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人間の幸福
人間の幸福
宮本輝/幻冬舎
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総合評価

27件)
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    異邦人で思い出したので再読。 ストーリーもタイトルもすっかり忘れていた。 ミステリー風ではあるが謎解きの要素はない。 主人公が住むマンションで殺人事件が起き、それをきっかけに住人のいろいろな事情や秘密が見えてくる。 自尊心が高く、下に見ている妻や愛人に少し詰られただけで逆切れするくせに、警察の取り調べや妻と愛人の修羅場では情けなくオロオロする主人公の姿はかなり嫌だ。 主人公が他人の隠された一面を知り、自分を見つめなおして自尊心と誇りの違いに気づき、平凡なサラリーマンに過ぎない自分には一体何があるのだろうと考えるくだりは、バブル崩壊後、いやもしかしたら戦後ずっと日本人が失くしてきた「誇り」についての作者の問いかけなのかもしれない。

    1
    投稿日: 2021.05.07
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    敏幸の住む「杉の下マンション」の隣の一軒家の主婦、玉田麦子が白昼、撲殺される。近隣の住民は警察の取り調べを受けるのだが、敏幸は代休をとって昼寝をしていたのでアリバイがない。身の潔白を証明したいと、自らも犯人探しに翻弄する。近隣を嗅ぎまわっているうちに、表面に出ていなかった他所の家々のゴタゴタ、人間模様、人の裏側を知るところとなる。 しかし、この敏幸という男、犯人探しといきがって人を尾行したり、一日の精力ほとんどを使って、どれだけ暇なのだろう、違和感嫌悪を覚えた。これじゃストーカーまがいだ(この時代ストーカーという言葉はなかっただろうが)。自分でも高揚感を得てるように見えるし。 「事に当たってみないと人はわからない」これは、私が親(母)から時々言われることである。ご近所さん、知り合い、親戚等、関わる様々な人。挨拶をする、世間話をする。表面は常識が通っているように見える。 けれど、それは、外から見た、うわべだけの顔だ。その人の本性は浅い関りではわからない。事、何か問題に直面するとか、少し深い関りがあって初めてその人の本質が見えてくる。 (特に近隣の人とは、うわべだけのお付き合いですむならそれでいいのだが。) この話で、主人公敏幸は、起こってしまった事件をきっかけに、人の知らなかった一面を見る、とともに、自分自身とも向き合い葛藤する。徐々に、人間にとって何が一番大切なのだろう(幸福とはなにか)と、妻や友人、仲間と討論にも似た会話をし、ぶつかりあう場面が幾度かある。 想像とおり、犯人は通りがかりの犯行で、近隣の人間ではなかった。 人には大なり小なり野次馬根性があり、人の不幸は密の味でもあるのだが、他所のゴタゴタ劇など知らぬが仏だと思った。 誰もが、人に知られたくない事情を持っている。また、人は見かけでは判断できない。 中には、最初はいけすかない奴だと毛嫌いしていた人間も、関わっているうちに自分にとって信頼できる相手となる場合もある。そういうのに期待したい。悪いことばかりでない。 冒頭の殺人事件の出だしから、その後、山場があまりなく(私的に)、ご近所ドロドロはちょっと苦手。 じわじわの重さがきつかった。長かった。

    11
    投稿日: 2020.08.27
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    古本屋で買った文庫本。 宮本輝さんは 殆ど読んでる 再読ーの、つもりが 読んでなかった?? 珍しく人が死んだ話から始まる。 何日かかるかな?

    0
    投稿日: 2020.03.13
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    地域の読書クラブの見学にいってきました この日のお題が、この本でした 自分は進んでミステリーを読まない人なので おそらく縁のない本ではありますが(^_^;) 宮本輝は、よく読んだ作家さんだったので メンバーそれぞれの発表を興味深く聞きました まとめに図書館司書さんの解説もあって 部外者ではありましたが楽しめました

    0
    投稿日: 2020.01.28
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    著者の作品は、よく読んでいますが、殺人が絡む推理小説は珍しく読みました。読み終わって感じたことは、やはり今までの作品のように人間の罪深さ奥深さが、書かれていました。主人公が自分でも気づかなかった一面を知り愕然とする場面。自分では意図せずに異性を惑わせてしまう女性の恐ろしさ、男達の愚かさ。読みごたえありました。

    0
    投稿日: 2018.12.02
  • 宮本輝作品にしては異色、それでも登場人物の心理描写はさすが!

    宮本作品にしては少し異色?殺人事件を題材にした推理小説仕立てになってはいるが、内容は殺人事件に巻き込まれた周辺の人々の心理描写の展開である。よくもま~、色々なものを抱えた人たちが登場するなと思いながら読んでいったが、現実でも、人それぞれに表に出したくない“劣等感”や“変な嗜好性”、いつの間にか蓄積していく“偏見”を持っている。決して小説の中だけで誇張された話ではない。このあたりの心理描写に関しては、宮本作品の奥深さを感じる。人間の幸福・幸福観とはひとそれぞれか。居酒屋のおかみさん・チコさんがいい味を出していた。石鍋君は最低だな~。

    0
    投稿日: 2016.12.28
  • ミステリーと人間の内面性が交錯する読みやすさが良いです

    平凡な人々の日常が1つの事件を通して平凡ではなくなって行きます。登場人物の誰かに共感あるいは嫌悪をすると読みやすい作品ですが、最後まで読んでも幸福の答えは読者によって違うものになるのかなと思います。新刊でもないので図書館で借りても良いのかな。

    0
    投稿日: 2016.12.18
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    宮本氏にしては珍しい推理小説仕立てである。一人の女性の死から始まる周囲の人たちの「人生」。どんな人にもその人だけが持つ歴史があり、暗部がある。人は愛しく悲しいものであるが、「幸福」ということに限っていえば、その人本人にしかわからないものなのであろう。読むのにずいぶん時間がかかってしまった。そのことが残念。

    0
    投稿日: 2016.06.04
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    近所で殺人事件が起きる。バットで殴り殺された主婦は近所からいい目で見られてはいなかった。隣のアパートに住む人たちはみんな警察から事情聴取を受け、主人公の男性もそのうちの1人だった。周りに怪しい人物がいれば警察に伝え、尾行して犯人を捜すが…

    0
    投稿日: 2016.04.09
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    貫井のとっくんにしても宮部みゆきサソとかも、 ある系統の作家さんの行き着く先みたいな感じ。 人の業みたいなものを、事件を中心に見せかけて、 実はだしにして、その外で落とすみたいなね。

    0
    投稿日: 2014.04.09
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    2013.10.12 主人公には尺然としないものは残るが、ダウン症の娘をもつ喫茶店のマスターの言葉には重みを感じ、また自分にとつての幸福とは何かを考えされる作品。

    0
    投稿日: 2013.10.12
  • 平凡という意味

    「骸骨ビルの庭」を読み終えた後に、手にとりました。 「骸骨ビルの庭」では、特異なキャラクターが多かったのですが、この作品では、平凡な普通の人たちが登場します。 しかしながら、読み進めると、この人たちには、みな秘密があり、心に闇を抱えて生きている。 平凡や普通というのは、自分だけが思っているだけで、実は、そんなものは存在しないということを感じさせられました。

    1
    投稿日: 2013.09.27
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    人間のイヤなところをこれでもかと描写した上で、そう捨てたもんじゃないでしょ、いろいろ事情があるんだよ、と訴えかけてくる感じ。

    0
    投稿日: 2013.08.18
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    う~~ん、ちょっと”中途半端“な感じがしてもひとつやったかなぁ・・・。 すごく読むのに時間がかかってしまった。

    0
    投稿日: 2012.01.11
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    さえない主人公の住むアパートの隣人がバットで撲殺される。アパートの住人それぞれに動機がありそうで、殺人事件をきっかけに住人たちの知らない顔が見えはじめる。 隠してるつもりじゃなくても、普通ひとって、いろんな面があると思う。私の知っているあの人も、私の知らないあの人だったりするよね。

    0
    投稿日: 2011.11.27
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    なぜか、以前読んだことをすっかり忘れて 2回読んでしまった。。。 後半に入って、「あれ?前に読んだかも??」 と思い出した。 人の二面性がこれだけ丁寧に書かれていると、 いろいろ重たい。重たいけど、一気に読んでしまう。 一回目 2010年6月13日読了 二回目 2011年10月19日読了

    0
    投稿日: 2011.10.19
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    この作家の小説を読むのは初めてだったが、正直言って最初に読む作品ではなかった様な気がする。 とても人間臭い部分が書かれていて面白いには面白いが、どこか釈然としない所が残ってしまう。 ただ作品を読みながら、作品とは別に自分の幸せってなんだろうかと考えた。 些細な事にフゥッと気がほぐれ、少しいい気持ちになる。そんな事の積み重ねが幸せなんだろうな。

    0
    投稿日: 2011.04.05
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    宮本輝は終わりに行くまではおもしろいのに、最後でちょっと拍子抜けしてしまうところがある。一人の中年女性の殺害事件が軸ですが、これはミステリー、というものでもない。人間ドラマを描いている、という方が正しいかな。 前半と後半で色がだいぶ違います(阪神大震災の影響とか…)。 説教くさいと言えばそうだけど、喫茶店のオーナーのくだりはなんとなく好きです。

    0
    投稿日: 2011.03.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    長らく読んでいた宮本輝さんの「人間の幸福」 やっと読み終わりました。 内容や展開とタイトルがどう繋がって行くのかが 中盤くらいまでは読めなかったのですが 最後までたどり着いてみると作者の言わんとすることが 分かってきたような気がします。 うちの母はよく夜に車で走っていると こんなことを言っていました。 あの家一軒一軒にそれぞれの家庭があり、暮らしがある。 窓から灯りが洩れているのを見ると その家族の生活を想像してしまう。と… ひとつとして同じ家族の生活はなく、 ひとつとして同じ人生はなく、 当たり前なのですが人生感も価値感も恋愛感も性癖も違う 人間が何億とこの世で生きているのです。 だから幸福のあり方がひとりひとり違うのも当たり前なのです。 あなたは幸福という言葉でどんな風景を思い出しますか? 本当の幸福というのは目に見えるものではない、 その人の世界感の中での価値。 この話の中でダウン症で二十歳の娘を亡くした 喫茶店のマスターが言う。 「人間から誇りってものを奪っちゃいけない。 どんな人間にも誇りってものがあるんだ。 それを奪うのは、命を奪うのとおんなじだ。 でも、誇りってのは、少しでも正義をおこなわない人間には 無縁のものなんだ。」 そしてこの本の主人公は気づく、誇りと自尊心は違うのだと… 難しいテーマだが、幸福というものは一通りではないと、 人の数だけあるものなのだと。 それは他人には理解できないものであったとしても… 話の最後、主人公が外で仲間と酒を飲んでの帰り、 浮浪者に出会う。 浮浪者は家財道具を荷車に積んで犬を連れて通りかかり、 主人公は残った酒をこの男にやるのだが、 その様子は宛てもなくさまよっているのではなく、 明確に目的に向かってるという強さが感じられた。 とある。 まさにこれは各個人の幸福の感じ方の違いを 表しているのではないかと思う。 あとがきで作者がこう書いている。 これを書いているときに関西に震災が起き、 家族の無事を確認した後テレビを見つめていたら 奇妙な妄想のようなものに取りつかれたと… 地震は不慮の出来事だったかもしれませんが、 そのあとの救援の遅れは何か大規模な企みではないかと… 経済とテクノロジーの大国の指導者たちが、 何千人もの人々がいま死につつあるとき、 力強い行動を起こそうとしないのは、 その裏に何か企みがあるとしか考えられなかったのです。 ~中略~ この国は民衆を侮蔑する国だと思いました。 これほど民衆から誇りを奪って平気な国はない、と。 そうすることで、国そのものの誇りさえも 売り払っていくのであろう、 いや、すでに売り払ってしまったといってもいいのかもしれない、と。 作者のこの時の怒りがこの小説を人間の誇りと正義という方向に 向かわせたようです。 読み進むと後半部分は何かを訴えかけるような力強さを感じたのもその為かもしれませんね。

    0
    投稿日: 2011.02.08
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    登場人物に誰一人共感できなかった。 実際、あんなマンションには住みたくないな。 すごく人間くさい泥臭い小説だった。

    0
    投稿日: 2011.02.04
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    強引なところ(この人は昔からそうだった。最近気づいた)、ご都合主義のところもあるが、読み物として面白かった。人にとって幸福とはなんだろう。自分の子供のころ感じていた「幸福感」のくだりは、納得がいった。それが、損得の無い、本当の幸福感なのかも。

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    投稿日: 2011.01.26
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    心をちっとも動かされなかった。 この人の作品が好きで、 一時期それこそ手当たり次第に読んだ。 この作品が好きではないのか、 それともこの人の書くものが 好きだと思えなくなったのか、 どちらなんだろう、と思う。 人物が薄っぺらく思えて、 そこから何も感じなかった。 「なにかにつけて、自分はひとよりも こんなに幸福なんだって自慢したがる人と、 逆に、自分はこんなに不幸なんだってことを 自慢したがる人の二種類があるそうだよ」 「いまのぼくの幸福なんて、 他の誰にもわかりませんよ」

    0
    投稿日: 2008.04.10
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    感無量。 人は、一般にも、そんなに人気のある本ではないようだが、私の中では傑作だった。話の流れでちょいちょい出て来る名文。宮本輝ならでは。正直、話はなんてことないストーリーだった。だからこそ、感動したのかもしれない。何て事ない日常に探せば幸せはどこにでもある、のように。

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    投稿日: 2008.01.29
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    この話は、ある主婦が殺されて…その主婦の家に隣接するマンション住人全員に疑いがかかり、住人たちはお互いがお互いに疑惑の目を向けた生活を始める。 あぁ〜こんな、人それぞれに潜む悪みたいなものに触れたら気が滅入る。 風邪ひいて寝込んでいる今はただでさえ落ち込みがちなのに。。 そう感じて、しまった!と思ったのだ。 人を尾行することで性的愉悦にひたる… 群集の中の孤独… 途中何度も気が滅入りそうになったけと最後まで読んだ。 彼の作品の中には、いつも目を引くような美女が出てくるが、(うーん)と唸るような言葉も必ず出てくる。 それは登場人物の台詞に乗せてあるんだけれど、 今回は76歳のお爺さんの台詞 ”自分のためだけにしか生きてこなかった人が寂しいのは当たりまえだ” 私はどうだろう。 人のためと思ってやってきたことでも、突き詰めれば自己満足に過ぎなかったりする。 自信ないな。 だから時々寂しいのかな。

    0
    投稿日: 2007.09.01
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    世の中には、色々な性格を持った人がいるのだろうな・・まず、この本の率直な感想だ。 うるさくて有名な中年女性が殺されたことをきっかけに、マンションの住人たちの生活があらわになってくる。 住人たち、そして関係者が警察の取調べにあい、お互いを疑心暗鬼の眼で見るようになるのだ。 そして特に主人公の中年男性は、自分の無実を証明するために他の容疑者たちを尾行するようになる。 しかし、やがてそれが楽しみとなり・・・ちょっとアブノーマルだよな。 でも、少しわかるような気もする(笑) 尾行した人物の意外な行動・・人は皆、誰でも知られたくない一面があるのかもしれない。 ちょっとサスペンスの要素の入った宮本作品だった。

    0
    投稿日: 2007.06.11
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    初めて長い小説を完読した。ストーリーはありふれた話だった覚えがあるけど、後残りが良い本だった。最高に好きな本の一つになった。

    0
    投稿日: 2005.11.03
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    「でも、ああ、私の人生は悔いがなかったって思える人なんて滅多にいないよ。世の中でどんなに脚光を浴びてる人でも、平凡な人間にはできない仕事をやりつづけてきた人でも、幸福の基準は、つねに平凡なところにあるんだからね。」(p.437)

    0
    投稿日: 1998.04.01