
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み初めには想像もしなかった、圧巻の読みごたえ。 ドラマティックな物語展開。 知らなかったことを知り、知らなかったことを恥じる。 けれども少女の視点で語られる口調は、読者を決して拒むものではない。 小4のマヤはお母さんと二人暮らし。 ある時お母さんが連れてきた恋人のクマさんは、スリランカ人。 変わった料理を作ってくれたり、面白い話を聞かせてくれたりするクマさんを、マヤはすぐに好きになった。 お母さんが倒れて入院したとき、クマさんが泊まりに来てくれたから、マヤは一人の恐怖と戦わなくてすんだ。 いろんなことがあったけど、ようやく二人が結婚しようとしたとき、クマさんが逮捕された。 普通に就労ビザを持って日本で働いていても、会社が倒産したりして無職になれば、あっという間に不法滞在外国人になってしまう。 そうなると施設に収容されるか、されないにしてもかなり行動を制約されてしまう。 就職してはいけない、居住地している都道府県の外に出てはいけない、国民健康保険に加入ができない。 要するに「さっさと国におかえりください」ということだ。 日本で生まれた子どもでも、両親が不法滞在になってしまうと退去させられる。 クマさんを家族に取り戻すために、ミユキさんとマヤの長く苦しい戦いが始まる。 日本人同士なら、家族が家族でありたいことにこんなにつらい思いをしなくてもすむのに。 いったい何の罰を受けているのだろう。 3ヶ月ほどビザなしで滞在したために、一年以上も収容されて、体調が悪くても医者に診てもらうことすらできない生活。 おかしいじゃないか。 タイトルの「やさしい猫」とは、スリランカの民話。 エサを取りに出かけた父ねずみと母ねずみが帰ってこない。 子ねずみたちは通りかかった猫に泣きながら訴える。 猫は自分が食べたねずみの子どもだと気づき、自分の子どもと一緒に育てるという話。 強者が弱者の立場に気付いた瞬間の話ではないかと、マヤの友人ナオキは言う。 いろんな、胸が苦しくなるようなエピソードがたくさんある。 知らないことは罪だとは思わないけれど、知らないことは弱者が生きていくためには大変不利である。 目からうろこと涙をぼたぼたこぼしながら読んだ。
1投稿日: 2025.11.04
powered by ブクログとにかく勉強になります。 小説として満足させてくれる上で、勉強もさせてくれるのがこの本のポイント。 私にとって外国の方は道ですれ違うだけの存在。なかなか問題に向き合うきっかけが作れない。 何年か前にスリランカの女性が収容中に亡くなった件や、"クルド人"や"難民"などのワードがニュースで出るたびに、そろそろ自分も知識をつけなければいけないのでは?と思っていた。が、恥ずかしいことに、何も調べられていなかったのが現状。 この小説は登場人物の描写が細かく、みな生き生きとしているので、描かれている出来事が自分のすぐ目の前で起こっているように感じることができる。自分が当事者であるかのような錯覚によって、もっともっと知りたいと思うようになり、説明的な部分もすんなり頭に入ってくれる。もちろん、感情移入もしやすいので、ストーリーとしても満足できるのです。
6投稿日: 2025.10.07
powered by ブクログ恥ずかしいくらい何も知らなかった。読めて良かった。やさしい猫は、猫の覚醒かもしれないけど、「やさしい猫」っていうタイトルに、人の本質を信じている希望があるのかもって思った。
0投稿日: 2025.10.06
powered by ブクログ日本に来て暮らしている外国人の苦労を知りました。 でも、ほんの少しです。まだまだ知らないことがこの年になってもあるんだと実感しました。 日本がもっと外国人に寛容で理解をしてくれる国になることを願います。
0投稿日: 2025.08.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
キリスト教と社会という大学の講義で、難民問題について、在留ビザについて学んだ。学問として知ったことが現実で起きていると、肌で感じることが出来たのはこの本のおかげだ。 クマさんが受けてきた差別は、とてもリアルで、差別する側の人たちの気持ちも日本人としてよく分かるからこそ、私はやさしい猫、覚醒した猫にならなければならないと思う。 外国人を人とも思わない入館管理局の行いは、「追い出してやるぜ」というメンタリティに貫かれた行動は、裏返すと私たち日本人の、マジョリティの考えの現れとも言える。それを正しく理解するべきだと強く迫られる気分になる本だった。
1投稿日: 2025.07.09
powered by ブクログなんて尊い家族! なんて優しく温かい物語! でも、なんて酷いこの国の差別と偏見! 本書を読みながら、ずーっとそんなことを考えてました。 震災ボランティアで出会い惹かれ合った2人、スマトラ出身のクマさん(24歳)とシングルマザーのミユキさん(32歳)、そしてミユキさんのひとり娘・マヤ(8歳)。物語は、一貫してマヤから"きみ"へ語りかける形式で綴られていきます。 諸々の困難を乗り越え3人は家族となるも、クマさんの在留資格が切れ、不法残留で東京入国管理局に収容されてしまいます。そこからクマさん返還のため、ミユキさんとマヤの闘いが始まります。 入管制度がこれほど重く理不尽な制度だったかと思い知らされました。しかし本書は、法的政治的な訴えの論調ではなく、リアルな家族小説として読みやすい点が実に優れています。マヤの存在と語り口が絶妙でお見事です。この優しい語り口が、非人道的な制度をより浮き彫りにしている気がします。 本作の刊行とほぼ同時期(2021年)、スリランカ国籍のウィシュマさんが名古屋の入管施設で亡くなる事件がありました。何となく思い出しましたが、その段階では他人事で済ませていた自分を恥じ、改めてこの物語の現実とのつながりを実感しました。 人権が尊重されない現実社会に一石を投じる"やさしい"物語として、とても価値ある一冊でした。 マヤが語りかける"きみ"は、これから生まれる未来を担う存在であり、読み手の私たちでしょう。マヤの語りがきっと未来に光をもたらす傑作でした。
117投稿日: 2025.06.01
powered by ブクログ面白かった! 1日で読んでしまった。 スリランカ人で優しくて楽しいクマラさんが、東北の震災でボランティアしていたときに会ったミユキさんとその娘マヤとの家族の愛の話。 右葉曲折して結婚に至ったクマラさんが会社を解雇され就活中にオーバーステイになってしまう。 結婚証明を持って入管に相談に行こうとするクマラさんが途中で警察に捕まってしまい、勾留されてしまう。 外国人が日本で働き続けるのが難しい現状が、日本が外国人に対する永住権を認めない現状がよくわかった。世の中、知らないことが多すぎるな、と思った。
6投稿日: 2025.05.10
powered by ブクログ猫好きの私のために「猫」がつくタイトルを見て夫が図書館で借りてきてくれた本。 だが全くタイトルからは想像がつかない話だった。 USHIKUというマイナー系映画館で外国人の収容所の理不尽さは見たことがあったが、本当に大変な思いをさせてしまっていることに心が痛む。 日本は性善説の精神が素晴らしいところなのに、 島国だからか閉鎖的で外国籍の方々には偏見や差別がまだまだ多い現実は否めない。 一方で日本の制度を悪用する外国人もいる。 なかなか難しいところだが、国籍関係なく、上手く線引きが出来るようにしたいものである。
3投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログあっという間の一気読み マヤという女性が 自分の昔話を誰かに語って聞かせる 帯書きなどを読んで 外国人との結婚における 差別にフォーカスするのかなと思っていたら 言葉では聞いたことがあったけど 全くの知識不足な世界を垣間見る そして自分の中の暗い気持ちにも 目を向ける機会になった 家族が揃って生活できること 結婚の理由 日本という国が抱える問題 いろんなことが ぐあーって頭に襲いかかってきました 考えさせる部分と 胸に襲いかかる熱い気持ちに 忙しい読書時間でした とりあえず 自分の国の社会保障のこと 学んでみたいなと思って そのための本も購入してみました
1投稿日: 2025.04.15
powered by ブクログマヤのまわりのミユキさん、クマさん、そばにいるてくれるとスパイス効いてるナオキくん、そして頼りになるハムスター先生などなど。ほんとに心に残る話でした。
1投稿日: 2025.03.20
powered by ブクログ在留外国人と聞くと、どうしても文内にもあるように悪い話をイメージしがちだ。しかし、ちゃんとした人たちももちろんいる。そんな人たちが、周りのサポートを得てちゃんと評価されていく様は痛快!最後は胸のつかえみたいのがごっそり抜けました
1投稿日: 2025.02.01
powered by ブクログ名古屋のオーバーステイで収容されて亡くなった女性の話が全てだと思うホント人間じゃない腐った生き物達だから亡くなった。クマさん何度も倒れたのに無難な放置するのも同じ 上原の前に対応した審理官も裁判の名前を言わせた検事も あーいうのが出世するから組織は変わらないし、本気で外国人を統制してるならクルド人が問題になっている筈がない、と前置き長いけど中島京子さんよくぞよくぞ描いてくれたって、現実の体験があるからここまで真実を伝えられる。ほぼ裁判についてだけど、こんなんナンボあってもいい、カナダと比べる場面あったけど日本って遅れてるのが治らない、なんで?失われた30年 嫌な世の中を仕方ない当たり前の世の中と思う、高い税金払ってもキックバックする国会議員ってなんなんだ。
21投稿日: 2025.01.01
powered by ブクログ「やさしい猫」は、語り手のマヤに義父となるクマさんが話して聞かせてくれたスリランカの寓話だ。 のちにマヤの友達のナオキくんがそこに込められた意味を解いてみせる(ただしその真偽は明かされていない)。 最近、仕事の関係で、日本に住む外国人にはさまざまな在留資格があって、就ける仕事も細かく指定されていることを知ったのだが、本書はさらにそんな彼らを管理する入管の実態を教えてくれる。 もちろんこれはフィクションだが、たとえばノンフィクションを読むよりずっとリアリティを感じる。知らなかったことをまた一つ知れた。 重苦しくなりがちなところだが、思春期の女の子の視点で描かれていて、受入れやすい。
3投稿日: 2024.12.22
powered by ブクログ友達に勧められて読んだ。外国人の彼と家族の物語。家族一緒に暮らすことが、こんなにもたいへんなのか。家族3人の裁判の様子に、胸が苦しくなった。最後まで読んで、ああよかった、と思うのと、現実の厳しさ。知らないことが多すぎる、知らされていないことが。
4投稿日: 2024.11.12
powered by ブクログ自分の無知を思い知らされた。 まだまだ自分にとって身近な話とは思えない問題であり、その問題の重さが読み進めるごとにのしかかってくるようだった。 結末が途中で読めてしまい、わかっているはずの結末にたどり着くまでの手続きが長すぎて非常に疲れた。 考えすぎて、感動に至まで至らなかった。
1投稿日: 2024.10.19
powered by ブクログ中学校で外国籍の生徒に日本語指導をしています。日本語が専門ではないので、なかなか大変です。子ども達は自分の意思とは関係なく親の都合で連れてこられた子、学校では日本語を使いますが、家では日本語以外の母語を使っています。 夏の研修で、日本の入国管理について学びました。その話を学校司書さんにしたら、この本を貸してくれました。 以前名古屋の収容施設で亡くなられたウィシュマさんが牛久観音の前で撮った写真を見たことがあります。なぜ牛久?と思いましたが、入管と関連性があったのかもしれないですね。研修では、入管審査は審査する人で変わると言われ、いい人に会うかどうかは運ともいわれ?が飛びましたが、この小説の中にも裁量という言葉が使われ納得しましたが、それでいいのかなぁと疑問も。 これが、技能実習生や日系外国人を受け入れる日本の実態。 労働人口が減るという数値的なものばかり主張していて、来る外国人には冷たい、こんなのが日本だと思うと、そのうち誰も日本に来なくなるんではと思ってしまいます。 日本ってそんなにいい国なのかなと。いい国だと思って来た人の期待を裏切ってるかもしれないなどと考えてしまいます。 課題が大きいし、多すぎる。 日本語を話す外国人、それもアカデミックレベルが理解できる外国籍の人って尊敬しかありません。
4投稿日: 2024.10.05
powered by ブクログ中島京子さん「やさしい猫」読了。入管システムという重い課題を極上のエンターテインメントに仕上げる手腕に脱帽!
2投稿日: 2024.09.22
powered by ブクログお父さんが亡くなってから、母のミユキさんと2人で暮らしてきたマヤ。 保育士として働いていたミユキさんは、東北の被災地で炊き出しを手伝うことになり、そこでスリランカ人のクマさん(クマラさん)と出会います。 娘思いのシングルマザーミユキさんと、真面目で真っ直ぐな青年クマさんは、ミユキさんの母にもようやく許しをもらい、やっとの思いで結婚するのですが、婚姻届を出したあと、在留資格の手続きに東京入国管理局に行ったクマさんは、警察に捕まって収容されてしまいます。 私たちの住む日本という国が、外国人にこんなにも厳しいなんて知らなかった。 日本人同士なら法に触れないのに、外国籍の人と日本人との結婚は何かと問題にされるとか、外国人が日本語を読めないのをいいことに、無理やりサインさせて不当に解雇したりとか、理不尽な現状を知って驚きます。 ミユキさん、クマさん、マヤちゃんの三人は、優秀な弁護士の先生と出会って裁判することを決意します。 三人で幸せに暮らすための、長い長い戦いが始まるのです。 この小さな家族の物語は、”きみ"に向けて、娘のマヤの目線でやさしく語られていきます。 国籍なんて関係なく、この世に生まれてきた一人一人の命がとても尊いものだということを忘れないでいたい。 少しでも多くの人にこの本を読んでもらえたらよいなと思います。
46投稿日: 2024.09.12
powered by ブクログ無知は罪と、改めて思わされました。それも、知らないなんて!と、責め立てられないスタンスなので、じんわり沁みます。解説がまたいい!その通りっ!!はぁ〜めっちゃよかった!!
2投稿日: 2024.09.04
powered by ブクログ小さな家族を見舞った大事件。幸せが奪われたのは、彼がスリランカ出身の外国人だったから。温かな語りで描く圧巻のドラマ。吉川英治文学賞ほか受賞続々の話題作。
1投稿日: 2024.08.29
powered by ブクログとにかく読んでほしい。誰でも読んでほしい。最近読んだ本の中で、これほど「読んでよかった」と思えた本はない。 とにかく私のイチオシです。読んでください。 素晴らしい本です。
2投稿日: 2024.08.08
powered by ブクログスリランカの子どもの本が題名のヒント 入管法、外国人という言い方、偏見を考えさせられた。子どもの立場からかいてある
1投稿日: 2024.07.28
