
総合評価
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powered by ブクログ筒井康隆、文章がカッコ良くて何冊か手を伸ばしてるがめっちゃ刺さるわけではない。これも★3ぐらい。 登場人物の思考を忠実に再現してなのか文章が時々途切れて(句点が普通の文章ではあまりない位置に挿入されて)いたり、帯にある通り主人公が気絶している時間を再現するべく空白のページがあったり。あとは時間移動なのか空間移動なのか、同時ではないんだけど連続して別々の場所に主人公が出現したり。あと、登場人物が皆、自身の行動は何らかの脚本に沿って演技をしているような前提があるっぽい。彼らが自分自身でそのことに言及していて自覚があるみたい。ただその脚本というのは小説の中で一つ何か決まった筋があってそれぞれの人物の場面を切り取ることによって徐々にその答えが浮かび上がってくるというわけではなく、1人に対して1つ、何かストーリーがあるのかなという雰囲気で進んでいく。本人も完全にどんなストーリーかわからないまま演技をしているっぽい。 登場人物は誰しも「全員が自分の物語を自分が主人公だと思って生きていて、他の誰かに邪魔されたくねえ」という気持ちっぽくて、まあそういう気持ちはわかるなと思いつつ「外部の刺激を排除するのは良くない、偶然が介入することによってより豊かな人生に発展していくのだ」的なメッセージが込められてたりしないかなと考えながら読み進めていったんですが、そんなこと言いたいわけじゃなさそうだな…と。 いうわけでいろいろ独特な要素が詰まっていて何かしたいんだなというのは伝わるが一体何なんだ?という感情のまま終わりました。 最後の本人の解説では「…それほど大それた気持ちはなくて、ただ、今までの小説にない面白さを求めて、従来の小説の手法以外に、もっと面白い手法があるのではないかと考えた末、それまでにすでに考えついていたさまざまな実験的手法を、この比較的うすい本の中へ一度に全部ぶちこんだ、というに過ぎません。」とのことでそれなら納得。 「何をやるにしても面白くなければやる価値はないという主張を以前から持っていますので、…必ずある程度の面白さが保証できる実験しかやりませんでした。ところがこのたびは、…実験的手法が二つも三つも重複しています。そこのところで難解と感じられる読者がおられるようなので、…どのような小説上の実験を行ったかを、時間の許す限りご説明申しあげようと思います。」うん、まさに。助かりました。面白かったけど、せっかくアイディアくれたからこの設定をいかして別なもっと面白い小説を誰か書いてくれないかなと思った笑
0投稿日: 2025.11.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
すごい本を読んだ。 描写について。主人公の思考で本ができているが、私より遥かに目的論的な世界観で生きており、私とは異なる感性を持った思考体であることを意識させられる。自分がそう思っただけなのに、〇〇であることを伝えるために〇〇はある。みたいなことすぐ言う。面白い。もちろん実験的な構成とか描写が私を感動させた理由だけれど、それを私が書くほどには掴めきれておらずなんと書いたらいいのかわからないからとりあえず描写について気づいたことを書いた。 ストーリーとは関係のない描写ばかりだなとは思っていたが、文章の量と小説内の時間を比例させようとしていたのには気づかなかった。悔しい。妙に印象的な立小便の件とかなんら事件に関係無いし。 最後の解説では、小説内では描写されたことが現実となるのだから描写が書き換えられると現実も簡単に書き換えられる、と書いてあったが実感した。解説の文章によってそれに気づかされたことは嬉しくないけれど。確かに、外は雨である。と書かれていたら私は雨の世界を想像で作るし、その直後に、雨は降っていない。と書かれたら慌てて消す。この本では実験的にそれをずっとさせられた。 私に100年本ほ書かせても書けないと思う。 場面転換が多いので映画にしても面白そうだと思うが文章の面白さが失われるので観たらがっかりするだろうと思う。パプリカを読んだことはないが多分映画より良いんだろうなと思う。 普通に教養が無さすぎてわからない単語がたくさんある。私の世界に必要そうな単語ばかりなので分かるようになりたいと思う。 中高で読んでいたらかぶれて痛い奴になっていたと思うのである程度分別がついてから読むべき。 読点は本当に無いけるど、本来人間の思考に息継ぎは必要無いので自然に読める。
0投稿日: 2025.07.18
powered by ブクログ突然、中公文庫から本書「虚人たち」が新版として出版された。本当に何の前触れもなく出た。作者は昨年、施設(奥さんと一緒に高級老人ホーム)に入ったのだが、そろそろ危ないので各社そろそろ準備を始めていて、中央公論新社は関心を集めるためやや勇み足で出版に踏み切ったのかもしれないが、今のところその様な体調不良の情報はない。私の予想としては、施設から高級レストランに高頻度で通い、痛風の激痛に耐え切れず違法にモルヒネを入手して、モルヒネ中毒で死に至るだろうとしている。これこそメタ作家筒井康隆に相応しい死に方だろう。勿論、現在のところ、その様な事実は確認されていない。 筆の方は依然として達者であり、文字数は少ないながらもいつもの各社月刊文藝誌に寄稿している。どの雑誌にも表紙に作者の名前がでかでかと載るので、私は堂々と立ち読みをする。ページ数にして長くても5ページ程度なので直ぐに読み終わるので誰にも迷惑はかけていない。ん?立ち読みは犯罪か?窃盗か?懲役何年だ?文藝雑誌にお金を使うよりも単行本や本書の様な文庫本にお金を使った方が良いに決まっている。それに、雑誌を買うと、そのうち場所をじわじわと取り始め、結局のところ捨ててしまう。雑誌ではBOOK-OFFには売れない。私は書籍を捨てるのが大嫌いなので、必要な作家の本しか買わないようにしている。でも最近は気になる作家が急増してきており、本当に困っている。急死したらこの本たちは一体どうなるのだろう。犬や猫の様な引き取り手は現れるのだろうか。ああ、長くなってしまった。無駄な文章がダラダラと連なっていくのは本作品と同じだ。 さて、本題に入ろう。例によってまずは帯を単行本と本書文庫版で比較すると、本書には<おことわり>と称して「空白及び活字欠落のページがあるのは作者の意図によるものです。著者」と余計なことを載せている。これを言っちゃったら、折角作者が空白を取り入れた意味がなくなってしまう。中には、これに反応して、本書を読む前に、いの一番に空白がどれくらいあるかチェックしに行って、「ああ、この程度の空白ね」と本書を蔑んでしまうかもしれない。空白で読者を驚かせるのも実験の一つなのに、これでは実験が一つ飛んでしまった。全く余計なことをしてくれた。編集者の質も落ちたものだ。作者も草葉の陰で・・・あ、まだか。 この作品には句点が無いので非常に読みにくい。何を言っているのか判らない時には、そこ周辺を口ずさむと意味が判る。もっと言うと意味が降り注いでくる。句点に慣れてくると、今度は無駄な文章が私を襲ってくる。ストーリーの肉付け量が半端無い。真剣に読むと頭が混乱してくる。そこで、この実験への対抗策は、速読のスピードを上げて、重要なキーワードだけ読む。肉を極限まで削ぎ落す読み方をするということ。次は、ありえない空間移動。いや空間ではなく、瞬間的な意識移動か。この対処は簡単、幽体離脱したと思えば良い。次は定常的な時間の流れ。確か1分1ページだったかな。空白ページはこれに関わって来る。こんなに速く頭が廻る人は実際にいるのだろうか?いる訳がない、なにせ巨人じゃなく虚人だもん。この本を読む前は、虚人の「虚」は虚数のことかと思っていたが、違っていた。いや、実在社会(これを実数とする)の裏を生きているので、実数(実在社会)と虚数(虚構の世界)を行き来する数学的作品なのだ・・・かな?ではないようだ。 色々な実験に対して、それに応じた対処法を検討した結果、読むスピードが尻上がりに速くなって読解力も高まった。「彼」という(メインの)主人公は、最初は記憶が混濁しており、最後はあのような結末になるので、全体的には虚数⇔実数の移動を何回も繰り返し、実数空間に居る私達読者はその動きを見せられているのかもしれない。「彼」いや、他の主人公も含めて、全員虚数の世界の人、すなわち「虚人たち」だったということか。 途中、何度も挫折しそうになったが(特に序盤)、最後まで到達できて、達成感半端無い。最後の2つのおまけは、絶対に前以って読まないことをお奨めする。我慢我慢。泉鏡花文学賞受賞とは、当時の話題性も半端無かったのだろう。
9投稿日: 2025.06.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
文章が一切書かれていないページ、現実か虚構なのかわからない曖昧な世界観、本作の主人公が小説の主人公を意識しているというメタ的な表現など、小説の形式を破った独特の作品である。
0投稿日: 2025.06.07
