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競争なきアメリカ――自由市場を再起動する経済学
競争なきアメリカ――自由市場を再起動する経済学
トマ・フィリポン、川添節子/みすず書房
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総合評価

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    このレビューはネタバレを含みます。

    米国のブロードバンド回線料金は欧州などに比べてかなり高額らしい。米国が月額平均66米ドルなのに対して欧州の平均は35米ドル。 自由市場なはずの米国の各種サービス料金は、どんな業界でも高い。この理由を解き明かそうという一冊。 本書の主張としては、市場競争の減少と独占化の進行、勝者総取りの無形資産の影響拡大に原因があり、どちらも大企業によるロビイ活動や選挙資金提供の影響が大きいという。 米国での大企業ロビイ活動が特に熱心な業界は、IT、ヘルスケア、製造業、金融などであり、どれも高額所得企業ばかりだ。 反トラスト法が実質的に機能せず、新規参入障壁が高くなり費用の高止まりにつながっていそう。 こういうところに格差拡大の芽があるのかな。 平均利益成長率が低下傾向なのは、利益を設備投資や給与にまわさず、自社株買いにばかり投じているのも一因か。

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    投稿日: 2025.10.07
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    今なお世界経済をけん引するアメリカ。 自由市場で起業家精神にあふれ、日本のように停滞しておらず、 GAFAMを筆頭にどんどん新しい発明があり、発展する経済大国。 総サラリーマン化した日本とは違う、夢の国。 と思っていたらこのタイトル。 読み進めるにつれ、今やアメリカのネット料金はヨーロッパよりはるかに高い。 医療費に至っては最悪、、、 そしてその原因は競争がないから。 さらにそうなる原因はロビイスト。。。 日本も企業献金だの天下りだの補助金だのが問題と思っていたら、 アメリカはそのスケールも大きい。これに加えて選挙のための献金。 使う金額も比べ物にならない。 ダメじゃん、アメリカ。 途中まで読んで思い出したのは、 松嶋×町山 未公開映画を観るTV 東京MXでやってた。町山智浩さんが、未公開映画からアメリカの闇を暴いていた。 ウォルマートの回が印象的だった。 小規模店舗や消費者のことなど考えず、自らの利益の極大化だけのために動く大企業 って図式だった。(ほかのねたもたくさんあったけど) GAFAMがろくに税金も払わずデカくなっているのも、 経営者がプライベートジェットに乗っているのも、 アメリカなのだ。 最近は日本もそのまねをして、 日産を滅ぼす直前まで放っておいた前社長が報酬を6億円もらってたり、 一部の奴だけが美味しい思いをして、庶民がどんどん干上がっていく。 私が書くと情緒的、というか、感情的だが、 この本は、これらをデータを基にエビデンスをもって実証している。 やはり日本はアメリカの真似をしてはだめだ。 まして今のトランプに追従していってもろくなことはない。 自分で考えにゃ。 はじめに 序論 I アメリカにおける市場支配力の高まり 1 経済学者はなぜ競争が好きなのか……なぜあなたもそうあるべきなのか 2 悪い集中、良い集中 3 市場支配力の増加 4 投資と生産性の低下 5 自由参入の失敗 II ヨーロッパの状況 6 一方、ヨーロッパではどうか 7 アメリカの物価は高すぎるのか 8 ヨーロッパ市場はどのように自由化したのか III 政治経済学 9 ロビー活動 10 カネと政治 IV いくつかの産業を掘り下げる 11 バンカーの報酬はなぜ高いのか 12 アメリカの医療──自ら招いた禍 13 星を見上げて──トップ企業は本当に違うのか 14 規制すべきか否か、それが問題だ 15 買い手独占力と格差 結論 補足資料/用語集/謝辞 参考文献/索引

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    投稿日: 2025.05.29
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    アメリカ経済における競争の欠如とその影響 概要 本書はアメリカ経済における競争の欠如が価格上昇、賃金停滞、投資減少、生産性低下、成長鈍化、格差拡大といった様々な問題を引き起こしていると主張しています。著者はヨーロッパとの比較を通じてこの問題を検証し、政治、自由貿易、テクノロジー、イノベーションといった観点から考察しています。データと事例を用いながら、競争の重要性を再認識し、自由市場を再起動するための政策提言を行っています。 主要テーマ アメリカにおける競争の減少とその影響 多くの産業で市場支配力が増大し、消費者に悪影響を与えている 競争の欠如が賃金・投資・生産性の低下、格差拡大を招いている 様々な業界での競争減少がアメリカ人の幸福に及ぼす影響を分析 ヨーロッパとの比較 ヨーロッパの消費者はアメリカよりも良いサービスをより低価格で受けている可能性 労働分配率:アメリカでは過去15年で5%ポイント低下、ヨーロッパではほぼ横ばい EUによる製品市場規制の改革努力により、EU諸国がアメリカに追いつきつつある 市場支配力と規制 市場支配力の概念、その原因と結果の理解の必要性を強調 アメリカでは合併審査が緩くなってきている問題 EUの競争当局はアメリカよりも独立性が高いと分析 ロビー活動と政治献金の影響 アメリカのロビー活動の規模はヨーロッパの2倍以上 企業による政治活動が競争政策に影響を与えている可能性 政治的影響力が競争を歪めていることへの警鐘 金融セクターの特異性 金融イノベーションが必ずしも資本配分を改善していない問題 規制緩和で通常は賃金・価格が下がるはずが、金融では逆に上昇 リーマンショック後の金融規制改革の必要性 データとプライバシー デジタル経済におけるデータ利用の重要性とプライバシー保護の両立 新たな規制の必要性(GDPRなどの取り組み) データ利用とプライバシー保護のバランスの難しさ 労働市場における買い手独占 労働市場の買い手独占力増大が賃金低迷を引き起こしている可能性 雇用主の選択肢が少ないことによる労働者への市場支配力 オンラインプラットフォームにおける買い手独占の潜在的危険性 結論 本書は、アメリカ経済の問題の根源に競争の欠如があると捉え、データに基づいて詳細に分析しています。ヨーロッパとの比較を通じ、アメリカの競争政策や規制のあり方に警鐘を鳴らし、ロビー活動や政治献金などの政治的要因が競争を歪めている可能性を指摘しています。自由市場を再起動するためには、強力な反トラスト政策の実施、規制の適正化、政治的影響力の抑制などの多角的取り組みが必要だと主張しています。 今後の検討課題 本書で示されたデータや分析の妥当性の検証 競争促進のための具体的政策提言の検討 アメリカ経済の競争環境の今後の変化予測 日本経済における競争状況との比較分析

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    投稿日: 2025.04.14