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powered by ブクログヤギの睾丸を移植した、では全く語りきれない、稀代の詐欺師、ブリンクリーの生涯。 20世紀初頭のアメリカというピンポイントな時と場所が、ブリンクリーを産んだ、とも言えなくもない。科学がいろいろな不可能を可能にし、人々は「科学」ぽいものに簡単に騙された。また、規制は次々生まれる科学にも詐欺師の手口にも全く追いつけず、医師免許がなくても医師を名乗ったり、医師免許も金次第で簡単に取れたりする。 まずい手術、不用意な薬品の販売、など何人の命を奪ったかも分からない偽医者だが、人々からの人気は絶大だった。 作り話よりも嘘みたいなブリンクリーの活躍?に前半は心躍らせながら読んでしまった。ただし、何百人もその裏で命を奪われたり傷害を負ったりしているので、笑っている場合ではないのだが、それでも次々と詐欺を思いつき、すぐさま実行し、大量の人を騙してとんでもない金儲けをする(そして地元の町に街灯や郵便局を建てるなど、慈善的な活動も相当している)、その切れ味がすごい。 後半は、本当に被害者の姿であったり、裁判であったりが描かれるので、そんなに快活には読めないです。でも、仕方ないパートではある。
0投稿日: 2025.10.04
powered by ブクログまた勃起したいというマチズモに酔いしれ、気持ちのいい言葉に熱狂し、科学は面白いことを言わないから蔑ろにされるという歴史を延々繰り返しているよねっていう延々繰り返された警告のノンフィクション。ヤギの睾丸移植手術が拡がった歴史的背景の解説が面白い。 2008年の古い本が再度翻訳されたのは、つまりはMAGAってのがマチズモに飢えたアメリカ社会が新たに装着した金玉だぜってことなんだろうけれど、本著が警告だとするならばそれは既に敗北している。本作では科学が勝利したが、21世紀は科学が敗北する。誰もが耳心地のよい言葉と劣等感をぬぐう興奮に酔って新たな金玉を装着して喜んでいる。 熱狂させる物語は心地良いが、政治や社会といって物事についてはつまらない退屈な事実にこそ耳を傾ける必要がある、という事実をわかり切っている人にはこんなに長い本を読む必要はないし、わからない人がこれを読んでも「奇書を読んだぜ」みたいな安っぽいスノビズムに酔うくらいで現実には活かせやしないだろう。警告の傑作ノンフィクションと銘打つには、その力は無いと思う。 章立てが特になくずっと事実が続くので、ちょっと退屈でもあった。
0投稿日: 2025.05.11
