
総合評価
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powered by ブクログ中公文庫で昨年十一月から毎月刊行されてきた<私説昭和史 三部作>の最終巻。I章からⅢ章までは、自身の青春時代を、執筆当時四十代後半だった著者が振り返るようなエッセイが並ぶ。筆致は、先の二冊に比べると、だいぶ軽い。Ⅳ章は、第一巻、第二巻で展開されてきた、過去や同時代の作家が描いた昭和について言及するエッセイがまとめられており、最後は、著者がかつて通った上智大学の近くにある陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に赴き、二十世紀の終わりに開館した市ヶ谷記念館を訪れ、三島由紀夫と森田必勝の切腹に思いを馳せるところで終わる。田畑あきら子の絵と文章、私も読んでみたい。
1投稿日: 2025.02.04
powered by ブクログ関川夏央『昭和時代回想 私説昭和史 3』中公文庫。 関川夏央による『私説昭和史』の三部作の第三作。第三作は、関川夏央自身の昭和の思い出と昭和を代表する作家への思い、昭和時代の日本の姿を描いたエッセイ集である。巻末には書き下ろしエッセイを増補。 関川夏央は自分のひと回り上の年代である。関川夏央ほどではないだろうが、自分自身も十分に昭和時代を経験した年代であり、取り分け昭和という時代に対する思い入れも強い。 本作で関川夏央が描いているように、昭和の時代には家族で海水浴に行くのは一大イベントであり、電車などとは言わず、汽車と呼んでいた。また、昭和時代の父親というのは尊敬の対象であった。昭和の父親は高度経済成長時代に家族のためにがむしゃらに働き、給与1ヶ月分以上の金額でテレビを購入し、さらにはマイホームを手に入れたのだ。そんな父親を体力で追い抜いた時には寂しさを覚えたものだ。 昭和の頃には、明治、大正、昭和と激動の時代を懐かしんだのだが、現在では、昭和、平成、令和という言い方で過去の時代を懐かしむようになった。 今の時代はワーク・ライフ・バランスとか言って、残業が極度に制限されているが、昭和の頃は働けば働いただけ残業手当が払われ、月収が倍という月もあった。自分も残業と休日出勤で月200時間超えなど当たり前だった。父親は忙しいと決まっていて、授業参観など夫婦揃って参加するなど無かった。父親参観ということで日曜日に授業参観を設定するなど、学校側の配慮もあったが。 昭和の時代は様々なことが緩かった。それでも、個人が自制し、余り行き過ぎることは無かったように思う。バスや電車での喫煙は普通だったし、食堂や居酒屋、喫茶店だけでなく、職場の自分の席でタバコが吸えた。学校での体罰なんて当たり前で、ハラスメントなんて今みたいに五月蝿くなかった。LGBTQなんておかしな考え方などは無く、男は男らしく、女は女らしく生きろと教えられたものだ。 時代は変わった。真面目に一心不乱に働いても評価されない時代になった。年に5日有給休暇を取得することが義務となった。30年ほど殆ど有給休暇など使ったことのなかった自分にはどうにも馴染めない。働くことは悪なのかと考えたりもするが、世の中の流れなら仕方が無い。最近は、本来なら年金を満額貰えるはずだった還暦を過ぎたし、仕事は少し手を抜き、有給休暇も適当に使ってやろうと思うようになった。 本体価格940円 ★★★★
71投稿日: 2025.01.28
powered by ブクログ「私説昭和史」と題され、中公文庫から昨年末以降発行されていた3部作の3作目。 1作目は、「戦後」を、小説および当時のベストセラーへの書評を交互に繰り返すという手法で描いたもので、文句なしに面白かった。 2作目は、吉野源三郎と幸田文を中心とした「戦前」の作家・文芸作品、および、戦後の「金曜日の妻たち」「男女七人シリーズ」というテレビドラマへの評論を綴ったもので、扱われている題材そのものに興味を持てず、自分的には今一つ、楽しめるものではなかった。 3作目の本書は、筆者が色々な雑誌や新聞に書いたエッセイを、テーマに沿って編み直してみたものであり、面白いと感じるエッセイもあれば、やはり興味を持てないものもあった。 私も筆者と同じく、大学に入学するために、地方から上京してきた者である。本書に収められているエッセイには、筆者の大学時代、および、それに続く若い時代の自分自身のことを扱ったものが多くある。そのいくつかには、共感を感じるが、いくつかには共感を感じなかった。それは、もちろん、筆者と私の個性の違いもあるが、また、年齢差も関わっていると思う。たかだか10歳の違いであるが、筆者の経験したことで、私には実感を持って受け止められなかったことがいくつかある。また、筆者は自分自身を「団塊世代」と規定し、世代の特徴に沿った(と筆者が考える)テーマでいくつかのエッセイを書いているが、私自身は「団塊世代」ではないし、そもそも世代の感覚に乏しい。 総じて、本書は楽しんで読めたが、世代差により、なかなか楽しめない、というよりも、理解しずらい部分もあった。 いずれにせよ、これで3部作も終わりである。 全てが再発行のものであり、私自身にとっては、再読の3部作であったが、なかなか楽しく読ませてもらった。関川夏央の他の作品も、同じような形で(テーマを何か設定して)再発行してもらえると楽しいのに、と思う。
16投稿日: 2025.01.26
