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夜と霧の誘拐
夜と霧の誘拐
笠井潔/講談社
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総合評価

10件)
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    シリーズものと知りつつ、評価が高かったので思い切って。 世界観には面食らったものの、何とか読了。 カウフマンとの問答を省略したら、三分の一くらいになりそうだけど、あれがあるからこその魅力なんだろうなあ。

    0
    投稿日: 2025.12.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    世界史の悲劇的な哲学を学び直せた。 そして、真犯人は……。 大変、読み応えのある長編でこれだけ長ければソレをソウもできるね、などと皮肉めいた事も思ったりして。

    11
    投稿日: 2025.12.14
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    ラストの20ページこそ読む価値がある、といっても謎解きの面白さではなく、ユダヤ人が、正確には修正シオニストが『アウシュヴィッツ』を金看板にしてパレスチナ人の土地を強奪、掠奪、虐殺して来た事実。そこには『唯一の被爆国』を掲げて、本来請求すべき相手を避けて自らが犯して来た過ちを免罪するための行動を取り続けているこの国もある意味の「共犯者」では無いのか、という疑問が浮かんで消えない。このシリーズの妙味は探偵役の矢吹駆(作家である笠井潔に限りなくニアリーイコールであるが)とさまざまな思想家、哲学者、活動家との対話、議論だが、今回はハンナ・アーレント。ミステリというより今回は、ちょっとした冒険小説の雰囲気もあるが、ストーリーが進む中、矢吹駆との議論が興味深い。今のガザでのジェノサイドは、1944年のシオニストの年次総会で決まった事で、その段階で既に予定されていたとも言える。『アウシュヴィッツ』を錦の御旗にするアンナ・ハーレントに対してコロンブス等のアメリカ・ネイティブに対する虐殺、キリスト教の名の下に行われた暴虐、黒人奴隷問題、さまざまな事例を挙げて追求する矢吹の口調は何故か緩やかなのはどうしてだろう。等等、ミステリ読んだのに出て来る感想はすべて思想と活動の振り返りばかり。しかし面白い、ほぼ一気に読んだ。少し時間をおいて読み直したい。謎解きも、それなりに楽しめたがシリーズが完結しないと不完全燃焼だな。

    0
    投稿日: 2025.11.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    三重密室事件の記憶を持つダッソー家の晩餐に招待され、アイヒマン裁判の傍聴記で知られるユダヤ人女性哲学者と議論する矢吹駆。晩餐会の夜、運転手の娘サラがダッソーの一人娘ソフィアと間違えられ誘拐される。身代金運搬役に指名されたナディア。同夜、カトリック系私立校の女性学長の射殺体が発見された。 『哲学者の密室』の舞台になったダッソー家で再び起きた事件。『煉獄の時』で復活したナディア。間違われた誘拐、連鎖する誘拐、殺人事件と事件の展開が早いし事件の裏に見えるイリイチの影とか面白い。哲学者との議論も頑張って読んだ。

    0
    投稿日: 2025.09.21
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    前作でストーリーテリングにおいては一皮剥けた感があった笠井御大、真犯人は割と早い段階で予想がつくとはいえ、今作にていよいよミステリとしてもギアが一段上がった気がする。 ミステリ作家って他ジャンルへの転向を除けばアイデア的に先細りするかパターン化して量産するしかないある意味因果な商売なわけだが、まさか還暦過ぎてシリーズ過去作を上回ってくるとは。 しかし、にしてもナディアよ。 前作の一本釣りもそうだが、お前さんの考える物理トリックは………喰ってかかるのをやめただけで、ちっとも大人になっていやしないぞ……。 以下雑感(軽いネタバレ注意。てか笠井御大の評論ってネタバレしまくりだし)。 今回の思想的論敵モデルはハンナ・アレント。 "AとBが計画したCとDの交換殺人の裏には、Aを殺害しBを殺人者に仕立てあげるEの復讐計画が隠されていた"←つまりはこういう真相 終盤、かのワトソン博士やヴァン・ダイン弁護士と自らを比肩するナディア。 だからそういうとこだぞ! 初出は2010年のメフィストか。 15年前。 結構経ってるのね。 あと初版のせいか誤字が多い。 紙と違って電子書籍なら容易に直せそうな気もするのだが。 以下やや固めの雑感。 終章。 本来ならエピローグに当たる部分だが、シリーズ全般、こと本作においてはここからが本編といってもいい。 シモーヌ・リュミエール(ヴェイユ)を追いつめたとき以来の語調を見せる矢吹駆。 今や最も有名なニーチェの箴言となった深淵云々に関する激越な批判。 ここで更に評価を改めねばなるまい。 ミステリのみならず、思想小説としても本作は一つの到達点となっている。 世間的には『哲学者の密室』、個人的には『サマー・アポカリプス』をシリーズ最高傑作と思っていたが、これも改める必要がある。 最高傑作、ここに爆誕である。 追記。 『サマー・アポカリプス』では究極の選択を迫られたシモーヌが予想外の一手を打つことで矢吹駆に只ならぬ衝撃を与えたわけだが、今回、ハンナ・カウフマン(=アレント)のその後は書かれていない。 既に執筆済みの次作以降に書かれているのだろうか。 ナディアの締めの文章から察するに、その可能性は低そうだが。

    13
    投稿日: 2025.08.21
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    正直カケルとカウフマンの討論の三分の一も理解できていませんが、理解できない雰囲気すら楽しめる作品だと思う。ナディアすら、全部は理解できていないようだし。 ミステリー部分は多重誘拐に殺人と本格的でとても良かった。 そして真犯人…まあ、実行役より、計画したほうが悪だとは思うのですが、お咎めないままなのもねえ。 ミステリー界の巨匠が現役で長編を書いてくれるのは本当にありがたい。ファンとしては次作も待ち続けております。

    15
    投稿日: 2025.06.21
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    ★5 誘拐事件と学院長の射殺事件、ふたつの事件が絡み合う読み応え抜群の超絶ミステリ #夜と霧の誘拐 ■あらすじ 矢吹駆とパり警視庁の娘ナディアはダッソー家の晩餐会に招待され、ユダヤ人女性哲学者のハンナ・カウフマンと議論していた。晩餐会のあと、招待したダッソー家の運転手の娘が誘拐されてしまうのだ。そしてナディアは身代金を運ぶのを指名される。 一方、聖ジュヌヴィエーヴ学院では、学院長がピストルで殺害されてしまった。一見、不可能犯罪のように見える事件であり… ■きっと読みたくなるレビュー ★5 出た!化け物ミステリー。今年の目玉のひとつですね。 何がスゴイって、この本の厚みと重みですよ。単に長いだけじゃないですよ、密度も濃いんです。この読み応えがたまらんすね~、じっくり時間をとって楽しむのが吉です。重厚&パワフルなミステリーを堪能してください! まず哲学の議論や、様々な思想、戦争、歴史のうんちくが烈しくて大好き。もはや大学の授業や政治運動家の話を聞いてるみたいなのよ。そして矢吹駆シリーズは毎回哲学者がモチーフになってるとのことで、今回は女性ユダヤ人のハンナ・アーレント。いやー、読書って奴はホント勉強になりますね。 さて本作は黒澤明『天国と地獄』ばりの誘拐劇&学院長の射殺事件。この二つの事件だ同時かつ絡み合うように展開される。誘拐劇のほうは読み手を惹きつけるエンタメ力があるし、学院長の射殺事件はどっぷりと本格ミステリーを楽しめる。 まず誘拐事件ではナディアが大活躍するんですが、これがアクションマシマシで手に汗握るんですよ。受け渡しが終わるとさらに謎が謎を呼ぶ、この事件の背後には何があるのか…? これはワクワクがとまらん。 そして射殺事件のほうも謎解きが大忙しですよ。文字どおり分単位で事件経過を追ったり、密室の考察をしたりと全く脳みそが休まりません。 もちろんこの二つの事件が絡み合ってくるんですが、こんな発想をよくも思いつきましたね。二重化とズレってのは唸ったな~。犯罪を方程式のようにあてはめ、ロジカルにメリデメを詰めながら解き明かしていく手際もエグかった。これはもう降参です、先生の魂のこもり具合に慄きました。 真相は徐々に明るみになっていくんですが、そのたびに驚かされます。まさかこんな枠組みの話だったとは思いもよらない。解説もしっかりしてくれるし、謎解きミステリーとしての完成度の高さにも感動しましたね。 哲学、思想、ミステリー、エンタメが密度満点に凝縮された作品、めいっぱい楽しませていただきました! ■ぜっさん推しポイント 物語の終盤、日本における戦争の歴史や価値観について思想が書かれています。特に「唯一の被爆国」に関する記述は目から鱗でしたね。 私も日本人なので、つい耳障りの良い言葉に流されがちです。しかしよくよく事実を知り、個々ひとりひとりが考えなければいけないんですよね。現在でも世界中で争いが起こっています、決して過去の話ではないのですから。

    108
    投稿日: 2025.06.13
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    衒学趣味といわれる。 確かに哲学や思想、歴史について、作者の知識と嗜好がふんだんに語られるが、小説世界の認識には欠くことのできない、むしろ最大級の魅力である。 あと何作読めるのか、心細くも楽しみな今後である。

    1
    投稿日: 2025.06.11
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    矢吹駆シリーズの刊行ペースは十年単位などざらだが、今回は約三年で刊行された。読者としては喜ばしい限りだが、何故なのか。国内で言えば、抑圧されているという被害者意識から差別主義を振りまくSNSに蔓延る悪。そして、中東で起きている大量虐殺。今向き合う問題を示すために、刊行されたのだろう。

    1
    投稿日: 2025.06.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「哲学者の密室」からの続きといえば続きかもしれませんが、内容的には「哲学者の密室」を未読でもなんとか着いていけるとは思います。 でも、読んでおいたほうが無難に楽しめるでしょうか。 「夜と霧の誘拐」というタイトルから、フランクルの「夜と霧」がある程度のモチーフになっていると思ってましたが、直接的なモチーフとしては出てきませんでした。 出てきませんでしたが、小説内で語られる事件の本質直観として「交換犯罪における」「二重化とずれ」とカケルが語ります。 歴史修正主義の問題も小説内で重要なファクターのひとつとして出てきますので、その歴史の偽装行為を「歴史観の交換」と置き換えれば、それに伴う「二重化とずれ」が生じ小説内で起こる殺人事件に繋がっているとも言えなくもないでしょう。 となれば、「夜と霧」の歴史修正→「夜と霧」の誘拐、という本小説のタイトルの含意に納得がいきます。 最終章で語られる、イスラエル建国にまつわるシオニズム、唯一の被爆国を語る際の日本、それらが含んでいる欺瞞性の考察はなかなか読み応えがあります。 ちょっと心配になるくらい攻めてるような感じです。

    1
    投稿日: 2025.05.19