
総合評価
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powered by ブクログ女優の過去を振り返る、昭和のパラレルifストーリー 歌手デビューから37年のベテランシャンソン歌手 橘百合子 雑誌のインタビューをきっかけに、契機となった出来事を思い出す 田舎から上京してきてからの回想と、「もしあの時違う選択をしていたら?」という「もう一つの過去」、そして「現代」が入り乱れて描かれるパラレルストーリー 「マイナス・ゼロ」と同じく、昭和初期の風俗が細部にわたって描写されている 今回はテレビの開発に関する情報が細かいところまで言及されている まぁ、興味がなければそこの描写は読み飛ばしても良いのではなかろうか そして、同じ時代の物語という事で、「マイナス・ゼロ」の登場人物達もちょっと登場 こんな作品同士に繋がりを作る作家さん好き ヌードモデルの事務所に行くか、映画を観に行くかという選択という分岐点 歌手になったきっかけは、映画館を出た後に車に泥をかけられ、音楽プロデューサーとの繋がりができたから その場合、いい感じになっていた青年は友人との諍いが原因で盲目になってしまう もしヌードモデルになっていた場合、後に青年が連れ去りにきて、一般的な結婚をする 青年はテレビの技術開発の仕事をする事になるが、戦争が夫婦にも影響を与え…… 最後のところで、「そういうことかー」としてやられた感のある事が明らかになる 個人の選択が与える未来の可能性ってとても大きいのですねぇ…… 新たな技術の発見や開発には、そのきっかけとなる人の想いがあるわけで もし、その人の想いがなければ誕生しなかった技術なんですよねー タイトルの「エロス」は青年の作曲した歌の名前 どちらの選択でも誕生していたであろう曲 ってか、広瀬正作品はタイトルで損してると「マイナス・ゼロ」で書かれてたけど、この作品が一番損してるんじゃなかろうか? 作品の内容はまエロチックなところはないのにね ヌードモデルになるところはあるけど、それとて官能小説のような表現はされてないですしね そう言えば、歌手のモデルはヌードモデルをしていた経歴を持つ淡谷のり子らしい 私としては歌マネの審査員で厳しいコメントをする人というイメージしかないですけど、全盛期にはものすごい人気だったのでしょうねぇ
2投稿日: 2023.02.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
マイナスゼロに続いて2作目。 著者のSFは本当に面白い。 しっかり楽しませてくれる。 パラレルワールドをどう表現するんだろう? と興味からどんどん読んだ。 最後まで読んで、あ、そう来たか!と思わせる 展開さすがです。 また解説にもあった通り、物語のディティールへの こだわりをとても感じた。 マイナスゼロの世界観に近いと思ったら リンクもしてくれたし。 でも「風立ちぬ」の菜穂子がこんなところで 出てくるとは思わなかったなぁ。 風立ちぬの映画観る前にこれ読んでたら テンション上がったかも!笑 面白かった!
10投稿日: 2020.07.27
powered by ブクログ別の時間を生きる人間に、著者の生きた時間を追体験させてくれるかのような表現力の凄さはこの作品も例外ではない。この人の作品を読んでいる間は、自分自身もタイムトラベラーになったかのような錯覚を覚える。
3投稿日: 2019.10.23
powered by ブクログ品のある文章と『マイナスゼロ』に同じく昭和初期の描写が楽しい が小説として面白いかというととても微妙 いっそ『遥かな街へ』で良いと思う
1投稿日: 2019.01.12
powered by ブクログタイトルはなんだかなぁだけど、中身は安心して読める恋愛小説(?) 知らない昭和の時代が勉強できる。 著者自身もちょっと顔を出す。 あ、「マイナスゼロ」のカシラにも再開できた。なんか、うれしい。
0投稿日: 2017.09.07
powered by ブクログ良い。 作者は、理系で、古い自動車やラジオが好きなんだろうな。 パラレルワールドのお話。ストーリーがべっとりしたところが少なく、きれい。 やっぱりこの作者の恋愛小説好きだ。 現在のラストがなかなか。
0投稿日: 2017.06.03
powered by ブクログ設定はよくあるパラレルワールドというか。今となっては目新しさも無いのだが、その嚆矢ということなのだろうか。 ただその語り口というか、いかにも全昭和的な、空気すら感じさせる出来はとても良い。 本当に、二つの生き方の、いや、読みきった後でも、どっちが幸せだったのか、一言で言うことはできない気がするし。
0投稿日: 2017.04.20
powered by ブクログ本書を初めて読んだのは高校生のときだったか。図書館で『エロス』なんて本を借りるのはちょっと勇気がいった。もっともこの「エロス」は日本式にいうなら「縁結びの神」程度の意味である。 デビュー37周年を祝う大歌手・橘百合子は、一時は大成功したものの今は落ちぶれている技術者・片桐にひょんなことから再会する。昭和8年、彼らは互いに惹かれ合っていたのに、ある偶然から百合子の歌手デビューが決まって、決定的に人生がそれてしまうのだ。もしその偶然がなかったら、彼らはともに人生を歩んでいたに違いない、今とは異なった人生を。演歌だねえ。 それが副題の「もう一つの過去」である。もう一つの過去はタイムマシンにより歴史改変されて生み出されたわけではなく、登場人物の「あのとき、もし」という回想を端緒として作者が勝手にディテールを語っていくのである。いわば作者がエロスを演じて、結ばれなかった二人を結びつけようと語り出すのである。 そしてこれは「もう一つのマイナス・ゼロ」ともいえる。著者の関心は、若い男女が懸命に生きる姿を昭和史の中に位置づけながら、かけがえもなく愛おしいものとして綴っていくことなのだ。『マイナス・ゼロ』の脇役も登場するし,広瀬正少年のカメオ出演(?)がまたもやある。読者は「もう一つの過去」のほうにリアリティを感じ、そこからすると「もう一つの未来」といえる「現在」のほうをまるで夢のように感じ出す。それが作者の策略でもある。時間とは可能性の束である。しかし人生はひとつしかない。「もう一つの過去」が読者にとって抜き差しならぬ現実になっていったとき、気付かされるのである。時代は日中戦争勃発のころ、彼らの生活にも暗雲が立ちこめていく。彼らがつかみ取るのは果たして幸せなのか。 あり得たかも知れないもう一つの過去に思いを寄せながら、「現在」の百合子は自分の人生を肯定する。当然これほどの成功を収めた人なのだから不思議はない。37年をへての橘との再会にしても苦みを噛み締めながら幸福のひとつとして受け入れる。しかし、読者は作者が万感の思いを込めて綴る昭和史を共に生きるカップルへの思いに引き裂かれているのだ。 人生の輻輳、生きることの価値の多層性を読者に突き付ける余韻の深い小説といえるのではないか。結末にはある種のどんでん返しが用意されているが、ネタバレして読んでも支障はない。細部が大事な本だから。
0投稿日: 2016.02.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
何となく違和感を感じるもののオチにピンと来ず、ネットで調べました。 …え?ええー!そういうこと!? 知識不足過ぎてごめんなさいという感じです。 とある男女の「もしあの時のああしていたら」を追ったパラレルストーリー。 昭和初期の描写が面白くて読みやすい。(技術関係のとこはよくわからないので斜め読みしたけど) マイナス・ゼロの内容結構忘れてるけど、同じ登場人物が出てるみたい。そう言えばその点もあのオチの伏線なんだなあ。 再読すればもっと面白くなりそう。 タイトルに躊躇してたけど色んなところでおすすめされていたのでやっと手にとりました。 二の足踏んでいるみなさん、エロい話じゃないから大丈夫ですよ〜
1投稿日: 2015.07.01
powered by ブクログん?エッ?そういうことだったの!!最後の最後に用意されているオチに仰天させられることうけあい。 東北地方の寒村から上京し、いまや「先生」と呼ばれるほどの大物女性歌手に、ある日ひとりの雑誌記者が「先生が歌手にならなかったら、桶屋式につぎつぎと連鎖反応を起こして、だんだんひろがって、そのあとの日本の姿まで変わっていたかもしれない……」と言ったところから始まる、もうひとつの人生のストーリー。 ふたつの「現実」はそれぞれパラレルに進行してゆくが、この小説の独創的なところは、登場する人々の顔ぶれはほぼ同じにもかかわらず「演じる役割」が異なるだけで〝ほんとうに〟「そのあとの日本の姿」まで変わってしまうという点にある。しかしその結末がどうであれ、これは「みつ子」と「慎一」という男女が紡ぐ大いなる「愛」の物語なのであり、作者があえてこのタイトルにこだわった理由もまたそこにあると思うのだ。
0投稿日: 2014.01.01
powered by ブクログ初めて読んだ広瀬正の作品は「マイナス・ゼロ」。 あの作品の衝撃に比べると、この作品の「驚きのラスト」はさほどではなかったかな。 しかしそういうSF的な部分は関係なく、生き生きと描かれている昭和初期の雰囲気がとても魅力的だった。 「マイナス・ゼロ」を久々に読み返したくなった。
0投稿日: 2013.06.02
powered by ブクログ教科書では絶対に知ることのできない昭和初期の人々の暮らしを感じました。古いことだけど、新鮮な経験でした。多くの日本人に読んでほしい、素晴らしい作品です。もちろんSFですよ。ただ、タイトルが最悪。他につけようがあっただろうに・・・。本当に本当に残念でしかたがない。
0投稿日: 2013.05.07
powered by ブクログSF的な要素やラストのインパクトが、個人的には少なめ。 その分、昭和初期の時代や人々、生活の様子がいつも以上に 鮮やかに感じられて面白かった。 その時代の人々が、何を見、何を聞き、何をし、何を感じていたか。 「時代のディティールを大切に見つめてもいいのではないか…」 という解説の言葉に納得。
0投稿日: 2012.02.13
powered by ブクログ大歌手・橘百合子はふとしたきっかけで自分の過去に思いを馳せる。あの時、もしも違う選択をしていたら……。 「現在」、「過去」、ありえたかもしれない「もう一つの過去」の3つの時系列を行きつ戻りつしつつ、昭和初期の風俗を細かいディテールまで綿密に描き込む筆致が素晴らしく、まさにその時代に生きているかのような感覚が味わえる。 ありがちなネタのような気もするけど、ラストのドンデン返しには見事に一本くらいましたよw。
0投稿日: 2012.01.19
powered by ブクログ題名が題名だがちゃんとした?小説。 歌手として成功を収めた橘百合子が37年前の運命の日を振り返る。 もしもあのときもう一つの選択をしていたら・・・ 「もう一つの過去」のストーリで、本当の過去では歌手にったためすぐに音信不通となってしまった片桐と再会し、恋愛、結婚生活を、昭和初期の描写を交えて進んでいく。 この昭和初期の事件や出来事、自動車、テレビジョン技術、風俗、生活環境の細かな描写がすごく、昭和初期を克明に記録しているような感じも受ける。 ただ、最後のオチがいまいちピンとこなかった。 http://booklook.jp
0投稿日: 2011.11.21
powered by ブクログ良かった。こういう話が好き。 選択しなかった選択肢。パラレルワールド。 どちらかが良くてどちらかが悪いとかないんだ、たぶん。 広瀬正の小説全集買っても良いかもと思えて来た。
0投稿日: 2011.06.11
powered by ブクログ「もしも…あの時…○○だったら…」ということを誰しも一度くらいは考えたことがあるだろう。とりわけ、積み重ねた人生の時間が長ければ長いだけ、「What if~」という疑問の入り込む余地は増える。それは取りも直さず、人生の岐路に立たされた経験が多いということであり、その転換点に能動的であれ受動的であれ、何らかの決定を施しながら、その人が一心に生きてきたということであるわけだ。 デビューから三十七年を迎える女流歌手・橘百合子も、そんな「What if~」の世界にふと迷い込んだ人間の一人であった。歌手生活三十七年記念リサイタルを企画する彼女は、坪川という女性記者から、自分のグラビア写真とアンケートの回答が掲載されている一冊の雑誌を受け取る。そこにはこうある。 <だれでも、自分のこれまでの生活をふり返ってみた場合、『あのとき、ああしていたら……』あるいは『あのとき、ああしなかったら……』と思うことが、いいにつけ、わるいにつけ、あるものです。あなたの場合、それはどんなことでしょう?> 十数人の歌手がそのアンケートに回答しており、橘百合子も回答もそこに載っているのである。 <忘れもしない昭和九年九月二十日、私は映画を見に行きました。もしその日、映画を見に行かなかったら、私は歌手にならなかったでしょう。というのは、その映画が歌手の成功物語だったから、などというのではなく、映画を見終わって出たとき、ちょっとした事件が起こり、そのおかげで、私をレコード界に入れてくださった、恩人の柚木先生にめぐり合うことができたからなのです> 女性記者・坪川は、橘百合子のこの回答に興味を抱き、「もし歌手にならなかったら、先生は今頃どんな人生を歩んでいたでしょう?」と百合子に問う。坪川の何気ないその一言から、橘百合子は自分の不思議な来し方を振り返り始める。彼女は若い頃、歌手としてレコード会社重役の柚木氏に見出されるその少し前、身を寄せていた叔父が市電運転手の職を失ったばかりに、叔父夫婦の家計を助ける為、ヌードモデルになる決心を固めていたところだったのだ。あの時、自分がヌードモデルになっていたら…と百合子の想像の翼は、少しづつ拡がっていく。 そして、坪川記者とひとしきり話をして自宅に着く間際、百合子が乗った車は一人の小汚い形(なり)をした中年男性を軽く撥ねてしまうのである。そのうらぶれた姿の中年男性は、橘百合子が叔父を頼り、岩手から上京して間もない頃、密かに恋心を抱いていた東京帝国大学工学部の学生・片桐慎一のなれの果てなのであった。 百合子にとってショッキングだったのは、その片桐慎一が二十代の内に失明してしていたことだった。お互いにほのかな好意を抱いていた若き頃。三十七年前の昭和九年―――。本名・赤井みつ子というごく普通の女の子が、シャンソン歌手・橘百合子として芸能界にデビューしたことで、みつ子(百合子)と慎一のささやかな交感はあっけなく終わった。みつ子(百合子)を失った片桐慎一は、ダンスホールやカフェーに頻繁に出入りするようになり、あるダンサーを巡ってのちょっとした誤解から、彼は友人の小坂に日本刀で斬り付けられる羽目に陥ったのである。斬撃は、慎一の眼に失明という致命的な後遺症を残した。中年となった片桐から、そういった過去の出来事を聞いて、百合子はますます、あの時、自分が歌手になっていなかったら、ヌードモデルの道を選んでいさえすれば、慎一が傷心からダンスホールやカフェーに入り浸ることもなく、失明もしなかったかもしれないと想像をめぐらす…。 (もしもあの時…) 百合子と慎一が、お互いのこれまでの人生をしみじみと語り合い始めた時、「もう一つの過去」という章が静かに立ち上がる。それは、みつ子(百合子)がヌードモデルになった場合の人生である。みつ子(百合子)と慎一、二人を取り巻く人々の、あり得たかもしれないもう一つの過去・もう一つの運命の歯車が、静かな音を立てて動き始める―――。 作者の広瀬正氏は「時に憑かれた作家」とも呼ばれ、タイムマシンやタイムパラドックスをテーマとした作品をいくつか上梓している。だが、本作品『エロス』は、そのタイムマシンが登場するわけでもなく、ましてやタイムパラドックスが生じるわけでもない。何か謎解きをしなければならない性質のものでもない。赤井みつ子という女性が歌手・橘百合子となって成功を収め、片桐慎一が失明して落ちぶれているという「確定した過去」と、赤井みつ子が平凡な主婦で、彼女と結婚した片桐慎一が失明もせずテレビジョン研究に打ち込んでいるという「あり得たかもしれない過去」とが、「確定している現在」とゆるやかに交錯するだけの物語である。 しかしながら、その「確定した過去」と「あり得たかもしれない過去」が、別個に存在する、交わらない、文字通りのパラレルワールドなのかというとそれも違う。「確定した過去」が「確定している現在」に影響を及ぼしながら繋がっているように、「あり得たかもしれない過去」も「確定している現在」を構成しよう、構成しようとしているのである。「あり得たかもしれない過去」は、あくまで「かもしれない」であり、百合子と慎一に、実際にそんな過去があったわけではないのに、「あり得たかもしれない過去」での出来事の数々は「確定している現在」に穏やかに浸潤し、溶け合っている。 この「確定した過去」「あり得たかもしれない過去」「確定している現在」を鮮やかに絡ませる手並みは、さすがというほかない。なおかつ『マイナス・ゼロ』でもそうだったのだが、本作品には、少年時代の広瀬氏本人が登場している。そしてさらに、その『マイナス・ゼロ』でイイ味を出していた「カシラ一家」が、この『エロス』にも顔を出しているのである。みつ子と慎一の新婚夫婦が間借りしていたのが、このカシラ一家の家で、借りていた一間は『マイナス・ゼロ』の登場人物・浜田俊夫(中河原伝蔵)が居候していた座敷。『マイナス・ゼロ』の浜田俊夫(中河原伝蔵)が出征している間だけという条件で住み込んだのが、『エロス』のみつ子と慎一という設定なのだ。広瀬氏は、自分自身の少年時代をこの『エロス』に溶け合わせ、自分が書いた別の作品をも融合させている。『エロス』という作品内で「確定した過去」と「あり得たかもしれない過去」が「確定している現在」に繋がっているだけではなく、作品外でも様々な要素が、そっとリンクしあうこの作品は、広瀬正という作家が、ただひたすらに面白い物語を考える匠(たくみ)であることを証明しているといえよう。 橘百合子と片桐慎一は、物語の最後に、ある場所へと向かっていく。その場所は、「あり得たかもしれないもう一つの過去」において、二人が果たせなかった約束に関わる地となっている。実際には存在しない「もう一つの過去」での、これも存在しない一つの約束を、百合子と慎一の二人の男女は、出会いから三十七年を経て、現実に存在する「確定している現在」で果たそうとしている。 人生というのは、たとえどういう過去を辿ってきても、必然的にそうなるように出来ているものなのだろうか。例えばパズルのピースをどういう手順で嵌め込んで行ったにせよ、最終的には素敵な絵画が完成するように。かくあれかし、と願うささやかな想いは、どんなに違う過去を経験してきても、考えられうる限りの枝分かれした別の過去を歩んできても、或いは人生の各分岐点で異なる選択をしていたとしても、最終的には叶えられるようになっているのではないか。そんなことを考えさせられたりもした。 だから、ひょっとすると(あの時、ああしていれば…)とか(何故、あんな選択をしてしまったんだろう…)とかいう風に、徒(いたずら)に悔いるようなことはしなくてもいいのかもしれない。縁のあった人や物や願いとは、どんなにまわり道をしているようでも、人生の時々に応じて出会い、絡み合い、影響し合い、成就していくに違いないのだから。悔いたり哀しんだりしなくてもいいんだよ、と広瀬氏が優しく慰めてくれるような、そんな作品だ。 タイトルの『エロス』が、どういう箇所で現れるかは実際に読んでみた上で発見して頂くとして、この物語の根底にも上品なエロティシズムが流れていることを併せて書いておきたい。 愛さずにはいられない。 触れてみたい気持ちが知らず知らず溢れてくる。 少女のような恥じらい。 相手の言動に一喜一憂したりして。 長年月を経ての再会に心の浮き立つような想いぞしつる。 歌手・橘百合子の歌声は、こののち、いよいよ円熟味を増していくことだろう。
0投稿日: 2010.07.01
powered by ブクログ「エロス」なんて題名ですが、広瀬 正の小説に色っぽさを求めてはいけないのは、もう、学習済み(笑) 現在と、過去、それから、もう1つの過去。 もしあのとき、こちらではなくて、あちらを選択したら……。という、IFものです。 ただし、やっぱり(?)、広瀬 正なので、ものすごく地味です。そして、細かい。でも、それは、今のまでちょっと感じた、無駄な細かさというのではなくて、なかなか、活かされていたと思います。 でも、今まで読んだ「マイナス・ゼロ」、「ツィス」、「エロス」の3冊のなかでは、この本が1番おもしろかったです。 途中で、「もうひつとの過去」の方が、実は……。 というのは、わかってしまったのですが、それでも、最後までしっかりとよませる力があります。 あぁ、こっちの人が、影響していたのか……。 というのは、けっこう、最後、「やられた」という感じでした。
0投稿日: 2010.01.24
powered by ブクログ広瀬正の作品で、パラレルワールドものの傑作。重要な役どころを占める人に淡谷のり子を彷彿させる東北地方出身の女性が登場しており、そういうイメージで本を読み進めてしまいました。 戦前のテレビジョン開発の動向などはその時代を知りつくすほどよく調べていると思います。 そぷいうなかで最後の最後のどんでん返しはやはりSFだなという設定ですが、その時代に溶け込んでいくようないろいろな小道具の置き方はさすがだなと思います。 もう少し長生きして、もっとたくさんの作品を残してほしかった作家です。
0投稿日: 2009.11.07
powered by ブクログ広瀬正のエロスを読みなおしました。もし、あのとき、二つの選択肢のうち別の選択肢を選んでいたら、運命はどうなっていたんだろう、という題材のSFでした。現在、過去、そしてもう一つの過去の3つの時間軸で昭和初期から戦争に至る暗い時代に出会った二人の物語が語られていきます。最後にちょっとしたどんでん返しがありますが、二人の生活していた二つの世界がいきいきと描かれていています。題名のエロスというのは、主人公の男性が作曲する曲の名前なのですが、片方の世界では曲が発表される前に主人公は徴兵されて帰らぬ人になってしまうのでした。いろいろあっても、いま私たちが生きている時代はいい時代なんだなあ、と考えてしまいます。
0投稿日: 2009.10.07
powered by ブクログもしもアノ時ああしていたら/していなかったら 周りのヒトとの関係、周りの人生も変えてしまう という空想と現実を平行でなぞる物語 パラレルワールド かと思いきやラスト数ページはネタバレ禁止 マイナス・ゼロとの微妙なクロスを 軽く読み流しそうになった。
0投稿日: 2009.09.12
powered by ブクログおもしろかったです!!今まで読んだこの全集の中で一番!! 人は誰でも一度はおもうはず。あのとき違う選択をしていたら・・・。 でもそう考えるとき、選ばなかった道は今の道よりもうんとハッピーだったというのが前提なのです。 でも実際には、選ばなかった道を選んでいたら悲惨な人生になっていた可能性も大いにあるわけで・・・。 結局今の人生が自分にとってベストだと信じることがハッピーに生きる秘訣なのかもしれませんね(o^∇^o)
0投稿日: 2009.01.19
powered by ブクログ<忘れもしない昭和九年九月二十日,私は映画を見に行きました。もしその日,映画を見に行かなかったら,私は歌手にならなかったでしょう。というのは,その映画が歌手の成功物語だったから,などというのではなく,映画を見終わって出たとき,ちょっとした事件が起こり,そのおかげで,私をレコード界に入れてくださった,恩人の柚木先生にめぐり会うことができたからなのです> (本文p.14-15)
0投稿日: 2008.12.27
powered by ブクログパラレルワールド・テーマの長編。 最後の1行が効いている。ただし、数ページ前に伏線あり。このパターンには見覚えがある。 乾くるみ『イニシエーションラブ』だ。 ただ、こちらの効果はSF的な眩暈であるところが異なる。 ただ、この仕掛けでは長編を支えるのには弱い。 広瀬正らしい戦前―東京の街、ラジオやテレビ、自動車…―の描写がこの作品を読むに値するものにしている。 「広瀬正君」や「カシラ」一家の登場にはニヤリ。
0投稿日: 2008.11.14
powered by ブクログこの方の小説を読むのは2作目です。前読んだ本の後書きに(星新一さんだったと思うのですが)この方は本のタイトルの付け方が悪い、とありました。…確かに。もっと良いタイトルあると思うんですけどね… もし、過去のあの時違う行動を取っていたならば。今の自分は無いかも知れない。自分を取り巻く環境は変わっていたかもしれない。自分がすぐに思いつくのは大学以降からですね。もし違う大学に行っていたら。違う学部を選んでいたら。違う会社に就職したら。自分を取り巻く環境も変わっていたんだろうなあ。この本の主人公たちほどではないと思いますけれども。 最後のオチがすごく良かった!…でも自分はミッドウェー海戦の勝敗をきちんと知らなかったので軽く読み過ごし、『ん?』と思いネットで事後確認をいたしました…。恥ずかしい…。 前読んだ作品より面白かった。自分はこちらの方が好きだなあ、と思います。
0投稿日: 2008.10.01
