野の職安で出会った葉子と希美。希美の紹介で葉子が深大寺の旧家で住み込みの家政婦として働くことになったのをきっかけに二人が関係を深めていく様が描かれる。 閑静な武蔵野での出来事の間に挟まれる、2015年、伊豆の高級老人ホームで暮らす女性の述懐の中でさらりと語られる単語に物語の不穏さが増し、何は起きたのかを知りたくて頁を繰る手が進んでいく。 中盤以降で明かされる真相は、最後の最後まで予断を許さない、小道具の使い方まで含めて手が込んだ作りで、とても良く出来ていると思った。 ただ、第二章で、昭和の高度成長時代と対比して描かれる、1965年~66年にかけての筑豊の悲惨な生活の描写の濃さが強烈で、ミステリーとしての面白さが霞んでしまった印象も受けたのでした。

    62
    投稿日: 2024.07.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    貧困と犯罪、過去と現在 重いテーマであるため、終始暗澹とした気持ちになりました。 物語の大筋は序盤から何となく察することはできるのですが、ラストは衝撃でした。そしてタイトルの意味の回収。 圧倒的な闇の中にも僅かな明かりが灯る この明かりが、誰かの救いになっていればという希望が僅かながらに残る読後が、不快さだけの読後感にならずに済んでいる所以なんだろう

    12
    投稿日: 2024.06.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    こちらでの評価が高いのも納得の作品。現代と過去の苦しい貧しい時代が交互に出ており、過去の壮絶で凄惨な時代を生き抜く2人の若者に苦しくなる。最後まで読めば2人は幸せになれるのかと読み続けるが、最後は人生の帳尻合わせが待っている。 伏線回収もされ、読み応えある作品だった。

    11
    投稿日: 2024.05.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

     タイトルの意味、構成内容がとても深く、心をえぐられる日本推理作家協会賞受賞作品でした。  貧困と犯罪、社会の二極化を扱い、現在パートと過去パートを交互に描く作品は他にもあった気がします。けれども本作は、社会時事を取り込みながら、犯罪ミステリー・社会派寄りのヒューマンドラマとして、絶妙のバランス加減だと感じました。  「私」という一人称展開で、「私」が誰なのかミスリードに混乱するなど、多くの伏線の張り巡らせ方と回収法も見事ですし、重いけれども先の見えない展開にも引き込まれました。  3部構成で時代・場所が変遷し、各章題『武蔵野陰影』『筑豊挽歌』『伊豆溟海』も秀逸です。  宇佐美さんは、貧困と飢餓、そしてそれ以上の絶望を読み手に突き付けます。社会への怒りさえ感じます。人の心に潜む暗い情念、負の側面、心の暗部を巧みに浮き彫りにしながら、読み手を激しく動揺させ、物語へ感情移入させてくれました。  タイトルでもあり、終末の「愚者の毒」の解釈は人それぞれでしょうが、著者は哀しく弱い立場の者、他から愚かに見える(そうならざるを得なかった)人たちへ救済の光を当てたのだと思います。「愚者の毒」をもってして、"裁き"ではなく"安寧"を与えたのでしょう。  愚者も毒も二面性があり、賢者と愚者、薬と毒の境界は曖昧です。でも、個人的に愚直な人や行為は好きです。そうなれない自分をさて置き、応援したくなりますもん‥。

    80
    投稿日: 2024.03.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ちょっとした出来事で知り合った二人の女性が友情を育んでいく。 早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくのか気になって一気に読んだ。後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。 これが大変つらい。読んでいて胸が締め付けられる。 少年少女はただ一生懸命生きてきた。暗い過去に追いかけられながら、それでも一生懸命生きてきただけだ。 最後、穏やかだったのだろうか・・・もっと幸せを感じてほしい一生だったと願わずにはいられない。

    0
    投稿日: 2023.11.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    この世は良い行いが報われる因果応報であると信じたいです。 「無償の愛とか、母性とか、曖昧でとらえどころのないものは恐怖でしかない」 「他人の見解に便乗して賢者になるくらいなら、むしろ自力だけに頼る愚者であるほうがましだ」

    13
    投稿日: 2023.10.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    幼少期は大分の炭鉱で苦労して〜ってよくある話で引っ張って、ラストもなんか無理くりで、作者が結局、何を書きたかったのかあまりよくわからなかった。どうせなら達也視点も入れ込めばもう一捻りできたのかも。

    1
    投稿日: 2023.07.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    っちゅうわけで、みんみん&おびーの腐女子え女子?コンビおすすめの『愚者の毒』です(また余計なこと言う) 毎回言ってますが、相変わらず驚愕の抽斗の多さですね しかも開け方が的確 今野敏さんなんかもめちゃくちゃ抽斗多いですけど「そこ開けなくていいのに」(また余計なこと言う) よっけいな〜ものなど〜なっいっよね〜♪ (遂に余計こと歌い出す) えー、どうしよ 方言について語るかタイトル『愚者の毒』について語るか うーん、ここは飛鳥に敬意を表して愚者の方で!(はい余計) いろんな説明すっ飛ばして先生が達也に言ったセリフね 「『命を奪う毒と命を救う薬との違いはほんのわずかである』ってね。人が普段気にとめもしない両性類、バクテリア、昆虫、植物、爬虫類なんかが護身用に身に付けた毒素が、人間を救う夢の薬に生まれ変わるんですよ。素晴らしいでしょう?小さいから役に立たないなんて思ってはいけません。この世に存在するすべてのものは意味を持って生まれてきてるんですからね」 「身の内に毒をお持ちなさい。中途半端な賢者にならないで。自分の考えに従って生きる愚者こそ、その毒を有用なものに転じることができるのです。まさに愚者の毒ですよ」 で、ラストです 達也が持っている知識や技術(毒)を、先生の言いつけを守って有用なもの(薬)に転じたわけですよね だから彼は最後に「愚者の毒」と言ったわけです 誰にとって有用だったのか?もちろん薬を飲む人にとってです、普通の人にとっては毒だけどその人にとっては薬(救い)だったのではないでしようか そしてもっと言えばその毒は達也の手から渡されなければ薬になり得なかったのではないか だから最後に彼は現れたのではないか そして物語はこんなことを問うているんではないでしょうか 果たして勇次と希美は中途半端な賢者だったのか、それとも身の内に毒を持った愚者だったのか そしてあなたは?

    50
    投稿日: 2023.07.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    現在と過去のパートが交互にでてきて、徐々に過去に起きた事件の真実がわかってくるパターンの話。 過去パートの話がとても興味深く、自分の父親と主人公の年齢が近かったこともあり,最近までこんなに大変な時代があったのかと。炭鉱の話は本当に驚きの連続でした。 過去の出来事も4転5転もして,驚きの連続で,ほろっとさせられる部分もあり、最後は綺麗に収まり,いうことなしでした。 このかたは、女性の一代記とミステリーを絡めた作品が本当に素晴らしいです。

    1
    投稿日: 2023.06.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    あっぱれです。 現代と過去ともっと過去を行き来する物語だが、伏線の回収、微妙な差異、流される違和感、それらがうまく繋がっている。 切なくもあり、怖くもある。 どこで誰が道を間違ったのか、これも全部運命なのか。 非常に良くできたストーリーでした。 是非とも実写化してほしい。 ただ、炭鉱のところの方言が読みにくかったです。 それ以外は読みやすく、登場人物の微妙な感情など、とてもうまく綺麗に表現されていました。 本当にあっぱれ。

    3
    投稿日: 2023.05.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2015年夏、一人の女性が介護付老人ホームを終の住処と選び、そこで過去と向かい合う。彼女が向かい合う過去と現在を交錯させながら、犯してきた罪が語られていく。 一章では、語り部を前触れなく変えてくるので、女性が誰であるのか、混乱して作者の思惑にはまる。 貧困から逃げる為、罪を犯す。罪を隠すために嘘を重ねる。嘘を貫く為に、再び罪を犯す。彼女はただ一人の友人であるはずの女性さえ、嘘の道具としてしまった。 1960年代の廃坑集落の社会問題を底に扱い社会派小説として、罪を重ねる犯罪小説として、ヒューマンドラマとして楽しめる作品でした。 養子に出した、幼児期精神的ストレスから失語症となっていた少年・達也が、成長して生物研究者となり名前を変えて、女性の前に現れる。彼が、自分の犯した罪を「愚者の毒」と表現する。作者が、タイトルにもしたこの意味合いをかなり考えたのだけど、決定打を思いつかなかった。 「愚者の毒」はヒ素の異名らしい。ヒ素を使うとすぐにバレてしまうから。達也がカラスを可愛がっていた事があるところから、トリックに使って身元をわからせる様にかなあー?単純に、少年期に蓄積された毒の放出の比喩かなー?毒の中でも筑豊の鉱山がらみで、ヒ素の表現と愚者を兼ねて?面白かったからまあいいか。

    55
    投稿日: 2023.04.18
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    面白かったです! 貧しく地獄のような場所から逃げる為に父親を殺した少年と少女が過去を捨て、ひっそりと都会に紛れ 何も望まず人生の共犯者となる。 そんな二人がまるで過去からの亡霊が近づくかのように、じわじわと追い詰められていく。 え?白夜行みたい? 似てますね…途中で気づきましたd( ̄  ̄) 白夜行はとても面白く読みましたが主人公に共感は できなかった。 こちら共感しまくりで逃げのびろ!と息がキレそうでした。 この作品は暗いし辛いしで読むのに二日かかってしまったんですが素晴らしい! ストーリー、構成、主人公達、関わる人々、ラストまでの展開、結末。 全てがわたし好みの作品でした♪ 宇佐美まことさん要チェック中です\(//∇//)

    38
    投稿日: 2023.04.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    入れ代わりに気がつき、それが確信となってからが面白かった。 竹丈や希美の父、加藤のおぞましさ、邪悪さが物語を加速させていた。 品よく笑い返してあげた。  この人は、本当の貧しさがどんなものか知らないだろう。(略)生き抜くために恐ろしい決断をすること、心の底から絶望することがどんなことか―。 このくだりが、素晴らしいと思った。

    2
    投稿日: 2023.03.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    途中で展開は読めたものの視点と時代がテンポよく交錯して進む話が面白かった。昭和の不便さを上手く利用した人生の切り開き方は決して褒められるものではないけれど。

    1
    投稿日: 2023.02.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    宇佐美まことさん 「羊は安らかに草を喰み」を読み、ファンになりました。3冊目です。 社会の底辺を生きる人達の想像を絶する暮らし 貧しさゆえに罪を犯し、その罪のために幸せになることをみずから禁じる姿に心が痛みます。 ユキオの義父となる先生の優しさに救われました。

    2
    投稿日: 2023.02.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    3つの時代が進行しつつ謎が明らかに。1965年の話は顔が歪むほどの嫌悪感でそれを引き摺りながら進む。この不気味な表紙と毒々しいタイトルにひかれて。読後もう一度表紙を眺めたら不気味さが増していた。お話はテンポよく途中で展開が読めてきたけれどそれでも最後まで夢中で読んだ。

    3
    投稿日: 2023.01.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読みたかった本。 とてもよかった! 第1章の最後に、え?!っという展開に! 驚いた。 筑豊廃坑集落での地獄のような暮らしは、悲惨で壮絶で読むだけで辛い。実際に大なり小なりあった話なんだろうなと、思った。 「身の内に毒をお持ちなさい。中途半端な賢者にならないで。自分の考えに従って生きる愚者こそ、その毒を有用なものに転じることができるのです。まさに愚者の毒ですよ」と、達也は難波先生から聞く。 達也がしたことがこの言葉によってだとしたら悲しいな。もっと別の解釈をして、二人には一切関わらないで生きていって欲しかったなぁ。

    3
    投稿日: 2023.01.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    初めて読む作家さんですが、かなり面白かったです。 日本の現代ミステリーで面白いのは大抵読んでしまったかと思っていた自分が恥ずかしい。 まだまだですね、これからも貪欲に良作を探していきたいと考え直しました。 1980年代、葉子は深大寺の難波家で住み込みの家政婦として、甥の達也と共に暮らしていた。 妹夫婦が借金苦の末に心中をはかり、生き残った達也を引き取らざるを得なかったためであった。 両親の心中を機に言葉を発しなくなった5才の甥の他、妹夫婦は多重債務による借金も葉子に残していた。 途方に暮れた葉子は、職安で生年月日が全く同じ希美と出会う。 2人次第に心を通わせるようになり、葉子は希美の紹介で難波家の家政婦という職を得る。 難波家には、かつて教職にあった主とその息子のユキオが暮らしていた。 葉子は深大寺で暮らすうち、ユキオに惹かれていく。 時は過ぎ、60代となった葉子は伊豆にある高級老人ホームに入居していた。 大腿骨に難病を発症し、夫のユキオには迷惑をかけずに暮らすためだ。 ここで静かに暮らしながら、葉子はかつて深大寺で起きた様々な出来事や、自分の生い立ちを思い返すー。 3つの章から成る本作は、葉子または希美の一人称で語られます。 第2章まで読み進めると、読者は1章で既に作者にまんまと騙されていたことに気付きます。 ここからもう一気読み。 驚かされる仕掛けは他にもいくつかありますが、これが本当に痛快。ミステリーを読む楽しさを思い出させてくれました。 さすがに最後に用意されていたサプライズには早い段階で気付きましたが、それでも十分に楽しめました。 とは言え、逃げ場のない苦しさに満ちた作品であるのも事実。 高度経済成長期の日本でこんな暮らしをしていた人達がいたなんて。知らなかった分、余計にずしりと響くものがありました。 また本作内で唯一、その胸中が誰の口からも語られることがなかった達也の気持ちを思うと、フィクションであると分かっていてもやりきれなくなりました。 良い作品に出会えました。 大満足です。 2020年60冊目。

    4
    投稿日: 2022.09.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    情けなさ、惨めさという自分を嫌う感情が静かに刺さるのが印象に残った。ミステリーとしては謎解きというよりも上手くできすぎという感じも否めない。

    1
    投稿日: 2022.08.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    全てが上手く繋がっているのだが、その事が逆に出来過ぎ感を感じてしまい、ミステリーとしてはちょっと評価が落ちた。 三井三池炭鉱は今は世界遺産との事なので、機会があれば訪れてみよう。

    1
    投稿日: 2022.06.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    話も登場人物も暗くて暗くて…陰気で… 最後、全てが繋がるのは気持ち良かったけど 結局、悪人たちは長生きして納得できない。 確かに辛く苦しい生い立ちだったけど やっていいこと悪いことの判断ができずにずっと言い訳や人のせいばかりしていて 私は二人の主人公に感情移入は出来なかった。 だけど、航空機事故はずっとクローズアップされるのに炭鉱事故はみんなが忘れ去っていて それに対する憤りはわかるような気がした。

    4
    投稿日: 2022.03.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2022.03.21 同じ読書の趣味を持つ同僚(ソウルメイト)から借りた小説。 暗い話ぽいなぁ…と思いつつ読むのを止められず3時間半ほどで一気読みしてしまった。さすがソウルメイトのおすすめ。間違いがなかった。 とにかく暗い。主な登場人物の人生全部暗い。 ハコの達也への複雑な思いが絡み合う第1部は切ない。最後のアコチャン!のところは涙が出そうになるほど。 序盤はハコがこの物語の主人公だと思わされていて、二部からガラッと立場が逆転するのもうまい。二部はもう、本当に救いがない。早く逃げて!殺して!と思いながら読んだ。 そういうことだったのか!と真相が徐々に明らかになっていき、全てが繋がるのが気持ち良い。 最後に難波先生の言っていた言葉、マス婆の言葉とともに伏線が全部うまく回収されたのが本当にうまいなぁと感心した。 難波先生は全てわかっていて、ユキオを哀しい人と言ったのがまた切ない。 ハッキリとは書かれていなかったけど、達也が引き取った商社マンの妻はきっと律子なんだろうと思う。

    0
    投稿日: 2022.03.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    宇佐美まこと6冊め。 3章構成で、第1章の武蔵野編がとっても素晴らしい。 先生の雰囲気がすごくいい。ちょっと「博士の愛した数式」っぽい感じ。 1章のラスト、カラスがしゃべるところとか涙出てくる。すごく切ない。 ガラッと変わる第2章の筑豊編。 ここはもう悲惨とした書きようがない。 そこで生活するしかない子どもは、とにかく可哀想。 運命共同体の二人。なんとなく「白夜行」と重なる。 そして、第3章は、答え合わせの章。 ご丁寧に解説付きで解答を教えてくれるような、そんな内容。 宇佐美まことさん、6冊めなんだけれど、 最初や途中の勢いが、最後に強引にまとめちゃうところが、 もったいない気がするなぁ・・・ あとものすごく残念なのが、表紙の絵。 なんだかなぁ。内容知らなかったら、絶対に手に取らないと思う。

    0
    投稿日: 2022.03.02
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    現在の章、昔の章があって、誰がどれだー?と思いながら読んだ。 昔の章は、難しくて途中あきてきてしまったけど、全部繋がった時はおもろしかった。 表紙がなかなか難しそうな絵とタイトルで、実際に購入するまで何度も見送り。 最後、もうこのまま何もなく終わるかなぁって思ってたら、そういえば達也がいたーってなった。

    0
    投稿日: 2022.02.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    圧倒されました。すごい小説です。九州の炭鉱。あんな壮絶な世界があるのでしょうか。のほほんと生きてきた身には想像もできない日常です。しかも子供たちが生活する場なのに。平等な世界、公平な社会などこの世にはなく、夢のまた夢なのですね。幼い達也くんと先生や由紀夫さんがふれあう武蔵野の場面だけは天国のようでした。最近暗い本しか読んでいないので気分転換したい感じです。

    5
    投稿日: 2021.12.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    身勝手な妹夫婦の負債を背負わされ、孤児となった口のきけない甥の達也と二人途方に暮れていた1985年、上野の職安で出会った希美と葉子。同じ生年月日だった事が縁で友情を深めていく。 希美の紹介で家政婦として住み込み働く葉子。 元教師の難波先生と、息子の由起夫との穏やかな生活の中で、いつしか由起夫にひかれて行く葉子。 美人で頭が良く都会的な希美だが、人には言えない壮絶な過去があった。 全ての始まりは1965年筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった。 余生を老人ホームで過ごす葉子。その傍らには夫の由紀夫がいた。 難波先生の不審死をきっかけに過去の因縁が襲いかかる。 現在と、それぞれの過去が交互に書かれており、希美の過去では苦しくて読む手を止め、でも続きが気になり読み進め、ラストに近づくにつれて伏線回収が凄すぎて、このまま読み終えるのが勿体なくなり数日空けてはチビチヒ読み進め、読み終えて一週間引きずりようやくレビューにたどり着いた。 早く読みたいのに、読み終えなくない!!そんな一冊にまた出会ってしまった。 途中、「百夜行」や、「Nのために」がよぎった。 共通しているのは、逃げ場のない悪環境の中で生まれた罪。そして罪の共有。 読み終えてから表紙のイラストを改めて見ると二人の表情や輪郭がよりはっきり見え驚いた。

    32
    投稿日: 2021.12.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    現在と回想を行き来する構成なので、もっと疾走感が欲しかった。中々難度の高い方言が使われるし、読み進めづらい作品。

    1
    投稿日: 2021.11.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    松本清張や東野圭吾作品を思い出すようなテーマだった。宇佐美まこと作品は、単にミステリーではなく、歴史に埋もれた哀しい事実を知るきっかけともなる。

    7
    投稿日: 2021.11.04
  • 繰り返し読みたいミステリー小説です。

    後から後から出てくる真実、驚愕のストーリー展開でした。最後まで読みきった後、事実を全て知ったうえて、それらをかみしめながら、もう一度最初から読みたいと思ったミステリー小説は初めてでした。

    0
    投稿日: 2021.08.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    終盤からはページを捲る手が止まらなかった。 物語が終わってしまう事が残念だった。 香り立つような美しい情景、色を感じない過酷な時代背景、抉るような心理描写、どれもこれも光と闇に満ち溢れていた。 正しい事を言えるのは、望まれている身においているからだと思う。 未来には絶望しかない状況で、その日生きる事で精一杯の者を誰が責められるだろう。 傍から、そんな事はいけないと言うのは簡単。 もっとつらい人がいると言うのは簡単。 言うだけなら簡単。 実際に手を差し伸べ、援助し、生きる道をお膳立てしてあげられなければ、全ては偽善に満ちた正論に過ぎないのだと思う。 正論など、時にはなんの足しにもならない。 大好きな一冊にまた出会えて嬉しく思う。

    7
    投稿日: 2021.08.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!

    0
    投稿日: 2021.08.03
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    超高級老人ホームで余生を過ごす葉子の現在と過去の回想を織り交ぜながら綴られる物語。 伏線の張り方が上手い。 物語序盤で、これは伏線になりそう、と思った所がじんわり回収された時には「なるほど!」と、更に続きが気になり、久々に物語に入り込めた作品。 伏線の回収の仕方が一気にではなく、じんわりじわじわとなのが凄く良かった。 主要登場人物達が不器用ながらにも優しく暖かく、血の通った作品だなと感じました。 そしてカラスが可愛く感じるようになります笑 ブクログの「あなたと読書傾向の似た人が高評価をつけた作品」で見かけ、気になって読んでみたのですが大正解でした! ブクログが無ければおそらく存在も知ることもなかったでしょう。 ブクログに感謝!

    4
    投稿日: 2021.07.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    面白かった。 現在と過去とがいったりきたり、希美(きみ)と葉子(はこ)、達也、ユキオ、悲しく、重い過去をずっと背負ったままの人生って、苦しいだろうなぁ。 久々に先が知りたくてあっという間に読了。

    1
    投稿日: 2021.06.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2021.05.22.読了。 あー、いい作品だった。 途中からは読み進めたくなくなった。あまりに引き込まれるのでこの作品を読み終えてしまうのが惜しくて淋しくて。 そんな偶然!と思える場面もある。でも、良い作品好みの作品というのはそういう事もひっくるめて納得できるものなんだよなー。 こういう小説を読むと、作家って凄いなぁって改めて思う。どこからこんなストーリーが降りてくるんだろう?!わたしは作家にはなれないけど、読者になれてよかった。これから先も読書続けようと。 いい作品に出会うと幸せだもの。 ただただオススメの逸品。

    1
    投稿日: 2021.05.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    持ち歩きながら少しずつ読み進めたけど、不思議と場所、気分を選ばすいつでも読めた。現在と過去の展開も程よい切り替えで面白かった。宇佐美さんのは2作目、他の作品も読んでみたい。 余計なお世話だけど、表紙もうちょっとどうにかならなかったのか。

    3
    投稿日: 2021.04.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    面白い、どんどん読み進んだ。犯罪と時代背景が 納得させられる。近い時代を生きた者には、高度成長期の人間の貧困や格差が、沁みる。

    0
    投稿日: 2021.03.30
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    作品レビューに惹かれて読んだ。確かに、東野圭吾の『白夜行』『幻夜』を思わせる内容だが、全体にもっとコンパクトで、分かり易い、というか、葉子が武蔵野の家に移り、ユキオが出てきたあたりから、大体の筋や先が読めてしまう。 しかし、豊かで時に容赦ない描写が、武蔵野の森の美しさや、筑豊の廃炭坑の貧窮を浮かび上がらせ、まるで手を引かれるように、読了まで持っていかれる。 3部仕立てのなかで、65年、85年、2015年と時代を行き来する場面も、転換がうまく、読み易さを感じた。 自罰的で幸せを拒む男女に、サイコパスが執拗に迫り、更に新たな獲物を手にしようとする……という設定は、あまり新しい感覚はないが、優れた筆致で、読み手の心を深く抉り、忘れ難い痛みを残した。 汚いもの、おぞましいものを率直に描く姿勢は見事。 他の作品も読んでみたい。

    0
    投稿日: 2021.03.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    前向きに生きようとする裏に潜む深い闇を、時代の流れを見せながら、展開する罪と転落のミステリー。炭鉱の世界は全く知らなかったが、辛く厳しいところからまさに命懸けで脱出するところは読み進めるのが辛いくらいだった。タイトルとしたキーワードはちょっとわからないまま。

    0
    投稿日: 2021.03.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    宇佐美さんの本はとっても読みやすくてわかりやすく面白い。 主人公だと思ってた人が実は違ったという面白い展開と炭鉱の町の暗く重苦しい雰囲気にグイグイ引き込まれる。 でも、地元の私でも同じ県内だけど方言がきつすぎて意味が分からない所があり、これ他県の人が呼んだらちんぷんかんぷんじゃないのか? 色々な作家の方が、福岡の炭鉱の街を舞台とした本を描いていて、どの作品もとても興味深く面白かった。 炭鉱の町の栄枯盛衰 日本の戦後復興と高度成長をを支えた貴重な歴史として伝え残して行くべき歴史だと思います。l

    6
    投稿日: 2021.02.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    第70回日本推理作家協会賞受賞作。 面白かったです。 表紙の絵の中学生男女二人の絵がアナログなかんじで、暗い色調なので、なかなか手に取る気になれなかったのですが、読み始めたら一気読みでした。 2015年の夏、病気で伊豆半島下田にある超高級老人ホームで暮らす、難波葉子が夫の難波由起夫との間に起きたことを少しずつ語り始めます。 1985年春36歳の香川葉子は職業安定所で生年月日がまったく同じ女性石川希美(きみ)と出会います。 葉子には借金を苦にして心中した妹夫婦の子どもで甥の達也4歳がいます。達也には障害があり喋ることができません。 希美は葉子に家政婦の仕事を紹介してくれます。二人の女性の間には友情が生まれます。 葉子が働き始めた難波家には先生と呼ばれる主人の寛和と妻の佳代子の先夫との間の長男の由起夫がいます。 由起夫は達也を非常に可愛がってくれ、葉子は由起夫に「達也の父親になってくれませんか」と身分不相応なことを口走ってしまいます。 そんなある日寛和が不審死を遂げてしまいます。 そして葉子は難波家の弁護士の加藤に達也は血の繋がりよりも、両親の揃った家庭に養子に出すべきだといわれ悩みだします。 そんな時、加藤と加藤の秘書だった希美の乗った車が車の転落事故を起こし二人は落命します。 そして物語の舞台は1965年の筑豊地方へ。 これ以上先を書くと全部ネタバレになるので書きません。 私は松本清張の『砂の器』のような話なのかと思いましたが、文庫解説の杉江松恋さんは小池真理子さんの『恋』を挙げられています。 以上のレビューではどういう話なのかみえないかもしれませんが、勘の良い方ならわかってしまうかもしれません。 第二章以降は昭和の高度成長期、バブル期などを経て2015年夏まで語られていきますが、全体に伏線が張り巡らされた非常に面白い犯罪小説であることは間違いありません。

    58
    投稿日: 2021.02.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ホラー作家として評価されている(解説によれば)著者。安定感のある文体と早く先を知りたくなるストーリー構成が素晴らしい。特に主人公のルーツである1966年の筑豊の廃坑集落での凄まじい貧困と暴力の日々は、とても同じ日本とは思えないほどで鳥肌が立つような迫力の描写。作者の力量がよくわかる。 全くのノーマークだったけど、遠田潤子にも通じる純日本的な因縁ミステリーとして出色の作品。4.3

    0
    投稿日: 2020.07.16
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    悪い女が出てくる話は好きなのだが 宮部みゆきさんの火車や東野圭吾さんの白夜行に比べるとパンチが弱いですね。 後半に向けて、悪さが加速するのが私好みなので。 途中から渡部さんの登場が多いので、何となく達也なんだろうなとは想像できました。

    3
    投稿日: 2020.03.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    友情の裏に隠された衝撃の過去が明かされるミステリー。 第一章 武蔵野陰影 第二章 筑豊挽歌 第三章 伊豆溟海 職安で出会った葉子と希美。 葉子は、借金まみれの末、心中した妹の子・達也を引き取り、借金取りに追われながらの生活。 希美から紹介されて住み込みの家政婦として難波家にやってくる。 難波家の当主と触れ合うことで変わっていく達也、そして当主の息子・由起夫に恋心を寄せる葉子。 しかし彼女に救いの手を差し伸べた希美と由紀夫との只ならぬ空気を感じた葉子は戸惑う。 当主の死によって、由起夫と希美の筑豊での暗い過去の端緒が現れ、罪を背負って生きてきた者と、支配する者の悲惨な人生が詳らかにされる。 なかなか珠玉の作品。 初めて読んだ作家さんでしたが、伏線の回収もばっちりで、すべての点が一つにつながる気持ち良さ。 他も読んでみようと思います。

    1
    投稿日: 2020.03.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    これは傑作だ。20年区切りの時間軸と、筑豊・東京・伊豆という場所軸を、行きつ戻りつしながらミステリー部分と人物描写部分、更に時代背景も浮き彫りにし、時には細やかな時には大胆な筆致で、全体通して非常に丁寧な人間ドラマを構築している。こういう本があるから読書はやめられないとつくづく実感できる。

    5
    投稿日: 2020.02.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    先生以外すべての主要な登場人物が直接的間接的に殺人に関わっている。読者の予想をどんどん覆す後半は、面白かったが、重いイベントをこれでもかと盛り込みすぎの感想を持った。自分には合わないと思った。同じ泥臭さを出す場合にも、読後感がもう少し軽いのが自分には合うと思った。

    0
    投稿日: 2020.02.12
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    1985年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。 しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。 全ての始まりは1965年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。 絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは? 読み友さんが「心を鷲掴みにされた!」というオススメ作品♪ ほぉ〜ぅ……なんとも骨太な感じ! 終盤「そんなに上手くいくか〜?」って思わなくもなかったけど、廃坑集落の想像を絶する貧困さや、他人を踏み躙る人間のおぞましさなどに言及する筆致が容赦無く、心を揺さぶられる作品でした〜!!

    0
    投稿日: 2020.01.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    1985年、上野の職安で出会った葉子と希美は、互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が2人に襲いかかる。 2017年日本推理作家協会賞受賞作。時代背景を織り込んだ重厚な構成の佳作だった。「あの人物がこの人物か!」という意外性もあった一方で、ここは伏線かなと思ったらやっぱり、というところもあった。リアリティに欠けるという評価もあるかもしれないけれど、そこは小説だから…。 (B)

    0
    投稿日: 2019.12.15
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    話に引き込まれるし、ミステリーとしても良かったです。良かったんですけど過去の話を読み進めるのが辛かった。辛すぎました。理不尽なことへのやりきれなさ、無力感を抱くのも偽善のように感じるし、彼等に比べて私が不満を持つなんて許されないとまで思いました。 それだけ伝える力のある小説ということです。 良い作品ですが私には辛すぎるので星ひとつ減らしました。 ごめんなさい。

    0
    投稿日: 2019.12.11
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    めちゃくちゃ重いです。全体的にネタバレにつながるので言いづらいのですが、これまた貧困が絡んできます。人生お金が全てではありませんが、必要最低限のお金が無いというのは、心を削るし人生そのものを破壊します。 高度経済成長期の日本の好景気から見放され生きていくのが精いっぱいの人々。障害を持つ子供を抱えて就職もままならない人。何故自分は自分なのか。自分はあの人でなかったのは何故なのか・・・。罪から逃れる為に罪を重ね、心の牢獄に閉じ込められた2人の回想はとても重苦しいです。 前半も重いは重いのですが、太っちょの優しい先生のおかげでとっても雰囲気が良くて、意外と読んでいてほんわかした気分になったりしました。それだけに中盤以降の重苦しさが非常に辛かったです。 砂の器を彷彿とさせる話でありましたが、むしろ僕はこっちの方がぐっときました。

    1
    投稿日: 2019.12.05
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2015年の高級老人ホームの老女。1985年の職安が縁で知り合った生年月日が同じ二人の女性。最初はミステリの伏線を探すように読んでいました。でも二章の1965年の廃鉱部落の話になると、炭鉱事故の被害者や家族の悲惨さに、生きるための逞しさと悲しさに、胸が潰れる思いで読み進めました。後半、すごい勢いで物語が組みあがっていき、多少想像がつく部分はあったものの、構成の上手さに舌を巻きました。人生は最期に帳尻が合うものでしょうか。最期にあったのは救いでしょうか。久しぶりにすごい骨太のミステリを読んだ気がします。

    0
    投稿日: 2019.06.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    5歳の言葉を話さなくなってしまった子どもを抱えて 葉子は職探しをする。ハローワークで知り合ったのは同じ誕生日の希美。 希実が葉子に仕事を紹介したところから、 2人の過去と今と未来が動く、と言うお話。 1章で暗くて辛くて なんとか生きてほしいと思いながら読んだが、 2章ではさらに辛くて 沼にはまっていくようだった。 全く別のものに着替えても 自分は自分でしかない。 それ以上でも以下でもなく 自分のしたことが消えることもないのだ。 終盤は伏線が綺麗に回収されて納まるが、 難波先生の言葉がこんな形で発揮されるなんて。 それは残念でならない。 ノンとユウに終わらせてほしかった。

    0
    投稿日: 2018.12.18
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    暗い話で読んでて辛かった。設定はありがちかなー。 ミステリー的には面白かったけど、だれにも共感できず、、、。って感じです。

    0
    投稿日: 2018.11.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ちょっしたことで知り合い、友情を深めていく二人の女性。 早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくの気になって一気読み必至。 後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。 これが大変つらい。読んでいて胸が締め付けられる。 少年少女はただ一生懸命生きてきた。暗い過去に追いかけられながら、それでも一生懸命生きてきただけだ。 最後、穏やかだったのだろうか・・・もっと幸せを感じてほしい一生だったと願わずにはいられない。 宇佐美さんの本は初めてだったが、また次の作品も読みたい

    0
    投稿日: 2018.08.28
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    すごい読み応え! ストーリーも重厚なうえ ミステリーとしても完璧。 まさかの展開に何度も驚かされた。 なんにも悪くない むしろ誠実に生きている主人公達が 犯罪を犯しつつ生き延びていく様は もどかしくも切なかった。

    0
    投稿日: 2018.06.23
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    過去と現在を行き来しながら物語は進む。序盤は思わせぶりでまどろっこしい語り口に辟易したが、第一章の終幕から雲行きが一変し、三池炭鉱事故の史実に基づく第二章は非常に気が重くなった。最終章では全ての謎が綺麗に解けるが、この真相がまた重苦しく、折角見つけた光を己の手で葬ってしまった二人の罪悪感は筆舌に尽くしがたい。途中で筋書きは読めてしまうものの、最後の一行が終わると同時に流れるエンドロールが目に浮かぶ映画的な作品でもあった。哀しい物語だが、葉子と達也の紡がれなかった絆は何とも美しい。当然「白夜行」は連想した。

    1
    投稿日: 2018.06.20
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    壮絶な過去を持った葉子と希美が職安でひょんな事から知り合う。同じ匂いがする二人はお互いの存在で荒んだ心に必要な存在となって行く。希美の紹介で難波家の家政婦として葉子は亡くなった妹の子達也と住み込みで働くようになる。1965年の過去から1985年の葉子と希美の出会い…そして、現在…物語が明らかになるにつれて、それが繋がってくるとどんどん話に引き込まれた。

    0
    投稿日: 2018.05.17
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    4月-10。3.5点。 暗い過去を持つ女性。しゃべれない甥っ子と金持ちの住み込み家政婦に。 場面変わり、悲惨な炭鉱労働者一家。逃亡する男女。 面白い。ラストもおー、そー来たかっと言う感じ。 炭鉱労働者一家の悲惨さが、際立っていた。

    0
    投稿日: 2018.04.20
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ふとしたきっかけから出会った二人の女性。 外観も内面も全く違う二人だが、いつしか親友同士へと。 望美から紹介され、ある一家の家政婦として住み込みで働きはじめる葉子。 『入らずの森』から読み始め、これで3冊目となる宇佐美作品。 本書が一番好みだな。 炭鉱町での貧困生活、そこからの犯罪、と重々しい雰囲気なのですが、登場人物たちがどこでどう繋がるのかが気になり一気読み。 ラストはやはり切なかったけれど、どこか吹っ切れた気持ちにもなり、爽やかな感じも。

    1
    投稿日: 2018.03.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。 職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。 不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降はキツイ、本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅう、山崎ハコの『織江の唄』が頭の中を流れ、読後に同じ筑豊炭鉱が舞台の『青春の門』の主題歌だったと気づく。内容はまるで違うのに、どん底感が一緒。 たいがいヘヴィー(で好き)だった『雪の鉄樹』を上回るヘヴィーさ。誰が誰なのかは予想がついたからその点に驚きはないけれど、綿々と続く過去の描写がつらすぎて、なのに読まずにいられません。 生きることは苦しい。それでも生きてゆく。

    1
    投稿日: 2018.02.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    たぶん、電車内の広告で見かけて。 振り返ってみれば、 ヘンデルが落とした白い石が夜の森に光っているように 手がかりは点々と残されていたが、 話の面白さにやみくもに突き進んでいって、 作者の思い通りに道に迷ってしまっていた。 もちろん、甘いお菓子の家ではないゴールにはたどりついたが。 行ったことのある場所が出てきたという個人的な理由もあるとは思うが、 人物描写といい、筑豊の時代描写といい、 とにかく面白かった。 ラストを救いとみるか、報いとみるかは人それぞれだろうが、 果たして人生の帳尻は合ったのだろうか。 自分は、達也が成長した姿がみれて、良かった。

    0
    投稿日: 2018.02.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    戦後日本の貧困を背景としたクライムミステリー。 ミステリーとしては真相が読めてしまったので、社会問題小説として感動しました。 タイトルの意味は作品中で説明があるのですが、「ある人には毒となる行動や存在がある人には薬(救い)となる」と解釈しました。 作品構成としては、2015年現代と1985年が交互に語られる第一章、2016年と1965年の話が交互にかたられる第二章、そして全ての謎が明らかになる第三章で、現代パートで先に何が起こるかを匂わせているので、どのようにしてそこに至るのかがミステリー的であり興味をそそり一気に読まされました。 ラストはそれまでの伏線から読めなくもないですが、それなりに衝撃でしたし、救いがあったのかどうかも解釈次第だと思います。 自分は、生き残った二人は救われていないのではないかと思いました。

    0
    投稿日: 2018.01.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    図書館で借りた本。過去と現在が交互に表現されてる構成なので、途中でネタバレのような核心は分かる。だが、そこに至るまでの過去が壮絶でやりきれない思いが募るばかり。筑豊炭鉱の末期の劣悪な環境で中学生時代を育った男女。当時の計画的な殺人隠匿は2人が生きていく為にどうしようもなかったと思えるが、それは因果応報に繋がる。悲しいミステリー。

    1
    投稿日: 2017.11.10
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    最初の思わせぶりさにはちょっとゲンナリする部分もありましたが、3部構成で徐々に明らかになっていく様は見事でした。

    0
    投稿日: 2017.10.24
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    これをミステリと言って良いのかどうか...(^ ^; 「探偵役」が謎を解いていく、と言うよりは 読者にとって秘密にされていた事柄が 徐々に解きほぐされていく、という謎解き(^ ^; 一言で言うと「運命のイタズラ」って奴ですか(^ ^; え、まさか、そう来るの、の連続(^ ^; でも、なるほどそういうことだったかと理解した後に、 前半に戻ってみると腑に落ちたり。 (割と)穏やかな現在の描写と、 これでもかという不幸に見舞われる過去の描写が、 パラレルに進んでいく構成。 が、穏やかに見える現在にも、通奏低音のように 過去の「影」が常につきまとっている。 それだけに、日常の「何気ない幸せ」のシーンが 妙に泣ける(^ ^; 人間の強欲さ、罪深さ、狡さ、そして弱さ脆さ。 それら全てが針を振り切らんばかりに襲いかかる 「過去」の描写は、見ていて心が痛い。 歪んだ部落暮らしの民と、「向こう側」の大学生の 対比が秀逸。ひねくれた心象描写もリアル。 最後の最後、そこまでするか、という感じの 怒濤の暴露まで、もうお腹いっぱい(^ ^; 人間って、コワイ(^ ^; 例によって「ミステリなので」、具体的なことは 何一つ書けませんので、あしからず(^ ^;

    0
    投稿日: 2017.10.06
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    読んでいる途中に重すぎて、何回か読むの辞めようかと思ったし読了後も、ずっしりと重い内容が心に残った。 大きく分けて3つの構成から成っていて、その章の中でも過去と現在が行き来する。でも、ごちゃつく事なく読める。 この世の底辺で生きてきた、希美とユウ。本当に救われない事ばかりで読んでいるこちらまで、辛くて絶望的な気持ちになった。やっと救われたと思ったのもつかの間、どうやったって過去の暗い影が2人を追い詰め、苦しめ、それを忘れる為にまた嘘と罪を重ねて、塗り固める。。。 そんな中で出会った葉子と難波先生の存在。 2人にとっては、どんより厚い雲間からさす陽光のようだったんだろうな。 葉子も葉子で暗い過去を引きずりながら生きてきて、そんな時に出会った希美と難波先生は冷えた身体をそっと暖める、柔らかい毛布みたいな存在だった。 後半のパートに行くに従って真相が明らかになり、伏線の回収もちゃんと書かれているので、ミステリーとしては良い作品。 ただ、疲れていたり心がちょっと弱っている時に読むのはあまり、おすすめしないかも(笑)

    3
    投稿日: 2017.09.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    被害者である先生があまりにもいい人すぎる。ミステリでなく、達也との関わりで別ジャンルの話になっても十分読み応えがありそうな存在感だった。先生と達也と葉子の関係は、小川洋子の『博士の愛した数式』を思わせる静謐さがあってよかっただけに、ミステリになるとつらい。

    0
    投稿日: 2017.09.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    評価は5. 内容(BOOKデーターベース) 一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!

    0
    投稿日: 2017.09.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    +++ 一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作! +++ 初読みの作家さんだったが、惹きこまれた。恵まれない境遇を嘆き、職安に通う女性・葉子が、ある日面接に行った先には、生年月日が同じ希美(きみ)の履歴書が送られていた。そんな縁で親しくなった葉子と希美がそれぞれに抱える過去が、現在を生きる彼女たちをがんじがらめにしている様に、いたたまれなさを感じずにはいられない。現在と過去、さらにさかのぼった過去を行きつ戻りつしながら物語は進み、そこに至る事情が少しずつ読者の前に解き明かされていくにつれ、さらにやり切れなさに包まれる。どこかに戻れば、彼女たちはしあわせになることができたのだろうか。それともどうあがいても、運命を変えることはできなかったのだろうか。出会い、関わってきた人々が、立場を変え、状況を変えて、次々に目の前に現れ、ラストに向かって収束していくのは、心臓を搾り上げられるような緊張感もあり、ページを繰る手が止まらない。運命の過酷さと、人の情の濃やかさを思わされる一冊でもある。

    0
    投稿日: 2017.08.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    心の中にじんわりと広がっていく読了後の複雑な気持ち。 やはりどこまでいっても絶望から抜け出せず、すっきり…とはいきませんでした。 読み進めていく中での出来事にも「これはもしかして…こういうこと?」と全てが予想がつくし、びっくり仰天な見事なカラクリがあるわけでもないのだけど。 淡々と綴られていく出来事を追っていくうちに、夢中になって読みふけっていました。 途中から始まる、全ての原点であるところのあの忌まわしい筑豊の炭坑集落の話が始まると、まるで実際に起こった事件のドキュメンタリー番組を見ているかのような気分に陥って、衝撃でした。

    0
    投稿日: 2017.07.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    2015年の現在と、30年前と50年前の過去がカットバックしていくのですが、第一章と第二章で謎をばら撒き第三章で綺麗に解消する技巧が素晴らしいですし、不穏な空気が漂っているのになかなか物語の全容が見えない展開が読む意欲を掻き立てます。日本推理作家協会賞受賞も頷けるノアール小説の力作だと思います。

    0
    投稿日: 2017.06.24
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    内容(「BOOK」データベースより) 一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!

    0
    投稿日: 2017.05.26
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    ふとしたきっかけで出会い、親友となった二人の女性。彼女たちの過酷な人生に訪れた、穏やかで幸せな日々。だけれどそれは永遠には続くことなく、やがて事件が起こることは示唆されているので。なんともいえずつらい読み心地です。 さらに、筑豊の廃坑集落で営まれるどん底の暮らし。これがまたとにかく重くてつらくて苦しくて。そこで起こされる犯罪も、罪であることは間違いないのだけれど、悪だとは言い切れず。その罪を背負ったまま生き続ける彼らの姿があまりに悲痛でした。 中盤以降で物語の構図があらかた見えてきて、それでもやるせない気持ちに変わりはないのですが。最後に訪れた「人生の帳尻」はさほど悪いものではなかったのでは、というように思えます。とことん暗くつらい物語ではあるけれど、読後感はどこかしら穏やかに感じました。

    0
    投稿日: 2017.04.13
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    過去と現在を行き来する密度の濃い重い物語。人物の正体や成り行きはうっすら予想できたものの、着地点がわからないおもしろさにハマってゆく。 ノンとユウの場合、悲惨な生活から抜け出すために過ちを犯すが、それすらも生きる手段の一つだったように思えて何が正解だったのか読み終わっても答えが出なかった。大人が大人の責任を果たしていない以上子どもに正論を求めるのは無理だろう。二人を責める気になれず、どこまでも罪を引きずっていく生き方がひたすらやるせない。 『愚者の毒』という題名に込められた意味が読後深く深く胸に沈む。

    0
    投稿日: 2017.02.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    何というかすごく重たく、登場人物の暗い過去、というより、悲惨な人生を目の当たりに見せられた感に堪えない。本当にすごい人生だなあと思う。 内容的には3部構成になっていて、第1章の陽、第2章の陰、そしてそれが繋がっていく第3章で前2章の伏線が解消されていくというミステリーなのだが、読んでいて凄く暗くなる。主人公二人。「葉子(ハコ)」と「希美(キミ)」のそれぞれの人生が酷似しており、二人の関わり合いが次第に悲惨な人生を生んでいく。それと、もう一人、ハコの義理の息子、「達也」の存在も絡み、より悲惨さを増幅させる。 詳しく内容は書けないけど、これほどまで荒んだ人生を描き切った作者の感覚に驚かされた。 ちょっと落ち込む話ではあるけど、是非、興味のある方は一読を。人間の「業」の深さをまざまざと思いおこさせる小説だと思う。

    1
    投稿日: 2016.12.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    著者は初めて読むが、もとはホラー作家という。 概ねオーソドックスなサスペンスミステリだと思うが、プロットの細部や物語を補強する背景設定が破綻なく緻密で、完成度がとても高くなっている。 現在と過去とを相互に語っていくスタイルからは、大まかな結末が分かっていても、どんな展開になるのか、作者の企み通りにちゃんとハラハラさせられる。 また、割と大胆に転じられる章建ても効果的で、ひとつの謎が解けてくると、新たな謎が生まれていって…と繰り返される構図には、どこか暗澹とした文章の雰囲気と混ざって、どうしても読み込んでしまう。これは上手いと思う。 まだ作数が少ないが、今後も読むのを楽しみにしたい作家となった。 4

    0
    投稿日: 2016.12.10