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powered by ブクログ前著で子どもの貧困の実態を示した著者が、具体的にこの状況を解決していくにはどのような政策が考えられるか、調査や海外での実際の事例などを参考に挙げていっています。限られた財源の中で、数ある政策候補の中からどの政策を取っていけばよいのか、という視点も随所に現れています。 「第4章 対象者を選定する」では対象者を絞り込むことの利点・欠点や、対象者選定の考え方の様々が示されており、興味深かったです。ここにも書かれているとおり、日本においては対象者を選定しない給付型の社会政策は「バラマキ」と批判されることが多いと思いますが、安易に対象者を線引きすることで本来サポートが必要な層に給付が届かないのは本末転倒だなと思ってしまいます。社会政策の制度設計の難しさを感じられました。
0投稿日: 2023.05.14
powered by ブクログ今を生きる日本人が向き合うべき、そして近い将来向き合わざるを得ない問題。 男女間格差が問題視されるようになって久しいが、世代間格差ももっと議論されるべき問題だろう。 ✏所得制限(生活保護制度の生活保護基準額の1.1倍〜1.3倍)を下回る世帯は就学援助費(低所得世帯の子どもの義務教育にかかる費用を国と自治体が支援する制度)を受給できる。 公立小中学校に通う子どもたちの6人に1人が就学援助費を受給していることは、子どもの貧困が極一般的な世帯においても進行していることを表している。 ✏貧困問題は「働けない」高齢者や障害者、母子世帯などの「特殊なケース」(と理解されてきた)における問題と理解されてきた。しかし、年齢層別に貧困率をみると、女性の高齢者の貧困率は高いが、男性においては25歳未満の子どもの貧困率が65歳以上の高齢者の貧困率を超えている。 つまり、人生の中で最も貧困リスクが高い時期が子ども期である、という現象が起きているのだ。 ✏世界とくらべた日本の貧困率は、先進20カ国ではワースト4番目(1位アイスランド4.7%、17位日本14.9%、20位アメリカ23.1%)である。 特に、日本のひとり親世帯に育つ子どもの貧困率は58.7%と突出しており、OECD諸国の中で最悪である。これは、ひとり親世帯の大半を占める母子世帯の貧困率が特に高いためである。 ✏子どもの貧困が「自尊感情が低い」「不安」「自己肯定感が持てない」「精神的不安定」「希望が持てない」などといった心理面への影響を引き起こしている。 ✏もし国がA君の子ども期に、彼が貧困を脱却する可能性を高めるような支援をしていたら、どうだろう。国は、A君が払ったであろう税金・社会保険料を受け取ることができるうえに、生活保護費や医療費などの追加費用を払う必要がなくなる。つまり、長い目で見れば、子ども期の子貧困対策は「ペイ」する可能性が高い。逆に、貧困を放置することは、「お高く」つくのだ。 ✏強いストレスを抱えた母親から生まれた子どもは、低出生体重児で生まれるリスク・生まれた後も情緒的な問題を抱えるリスクが高くなる。 つまり、親のストレスによる子への影響は、生物的な帰結であり、精神論の問題ではないのである。 ✏経済学において子どもを「将来の人的資本」と見なすことは、貧困に対する政策をただ単に「可愛そうだから」という論理でなく「社会に対する投資」という論理で考えるという点では説得性がある。 ✏「ビッグブラザー・ビッグシスター」プログラムは、アメリカにおいて100年以上の歴史があるメンター・プログラムで、比較的低コストで高い収益率をあげている。子どもと1対1の関係を持ち「見守る」大人をつくるというだけで、子どもの学力向上に貢献している。 ✏どんな綿密に対照者を絞り込む制度をつくっても、結局のところ漏れてしまう子どもがいる。普遍的制度として全ての子どもを対象とすれば、このような漏れは発生しない。貧困の子どものことを考えれば、普遍的制度にするのが一番ということだ。 ✏制度の対象者が「弱者」であればあるほど、対象が絞られれば絞られるほど、その対象者になることは社会的排除の引き金となる。 ✏生活保護制度では疎遠にしている家族や親族に、福祉事務所が扶養意思の有無の確認の連絡をとる。それが苦痛となって困窮していても受給しない人々も多い。 ✏結局のところ、貧困削減に有効であるかどうかに一番効いてくるのは再分配のパイであって、普遍主義か選別主義かという違いではなさそうである。普遍主義であっても選別主義であっても、小さいパイでは貧困削減は進まない。 ✏「最貧層を選別すること」ではなく「富裕層を除外すること」を目的とすれば、貧困者を「選別」することによる偏見や、本当に必要な人が給付を受けることができないといった漏給の問題が少ない。 ✏学力や将来の収入などに重要であるのは、学力テストなどで表される認知能力のみならず、対人能力・自己規律・粘り強さなどの非認知能力であり、これらは幼児期から成人に至るまでの家庭環境に培われる。乳幼児期における介入政策が最も効果的であると結論づける。 ✏保育所は、小中学校やその他の子どもに関わる制度に比べて、ほぼ毎日親との接触があるという点で、親へのアプローチをする絶好の場である。 ✏子どもの居場所づくりを目的とした放課後プログラ厶は、いかに子どもたちが自発的に継続して通うようなものにするかが最も大きい成功の鍵である。そこにさえ行けば、子どもがなんでも相談できる大人がおり、魅力的な活動があり、友達がいる。「家」「学校」が必ずしも安らぐ場所でない子どもたちにとっての「ほっとできる」場所であることが必要だろう。 「待つ」という姿勢では恐らく成功は難しい。 ✏メンター・プログラムの特徴は、子どもとボランティアが「1対1」の関係性を築くところである。そのボランティアにとって、自分の担当する子どもは「特別な子ども」であり、子どもにとってもそのボランティアが「特別な大人」となる。このボランティアはあくまで素人であり、支援をする側に専門性がない中においても効果が得られていることは、日本における子どもの貧困対策を実施するうえで貴重な知見である。
0投稿日: 2023.01.27
powered by ブクログ・母子世帯は124万世帯、父子世帯は22万世帯、子どものいる世帯数は1180万世帯。貧困の子どものうち、ひとり親世帯に属するのは2割程度と言われている ・貧困であることは、「生活に必要なお金が足りない」という物質的な困窮、「来月の家賃が払えるか?」というような生活の不安・不安定さのみではなく、負け組であることも加わった心理的ストレスがダブルパンチ ・先進諸国においては、自然に貧困層に「トリクルダウン」するわけではない。日本は、GDP比で見る品高層への社会支出は極めて小さいのである。そもそもが貧弱な貧困対策なので、GDPの増加と同じ比率で増加したとしても、急激にその貧困削減効果が大きくなるわけではない。 ・日本は、子どもの教育における私的な負担の割合が、OECD諸国の中で最高 ・習い事でチームプレーの経験や、アートや自然を吸収できる。一昔前であれば、お金がなくても近所の付き合いで身につけられていたが、現在に置いてはお金で買うものになってきている ・海外の研究によると、相対的貧困の子どもに対する一番大きな影響は、親や家庭内のストレスがもたらす、身体的・心理的影響だという。 慢性的になったとき、ゆとりを持った子育てなど、とうていできなくなってしまう。情緒的、非認知能力の成長を止める。 ・母親の帰宅時間が18時を超える母子家庭は5割、20時以降の母子家庭も1割ある。 ・どのような子どもを対象とする普遍的制度・普遍主義と、貧困の子どもに対象を絞る選別的制度・選別主義に分かれる。 ・川上対策と川下対策 ・乳幼児期に貧困を経験した子どもは、その後世帯の状況が改善して、貧困から抜け出せたとしても、乳幼児期の貧困が悪影響を及ぼす可能性が高い ・公的年金の給付を除いたら、子どもの貧困率の逆転現象は起こっているのである。 ・格差をどこまで解消すべきかという問いには答えがないが、貧困は撲滅すべき目標となる。
0投稿日: 2021.11.18
powered by ブクログ日本の貧困の特徴はワーキングプアが多いこと。これは母子世帯の場合子どもを抱えながらの労働が難しく、非正規就労が多いことが実態としてある。 貧困層の子供は、学力と健康状態が低い傾向にある。 また、貧困層は、子どもの自己肯定感や将来への希望を持たない傾向にある。家庭内においてもストレスに溢れ、健全な成長を妨げる要因になる。その結果、貧困の親から生まれる子供も、将来貧困の親になる可能性が高い。 経済が成長すれば貧困層の所得も増える、という理論は先進国には当てはまらない。スゥェーデンやアイルランドといった高福祉国でも、低所得者の勤労所得自体は上がらず、GDPの拡大により国からの給付金の割合が上がっただけだった。 【家庭環境を介した経路】 親のストレス、親と過ごす時間、家庭内文化資本、親の孤立 逆に、遺伝子的経路は、そこまで重要な要素ではなく、むしろ家庭環境により子供の認知能力、身体能力が制限される可能性のほうが高い。 貧困には家庭環境や遺伝や地域差、親の遺産など、様々な要因があるが、一番相関関係のある経路は、 「子ども期の貧困→低学歴→非正規労働→現在の低所得→現在の生活困窮」である。 要因は一本一本が独立しているのではなく、様々に絡み合って影響している。 財政には限りがあるため、貧困対策は「社会に対する将来への投資」と読み替え、費用対効果の高い政策から実施していく。 日本はこの計測がまだ進んでいない。 そのため、長期的な収益性の観点を持ち、その収益性が測定できる制度設計、モデル事業を取り入れ、対象者を吟味して政策を行うべき。 貧困対策には、選別主義(生活保護のような、貧困の人だけを対象とする政策、小さな政府)と、普遍主義(義務教育のような、全員対象、大きな政府)のものがある。 選別主義の欠点は、政治的な批判、偏見の対象、選別にかかる費用、労働インセンティブの低下がある。 普遍主義の欠点は、財政負担の大きさがある。 結局、研究の結果、選別か普遍のどちらが優れている、というよりも、再分配のパイの大きさによることが分かった。 そして、日本では、普遍的な現金給付を「バラマキ」と感じる一方で、貧困層への給付も厳しい目にさらされた。しかし、現物の普遍的支給には批判はなかったため、結局、現金を配るといった札束ポリティクスにアレルギー反応を示しているだけに思える。 日本においては、現金外支給(教育の機会の拡充など)は、より普遍的に、現金支給に関しては、より選別的に行うのが望ましい。 また、年齢を絞るのが望ましい。特に、就学前(0~6歳)に対して貧困対策を行うのが、特に効果があるとの研究結果が出ている。乳幼児期に貧困を経験した子供は、その後貧困から抜け出せたとしても、乳幼児期の経験が悪影響を及ぼすという結果がある。 【現金給付vs現物支給】 現金給付の効果は、「ある」。 現金給付の利点は、効果が確実であること。現物支給は何をどのように給付するかによって大きく効果が異なるため、効果にばらつきがある。 現物支給であっても、教育プログラムへの投資といったものであれば、将来はかけた金の何倍ものリターンが得られることがある。一方、無駄になる恐れもある。現金は安全資産、モノは危険資産。 現金はかゆいところに手が届き、汎用性に富む一方、市場にそぐわないサービス(保育、教育)には効果が表れにくい。 日本では、富裕層→貧困層への所得再分配前と、所得再分配後の、貧困率の改善が低い。昔は再分配前のほうが所得が多いという逆転現象が起こっていた。 結論としては、現金給付は、児童手当や児童扶養手当など、特に未就学児、小さい子供のいる家庭への手当てを厚くするべきである。 【現物支給】 保育所の拡充は圧倒的に効果あり。子供だけではなく、親に働きかけるソーシャルワーカーの配置が◎。また、小中高学童保育の給食実施により、「バランスのある食」の拡充を。 また、放課後プログラムの実施により放課後格差を縮小する。「親が働いているから預ける」ではなく、より行きたいと思える「居場所」を提供する学童づくりが大切。 ビッグブラザー・ビッグシスタープログラムにより、ボランティアの大人と子供が一対一の関係になれる活動が、海外で効果を上げている。 また、親への現物支給として、貧困層妊婦への支援、親の疾患や障害への支援が上げられる。 【教育】 家族が負担する教育費の割合が先進国の中でかなり高い。費用の大部分は学校外教育。義務教育の授業料の無償化はもちろん、教科書代、給食費、クラブ活動費など、就学にかかる全般的な費用も援助していくべき。 費用のほかに、学力格差の縮小も貧困をなくす上では重要。 少人数学級に編成し直す、適切なカリキュラムによる落ちこぼれをなくす、など 学校生活への包摂(ひとりひとりが友達や先生から認められ、自分の居場所が学校にあると思える環境)の取り組みが重要。貧困層の子供は、対人関係の苦手意識、自己意識の欠如など、社会に必要なコミュニケーション能力が劣っていることが多いからだ。 【子供の貧困指標】 ①相対的貧困率 ②剥奪指標(毎日3食食べる、定期的なレジャー活動、行事への参加など、生活の質を具体的に測るもの) 【優先順位】 ①実験的な枠組みにより効果が測定されている物 ②長期的な収益性が確保できるもの ③とくに厳しい状況におかれている子供を優先するもの また、現金給付は必要。家庭の経済状況は子供の生活状態にモロにでる。 ①子どもの貧困率の逆転現象を解消する。 ②乳幼児期の子供の経済状況を改善する。 現物支給は、所得制限方式ではなく、学区ごとの選別や、地域ごと、定時制高校への予算拡充、メンタープログラム、親へのサービスなど、プログラムごとに効果的に支給するのが良い。
0投稿日: 2020.06.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「子どもの貧困対策法」は研究が行われることが前提になっている、ようなのだけど、制定されて数年経ち、今はどうなってるのか。現状を調べてみようかなと思った。 本書の中で提案されている政策や、アメリカで行われた各種政策の費用対効果まとめ表などは、とても参考になった。と言っても自分はそういう政策等の制定に関わるような立場でもなし、選択肢としてそういうものもあり得るのか、という程度の「参考」なのだけれども。 日本の現状を考えると、オーストラリア方式の選別主義の方がうまく働きそうな気はする。予算さえあれば。予算の問題は大きい。そして、将来の予算を確保するための現在の投資、という考え方がなかなか受け容れられないことも、問題なのだろうな、と改めて思う。
0投稿日: 2019.11.21
powered by ブクログ教育現場の政策介入って、予算ないから敬遠されがちだけど、これはその問題箇所をかなりわかりやく書かれていてとても助かりました。
0投稿日: 2019.10.30
powered by ブクログ就学支援金など基本的な制度の知識を欠いていたことを改めて再確認させられた。子どもの貧困に対して有りうる対策を網羅的に挙げた上で、有効な施策を真剣に検討している。ターゲッティングという発想を強調している点も本書の特徴である。
0投稿日: 2019.04.30
powered by ブクログ子どもの貧困をデータで示した一冊目から一歩踏み出して、具体的な対応策を模索している。難しい問題だけど読みやすい。
0投稿日: 2015.07.05
powered by ブクログ前著から5年、的確に問題点は提示されたし、子どもの貧困に対し、社会の視線は着実に向けられた。 それなのに適切な対応策が十分に取られていないことに、問題の広範さを読み取れます。
0投稿日: 2015.06.16
powered by ブクログ前作は子どもの貧困の現状がデータで語られることが中心だったが、今作は子どもの貧困の原因とその解決策を探ることが中心。 結論として、原因が複合的なので、解決策も多岐に渡り、それら全てを対策するのは時間と人手と、何より予算上難しい。だからこそ、優先度を見極めてやっていかなければならない。 対策として、政策なのか、対象者の選定方法なのか、現金給与・現物給付なのか、教育なのか就労支援なのか。それぞれにメリットもあれば、不透明な要素もある。またたとえば就労支援といっても色々な方法がある。 子どもの貧困は、就労の困難さにつながるので、国の税収としてロストが大きく、貧困対策は税収増加に対してコストパフォーマンスが大きいというのが、データとしても実証されており、対策していくことの有効性を語る上でとても分かりやすい。
0投稿日: 2014.12.14
powered by ブクログ前作「子どもの貧困―日本の不平等を考える―」に続いて読了。 社会問題を扱う新書で続き物、というのはあまり多くないですよね。 問題の所在や構造を明らかにするだけでも新書としては十分な効果だと思いますが、 著者の阿部さんは解決策についても道筋を示したいという強い思いで、 ほとんど全編を解決策の考察に費やすこの続編をまとめたそうです。 1、子どもの貧困の現状 前作で示した日本における「子どもの貧困」の現状を簡単におさらいしつつ、「貧困を放置することがどれほどの社会的な損失うになるか」という視点で議論を進める。 その中で特に印象の強い知見。 ・子ども期における貧困は様々な悪影響を及ぼす ・学力面や健康面で、貧困層とそうでない子には統計的に有意な差がある ・特に深刻なのは、貧困による家庭内のストレスが身体的・心理的に影響を与えること ・そうした影響は大人になっても継続してしまい、貧困の連鎖につながっていく こうして発生した貧困に対して、社会は多くの負担をしている。 つまり、貧困層にいる人たちからの課税収入が少なく、税金も社会保険料も支払えず、場合によっては生活保護を受給する場合もある。また、健康面でのリスクも高く、国や自治体の医療費負担も大きくなる。 貧困という社会問題に子ども期のうちに手を打つというのは、こうした将来的な社会負担を軽減し、むしろ対象が経済的に自立し税金や社会保険料を支払うことができるようにする、ということである。 すなわち、「貧困対策は社会的にペイする」のであり、貧困に手を打たないことは「社会的なコストを放置する」ということである。 これは社会政策論としては、基本的な視点ですが、 この「社会的コスト」という考え方が理解を得られない場面は非常に多い。 たぶんそれは「社会的にペイする」ことを明らかに示すのが、難しいから、というか批判しやすい点を含むということが関係しているのでしょう。本書で扱う「子どもの貧困」もそうですが、多くの社会問題は、その問題の構造を完全に解き明かすことがまず難しい。難しいというか社会的な様々な事情が複雑に絡んでおり、厳密には不可能に近い。また、それに加えてペイするまでに時間がかかり、解決策の効果検証が非常に難しいという問題もある。 問題に関心を持つ人からしてみれば、厳密には分からないにしろ効果が出る可能性があるのであればやってみるべし、ということになるが、 実際には非常に財政的にも厳しい状態での利益対立に追いやられるとなかなか立場を強く保つことは難しい。 まぁだからこそ、本書のように海外の事例も含め、使えるデータを集め、 施策を丁寧に検討する研究者の取り組みには非常に貴重です。 2、要因は何か おそらく本書の中で最も衝撃的な章。 ここで取り組むのは「なぜ、貧困であることが子どもに悪影響を与えるのか、なぜ「貧困の連鎖」が起こるのか」を考えること。 これを考えるにあたって、様々な「連鎖の経路」が提示されるのですが、そのあまりの数に茫然とします。 内容までは紹介できないですが、その数の多さだけでも紹介できればと思うので、経路の切り口だけ取り上げてみよう。 (1)金銭的経路 ・教育投資 ・家計の逼迫 ・資産 (2)家庭環境を介した経路 ・親のストレス ・親の病気(精神疾患を含む) ・親との時間 ・文化資本説 ・育児スキル/しつけスタイル ・親の孤立 (3)遺伝子を介した経路 ・認知能力は遺伝するのか ・その他の遺伝的経路(身体的特徴・性格・発達障害) (4)職業を介した経路 ・職業の伝承 (5)健康を介した経路 ・健康 ・発達障害/知的障害 (6)意識を介した経路 ・意欲/自尊心/自己肯定感 ・福祉文化説 (7)その他の経路 ・地域/近隣/学校環境 ・ロールモデルの欠如 ・早い離家/帰る家の欠如 なかには大した効果はなかったり、むしろ偏見の温床になっているようなものあって、この中からどの経路が重要なのかを描き出していくところが本筋なんですが、いやもうこの経路の多さとそこから想像されるストーリーを考えているだけで気が滅入ってくる。なんて世知辛い世の中なんでしょう。 自分の子どもに対してここをこうしてあげよう、それが子どものためになる、と自分が考えるものもいくつもあるんじゃないかと思う。そうしたものが貧困の解消という意味で子どものためになるものなのか、考えてみるのも良いかもしれないですね。 また、僕がプロボノとして関わっているのも児童支援のNPOであり、学習支援活動なんかに携わったりもしているんですが、大きな社会問題の改善に向けた力の一つになっているんだなと感じる一方で、氷山の一角すぎるというか問題の複雑さや大きさに無力感を感じたりもして、複雑な気分になります。 3、政策を選択する&4、対象者を選定する 3章と4章はセットです。本書のむしろ2章までは前提で、ここからが「解決策を考える」本書の中心的な部分なんですが、思い切ってレビューからははずします笑 あまり細かく紹介ししすぎてもただの要約になっちゃいますしね。 ところで、レビューってなんですけね。何をどう書いたらレビュー何だかよく分からずにレビューブログしてます。今度調べてみましょうか。 さて、一口に政策を選ぶと言ってもその選び方はいろいろです。 ただ一つこれでばっちり、みたいな政策も、その選び方も存在しないからこそ、私たちが目にする政治はわかりにくく取っ付きにくいのです。 著者の阿部さんが用いる視点は「政策の効率性」です。 つまり、どれぐらいの資源の投入に対して、どれくらいの効果が期待できるかという観点。 この観点は、現実的にも非常に有効で賛同できる部分です。 対象者の選定については、まず基本的な選別主義と普遍主義の対立の議論から入り、ターゲティングの考え方などを丁寧に紹介します。 この3、4章の議論の流れは、政治学を学ぶ学生は参考にしたら良いと思うよ。 非常に丁寧ですっきり頭に入るけど、これを自分で整理してまとめるのは非常に大変です。 この丁寧な論述に論文執筆の苦しさを思い出す。 5、現金給付を考える/6、現物(サービス)給付を考える 5章と6章もセットです。3、4章で紹介した政策オプション選定の考え方をもとに、実際に日本で採るべき具体的な施策について検討していく章となります。 まず語られるのは「現金給付の大切さと確かな効果」 日本において現金給付というのは非常に嫌われやすい。生活保護バッシングもまだ根強く残っていたり、いわゆるバラマキであったりととかく現金を給付するということに対しての嫌悪感が強い。 だが、現金給付は様々な調査で確かに効果が出ているのであり、不必要なバッシングや偏見を取り除いていきたい、という筆者の真摯な姿勢が伺える丁寧な記述でその特徴が説明されます。 また現物給付については、その選定や効果検証が現金給付よりさらに難しいことに触れつつ、筆者が有望だとするいくつかの政策を紹介しています。 以下は自分のNPOでの取り組みとも関連して個人的に注目したもの ・放課後プログラム…現状の学童保育などはあくまで保育サービスとして設計されており、放課後格差による弊害のうち、「事故や犯罪に巻き込まれる危険」にしか対応できていない。特に学力の低下、体力の低下、音楽等の学校で育まれないスキルの未発達などの問題には対応出来ていない点の考慮が必要。 ・メンタープログラム…アメリカのビッグブラザー・ビッグシスタープログラムを始め多くのモデル事業で効果があるとされている。注意点としては、長期間の関わりが必要であること。 ・学習支援…さまざまな取組が存在し効果も報告されているが、効果測定はほとんどなされていない。 7、教育と就労 本書で議論の薄かった部分への補足という位置付けですかね。 本書では子どもの貧困対策として、特に子どもが小さいうちに重点的に支援することを(財政的な問題も踏まえ)打ち出しますが、貧困の連鎖を断ち切るためには当然、教育のルートにしっかりと乗り、就労まで引き継いでいくことが重要ですので、その点で本書の議論を補完するような内容です。 教育という問題については、ほとんど全員が自分の経験に照らして考えることができ、関心を集めやすく、議論を呼びやすい分野です。 学校や教育に関わる問題をいくつか挙げてくれと言われれば、たいていの人は苦労せずに何個かは挙げることができるんじゃないかと思います。 そんな教育という問題について、貧困対策という一つの視点から切り取ってみるとどのように見えるのか。 こういう風に社会課題を切り取って考えてみるはいろいろ応用が聞くので良い視点になると思います。 以上。 日本における貧困問題の現実やその問題点を描き出した前作も非常に貴重な作品でしたが、この続編もすばらしかった。 ある社会問題に対する施策を検討し、決定、実施するということは実際に考えてみるとものすごく難しい問題であることがよく分かります。前作の問題の捉え方と合わせて、政策論あたりに興味のある政治学を学ぶ学生は手にしてみると良いのではないかと思います。 子どもの貧困に少しでも興味を持たれた方は、手にとってください。 その際はぜひ一作目と合わせて読むことをオススメします。
0投稿日: 2014.12.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
私たちが問うべきなのは、この「機械の不平等」を是正するために、どれくらいの費用を社会が負担するべきかという問いである。その相場観を得るためには、逆に、貧困を放置すれば、どれくらいの社会の損失になるかを知ることが有益である。(p.25) 肝心なのは、この「できることをやる」姿勢である。まず、本章で紹介したさまざまな経路の中でも政策的に介入できるものと、介入できないものがある。たとえば、「職業」を介する影響に政策的に介入することは難しい。自営業の親の店舗や会社、政治家の親の地盤などを子どもに渡すなとは規制できない。一方で、教育投資や医療サービスなど、すでに政府が大きく関与している部分もあり、そこには、より貧困の子どもを支援する仕組みを組み込めるであろう。(p.71) 子どもを「将来の人的資本」と見なし、貧困の不利を解消する政策を、「人的資本政策(Human Capital Policies)」として論じている経済学者も少なくない。貧困に対する政策をただ単に「かわいそうだから」という論理ではなく、「社会に対する投資」という論理で考えるという点では、この領域の学問にも説得性はある。(p.90) 数ある政策の選択肢の中から実施する政策を選ぶために、長期的な収益性の観点が欠かせないことである。子どもの貧困に対する政策は、短期的には社会への見返りはないかもしれない。しかし、長期的にみれば、これらの政策は、その恩恵を受けた子どもの所得が上がり、税金や社会保障を支払い、GDPに貢献するようになるので、ペイするのである。すなわち、子どもの貧困対策は投資なのである。(p.96) 貧困に対する対策には、「川上対策」と「川下対策」がある。「川上対策」とは、貧困が発生する前に手を打つ策である。すなわち貧困をつくりださない社会の仕組みや制度を構築する政策を指す。たとえば、義務教育の徹底や、最低賃金などの労働規制や、誰でも受診できる医療サービスなどがこれにあたる。一方で、「川下対策」とは、貧困に陥ってしまった人々が最低限の生活を保てるようにする策である。生活保護制度や就学援助費のような現金給付や、低所得者のための無料低額医療サービスの提供などがわかりやすい例である。二つの政策の決定的な違いは、「貧困者」や「弱者」を選別するかどうかである。(p.102-103) ある地方議員の話でショックだったのが、「市民にとって、生活保護受給者はもはや憎しみの対象になっている」という言葉である。市民の「最後のセーフティネット(安全網)」であるはずの生活保護制度がこのような言葉で語られるのは、日本の社会政策の歴史の中でも最も大きな失敗である。ターゲティングの執行の際は、このような失敗が起こらないように細心の注意と工夫が必要なのである。(p.129)
0投稿日: 2014.10.17
powered by ブクログ◆前著「子どもの貧困―日本の不公平を考える(http://booklog.jp/item/1/4004311578)」で提起した問題に対して、本書はその対策について模索しています。前著で示された「子どもの貧困」がもたらす最大の問題は、子どもがスタートの段階から大きな不利をこうむっていることと、子ども時代のそれが一生尾を引くということです。 ◆ところが”ちまた”では、「貧しい家庭の子でも自力で努力して裕福になった人はいる」だとか「貧しいのは、学歴が低いのは、努力が足りないからだ」といった声も根強いようですね(私感ですが)。まして、そうした人たちに現金を給付することについて強い抵抗があることは間違いありません(例えば生活保護制度)。著者が前著と本書で最初にとりかかっているのは、まずこの「常識」に異議を唱えることです。 ◆本書は、前著と比べるとかなり難しいです。というのも、前著は「子どもの貧困」という”わたしたち”の問題でしたが、本書はそれを解決する政策に踏み込むものであり、それは基本的にわたしたちには縁のない話だからです。 ◆とはいえ本書は、より多くの人に「考えてもらうための本」であって、考えながら読めば、社会福祉の立派な入門書になるのではないかと思います(なにより説明が現実でとられている・とられてきた貧困対策に即しているし、抽象的な説明が続くような小難しい入門書よりも分かりやすい気がするのです・・・^^;)。 ◆本書では、具体的な政策をどうするかという最大の課題がまだ残されています。「子どもの貧困」という問題に対して、「だれに」「どの段階で」「なにを」「どのように」手助けを行うべきなのかということは、これからの「子どもの貧困」対策、ひいては親への支援も合わせた(いちばん小さな”社会”の単位としての)家庭の支援を体系的に考えなくてはいけません。本書は、そのためのもっとも基本となる武器を与えてくれる本だといえるでしょう。 ◆早い話が、お勧めの一冊です。
0投稿日: 2014.07.18
powered by ブクログ実態紹介に終始せず、施策の可能性について論じてあるの点が凄い。そんなに簡単にいく内容・問題ではないが、いろいろ試すことは必要だと思う。
0投稿日: 2014.06.22
powered by ブクログ子供の貧困の連鎖を断ち切る有効な対策を、費用対効果、限られた予算、国民的合意レベルなどを踏まえ、多面的に模索されている。 詳細なデータの裏付けや、問題解決を検討するプロセスが論理的で、価値観を超えて多くの人々が納得できる提言になっている点は、さすがだと思った。 「子どもの貧困対策法」という法律ができるなんて数年前には想像もできなかった。それだけ事態が深刻である一方で、国民的合意が進んだということ。自分自身も何ができるか考えたい。
0投稿日: 2014.06.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
前著『子どもの貧困―日本の不公平を考える』(http://booklog.jp/users/ayahito/archives/1/4004311578)を踏まえ、では実際にどうやって子供の貧困問題についての対策を立てていくか、社会学の立場から多くを提言している。 そでに「社会政策論入門としても最適な一冊」とあるように、専門色の強い一冊だと思う。特に政策とその効果をどう測定するか、などといったことはかなり難しく感じた。 そんな中で「なるほど」と思ったのは、政策提言の中の一つ。私なりにまとめるのであれば「現金給付中心から段階的給付へ」ということ。特に母子世帯は貧困で苦しんでいる率が高いので、子供が小さいうちは家計についてのストレスを払しょくし、子供へのストレスを最小限にする。そして子供が成長していくにつれ、学校や学習で必要なものを支給していくという考え方。 「現金」か「物」か、という二元論ではなく、段階に応じた支援が効果的であり、支持されやすいだろうと感じた。
0投稿日: 2014.04.29
powered by ブクログ阿部彩『子どもの貧困II』岩波新書、読了。『子どもの貧困』を広く訴える契機になった前著のアップデートされた続編。現状で考えられる「解決策を考える」(副題)一冊。何から手をつければいいのか。プライオリティの高い政策はどれか。ひとつひとつの仮題を具体的に検討する。子どもの貧困に限らず気が付くと弱者に転落せざるを得ないのが日本社会の現在。もう、無責任な自己責任はやめよう。
0投稿日: 2014.04.25
powered by ブクログ貧困と聞くと、途上国や紛争地での話しのように聞こえます。一億層中流と言われながら育った自分には、貧困問題と日本とを結びつけるのに、少し違和を覚えます。 この本を読み、統計を見ると、違和が小さくなりました。特に、子どもや母子家庭での貧困の状況は急いで対処しなくてはならないと感じました。 「日本では貧困対策が取られているでしょ」という指摘があるかもしれませんが、どうやら、効果はあまり上がっていないようです。 この本を読み、一番驚いたのは「再分配の逆転現象」(前著『子どもの貧困』の中に詳しいらしいのですが、僕はまだ読んでいません)。 政府は、税や社会保険料などでお金を集め、生活保護などの形で国民に再分配します。裕福な層から貧困層への所得分配が貧困削減策として行われているわけです。が、日本では再分配後の貧困率が再分配前よりも高くなるのです(この「貧困率の逆転現象」はOECD諸国の中ではにほんだけ)。 経済成長による分配は自然に貧困層に行き渡るとする「トリクルダウン」に対して否定的な検証結果がでているようです。 政府の所得再分配もトリクルダウンも効果薄となると、どのような策を講じればよいのか。 その提示がこの本のキモです。
1投稿日: 2014.04.13
powered by ブクログ著者は中途半端だと書いているが、本書が提起した問題のありかと解決への道筋は十分にインパクトがあった。日本の財政も見据えながら、まずは何に取りかかれるのかが分かったからだ。 ・ひとり親世帯の貧困率は日本は最低 ・貧困層への自然なトリクルダウンはない。経済成長で。 ・現代は習い事を通さないと豊かな経験が積めない。 ・社会的地位ホルモンがセロトニン ・個別学習指導は学力向上だけでなく、大人社会への信頼感の回復、対話能力の向上、忍耐力の養生がある。 ・選別主義のパラドックスから、再分配のパイの大きさへの注目 ・現金給付に有意な効果はある ・放課後の子供の孤立は深刻 ・子どもの学習費調査
1投稿日: 2014.03.01
powered by ブクログ統計や論文を多用した、研究者らしい一冊。 説得のためなのか、前半は貧困対策を投資に見立てた経済効果を全面に押し出した論調が続く。 後半で印象的だったのは、現金給付と現物給付の比較。ここまで詳細に検討されたものは未だ見たことがなかった。 まずは定時制高校と母子家庭に厚い支援を制度化すべきなんじゃないのかなー。
0投稿日: 2014.02.16
powered by ブクログ子どもの貧困についての政策をすすめるために、指標の設定、つまり「測る」ということ。政策の有効性についての効果も 「測る」こと。正当な意味でのでのアカウンタビリティに挑戦しようとした本。ただ、その「測る」が欧米の指標を参考とするしかない点(現状ではそれしかない)が物足りない。これは筆者の責任ではないが。 福祉の中に「生活指導」要素。自治的、自立的要素を考える必要がある。 竹内常一さんの「教育と福祉の出会うところ」の提言が改めて重要な意味を持つ。
0投稿日: 2014.02.15
powered by ブクログ結局・・・対策としては「人的なサポート」ということなのだろうか。 ボランティアなどのメンター制度が一番なのに、結局・・・、行政も国家予算も、ここんとこにはお金を出さない。 その辺の日本土壌について掘り下げてほしいものだ。
0投稿日: 2014.02.09
powered by ブクログ著者の実直の研究成果と主張に胸を打たれるとともに、自分の無知を嘆かざるを得ませんでした 子供を持つ人はもちろん、一人でも多くの人に読んで欲しい内容です
0投稿日: 2014.02.07
powered by ブクログ369.4||Ab3||Ko=2 子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)2008 369.4||Ab3||Ko
0投稿日: 2014.01.29
