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蒲公英草紙 常野物語
蒲公英草紙 常野物語
恩田陸/集英社
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総合評価

325件)
3.9
71
137
88
9
1
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「なぜこの結末を書いたのか?」 この問いから逃れることはできない。これと向き合わなければこの本は終われない。 本作の描写はあまりに柔らかく美しい。蒲公英草子とはよく言ったもので、麗らかな光が降り注ぐ日本の原風景のような楽園が広がっている。 淡い恋があったり、”にゅう・せんちゅりぃ”を生きる人々の葛藤と情熱の描きっぷりも巧みで、風景から心の描写まで筆が乗りに乗っている。 本当にこの美しい夏の記憶だけをずっと味わっていたかった。 だが、結末はどうだ。起承転落だ。それも深い深いところに突き落とされる。楽園で解きほぐされた剥き出しの心をガツンとやられて、問いを渡されたまま終わる。 だからこそ、「なぜこの結末を書いたから」これを考えなければいけない。 “「この国で生きていくことを決めた時から、僕たちはみんなを『しまう』ようになったんだ。みんなの思いをこの先のこの国に役立てるために。僕は、自分の一族に生まれついたことや、この生活を後悔してないよ」” →これだ。多分これなんだ。僕たちも生きていく上で「しまう」ことをし続けなければならないんだ。美しいことを「しまう」ことは簡単だけども、苦しいことも悲しいことも「しまって」それでも前を向いて生きていかなければいけない。そういうことを言っているのだと思う。 辛い読書体験だったが、どうにかこの本を僕の中に「しまい」、少しでも「響く」ものにしたい。

    1
    投稿日: 2025.10.09
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    最終章の運命は読んでいて切なくなった。作者とタイトル名だけで購入したけどファンタジー好きには当たりの本だった。

    0
    投稿日: 2025.09.10
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    作品紹介・あらすじ 懐かしく切ない傑作ファンタジー 20世紀初頭の東北の農村。少女峰子は、集落の名家・槙村家の聡子嬢の話し相手を務めていた。ある日、聡子の予言通りに村に謎めいた一家が訪ねてくる。不思議な力を持つ一族を描く感動長編。(解説/新井素子)

    0
    投稿日: 2025.08.17
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    『光の帝国』の1話目に出てきた春田一家が(名前の漢字は違うけど)、明治時代、世紀の変わり目の東北の農村の旧家にやってくる。 一見小さな農村で完結する物語のようだが、列強に肩を並べようと戦争に進んでいく日本の時代の空気感が繰り返し述べられる。 歴史修正主義が跋扈する今読むと、過去をあったがままに「しまい」、人々が経験したこと、その思いを今生きる人たちに伝えてくれる春田一家が、記憶すること、それを後世に伝えることの大切さを教えているように感じた。

    0
    投稿日: 2025.08.01
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    再読。 常野物語、どんな話だったかと思いながら読み返しました。 古き良きのどかな時代の話かと思ったら聡子様の最後のくだり、そして戦後に繋がるエピソード。爽やかな青春と重たい現実に胸が塞がるような後味でした。対比によって、主人公と聡子様たちが過ごした時間がより一層懐かしく、引き立っていました。

    13
    投稿日: 2025.07.06
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    静かで上品で、風に揺れる草花のように趣深い作品だった。 登場人物の佇まいや世界の描き方、そのすべてが柔らかくて清らかで、読み終えたあとも心に残り続ける。 この本が似合うような、静かな気品をまとった人間になりたい。

    1
    投稿日: 2025.06.01
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    夜のピクニックと蜂蜜と遠雷がすごく良くて、購入したけれど読んでいなかったこちらを手に取り読んでみた。自分は峰子くらいの時に冷戦が終わって世界は平和なんだって言う認識で育ってきた。峰子が世の中に色々不安を感じているのと今がちょうど重なるな、とか、楽しいやりとりの毎日にわくわくしたり聡子様の将来にざわざわしたり、びっくりするくらい一気に読んだ。 それからシリーズ物の中にあたる話のようだと気がついた。もうこの本から読んでしまったのはしょうがない。他の話も読んでみよう。

    1
    投稿日: 2025.04.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    感想書くため再読。 初めの「光の帝国」より、こっちの方が好きだなあ。 優しい雰囲気が漂う中で、そこに集まる人たちの過去や人柄、想いが明らかになり、そしてそれぞれが変わっていく。んー、なんかいいね。 と思ったら、とんでもない災害。また後味の悪いことに…、と思ったら、聡子様の奮起、強い想いが明らかになり、悲しいながらもポジティブな雰囲気に感動した! で、(またまた)と思ったら、戦後の混乱状態に時が進み、この対照的な雰囲気の違いが、戦後の大変さを際立たせて、しんみりしてしまう。 最後が少々ポジティブさが欠けた感があるけど、全体的な優しいイメージが(峰子さんのお話口調がお上品で)なんというか安心して読めた。

    1
    投稿日: 2025.03.25
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    前作からの2作目で続きかと思いきや、世界観は同じでも時系列が少し違うよう。また一つ別の「常野」の人ではない人が主人公の「常野」の物語だった。

    0
    投稿日: 2025.02.11
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    常野物語の第二弾。 前作は短編小説であったが今作は、長編で描かれている。 特異能力をことさらにフューチャーする訳ではなく、粛々と物語るのはこの独特な世界を作り上げている一翼を担っているのだろうな。 常野じゃない子が物語の進行を担っていて、客観的に常野を語る点においても興味深い造りだった。

    14
    投稿日: 2025.01.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「君の一途さ、無垢さが、吾が国を地獄まで連れていくだろう。」 この言葉が強く印象に残った。 国を思うことに憧れのようなものを抱く。 それと同時に、自分には何も力がないことに、何もできないことに愕然とする。 ご先祖様たちが死にものぐるいで守り、作り上げてきたこの国で、私はなんとお気楽な日々を送っているのか、なんてことを思ってしまう。 才能があってその道に行かざるを得なくて、自分の望み通りでないとしても、この才を生かすのだと使命感を持って生きること。 やる気はあるのに、まったく能力が伴わない悲しみ。 ほんわかとした表紙と題名に対して、なんとずっしりと心に来る話だろうかと、読後しばらく頭から離れない。

    1
    投稿日: 2024.11.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    常野物語、2作目。 前作は連作短編集だったが、今回は1つの長編だった。 前作の「大きな引き出し」に出てきた春田一家の先祖のお話。 序盤から示唆される終わりの予感と、そこに向けて収束していく物語に引き込まれ、悲しみに囚われる前に一気に読み終えてしまった。 悲しみだけのお話しじゃないのだろうけど悲しい。

    1
    投稿日: 2024.10.31
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    できるならこの時代に行ってここに出てくる人々と会ってみたくなった。 常野はあくまでも添えてって感じで、主人公たちの美しい日常が切り取られている。どの人も魅力的で嫌な感じが一つもない。 こんな少女時代を過ごせたら良かったのにな〜と自分のこれまでの人生に少し悲しくなったけど、こうして日記を覗き見るような感じも悪くないと思う。

    0
    投稿日: 2024.08.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    恩田陸氏による常野物語シリーズ第二巻。本シリーズでは、常野と呼ばれる特殊能力を持つ一族の活躍や生き様が描かれます。 ・・・ 時は新世紀(20世紀…1900年)初頭。とある田舎の村で周囲を取り仕切る槙村家。その槙村家にいる末娘聡子様にお仕えすることになった、中島医師の娘の峰子。この峰子が老いたときに在りし日を回想する形式で、槙村家で起こった超常現象と悲劇について描いたもの。 ・・・ 常野という特殊能力をもつ方々が出てくるので、まあ超常現象系の事件がクライマックス。 ただね、何ていうんだろう、峰子の聡子様へ女子高的憧れやその聡子様の恋心、槙村家の屋敷に集う風変りな方々の描写など、峰子の青春の一ページを切り取ったかのような描写が太宗を占める印象。 割と淡々と進んでいき、クライマックスが過ぎると途端に現代に戻るのは、まるであり得ない夢を見ていて突然目が覚めたかのようでもありました。 あっさりとしていますが、ホントそんな感じ。まあ青春小説ですね。 ・・・ ということで恩田氏の常野物語第二弾でした。 本作は超常系<青春系みたいな感じで、少し肩透かしを食らった印象。個人的には派手に超能力かましてほしかったかな。 第一弾・第二弾と読んだので第三弾もいずれ読みたいと思います。

    2
    投稿日: 2024.05.21
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    なんて、美しい物語だろう。20世紀初頭、日本の農村の、1幕。 1人の少女、峰子の、お屋敷のお嬢様聡子様と過ごした限りある、暖かい日々。 近代化が始まった日本が、その後どんな道をたどったか。それは歴史のとおり。 最後の数ページ、胸が引き裂かれる思いだった。 日本は元々持ち合わせていた美しさも失って、どこへ向かっていくんだろう。 常野物語2作目として、この作品を見たとき。 1作目で続きが気になるなぁと思っていた、「しまう」者たちの役割が明確に描かれていて、満足しました。

    23
    投稿日: 2024.04.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最後の転落からの転落がものすごい。 いつも新しい時代の幕開けは 様々な希望や志を持ってた人たちが いた訳だけど、終戦した日はどんな気持ちに なったのだろう、峰子みたいに思った人が 沢山いたんだろうな。 現代で言うと、バブルを経験した人が リーマンショックも経験したり今の 円安の物価高で打撃受けてる人みたいな感じかな。 常野の人たちが居たら私も聞いてみたい。 日本これから大丈夫か?って。

    2
    投稿日: 2024.04.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    常野(とこの)のシリーズの一つ。 恩田陸の作品は、どれも読みやすいのだが、今回、登場人物が多くて、それぞれに抱えているものがあり、それらが少しずつ語られているからなのか、どの人が誰なのかが、ちょっと混乱した。また、思い出が語られることもあり、今、いったい何歳なのか、何年経ったのかがわからなくなった。最終的に、運命の日が来た時、彼らは何歳だったんだろう? 話の始まりから、いずれ物語が戦争に突入するのではないかと感じさせられていたので、もっと、そのあたりが書き込まれるのかと思っていたのだが、そこは少し肩透かし感があった。 とはいえ、全体的に読みやすく、ほのかな哀しみと癒しがあり、良作だった。

    2
    投稿日: 2023.12.11
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    常野物語の2作品目。1作品目と同じように常野に関わる人たちの短編が続くのかと思いきや、今作品では常野一族の人たちと関わる世間を常野ではない一般的な家庭の少女の視点で描かれる長編作品でした。個人的には2作品目の方が好きで、表紙やタイトルからも窺える通り、読んでいて非常に心穏やかになれるシーンの多い作品でした。3作品目にはエンドゲームのタイトルで常野物語が続きます。1、2作品が直接繋がらないように、3作品目も全く異なる常野物語となるかもしれませんが、それはそれで楽しみです。

    2
    投稿日: 2023.08.13
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    可憐で健気で靱やかな強さ。綿毛となり、風に吹かれ散り散りになりながらも、そこに根を張り花を咲かせ、また散り散りになっていく。儚さゆえの強かさ。

    1
    投稿日: 2023.07.22
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    寂しい気持ちが残る作品ではありましたが、前向きに色々な事に対して進んでいく事の大切さを感じた作品でもありました

    2
    投稿日: 2023.06.16
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    峰子の少女時代。和風ファンタジーということで、荻原規子さんが好きな私に合うかと思った。昔の日本設定も読書であれば好みだけど、やはり荻原さんはずば抜けている。恩田陸さんの作品はこれで当分お休みにする。読みたかった本の内容がわかってひとまず満足。

    1
    投稿日: 2023.06.12
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    陽だまりのような温かさがある少女の日記。 静かに着実に時代が変化する様子を少女の視点からみる。 所々で戦争へ突入する前の不穏な空気がジワリジワリと感じ、後半は切なく、悲しい終わり方。

    6
    投稿日: 2023.06.03
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    ズビズビに泣きながら読んだ。 前作「光の帝国」に出てきた春田一家とそれに関わったある集落の話。 ずーっと明るいのに、どこか切ない雰囲気で話が進み、その理由は最後に明かされる。あまりに切なくて、涙が止まらなかった。 「しまう」とは何か? 前作の短編ではあまり語られなかったものが少し垣間見える。

    7
    投稿日: 2023.03.12
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    単行本既読。と言っても十数年ぶりに読み返しました。 明治の初頭。優しく清潔で凛とした、農村での暮らし。主人公も友人の聡子様も裕福な家で育つ娘たちですが、素朴な少女で好感が持てます。 槙村のお屋敷に集う人々と、特殊な力を持つ一族「常野」の春田一家との日々を綴った主人公の日記。 目の前の暮らしと国の先行きを思う心は、実は根が同じなのだと考えさせられます。 どうにかなったことも、どうにもならないことも。個人のことも国のことも。春田一家は全て「しまって」くれる。 それを安堵と呼ぶ主人公の優しさと清潔さが身に染みました。

    3
    投稿日: 2023.02.23
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    今回のお話も凄く面白かったです。1巻の時の面白さがそのまま引き継がれていて安心しました。今回は短編ではなく中編の長さになっているので、1巻の時の短編が凝縮されたお話が好きな方には物足りないかも。それにしても、恩田陸先生はこういう不思議系な日常話書くの凄く上手いですよね。ハードカバーでも、文庫本でも、全部揃えたくなってしまいます。

    2
    投稿日: 2023.01.10
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    ファンタジーっぽいのが苦手なので、初めは取っ付きにくいかと思ったけれど、どんどん話に引き込まれていった。 聡子の最後が運命だとしたら、あまりにも悲しすぎる。

    0
    投稿日: 2023.01.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「光の帝国」の続編。常野物語。 ストーリーとしての話の続きではなく、「光の帝国」の「大きな引き出し」の春田家の先祖?の話。 ファンタジー的な要素は少なですが、常野一族(というか春田家の「しまう」能力)の事がよく分かった。 で、ストーリーは身体が弱い聡子様と話し相手にそして友だちになった峰子の交流を中心になんとなく心が温まる話だったんですが。この聡子様は、たぶん遠目の能力があったような感じ。常野の能力が隔世遺伝したのかな?それで先のことを見通せるが故に・・・。 天聴会、書見台などでなるほど、と思いました。 最初は明るくてまぶしい感じで始まったストーリーだったんですが、悲しく切ないエンディングでした。 前編でツル先生のキャラが好きだったので、また登場するかな?とか期待していたんですが、登場しませんでした。 続けて続編を読みます。

    2
    投稿日: 2022.11.26
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    古き良き日本を生きる人々。その中で「違う川の流れ」にいる常野一族である家族との関わりは、自分の生きる意味や存在する理由を考えさせられる。 切ない雰囲気が全編に漂うけど、裏切りや憎悪が出てこないので、上品な語り口も相まって読んでいて心地よい。

    2
    投稿日: 2022.10.30
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    人との出逢い、別れ、それからの私、、、。 懐かしくも素晴らしい少女時代があったなぁ、なんて思わずにはいられない、自分の思い出に浸りつつ、これからの人生に想いを馳せたくなる作品でした。

    0
    投稿日: 2022.07.05
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    常野物語の二作目 一作目と異なり、主人公が語り部となって物語を紡いでゆきます。 常野の特殊能力がSF感を出しつつも、しっとりと柔らかく人々の営みと心情が描かれています。 どれも清らかで切ない思いをもった登場人物達。みんな愛おしくなります。 明治大正の田舎風景が目に浮かんだ後に続くラストシーンでは、戦争の恐ろしさを別の角度から見せられました。 #常野物語

    6
    投稿日: 2022.06.18
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    明治時代の東北を舞台に、「光の帝国」に出てきた春田一家のご先祖が登場。本作もファンタジー要素は抑えめ。古き良き日本の原風景が郷愁を誘う、清々しくも切ない昔語りでした。

    5
    投稿日: 2022.06.08
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    なんとなく、ずっと寂しさ漂うと思ったらやっぱり。登場人物のそれぞれの距離感や心の内を表現しすぎない雰囲気が良かったけど、あまりにも寂しい。 なんというか勝手だけど、ファンタジー要素あるならハッピーな感じにしてほしい!って思ってしまう。 でもこれも常野一族が続く上での、一つのストーリーて、「しまう」ことについて理解が深まる一冊。

    3
    投稿日: 2022.01.30
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    常野物語2作目。明治期に東北の農村の権力者である槙村家の末娘聡子の話し相手として仕える一般の人、峰子の丁寧な語りで話が進む。平和で懐かしく、輝かしい思い出に優しい気持ちになります。後半、槙村家の強い使命感と力強さ、物語の不条理さに涙しました。20世紀の新しい時代の流れに翻弄され、読後感はけしてよくないかもしれないけど、暖かくて思い出に残る物語になりました。光の帝国よりも読みやすく、常野一族の状況説明もあるので先にこっち読んでもいいかも。

    0
    投稿日: 2022.01.16
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    光の帝国とはテイストが違くてびっくりした 最後まで読むと寂しさとか悲しさがすごいんだけど、きっと峰子さんはここから生活を作り出せると信じたい

    0
    投稿日: 2021.11.29
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    幸せだった日常を描いていると思ったら最後に涙。 子どもの頃のキラキラと輝いていた時代で終わらせるのじゃなく、苦しい時代に思い出す子どもの頃の回想。 最近読む本は辛い時に生きる様を描いているのが多い。

    0
    投稿日: 2021.10.03
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    「光の帝国」に続く、常野シリーズの2作目。 本来、個人的にはこういったファンタジー的要素のものは好みではないのだが、「光の帝国」が面白かったので読んでみた。 物語の舞台は20世紀初めごろの東北の農村。農村の旧家槇村家を通して、村の人々の生活や春田家(常野一族)の様子が描かれる。 舞台は、20世紀初めごろのことなのに、現代にも通じることだな、と印象に強く残った場面を残しておきたい。 槇村家の旦那と春田葉太郎が言葉を交わしている。 槇村家の旦那様がこんなことを話し出す。 「これまでは目の届くところのことを考えていればよかった。なのに、今や海の向こうの世界のことまで心配しなくてはならない。あまりにもいっぺんにいろいろなものが押し寄せてきて、世の中が声高すぎる。きなくさくて、嘘くさくて、慌ただしいだけだ」 すると葉太郎が応える。 「いつの時代も混乱はあったし世界はどこかで繋がっていたけれど、これからは全く違った意味での混乱が起きるだろう。世界はより近く、より狭くなりつつある。どこかで台風が起きれば、風を受けずには済まないのさー世界はまさしく一連托生になりつつあるんだ」 旦那様は低くため息をつく。 「皮肉なものだね。どこに何があるか分からない昔の方が、我々は幸せだったと思わないか?今は、どこに何があるか分かっているのに、そのことがますます我々を不安にさせ、心配事を増やしている」 「ひとは自分が持っていないもののことは心配しないさ。自分が手に入れたものを失うことと、よそのひとが自分より先に手に入れるんじゃないかと思うものに対して心配するんだ。」 このやり取りは、20世紀どころか21世紀の現代のことを言っているかのように聞こえてしまう。もうずっと前から、グローバル化と言われ、人やモノが世界中を行き来し、国内だけを見ていては国は存続していけない世の中になっているけれど、インターネットが発達したことで、さらに情報も一瞬にして世界中をかけめぐるし、誰でも簡単にアクセスすることが出来る。 便利になったはずなのに、『世の中が声高』で、『きなくさくて、嘘くさくて、慌ただしい』。『手に入れたものを失うこと』や『ひとが自分より先に手に入れる』んじゃないかということを心配する。 そして、コロナがパンデミックになり、『世界はより近く、より狭く』なり、『全く違った意味での混乱が起き』『世界はまさしく一連托生』だと言うことを実感する。 この物語を読んで、心が穏やかになり、懐かしい気持ちになるのは、この時の旦那様と同じように、見えているものだけを心配していれば良かった頃は、もっと自分や家族や周囲の声が聞こえていたのに、今や自分の声さえも分からない、むやみに情報をおいかけ人と比べて不安になっているからなのかもしれない。

    2
    投稿日: 2021.09.22
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    光の帝国」の続編。待っていた作品。 期待感がふくらみすぎていたのかしらん、全くつまらなかった。 えええ、えっ!と読むほどに砂を噛むような気持ちになった。あまりにもひどい。 確かに恩田さんは多作、ジャンルも多岐にわたって文才を発揮されている。お忙しいだろうし、ファンの期待も多かろう。だからといって…。出版社の編集者はどう思ったのか知りたい。恩田さんの作品として世に出す判断が悲しい。 それでは欠点をあげ連ねる。(以下、ファンの方で未読の人はこれを読まないでご自分で判断してほしいが) ひとつも山場がない。(それらしきのはある、山崩れの場面、でもありふれている) 「常野」の人が登場するも影うすい。 全編にわたってどこかで読んだような情景である。(断じてデジャヴではない) 思想が伝わってこない。「光の帝国」はそれが主題であったはず。 書き足りないのか、疲れておしまいになったのか。 もう、このへんでやめる。私がまちがっているのかどうか、勿論、好みは個人的なことだから。

    0
    投稿日: 2021.09.12
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    不思議な能力を持った人たちを描いた常野シリーズ二作目。 三冊のうちの第一作『光の帝国』を読んだのが今年の2月。 忘れちゃったかなぁ…と、前作をサクッと読み直しました。 20世紀初頭の東北の村で起こる ちょっと不思議なできごとの数々。 人々の記憶を「しまう」能力を持つ春田家が槇村家を訪ねます。 槇村家は、代々 村落が平和に暮らせるよう尽力してきた旧家です。 善意の人々の中で語られる 穏やかな物語として始められるのですが…。                                                                                                 印象に残った箇所が二つありました。 ひとつは、洋画を学ぶ青年の絵と仏師による日本画、二枚のコントラスト。 槇村家の令嬢、聡子が意見を求められて、こう 分析します。 西洋の絵が「今の瞬間を写真のように正確に描く」のに対して、 日本の絵は「時間の流れを描いているよう」に思われます、と。                                                                                               もうひとつは、命を終える ということについて。 春田家の少年が、この世ではない世界からの声を届けます。 務めを果たし、満足の頂で世を去ることができて幸せだ、と。 命は、いつか必ず終わりを迎えます。 毎日の心の在りようこそが、満足の頂への道なのかもしれないな。 ふんわり、そんな風に感じた箇所でした。                                                                                                                          

    21
    投稿日: 2021.08.30
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    再読。 常野の気配を感じながら進む物語。 語り手が第三者のような立ち位置で、一緒に楽しさや不安、不思議を感じて物語を読み進めることができました。 タイトルや途中までの雰囲気と全く異なるラストに、再読ながら切なさを多分に感じました。 エンドゲームをまだ読んでないし、このシリーズを読むといつも思い出す柳田国男の『遠野物語』にも手を出したいと思います。

    0
    投稿日: 2021.07.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    槙田家を中心に人々が生活する中で峰子さんの幼い視点がどう捉えていたのか、自分が幼かった時のことを思い出して読んでいました。ここでも目立たずひっそりと「しまう」ことをしている春田家が遠い昔から関わっていることがわかりました。槙田家のように関わりのある村が全国にいくつもあるのだと思うとゾクゾクします。 光の帝国を先に読んでいるとより楽しめるはずです!

    0
    投稿日: 2021.05.11
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    終盤から涙が止まらなくて目を真っ赤にしながら読んだ。いいお話だったなあと読んでから時がたった今も思い出すと心が暖かくなる。 ぜひ読んでみてください!

    1
    投稿日: 2021.05.10
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    柔らかく眩しい日差し、幼少の日々を思い出すような温かい作品。聡子様の明るく素敵な様子や、お屋敷の雰囲気に心惹かれる。

    0
    投稿日: 2021.03.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    20世紀初頭。東北の農村に医者の娘として生まれた峰子は、地元の名士・槙村家の末娘である聡子の話し相手として、日々丘の上にあるお屋敷に通っていた。聡子は生まれつきの難病でほとんど外に出たことがなかったが、聡明で人びとの憧れの的だった。そんなある日、槙村家をとある一家が訪ねてくる。人びとを"しまう"ことができるという彼らと交わったとき、聡子にはある決意が芽生え…。〈常野物語シリーズ〉2作目。 おそらく賢治作品を意識して自己犠牲エンドに至ったのかなと思うのだが、聡子の最後を峰子が完全に見届けてるのに、さらに光比古にも"響かせる"のはクドく感じる。固まった光比古を起こすための儀式でみんながヴィジョンを共有するところや、和式交霊会の様子などは面白かった。 あと、全体に渡って聡子のパーソナリティが表層的にしか伝わって来ず、峰子が親友で語り手である意味…?なんか序盤から峰子全然聡子に興味なくない?(笑) 百合が介在しない、単なる少女の神格化はちょっと好みじゃなかった。百合が介在するならいいんですけど。 椎名の洋画と日本画比較論も雑というかなんというか…現代人目線すぎるように思う。「日本画」という概念自体、椎名のように洋行して学んだ人びとがつくりあげたものなわけで、そんな彼が日本画専攻に転向するラストは、"間違った昔の日本"を理想化したこの小説の構造を象徴しているように思う。

    0
    投稿日: 2021.01.31
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    20世紀初頭の東北の農村を舞台に、旧家槙村家の末娘、聡子の話し相手として出入りするようになった峰子の視点で語られるストーリー。 病弱な聡子が、激しい台風の中、体をはって村の子供たちを守り、亡くなってしまうが、常野の不思議な力を持つ光比古が、聡子の心情を皆に感じさせてくれたことで、聡子の両親や峰子など近しい人の哀しみが癒える。 純粋でまっすぐな登場人物が多いが、それぞれの持つバックグラウンドや心根など、心打たれることが多かった。

    17
    投稿日: 2021.01.06
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    第二次大戦起こる前の日本のある村に常野の人がやってくる話。途中聡子様が日本画や日本の音楽と西洋のそれの決定的な差異を語るところが一番良かったかも。あと、最後に主人公が「これから」を常野の光比古に尋ねたいと言うところで受けた感慨は、それまでの話を読んでいないと心にこないので、読んだことが報われたので良かったかな。でも、もっと話の流れのあるファンタジーを期待していたので、ちょっとがっかりした内容だった。

    0
    投稿日: 2020.09.26
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    読んだのは文庫本ではなくハードカバーなのだか、なかったのでここに記載することにしました。 常野物語シリーズ 峰子の視点で描かれる。 自分には何ができるのかなあと考えてしまった。

    0
    投稿日: 2020.05.30
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    常野物語の第二作目。 田園の広がる東北の農村。旧家・槙村家の末娘・聡子は身体が弱く、医院を営む中島家の娘・峰子が聡子の話し相手として、槇村家に上がるようになる。物語は、幼き日の峰子の回想で進んでいく。 ある日、峰子は赤をい凧をあげる姉弟の紀代子、光比古と出会う。この登場で二人の登場は、前作の光紀と記実子の兄弟を連想させ、そして春田葉太郎の登場で、「しまう」の話であるということを確信させる。この展開に「あぁ、あの能力が絡んでくるのか…光紀の特別な能力は光比古が持つだろうか」と思わせるようになっている。しかも名前に「光」を使い、関係性を匂わすちょっとしたことが面白く思える。 前作では春田一族の持つ力の目的や対象については説明がなかったが、この作品では彼らが、具体的に人の半生を飲み込んでいる説明の記載があった。つまりは彼らは、日本の歴史をしまうことを使命としているのではないのかと、想像が広がる。 さらには、聡子が継いだ常野の「遠耳」の力は、物語の最後で常野の力をもつ者が背負う運命と光比古の持つ力を関係づけるように仕掛けられているのではないか…と思わせるところに、この作者の技法あるいは特徴が感じられた。私が感じる恩田作品は、全てを書かかずあえて、グレーゾーンを残す。そうすることで、読者の感性と想像力で、読者自身が物語の深さを感じるようにしている気がする。 この作品で気になる言葉があった「僕たちは自分で自分を見ることができません。鏡を見るか川のほとりにでもかがみ込まない限り、自分には『見えない』存在なのです。誰一人として自分のことを自分の目で見られる人はいません。このことは大きな問題です。小さな子供は、他人だけを見て生活します。……僕たちは成長するにつれて、文字通り自分を発見していくわけです。自分の姿を長い時間をかけて見つけ出していく。……」若干疑わしい表現はあるが、もっともすぎて言葉を目で追うまでは、深くは考えたことはなかった。自身の人格は、自分以外の人間により影響を受けている。子は親を見て育っていく、逆にこの人のようにはならないでおこうという考えも出てくる。 この物語では、春田一族は「自分を見られる目」として取り上げられており、そんな目を持っていたら考え方がどのように変わるのかの回答は書かれていない。こんなところもまた、恩田陸のグレーゾーンのような気がして、想像を広げてしまった。

    7
    投稿日: 2020.05.26
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    読み終わった後に漏れた一言が「廣隆様…」だった。 少女の目線で語られる温かくじわりと悲しみが混じる物語。 不思議と嫌な人がいないから最後までふわふわとした気持ちでいられた。蒲公英に相応しい気持ちというかなんというか。 峰子をいじめる廣隆、まぁそういうことだよねと最初からわかってはいたが、峰子も少女から女性へと変わりつつあり、廣隆もまた大人の男性へと成長した、あの時期にしか感じることのない感情が文章から溢れていてため息が漏れた。 男子が好きな女子をいじめるのは照れ隠しとか色々あるのでしょうが、やられた方は恐怖以外の何物でもないからな。いじめに男女差はない。…などと話とは全く別のことを読み終えた後に考えてしまった。 そしてあれだけふわふわした話をあんな暗く締め括れるのがすごい。希望も何も感じさせない、だけど確実に明日はやってくる、この先への不安を抱かせる。子どもも孫も幸せにならないまま峰子が命を終えそうである雰囲気もまたこちらをじりじりとさせる… この話とは違うけど、聡子様で思い出したのが浅田次郎の「あやしあやかしあなかなし」の「お狐様の話」だった。麗しい少女はやはり短命であることを運命づけられているのだろうか。

    0
    投稿日: 2020.04.02
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    常野物語シリーズは好きなシリーズだけれど、今回は他と違って、一族の力というより人々の成長や時間の流れに焦点が当てられている。 一族の持つ不思議な力と、それを取り巻く人々、環境。 様々に変化していくけれど、その中で揺るがない、人々のまっすぐな凛とした心。 題名のようにキラキラしたあたたかい描写がとても心地よい。

    1
    投稿日: 2020.02.09
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    幸せな槙村での子ども時代。 春田家が訪れ、聡子さまの件があり、そして、それぞれ去って行く。 新しい時代が良いか悪いか、ただ、波には抗えない。 長い回想を終えて、残るのはなんとも言えない喪失感だったり、切なさ。 伏線も色々あったので、それらを感じ取りながらまた読み進めたい。

    1
    投稿日: 2020.01.19
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    『光の帝国』に続く、不思議な力を持った“常野”の物語。 風景が流れ込んでくるような描写がとても素敵。 平和と混乱が切なくて涙した。

    2
    投稿日: 2020.01.13
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    常野由来の人ではない峰子さん視点で書かれた彼女の若かりし頃の日記を元にしたお話。常野入門編と言っていいほどに丁寧に常野に関する説明が続きます。「光の帝国」では、置いてけぼりを喰らいそうになった「しまう春田ファミリー」の生業の詳細が語られて常野の知識が一気にアップしました。峰子さんの目を通した聡子さんの魅力も存分に伝わってきます。彼女から多くの人々が何かしらの影響を受け、それぞれの人生を歩み出していく様には心打たれました。 また、強く印象に残る言葉、表現が多数出てきた作品でもありました。二つ挙げたいと思います。一つは、 「日本の絵は、西洋の絵のように見たままのものを描くのが目的なのではないのです」 という聡子さんの語りです。音楽についても似たような事が語られます。今まで日本画と西洋画の違いをそんな風に深く考えたことはなかったので、この見方はかなり衝撃的でした。長い歴史の上に独特な世界観を育んできたこの国のありようを見たような気がしました。それ故にこの語りは作品の最後で峰子さんが光比古さんに戦後のこの国の価値を尋ねたいという問いかけにも重なりました。 もう一つは、 「僕たちは自分で自分を見ることができません」 という椎名さんの語りです。一番身近な存在であるにもかかわらず、鏡を通しても直接には見えないのが自分であるという改めて考えると驚愕の事実。これにもショックを受けました。 直接には見えない自分の姿を長い時間を掛けて見つけだしていく存在、これが人間なんだということ。自分を見るということは、自分が何をなすべき人かを見極めることでもある。聡子さんは短い人生でしたが、そのことをおぼろげながらに知っていた。何でも美談に考えれば良いものでもないでしょうが、聡子さんは短い人生の最後に自分を見ることができたのだと思います。 常野の人たちの特殊能力を通じて、立ち止まって考える時間をいただいた気がしました。

    32
    投稿日: 2019.12.07
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    題名、読めなかったけど、そういうことかあ。枕草子と同じようなエッセイのような語り口で戦前の田舎のほのぼのとした風景が峰子の昔の小説風の丁寧な語り口で語られる。個性的で優しく賢い人たちの日常を描きつつ、常野の春田家の不思議な力が、心の深さを浮き出させてくれる本当に心があたたかくなる物語だった。

    0
    投稿日: 2019.11.28
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    前作を読んで、続巻があることを知ったので、中古本屋から100円で買ってきた。 1900年代初頭、日本が近代化に足を踏み出した頃、舞台は東北の片田舎、病弱な娘の話し相手として地主の家に通うことになった峰子の日記「蒲公英草紙」に記される、当時の出来事。 地主の家族、使用人、出入りするあるいは住み着いてしまったように見える人々。 描かれるのは当時のつつましいながらも生き生きとした田舎の生活と、そこを通じて青年や少年少女が大人になっていく様。 何ということはない展開だが、列強との戦争にはまり込んでいく直前の日本人の姿を描いて、なかなか美しい。 そこにやって来た“春田家の4人”。 春田家と言えば、前作巻頭の「しまう」家族のことだと知れるが、一族の生き方と同様、話の中心になることはなく、しかし重要な役回りを演じる。 当主の娘・聡子を中心に展開する終盤は、その地位にある者のそれに相応しい品格高い振る舞いや、国を思う人たちの思いの純粋さが描かれる。 誰もが美しく豊かな国を作ろうという志を持った時代が語られることで、今の社会に対する声高ではないけれど強いメッセージが放たれているよう。 「光の帝国」の続編というよりは、常野一族の存在を利用して、少し別の言いたかったお話を仕立てたという感じ。

    0
    投稿日: 2019.10.02
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    常野物語シリーズ2作目。『光の帝国』読んで想像してたものとは全然違った内容だった。風景描写が多くて峰子の言葉遣いからも時代背景も終始美しいって思った。永慶さんと椎名さんの描いた絵を見て聡子が話す日本の美徳に触れた所が私は好きだった。どんなに苦しくて辛いことでも春田一家みたいに自分たちが為すべきことが分かっているのはとても羨ましいな。

    0
    投稿日: 2019.09.09
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    前作の常野シリーズが短編だったの対して今回は長編、しかも常野の一族は出てくるけど視点は一般の人から見た常野の人達と言う。 福島の方にある槙村と言う小さな村での出来事が、お屋敷に務める村娘の視点から書かれる。 前作が常野の一族だけに視点を当ててたのに対して、今回は常野の一族に触れた側の一般の人達の気持ちも繊細に書かれていて、いかに彼等が世を流れながらも人達の心をそっと助けていくのかが知れる。

    0
    投稿日: 2019.08.28
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    常野物語シリーズの2冊目。読んだ3冊の中では一番好きです。 峰子と同じように、凛とした聡子さまに憧れて読み進め、聡子さまの運命に涙しました。 私も自分の「運命」を悟り、強く生きたいなぁと思います。

    0
    投稿日: 2019.08.18
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    昔の日本の風景が目に浮かぶようです。 ラストにかけてのストーリーで気分は沈みがち。 新しい時代を迎えるには痛みを伴わないとダメなのだろうか。

    0
    投稿日: 2019.07.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    常野物語 二作目。 ある女性が遠い昔に交流をもった『遠見』の能力を持った 少女とその一家との日々の日記を『蒲公英草紙』として語る。 記憶を『しまえる』春田一族が登場するが、前作との接点はそれくらいで全く別の一つの物語となっている。

    0
    投稿日: 2019.01.05
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    恩田陸初読みにしてハマった作品。大正ロマンのような雰囲気を漂わせながら、主人公峰子のきちんとした言葉づかいが心地よく丁寧に読み進めたくなった。少し引っ込み思案の峰子がある時地主のお嬢様の話し相手にと医者の父から役割を頼まれる。最初は気が進まないが、行った先のお嬢様がとても聡明で優しく美しい同じ歳の女の子聡子だった。峰子は次第に仲良くなり、毎日のように通うようになる。その後に出会う常野兄妹のフシギや聡子の生き様が物語に加速をかける。後からこの本が三部作と知って急いで次を探して読み始めた。久々に落ち着いて読みつつワクワクできた作品だった。

    0
    投稿日: 2018.12.23
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    『光の帝国』と同じく静寂を強く感じる物語。静かなんだけど面白い。常野だけじゃなく、出てくる人々全員が清い雰囲気。話の中の村や人々が本当に存在したわけじゃないけれど、昔の日本ってこんな感じが当たり前だったんだろうなと思う。 村の長者が率先して損得抜きで自分の使命を全うしようとする。それを幸せと思えるのが素晴らしい。

    0
    投稿日: 2018.11.11
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    常野物語の第2弾。 「光の帝国」のような短編集を連想していたんだけど 色んな常野一族が登場するのではなく、日露戦争を間近に控えた 明治の農村が舞台で、村の名家の末娘で体の弱い聡子の 話し相手に選ばれた峰子の追想録って感じです。 峰子目線で語られているんだけど、峰子は普通の人なので、 常野の不思議な力の話がメインではないです。 常野一族にとっては、立ち寄れる場所があるってことが どれだけ幸せな事だろうと勝手に想像してみました。 タイトルに薔薇や大輪の花ではなく、蒲公英を持ってきたところがステキです。

    2
    投稿日: 2018.11.03
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    追記; 平成30年7月17日  う〜ん。この作品はもっと深みと広がりを持たせるだけの 作品であると思いますよ。前著の『床野物語』も含めて。 幾度となく映像化されているみたいですね。 恩田氏を缶詰にして脚本を作り直しましょう。 撮影も監督もわかる人にはわかるでしょう・・・。 あの絵で撮りたい。あの役者の味を出したいんだと。

    0
    投稿日: 2018.07.17
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    常野シリーズでは、一番好きだなと思いました。 時代背景が特に良かったです。 読み終えたくない…ずっと、この世界に浸っていたい…そう思いました。涙。

    0
    投稿日: 2018.05.23
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    青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから…、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。

    0
    投稿日: 2018.04.08
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    2回目。 これこんなに寂しい話だったかな、と意外な気持ち。1回目は聡子様のエピソードで号泣したからその印象が強いのかも。

    0
    投稿日: 2018.02.03
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    昔、ハードカバーで読んだんだけど、読み直してもやっぱり面白かった!!短編じゃなくて長編で書かれていて、常野一族の目線ではなくて、何の能力もない普通の人である峰子の視点から書かれているのもいい! 今回、この作品を読んで感じたことは能力のあるなしに関わらず、みんなそれぞれに個性があって、それぞれに色んな視点を持っているんだなって感じた。 特に、聡子を描く、永慶と椎名の描写の部分が印象的だった。

    2
    投稿日: 2018.01.20
  • 宿命にいきる人達

    常野という特殊な能力をもつ人々。その特異さから迫害と紙一重の中で,それでも人の役にたつ役割を宿命として粛々と実行する。 近代化が進む時代の狭間で,そんな常野の人を間近でみることとなった主人公の視点から物語が語られます。前作はいろいろな話しがごちゃごちゃいている感がありましたが,今回はこういうことが書きたかったのだと良くわかりました。

    0
    投稿日: 2018.01.01
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    光の帝国 の続編。しまう能力を持った常野一族を基点とした続編。ちょっと寂しい終わり方。次はエンドゲームに進みます。

    0
    投稿日: 2017.11.01
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    常野物語シリーズの続編。一作目と違い短編ではなく、こちらは1つの話で一冊の本。主人公が昔を自分のかいた日記に沿いながら語っていくスタイル。 相変わらず語り口が透明感に溢れていて、いとおしい日々が手に取るようにわかる。 まだ子供だが聡子は自分の考えを年不相応な大人の表現で語る。一方、幼い光比古は誰をもハッとさせるような内容の話を幼い語り口で話す。この子供達の様子の書き方にも細かな設定が感じられる。 こんなに美しくいとおしい日々に対比する、幼き日の最後、そして現在。でも、それらがあるから昔が美しい。

    0
    投稿日: 2017.10.30
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    常野物語、続。聡子さまの遊び相手としてお屋敷によばれた峰子が語り手。 命をかけて村を守る遠目の女たちが印象的。 ポツポツとすすみ暗いけれどもう一度読みたくなる。戦後のこったのは飢えた女子どもだけ。でも蒲公英のように生きてほしいとおもう。

    0
    投稿日: 2017.10.25
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    不思議な力を持つ常野一族のちょっと昔の物語。力を持つ人たちの生き方、そして息苦しさとの折り合いのつけ方が印象的だった。あの子、不思議な子なんだよね、近づかないでおこうではなく、それはそれで認めて、普通に接することができる人たちとの交流は読んでいて気持ちよかった。わたしも「不思議な」ことや人にであったら近づいていってみたいと思う。彼らに苦しみがあったら救えなくても話は聞きたいと思う。聡子さんや峰子さんはそういった点でとても秀でていた。悲劇的結末ではあるけれど、聡子さんは悲しんでいない。常野は永遠だから。

    0
    投稿日: 2017.09.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    たんぽぽそうし なんて温かで麗らかな響き。 あの頃の宝石のようにきらきらした大切な想い出はいつまでも記憶の中で生き続ける! 常野物語の第2弾。 「しまう」春田一族が関わる物語。20世紀初頭の長閑な村の、品のあるお屋敷とそこでの穏やかな暮らし。 そこに「常野」が加わるとまるでお伽噺のようだ。 第1弾『光の帝国』の中でも、その不思議な能力が印象深く残っていた春田一族の「しまう」。 彼らのお陰でみんなの想いをいつまでも残すことが出来る! 今も、そしてその先も、彼らがみんなの想いを連れて旅を続けていることを願ってやまない。

    7
    投稿日: 2017.08.17
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    光の帝国の1話目に出てきたしまう一家のことが気になっていたから、蒲公英〜でしっかり出てきてどういう能力がある人達かわかってすっきりした。 聡子と峰子の関係にほっこりした。最期は切なかったけど、聡子は100%生き抜いたことは素晴らしい人生といえると思った。

    0
    投稿日: 2017.06.11
  • このシリーズはぜひ続けて欲しい

    恩田陸ラッシュですね。常野シリーズは「エンド・ゲーム」を先に読んでしまったので「しまう」などの表現が出てきた時は、これもわけわからん決着になるのでは・・と危惧しておりましたが物語としてはきれいに終わったので一安心。(悲しい結末ですが)このシリーズはぜひ続けて欲しい。

    7
    投稿日: 2017.04.30
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    常野物語シリーズの第二弾です。 第一段と違い今度は長編小説だったので読みやすかった♪ がしかし、前作で広げた風呂敷が大きそうな気がしていたので、想像よりもスケールの小さいお話だったな、というのが第一印象。。 常野一族ってもっと大きなものと向き合っていたのではないの?? それともそれは単純に私の期待値の高さだったのだろうか・・・ まあ、そういうことを考えずに読めば、懐かしさを感じる美しい原風景に囲まれた村で、聡明な人々が活躍するどこかおとぎ話のような美しいストーリーだと思います。 そして、クライマックスシーンは感動して涙が出ました。 ・・・が、人の死を使うあたりに安直さを感じたし、ストーリーも聡子さまのことも含め予定調和的に感じて。 読みやすかったし感動したし、実際泣いたけど、なーんか素直に褒めきれない作品でした。 うーん、ターゲット層がもっと若いのかもしれません。 でもでも、大惨事のときにしまえる能力を持つ人がいてくれたら、これ以上の供養はないし、残された者も救われますよね・・・そういう意味では夢があるお話です。

    0
    投稿日: 2017.03.23
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    青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから…、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。

    0
    投稿日: 2017.02.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    後半まで、非常に良かった。 特に、西洋の絵と日本の絵の違いを言い表した場面は印象的だった。 ただ、ハッピーエンド厨の僕としてはバッドエンドだったのがかなりのマイナス点であった。

    0
    投稿日: 2016.12.11
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    「聡子様」を中心とする槙村家にまつわる少女時代の思い出を語った、美しい物語。 槙村家の客分である画家の椎名馨、仏師の永慶、発明家の池端先生などが登場し、日露戦争へ向かっていく時代が多面的に浮かび上がる。 あまりにも美しすぎるので、少し面映ゆくなるくらいだが、「破滅の日」に、すべてを失った老女の語りであるためか、白々しくはならなかった。 『光の帝国』を読んでいたので、常野物語?と思いながら読んでいたが、春田家の親子四人が現れて、やっとつながった。

    0
    投稿日: 2016.10.30
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    古き良き田舎の風景が目の前に広がって切なくなる。淡々としていて起伏が少ないので好みは分かれそう。 現代を生きる私たちは忘れてしまっただけで、常野一族はまだ何処かにいるのかもしれない。

    0
    投稿日: 2016.09.21
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    ラストの聡子様の件は泣いてしまった。 廣隆様とはどうにもならなかったのだなぁ。 ちょっと期待してしまったのだけど。 昔の人は早くから大人だよなぁ。

    1
    投稿日: 2016.09.04
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    前作に比べスピリチュアルで淡々と物語が進んでいく。 小学生だった主人公の成長していく視点は読みやすいが、物語の大半は多くの登場人物の説明と背景の説明ばかり。読み終わっても大きな山がなかったよね? とぼんやりとした感想しか出てこなかったのに、なんだか頭の中に残る。 唯一の心残りとすれば、好ましい相手に犬のシロをけしかけたりカエルを投げつけていた廣隆と結ばれることがなかった点。 ありといえば、こういう結末もアリだけど、どうせなから結ばれて欲しかったなー、なんて。 色々恩田陸さんの作品は読んできたけど、これは俗に言う良い恩田陸作品。オススメ。

    0
    投稿日: 2016.07.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    自分が幸せであった時期は、その時にはわかりません。 こうして振り返ってみて初めて、ああ、あの時がそうだったのだと気づくものです。 人生は夥しい石ころを拾い、背負っていくようなものです。数え切れぬほど多くの季節を経た後で、疲れた手で籠を下ろし、これまでに拾った石ころを掘り起こしていると、拾ったい石ころのうちの幾つかが小さな宝石のように輝いているのを発見するのです。 小さな子どもは他人だけを見て生活しています。 なかなか自分という存在に気づかないし、自分がどんな顔をしているのかも知らないし、自分と同じように他人が感情や考えを持っていることがなかなか理解できない。 僕たちは成長するにつれて、文字通り自分を発見していくわけです。自分の姿を長い時間を掛けて見つけ出していく。 僕は、このことが人間を人間たらしめている気がするんですよ。 物語も素晴らしいが、この表現に感服。。。

    1
    投稿日: 2016.04.29
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    とてもスピリチュアルなお話。 不思議な感じだけど(自分は何も見えないけれど)私は結構スピリチュアルな事に興味もあるので、興味深かった。 そして最後の方は涙涙。 年を取ると涙もろくなる(笑) 世界大戦以前の古き良き日本の風景も読み取れるほのぼのとしが気分にもなれました。 やっぱり戦争はしてはいけない! 常野物語、まだ他にもシリーズがあるようなので、機会があれば他2冊も読みたいと思う。

    0
    投稿日: 2016.04.20
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    光の帝国を改めて読み直したので、常野物語第2弾も読み直し。 読み始めは少し飽きてしまうんじゃないかと不安になるような”ゆるさ”だが、読み終わってしまうと嵐の前の静けさだったといった印象。大きな事件のようなものは最後の最後まで起きず、冒頭の3/4はそのための人物紹介や背景の説明といった内容。 このように書くとあまり面白そうに聞こえないが、静かな文章に想像を掻き立てられるような面白さがある。おだやかの流れの中に切ない結末を予感させる不思議な物語。 恩田陸の小説は当たり外れが多く、ストーリーの流れ、文体共に奇抜なことが多いが、今回は日記で語り口調というのがとても静かで読みやすいと思う。 心残りとしては廣隆様と結ばれなかったこと。 登場人物が非常に多く、それぞれがその時代を象徴するような思想を持っているため、それぞれの人物に注目しながら読みすすめるとまた違った物語が見える気がする。

    0
    投稿日: 2016.03.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    恩田陸さんは、凡人と違う一人を描くのが得意なのだなと思った。嫌味なく本当に凄いということを登場人物の心情、描写で示していき読者にそう思わせられるが凄いなと。 聡子が西洋画と日本画の違いを語る部分が最も印象的。

    0
    投稿日: 2015.09.06
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    シリーズ化しているんだが、やっぱり1が一番面白かったかなぁ。感動はしたけど、、、 不思議な力を持つ人間たちのヒューマンストーリー。 割と切ない感じの昔話のような内容です(*^^*) 綺麗な綺麗な昔話。恋愛、友情、家族、そんな愛の綺麗ごと。みたいなね。 日記のような語り口調で終始一貫しており、一人称で語られ続けるところに飽きがくるのかなぁ。 もしくは、切ないヒューマンストーリーを私が今、欲していないのかわかりませんが、うーーーーん。な一冊でした。

    0
    投稿日: 2015.07.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    あったかい気持ちになった。人とは違う力を持ってたり、外の世界を知り責任を知ったり、戦争で家族を失ったり、それぞれの運命を抱えながら必死で生きてる人々。ハッピーエンドではないのかもしれないけど、幸せだった日々を語った一冊。

    0
    投稿日: 2015.06.20
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    常野シリーズ第二弾。 なぜこんなに文章だけで透明感が出るのでしょう。 本当に辺り一面蒲公英でいっぱいのような 夢心地の一冊。 美しい日本の田舎の風景 可憐な二人の少女 そこにふんわり存在する春田一家 読み終えるのが惜しいと思えるくらいに しみじみと美しい世界です そしてじんわりと哀しい読後感。 哀しさの理由はいろいろありますが 何より少女が少女のままでいられないことが 一番自分ではリアルに哀しいです わたしも時々夢で学生の頃に戻ります 自分も若く、友達もあの頃のまま。 そして目が覚めると、あの頃の私はいなくて 家事や仕事でキリキリした生活に目を向けなくては いけない… 若いころには思いもしなかった哀しさです そして…最後の問いかけ(=読者への問いかけ) なんだか心が痛くなってしまう一文でした 最後の新井素子さんの解説が秀逸

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    投稿日: 2015.06.08
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    光の帝国のあとがきで書いてあったように、今回は春田一家の話でした。しかし、春田一家を中心に話が進められているわけではなく、常野一族の在り方の通り、春田一家は物語の中心とはし離れた不思議な存在でした。 春田一家だけでなく登場人物たちは、何処かにいそうな、しかも清々しい人たちばかりであり、憧れの世界でした。

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    投稿日: 2015.05.17
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    二十世紀初頭の黄金色のたんぽぽを額縁に丘の上に佇むお屋敷 そこに暮らす村に代々続く槙村のご家族 村を優しく見守るお屋敷の中で起こる少し不思議で穏やかなお話 無限の可能性を信じてやまず、明るい未来をただ信じていた時代のお話。

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    投稿日: 2015.05.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    再読。常野シリーズ第2作。農村の自然の風景が色鮮やかに描かれ、どの場面も一枚の絵のようにくっきりと浮かび上がってくる。そしてその美しく懐かしい景色の中に、それぞれの登場人物がふわりと溶け込んでいる。魅力的な人々が、ラストに戦争という嵐の中でどんな結末を迎えてたかが淡々と触れられていて、それがより虚しさを感じさせる。泣きました。「この国をつくっていくことができるのか、それだけの価値のある国なのか」という主人公の終戦直後の問いかけを、現在再び投げかけてみれば、どんな答えが返ってくるのだろうか。

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    投稿日: 2015.03.31
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    病気がちの聡子様の話し相手に屋敷に通うようになった峰子。峰子のことが気になる廣隆。ふんわりとした優しい時間が流れていた。常野の一族の持つ謎めいた雰囲気が良かった。

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    投稿日: 2015.02.15
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    敗戦後から幼い頃を振り返る形で、楽しかったこと悲しかったことを情緒豊かに語る。東北の山あいの村の田園風景が広がる。そこに現れた常野の一族によって、不思議な色合いが加わる。おそらくは同じ力を持つ聡子様の輝かしい存在とそれゆえの薄命が、くっきりと際立つ形で物語が終わる。大事にしたかった日本がそこにある。

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    投稿日: 2015.02.15
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    常野物語の2作目。短編集のような1作目とは異なり、宮城県県南の村を舞台にしている。常野一族も、人の記憶を『しまえる』春田家だけだった。 春田家は、人間一人一人が生きた証だ。彼らの存在のおかげで、人々はいつまでも生き続けられる。それが人々に安心を与える。私は、どうやって生きた証を残せるだろう?聡子のように、人生における使命を持てたらいい。 恩田陸作品に登場する、聡明で美しい少女がまた見られた。槙村聡子。『ユージニア』の緋紗子に似ている。聡子は賢くて、勇敢で正義感に溢れる、素晴らしい少女で、時々ぞっとさせられる緋紗子とは少し違う雰囲気だった。ただ、どちらも美しい少女だということには変わりない。あんなに透き通った少女をどうしたら描けるんだろう。やっぱり恩田陸作品が大好きだ。 常野物語は次の3作目で終わりらしい。こんなに面白いシリーズが終わってしまうと思うと、寂しくて読み始めるのが億劫になる。

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    投稿日: 2014.12.26
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    中盤までのキラキラした、キレイな内容と、終盤の黒く胸が潰されるような内容との対比が印象的です。考えさせられる本でした!

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    投稿日: 2014.11.21
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    常野物語第2話。 これは「一族」が主人公、かな。 半村良「産霊山秘録」の外伝といっても通りそうです。

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    投稿日: 2014.11.04
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    不思議な力を持っている遠野一族と槙村家の物語を峰子から見てほのぼのと進んで行く。 最後の章で大きく物語が動き、親の愛や戦争の悲しみ、聡子の言葉、光比古の存在が凝縮されていた。 読み終えて光の帝国でも感じたが、かつて、日本には遠野一族に近い人たちがきっといたと思わせる話です。 日本人の繊細さならあり得そうな気がします。

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    投稿日: 2014.09.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    一人称視点×ございますおります調で書かれていて、なんとなく女学生文学っぽく書きたいんだなということは伝わってくる。しかし細かい部分が似て非なるために、時代や主人公の家柄にしては稚拙すぎる感じになってしまっている。こうなると主人公も幼児に見える。 題材は日本の昔のスピリチュアルな慣習と超能力。心中を描きたい登場人物が多すぎて、結局中途半端になっている。あとは「自分でもなんだかよくわからないけど、こう聞いてしまう・こうしてしまう」というスピリチュアルな外部圧力が物語の進行を支えているので若干納得がいかない。

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    投稿日: 2014.09.11
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    【本の内容】 青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。 他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから…、不思議な能力を持つという常野一族。 槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。 今を懸命に生きる人々。 懐かしい風景。 待望の切なさと感動の長編。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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    投稿日: 2014.08.24