「景気」とは何か、「景況感」とは、「GDP」とはetc…を整理し、19世紀以降の動きを振り返りつつ、世界に大きな影響を与えた3人の経済学者（経済理論）を紹介し、最後は現代に生きる我々の「経済学にまつわる思考法」のあり方まで… 大局的な話が多いが興味深く読めた。

“幸福度を測る尺度が増えれば、幸福に影響を与える要因を求める研究の幅も広がる。人間の幸福度を左右するのは目の前の所得や労働だけではない。結婚、心身の健康、信仰、ライフサイクル、社会規範なども大きな影響を及ぼす。新古典派経済学では、効用を個人間では比べないという決まりになっているが、社会規範の影響を考えるなら、他者の存在を無視できなくなる。現存する他者だけではなく「将来世代」の存在も視野に入る。将来世代のための社会貢献活動に力を入れれば、エウダイモニア（精神的な幸福）が高まる可能性がある”

経済成長と景気循環の関係 - 経済成長理論と景気循環理論: 経済成長を分析する理論と景気の変動を分析する理論は対をなす重要な研究分野である。 - 歴史的視点: 日本を含む世界の歴史では、景気変動を繰り返しながら経済は成長してきた。 政府の景気判断と国民の実感のズレ - 政府の発表と国民の感覚: - 日本銀行が行った調査では、景気が「良くなった」と感じている人は10人に1人未満で、多くの人が「悪くなった」と回答。 - 日常の生活において「ゆとりがなくなってきた」と感じている人が半数以上。 - 実感なき景気回復: 国民が政府の公式見解を信用できない状況を「実感なき景気回復」と表現。 景気回復の実感の変化 - 2000年代の変化: それ以前は景気回復によって多くの国民が実感を持っていたが、近年では政府の判断と国民の実感がずれるようになった。 - 国民の要求水準: 景気が回復しても国民の要求水準が高まることで、実感に結びつかない場合がある。 経済の成長と人間の成長の違い - 成長の定義: 経済成長は人間の成長とは異なり、経済は永続的に成長する可能性があるが、人間は老化し成長が終わる。 - 成長の期待: 日本経済に対しても人間の成長のような期待が寄せられるが、実際には異なる側面がある。 個人の景況感とマクロ経済 - ミクロとマクロの関係: 「景気はどうですか？」という質問に対して、個人は自分の収入や勤め先の状況で答えることが多い。 - 景気判断指標: 内閣府が実施する「景気ウォッチャー調査」など、ミクロの景況感を基にマクロ経済の景気を判断するための指標がある。 政府の景気判断方法 - 景気動向指数の利用: 政府は経済指標を基に景気を判断し、先行指数、一致指数、遅行指数を用いている。 - 指数の調整: 日本の経済構造の変化に応じて、景気判断に使う経済指標も見直されている。 経済成長の指標 - GDPの重要性: 経済成長を測る代表的な指標は国内総生産(GDP)であり、経済活動が活発になるほどGDPは増加する。 - GNIとGNPの違い: 日本政府は1993年からGDPを重視し、国民の所得を測るためにGNIも用いるようになった。 経済学の理論と実態 - 景気循環の理解: 経済成長と景気循環を理解するために、経済学の枠組みや歴史的背景が重要である。 - 経済学の進化: 経済学者たちが景気循環や経済成長をいかに捉え、計測してきたかを理解することが本書の目的である。