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いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集
いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集
ダフネ・デュ・モーリア、務台夏子/東京創元社
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総合評価

25件)
3.7
3
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7
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    いま見てはいけない 読んでいるときに戦慄した、、文章を読んでその場面がはっきり想像できてその不安を瞬時に感じとれて。文章でこんな風な体感ができるなんて。驚異のストーリーテリング力。構成。凄い。 非日常な出来事が起こるのだけど、起こりうるのではないか、、というリアルさ。読んでいて物語にぐんぐん引き込まれていて気付いたら主人公たちとベネチアにいた、そして一緒に不安なままどこに連れて行かれるのかわからないところへ連れて行かれる。主人公ジョンがボートに乗った妻と双子の姉妹を見かけたというくだりなんて背筋が凍りついた。巧妙な話運びと文体。 ボーダーライン シーラは冒険心あふれる気丈で行動的な女の子。 そんな彼女が当初いた場所から思いもよらない場所に連れて行かれる、逆らえない流れにどんどん流されていく、その様が巧妙で彼女自身の戸惑いや不安がひしひしと伝わってくる。

    0
    投稿日: 2025.12.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ずっと読みたかった「いま見てはいけない」。唯一無二の存在感のある作品だった。水面下で不吉なことが起こりつつある不安感。唐突の幕切れは鉛のような後味の悪さを残す。 ホラーかと思っていたので、想像していたストーリーとは違ったが、ある意味これもスピリチュアルホラーか。 そのほかの収録作品は、暗示的な内容が多くて少し難しかった。【鳥】のほうが娯楽小説として楽しめたが、「いま見てはいけない」ではモーリアの底知れぬ筆力を再確認できたので、読んでよかったと思う。

    2
    投稿日: 2024.08.29
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    先が読めないハラハラ加減に、早く読み進めたくなるところを、ぐっと堪えて堪能。とてもおもしろかった。 一番好きなのは十字架の道。

    1
    投稿日: 2024.05.07
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    不条理、ホラーチックなものなど、様々なジャンルの短編集。 表題作は、子供を失くした傷心の夫婦の旅行中に起こる不可思議な体験談。妻の方が行方不明になったかと思いきや…不思議な結末。

    0
    投稿日: 2024.04.21
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     1966年、1970年、1971年に出版された原著からセレクトして訳出されたデュ・モーリアの短編集。  やはりこの作者の文体は濃く、なかなか巧みに書かれており、それを辿ってゆく読書体験は一種の「充足」である。このような「充足」を感じさせる文章といえば、久生十蘭を思い出す。それは単純なパロールの流れというよりも、よく寝られたコンポジションだ。  そんな完成度の高いデュ・モーリア文学だが、本書のうち、巻頭の「いま見てはいけない」はオチが弱くて、そこに至るまでは秀逸なだけに惜しいような作品だった。  最後の「第六の力」はSF小説。こんなものも書いたのかと驚いた。1編のSF短編として、ちゃんと水準に達していると思う。

    0
    投稿日: 2022.11.18
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    5つの短編集。いずれも見えないはずのものが見えたり、霊感とか、そういう感覚が書き込まれている。「いま見てはいけない」「真夜中になる前に」あたりがよかった。 「いま見てはいけない Don't look now」1970 ベネチアに旅行に来た夫婦。そこで双子の老夫婦に出会う。夫妻には男と女と子供がいたが、幼いうちに女の子を失っており妻はいまだ喪失の絶望から立ち直っていない。寄宿舎にいる男児が盲腸だとの連絡を受け、妻はイギリスに戻るが、夫は戻ったはずの妻の姿を水路に見るが・・ 表紙の絵はこの情景を描いたものだろう。「赤い影」として1973年に映画化。 「真夜中になる前に Not after midnight」1971 寄宿学校で古典を教えていた私。教師をやめ趣味の油絵を描くためにクレタ島にやってきた。バンガロー形式の宿ですぐ隣の小屋は日に焼けた男と耳のきこえないという妻。毎朝海に釣りにでかける。岬で二人を見つけた私は二人がやっていたのは釣りではなかったのが分かるが・・ 「ボーダーライン A border-line case」1971 突然亡くなった父の死の謎を解くために、ダブリンから百キロ、湖の点在するバリーフェインにに住む父の旧友をたずねたシーラ。荒涼とした風景を想像しながら読む。着いてみると、さらにトラー湖のなかの小島に住んでいるという。 「十字架の道 The way of the cross」1971 急病に倒れた牧師のかわりにエルサレムへの24時間ツアーの引率者に次々と降りかかる災難。多様な参加メンバー。 「第六の力 The break through」1966 ロンドンから遠く離れた研究所で行われていた研究とは? 原題:DON'T LOOK NOW AND OTHER STORIES 2014.11.21初版 図書館 「真夜中すぎでなく」三笠書房1972刊と収録作は同じ。今見てはだめ、真夜中すぎでなく、シュラの場合、十字架の道、第六の力

    7
    投稿日: 2022.07.25
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    中学生の時に河出の世界文学全集でレベッカを読んだ。とりこになった。10代の間に何度読み返しただろう。あの頃の気持ちを思い出した。忘れていたぞくぞくするような感覚がよみがえってきた。レベッカしか知らなかったがこれ!!!な作品だ。すごいなデュ・モーリア!まさに物語世界に心がもっていかれる感じ。他の傑作集2冊も読まねばなるまい。

    5
    投稿日: 2020.04.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    映画監督アルフレッド・ヒッチコックが手がけた 『レベッカ』や『鳥』という映画の原作は、 今回読んだ傑作集の著者であるダフネ・デュ・モーリアによるものです。 本書のタイトルにもなっている『いま見てはいけない』も、 ヒッチコック監督ではないですが、 70年代に『赤い影』として映画化されているそうです。 全5編あるなか、 まず、先陣を切っている表題作の『いま見てはいけない』から。 ヴェネツィアに観光旅行に来ている、 水難事故で幼い娘を無くしたばかりの夫婦の夫が主人公です。 旅先で出会った、霊感を持つらしい老姉妹に、 夫は不信感を持つのですが……。 エンタメの神髄的な、語りのうまさ、構造や設定の巧みさ、 そして、終わり方の見事さに、もう舌を巻きました。 読了した瞬間、あっ、と思ったら頭が真っ白になり、 しばらく放心したため、その次の作品を読むのをあきらめて 寝たくらいです(まあ、すでに夜中でしたが)。 続いて、『真夜中になる前に』。 ギリシャのクレタ島へ休暇にやってきた美術教師の男性が主人公。 なにげないところで生じる奇妙さの連続が、 それを気にすることでどんどん日常を歪めていくような話。 人間心理の怖さとしても読めるし、 神話を織り交ぜているので、祟りだとかそういうオカルト的にも読めます。 次に、『ボーダーライン』。 父の死の瞬間にひとり立ちあう事になったまだ20歳の役者志望の娘が主人公。 父の旧友に会いにいくことからドラマが始まっていきます。 世界の表裏をつうじて、進行するラブストーリー的なところがありますが、 主人公の女性の冒険というか、彼女が個人的に探偵ごとをするので、 サスペンス形式みたいになっています。 ちょっとしたハードボイルドとも言えるんじゃないだろうか、女性が主人公でも。 敵対しながらも惹かれあう、っていうところがよかったです。 そして、『十字架の道』。 急きょエルサレムのガイドの代役をまかされることになった 若き牧師を中心とした群像劇です。 群像劇ものってたぶん読んだことがなかったですから、新鮮でした。 こんなに複雑になるものなんだ、と。 登場人物がみんな独自の世界観のなかで生きていて、 違う方向を向いて生きています。 それをちまちま克明に書いていったら、 たぶん読み手は面倒くささを感じると思うのですが、 作者はちゃんと踏みとどまって、物語的な佳境にもっていく。 ちゃんとエンタメにしています。 最後に、『第六の力』。 これはSFです。 主人公が出向を命ぜられた先が、 政府筋の、あやしい研究をしているらしい研究所なのです。 まず、そこまでたどり着くまでの描写で何度も笑えます。作者の力量ですね。 デュ・モーリアという人は、こういう技術もあるんだなあ、と。 物語の終わりにむけて、だんだんシリアスにもなっていきますが、 その高低差は計算されているんでしょうね。 科学面での細かいところの設定では、とりあえずの説得力をもっています。 作者がいろいろな知識をそれなりの深さで取り入れる力量があるからですね。 さすがの知的体力。 そして、その裏付けとなるような設定を読者の腑に落ちる段階に作り上げたならば、 そこから壮大な幻想の影を持った現実的物語はすすんでいきます。 そういう構造を見つめてみると、やっぱり序盤にいくつかの笑い、滑稽さを持ちこんだのは、 全体のバランスのとり方として上手だなあと思えます。 というような、5編です。 いろんなことをやっています。 そりゃあ、5編だけを集めているわけですから、 その他の作品を読んでみない分には断定できませんが、 焼き直し的なものは一切ない。 すべてまっさらなところから作り上げた、 オリジナリティー十分の、独立した5編でした。 肝が座っているというか、体力があるというか、 姿勢が違うというかで、すばらしいです。 僕は今回、デュ・モーリアに触れるのは初めてでしたが、 長編『レベッカ』と、そして『鳥』の収録されている短篇集もそのうち 読んでみようと思いました。 おもしろかったです。

    1
    投稿日: 2020.02.10
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    いま見てはいけない、というタイトルに惹かれて手に取りました。 全体的に不穏な雰囲気の漂う短編集でした。旅先で出会う奇妙な人物、奇妙な出来事…ホラー?ミステリー?分類が難しいので奇妙な味のカテゴリに入れておこう。 「いま見てはいけない」「真夜中になる前に」「ボーダーライン」の3編は、ラストにズドンと落とされる感じが良い。 エルサレムを旅するご一行の群像劇「十字架の道」は表面上はうまくやっている面々が、水面下ではお互いを軽蔑しあっているというところがリアルで、イヤミス的な面白さもあった。 ラストの「第六の力」はSFチックで他作品とはちょっと毛色が違う感じ。 「いま見てはいけない」は「赤い影」というタイトルで映画化されているらしい。他にも映画化されている作品がいくつかあるようです。次は「鳥」を読んでみようかな。

    2
    投稿日: 2019.11.21
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    日常とは異なる感覚を生む、旅先を舞台にした短編集。オカルトあり、メロドラマあり、コメディありと、それぞれ違った味わいです。短い話の中でも人物像が浮かび上がってくるような心理描写、得体の知れない不安感の煽りはさすがサスペンスの名手。どう落とし込むのだろうと期待が高まるのですが…。読み込み不足かもしれませんが、謎が謎のまま終わってしまったり、余韻が残らなかったり、物足りなさを感じました。原著で読める英語力と、文化的背景への知識があれば、もっと楽しめるのかもしれません。

    0
    投稿日: 2019.02.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    目次より ・いま見てはいけない ・真夜中になる前に ・ボーダーライン ・十字架の道 ・第六の力 ゴシックサスペンスの小説『レベッカ』で有名な、ダフネ・デュ・モーリアの短編集。 全体像が見えないことによるドキドキ感は健在で、「どういうこと?どういうこと?」と手さぐりで読み進めていくことの快感。 特に表題作の「いま見てはいけない」は、なんとなく結末が想像できるのではある。 けれど、押し寄せる不安で、結末を確認しないではいられない。 ただ、カタルシスを得られるかと言えば、それはない。 この短編集全体がもやもやを抱えたまま沈んでいくような読後感。 「ボーダーライン」はアイルランド問題、「十字架の道」はキリスト教をもっと知っていれば理解が深まったのだろうか。 私の中で消化不良のまま残されている。 「第六の力」 映画化作品が多いデュ・モーリアだけど、これについては清水玲子で漫画化を希望。 絶対合うと思うんだ、彼女の作風と。 オカルトと科学の融合?混濁? 濃密なイギリス臭漂う作品集。 全部違う作風なのに、全部イギリスだったわ。

    0
    投稿日: 2016.12.31
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    難解な(?)作品もあれど、やっぱり読後大満足。こうなると図書館で借りた『鳥』も手に入れたくなってきた。 映画『赤い影』の原作「いま見てはいけない」。休暇で好きな絵を描くためクレタ島を訪れた教師に人生を変える出会いが「真夜中になる前に」。亡き父の死に際の後悔の声を聞き、父の旧友に会いに行くヒロイン「ボーダーライン」。キリスト巡業の跡を巡るエルサレムツアーの英国人たちの群像劇「十字架の道」。周囲から隔絶された施設で何が研究されているのか「第六の力」。 個人的には「いま見てはいけない」と残酷なラストが効いてる「ボーダーライン」が面白かった。

    0
    投稿日: 2016.07.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    短編集。冒頭では「普通」だった主人公が徐々に常軌を逸していく……というパターンが多かったような。設定としてはものすごいことが起きそうなのに、予想していたほどのことは起こらずに、終わってしまう(短編ですからね)。くるぞ、くるぞ、くるぞ……こーなーいー(もしくは「そこまでかー」)という感じで。でもこれがクセになりそうです。「第六の力」は長編で読んでみたいですね。

    0
    投稿日: 2016.05.02
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    最初この作品を知ったのは偶然観た映画「赤い影」。とても好きな世界観の映画で、原作の『いまは見てはいけない』は更に期待を裏切らなかった。表題作はもちろん、傑作集というだけあって他の作品も漏れなく楽しめる。20年前に読んだ「レベッカ」や「鳥」も再読してみよう〜。

    0
    投稿日: 2016.02.15
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    前半の3作は終盤になるまで何とも言えない不穏な空気が漂い、話がどこへ向かうか分からないハラハラ感にページを捲る手が止められない。ただ予想外のオチは、イマイチなものもゾッとするものもあったけれど、総じて『鳥』の方が好み。

    0
    投稿日: 2015.11.29
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    五篇からなる短編集。 「いま見てはいけない」 映画「赤い影」の原作。 幼い娘を亡くした夫婦がヴェネチアで老姉妹に会う。 妻は、亡くなった娘さんがあなたのそばにいると言われ、悲しみに暮れていたところを救われるが、夫はそんなことを言う老女を胡散臭く思う。 「真夜中になる前に」 絵を描くことを趣味とする教師が、ギリシャに旅行に出かける。 泊まったホテルでいかがわしい夫婦に出会う。 「ボーダーライン」 病床の父のもとに見舞いに行った娘の前で、突然父が亡くなった。 娘は、父と最後に見ていたアルバムに写っていた旧友を訪ねることにする。 「十字架の道」 エルサレムのツアー引率をする予定の牧師が病に倒れたため、代理を務める牧師をはじめとして、旅行客たちに次々と起こるハプニング。 「第六の力」 知能障害のある少女を使い、白血病で死期の近い青年の生命エネルギーをコンピューターに取り込もうとする研究者の物語。 翻訳が良くないのか、少し読みにくいがよく出来た短編だった。 映画にもなった「いま見てはいけない」は、不思議な雰囲気が漂い面白い。 是非、映画も観てみたいと思った。 「十字架の道」では、様々なハプニングも去ることながら、登場人物が特徴があり面白い。残念なのは、司祭と牧師がごっちゃになっているとしか思えない残念な翻訳。 「第六の力」は、揺れる心を描く作品が多い作家さんには少し異色な作品とも言える。サイエンスミステリーとでも言うのだろうか。 何となく不思議だったり嫌な感じだったりする作品集。

    1
    投稿日: 2015.10.26
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    古いファンタジー短編集  新刊で登場しているが、1960年代の古い作品だ。悪い意味ではない。十分に新鮮な物語fである。  普通の夫婦を襲う悲劇のきっかけが近未来の透視であったという「いま見てはいけない」。なかなかにおもしろい。どうなるんだろう?とワクワク感が先行する。  二番目の作品はイマイチわからない。「真夜中になる前に」というサスペンス調のタイトルだが、内容も含め意味がわからない。  驚きのラストという意味では「ボーダーライン」は傑作だなぁ。父親の驚愕の真相がラスト数行で明らかになる。ラブロマンスを交えなければさらによかったと思うけれど、すばらしいオチで満足。  交互に変な作品が出てくる気がするんだが、「十字架の道」は登場人物が多いからか、読むのに苦労した。人物像が脳内に結実しないから、だれがだれかわからなくなるという(日本人が読むときの)海外小説にありがちな混乱の中で物語が終わってしまった。  短編中唯一のSF色を持つ「第六の力」は楽しいけれど、オチがオカルトになってしまい楽しくはないな。  1960年代の作品という意味ではとてもすばらしいと思う。そうだなぁ、そこまで古くはないけれど、シャーロック・ホームズの色かなぁ。

    1
    投稿日: 2015.09.27
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    この中には5編の短編がおさめられているが、一番好きなのは「十字架の道」。好みで評価は別れると思うけど、すべて私は好みです。この人の作品はもっと読みたい。

    1
    投稿日: 2015.08.20
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    『レベッカ』が大好きなので短編集も読んでみた。日常の生活や人間関係における心の機微や、ありきたりなようで意外な人間模様を、鮮やかにまたシニカルに描き出す傑作揃いだった。「十字架への道」で前歯が折れてしまった夫人をいたわる大佐が印象的。日々の生活をこうもドラマチックに描かれると、私の人生もそう捨てたものではないような気がしてくるから不思議だ。

    1
    投稿日: 2015.04.08
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    これを読みながらずっと「レベッカ」を思い出していた。「昨夜、わたしはまたマンダレイに行った夢を見た」という冒頭の一文から、ミステリアスで繊細な物語は始まっていた。ここに収められた短篇にも、「レベッカ」と同様の叙情が漂っている。そのストーリーテリングを堪能できる一冊。 「レベッカ」では、謎めいた物語に引き込まれるのと同じくらい、舞台となるマンダレイという土地や、そこに建つ邸宅などに魅せられたように思う。奥深く、底の知れない気配が立ちこめていた。本書でも、「真夜中になる前に」のクレタ島や、「十字架の道」のエルサレムなど、その土地こそが主役なのではないかとまで思わせる舞台が、それぞれ異なる魅力を持って描かれている。 中でも圧巻なのは表題作のベネチアだ。ひたひたと水に洗われる古い街が目の前に立ち現れてくる。映画になっているらしいが、まことにさもありなん。場面場面が目に浮かぶような気がする。不安で不穏な空気がこれ以上美しく似合う街もないだろう。 ゆったり贅沢な読書を楽しんだが、一つだけ、最後の一篇「第六の力」にはやや違和感があった。他の五篇とは趣が違っていて、これはない方が全体としてまとまりがあったのではないかなあ。

    1
    投稿日: 2015.01.21
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    ・ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)は表題作を含めて全5作、約420頁の短篇集である。最近の文庫は活字が大きいといつても、単純平均で80頁ある。長めの短篇といふところであらう。いかにもデュ・モーリアといふ感じの作品が収められてゐる。やはりおもしろい。 ・巻頭の表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」として映画化されてゐる作品である。未視感といふのであらうか。いや、起きるべき未来が見えてしまつた、あるいはまだ起きてゐない出来事を見てしまつたことから起きる悲劇である。ヴェネチアに滞在中のジョンとローラの夫婦にイギリス人老姉妹が関はつて事件が起きる。構成も起承転結がきつちりできてをり、老姉妹と知り合つてからの2人の心理の推移がよく分かる。これはジョンが老姉妹を嫌ひ、ロー ラは引かれるといふだけのことなのだが、個人的には、ジョンが老姉妹を嫌ふ様子がたぶんに教科書的といふか、紋切り型といふか、それにもかかはらずおもしろい。さう、ジョンがいかにもそれらしく老姉妹を嫌ふがゆゑに、ここに事件の起きる気配を漂はせて読む者を引きつける。しかも、まだ起きてゐない3人を見 てしまつて以後のジョンの行動もまた、所謂スリルとサスペンスに満ちてゐてなかなかおもしろい。要するに、これがデュ・モーリアなのである。映画化された だけのことはある。次の「真夜中になる前に」も似た感じの作品である。主人公の教師がクレタ島での休暇中に体験したスリルとサスペンス(といふほどのもではないか)である。起承転結もはつきりしてをり、3人の登場人物の描写もまた分かり易い。絵を描くのに最適なバンガローではあつても、それが最も外れに位置してゐたために起きる、これもまた悲劇であらう。不躾な米国人夫妻と知り合つて別れるまでの主人公の心理がおもしろい。先のと同様に、追ひつめられてい く、あるいは考へすぎていくのは、ある意味、紋切り型ではあつても、それがやはりこの作品にふさはしい。これらとはいささか異なるのが「ボーダーライン」である。父が死んだことにより、かつての父の親友を訪ねることにしたといふ物語である。父と友との別れの原因を突きとめるためにアイルランドまで行つて主 人公が知つたのは……最後にどんでん返しがあると言つては言ひすぎか。主人公は相手をだましたつもりでゐたのに、実はだまされてゐたといふことである。これも構成的によくできてゐる。初めのうちは何だこれはと思つてゐるのだが、そのうちに引き込まれていく。ところが、最後の「第六の力」はさうはいかない。 SF仕立てであるらしいが、あまり良い出来とは思へない。少なくとも私はかういふのは好きではない。アイデアを消化できずに終はつたのであらうか、内容的に中途半端であつて、とてもSFとは思へない。更に言へば、ここには先の作品のやうな雰囲気がない。「十字架の道」もおもしろくない。これも「第六の力」 同様である。物語は現代のエルサレム巡礼といふところであらう。その人々の行動が描かれる。従つて、一つのきつちりとしたストーリーはない。個々のエピ ソードの積み重ねである。ゲッセマネを求めての散策等での登場人物の描き分けはなされてゐても、そのエピソード自体が私にはおもしろくない。どの登場人物 も不平不満を述べるばかりである。そもそもこれがおもしろくないうへに、その行動も、そこから生じる出来事もおもしろくない。これでは物語がおもしろくならうはずがない。そんなわけでこの作品集、私には前3編と後2編が対照的に思はれて、巧拙、良し悪しとに二分されたのであつた。

    0
    投稿日: 2015.01.11
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    これはもう一読くらいしたい感じ。タイトルのダブルミーニングとか、皮肉でひねった結末とか。「十字架の道」のような群像劇は相変わらず好き。デュモーリアっぽいのは、表題作と、「ボーダーライン」かな。

    1
    投稿日: 2014.12.23
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    『レベッカ』『鳥』で有名なデュ・モーリアの短編集。短編と言うにはやや長いものばかりだが……。 デュ・モーリアの持つ不穏な感覚が堪能出来る1冊。表題作を始め、心理小説ともミステリともつかない作品がざわざわと読者の心を刺激している。中でも『ボーダーライン』は秀逸。

    0
    投稿日: 2014.12.03
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    誰が正しいのか、誰を信用していいのか、自分の見たものを信じていいのか、足元の地面がぐらぐらするような不安感がたまりません。。。 「いま見てはいけない」が一番よく出来てる気がする。 解説は、デュ・モーリア作品と映画との関連をきちんと語っていて親切だと思う。

    1
    投稿日: 2014.12.03
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    映画『赤い影』の原作となった表題作をはじめ、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、天性の語り手である著者の才能を遺憾なく発揮した作品五編を収める粒選りの短編集。

    0
    投稿日: 2014.11.13