
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
京極堂シリーズ、何と十七年ぶりの第十弾。 昭和二十九年二月。日光。父殺しの記憶を持つ娘に惑わされる劇作家。消えた三つの他殺体を追う刑事。燃える碑の妖光に翻弄される学僧。失踪者を追い求める探偵。死んだ大叔父の声を聞きに訪れた女。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。 京極堂、関口、木場、榎木津らシリーズ主要キャストが揃い踏みというだけで鳥肌モノ。そして、頭は猿、手足は虎、尾は蛇という鵼の如き異様な絡まりがもたらす眩惑は、このシリーズならでは。
0投稿日: 2025.11.02
powered by ブクログ読んだ本 鵼の碑 京極夏彦 20250929 1300頁弱。持ち出して電車で読むわけにもいかず、枕元に置いて寝る前に読むんだけど、手に納まりきらずに腱鞘炎になりそうになりながら、それも歳で横になるとすぐに寝てしまう。枕元に半年以上あったんじゃないかな。そんなこんなで家から出してないのに、表紙はよれよれ。まあ、それが京極夏彦だからな。 それにしても、久しぶりの百鬼夜行シリーズ。もう終わってしまったのかと思ってたのに、帯には次回作の予告も載ってました。 いやー半年、1200頁くらいになっても、これはって事件が起きない。え、これまでの出来事だけしか起きないの。とかって思いつつ、読了。前作なんか完全にアクション小説になっちゃってたんだけど、また原点回帰どころかえらく地味なお話になりましたな。こういう裏切り方を京極夏彦はわざとやるんだよな。でも、キャラクターが刷り込まれてる上に蘊蓄が止まらない。次も買っちゃうんだろうな。
0投稿日: 2025.09.30
powered by ブクログ本の暑さが凄い解説も入れて、1286ページ!違う作家さんのレンガ本見た事が有りましたが、初めて読んで文字が綺麗で読み終えるとなんか、良い感じになりました。
0投稿日: 2025.09.02
powered by ブクログやっとここまで来れたこのシリーズ。今回は登場人物が多すぎるように感じた。事件らしい事件は起きず、陰謀を暴く印象が強い。蘊蓄などで混乱して来たら木場や榎木津が整理してくれるというか、そういう型はいつも通りで良かったのだが。 しばらく間をおいて姑獲鳥から読み直そうかな。そうしたらまた感想も変わるだろう。
3投稿日: 2025.08.01
powered by ブクログ17年ぶりの百鬼夜行シリーズ本編。ページ数は相変わらずだが内容は以前のおどろおどろしい雰囲気が幾分減り、中禅寺の蘊蓄も比較的わかりやすくなった様な気がする。言い方が適切かどうかは分からないが「分量以外は読みやすい」と言ったところだろうか。 約1名を除いて現行の登場人物は不幸に見舞われなかったのもすっきりした読後感の要因だろうか、ミステリーとして楽しく読めた。 ただ、シリーズ全体通して見ると箸休め的な一編であることは否めず、堂島大佐あたりの扱いに苦慮しているのだろうなとは感じた。次の話が出るのはいつだろうか。
1投稿日: 2025.07.20
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いつもの通り見事な構成。 中禅寺が気心知れた(?)相手にはしない丁寧な対応をしているのを見るのが好きなのだけど今回は築山さんや仁礼さん相手にそれがたくさん見られて楽しかった。あとめちゃシゴデキで何か嬉しい。 多分色んなテーマが今作には盛り込まれていると思うけどコロナ禍以降特に顕著になったように思う陰謀論について、なるほど鵼のようなものなのかもなと感じたりもした。 ただ読み進める熱量をそれほど得られず読み切るのに時間が掛かった。 ひい。ひょう。と、寂しい鵼の声がよく似合う締め方で、それでも読後感は悪くない。
1投稿日: 2025.06.15
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なるほど、鵺の各パーツに各々が背負う物語を嵌め込んで収斂させていく構造になっているのか…と感心しつつ読んでいったわけだが、巻末の解説で小川哲氏がそのあたりを至極的確に詳述されており、私などの出る幕はないのでそれはひとまず置いといて。 前作の時にも感じたが、今作においても、令和の現代になってようやく声高に議論されるようになってきた種々のトピックスがふんだんに盛り込まれている。 例えばジェンダー平等であったり、ハラスメントであったり、陰謀論やフェイクニュースであったり、無戸籍国民の問題であったり。 中でも原子力を巡る諸々については作品全体の中核を成す柱の一つといって過言ではない要素になっているし、はたまた今の日本政府や自公政権を揶揄しているとも取れる描写もある。 著者が現代社会における”分断”を強く憂いていることは共感を以て良く理解でき、その帰結としてインクルーシヴを説いているのだろうと思う。 ただ、昭和20年代後半と思しき当時に木場が「女医」という単語に引っ掛かって気にする…というくだりは明らかにやり過ぎだろう(笑)。 論点はずれるが、かつて無毒とされていたヤマカガシが毒蛇であると公式に認められたのは1970年代のはず、それなのに門外漢の京極堂が”ヤマカガシには毒があるらしい(しかも2種類の毒!)”という主旨の発言をするのも、あまりに後出しじゃんけん感が強く、違和感が残る。 京極堂といえば、例に漏れず今作でも長広舌を打つシーンが何度もあり、言葉を選ばず評すれば、屁理屈めいた衒学が冗長過ぎて肝心のプロットがぼやけてくることも…というのももはや近作ではお馴染み? であるが、日本人の宗教観について語られている内容には首肯した。 そのプロットについて言えば、さすがに微に入り細を穿ち、水も漏らさぬ完成度に仕上げられている。 これだけ複層的で枝葉が四方八方に伸びた巨大な楼閣を破綻なく組み上げる手腕には、心の底から恐れ入る。 そしてこれも解説で小川氏が触れられているが、「巷説百物語」シリーズとの繋がりが明白に示されたという点において、古くからの読者にとっては嬉しいばかり。 私も読んでいる最中、なんとなく引っ掛かりというか、記憶の引き出しの奥をつんつんとつつかれているような感覚を随所で得ていたように思うが、最後の最後で笹村市雄が姿をくらます際の所作を見るにつけ、はっきりと自覚された次第。 なるほど、市の字か…。 「信仰は人が生きるための、生き易くするための方便です。(後略)」 「(前略)でも宗派も何もなくたって、信仰心と云うのはあるのじゃないかな。結局はそれが常に下地としてあると云うか――」 「畏れ、崇め、敬うべき対象だよ。この土地では山――なのかもしれない」
1投稿日: 2025.06.12
powered by ブクログ1300ページ近い、とても読みごたえがあって、久しぶりに京極さんの小説を読めてとても満足。文量的に一気読みはなかなか難しい。しかし時間を空けると前回の謎や人とのつながりがわからなくなってしまう。なので私は人物相関図をメモしながらよみ進んだ。これで読み進めているリアルタイムで謎解きや、こことここがつながっていたのか!においつけるのでお勧めです。 京極さんらしい、優しい終わり方で後味すっきり。でも、ちゃんと謎解きや殺人は出てきます。蘊蓄もとてもおもしろい。けど東照宮をめぐるところは理解がなかなか追いつかなかった。 京極堂が、今回もしっかり憑き物落としをしてくれます! 人の思い込みはとても根深く、人生を左右するものだなあ。
3投稿日: 2025.04.10
powered by ブクログ別々の事件に見えたそれぞれの案件が、最後に京極堂の手で鮮やかに集約されていく。それこそ、本作の主題である鵺のように。 相変わらずの鈍器本で、読み終える頃には息も絶え絶えだった(ガチ ほんと読書もパワーが要るなあって久しぶりに痛感した。10代〜20代の頃は、一日2冊文庫本読んで、続きが気になりすぎて閉店間際の本屋さんに駆け込んだもんね…。森博嗣のS&Mシリーズって言うんですけど…(聞いてない もうあんな読書はできないな。ちょっと寂しい。
3投稿日: 2025.03.21
powered by ブクログ17年ぶりの今作、本屋さんに立ち寄っては文庫本が出てるか毎回のようにチェックして購入。待ちに待った分厚い本は今までと筆の走らせ方が違うなぁと。毎回お馴染みの頁を捲り返す儀式が行われることなくあっさり読み終わってしまった。裏を返せば今までのシリーズの中で一番読み易かった。次回予定作『幽谷響の家』も文庫で待ってます!
0投稿日: 2025.03.10
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久しぶりに百鬼夜行シリーズが読めて嬉しかったです。今回は、事件に首突っ込んでいく感じじゃないためか、悲しいとか遣り切れないとか、そんな深みに嵌らずに読めました。 複雑さはピカイチでした。今まで、全然関係なかった物語が、一つに集約されていくお話は結構ありましたが、このお話は最後、全部散らかっていきました(笑)。微細に関わりが強固になっていると思わせておいてのすれ違い。凄すぎました。
0投稿日: 2025.03.09
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この本を読む前に、念のためシリーズの既刊を調べてみた。 『邪魅の雫』だけ、読んだ記憶がない。 他はうっすらと思いだせるのに、これだけがまっさらということは、読み忘れていたか? と焦ったが、読書記録を調べてみたらちゃんと読んでいた。 内容も、自分のネタバレなしの感想でちゃんと思い出せた。 よかったよかった。 古いものほど思い出せるのは、それだけ何度も思い出したからなのだろう。 『人の思いを察することのできない、幼稚化し肥大した自我・自意識しか持たない人たち。 この作品のこの事件と、私の世界のあの事件が繋がっている。』 前作を読んだ感想に書いてあった自分のことばであるのに、もう、私の世界のあの事件というのがどの事件のことなのかはわからない。 けれど、今作はそれ以上に作者がこのシリーズに事寄せて、現実の社会に物申している気が色濃く感じられた。 鵼(ぬえ)というのは、頭は猿、体は狸、尾は蛇、手足は虎の姿をしているという。(諸説ありますが) そんな生き物はいるはずがない。 とは思うのだが、あちらからもこちらからも目撃情報や文献が出てくると、何らかの生き物が見間違えられたかして存在していたのだろうと思う。 にしても、つぎはぎすぎる。 そしてそれは、今作の作品の構造と極めてよく似ている。 いくつもの話のパーツがつぎはぎなのだ。 同じ人物が少しずつ様相を変えて別人の話に関与してくる。 本来つながっていると思われる人が見つからなくて、関係ない人が見つかるというもやもやとした気色悪さがキメラ状になって物語を織りなす。 なのであらすじなんて書きようがない。 あらすじは書きようがないけれど、先日マタギが主人公の本を読んだばかりだというのに、今作もまたマタギがかかわってくる話だったことに驚愕。 これは何かの陰謀でしょうか。←んなわけない 最初に関口が登場したとき、まだその名前が出てくる前から関口だとわかった。 うつむいて、もごもごと不明瞭なことを話す男は、それは関口だ! 例えば木場のシーンになると脳内に宮迫博之の顔が浮かぶ。 榎木津なら阿部寛だ。 京極堂はたいてい後ろ姿だ。またはうつ向いた横顔。 めったにその顔が脳内に現れることはないが、現れるときは堤真一だ。 でも、関口には顔はない。 作中では猿のような容貌と書かれているけれど、うつ向いているのだから見えようはずがない。 何年たっても揺るがないイメージ。素晴らしい。 17年ぶりのシリーズ新作なんだそうだ。 ずいぶんと間が空いたものだ。 そしてこの間にあった事件や事故や災害が、この作品の中に見え隠れしている。 『断罪は司法に委ねるべきだ。どんな形であれ一般人に罪科の決定権はないし、決定していない罪に斟酌することは無意味だ。こと刑事事件となれば、道徳や倫理で判断していいものではないだろう。』 妙にタイムリーだが、もちろんこれ以前から行き過ぎた正義感というのは問題になり、事件も起きていたわけで。 『夢の未来エネルギイ、現代の錬金術、魔法の万能技術――原子力はそう謂われ続けていたんだ。(中略)そんなものはない。メリットは必ずリスクを伴うんだ。リスク管理こそが何よりも肝要だろう。しかし信奉者にそんなものは見えないんだよ。』 リスク管理をしておいて損はないと思うんだけど、いつも後回しにされるのよね。 『化け物は、人と人、文化と文化の間に置かれる緩衝材のようなものなんです。』 今の世は、自分と他者との間の緩衝材がことごとく取り払われて全力でぶつかり合っている、妙にギスギスした時代だと思う。 世界を見ても。
1投稿日: 2025.02.04
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読み終わった!という達成感と、残された空虚感。この空虚感は、今回の事件に翻弄された登場人物が感じたものと同じと思われます。別々の事件が重なり合い 収束していく様子にワクワクしていたのに、蓋を開ければ何もない、まさしく鵼そのものな物語だったのでした。
1投稿日: 2024.12.16
powered by ブクログかなり久々のシリーズ新刊。 いつも通り長い。 旧作より謎があっさりしており、おどろおどろしさも少なく、その点が少し物足りなかったかな、と言う感想。
0投稿日: 2024.12.14
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期待通り楽しく読むことができた。 今までの作品と比べると、舞台となった日光の歴史についての言及が多く、トラベルミステリー的な要素が強かったように感じた。本作初登場の緑川佳乃は、病理学者として地方大学の医学部で助手をしていて、中禅寺や榎木津、関口と幼馴染でもある。小柄だが非常に聡明なキャラクターで、今後の作品で活躍しそうな予感を抱いた。 毎度の事ではあるが、京極堂の説教は心に沁みる。しかし、本作の京極堂の説教は他作品とは違う印象を受けた。以下、少しだけ触れておく。 「違うんだよ緑川君。...。化け物とは、異った文化習俗を持つ他集団との間に生まれる恐怖、軋轢や齟齬そのものなんだ」 中略 「化け物は、人と人、文化と文化の間に置かれる緩衝材のようなものなんです。...」 中略 「居ないものを居ることにすると云う優れた文化はどうやら廃れてしまったようです。...」 これらのフレーズからは、メタフォリカルなモノの捉え方が軽視され、科学的合理主義や個人主義的思想に時代が移り変わっていくことに対して京極堂が諦観の念を抱いているように読み取れ、切ない気持ちになった。本作の時代設定は昭和29年であり、歴史的には高度経済成長期に突入する前年という時代設定だ。 日本がこれから先進国へと成り上がっていく変革期にあって、時代の流れに翻弄されながらも逞しく生きるキャラクターの姿に勇気をもらった。
11投稿日: 2024.11.27
powered by ブクログ日光を舞台にした百鬼夜行シリーズ 邪魅の雫から17年ぶりの新作 シリーズは一度読んで、もう一回読み返したけど、前のストーリーも細部までは覚えてない でも、登場人物達が、これまで何を見て何をしてきたか、何をできなかったかなど踏まえた物語になっているので、やはり古参のファンとしてはぐっと来るものがある 特に、関口、木場あたりはこれまでの自分の行動が事件にどう影響を与えたのかを意識している 榎木津はまぁ、いつもの榎木津だ 旧日本軍の遺産を取り扱っている点で、塗仏の宴や邪魅の雫に通じる物がある あと、魍魎の匣もそうか 巷説百物語シリーズとの交錯 そんなわけで書楼弔堂も関係してくる 両方のシリーズを読み直したらまた何か気づくものがあるかも 鵼という妖怪について 羽がないのに何故飛ぶのか? 何の動物なのか不定 要は、わけのわからないものの象徴なのでしょうねぇ そして今回の様々な事件や事情も入り組んで絡まっているからこそ、全愛憎がわけわからなくなってくる 果ては、本来とは違ったものが見えてくる なるほど、確かに鵼だな そう言えば、今作は殺人が起こってないな 過去の殺人や遺体消失を取り扱ってはいるが、「今」の時点で死体が出てこない 関口くんは事件に巻き込まれ過ぎだもんなー 世の中のネタとして、名探偵と同じホテルに泊まると逃げ出したくなるというものがあるけど このシリーズの場合は京極堂ではなく関口くんの方がそのポジションだろうか ここに来て重要そうな新キャラ緑川さん 合法ロリなのか、幼く見えるけど、昔の京極堂や榎木津とも面識がある 一体何があったんだー! 気になるじゃないか! もしかして、この後にスピンオフの作品でその編の事情が描かれたりするんだろうか? それにしても、タイトルが明かされていたのに中々出版されなかったのは、作中で原子力について触れているからか?と邪推してしまう 東日本大震災の原発事故の影響とかあったのかね? 元々そんなストーリーだったから出版を控えていたのか、事故があってから書いたのか いずれにしても時期が悪いわなぁ そして帯には次回作のタイトル「幽谷響の家(やまびこのいえ)」が記載されてあるわけだけれども、今度は何年後になるのかね?
3投稿日: 2024.10.22
powered by ブクログ文庫版まで待ってようやく読了 まずちゃんと目録を見ないで読み始めた私は蛇虎貍猨とストレートに尾から頭が見えてきたら鵺なんだ 。と安直な考えで読みだしたので序盤から見返すことになった笑 そんなわけはない笑 絡む絡む。京極先生の作品は1000ページを超えても後半に行けば行くほど読むスピードが速くなっていく。疲れるどころか疾走感。そしてきちんと最後は鵼だった。蛇もいた虎もいた貍も猨も。だけど最後は鵼だった。そしてここで気づく。あれ?いつから鵼になった???私はずっと鵺を見ていたはずなのに。読み終わったのにすぐさま読み直すことになり、私はまだ読了していなかったことに気づく笑 読み終わることがすごく悲しかったのに読み終わっていないことに気づいて、一度目を通した今またワクワクしている。 この本が出るまでに17年かかった経緯を考えると、私がこんなに今楽しく面白く読めるには17年は必要だったと思うので、時間の大切さも感じた一冊。 さて丁寧に2巡目読みますか。多分1巡目読み終わって、色々なものに気づいて2巡目と目を通さざるを得ないのは私だけじゃないはず笑
0投稿日: 2024.10.22
powered by ブクログまず目録(目次)の時点で思わず目を閉じて天を仰いだ。 久しぶりの京極堂。そうだったそうだった。 本が鵼そのものになる瞬間。 子を産んでから重厚な活字を読めなくなっていたので、この厚さを本当に読み切れるのか不安に思っていたが、そんなことはまさしく杞憂。この圧倒的な構成力。理の力。 鵺が現れ鵼が絡みついたと思ったら全てが消えていく。 卑小な人間の営みを妖怪のせいにするなど決してさせぬ京極先生の妖怪愛。 読み終えた瞬間からこの量をまた一から読み直したくなっている自分自身に驚き苦笑する。
1投稿日: 2024.10.17
powered by ブクログ百鬼夜行シリーズ待望の十作目。永らく出なかった新作だけあって悦びも一入、じっくりと時間をかけ味わって読ませて戴きました。 嘗て読み漁ったシリーズ作品の懐かしき登場人物達の躍動に心躍るばかりです。 肝腎の内容に関しては相変わらず圧倒の一言に尽きます。一体何うやって斯様な御話を考えているのか。此が一人の人間の脳味噌から出て来ると言うのが俄かには信じられぬ程です。 巻末の解説で小川哲氏が触れていますが、本作の圧巻は何と言っても其の「構造(構成)」でしょう。一つ一つは独立した違う御話に見える複数のパートで構成され、謎が解明に近付くにつれ其々が連関していきます。然し全てのパートが収斂し、真相に至ろうとした瞬間、一気に全体像は胡乱になってしまう。 正しく作品の構造それ自体が鵼という化け物のメタファーになってしまっている。脚が虎だと云う事は見れば分かる、頭が猿だと云うのも判る、胴が狸で尾が蛇だと云う事も又然り。然しその集合体であるところの本質は一体何なのか。一見したところでは容易に正体が摑めない。何やら妖しげな化け物の相(すがた)が立ち現れる。 期待に違わぬ労作、価値有る読書となりました。因みに以下のフレーズが気に入っております。 むずかりたいですなあと鳥口は云った。 それを云うならあやかりたいだろうと御厨は思 ったのだが、益田もトラキチも何も云わないので 黙っていた。
4投稿日: 2024.10.06
powered by ブクログ邪魅の雫から17年 物語上は一年も経っていないようだが作者の本作品に対する描き方は過去作と比べてかなり変わったように感じた。 今までのような凄惨な事件や、緊張感が極度に高まるようなシーンが非常に少なく、結末に至ってはなんというかかなり斬新な終わりだった。 ただ陰謀論や原子力開発など現在にも関係するような物事をしっかりと照らしつつ、登場人物たちの人物像を掘り下げ、特に遺された人たちの思いや寂しさを感じさせる場面が多く、個人的には静かなミステリー小説としてすごくささった。 クライマックスにおける別シリーズ作品とのささやかな交わりも切ない展開だったこともあり、読み終わったあとの読了感というよりは心に本作が残りつづけるようだった。
3投稿日: 2024.09.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
文庫化したと知り勇んで買いに行き、書店員に、大変でごめんなさいと頭を下げてカバーを掛けてもらいました。 レギュラーメンバーほぼ勢揃い、ただし各パート視点人物はゲストキャラクター。 実はそんな大層な事件は起こっていませんでしたよ、というのがオチ。まぁ鵼らしいといえばらしいのか。 それにしても、この落ち着いた筆致で退屈せず1,300ページ読みきれちゃうのが凄い。凄いのは私ではなく、読ませる文章を書く作者です。 与次郎と小夜のことは忘れていましたが……そんなにがっつり繋がっていたとは。 これはもう『後巷説百物語』再読するよね! あ、弔堂シリーズとも繋がりがあるのか。 ノーマークだったから読まねば! こうして広がる京極夏彦作品読破の網の目。いやぁ愉しいですね。
4投稿日: 2024.09.27
powered by ブクログ長過ぎます。長過ぎるのは如何なものか。読み易い文章で飽きることはないのだけれど、登場人物が間を置いて出てくると、どんな人で何をして何を言ったか、忘れてしまっていて困惑します。
1投稿日: 2024.09.19
