Reader Store
グローバリズムが世界を滅ぼす
グローバリズムが世界を滅ぼす
エマニュエル・トッド、ハジュン・チャン、柴山桂太、中野剛志、藤井聡、堀茂樹/文藝春秋
作品詳細ページへ戻る

総合評価

21件)
3.8
5
7
2
3
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    警告の書、世界経済という視点からグローバリズムという経済活動を検証する グローバリズムがもたらしたものは、経済の自立を失い、国家主権さえ失ってしまう状況である。 EUは、グローバル資本主義のもとに完全な自由貿易、経済的国境の撤廃がもっとも進んでいる地域。 圏内で関税をなくし、通貨を統合した。しかし、その結果なにが起きたか。各国は通貨の切り下げなど金融緩和や財政出動もできず、独自の産業政策も不可能になりました。 EUでの勝者は、ドイツだ。ユーロ安でドイツの輸出産業は大いに潤った。経済危機に瀕した国々を低賃金で下請けのように使いユーロ圏がドイツにとって開かれた市場であることをフル活用している。 IMFによって改革された国、韓国も、グローバル化で破壊された国である。 雇用の不安定化がもたれされた。雇用も自由化されて、労働市場の柔軟性を高めたことが、正規職から非正規職への置き換えが進んでいった。失業率は7.5%、就職準備をしている人をふくめると若年層の失業率は、20%である。 つまり、IMF以降は、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなってしまったのです。 グローバリズムは、短期的な数字を追う。そのために、設備投資、研修、リサーチといったことがおろそかになる。長期的に成長が必要なはずの生産性の向上や、所得向上のためのコミットメントも生まれない。 その結果、技術開発は進まず、所得も増えず、成長が鈍化していく。目先のパイの奪い合いが行われるだけで、パイそのものを大きくするためのインセンティブはうまれない 信号や、車線がない道はめちゃくちゃになって道路の効率性は著しく落ちる。同様に、単なるグローバズムが困難しかもたらさない。ある程度の規制がどうしても必要なのである 人間の欲望を放置するのが、グローバル資本主義、欲望そのものを基準にしようとする、無法地帯になるのも当たり前なのです 日本には日本的なものが残る。でもグローバル資本主義は、それが残らなくなるまでにグローバルしていく 世界には、2つの未知の巨大リスクを抱える地域がある。それは、中国と、ドイツだ。 日本は、人類学上の理由から、アングロサクソン・モデルとはきわめて異なった資本主義の調整されたモデルを示している。 グローバリズムは、国境を前提としないもの、一方で、インターナショナリズムは、真逆の概念です。 デフレをまねく、グローバル資本主義  ①経済の不安定化  ②実体経済への大きな影響―グローバル企業の巨大化  ③格差の固定化  ④危機そのものがグローバル化 ―リーマンショック  ⑤お金第一主義、お金で換算できないものは見捨てられていく ネオリベラリズムは成長すらもたらさない  失業の増大、格差の拡大、富が拡大するからがまんせよ ⇒ でも、実体は、そうなっていない 二国間、多国間の自由貿易協定は、規制緩和をより強く要求内容になっている ⇒ これまで以上にスピードを増して、自国の産業育成が途上国にとってますます困難になっている 第1次グローバル化 1870年代 ⇒ 大恐慌 ⇒ 第1次世界大戦で終了 第2次グローバル化 現代 ⇒ 歴史に学べ  共通事項  ①多国籍企業の存在  ②経済的な相互依存が平和を導くという学説の存在  ③自由主義経済学が大いなる影響力をもった  ④先進国と途上国との対立の先鋭化  ⑤周期的な金融危機  ⑥帝国主義  相違事項  ①国際通貨制度  ②福祉制度の違い  ③国際機関の存在  ヨーロッパに期待する最善の策とは、ユーロの崩壊。アメリカの不確実性、そして、ヨーロッパの死。 世界は大劣化している ⇒新自由主義にそまりきった、現代のエリートは国民の苦しみには無関心になっている ⇒ノブレス・オブリージュの放棄、それはグローバルなレベルで統治能力の危機が起きている グローバリゼーションの危機は民主主義の危機である 経済の危機のみならず、民主主義の危機をも引き起こしている 格差が広がり、すでに許容範囲を超えている エリートの責任はますます大きく、圧倒的なものになってきている 日本の例として グローバリゼーションの対極は、ネーション 言語、歴史、伝統、領土を共有し、日本のどこにうまれようが「俺たちは日本人だ」と了解し合える 価値観を共有する集団として、ネーションはちょうど都合がよい つまり、国民意識のほうが、民主主義よりも先にあるのです 自由貿易によって相手国との市場の激しい奪い合いが起きることもある さらにいうと、自由貿易と、安全保障とは関係がない。 今我々日本人は、その実例をみているのです。 目次 もくじ 第1部 グローバリズムが世界を滅ぼす 第2部 グローバル資本主義を超えて  トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム  新自由主義の失敗と資本主義の未来  歴史は繰り返す?――第二次グローバル化の未来  国家の多様性とグローバリゼーションの危機――社会人類学的視点から  新自由主義と保守主義 第3部 自由貿易とエリートの劣化 おわりに ISBN:9784166609741 出版社:文藝春秋 判型:新書 ページ数:256ページ 定価:830円(本体) 発売日:2014年06月20日第1刷 発売日:2014年07月10日第2刷

    6
    投稿日: 2023.11.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    エリートの質の低下、アベノミクスの失敗等を理由にグローバリズム反対!と唱える。 じゃあ、どうしたらいいのか、ということについてはまた次回ね。ということのようである。 こーゆー人たちはいいよね。何しても何かしらの不満をそれとなく(ほとんどノーベル賞を受賞したどこどこの大学のなになに教授も同じことを言っていた、ということを論拠とすることが多い)言っておけばOK的な。完全に野党です。 とはいいつつ、バランス感覚は重要です。このような意見もあるのかと念頭に置きつつ物事を進める、ということがよい。

    0
    投稿日: 2020.09.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    グローバリズムの終焉と新たな国家像 https://www.cfiec.jp/jp/pdf/prp/0002-hakamada.pdf 今回のコロナ騒動は、大きな流れでいれば、アメリカ単独主義から多極化へ、グローバリズムから国家主義へ、国際資本家がエリートを使って管理してきた世界の終焉なんだろう。う。だから、いろいろ予想できないようなことが、これからもは発生するんだろうな。管理してないんだから。 --------- 2020/06/18:読了  エリートの著しい劣化。  2014年のリーマン・ショックで、グローバリズム=搾取・詐欺 って構図が、隠しきれないほど明らかになり、声を上げる人が増えてきた。  あれから6年、トッドさんの本は継続して追っているが、ハジュン・チャンさん、柴山桂太さん、中野剛志さん、藤井聡さん、堀茂樹さん の本も、読んでいこうと思う。  ハジュン・チャンさんの本は、あまり翻訳されてないみたい

    0
    投稿日: 2020.06.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    新自由主義とかいうものが何なのかもよく分かっていない状況で読んだ。 経済に対する規制を外して、より開かれた状態にすること。そしてそれは、グローバリズムによって国外にも扉を開き、世界を組み込んだ市場経済を作り出す。労働力は自由に移動するし、企業はより広くマーケットを拡大できる! やたら持ち上げられる新自由主義に対する切り込み。めちゃくちゃ要約すると、輸出にばかり目がいって、短期的な利益ばかり出そうとするから、内需を生む賃金の上昇が起きない(コストとしか見なされないから、労働力に投資しない)。大金持ちは簡単に株式で富を増やすが、その会社がどうなろうが責任は持たない。格差は大きくなるし、賃金上がらなくて需要も生まれない。そんな中で過剰な供給は続けられる。キツい。マジ無理。 教育格差の話は面白かった。高等教育を受ける人が増えて、初等教育だけが満遍なく浸透していた時に生まれていた平等的な価値観が崩壊。教育による格差が当たり前のものという認識になり、それが賃金格差に対する不平等に対して「当然だろ」と思う仕組みになった。もはや人々は格差を当然のものとして認識し始めている。 あと、右派が新自由主義に対して肯定的なのが奇妙という話も勉強になった。まさかの昔は、右派(保守)は新自由主義否定。なぜなら共同体や育んできた国内文化・繋がりを尊ぶ保守にとっては、それを破壊するグローバリズムは本来真逆の考えだったから。それが全体主義・共産主義の台頭により近づき始めた。そして何より、エリートの劣化が、責任逃れな新自由主義を肯定したのだ(市場原理が要因だからしらねぇよ!という言い訳をする)。 正直半分も理解できてないと思うが、新自由主義についての知見を少しだけでも得られて良かった

    0
    投稿日: 2020.05.07
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    2014年刊行。 著者(対談者含む)エマニュエル・トッドはフランス歴史人口学者・家族人類学者。同ハジュン・チャンはケンブリッジ大学経済学部准教授(開発経済学)。同柴山桂太滋賀大学経済学部准教授(経済思想・現代社会論)。同中野剛志は元京都大学大学院准教授。同藤井聡は京都大学大学院教授(公共政策関連の実践的人文社会科学)。同堀茂樹は慶應義塾大学総合政策学部教授(仏文学・哲学)。  タイトルどおり、反グローバリズムの論客が対談、あるいは小論形式で当該テーマについて叙述。納得する部分もあるものの、正直新味はない。またあまり紹介すべきところもない。  また、対談と小論だけなので、緻密とは言いがたいし、情報の漏れ落ちの危惧もないではない。  他方で、グローバリズムのカウンターがナショナリズムというところで、(理解は出来るが)ややげんなり。他には無いのかなあ…と思いつつ、いわゆる新自由主義経済学的手法を採用している国の多くの場合、経済成長率がさほど高くないことは記憶に止めておくべかも。  なお、非グローバリズムの中国は良いのだが、ここで気になるのはアメリカ。一定程度経済成長をしている彼の国については、どう見たらいいのかな?。

    0
    投稿日: 2018.04.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    各国が新自由主義を推し進めたのと同時期に格差拡大、成長の鈍化が起きたので、リベラル、グローバリズムはダメなのです、というような論が何度も繰り返されており、まともに双方の因果関係を論証しようとしているのがトッドのみ。学術書ではなく、タイトルの主張がすでに既成概念として存在していて、そこに対する批判を交えずに議論をまとめたような印象を覚える書。エビデンスに乏しい話と、あまり意味を成さない例え話(経済には統治が必要なのだ、という話を、交通ルールを撤廃したら道路はぐちゃぐちゃになりますよね?という話で語るのはギャグで言ってるのか不安になるレベル)ばかりであり、よろしいものではない。 本書が2014年に発売され、その2年後にBrexitとトランプ大統領の誕生があったのは偶然ではない、だからこそ手を取ったのだが、肝心の中身がこれではちょっと。

    1
    投稿日: 2017.09.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    表紙の写真で分かるように、エマニュエル・トッドが表看板の本だが、彼が語る場面は、他の著者よりそう多いわけではない。 グローバリズムが経済的繁栄をもたらすという理論は、じつは根拠がなく、逆に世界に不公平と混乱をもたらす元凶であることを、座談会およびそれぞれの論文でわかりやすく説いた本。

    0
    投稿日: 2017.09.01
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    エマニュエル・トッド氏の新書を何冊か買い、その一冊目として読んだ。 読み始めてすぐに、対談ではなく本人の単著を読めば良かったと後悔した。 「エリートの大劣化」「あいつらは何もわかってない」「金持ちが儲けるために規制を操っている」など、ヘイトスピーチや陰謀論に近いような、質の低い議論が展開されているように感じたからである。(特にそうした物言いが顕著なのが中野氏) そうしたなかでも、やはりトッド氏単独の部分では、新たな視点を得ることができた。 それは、教育の高度化が格差の存在を当然視することに繋がるという指摘である。 著しい教育上の格差を誰もが(特に子をもつ親が)強く認識しており、そこに不平等の潜在意識が表れている、という指摘は実感を伴って理解できた。 私はこれまで、エリート教育を強化することは社会の発展に必要であると考えていたが、世界でも特に極端なエリート教育の国、フランスのエリートであるトッド氏の指摘は、そうした考えを見直すきっかけになりそうだ。 そうした視点からも、さらに同氏の著作を読みながら、考えを深めていきたい。

    0
    投稿日: 2017.07.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    グローバリズムにより貧富の差は広がり格差社会がひずみをもたらす。保護主義を推奨する。 必ず毎年利益を出し、年々GDPが上がっていくこと前提の経済の考え方に息苦しさを感じる点で、納得できるところが多い。 が、グローバル化を止めてしまって、代わりに経済を発展することができるのか?というところに答えは見つからない。その思考自体が間違っているということなのだろうが。

    0
    投稿日: 2017.01.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    エマニュエル・ドット氏と日韓の論客がグローバル資本主義のの行方を語ります。バブルとその崩壊を繰り返し、大企業によるの寡占化、短期利益を求めての目先のパイの奪い合い、株主はクリックひとつでやめられるが従業員はそうはいかない、国家という枠内でのガバナンスの欠如などの問題を洗い出し、それでもネオリベラリズムを支持するのはエリートが内向きな小さなグループに閉じこもって統治を放棄していると糾弾。 一般人もそれで良しとしてしまうのは、子供の頃貧しかった高齢者が今を豊かだと感じていることに加えて、ハンナ・アーレントの「全体主義の起源」を挙げて論じている。 2014年6月発売の本書ですが、ドット氏の「新自由主義と結びついたことで保守は死んだ。米国人は自由貿易や市場を信用してない。」との発言は本来の保守復権のトランプ大統領を予言しているようです。もっとも、トランプ氏の側近は氏の発言とは裏腹に生粋のリバタリアンばかりとの話もあるようですが。。。

    0
    投稿日: 2016.12.31
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    現在の行き過ぎた(と個人的には思っている)グローバリズム、自由主義経済については懸念を感じている。という意味では自分は保守なんだと思う。一方で、本書にも書かれている通り、本来反対すべきグローバリズムを今の保守派が進めているのは、やっぱり謎。 言葉の響きで単純に「よいもの」と思い込んでいるわけではないだろうし、必ずしも個人(および企業)が自己の利益のためのみに利用しているだけだもなさそうな。そんな謎に対する1つの考えも述べられています。 個人主義、民主主義の行き過ぎ、識字率、劣化(本書ではエリート・指導層の劣化とあったが、国民全体の劣化ともいえるのではないか?)といったいろんな要素を絡めて考えていく必要があるようで。個人的にもちょっと今後も考えていきたいテーマ。

    1
    投稿日: 2016.12.14
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    「グローバル資本主義によって経済は成長する」と信じられてきましたが、実際のデータを客観的に眺めてみれば、真実はまったく逆であって、「グローバリズムは成長を鈍化させる」 グローバル資本主義を推し進める人々は、ビジネスに自由さえ与えれば富も雇用も創出され、最大限の成長があると信じてきた アメリカにしても日本にしても「国による産業保護」という規制が成長を生ん アメリカが、実は世界で最も強力な産業政策を行っているのです。インターネットにせよ、半導体にせよ、航空機にせよ、研究開発を支援したのは国防総省や軍などの政府機関 グローバリズムは国境を前提にしないものであって、国境が存在することを前提とした上で、異なる国家同士の交流を図ろうとするインターナショナリズム(国際主義)とは真逆の概念です。両者は、一見似ているように思われることがありますが、まったく異なる概念 今日の先進国は、自国経済を発展させるにあたって、未成熟産業を育成する、さまざまな手段を使ってきました。関税、補助金、国営企業といった方法です。これによって若い産業の生産者を外部との激しい競争から守ったのです。ここ数十年、こういった政策を途上国は採用しにくくなっています。 今は一株当たり一票ですが、たとえば三年以上にわたって株式を保有している安定株主には、三倍の議決権 グローバル化は人類の歴史で何度も繰り返されてきた 一八七〇年代から、一九一四年の第一次世界大戦までの期間を「第一次グローバリゼーション 第一次グローバル化の時代は、人の移動については現在よりも盛んでした。特に、ヨーロッパ大陸から大西洋を越えて南北アメリカ大陸に向かう移民の波が大きかった。オーストラリアやニュージーランドも、この時期に人口を急速に増やしています。 一九五〇年代から七〇年代までのブレトンウッズ期には、どの国でも格差が縮小 自由貿易はよく賞賛されます。しかし、その「自由」とは誰にとっての自由なのでしょうか。端的にいえば、国境を越えて活動する投資家や企業にとっての自由 なぜグローバル化への批判が「一〇〇%貿易をしない国」の主張を意味するのでしょうか。要は程度の問題 だんだんと賃金を純粋なコストと見なすようになります。賃金は内需に貢献する要素であることをやめてしまいます。それは純粋なコストになり、すると企業は、賃金コストの削減の論理に入っていきます。 歴史において非常にはっきりとしていることがありまして、それは、住民が読み書きできるようになると経済が発展し始めるということです。 世界のすべての人が読み書きできるようになっていくという人類史上、極めて特別な時期に到達したのです。   労働者も消費者なのだから、という前提です。労働者も皆と同じように国民の一部分を成していたわけです。 「自由貿易」という強迫観念 しかし、(日本を含めて)私が最前列国と呼ぶ国々は、現代の姿を定め、新しい資本主義や経済組織の新しい形を発明していますが、成長率は一%、二%で、最大でも二・五% 米国とイギリスは共に、グローバリゼーションの主な担い手であり、規制緩和の担い手 自由貿易のイデオロギーは、普遍主義的であろうとするイデオロギーであり、地球全体に同じものを求めます。 保守と新自由主義では人間観が違う。主流派の経済学が想定するのは、原子論的な孤立した個人です。それに対し保守は、自分の生まれた国や共同体がもつ固有の生活様式や文化、国土や環境といったものに制約された社会的存在(Social Being)として人間を

    0
    投稿日: 2016.11.22
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    経済音痴の私にとって衝撃的。確かに今の世界は何かがおかしいとはぼんやりと感じていた。本書は、現代の格差の拡大や危機の恒常化の原因がグローバリズムにあり、それが社会を破壊していることを、5人の筆者が座談を通じてわかりやすく説いている。新自由主義(ネオリベラリズム)が制約のない自由として席捲し、隣国同士の経済戦争につながっていることは、EUに見られる。われわれは真の民主主義を守るために、各国がネーションごとにまとまり、独自に規制を定め、グローバリズムから脱却することが必要。しかし世界のエリートの大半はグローバリズムを正しい方向に導く道だと信じているとのこと。…ところで情報のグローバル化は避けられない。経済の脱グローバル化はいかにして達成できるのだろうか?

    0
    投稿日: 2016.07.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    このレビューはネタバレを含みます。

    グローバリズム、新自由主義を否定的に捉えた一冊。 普段からグローバル至上主義とも言える風潮に浸っているため非常に新鮮な内容であった。 本書を通じて、グローバリズムの弊害を以下のように捉えた。 ・格差拡大 国境を越えて経済活動がされるため、資本を持つ大企業が残り中小企業は潰れる。 さらに大企業の中でも資本家と労働者の格差が広がる。 (さらに生産量が増え供給力が上がることでデフレに繋がる) また、同様に大国が富み、小国は貧しくなる。(搾取される) 本書では、「経済戦争」というワードが使われていたのが印象的。捉えようによっては経済を武器にした帝国主義なのではないか。 ・伝統や人間関係の崩壊 ヒトやモノが国境を越えて自由に行き来できるため、人間関係は希薄化し、伝統も無くなっていく。 これは伝統や人間関係を守ろうとする保守の考えとは対局の状況なのだが、なぜか保守主義者は新自由主義を信仰する。 ・危機のグローバル化 国境の意味が希薄化しているため、ある国で起こった危機が他国に伝播しやすい。2016年6月に起こったイギリスのEU脱退が記憶に新しい。 ではどうするか。 一部の筆者はケインズのように保護政策をとるべきであり、政府が統制を取り、一定のルールのもと経済活動をするべきだと語る。 ただし、現在の問題として、近年のエリートが劣化し、新自由主義の旗印のもと現状を放置していると結論づける。

    0
    投稿日: 2016.07.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=all&category-mgz=all&materialid=11400453

    0
    投稿日: 2015.07.08
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    トッドの部分を抜き読みするだけでも、現代国際社会の問題点の一端を知る事ができる。 『有効な手立てを打ちたいなら、方向転換を成功させるには、まず次の事実を受け入れなければなりません。多くの人は受動的で、現状に対して協力的であり、とりわけ高年齢層はそうだということです』  日本の現状を言い当てているのか…

    0
    投稿日: 2015.01.04
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    グローバル化とよく叫ばれる中でグローバル化を分かりやすく批判的のとらえた一冊。 読み進める前には国境が取り払われ、規制緩和が進む現代において、保護主義的な政策の重要性を説くのは一見ナンセンスに感じた。でも違った。決して保護主義政策をとって自国を鎖国状態にするということを主張しているのではなく、グローバル化の負の影響にも目を向ける必要性を訴えているように僕は感じた。なぜグローバル化が発生したのか?どうしてこれほど現代はグローバル化を謳うのか?グローバル化の正・負それぞれの影響は何か?こういった点を理解し、グローバル化の本質にせまる理解をしておくことが現代経済を見つめるためには必要だと感じた。 では、そうすればこれらをひもとけるのか?まずは歴史(第一次世界大戦前までの第一次グローバル化→世界恐慌→現代の第二次グローバル化→世界不況)をたどることが重要であると気づかされた。 内容に関しては、グローバル化が格差拡大、隣国同士のつぶしあい、エリートの劣化、統治能力の低下などデータなどを用いて負の面が分かりやすく指摘されている。

    0
    投稿日: 2014.11.29
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    行き過ぎるとなんでも良くない。過去に実験・考察が実は終了していることもあるという点が書かれているように思う。経済のグローバリズム等に関しては反論しない人も多いが、言語を奪われるや食文化を否定されるようなある種のグローバリズムに関しては反論する人が多いだろう。 保守と革新の「入れ違い」に関しては面白いな。

    0
    投稿日: 2014.10.27
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    自由貿易で世界経済が復活するということに対して警告を発する。世界の経済成長率が、新自由主義が勃興する前後で約3%から1.5%へと落ちている事実など、必ずしも寄与していないという。日本では、小泉政権、そして安部政権でも、これを称賛する動きがあったのも事実。企業が儲かれば、法人税も沢山入り、国も潤うかもしれない。しかし、利益の代償として働く者の給料が減ってしまっては、企業栄えて、国滅ぶにならないだろうか。一部の富裕層のために、それはあるというのは、アメリカ、西欧を見て納得してしまう。自由主義という言葉から連想するのは、解放、個人かもしれないけど、成熟した個人ばかりの社会とは限らない。むしろ、大多数は弱者のはず。平等がすべてではないですが、せめて、脱落したものが再びレールに乗れる、そんな社会なら救いがあると思うのだけど。

    0
    投稿日: 2014.09.21
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    【国内外の気鋭の論者が徹底討論】世界的なデフレ不況下での自由貿易と規制緩和は、解決策となるどころか、経済危機をさらに悪化させるだけであることを明らかにする!

    0
    投稿日: 2014.09.09
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    京都大学で行われたシンポジウムの書籍化。 グローバル化は、不可逆で必然的な流れなどではなく、抑制できる、すべきであること。 ネオリベは、劣化したエリートが自己利益増大化に利用するために飛びついただけの空疎なイデオロギーであること。 グローバリズムを抑制するには、保守に立ち返ることが議論されています。 トッドの話を聞くと、フランスも同じなんだなとワロてしまいます。苦笑です。

    0
    投稿日: 2014.07.09