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反歴史論
反歴史論
宇野邦一/講談社
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    小林秀雄には人が歴史に翻弄されることへのペシミズムがある。歴史とは純粋な魂を襲う残酷な暴力である。詩人や芸術家との交感を演ずることで反歴史を実行した。 啓蒙主義、民族主義という二つの歴史観がある。ヨーロッパの社会思想はこの二つの間を揺らめいている。 レヴィ=ストロースは差異化された不均衡状態が必要とした。差異は戦乱を招くが一方で創造的な交通や交換を生み出す。進化とはルーレットの目が揃うようなものとし、進化と停滞の概念を拒否した。 思考の歴史は歴史哲学を生み出す一方反歴史思考をも増殖させる。小林秀雄にとって思考を脅かすのは公的、歴史的思考であった。 ハイデガーは存在、フロイトは無意識について思考しつつ歴史の外部を問題とした。 国家理性の思想家としてのヘーゲルは一方で死と闇という否定性に直面しながら思考した。死と闇から逃れるのが労働であり、ヘーゲルの弁証法はそこからスタートしている。他方バタイユは労働による隷属を破壊しようとした。労働に依拠するヘーゲル哲学そのものに労働の終焉を見た。 歴史とは、書かれたこと、書かれなかったこと、あっこと、あり得たことの間にまたがるあいまいな霧のようなものである。歴史は拒むことも表象することもできない。歴史を構成するものだけでなく、構成過程を思考する必要がある。

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    投稿日: 2022.08.24