
総合評価
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powered by ブクログ震災前後の東北の沿岸部の街を題材にした短編集で、各話が緩くつながりつつ話が展開されている。それぞれの話で情景が思い浮かべて、主人公の感情を感じ取りながら読めるので体感では一瞬で読み終わった。うるっとくる話もあり、自身の感情の起伏をサクッと感じやすいので、また読書疲れしたら読み返してみたい。
0投稿日: 2025.08.31
powered by ブクログずっしりと重みのある内容だと毎回思い身構えたけど意外に読めちゃう。仙河海タイトルはほんとたくさんあるし 今回も登場人物が多数いて どこかしら繋がっているし あーあん時の〜ってならんのよ自分は、もうなんで覚えていないのですか自分、悲しくなるわ。前半7後半3とまた自然体のうますぎるってこと。希のランナー再開もよかったし、ラッツォクが1番響いた。お兄ちゃん私が死んでるの知っているんでしょうの所で泣きそうになる そうかそうだったのか翔平は1人なんだよと、津波を知らない自分が掬い取るのは失礼だし もっと考えろ自分と。ここから仙河海8作を読み直したらいいのにな自分
23投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログ熊谷達也『希望の海 仙河海叙景』集英社文庫。 『仙河海サーガ』の1作。仙河海市を舞台にした10編の短編から成る連作集。 敢えて2011年3月11日の東日本大震災当日は描かずに前震の起きた3月9日と東日本大震災後の仙河海市に生きる市井の人びとの心情を描いている。 登場人物の何人かは東日本大震災の津波被害で命を落とし、残された人びとの苦しみが描かれるのだが、読んでいて辛くなる。様々な個々人の事情もあるが、ただでさえ過疎化が進む仙河海市で生活していくのは大変なことなのに、そこに未曾有の大災害が街を襲い、生活は一変してしまうのだ。 仙河海市のモデルは気仙沼市である。東日本大震災の津波により壊滅的な被害を受けた気仙沼市は人口7万人程度で年々過疎が進んでいる。そんな気仙沼市に暮らす人びとの地元愛というか他所者に対しては排他的な強い住人同士の結び付きが巧く捉えられているようだ。 気仙沼市は自分にとって、若い頃から馴染みのある街で、その内情や住人の気質などもよく知っている。 気仙沼市は宮城県の中でも行政の手が行き渡らない、まるで見棄てられたような街である。一方で気仙沼市の住人にも問題がある。気仙沼市は元々漁師街で、将来を見据えた計画性が全くと言って良いほど持ち合わせていないのだ。唐桑半島の唐桑御殿と呼ばれる贅の限りを尽くした大規模な元漁師の邸宅など、その象徴だろう。漁師の多くは稼げば稼いだだけ消費してしまうのだ。唐桑御殿の邸内には漁師時代に海外の港で購入した安くはないワニやアルマジロの剥製にカンガルーや白熊の毛皮、象牙細工などが飾られているのを知っている。 ついでに言うと、唐桑半島にある唐桑町では1日に数本しか無いバスの運行が全て取り止めになった。代わりにオンデマンドタクシーが走るが、前日予約が必要なようで不便極まりないらしい。さらにオンデマンドタクシーが走っている時間帯には唐桑半島にはタクシーが来ないし、夕方4時以降はタクシーを呼んでも来ないらしい。急な病気や用事がある場合はどうしたら良いのだろうか。自家用車が運転出来なくなる年齢が来ることなど考えず、バスやタクシーなどの日常の足を守ろうといった活動を行わない結果だ。 本体価格840円 ★★★★
66投稿日: 2025.03.07
powered by ブクログ「仙河海」は気仙沼をモデルとした架空の町で、聞き慣れない「叙景」は、自然の風景を詩文に書き表すことの意だそう。帯には〈「あの日」を描かない(10編の)連作短編集〉とあります。2016年刊行、1編追加して2025年に文庫化されました。 様々な人々の何気ない日常は、どこにでもある暮らしです。ただこれらの震災直前の描写は、起きてしまった大災害を知る読み手にとっては、自ずと「あの日」のカウントダウンとなり、それまでの当たり前の生活が、よりかけがえのないものとして伝わり、胸に迫ります。 連作短編は、とかく物語の深みに欠ける印象になりがちですが、本作はより多様な日常を描くこと、それぞれの短編の登場人物がとても自然に重なっていること、さらに各話をあえて完結させずに描くことで、日常の連続性が感じられますし、薄っぺらな印象をもちません。 また、震災前の7編と震災後の3編を見事につなげ、時を巻き戻さずとも絶望から希望へ走り出すラストが感動的で秀逸でした。 かつて気仙沼で中学教師だった著者には、かつての何気ない日常、そこに暮らす人々、豊かな海が脳裏に焼き付いているのでしょう。この「仙河海」を舞台としたシリーズが現在8作。書き続けることに大きな意義があるのですね。
77投稿日: 2025.03.05
