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犬婿入り
犬婿入り
多和田葉子/講談社
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総合評価

63件)
3.4
7
22
18
5
4
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    芥川賞を受賞した表題作のほかに、もうひとつ『ペルソナ』が収録されています。 どちらの作品にも、ふわふわとした浮遊感を覚えました。 『ペルソナ』は、ドイツに留学している日本人の女性が主人公です。 著者ご自身もドイツに住んでおられるので、その経験がもとになっているのかもしれません。 主人公は学業の傍ら、日本人の子供の家庭教師をしたり、ドイツのご婦人に日本語を教えたりして生計を立てています。 異国で暮らす主人公は、自分が東アジア人として一括りにされていることや、西洋人が抱いている東アジア人に対する偏見などに気づかされ、異文化の中で生きることの心もとなさも相まって、次第に自我を保つことが難しくなっていきます。 また彼女は外国で暮らすうちに、本当に思っていることを言おうとすると、日本語が下手になってしまうとも感じるようになっています。母国を離れドイツ語で生活するようになった主人公にとって、日本語もまた他国の言葉になってしまったのでしょう。彼女は自らをドイツ人でもなく、日本人でもなく、東アジア人という宙ぶらりんな存在であると認識するようになってしまったのかもしれません。 物語の最後に彼女は、家庭教師をしている家の壁に掛けられてあった能面を勝手に持ち出し、それを着けて町中を歩き出します。主人公は無意識に日本文化の象徴でもある能面を着けることで人格(ペルソナ)を護ろうとしたのでしょうが、かえってそのことが彼女をなに者でもない存在にしてしまいます。 その能面がスペインで作られた土産物であったことも、この物語の本質を象徴しているのではないかと思われます。 『犬婿入り』は、古くから各地に存在する犬婿伝説や、それに類する物語がベースになっているようです。 舞台は東京郊外の住宅地。主人公は、そこで小学生を対象にした塾を営む、ちょっと変なアラフォー女性です。彼女は、この町に最近移り住んできたよそ者です。 塾に通う子供たちは、先生のちょっとおかしな習慣や、先生が語った風変わりな物語を家へ持ち帰り、親たちに話して聞かせます。親たちは子供の話を耳にして、そこに不穏な匂いを嗅ぎ取るのですが、自分たちに都合の悪いものはなかったことにするか、あるいは自分たちの都合に合わせて解釈するかして、気にはなりながらも受け流すようにしています。新興住宅地に暮らす人たちの間で、無意識に共同体を護ろうとする力が働いていたのかもしれません。 ある日その塾に見知らぬ男が転がり込んできて、主人公と一緒に暮らしはじめます。彼女はなぜか、その正体不明の男を拒むでもなく、なんとなく受け入れてしまいます。この男の登場によって、それまで変に思えた主人公が、むしろ普通に思えてしまうのですが、よくよく考えると、やっぱりみんな変な人たちです。 このお話には、終始おかしなことばかり描かれています。なのに登場人物たちは、どこかしら違和感を抱きつつも、それらのことを普通に受け入れ、日常を生きています。そのあたりが興味深くもあり、また怖いところでもあります。 『ペルソナ』『犬婿入り』いずれの作品とも、登場人物の内面を直接的、説明的な言葉で表現することを極力避け、状景を描写することで、その働きを担おうとしているように思えます。もしかするとそのことが、読書中の浮遊感に繋がっているのかもしれません。あるいはまた、自分も主人公たちと同様、宙ぶらりんの存在だからかもしれないです。 https://note.com/b_arlequin

    0
    投稿日: 2025.11.30
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    日本語表現として普通じゃないことは分かる。あと,「ペルソナ」は三人称小説であることに加えて,視点が動くのでその点も斬新かもしれない。 ドイツで博士号取れるくらいのドイツ語力とネイティブ日本語を,どちらにも寄せずにぶつけるとこういう風になるのか。著者が言語に自覚的であることは伝わってくる。 話としては正直よく分からない。やっぱり純文学は難しい。

    0
    投稿日: 2025.10.31
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    『ペルソナ』では、複数の国を行き来する浮遊感を味わうことができた。『犬婿入り』では、民話が日常へ侵入するさまが、これほどあっさりと描かれるのかと驚いた。

    0
    投稿日: 2025.08.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    プロ向けの小説という印象の作品。 視点は面白いし、価値観を揺さぶってくる感じも悪くないが、読み終わった後の満足感はあまりない。 読んでも読まなくてもよかったなという感じ。 ペルソナ ペルソナとは能面のことらしい。 人種や国民性についてステレオタイプな価値観を持つ人々がたくさん登場する。日本人は能面のように表情がなく感情が読めないと言われる。 道子が混乱して街を歩き回るところはカフカを想起させた。 犬婿入り 犬がお姫様の尻をなめるという「犬婿入り」という民話は本当にあるのかどうか。その話をした北村みつこの家に、何やら犬っぽい太郎という男が住み着いて犬っぽいことをする。

    0
    投稿日: 2025.08.21
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    芥川賞受賞作『犬婿入り』と芥川賞候補作「ペルソナ」の2篇。 「ペルソナ」の方が個人的には好きです。作者が体験したかもしれない様々な出来事・観点みたいなものが出てくるのだけど、ドイツから見たアジアというくくりだったり、そのアジアの中でも日本が他のアジアの国々の人をどう思っているかだったり。同じアジア、もっと広く見れば同じ人間であるのに境界があるかのような(いわゆる差別的なもの)お話が興味深かった。最後は主人公が仮面(ペルソナ?)をかぶり街を練り歩くときドイツの誰も彼もが主人公を日本人として捉えなかったというのは分かりやすいオチっぽく感じるけど、好き。

    16
    投稿日: 2025.07.07
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    『ペルソナ(能面)』 ドイツに住む日本人である姉弟の物語。日本人である主人公は、東アジア人と一括りにされ、ドイツ人に偏見の目で見られる。いくら活躍しても日本人というだけで、婉曲的にであるが、侮蔑的な屈辱を味わったイチロー選手やダルビッシュ選手を思い出す。主人公は他者が日本人に期待する能面を被って街へ出る。その時やっと自分自身が自由な感覚を取り戻す。強い言葉を持った一人の人間として。 『犬婿入り』 「異類婚姻譚」(人間以外の存在と 人間とが結婚する説話の総称)をベースに書かれている。ありえない話なのに、あれ?これ、もしかしたら犬が入ってる人間?それが信じられないくらいリアリティをもって物語が進んでいく。おもしろい! 人間と動物、清潔なものと汚らしいもの、現実ち非現実、昼と夜、整頓と混沌を行き来していく。 でも、一読しただけでは作者のメッセージが読み取れない。

    69
    投稿日: 2025.02.22
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    何これヤバイんだけど。 というキテレツ系のお話で、概ねその登場人物もおかしいので、誰かだけ浮いていて異常というのよりは全体的に異常系が掛け合わさってもう正常みたいな。太郎くんのハチャメチャっぷりもナイスだけど、ゲイバーをゲーセンと勘違いする小学生にはナルホドなぁと膝を打つような妙手で感じ入った。さほどに小学生は侮りがたし。

    1
    投稿日: 2025.01.26
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    第108回芥川賞受賞の表題作『犬婿入り』と『ペルソナ』の2作品を収録。不思議な小説。物語より言葉を紡いで多和田葉子氏の世界に取り込まれる感覚。 『犬婿入り』は民話をインスパイアとした寓話的な物語であり、道子と太郎の不思議な関係と、軟体のような人物軸、そして狐に化かされたように何事もなかったように消失。魅力の説明は難しいが惹き込まれる。 『ペルソナ』はアイデンティティの喪失と発見といえよう。海外経験の長い著者と、言語や文化への完成が極めて強い著者ならではの作品。

    2
    投稿日: 2024.12.02
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    「ペルソナ」 日本に生まれて日本で生活し、日本語で育ち日本語で生活していては感じることが難しい感覚を味あわせてくれます。ドイツの都市で留学生として生活する主人公の道子の視点で、ドイツでの文化的差異における差別や、日本を離れて自国の文化や言葉とのつながりが途絶えている状態の内面が描かれていると思いました。 不安感や焦燥感を感じながら落ち着かない気持ちで読んでいました。 「犬婿入り」 犬婿入りの話は昔話として日本だけではなく、アジアのいろいろな地域でいろいろな形で広がっているそうで、そういった話をモチーフに作者独自の話が紡がれていきます。 多摩川べりの町の学習塾の先生みつこと犬男との奇妙な生活は現実離れしていますが、振興住宅団地の人々の生きる現実と、違和感なく融合していて、不思議な気持ちになりました。

    1
    投稿日: 2024.10.20
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    生徒がビブリオバトルで紹介したいという本で、発表に先んじて読んでみましたが、私には面白さが上手く理解できませんでした。 表題作の「犬婿入り」も、併録されている「ペルソナ」も、主人公が「何を考えているのか」は描かれていても、それがどういうことなのか(=何を表現しようとしているのか)がうまくつかみ切れず、ストーリーが目を滑って行ってしまったように思います。 いずれの作品も1992年に発表された作品ですから、描かれている時代風景が現代社会とは合わなくなってきた(=読者が共感しづらくなってきた)ということもあるのかもしれません。

    2
    投稿日: 2024.05.07
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    学習塾の独身女性の元へ太郎という犬男が現れ、奇妙な共同生活が始まる「犬婿入り」。 ドイツ留学中の女性が味わう差別や偏見、攻撃によりアイデンティティをを失う「ペルソナ」。 異質なものに対して、意図的にではなく無意識に排除してしまうこともあるから厄介だ。そもそも異質と同質の境はどこにあるのか?作品から抱いたモヤモヤをうまく言語化できないのがもどかしい。

    2
    投稿日: 2024.02.10
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    「ペルソナ」と「犬の婿入り」の2つの短編で構成されている。結果、結論がよく分からない作品。 自分には全く合わなかった。芥川賞受賞作品。 凡人にはわからない。

    8
    投稿日: 2024.01.20
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    新感覚の小説だなと感じました。  「ペルソナ」は、ドイツに住む日本人の道子が 人種による偏見に苛まれて、様々な国の人たちに出会い、それぞれの国でも、偏見があると知りながら、東アジアで一括りにされることに嫌悪感を 抱く弟の和男との共同生活にも、違和感を感じていく、著者自身が、ドイツに住んでいることからも、自身が体験したことも反映されていると思います。  「犬婿入り」は、ある塾を中心に繰り広げられる不思議なストーリーでした。言葉が一つ一つ胸に響いてきますね。太郎の奇妙さも際立ちます。

    39
    投稿日: 2023.12.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ⚫︎受け取ったメッセージ 混ざり合い、影響しあう人間と文化 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。 ⚫︎感想 「犬婿入り」 全てのものに境界線がない世界観。民話風な雰囲気で現在と過去、現実と虚構、動物と人間、父と娘、妻と夫、先生と生徒、男と女、清濁、といった境界全てを曖昧にしてひとつの世界を作っている。非常に不思議なお話。排泄物の話や鼻くそノートなんてものも出てくる。これも自分のもののようで自分から離れて、でも自分のものなのか?という象徴か。すべての登場人物が普通のようで普通でなく、すべて「生き物」として描いている。 「ペルソナ(能面)」 ドイツに住む日本人である主人公が、言葉が違う国で暮らすことで「日本人」としては認識されず、「東アジア人」として曖昧に認識され、曖昧な状態におかれる。日本らしさを象徴する能面を被って街へ出るが、もはやそれは主人公とは認識されない。 最近の多和田さんのインタビュー記事を読み、著者はこの「間合い」の世界を捉え、作品にしていると知った。この作品は主人公の苦しみが中心だが、多和田さんはその間合いを好ましく捉えて執筆している。 「純粋にたった一つの文化から生まれる言語があるとは思いません。言語は常に混ざり合い、他の文化や言語の影響を受け合っています。」というインタビュー記事から、このこと自体をテーマとして物語が創出されているのが多和田作品なのだとわかった。

    10
    投稿日: 2023.11.20
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    『ペルソナ』も『犬婿入り』も面白かった。 多和田葉子さん自体、初めてだったけれどとても読みやすくあっという間に読んでしまった。 あれは何かを意味していてとか、あれはそういうことで等、難しい解釈は分からない。 ただ私が読んでいて好きだなぁと思ったのは、ペルソナにしても犬婿入りにしても主人公の女性が周りで起こっている変な事の割に、妙に現実的な考え方や過ごし方をしているところだ。 周りが全部おかしくて、主人公だけが現実のような。不思議の国のアリスのようなところが初心者読者の私も取り残されず楽しめた。

    1
    投稿日: 2023.05.30
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     「ペルソナ」と「犬婿入り」の2作品で「犬婿入り」の方が好きだった。  2作ともギリギリのギリギリで破綻しない奇妙な状況や雰囲気が終始続いて、最後には堰を切ったように破局を迎える。その感じがすごく良かった。特に犬婿入りの方はホラーみたいな不気味さがあるけど奇妙さに親しみの持てる感じが良かった。

    0
    投稿日: 2023.05.08
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    この作家の特徴でしょうか? 文章がとても長い。1つの文章にたくさんの情報が入っている。 「ペルソナ」も芥川賞の「犬婿入り」も間なのか溝なのかを書いてあるんだな?と思いました。 「ペルソナ」の最後にどちらでもない自分になった道子はその後どんな人生を送ったんだろうか? 「犬婿入り」は本人たちとその周りの人たちのギャップが面白かったです。

    0
    投稿日: 2023.03.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2編収録。 ・ペルソナ ドイツに姉弟で同居する道子。二人はそれぞれ留学中の身である。ドイツ中世文学をやる弟、道子はドイツ現代文学を研究中だが、成果なく、奨学金を得られなくなり細々したバイトに明け暮れている。 自分に向けられる差別、自分以外の外国人に向けられる差別、日本人の奥さんたちと弟が持つ差別感情。道子は常にそれらを感じながら生きている。 作者の体験から出てきた作品なのだろう。肌感覚の嫌な感じがうまく文章から伝わりゾクゾクする。 ・犬婿入り 面白すぎる。だが笑って済まされるものではない不穏な物語だ。民話にありがちなエロさ、不潔さ、理不尽さをきちんと備えた、しかしちゃんと現代の話である。なんのメタファーか寓意かわかりそうでわからない。作者の只者ではない力量に感服するほかない。

    0
    投稿日: 2022.01.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

     献灯使以来の多和田葉子の小説。Kindleでセールされてたのと去年読んだエッセイがめちゃくちゃおもしろかったので今年積極的に読みたい作家。まずはこの芥川賞受賞作から読んでみた。当人がドイツに住んでいることもあるかと思うけど、規格外、小説界のメジャーリーガーという風格を感じた。芥川賞を受賞したのはタイトル作。切れ目のない長い文が産むうねうねとうねっていくリズムがオモシロかった。そのリズムと現代版にアップデートした民話という組み合わせの相性も良い。  芥川賞にどうしても気をとられるが、本著に収められているもう1つの「ペルソナ」という作品がめちゃくちゃオモシロかった。90年代にリリースされているので当時の話をモチーフにしていると思うのだけど今読んでもかなり興味深かった。人種差別がテーマになっていて大きく言えばドイツで生きる日本人の意識のありようの話。十把一絡げに「ドイツ在住日本人」と言っても考え方はさまざまで、そのギャップに苦しむ主人公の話がとてもナマナマしかった。エンタメの要素を強めてドラマティックにし過ぎることなく、ただそこにある風景として描いているところがストイックでかっこいい。文章がとても乾いているとでも言えばいいのか。ここが日本人離れしたメジャーリーガー感だと思う。自分も含め終盤にかけて、たたみかけるようなウェットさ(それは涙だろう)をありがたがる風潮がある中でこのストロングスタイルよ。個人的に一番うまいなと思ったのは変圧器の話。当時日本の家電を使う際には変圧器で電圧を変化させる必要があった。その電圧を変化させることが環境の変化、自分の態度の変化のメタファーになっている。不安定な電圧と自分の周りの環境の危うさ。まだまだ読んでない作品があるので楽しみたい。

    3
    投稿日: 2021.05.04
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    表題作のつもりで読み進めていってたら全然違う作品で焦った。 さて、解説にもあるとおり、二作品を収めたこの『犬婿入り』は「溝」がキーワードになっている。つまり境界線のことだ。 「ペルソナ」では信頼の置ける弟の和男でさえ、主人公・道子とは合同な意見を持っているわけではない。 特に序盤は、意識的にさまざまな国の名前が登場する。母語である日本語が、だんだんと自分の体から解離していく。日本人らしさや、外国人らしさ、といったステレオタイプには軽微な齟齬がある。同じくらい執拗に、肉の厚みについて述べられる。それもその一点が明白に羞悪な瑕瑾であるかのように。また、「ニガイ」は一貫してカタカナで表記されていた。途中わずかに登場する黒人の話と何か関係があるのだろうか。 表題作の「犬婿入り」。安部公房の作品群に似た雰囲気が離れない。水平線が分かつ二つの世界がぐるぐると混ざり合っていく感覚。忘れた頃にやってくる「電報」の言葉。何が普通で何がそうでないのかが判らなくなってくる。三人称的な視点で読者は自分を凝視する。伝染していく獣の体臭。みつこもだんだんと臭いに敏感になっていく。特に序盤は、文章が息継ぎすることなく進んでいく。非日常にいざなう導入催眠のようにも思える。

    3
    投稿日: 2020.10.28
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    異種婚を扱った犬婿入りと、ドイツでの留学生活を描いた「ペルソナ」。個人的体験からペルソナの異文化の中での疎外感、隔絶感、差別意識の描き方が好き。同胞アジア人へのちょっとした見下し感(差別とは少し違う)、自分もドイツ人からみたらアジア人であることの劣等感、裏返しのドイツ人への反発。 犬婿入りのほうは、文章が好き。映像が流れる様に入ってくる感じで。

    0
    投稿日: 2020.01.01
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    これが多和田葉子の世界、という短編2編。 純文学はその作家の個性がわかると、あるいは立ち上がってくるものがわかるとなかなか面白いものです。芥川賞の「犬婿入り」の雰囲気もそうですが「ペルソナ」の方はその入り口という感じでしたから、より理解しやすかったですね。 「ペルソナ」は作者の分身のような道子さんの、ドイツ留学における生活のもろもろの遭遇と心模様を描いています。移民を認めているドイツには様々人種が集まっている。わたしたちがヨーロッパの人種を判別しがたいように、自分たち日本人や韓国人、中国人を東アジア人としてまとめられる経験をする。違和感や嫌悪感を感じる人(道子さんの弟)もあるが、道子さんは平気だ。しかし自分が「何者か?」ということにはとてもこだわる。しかし、その個性を究めるともう日本人と見られなくなるという皮肉な結果になりました。 人種のパッチワークの中にいるからこそ、それがわかったのか。「犬婿入り」では日本の中の出来事です。ごく普通の町に変わった行動をする女性が塾を開いている。親は眉を顰めるが、子供には人気です。北村みつ子先生だから「キタナラ塾」のあだ名がついたのか。いえ、きたならしいとえっちなことがとめどもなく子供を引き付けるからです。で、尋常じゃないと思われる次第がいろいろと起こってくるのですが、異質なものの存在を認めるのには、普通の町ではもう見て見ぬフリが出来なくなり、受け止められなくなるのです。 すなわち異質なものと折り合いをつけて生きていくのが簡単なのか、大変な困難を伴い、身を削るような思いをするのか。それでも何とかしなければなりません、地球は狭くなったので。

    5
    投稿日: 2019.11.17
  • 想像できない奇妙な世界

    一体どういう人間がこんな話考えるんだろう? でも最後はそれなりに皆ハッピーで良かった。

    0
    投稿日: 2019.10.15
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    春樹の次(寧ろ春樹以上⁉)に、ノーベル賞に近いとされる作家に初挑戦。話題の”献灯使”からとも思ったけど、とりあえず芥川賞作品から。中編2作を収録していて、表題作は後半なんだけど、なんせ前半が辛かった。『~った』がひたすら多用される文章の意図も何となくは分かるし、人種問題も理解はできるんだけど、物語としての魅力が…。表題作も、唐突に犬婿が入ってきたり出ていったりで、実際問題良くは分からんのだけど、何となくおかしみはあってまだ良かった。

    0
    投稿日: 2019.09.30
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    「犬婿入り」(多和田葉子)を読んだ。 「ペルソナ」「犬婿入り」の二編。 前回これを読んだのはもう四年くらい前で、日常生活に潜む緊張感とか不条理性とかそういった多和田葉子の世界にすっごく感激した記憶があり今回もやっぱりすっごく感激したけれど、と同時にリラックスして笑える自分がいた。

    0
    投稿日: 2019.09.24
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    多和田葉子の中編集。表題の「犬婿入り」と「ペルソナ」の2作品が収録。 以前に読んだ「献灯使」が心に残ったので、芥川賞受賞作品である本書を手に取ってみた。 「犬婿入り」は芥川賞受賞作。39歳の学習塾を開いている女性を中心とした不思議な物語。 「ペルソナ」はドイツに留学している姉弟の話。姉の視点から日々の生活が描かれ、外国で日本人として暮らす姉の心情風景が描き出される。 「犬婿入り」は、芥川賞受賞作らしく、非常に難解であった。実際に犬が婿にくるような話なのであるが、それがエロティックというか、気持ち悪いというか、心にざわざわ感が残るというか、何とも読後の印象の不思議な物語だった。 「ペルソナ」も理解するのが、非常に難しかった。移民の多いドイツであるが、日本人や韓国人などの「東アジア人」はドイツ人や他の移民達から何となく差別を受けている。例えば、「東アジア人は表情がなく、本当の気持ちを顔に出すことは無い」などといった、差別とは言えないほどの些細なものだ。 おおっぴらに差別はされないが、誰もが心の中に壁を作り、それぞれの人たちが持つ「東アジア人」に対するステレオタイプを押しつける、あるいはそのように接してくる。 この微妙な空気のなかで息が詰まりそうになりながら主人公である道子の心情を、独特な筆力で筆者は描き出す。この心情は道子と同じくドイツで暮らす筆者の心情にも通じているのだろう。

    7
    投稿日: 2019.05.27
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    多和田葉子氏の、芥川賞受賞作。この著者のことは知らず、初めて読んでみた。芥川賞受賞作によくある、なんとも不思議な小説だった。著者は、芥川賞だけでなく、今まで数々の文学賞を受賞しているようだ。 2作の短編小説が入っている。1つめは「ペルソナ」という題で、ドイツに留学中の姉弟の姉の一人称の視点で描かれる。外国で外国人としての暮らし、現地日本人との話、自分のアイデンティティ、など。2本目は、中年独身で、傾きかけた古民家に住み自宅で小学生の塾をしている女性が、犬のような男性と暮らす話。犬婿という民話は私は聞いたことが無かったが、普通の人間の女性が、犬と結婚するというような話のようだ。この女性宅に転がり込んでくる男性は、ちょっと変わっているので、塾に子供を通わせる親の間でも話題になっていた。実は以前、その母親の一人の夫だったそうで。 この不思議な小説は何を伝えたいのだろう?不協和音的な心もとなさが、面白いと言えば面白いが、奥が深すぎるのか、響いてこなかった。

    0
    投稿日: 2019.03.18
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    遅読の私なのだが実にすいすい読み進めた。 二冊目にして「多和田葉子流」に慣れたのは 思考の形がどこか似ているのかしら?なんて 多和田女史の研ぎ澄まされた言語感覚と 深い洞察力を前にして とても言えない。 1993年芥川賞受賞の「犬婿入り」。 エロチックな有機物のにおいに満ちているが 妙に乾いた空気感。 「異質な存在」も人々の「言葉」次第では そうでないものになり 何者なのか 何物なのか  わからないまま時は過ぎていく。 「ペルソナ」には「ドイツで生きる私」が ちょっと痛々しく描かれている。 ある韓国人に対するドイツ人の反応をきっかけに 「東アジア人」の自分がよくわからなくなっていく。 能面をかぶったまま街を歩き 日本人を体現しようとしたものの  誰も日本人だと思ってくれない。 ペルソナ=外的側面のせいで 何者でもなくなってしまうという恐怖。 私は海外に住んだことがないくせに 何度も行っているから知った気になっている 情けない人間だが 異国において自分が誰かよくわからなくなる感じは なんとなくわかる。 以前 ミュンヘンで 商店街のウィンドウを眺めながら歩いていた時 妙にくすんだ女性の像が突然目に飛び込み ぎょっとした。 平たく表情のない顔。凹凸の少ない身体つき。 それは鏡に映った私の姿だった。 一瞬 時間が止まるというか 血流が止まるというか 身体が地面から浮いてしまったような 気がしたことを覚えている。 20世紀末 多和田女史は異国にあって アイデンティティを喪失した共同体は やがて断片の集まりでしかなくなる  という不安を感じたのではないだろうか。 21世紀に入って20年。 その不安が現実となった世界に私たちは暮らしている。

    0
    投稿日: 2019.02.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    違うタイプの二編で、私にとっては二編とも居心地が良いとは言えない話だった。 ペルソナは、国や文化や性別による差別・偏見が根底に常にあって、次から次へと襲ってくるそれらにあてられたようで、孤独や葛藤が渦巻いているのもあり少し沈んだ気持ちになる。 犬婿入りは、良くも悪くも性が猥雑に散らばっていて動物的。そこを見て見ぬ振りはできず、不快感を薄っすらと刺激される。最後は本当に結ばれた者同士で関係が成立して丸くおさまるので良かったのかな、と思いつつも置いていかれた感じがある。

    0
    投稿日: 2018.12.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人は自分と共通点のある似通った人とは仲間になりたがるけれど、ちょっとでも異なる人とは区別したがる。 生まれた国や言語、文化、風貌、立ち振舞い等あらゆる基準により自分とは異なる者を「異物」と見なし排除し、時に攻撃する。 まるで多数決で多い方が正義となるかのように。 『ペルソナ』でのドイツに住む日本人・道子に対して、表情が乏しく何を考えているのか分からない、と言って傷付けたり、表題作の風変わりな塾教師に対して母親達が無責任な噂話を広めたり。 個人的には芥川賞受賞作の表題作より『ペルソナ』(これも芥川賞候補作)が好き。 道子が日本人の顔になるために化粧をする姿(素顔ではベトナム人に間違えられるため)や能面(ペルソナ)で顔を隠すことにより柵から解放され堂々と歩く姿がとても印象深い。 長年ドイツで暮らす多和田さんも、ドイツに住み初めの頃は色々と苦労したのだろうか。

    6
    投稿日: 2018.11.25
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    多摩川べりのありふれた町の学習塾は〝キタナラ塾〟の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。 ある日、黒い犬はお姫様をさらって森に入ってしまい、本当に嫁にしてしまったと言う子もいれば、お姫様のご両親が黒い犬がお姫様のお尻を舐めているところをたまたま目撃してしまい、ひどくお怒りになって、黒い犬とお姫様を無人島に島流しにしてしまったと言う子もいた。 P84より

    0
    投稿日: 2018.02.14
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    芥川賞受賞作品であったがすんなりとはわからない不思議な小説であった。ドイツのことには全く触れられていない。

    0
    投稿日: 2017.04.27
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    「ペルソナ」は匿名性や等価性といったものが構造としても表されているが、やや型に嵌った感もある。それに較べて「犬婿入り」はもう少し奔放な感じがするが、細部まで読み込めなかったので口惜しい。

    0
    投稿日: 2017.03.01
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    自我自我していないドライさと、頻出する小学生受けしそうなプリミティブな言葉(鼻くそとか乳房とか)とが好相性だったし、ところどころ笑いのツボもあったけど、個人的にあの手の息の長い文体はうらめし…

    0
    投稿日: 2015.11.22
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    表題より前掲のペルソナがよい。 まあ、読みにくい。 異国の生活でのアイデンティティについて。外国人とも日本人とも意識が乖離。私はこの問題に関して留学中は諦めてたなと反省。むしろ韓国人やベトナム人に見られることで新たなペルソナを被り匿名性の快感を感じてました。 壁も、ステロタイプの像も他者の頭から無くなるわけない。諦めた方がいいはず。でもこの作者は戦っている人でした。非常にタフ。 ついでに犬婿入りのメモ。 長文を繋げてリズミカルに。 口上。興行師の話し方に似ている。書き方で連想するのはなめとこ山の熊、樋口一葉。きっと後者が近い。 口上を目指すことで民話的な、昔々的な世界観を作る? 段階別の異様さ。主婦、先生、太郎の順。噂話から段階的に異様さに繋がるため異様さに入りやすくなる。 通常、この展開なら異常も噂話で語られ真偽は不明の終わらせ方にするが、そうはならない。油断してると当たり前のように異常が事実として語られるから、荒唐無稽な話にリアリティが生まれるのか?

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    投稿日: 2014.01.14
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    ペルソナ、表題作の二篇。ちょっと歩いただけで体中に小さい棘が刺さる。端的なようでねじれた文章、意地の悪い目線。散らされた毒に、違和感の集積が肩にのしかかる。重ならないが故のあきらめ、一方の引力、思いやり。ひとり目の道子と似た環境にいたことがあるけれど「あーあるねー」ってところと、そういう風に感じるのか、と思うところと。アジアは総じて「アジアチック」、「トヨタ」ではなく「ソニー」だった。顔指して言われた事はないしいわれても別に気にならなかったと思う。 正直なところ、主人公が神経過敏でなんてめんどくさいんだ、と思った。でも、その感覚を知っている気もする。読後こってりした澱が残る。

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    投稿日: 2013.12.29
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    『ペルソナ』主人公の道子は差別や偏見を苦痛に感じてるが、道子自身も偏見を持ってるのでドッコイドッコイやなぁと思った。 『犬婿入り』適度にエロかったんで『ペルソナ』よりは好き。でも訳分からん・・・。解説読んでも分からん。

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    投稿日: 2013.12.11
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    文章の奥に潜んでいるモノはきっとものすごい面白いんだろうけど 私には全然読み取れなかったなぁ…。難しい…。 アレゴリー?ペルソナ?アイロニー? 自分とその回りの間にある、居心地の悪い「隙間」が なんとも言えない読了感。

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    投稿日: 2013.10.26
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    第108回芥川賞受賞作。「ペルソナ」を併録。こちらも、よくできた作品だとは思うが、表題に現れているように「ペルソナ」のアイディアが小説の構造そのものを決定している感があり、硬さが否めない。一方表題作の「犬婿入り」は、うんと柔軟な造りになっている。飯沼太郎のわけのわからなさも痛快だ。しかも、荒唐無稽で一種寓話的な世界でありながら、それが独自の小説空間として見事に自立している。可能性でいえば、芥川賞作家の中でも、あるいは10年に1人の逸材かと思う。多和田葉子は初読だったが、今後も注目して行きたい作家の一人だ。

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    投稿日: 2013.09.26
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    この場合の「ペルソナ」は人、位?ユン グが唱えた心理学上の概念?俺にはよくわからない「のだった」。 犬婿入りは、節が、三行位の長めの文を 意識して多様したようだ。

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    投稿日: 2012.12.22
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    「犬婿入り」を初めて読んだとき、饒舌体っぽいことばの流れ方や、生臭いにおいがしてきそうな雰囲気がすっごく好みやと思ったんですが、べつにそーいう文体の人ではなかったとゆーことに後から気付きました。 でもやっぱり多和田さんも、笙野頼子とか町田康とか(ぽいと思ったんだよーう)、ことばを武器にことばと戦う作家さんやった。 「ペルソナ」は、無意識な部分をえぐってくれてやるせないきもちになりました。綺麗事言うとる場合やないよ。

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    投稿日: 2012.11.24
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    2012/08/30読了。 蛇女房が下地になっている、蛇を踏む、が想起されました。 文章がいやらしくなく、面白く読めました。でも、エッセイのほうが好きだな。

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    投稿日: 2012.09.17
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    多和田葉子さんの本を一度読んでみたいと思っていたので、手にとってみました。 ペルソナはとても面白く読みました。自分が同じような環境に身を置いたことがあるせいかもしれないけど。 表題作の 犬婿入り の方はあんまり、、、という感じでした。 文学的なものを書こうと意識し過ぎたのか、ちょっと不自然な印象を受けたのは私だけでしょうか。

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    投稿日: 2012.05.28
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    「ペルソナ」はドイツ在住の作者らしい、海外で暮らす日本人の違和感を中心にした話。「犬婿入り」はちょっとファンタジックな話。 2本の小説で文体が全く違うのが興味深かった。ペルソナは比較的シンプルな文をつないでいく、素直な作りなのに対し、犬婿入りは不必要なほど長い文体。素直には読ませないという作者の意識を感じた。

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    投稿日: 2012.05.04
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    登場人物のキモチを、体の部位が叫びわめく文章が並ぶ。 正に、理想とする文体です。 『ペルソナ』では、イメージを精密に表現する力を、 『犬婿入り』では、イメージを創り上げる才能を。 彼女のさわやかではない、ちょっとねっとりした雰囲気が好きです。

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    投稿日: 2012.04.25
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    残念ながらこの方の文章とは相性が悪い。 が、巻末の解説に書いてあった「言語の遊牧民」っぷりが興味深かったので、エッセイを読んでみたくなった。 もしかしたら他の小説を読めば気に入るものが出てくるのかもしれない。

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    投稿日: 2011.11.03
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    (2011.02.23読了)(2005.03.05購入) ☆多和田葉子の本(既読) 「尼僧とキューピッドの弓」多和田葉子著、講談社、2010.07.28

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    投稿日: 2011.09.18
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    犬婿説話の現代バージョンらしい。描写は細やかで実際味に溢れるのに、物語の出来事が現実離れしているときのこの薄気味悪さ。ごちそうさまです!

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    投稿日: 2011.03.20
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    「ペルソナ」は堀田善衛の「審判」を彷彿とさせる。他者のまなざしにさらされるという問題。 「犬婿入り」では身体の感覚や接触を通して他者とのはかなく危うい関係が築かれる。 両作品が併録されているバランスのよい一冊。

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    投稿日: 2011.02.20
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    『ペルソナ』 そんなに危ないことが起こっているわけじゃないのに、読んでいて妙に体が緊張する。不安になる。かみくだかれた状態でつらつら書かれていく登場人物たちの心情に近づけそうで近づけない、不思議な感覚。 『犬婿入り』 不思議…。現代版おとぎ草子? あとでまた読んでみます。

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    投稿日: 2011.02.19
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    ある寓話から物語りが始まり、次々と現れる文中の登場人物の色づけが始まる中で、人間の感性とは少し違った観点から、話が進行してゆく。「きつねにつままれた」印象を残して、あっという間に物語が終わる。ニオイに敏感なせいで、後を濁さずか、ふしぎなまま終局する。

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    投稿日: 2011.02.12
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    『ペルソナ』と、芥川賞受賞作『犬婿入り』の2編収録。 どちらの作品とも、言葉の使い方・つむぎ方がとても面白いです。 言葉でとことん遊んでいて、とても実験的で前衛的。 『ペルソナ』 ドイツに留学している道子は弟の和男と同居している。 道子の偏執的な思考が怖い。 怖いんだけど、その偏執的な思考を目で追うのは、酔いにも似た快感があるから不思議。 文化と、人種と、言語の狭間で道子の思考はぐるぐるぐるぐる回り、私の思考も同じ足取りを辿ってぐるぐるぐるぐる。 仮面をかぶることで、狭間から飛び出た道子は、どこへ向かうんだろう。どこまでも追いかけたくなってしまう。 『犬婿入り』 果てしなく長い一文が、句読点ごとに心地のいいリズムを刻んで、まるで音楽を聴くかのように文字を追っていました。 文字を目で追うという快感をこんなにも感じることのできる小説はなかなかない。 この文体は川上未映子っぽかったです。川上未映子は多和田葉子を好きらしいですね。 どこにも存在しなさそうな場所で起こった、不思議な動物譚。 ますます多和田葉子にはまってしまいそう。

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    投稿日: 2011.01.27
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    『犬婿入り』はちょっと厳しかった。『ペルソナ』はこの気が狂いそうな感じは少し怖い。でも危うい空気が最後まで続いて、読めました。

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    投稿日: 2010.12.23
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    「不思議な日本語の小説体験」 『犬婿入り』は日本の各地に残る説話・犬婿説話を現代の郊外住宅に置きかえ、近代な都市と日本の民俗を結びつけた作品だ。 犬婿説話とは人間の女と雄犬が結ばれる話が多く、娘の尻を舐める、または、娘の身体からでる排泄物を処理すると雄犬に嫁にやるというものだ。そんな説話が機能的・合理的な郊外という場所でどう展開されていくか、郊外というものへ新しい視点が見いだせる小説。 他者との埋めがたい生々しい亀裂を描きながらも、その中で生きることを真摯な眼差しで見つめた短編小説、『ペルソナ』も収録。

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    投稿日: 2010.11.11
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    東アジア人は儒教教育されているから感情を表現する能力がないんだって人もいる。 ナチスはユダヤ人だけでなくて同性愛者やジプシーも殺したんだから精神病患者も殺したって不思議はないさ。 現代文学をやっていたのではドイツ人に勝つ見込みはないが中世文学をやれば負けないかもしれない。中世文学をしっかり勉強すれば、将来必ず認められるようになり、まだまだ人材の足りない分野だから。中世文学をやっていますといえば、ドイツに行ってもドイツ人に尊敬される。逆に現代文学をやっていると言えば一人前の研究者としてつきあってもらえない。

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    投稿日: 2010.06.09
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    「ペルソナ」と芥川賞を受賞した「犬婿入り」の 2 篇。 まず気になったのはその文体。「ペルソナ」では「~のだった」という文末表現がくどいほどに繰り返され、「へんだ」と感じるほどなのだが、不思議とその不自然なリズムが心地よく、すらすら読めてしまう。一方の「犬婿入り」の文体も変わっている。なにしろ、1 文が異様に (と読者が感じざるを得ないほど) 長く、ときには 1 ページ以上もあるのだ。解説に著者のことばとして、「自分の母国語で書くときも、いわゆる上手い日本語、綺麗な日本語というのを崩して行きたい。つまり、二つの言語を器用にこなしている人になりたいんじゃないんです。また、一つを捨てて、もう一つに入ったんでもなくて、二つを持ち続けながら壊していくような、そういうようなことを一応、恥ずかしながらめざしているんです」という引用があるが、なるほど、そういう意味で実験的にこのような文体を使ったというなら理解できる (まだこの著者の作品はこれしか読んでいないので確信はないけれど)。 私は「ペルソナ」、「犬婿入り」のどちらも気に入ったが (より共感できる・わかりやすいのはドイツに留学している日本人女性の日本人であることに対する疎外感、日本人であることと自分自身であることの矛盾を描いた前者)、「生理的にダメだ、受け付けない」と思う人はいるかもしれない。でもそれは逆に考えると、「気持ち悪い」「がまんならない」と思わせるだけの何かが、この作品の中に存在するということでもある。

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    投稿日: 2010.04.11
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    登場人物が外国人だと、名前を覚えきれずにおもしろさが半減しがち。(ペルソナ) 犬婿入り。なんじゃこら。な感じで、でもこの文章のテンポは好きで、ふふふと笑いながら、くるくる~っとここの世界に入り込み、へ?終わり?っと抜け出てきました。

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    投稿日: 2010.03.06
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    『エクソフォニー』は読んだことがあったけれど、小説には手を出していなかったYoko Tawada氏。 『犬婿入り』では、表題作ではない「ペルソナ」の方が前に入っていたので一瞬迷ったが、結局初出順に、「ペルソナ」から読んでみた。 良かった! 私はやはり差別の問題に関心があるし(というのを、今回再認識しました)、ここでの表し方はとてもとてもしっくり来るもので、英訳があったら是非教材にしたい(インターネットで検索したけど見つからなかった T_T)。いっぱいdog-earしてしまいました。 表題作はちょっと実験しすぎというか・・・もちろん別に、どっかから簡単に見つけてきた頂きモノなんかじゃなく、どうしてもこう、一文がやけに長い形で綴っていくしか書きようがなかったのかもしれないけれど、私にはイマイチ乗れませんでした。小川洋子氏の「妊娠カレンダー」といい、芥川賞ってなんかこういう技巧的なのが好きなの?と思ってしまったり(単にドゥルーズわからないから乗れないんだろか!?)。まぁ内容も私好みではないしネ。 こっちから読んでたら途中で止まっちゃってたかもしれない。 だから星は4つにしておくけど、「ペルソナ」が良かったので別の作品も読んでみたい。 ところでその、ドゥルーズを持ち出していた解説の与那覇恵子サンとは一体どなた?と思ってググってみましたら、どうやら沖縄文学を専門とする方らしいです。

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    投稿日: 2010.01.27
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    芥川賞らしいが・・・ う~~~~ん。  全て中途半端な肩透かしばっかの事柄を集めて集めて ハイ。どぞ。 行間とか~ 読んで読んで深~~く読んでね。 ってな感じの本です。 文章もなんだか、のどにひっかかるようなリズム感っていうか 相性の問題なんだろうけど、あたしはダメだぁ。 後半の文章は、ひっかかり感はなくなるけど 相変わらず、内容はないような・・・ プロの人たちからしたら、これは賞をあげてもいいぐらいの作品なんだろうけど 本を買うのはプロよりも素人のほうが多いわけで その購買者によって 生活は成り立つわけで・・・ ってことで、☆ひとーーーつ! ( ・_ゝ・) < 人を感動させる文章を書くのってすごいことなんだね 第108回芥川賞受賞

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    投稿日: 2009.12.07
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    *ブログ感想あり* http://blog.livedoor.jp/marine0312/archives/51573574.html ペルソナ、は非常にこのひとらしい話だなあと思いました。 海外での違和感、国籍によるアイデンティティとかそういうテーマが。 犬婿入り、は正直よくわからなかった。 芥川賞とってたと思うんですが。。。 多和田さんの言葉のつかいかたは好きですが オチのよくわからない作品が多いなー。

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    投稿日: 2009.06.20
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    ペルソナの「〜だった」、犬婿入りの長い文章が気になる。犬婿入りが、他人の口を借りた「噂話」を真似たのだと思うと、ペルソナの「だった」はなんなんだろう? ひとは仮面を被って生きている。しかしそれは他人へは仮面ではないのだ。本当の仮面とは? 固く包まれた民族差別やステレオイメージとともに、主人公が外国へいって母国語がうまく使えないという現代人が抱えている問題。

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    投稿日: 2008.08.12
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    8/2 啓さんオススメの本。海外に住む日本人というかマイノリティの人の心の移り変わりみたいなものがかなり観念的に描かれていたのかなあと思った。文章は嫌いじゃない。2作目の表題作も、文学的でおもしろかった。

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    投稿日: 2007.08.07
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    以前多和田葉子は、この小説を「芥川賞狙いで書いたんですか?」とある批評家に尋ねられたことがある。確かに、デヴュー作に比べ、理に落ちた一編。でもその民話的なユーモアはまた別な魅力を漂わせているのは間違いない。

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    投稿日: 2004.09.27