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鳥たちの横切る空 辻邦生短篇選集 Ombre
鳥たちの横切る空 辻邦生短篇選集 Ombre
辻邦生、堀江敏幸/中央公論新社
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総合評価

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    このレビューはネタバレを含みます。

    初期から晩年までの作品から「人生の陰翳を描き出す精選六篇」を、編者堀江敏幸が、著者の生誕100年を記念して選出した、全二巻の、まずは前篇とのこと。 堀江が心がけたのが、「できるだけ幅広い時期から選出すること」と、「相通じる要素のある作品を二作ずつ組んで流れをつく」ること、「その色合いと感触で陰と陽にふりわけること」だったとか。 前篇にあたる、本書『鳥たちの横切る空』は、陰のほう、翳り「Ombre」だとか。 自分的には、おそらく次の陽の「Lumiere」のほうが好みかなと思うが、さて、どうなるか。 戦争の陰、影響を受ける時代の作品が並ぶのは、単なる偶然ではなかろう。 「しかしおれたちは本当に革命に参加しているのかね? それとも、一度はじめた戦争を、いやいや辻褄を合わせているのかね?」(「聖堂まで」) こうした言葉に、現在(いま)に通じるものがあると編者も思ってのことと拝察する。 この時代を生きる者として、我々は、ウサギのように 「自分たちがいつまでも生きていると思いながら死ぬこと」 しかできないのか、あるいは時代に抗うべきか。 いずれにせよ、 「人間がこの世に織り込まれて生きるためには、情熱で生き延びるほかないんですよ。現在(いま)に溶けこむ以外にないんですよ」 これは諦観か、それとも、賢く生きるための助言だろうか。いずれにせよ、鳥たちが、青く空に染まって飛ぶように、我々は時代と共に歩むしかないのだ。

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    投稿日: 2025.11.19