
総合評価
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powered by ブクログ第1章は補聴器のセールスマンとして生きた父に対する娘の視点から始まって、以降の章は父でありセールスマンである男が耳に棲むものと出逢う話が続いている。どの話も生き物の死が添えられているので、苦手な方はご注意を。小川洋子さんはいつも、現代でも中世でも何処でもない(登場するワード的には現代のものだけど)純粋に生きる人間を描き出すのがお上手だと思う。そんなひとり、ひとりに惹かれてページを捲る。
3投稿日: 2025.10.08
powered by ブクログ山村浩二氏の挿絵がふんだんにあしらわれた短編集。 小川洋子先生的には、久しぶりにこういう形の1冊の構成な気がする。 不思議な世界観と、ゆったり流れる空気、みたいなものがまさしく小川洋子でござい。
0投稿日: 2025.10.01
powered by ブクログ装丁が美しい。読後にこの表紙のカルテットが耳骨だったことに気づいた。小川ワールドが好きな人はたまらない世界だと思う。私は補聴器のセールスマンに少し期待を寄せすぎてしまいました。5つの中では『踊りましょうよ』が一番好き。
14投稿日: 2025.09.23
powered by ブクログ独特の世界感。 表紙が素敵で、何か音や音楽の話かなと思って読んでみたが。 第一章で、おやおやと思い 第二章で、んー?となり 第三章で、脱落。 鳥が好きな分、受け入れられない描写だった。 言葉は美しいが私には合わなかった。
2投稿日: 2025.09.08
powered by ブクロググロテスクな場面を綺麗な言葉で紡がれても、脳内変換された世界は気持ち悪さを抜けず、三半規管が弱い私には読み進めるのがとても難しい本でした。耳鼻科にしょっちゅうお世話になる人は読まない方がいいと思う。
0投稿日: 2025.09.05
powered by ブクログ小川洋子さん、2冊目。 1話目を読んでもー終わり?意味が分からない… と思いながら続き… なるほど、缶に入っている物はこうして出会い、こんな思いで入れていたのか… と… でも…これが小川洋子さん、ワールド? 静かに淡々と時にはグロい感じもあり… 人質の朗読会は良かったけど、この本は私の想像力では無理でした。
0投稿日: 2025.08.25
powered by ブクログ小鳥のブローチ、補聴器のセールス、耳鼻咽喉科のお医者さん…日常っぽいのにどこか別次元の世界線。 残酷だったりグロテスクだったりする場面でも、淡々と美しい文章で綴る小川洋子作品。いつも静かで独特な世界・登場人物のなかで、怖さと哀愁と優しさが一緒に漂う感じ。
0投稿日: 2025.08.18
powered by ブクログ小川洋子さんらしい、不思議な幻想的な世界観。絵は山村浩二さん。タイトル文字写真だとわからないけどキラキラですてき。
2投稿日: 2025.07.31
powered by ブクログ音と死をめぐる幻想的な物語。 補聴器売りの男が出会った物たちが彼の耳の中に棲んでいたのかもしれない。 静かに進む不思議な世界に引き込まれたが、難解でもあった
8投稿日: 2025.07.30
powered by ブクログthe小川洋子な世界観だった 幻想的で、世界からは顧みられないけど自分の世界を大切に精一杯ささやかな日常を生きている(生きていた)力の弱い人たちのお話
0投稿日: 2025.07.25
powered by ブクログ耳って奇妙な形してるし、中もぐるぐるして何か入っても出られなそうだからこの作品の世界観はわからなくもないが好みではなかった。
0投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログ骨壺 鳥の死骸 心中 座敷牢 遺体 犬の死骸 溺死… 数えきれないほどのマイナスワード。 狂気に満ちた話がつながっていく。 補聴器の耳の中では外界では聞こえない音が静かに聞こえてくるのかもしれない。 マイナスワードの傍ら、星 収穫祭 カルテット 小鳥のさえずり プラスワードが安堵させてくれる。
3投稿日: 2025.06.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
静かで寂しい雰囲気のお話だったな。最後の「選鋼場のラッパ」の主人公は補聴器のセールスマンの子ども時代の話だろうか。最初に泣く人を競う大会で彼が泣いた時に思い返していたのはラッパや犬のことだったのかなぁ、と思いを馳せる。
1投稿日: 2025.06.02
powered by ブクログ小川洋子さんの本初読。 始まりから淡々としたすこし狂気がのぞいている雰囲気。 短編だけどなんとなく繋がりが見え始める。 でも、最後のラッパの少年の犬に対する行動が無理で、頑張って読み進めたけど後味の悪い読後感… おすすめできません。
0投稿日: 2025.06.02
powered by ブクログ小説と並んで、装幀、装画・挿絵もすばらしい。群像に掲載された短編を集めた作品集です。なかでも『骨壷のカルテット』の世界観と描写は、これぞ小川洋子さんというもので、これから私は何かにつけて「耳に棲むもの」に思いを馳せることになりそうです。
0投稿日: 2025.05.31
powered by ブクログ今読んでいる で登録しましたが この先 たぶん読まないでしょう。 静かな狂気の短編集です。 最初の2つの話しも うーん! というはなしでしたが 飼っている小鳥を生きたまま飲み込んで自殺する話しは 相当な狂気です。 気持ち悪ーい! おまけに そのお宅 沢山の鳥籠の下が 鳥の羽やふんが 空気中を飛び交っていて そこでお茶を頂く それも気持ち悪ーい! この小鳥のブローチを読んで この本は諦めました。 素敵な表紙の本でしたが。 小川洋子さん どうしたの? 怪談話?ゆっくりと狂っていく感じが怖い!
7投稿日: 2025.05.30
powered by ブクログ閉じられた静かな孤独で満たされている世界をひたすらにたゆたえる味わい深い本。小川洋子さんはこれまで何冊か読んで来たものの私個人の好みとは微妙にズレていることが多かったのですが、これは一瞬で恋に堕ちてしまった。心と身体に染み渡る静けさを深く堪能出来た。
0投稿日: 2025.05.23
powered by ブクログジャケ買いならぬ、ジャケ借り(図書館にて)。表紙素敵すぎる! 「耳の中に棲む最初の友だちは涙を音符にしてとても親密な演奏をしてくれるのです」 耳の骨といえば耳小骨。人体の骨の中で1番小さいと言われている3つの骨だ。でももっと奥に棲んでいる友だちらしい。 補聴器セールスの父が亡くなった後の話と、四つの父の物語。不思議な独特の世界観。物語を読むというより、少しの狂気をはらんでいく情景を楽しんだ本だった。
0投稿日: 2025.05.18
powered by ブクログある意味、童話的でメルヘンでもあり残酷でもあり、時代や地域(国)を超えた普遍性がある作品だと思う。ある補聴器販売員を軸とした物語。
0投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
展開が読めなくて初めから不思議だった! 1話目がまず強烈で、 2章目からは、色褪せたフィルムごしに人生をなぞるようでした。 想像の世界で思わず耳を澄まして読みすすめる。 これは何について書いているんだろうか、と。 …耳の骨の形とか想像させられるときは、 まさに『脳と音楽』で説明されていた耳の構造のイメージととても重なって、 さらに「選鉱場とラッパ」もそのイメージがさらに強化された… 小鳥のブローチのお話は、図書館に行き道に、シジュウカラの言語を研究してきた鈴木俊貴さんのインタビューをポッドキャストで聞いてたから、鳥への接近度の度合いの近さを感じながら、、、 でもすべてがはっきりと浮かんでくるわけではなさそうで、 そのつかみどころのなさが、 きっとまた読んだらより深く楽しめる気もする。 こういう読書体験もある。
0投稿日: 2025.05.08
powered by ブクログ今回はちょっと残酷な場面が幾つかあって、ザワザワしたが読み始めるとあっと言う間に小川洋子さんの世界に入っていけてやはり好き。
0投稿日: 2025.05.06
powered by ブクログ骨壺の中の骨。 その骨は、生前、補聴器のセールスマンでした。 骨壺から始めて、彼の物語を遡っていきます。 耳の奥で誰かが音楽を奏でています。補聴器で塞げば、耳に棲むものがこぼれ落ちる心配はありません。 そんな小さな世界の奥へ奥へと導かれながら、人としての原点へと帰っていくような感覚になりました。 歳を重ねるにつれ「死」と「死に至るまでの苦痛」への恐怖が少しずつ増しているような気がしています。それでも、このような小説に触れることで、生死についての漠然とした不安がギュッと縮小されて手の中に収まり、穏やかな気持ちにもなるのです。 孤独を描くことで孤独を癒し、心に寄り添ってくれるような作品でした。
16投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログ補聴器といえば、聞こえづらい外の音を伝えてくれるものだ。 だが、小川洋子さんの魔法がかけられると、耳の奥で鳴っている、かすかな音楽を聴き取るための道具に思えてくる。 そして、泣きたくなるような悲しみや苦しみに満ちた秘密が、思わずこぼれ落ちてしまわないように、そっと封印するための御守りのようにも感じられないだろうか。 補聴器の移動販売員だったお父さんは言う。 ”閉じ込められ、誰からも見捨てられ、忘れ去られたものを救い出すのと、閉じこもっていたいものに、それが求める小さな空洞を与えてやるのは、私にとって同じことです。” お父さんの骨壺の中から、かつて耳に棲んでいたものたちが四つの欠片として取り出されたとき、彼らはお父さんの胸に仕舞われていた心の声を、娘である私に話しだす。収められた四つのエピソードは、耳に棲んでいたカルテットが語る幻想譚だ。 それは過去の記憶のようでもあり、また少し違うものでもあるだろう。 救い出したものたちが秘めていた物語。 そして消え失せてしまわないように、お父さんが自分の心と耳の小部屋を差し出して、匿ってきた物語たちなのだから。 夕暮れの砂場で、写真に写った涙の粒をトレースして譜面を作る縦笛演奏家は、鉱山の選鉱場から漏れる光を辿って作った架空の星座を五線紙へ音符に置き換えていた少年と、時を超えて響きあっている。 高齢者住宅を定期的に訪問する、年老いた補聴器のセールスマンさんと介護施設の助手である女子大生は、時や外界から隔絶された水面の世界で、耳をぴったりと重ね合わせて一つになる。 土に埋もれた小鳥のブローチを掘り起こすことで、世間の理解など決して求めない孤独で行き場のない魂への悼みが、静かに解放される。 すべてが、束の間だけ開いた時空のあわいに、滑り込んでしまったかのような物語たち。 補聴器の入った鞄を下げて、町から町へと旅するように巡っていたお父さんは、もう一つクッキーの空缶を鞄にひそませて持ち歩いていた。 クッキー缶とガラクタのような中身たちは、お父さんの死と共に消えてしまった。 独り遺された娘は、父の耳に棲んでいたカルテットを、自身の子供の頃の思い出が詰まった、のど飴の缶に納める。 娘の手で静かに振られた缶が奏でる音は、父の鞄から漏れていたカラカラという音と同じだ。 亡くなった者の声を思い出せずとも、懐かしい音が親と子をつないでくれる。そのイメージが美しい。
15投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログ補聴器のセールスマンの話。友達は耳に棲むカルテット。涙を音符にして演奏。不思議な世界観。「骨壷」死 から始まり「選鉱場」子供時代で終わる。「小鳥」ブローチがグロテスク。
12投稿日: 2025.04.16
powered by ブクログ不思議な感覚の中で読み進めた。 補聴器のセールスマンだった父の骨壷から出てきた4つの耳の骨。カルテット。 「骨壷のカルテット」が特に好き。 『耳の中に棲む私の最初の友達は涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです』 装丁も挿絵もかわいく品があり素敵。
2投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ奇妙でダーク、なのに何故か神秘的にも感じれる言葉 不気味な描写なのに何故か心を掴まれる はまってはいけない沼にひきずりこまれるような
2投稿日: 2025.03.31
powered by ブクログ父の4つの耳の骨から、父の辿った人生を垣間見る。不気味でありながら、カルテット(4つの骨がぶつかり合ってこだました)の美しい音の調べが漂ってくる。最後の編は父の生い立ちのようで、それが各編の父の足跡に繋がっている。父が関わった人達はまるで内耳のなかでひっそり生きてきた、そんな感じの人達だ。
0投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログ補聴器の販売員をする主人公。 その人生の時系列を遡っていく5篇。 この作品も小川洋子の密やかでどこか不穏な世界観が発揮されていて良かった。
0投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログちょっと難しかったかも。 小川洋子さんは昔から大好きで、期待していたのもある。 物語の展開ではなくて、場面をいかに読者と距離を近くするかに焦点をあてたかのような こと細かい背景の描写と動きが特徴的に感じた。 とはいえあまり起承転結って感じじゃないから、夢遊病とか白昼夢みたいな、ふわふわした感覚で逆に読書の新体験だった。 読み終わった後は、幼少期の強烈な、謎の記憶が1つ増えた感覚。
0投稿日: 2025.03.30
powered by ブクログ不思議な話だった。 各地を旅する補聴器のセールスマンが亡くなったところから話は始まります。 この主人公は、耳の中には、不思議なカルテットが棲み、耳の中で踊るドウケツエビを飼っている。 そして、各地で出会った人との話がまた少し薄気味悪かったり、グロテスクだったり、官能的?だったり…よくわからなかった。 挿絵は、素敵でした。
0投稿日: 2025.03.23
powered by ブクログ補聴器の調整、販売をする主人公を軸にいろんな時代をつづった物語。どの話も味わいがありじんわりと響く内容だった。
5投稿日: 2025.03.18
powered by ブクログ補聴器の営業マンから見えるわたしたちの耳はどう見えているのか、小鳥のブローチは小鳥の死骸を見つけて三分の一の縮尺で嘴と爪は削って、不思議な世界に迷い込んだみたい
0投稿日: 2025.03.13
powered by ブクログなんとも不思議で不気味な読後感。 万人におすすめはできないけど、 お腹の底にずっしりと残る作品。 5つの短編のちょうど真ん中、 「今日は小鳥の日」 野鳥好きなわたしはそのタイトルに大いに期待したのだけど、結果は…ああ。。 久しぶりの小川洋子。 やっぱり「猫を抱いて象と泳ぐ」が一番好きかな。
28投稿日: 2025.03.13
powered by ブクログ不気味ながらも気品のある不思議世界に引き込まれて読んだ。 しかし、小鳥のブローチあたりからの目を背けたくなる描写が辛い。ラッパ少年のところも同様。 これらが無ければ好きな方の物語なんだけど、、、
0投稿日: 2025.03.09
powered by ブクログ補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)のこと、小鳥の死骸から正確に三分の一のブローチを作る人のこと、理想的な耳の形をした人のこと、いちばん早く涙をこぼした人のことなどなど、そこはかとなく淋しく、しかも胸の中を何かで満たされるような心地にしてくれる物語たち。いくつもの気づきを与えてくれた。
0投稿日: 2025.03.08
powered by ブクログなんという言葉のチョイス 小川洋子は魔法使いだ 補聴器販売員をしていた父 彼の人生を遡るような短編集
0投稿日: 2025.03.04
powered by ブクログVRアニメ作品の内容と絡めた内容となっており、1章を先に読んでみたもののそこまでピンとこず、ネット検索してPVとあらすじを読むと腑に落ちた。 他の方のレビューでも、VR作品を見た後に内容を補完するような短編集であるらしく、PVだけでも読む前に見るのと見ないのとでは、世界観への入り方が変わりそうだ。 小説単体でも著者らしい独特の雰囲気は味わえる。しかし、映像を見た後の方が確実に面白いだろう。
30投稿日: 2025.03.01
powered by ブクログ小川洋子の短編集。 密やかで、だが、どこか不穏さを秘める。 5編をゆるやかにつなぐのは、補聴器のセールスマンというちょっと変わった仕事の男。 男は必要な人に必要な音を届けるのが仕事である。スーツ姿でトランクを下げてあちこちを回る。 トランクに入っているのは、仕事道具だけではなく、人々のささやかな思い出のかけらである。 ダンゴムシの死骸。小鳥のブローチ。おもちゃのラッパ。コイルの切れ端。それらが古びたクッキーの缶の中に入っている。それぞれにふさわしい隙間にすっぽりと密やかにはまり込む。 生きていれば思い出は積み重なる。 生きていればどこかで罪も負う。 人は、すべてを明らかにすることはなく、大切な思い出、あるいは罪の記憶をそっと奥底にしまい込む。 実は、5編目だけは、セールスマンの男は出てこない。 選鉱場に母親と住む男の子の物語だ。男の子は、2つ、罪を犯す。おそらくは、彼が語らなければ、誰にも咎められることのない罪だ。読者はそれを目撃する。そして男の子とともに沈黙する。まるで共犯者のように。それは誰しもが犯すかもしれない罪だから。 彼はラッパを持っている。本当は彼が持っていてはならないラッパだ。そのラッパはおそらく、セールスマンがクッキーの缶に入れているものだ。 その経緯は明らかにはされないけれど、少年はおそらく、セールスマンになるのだろう。 密やかな秘密を抱えながら、人々にそっと音を届ける仕事を、彼は、選ぶのか。 不思議な余韻が残る作品。
3投稿日: 2025.02.24
powered by ブクログ[こんな人におすすめ] *上質な物語に身も心もゆだねてしまいたい人 没入できます。著名なオーケストラの生演奏を聴いている時のように、睡魔も日常のモヤモヤも全部忘れて幸せな気分に浸れます。 なお、5篇に分かれているので少しずつ読み進めることも可能です。 [こんな人は次の機会に] *動物を愛している人 思い出そうとするたびに「脳内で再生してはいけないよ。世の中には忘れてしまった方が良いこともある。」と脳内が優しく語りかけてくるほど気持ち悪い描写があります。困ったことに、該当部分を読んでいる時は文章の美しさに心を奪われているので恐ろしさに気づくのが遅れます。読む前にご注意ください。
3投稿日: 2025.02.24
powered by ブクログ妖艶に熟しきって鳥肌がたつような観察眼ですべて見透かされ逃れられないような畏怖を感じる小川洋子さんの新作を借りてきました。今回は補聴器のセールスマンってかなりレアでピンポイントなところ攻めてくるんですよね。百科事典のセールスマンとかもあったと思いますがこうゆう設定好きですね。 そして、骨とか死骸、標本とか化石とか。かつて命を宿していたものの欠片も好きなんですよね。鉱物とかも。小鳥のブローチ作る表現なんか猟奇的に思えるのですが乾燥してくると生々しさが和らいで愛おしく思えたり、感性が右に左に大きく振られました。 移動式のメリーゴーラウンドに露店とか輪投げとかレトロに懐かしい雰囲気もぶち込んできてもて遊んできます。 そして彼女の観察眼にかかれば、耳骨さえもカルテットとして不思議な振動を醸しだし取り憑かれそうで、一つ一つのパーツ単位に解剖されてゆく。異様に映る耳鼻咽喉科の老先生の行動にも恐怖を凌駕しあっけにとられる感じです。耳の中に棲んでいたものたちって表現も悪しき者たちのようでお祓いして欲しくなる。アメ玉の缶に仕舞うところも不気味に童心還りしててヤバそうです。 ここに出てくる補聴器ですが聴覚障害者のアシスト的役割に使用するものじゃなく、外界から塞いで棲む者たちを護る役目に使うように感じられました。 一歩一歩近づく孤独感に不安感といったノイズを遮断し、懐かしい光景に包まれ心地よく響き渡る音符に中毒性の邪悪を感じてしまいます。手に入れたラッパも紛い物で吹き鳴らすことなく奥底へ仕舞い込まれ忘れ去られる感じが象徴的でした。 実に奇妙に謎めいて腐敗臭漂うサイレント映画を見た目覚めの悪さに、迷宮に迷いこんでしまいそうで、レビー小体型認知症の初期症状のような幻覚をみせられた感じでした。
89投稿日: 2025.02.21
powered by ブクログ短編連作。現実感溢れるけど、ダーク寄りファンタジー。どれも少し気持ち悪くズレてます。キーは耳。132ページと短く、あっという間に読めるので、この気持ち悪くズレた空間にお越しください。文章は美しく響くようです。切り取って入試の問題に使えそうな内容だな~って思いながら読みました。 エログロないものの、これを読んで面白い!と思う小学生はまれだと思うので、高校生くらいからが向いてます。中学校以上向け。
7投稿日: 2025.02.17
powered by ブクログなんとも不思議な世界観。 耳の中で空き缶がカラカラ鳴る。 今まで聞こえていた音が聞こえなくなりそうで不安になった。
1投稿日: 2025.02.16
powered by ブクログ25/02/16読了 耳に棲むもの、4つの骨のカルテットと補聴器のセールスマンにまつわる短編集。 湿度0 気温18度を一定に保つような文章書くよね
0投稿日: 2025.02.16
powered by ブクログ独特の文体、ちょっと不思議な世界観が、嫌いではなかったのだが、この本は響かなかった。温かみが無いというのか、最後まで謎を残した余韻が、心地良いものではなかった。静かな音楽が聴こえてきて欲しかったのに私には無音だった。
0投稿日: 2025.02.16
powered by ブクログ補聴器のセールスマンだった父が亡くなり 主治医だった高齢の医師が 挨拶に来た 実直だった父の骨壺から 医師は聴覚に関する骨を拾い出して 娘に説明してくれた 父の耳に住んでいた カルテットはどんな音を奏でて いたのだろうか そんなことを想像させられる セールスマン時代のいろんなシーンが あったけど とても具体的なものとメルヘンみたい のと どういう繋がりかあるのか わかりにくいものもあった
0投稿日: 2025.02.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
短編集だけどストーリーつながってて嬉しい。結局耳の中に住むものの正体はよくわからなかった。 世の中から忘れ去られたり静かに消えていく物をクッキー缶に集め、耳の中のものが落ちないように補聴器を売り回るセールスマンさんが素敵だと思った。この本の雰囲気が全体的に好きだと感じた
0投稿日: 2025.02.06
powered by ブクログVR作品と本書の両方を楽しむと彼の人生の全体像が見えてすっきりします。 VRの公式のあらすじだけでもぜひ読んで欲しい。 小川洋子らしさ全開の洗練された短編集だったと 思う。忘れられたもの、閉じ込められたものに 手を差し伸べたやさしい小説だった。 自分にとって大事なものをここ最近は書き続けていると本人もどこかで言っていたのがよく分かる。 「琥珀のまたたき」「密やかな結晶」あたりと似た何かを感じたが、それ以上に主人公が小川洋子そのものである気がして、読んでいて満たされていくのを感じた。 編によっては好みが分かれるのは理解できる。 「今日は小鳥の日」は、共感はできない世界の1エピソードという受け止め方でも良いと思う。 小川洋子が影響を受けてきたものを考えると、「閉じ込められること」「自由」「祈り」「慰め」…そんなことについて描いたのかなあと、私はなんとなく解釈している。 「選鉱場とラッパ」は複雑な精神の成長過程が描かれていたのだと思う。 言い表せられないむしゃくしゃした感情、悪と分かっていても手を伸ばしてしまう衝動、成長に伴う綺麗ではない部分が小川洋子によって掬い上げられたということだろう。 彼女は、現実では許されない事にも、小説の中では優しく手を伸ばしてあげることができるとどこかで語っていた。 かつて彼の悲しみに寄り添ったカルテットの音楽。その演奏を聴けなくっても、それは消失ではなく彼の中に潜んでいる。その証に彼の涙はカルテットの演奏の音符となり楽譜となる。 そのことが軸となり、各編を繋いでいる密やかなまとまりが心地よかった。
0投稿日: 2025.02.03
powered by ブクログ独特な世界観。不気味で不思議な話だったが、薄い本だし、一応最後まで読む。ジュウシマツを食べるなんて発想、どこから来るのだろう。
53投稿日: 2025.01.28
powered by ブクログ『私は、閉じ込められているもの、閉じこもっているものに、愛着を覚えるのです』 これは主人公である補聴器のセールスマンの言葉だが、これまで私が読んできた小川作品の数々に通じる言葉のようにも思えた。 多分、小川さん自身の言葉でもあるのではないだろうか。 『閉じ込められ、誰からも見捨てられ、忘れ去られたものを救い出すのと、閉じこもっていたいものに、それが求める小さな空洞を与えてやるのは、私にとって同じことです』 だれも見向きもしないものや空間を丁寧に掬い取り、曝け出すのではなく新たな安らぎの場所へ導き大切に守っていく。私の好きな小川さんの世界観だ。 だがそれは時には残酷だったり悲劇的な話になったり、美しいとは言い難いものもある。 だがそれもまた小川さんの世界観。この二面性こそが魅力なのだろう。 補聴器のセールスマンが亡くなったところからスタートし、彼の青年期、初老期、そして子供の頃の物語と時代を変え展開していく。 物静かなのにその内側では様々な思いが溢れ、落ち着いているのに時に大胆、どんな人も物も言葉も思いも全て受け止め受け入れる、正に小川さんらしい世界を堪能できた。
44投稿日: 2025.01.25
powered by ブクログオタワ国際アニメーション映画祭で最優秀賞を受賞した作品が元になって作られた小説なのだそう。 そちらも観てみたけど、どちらも小川洋子さんの不思議な世界観だった。 素敵な装丁の4人(?)のカルテットが、どうやら耳に棲むものらしい。 補聴器のセールスマンだった父の過去が、骨壺から取り出したカルテットを通して聞こえているということなのかな? 短くてすぐに読めるのだけど、途中で「?」となることも何度かあって… 私が思っていたのとは、ちょっと違っていた。
54投稿日: 2025.01.25
powered by ブクログ『はい。少々古びた缶ではありますが、小さくて、安全な宇宙です』p96 今日は小鳥の日 選鉱場とラッパ 上記2編が特に印象に残った。 著者の作品は多くの場合ほんのりと死の匂いがする。今回ははっきりとした死が幾度か出てきたが、その描写は静謐で美しいけれどもそれがかえって怖い。 この作品は5編からなる短編集。 個性的で美しい表紙絵や挿絵も、独特な作品の雰囲気をさらに高めている。 短い時間で読み終えることができる、読みやすい一冊。
0投稿日: 2025.01.21
powered by ブクログ読み始めたらあっという間に惹き込まれる小川洋子の世界。夢か現実か狭間で揺れるストーリー。 イマジネーションの豊かさに感服。
0投稿日: 2025.01.19
powered by ブクログ補聴器を媒体に、人間の耳に聞こえるものを小川洋子さんならではの文体と発想で描かれた5編は、奇想天外なものも多いのに不思議と落ち着いて読むめるのが著者の力量だと感じます。 映画アニメーションの画像もそうですが、本の内容もカバーも音が聞こえてくる感じが素敵です。 私の母は、85歳までは針に糸をやすやすと通すほど、目も良く、90歳を超えてなお自分の歯をかけることなく持っているのですが、耳が遠くなるのが早くて、50歳を過ぎて補聴器のお世話になっています。 今私も持病のせいもあって、耳鳴りがいつもしているのですが、どうも耳の聞こえがよくありません。この作品を読みながら、母の気持ちを想像したり私が補聴器を使ったらどうかなと想像して楽しみました。
1投稿日: 2025.01.12
powered by ブクログ不思議で奇妙な耳の世界。そこに存在するのはカルテットが奏でる美しい音楽。 複雑で残酷な感情と美しい音楽が違和感なく溶け合って、でもどこにも着地しない浮遊感のまま挿画によって物語の中に引き込まれ、どこかおとぎ話を読んでいるような心地になった。
0投稿日: 2025.01.12
powered by ブクログある補聴器の営業マンの話。ことりのブローチとラッパの話は少しえぐい表現があった。正直、全体を通してよく分からなかった、、。
0投稿日: 2025.01.05
powered by ブクログちょっと不思議な、でも気持ちが休まるような短編集。耳の中にカルテットがいて、演奏してくれるのいいなと思う。
1投稿日: 2024.12.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
文学的にとりすまして何ぞ感じてみたいけど、よく分からんかった。あの亡くなった補聴器販売員さんの人生を遡って記してんだろうか?彼の耳の中に棲んでいた四つの骨らしきものたちが奏でるカルテット。行商で各地を巡り拾い集めたガラクタを詰めた古いクッキーの缶(繭)。旅先で出会った小鳥の日の会場に集う人たちが語るのは、それぞれの想い出が込められた小鳥ブローチの話。ビレッジ・コクーンの彼女の内耳に棲むのは、カルテットに合わせて踊る二匹のドウケツエビ。そして販売員さんの少年時代のラッパにまつわる少しせつない物語。なのかな?
0投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログ小川洋子さんのちょっぴり不思議だけどなにかあたたかいものを感じることが多くこの作品もその例のひとつだった。 心にじんわり沁みる感覚がある。私自身もこうしてみたいなと思ったり、私もなんか似たところあるなと発見したりと私の中に新しいものがうまれるようなそんな気持ち。 短編なのかと思ってたけどすべてつながっていてすいすい読めた。挿絵も素敵でなんだか絵本を読んでいるようでどこか懐かしい気持ちにもなった。 私が大学1年生の頃、小川洋子さんのエッセイを図書室に入れてもらったので4年ぶりに読み返したくなった。私の大学は借りた人までは分からないけど借りた人の存在は知れるシステムなので他に読んだ人いるのかな?とも気になった。ふふ〜ん(鼻歌)
0投稿日: 2024.12.20
powered by ブクログ「あっ」 男はスコップで掬い上げた砂の中から、何かを摘み出した。掌の窪みに、黒くて丸いものが載っていた。 「ダンゴムシの死骸だ」 (骨壺のカルテット/耳たぶに触れる/今日は小鳥の日/踊りましょうよ/選鉱場とラッパ) 挿画挿画 山村浩ニ 装丁 大島依提亜
6投稿日: 2024.12.13
powered by ブクログ補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた 4つの骨片。それは耳の中に棲んでいたものたちで…。 あたたかく、時に禍々しく、静かに光を放つように つづられた珠玉の作品集。
1投稿日: 2024.12.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
連作短編集5編 補聴器のセールスマンを軸としての耳にまつわる物語.小川洋子ワールド全開で,父親の死という形でのセールスマンの死を扱った「骨壷のカルテット」,涙を流す競争,また小鳥のブローチでは少々グロテスクな自殺など興味深かった.特に気に入ったのは「踊りましょうよ」で,耳を引っ付けあってお互いの音楽を聞き取ろうとする様子やドウケツエビの踊る姿を想像するだけでうっとりした. また,挿画,装丁が素晴らしい.
0投稿日: 2024.12.06
powered by ブクログ素敵な装丁に惹かれたものの、小川洋子さんの世界観に自分自身がついていけず、なんとなく取り残された感覚… 心に余裕がある時に、ゆっくり丁寧に読めば、この世界観に入り込めるのかもしれない。 慌ただしい日々を過ごしていると、素敵な世界に身を委ねられないことがある。 いつか、改めて手にした時には感動を与えてくれる気がする。 そんな日がきっとくるはず。
21投稿日: 2024.12.06
powered by ブクログ繊細な描写、不思議なストーリー展開、心の襞を描く。久しぶりに読んだ小川洋子の世界は、妙に生々しく心に残った。
0投稿日: 2024.12.04
powered by ブクログ穏やかでゆったりとした摩訶不思議な世界観でした。頭で理解しようと思っても無理なので、この小説は雰囲気を楽しむ、あるいは文体の余韻を楽しむものだ、と思いました。
0投稿日: 2024.12.03
powered by ブクログ配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。 https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=10280949
0投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログ「『私は、閉じ込められているもの、閉じこもっているものに、愛着を覚えるのです』彼は膝の上の鞄を抱え直した。『閉じ込められ、誰からも見捨てられ、忘れ去られたものを救い出すのと、閉じこもっていたいものに、それが求める小さな空洞を与えてやるのは、私にとって同じことです』」
5投稿日: 2024.12.02
powered by ブクログ短編集の形で、話の流れとしては読みやすかった。 最後まで読んだけど、個人的な感覚には合わなかった。 野鳥や小鳥が好きな私にとっては、歪んだ愛情の狂気として映った。 共感も理解もできないけど、さまざまな形の「死」を美術品のように愛でる感覚をこの本で知れたのは良かったのかもしれない。
1投稿日: 2024.12.01
powered by ブクログ連作短編。補聴器のセールスマンの一生を死から少年時代の原点まで遡る。最後に耳の中に住む音の正体が明らかになる。 全編を振り返るとそこには常に死の影がつきまとう。
2投稿日: 2024.12.01
powered by ブクログパラレルワールドのような、 ファンタジーとリアルの狭間、みたいな短編集。 人間の複雑さやグロテスクな部分を ここまで品良く仕立てることができるのは小川さんだけなのでは? これは芸術だ、、とひしひしと感じながら読み進めた。 「今日は小鳥の日」が物議を醸しているようだが、 人の説明し難い部分が形容されているようで 私は嫌いじゃないけどな、人によったらグロいのかな。まあこれも人間な気がするけど。 おそらく通常の本より字間が広く設定されており、 噛み締めるようにゆっくり読んだ。 美術館に行ったような気分になる。
0投稿日: 2024.12.01
powered by ブクログタイトルと装丁からは、話の内容が想像つかないが、字面の通り「耳に棲むもの」にまつわる話だった。 表紙の螺鈿細工のような加工が美しく、インテリアの一部になるような本だったが、、、。 なかなか自分の想像力が作家についていけず、思わず「で?」とつぶやきたくなってしまった。 こういう図書にのめりこめる人って、きっと芸術性も高いに違いない。 それにありとあらゆるモノを具現化するのもうまいんだろうなぁと羨ましくなってしまった。
15投稿日: 2024.11.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小さきものへの慈しみ 涙と楽譜と鉱山の光の星座と楽譜 クッキー缶に仕舞われた小さいものたち その音を聞く耳、補聴器 確かに世界には曲線しかないのかもしれない
1投稿日: 2024.11.29
powered by ブクログ著者初読み。図書館の新刊コーナーでカバーに惹かれて借り、最初の短編のみ読みました。読みやすい描写がされていますが世界観に好き嫌いがあると思います。私には合わなかったため、他の本を優先しました。
2投稿日: 2024.11.27
powered by ブクログなんというか…これは難しい。 物語は補聴器を売っていた父親が亡くなり、近所の耳鼻咽喉科の院長がやってくることから始まる。 耳の中には耳に棲むものがいる。自分の発している言葉、心に浮かんだ言葉は耳に棲むものたちによって音になっているという。 とにかく不思議。こういう世界もあるのか…という気もするけど正直よくわからないな…という印象。 全部で5つの短編で、どれも違う話のようで繋がっている…。130ページ程度で、途中にカラーのイラストもあり、話の内容からしても芸術的だなという陳腐な感想しかでてこない。
7投稿日: 2024.11.27
powered by ブクログ表紙のキラキラに惹かれて購入。小川さんワールド満載。不思議な物語。美しい言葉がそこかしこに散らばっていて、お腹の底にズンッと響いてくる感じがする。
1投稿日: 2024.11.26
powered by ブクログ耳に関するストーリー。実はどれもつながっている。穏やかな不思議な雰囲気の話。半分理解できたような…できなかったような…。
0投稿日: 2024.11.19
powered by ブクログ補聴器のセールスマンだった父の骨壷から出てきた四つの耳の骨〜骨壷のカルテットから始まる5つの連作短編集。 最後の選鉱場とラッパに出てくる少年がそうだったのかと。 耳の中に棲むものとは…まるで秘密の箱を覗き見したような感覚。 静かに流れてゆく描写には孤独という寂しさを感じた。 VRアニメだと違った印象を受けるのだろうか?
55投稿日: 2024.11.17
powered by ブクログ耳と耳の中がテーマの話。 補聴器販売員だった父親が亡くなったところから話が始まり、短編ごとに時間が遡っていく。 「骨壺のカルテット」と「耳たぶに触れる」まではフムフム面白い世界観だなぁ~と読み進められたが、「今日は小鳥の日」は題名よりも不穏でグロい描写がある…。 続く「踊りましょうよ」は、まぁまぁ不穏な雰囲気もありつつ、そういう関係性かと納得させたけど、さいごの「選鉱場とラッパ」も中々グロい。 耳のなかを迷路に例えていたり、 それぞれの耳の形に合わせた補聴器の種類に興味をもったけど、死骸のグロい描写に若干ひいてしまって完全には世界観を楽しめなかったかな。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 骨壺のカルテット 耳たぶに触れる 今日は小鳥の日 踊りましょうよ 選鉱場とラッパ
8投稿日: 2024.11.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
連作短編5作 そろそろわたしの世界も錆びついて、脳内思考広げる力が足りなくなってきたか 骨片を掴んだ鉗子 詰め込まれた小鳥 早泣き競争での視線 塞がれた耳 持ち逃げしたラッパ 静かに本を閉じる
6投稿日: 2024.11.14
powered by ブクログ耳と補聴器がモチーフの短編集。 小川洋子さんの世界が堪能できます。表紙のカルテットが、何を表現しているのかがわかったときに、愛着が湧いてきました。 耳というと、なんだか迷路に入っていくような不思議な器官に思えます。そのなかでひっそりと行われていることに想いを馳せられたように思いました。文章は、繊細な部分と、ありのままの残酷さの描写がお互いをより引き立てているようでした。読んでいくほど、物語への理解が深まっていく、そんな感じがしました。 骨壺のカルテット 耳たぶに触れる 今日は小鳥の日 踊りましょうよ 選鉱場とラッパ
33投稿日: 2024.11.14
powered by ブクログ小川洋子さんが書き下ろしたオリジナル原作を、山村浩二さんがVR映画化した短編アニメーション『耳に棲むもの』‥、知りませんでした。本作は、その世界を膨らませた5篇の連作短編集のようです。 人や動物の死、骨や死骸が頻繁に登場し、少し不快で不穏な雰囲気を漂わせながらも、品位を保ち、静謐で温かさも感じさせる小川洋子さんの世界が広がっています。私的には文章の肌触り重視で、内容の理解が追いつかないので合わない、とはなりません。 幻想的な異世界に紛れ込んだ感覚とともに、孤独と哀しみが自分にだけ聴こえるささやかな演奏に変換され、優しい音楽を醸し出す世界に引き込まれます。 補聴器のセールスマンが主要人物。彼が亡くなり、親交のあった医師が彼の骨壷から、耳の中の小骨片を4つ(耳の中に棲んでいたものたち)取り出します。 第2話以降は時間が遡り、生前のセールスマンと関わった人々の話です。決して描かれない登場人物の内面が、読み手に委ねられるからこそ、イメージが膨らむのですね。 苦しんでいる時、それも孤独な自分と向き合っている時、励まし勇気づけてくれるのは、優しく響く内なる声・音楽なのでしょうか‥。耳を澄まし、聴き取りたくなる物語でした。 ※山村浩二さんのアニメーション『耳に棲むもの』は、オタワ国際アニメーション映画祭2023のVR部門最優秀賞の他、多くの海外映画祭に出品され、多数受賞ノミネートされているようです。 VR映画ってどんなものなのでしょう? 35分の短編を、実際に新宿のNEUUで観てみたくなります。
78投稿日: 2024.11.14
powered by ブクログ安定の小川ワールドでした。 装丁や挿絵が物語と馴染んでいて、忘れていた宝箱を見つけたようでした。 帯に書かれた「映画祭」との関係は? 挿絵が動く、音を奏でる??
15投稿日: 2024.11.13
powered by ブクログ表紙に三半規管が描かれていたのでジャケ買いです 小川洋子さんは始めて読みました 補聴器のセールスマンの人生 複雑な感情 大切なカルテット
1投稿日: 2024.11.12
powered by ブクログ夢を見ているような感じになった。 理想的な耳の人と、音を共有する部分は素敵でした。 私の耳の中には何がいるのかな、、、
2投稿日: 2024.11.11
powered by ブクログ小川洋子さんの文章、好き。 静かにじっくり噛みしめるように味わう。 ……………………… 補聴器セールスマンの死→現役時代→若かりし頃の恋のようなひととき→少年時代 生々しさが年が若くなるにつれ増していったのが印象的。
12投稿日: 2024.11.06
powered by ブクログ補聴器のセールスマンだった父が亡くなり、火葬後の骨壷から四つの耳の骨(カルテット)が現れる「骨壷のカルテット」から始まる5話を収録した短篇集。 同題のVRアニメーションの原作として書かれた作品らしい。だからというわけではないが映像喚起力は高いと思う。ただ、それぞれの作品に込められた意味を読み取れたかというと……。 最近の小川さんの作品はぼくには難解で、この作品もどう捉えればよいのかわからなかった。
5投稿日: 2024.11.03
powered by ブクログあぁ…好き…♡ 日常と非日常の隙間にひっそりと佇み 美しい文章で綴られ…静かな世界観へと誘われる… 日々の生活に慌ただしく追われている人たちには 決して聴こえてこない彼らの言葉たち… 自分だけの 自分にしかわからない世界の中で 今まで生きてきた証を 私たちにそっとハンカチから広げて 大切に愛でながら 優しく語ってくれる感じが とても心地よかったです いま誰かが記憶に留めておかなければ 消えてしまいそうな物語を いつも小川洋子さんの美しい言葉で 私たちに伝えてくれている しばらくは よせては返す 心地よい余韻に浸っていたいです♡
1投稿日: 2024.11.03
powered by ブクログとても不思議な世界観に包まれた感じがありました。明記されてないことも多く、想像力で補完しながら読み進める作品のようであるように思います。 以下本作の紹介文です。(Amazonより引用) 補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。 あたたかく、ときに禍々しく、 静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。 とにかく時系列が難しくて、読み始めた時はハテナマークが浮かんでました。各章に共通して出てくる人物がいるので、何とかそれを指標に手繰ると少し構成がわかったかなという感じです。 そういった背景もあって割と短い作品ではありますが、読み込むと味わいのある作品であるのかなと思いました。
54投稿日: 2024.11.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
1人の男性の物語。連作短編。 最後の『選鉱場とラッパ』が一番良かった。 子供の頃の罪の意識。寂しさ。 最初から読んだ時、地味目の内容だなぁと思った。 だけど、最後のこれを読んだ後に、また最初から読むと、違った見方になるし、じわじわくる。味わえる。 最初は素朴な人だと思ってたけど、最後の短編の後では影の部分が濃くなって、泣いた時、何を思って泣いてたのか、想像するようになる。 寂しさから出てくる暗い部分が出てくる。
2投稿日: 2024.11.01
powered by ブクログ小川さんの不穏さ漂う文章、世界観が大好き……だからこそ長さ的な意味で全然足りなくてもっと読みたいのにってなった。綺麗で美味しいフランス料理を丼でとは言わないけどお茶碗くらいの量は食べたい。
2投稿日: 2024.10.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
小川洋子さんの新刊。書店で発見し、装丁の美しさに惹かれて購入。5篇の短編が収められている。 「骨壷のカルテット」 ある補聴器販売員が納骨されることになった。生前懇意にしていた耳鼻科医が別れの挨拶にやってきた。彼は、耳用鉗子で骨壷から耳の4つの骨を取り出し、缶に入れる。実はその缶には、長年のど飴が入っていた。空になった缶に、入れられた耳の骨。 補聴器販売員も、生前あるものを入れるための缶を持ち歩いていたのだった。 「耳たぶに触れる」 秋祭りで開催された早泣き競争で優勝した補聴器販売員。その涙の瞬間を写真で捉えた青年がいた。補聴器販売員は、スコップで砂を掘り、ダンゴムシの亡骸を缶におさめる。その缶に収められる様々なものは、補聴器売りとして訪れた地で、彼が出会った声なきものたちへの弔いの証であった。 「今日は小鳥の日」 小鳥の亡骸を、正確に1/3スケールにして、小鳥のブローチを作る者たちがいた。補聴器販売員は、ある出来事で瓦礫の下に埋もれてしまった小鳥のブローチを土から掘り出し、缶におさめた。 「踊りましょうよ」 補聴器販売員は、サービス付き高齢者住宅へ出向く。そこで出会う老人たちの補聴器をメンテナンスするために。亡くなった老人の大事なもの一つだけを例の缶にこっそりと収める。 彼は、その缶は、繭のようなものだという。 『繭は、じっと動かず、半ば死んだようです。自ら、そう見せかけているのです。でも目に触れないその奥には、予想を超える生命力が潜んでいます』と。 「選鉱場とラッパ」 ある少年が、輪投げの景品のラッパを欲しがった。あるハプニングがあり、ごたごたに紛れて少年は景品のラッパを持ち出してしまう。しかし憧れのラッパはイミテーションだった。音も鳴らない。少年はそれをダンボールの中に封じた。 後に彼は縦笛演奏家となり、五線譜に音符をのせ即興演奏を届けた。補聴器販売員も、彼の演奏を聴いた。そして、五線譜を缶に収めた。 少年にとって、ダンボールは弱い心を匿う繭であった。そして、補聴器販売員は、誰かの声を繭の中であたため続けた。最期は彼自身が、彼が最も懇意にしていた耳鼻科医の缶、いわば繭の中に棲むことになった。 子どもが寝静まった部屋の小窓を開け、ひんやりした風や虫の声の中、読了した。 いろいろな面から鑑賞ができる味わい深い作品。
8投稿日: 2024.10.23
powered by ブクログ小川洋子さんのちょっぴりダークで不思議な世界がとても好き。 今回は「耳」にまつわるお話。 「耳の中に棲む」という表現がなんかいい。 読んだ後は自分の耳がなんか気になってしまった。 本の装丁もとても綺麗で、VRアニメも見てみたいなと思った。
12投稿日: 2024.10.21
powered by ブクログ積読本を読み終わってからと思っていたけれど、本屋で見かけた折に、その美しく丁寧な装丁に心惹かれて購入。いくつかのモチーフが落ち着いた色味で描かれ、タイトルや著者名はキラキラと光っている。挿絵もちょうど良く挟まれていて、これだけでも買ってよかったと思った。 内容は、しっかり小川洋子ワールド。 補聴器の販売員をしている男性によってつながる”耳に棲むもの”にまつわる作品集。静かな孤独を抱きしめるような一話から始まり、徐々に日常のような非日常に入り込んでいく。美しいのに不気味で、不気味だけれど目を背けられないような、この世のどこかにあるかもしれない世界が濃密だった。 自分だけの世界の魅力、そういうものを感じさせてくれる小川洋子さんの作品がまた一つ。 最後にもう一度、装丁が本当に美しいです。
3投稿日: 2024.10.18
powered by ブクログあなたは、お悔やみに訪れた人が不意に『骨壺』の蓋を開けて『骨片』を取り出しはじめたらどうするでしょうか? (*˙ᵕ˙*)え? 昨今、お葬式というものに出席すること自体、数が減ったと思います。かつては、職場の同僚の親族であっても参列する場合がありました。時代は変わり、家族葬が一般化し、親戚であっても必ずしも参列しない場合も多くなりました。そんな時代にあっては、お通夜、お葬式、そして火葬といった一連の儀式はどこか他人ごとにも思えてきます。そもそも『骨壺』というもの自体目にする機会も多いとは言えないでしょう。 私は父親を亡くし、『焼き場』でお骨を拾うという体験をしました。かつて目にした姿がこのような『骨片』へと変化してしまった現実にはなんとも言えない思いが込み上げました。そして、『骨壺』へと収める中に一つの区切りを感じもしました。 そんな『骨壺』というものは家の中で独特な存在感を醸し出します。その存在感の大きさはサイズからは計り知れないものだと思います。無闇やたらと触れるものでもありませんし、ましてや家族以外には聖域な存在だと思います。 さてここに、お悔やみに訪れた一人の男性が、そんな『骨壺』に触れるばかりか、『ためらいもなく蓋を取』り、さらには『骨片』を取り出していく…と展開する場面を描いた物語があります。『補聴器販売員』に光を当てるこの作品。どこまでも静謐に描かれるこの作品。そしてそれは、「耳に棲むものたち」の存在に光を当てる小川洋子さん最新作な物語です。 『お忙しい時間に申し訳ございません』、『お父さまにもう一度、最後のお別れを、と思いまして』と『白衣姿のまま』現れた『L耳鼻咽喉科医院の院長先生』を迎えるのは主人公の『私』。『父とは、私が生まれる前からの長い付き合いだった』という院長は『父の遺影と骨壺の前で』お祈りをします。『補聴器製造会社の営業部に勤めていた父は、仕事柄、大勢の耳鼻咽喉科の医者と付き合いがあったが、家の近所にあるL医院を最も信頼してい』ました。そして、『朝、ベッドの中で冷たくなっていた父のもとに一番に駆け付け、万事的確に取り計らってくれたのも院長先生』でした。『苦しみはありませんでしたよ。ご覧なさい。静かな音楽に耳を澄ましているようなお顔をなさっている』と『慰めの言葉をかけてくれた』院長先生は、『お父さまは実に立派な補聴器販売員でいらした』、『単に物を売るというのではなく、お一人お一人に本当に必要な音を届けておられた』、『なかなか世の中に、そのような補聴器販売員はおられません』と父のことを語ります。『子どもの頃、副鼻腔炎や中耳炎になるたび、L耳鼻咽喉科医院にかかっていた』という『私』は、『お利口さんでした。ご褒美にこれをあげましょう』と、『治療が終わると、のど飴を一粒もらえること』を『何より楽しみにしてい』ました。そして、今『遺影』を前にして『父はもの静かな人でした』、『耳鳴りがひどかったのです』、『内側で鳴っている音の方に耳を傾けている方が、心が落ち着いたようです』と語る『私』に、『よく分かります。こんなわたくしでも一応は、数えきれない方々の耳の中を覗いてきましたから』と言う院長先生。そんな中、『不意に院長先生が、身を乗り出し、骨壺を持ち上げると、包みの紐を解きはじめ』ます。それを『ただ驚いて、目を見開くばかり』という『私』の前に、『包みの中から白い陶器の壺が姿を現し』ます。『焼き場でまだ温かい骨を箸でつまみ、壺に入れた時の光景』を思い出す『私』。『「立派な大腿骨をお持ちだ。長い道のりを歩いてこられた方の脚だ」と、焼き場の係の人がお世辞を言うような口調で繰り返』す『院長先生は、骨壺を両膝の上に抱きかかえ、ためらいもなく蓋を取』ります。『息を呑む私になどお構いなく』、『白衣のポケットから耳用鉗子を取り出し、ぎゅうぎゅう詰めになった骨の中に、それを深く突き刺してい』く院長先生。『骨壺の奥から骨と骨のこすれ合う音がし』、『それを聴いているとなぜか、骨がまだ温かいかのような錯覚に陥った』という『私』。『院長先生の腕に抱かれた父の骨は、あまりにも濁りのない密度の濃い白色をしていた』と院長先生の手元を見る『私』は、『二人の間に漂う骨の音に耳を傾ける以外』『できることは何もな』いと思います。そんな時、『一瞬、院長先生の目つきが変わり、指先と手首がこれまでにない大胆な動きを見せ』ます。そして、『鉗子がゆっくりと骨壺から引き抜かれ』ると、『二股の舌先には、小さな骨片が一つ、挟まってい』ました。そして、『同じ動きがあと三回繰り返され、『四つの骨片』が取り出されます。『どれも形が異なり、掌の窪みにおさまるほどの大きさしかなく、繊細な姿をしていた』という『骨片』。『院長先生はその四つを掌に並べ、捧げ持つようにして私の眼前に差し出』すと、『お父さまの耳の中にあったものたちです』、『これほど完全な形で残るのは珍しい。特別な補聴器販売員であった証拠と言えましょう』と語ります。院長先生と『私』が父親の『骨片』を前に語り合う姿が描かれていきます…という最初の短編〈骨壺のカルテット〉。この作品でキーとなる『補聴器』の販売員だった『私』の父親の存在が静かに浮かび上がる好編でした。 “2024年10月10日に刊行された小川洋子さんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2024年7月に町田そのこさん「わたしの知る花」、8月に望月麻衣さん「京都下鴨神様のいそうろう」、そして9月には藤岡陽子さん「森にあかりが灯るとき」と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを毎月一冊を目標に行ってきました。そんな中に、静かな物語世界の中に独特な魅力が漂う小川洋子さんの新作が出ることを知り、これは読まねば!と発売日早々この作品を手にしました。 そんなこの作品は、内容紹介にこんな風にうたわれています。 “耳の中に棲む私の最初の友だちは 涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。 補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。あたたかく、ときに禍々しく、静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集” 小川洋子さんの作品というと、モノに対するこだわりが一つの特徴とも言えます。それは、身体の部位でも言え、これまでにも「まぶた」、「薬指の標本」、そして「掌に眠る舞台」というように、身体のいずれかの部位を書名に含む作品を刊行されていらっしゃいます。そんな小川さんがこの作品で取り上げるのが『耳』であり、その中心となるのが『補聴器』であり、それを長年販売してきた『販売員』の姿です。では、『耳』の描写から見てみましょう。まずは『耳たぶ』へのこだわりです。『これと言って特徴のない平凡な顔立ち』という男の『耳たぶ』にこだわる主人公。 『ただし、耳だけは別だった。それはくっきりとした大きな輪郭を描いていた。思わず写真に撮ってみたくなるような、柔らかくて分厚い耳たぶを持っていた』。 そんな『耳たぶ』が気になる主人公は、『すぐ目の前に耳たぶがあった』、『男の手つきと耳たぶを交互に見やりながら言った』と『耳たぶ』を強く意識していきます。小川さんが描くと『耳たぶ』の存在だけで短編が一編書けてしまうことに驚きます。次は、『補聴器販売員』です。『鞄の中身は、補聴器の見本だった。彼はもう五十年近く補聴器を売り歩いてきた』という『販売員』がこの作品では一つのキーになります。 『自分の提供した補聴器で、顧客の耳の穴が塞がれるたび、セールスマンさんはなぜか安堵を覚えた。仕事をはじめてすぐの頃からずっと変わらずそうだった』。 『耳の穴が塞がれるたび』『安堵を覚えた』という『販売員』はこれだけだと怪しさ満点です。しかし、この作品の作者が小川さんであることが、そんな『販売員』の違和感を消してもいきます。 『洞窟の小部屋の扉は閉じられた。ああ、これで、耳の奥に棲むものたちがこぼれ落ちる心配はない。安全な居場所に閉じこもることができた。そんなふうに声にならない声でつぶやいていた』。 なんとも独特な感覚が綴られていきます。この作品は5つの短編から構成されていますが、この『販売員』は内4つで登場します。上記で冒頭の短編の最初の部分をご紹介する中には、そんな『販売員』が亡くなっていることが描かれていますが、他の短編では、そんな彼の生前の活躍が多々描かれています。そこには『補聴器』が登場するが故に『耳』に光が当たってもいきます。一見、グロテスクな表現の登場含め独特な雰囲気感に包まれたこの作品。最新作でも小川さんの生み出される世界に一点の翳りもないことを再確認するに十分な作品だと思いました。 もう一点、モノにこだわる小川さんと言えば忘れてはいけないのがモノを単純に羅列する表現です。こちらも見てみましょう。 『その耳用鉗子は、豆、ビーズ、種子、蟻、綿球、囊胞、腫瘍、血腫、垢…、さまざまな異物や病変部を迷路から引っ張り出してきた』。 冒頭の短編〈骨壺のカルテット〉に登場する表現がこれです。この短編では院長先生が『耳用鉗子』を使って『骨壺』から『骨片』を取り出す様子が描かれていますが、院長先生が耳鼻科の診療行為として『耳用鉗子』を使ってさまざまなモノを取り出す様をこのようにその羅列で表します。こんなモノが耳の穴に入っていたとは…ちょっと怖くもなりますね。もう一点、これはモノというより『小鳥の死骸』を羅列する表現です。(注: グロテスクな表現が苦手な方はワンブロック飛ばしてお読みください!) 『落ち葉にくるまり、平和な夢を見るように息絶えているシジュウカラもいれば、猛禽に襲われ、羽根をむしり取られて血まみれになったスズメもいます。親に巣から突き落とされ、嘴から舌先をのぞかせているヤマガラ。ネズミか何かに腹を食われ、眼窩からミミズがはい出しているモズ…』。 いやあこれは強烈です。モノを単純に羅列する表現は小川さんの作品に頻出、欠かすことができないものですが、こんな風に『小鳥の死骸』をグロテスクに羅列していくとは驚きです。これが他の作家さんならこんな人の作品二度と読まない!と思いもしますが、小川さんだと思うとどこか冷静に一字一句読んでしまうところが不思議です。まさしく”小川洋子ワールド”な世界がここに形作られているのだと思います。 そんなこの作品は『補聴器』で繋がる連作短編といった面持ちを兼ね備えています。元々は、「群像」2023年10月号、12月号、2024年2月号、4月号、6月号に連載されていたもので、紛れもない小川さんの最新作でもあります。冒頭の短編は上記でご紹介しましたので残りの短編についても見てみましょう。 ・〈耳たぶに触れる〉: 『その男を見かけたのは、収穫祭の会場だった』と、『大勢の人々で賑わっていた」場へと出かけたのは主人公の『僕』。『早泣き競争』に出場していた『男』を目にした『僕』は、『男』が『本気で泣こうとしている』と確信し、『インスタントカメラを構え』ます。そんな場が終わると、『いいカメラだね』と『男』が話しかけてきました。『誕生日に、両親に買ってもらいました』と答える『僕』。そんな『僕』は『男』の顔を『これと言って特徴のない平凡な顔立ち』だと思いますが、『耳だけは別』と感じます。『思わず写真に撮ってみたくなるような、柔らかくて分厚い耳たぶ』だと思う『僕』は…。 ・〈今日は小鳥の日〉: 『今日は小鳥の日』と、『小鳥ブローチの会』の集いを『レストランの二階大広間で開くのは『二代目会長』の『私』。『発足当初からの会員の一人』という『私』は、『ブローチ』の作り方を説明します。『材料は粘土で、それを成形し、竹串で模様を描き、着色して…』と手順を語る『私』は、『どうしても譲れないこだわりが一つあ』ると語ります。それが『実物のサイズの正確な三分の一』という『縮尺』であることを説明する『私』は、『作業はまず小鳥の死骸を手に入れるところからはじまります』と続けます。『夜明け前、誰にも見つからないよう小屋を抜け出し、森林公園に忍び込んで、死骸を…』と語る『私』。 ・〈踊りましょうよ〉: 『サービス付き高齢者向け住宅”ビレッジ・コクーン”の人々は皆、住人も職員も、彼のことをセールスマンさん、と呼』んでいます。『年季の入った黒革の鞄を提げた』『セールスマンさん』。そんな『鞄の中身は、補聴器の見本』でした。『もう五十年近く補聴器を売り歩いてきた』という『セールスマンさん』は『お客さんたちのどんな要望にも応えられるよう、常にあらゆる種類の補聴器を持ち歩いてい』ました。『どんな具合ですか?』と、『お客さんの部屋を一つ一つノックして回』る『セールスマンさん』。そして、住人たちは『どうにかして』彼を引き留め、『自分の補聴器を見てもらおうとし』ます…。 ・〈選鉱場とラッパ〉: 『ラッパが欲しかった』というのは『少年』。『輪投げの景品として、テントの奥の棚に置かれてい』ます。『六つの輪を投げ、縦横斜め、一列そろえば景品がもらえる』という『ルールもまだよく理解できないくらいに幼かった』という『少年』は、『それでもラッパが、どうしても欲し』いのでした。そして、『神社の秋祭りの夜』、『輪投げ』をする人たちを見る『少年』は、『どうか、ラッパを選びませんように。どうかお願いします』と『神様に祈』ります。『三段ある棚の一番上、向かって左手寄りに置かれてい』る『ラッパ』を見て、『ラッパにかなうものは何一つな』いと思う『少年』は…。 冒頭の短編を含めた5つの短編はそれぞれに独特な世界観を有しながら展開していきます。一見直接的な繋がりはありませんが、上記してきた通り『耳』を起点に『補聴器販売員』の存在が物語の一体感を醸し出していきます。そんな『販売員』は不思議なことを口にします。『補聴器のお仕事はセールスマンさんに、ぴったりですね』と言われた『販売員』。 『耳に蓋をして、その奥にある大事なものを守ることができるのですから』 『補聴器』の役割をこんな風に説明する感覚は摩訶不思議です。それは、一般的な『補聴器』の役割ではあり得ないものです。しかし、彼は続けます。 ・『私は、閉じ込められているもの、閉じこもっているものに、愛着を覚えるのです』 ・『閉じ込められ、誰からも見捨てられ、忘れ去られたものを救い出すのと、閉じこもっていたいものに、それが求める小さな空洞を与えてやるのは、私にとって同じことです』 独特な感覚で語られていく物語は読者の感覚をこの世界にどっぷりと浸らせてくれます。”小川洋子ワールド”全開に描かれていくこの作品。そこには、「耳に棲むもの」という一見摩訶不思議な感覚で語られる静かに密やかに綴られる物語の姿がありました。 『自分の提供した補聴器で、顧客の耳の穴が塞がれるたび、セールスマンさんはなぜか安堵を覚えた』。 『補聴器販売員』の男の存在が短編を一つに紡いでいくこの作品。そこには、モノにこだわる小川洋子さんらしさ満載の物語が描かれていました。グロテスクな表現がさりげなく登場するこの作品。それでいてどこまでも静かに描かれていく物語の美しさに酔うこの作品。 各短編にさりげなく挿入された挿画が醸し出す雰囲気感にも魅了される印象深い作品でした。
258投稿日: 2024.10.12
powered by ブクログここではないどこか、遠くの見知らぬ場所にこの町はあるのかもしれない、そんなノスタルジーにも似た空気を胸いっぱいに吸い込んでそっと息をつくような静謐な作品でした。 誰かにとっては目にも留めないようなモノが誰かにとっては唯一無二の大事なモノになり得るというのは、いじらしくもどこか恐ろしさも秘めているようです。 「今日は小鳥の日」の会長の姿をかりるのであれば「小さな死を一つ、自分の胸で休ませ」たまま過去へとその痕跡をたどる連作短篇のようで、すべてはひとつの物語であった気もします。 VRアニメもぜひ観てみたいです。
5投稿日: 2024.10.10
powered by ブクログ感想 音を聞く。それがどれだけ複雑な営みか。僕たちは感謝することもなく、目もくれることもしない。だけど世界は音で彩られている。その美しさ。
1投稿日: 2024.10.10
