
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ダニーの人生は終わった。 もっと過酷な運命が待ち受けていると思ったが、最後は以外にも平穏な日々が待っていた。 ロードアイランドで生まれ、逃亡し、西海岸で一旗上げて、ラスヴェガスで成功する。 しかし、欲望と憶測とちょっとした偶然で抗争が始まる。 最後、ダニーはラスヴェガスの利権を手放し、命をかけて復讐する。 ダニーの物語は何だったんだろうか。 アメリカの暗部をさらけ出し、移民、人種に通じた血を血で争う抗争を描きたかったのか。 今までの作者の犯罪小説に比べたら、ライトでカジュアルだ。 映画を見るようなスタイリッシュでクールな感じもする。 作家として最後の最後まで、作品ごとのスタイルを模索した結果だったのかもしれない。 これで、作者は筆を置く。 残念でならない。
0投稿日: 2025.08.29
powered by ブクログ前作でのハリウッド篇を受けて、今回はギャングと切っても切れないラスベガス篇。 と言ってもバグジー・シーゲル以来のギャングが暗躍する世界ではなく、それらが一掃された世界で、実業家としてダニーが突き進む様子が描かれる。 主人公がアイリッシュ系ギャングという事で、ギャング物、ハリウッドやラスベガスを舞台にするから「ゴッド・ファーザー」との相違点が取りざたされるのは当然だろう しかし、こうして3部作を読んでみると、この作品は、アイリッシュギャングのファミリーの一員として生を受け、そこで育ち、それ以外の価値観や規範を持てない男が、それ以外の世界で生き延びようと格闘し、もがく物語であり、ドラマとしての側面が強い。 最後に収まるべきところに収まり、物語は終わるが、ほぼ50年の時を経て、オープニングに戻っていく構成は見事で、ダニーの生涯、その生き方を象徴するラストには感動すらおぼえる。 (若干、後日談が不明なキャラもいるので、そこらは映像化の際に追加して欲しい) これでドン・ウィンズロウは引退らしいが、これだけの作品を残せるのだから、正直、こんな大作出なくても、多少レベルは下がっても、まだ作品を紡いでほしい。 これだけ傑作、しかも映像化向けの作品が多いのに、そのあまりにもスケールの大きさゆえか、なかなか映像化の話が進まないのが本当に残念。
0投稿日: 2025.04.05
powered by ブクログドンウインズロウ最後の作品。 後半のたたみかけるような展開、疾走感。ラストよかったけど、終わってほしくなかったなあ。 今作ではダニーの仲間ではネッド・イーガン、敵役ではクリス・バルンボがクールでカッコいい。ダニーの母親マデリーンもいいんだよな。 ウインズロウ復帰してくれないかなあ。
21投稿日: 2025.01.02
powered by ブクログ主人公ダニー・ライアンがラスヴェガスで実業家として成功した姿から最終章は始まる。 ラスヴェガスでカジノ事業を展開する実業家にマフィアの影は禁忌だが、ダニーがマフィア出身であることが色々なほころびから見えてくる。また、ライバルのホテル王ワインガードのマフィアとの関係も露になる。ライバル関係は抗争を呼び、ダニーの古くからの仲間や、ビジネスパートナーも犠牲になる。第2部の陽炎の市では、なりを潜めていた暴力要素が爆発だ。 最終章ではダニーの子供イアンが事業を引継ぎ、発展させている様子が描かれる。世代交代がマフィアとの関係をロンダリングしたかのようだ。 ラスヴェガスでのカジノビジネスの、公然とマフィアが関与した時代、マフィアとの関係を隠していた時代、そしてマフィアとの関係が立ち切れた時代と推移したが、マフィアマネーが元であることに間違いはない。いや、フィクションだけどね。 第1部で明らかになっていたように、ドン・ウインズロウさんは本作をもって筆を置かれる。『犬の力』3部作は面白かったし、それに輪をかけて『ダ・フォース』も面白かった。本3部作も最高に面白かった。同じ時代を生きて本作品群を読むことができて幸運だった。感謝の意を直接届けたいくらい…。
0投稿日: 2024.11.20
powered by ブクログ鬼★5 もはや犯罪小説の大河ドラマ、ラスベガスのカジノホテル経営が商売敵との抗争に発展… #終の市 ■あらすじ ハリウッドからラスベガスへ流れてきたダニーは、今や新進気鋭のカジノホテル経営者となっていた。既に成功を収めていた彼だったが、さらなるカジノ王国を築くために商売敵とホテル買収を争うことになる。 ただ強引な手段で事を進めていくうちに、過去のマフィアの亡霊やFBIたちが追いかけてくる。さらに利益に群がる新たなマフィアが彼の前に立ちはだかり… ■きっと読みたくなるレビュー 東海岸のマフィア抗争から始まった犯罪小説の三部作ラスト『終の市(ついのまち)』、堂々の完結です。 犯罪小説って欲望にまみれた汚い物語なんて思ってません? きっとあなたが思う以上にエモいし、深く深く胸を打つ物語なんです。今年イチオシの犯罪小説ですね、凄かった… さて本作のダニーはカジノホテル経営者として物語が始まる。犯罪小説ということを忘れるくらいビジネスマンとして手腕を発揮。これまで切った張った人生を繰り返している彼にとっては根回し、交渉、強み弱みを見抜く力なんてお手の物。しかも経営者としてのセンスもいいし、行動力もあるし、筋も通っていて、もはや理想の経営者なんすよね。 しかしながら過去の悪事、人脈は幽霊のように彼についてまわる。どれだけクリーンに生きようとしても、周りがそうはさせてくれないんです。敵対する組織はもちろん、本来応援すべき警察すら悪役に見えてくる。人間ってどこまでも業が深いし、遺恨ってのはどれだけ洗ってもぬぐい切れないんだよなぁ、許してやってくれよと何度思ったことか… そう、やっぱり本書の一番の読みどころは主人公ダニーの人間性なんです。愛する女性を大切できる男であり、我が子を守る父であり、困っている仲間たちを助けてあげられる。友人を大事に思い、強欲でも自分勝手でもない、頭脳明晰でリーダーシップのある優しい男。完全に惹かれっぱなしですよ、こんなの目の前にいたら男でも惚れちゃうよ。 他の登場人物もクールなんですよ、もう脳天が痺れっぱなし。商売敵のワインガードも筋の通ったビジネスマン、逃亡中だったクリスも頭脳派として光る、ケヴィンとショーンの二人組も若者ギャングらしく華々しい。 今回のイチ推しはネッドだなぁ。これまで父、ダニー、息子を三世代にわたって守ってくれた彼。人を守るとは「どっしりと構える」こと、終盤のクライマックスは今年読んだ本の中でもっともクールなシーンだったわ。 また本作のもうひとつの読みどころとして、法廷シーンもあるんですよ。かつてマフィアのドンと自身の母を殺害してしまった人物の刑事裁判。もうこれだけで一本長編を書けるんじゃねーのって内容で、重厚感と緊迫感ありまくり。鬼アツなんです! この裁判の結末、そして未来への選択が、本作に出てくる全ての登場人物を癒してくれてるようでしたね。 東海岸のマフィア抗争『業火の市』、ハリウッド映画業界『陽炎の市』、ギャンブル街『終の市』。広大なアメリカをまるっと描いた犯罪小説でありながら、人間が持ち合わせている純粋な愛情に光を照らした作品です。 控え目にいって名作、今年ぜったい読むべき三部作なのでお時間をとってゆっくりどうぞ。 ■ぜっさん推しポイント 『終の市』---終わりの街とは何処だったのか、そこには誰がいるのか。 彼が残してきたことの答えがそこにあり、ちっぽけな私の生き様なんかではとてもじゃないが受け止めきれません。私にも家族がありますが、同じ境遇だったらどこまでできたのだろうか… こんなにも壮大な人生劇場でなくてもいい。それでも大切に思う人に対しては、自分ができることを精いっぱいやり尽くさなければいけませんね。
96投稿日: 2024.11.18
powered by ブクログ一冊ずつ三年。書き継がれた三部作の遂に終わりを告げる本書。そしてドン・ウィンズロウが作家人生の終わりを告げてから、世に放たれた最後の作品である本書。何と言うべきか。堂々の作風で最後の大掛かりな仕掛けを完成してみせた観のあるビッグ・ストーリーに向き合って読み始めた本書。いつもの疾走感のある文体。簡潔、かつ重厚、読みやすいページターナー。さらに、衝撃的で突然すぎるアクション。やっぱりウィンズロウは個性の塊であり、才能の集積だ。興奮に包まれる一分一分という貴重で忘れ難い読書の時間。 約30年ほど昔、ニール・ケアリーというものすごく平凡なのにオリジナリティの横溢した主人公を引っ提げてスタートしたウィンズロウの作家人生は、現在、こんなにも巨きな物語を紡ぎ、そして鮮やかに閉じてゆく。その後、このウィンズロウという人はどう生きてゆくのだろうか? それは本シリーズの主人公ダニー・ライアンの終わりの章を読むと、なぜか作者の今後のイメージと重なりそうだ。それは様々な歓びも哀しみも、すべてを引き受けて人生を疾駆し、そして終焉に向かい合う。人の人生は、すべて重く、大きなドラマであるからだ。 読者ひとりひとりにも勿論、それぞれのドラマがあり、それらは大きな波のうねりのようにも見えれば、打ち上げられたビーチの砂粒のように、様々な形と色をした微細な破片たちの膨大な集積のようにも見えるかもしれない。あるいは、陽炎の如く、流星の如く、一瞬の儚さであるのかもしれない。一人の人間の誕生と成長と成熟と、そして死。それらは、スケールにこそ違いがあれ、いずれも同じような経路を辿るものだ。ましてや死んでゆくときに、生きた時間のスケールの違いが果たして問題になるだろうか? 命と無。この広大過ぎ、わかりにくい永遠の命題の中で、ウィンズロウという作者も、ダニー・ライアンという本三部作の主人公も、ともかく目の前の人生を生きざるを得ず、最後には死なざるを得ない。そんな命の重要さと儚さとつまらなさとおかしさと、様々な生を展開して、巨大な街を語り、世界と時とを語ってみせる、この作家の最終作が本書なのだと、意識しながら読んだ本作。 序論が長すぎたが、頂戴な本三部作の構成を振り返ってみよう。ロードアイランドで形成されたアイリッシュ・マフィアの組織の戦いと成熟?ぶりが一部、イタリアンマフィアとの間で激化する抗争と、敗走を描く二部。ウエストコーストに辿り着いた主人公たちが、ウエストコーストに身を隠し合法的商売に鞍替えしてラスベガスで再生を果たしつつある主人公とその後の経済抗争を描く本書第三部。 全体を振り返ると、アイルランド移民たちとイタリアン・マフィアがアメリカ史で果たした舞台裏的役割を、壮大な支配絵図を基に、数々の個性的なキャラクターを配置して、経済支配に誰が到達するのかを描いた暗黒史と言えるのが本三部作なのである。三作目の本書では誰もが若者から卒業し、そして成熟し、合法的な経済マフィアとして、ベガスの支配闘争に浸かっている構図である。最早、若きマフィアたちの殺し合いで片が付く世界ではなく、経済支配と組織連携によるマウントの取り合いといった様相を呈している。もはや暴力や闘争ではなく、合法的な経済闘争である。複雑に絡み合うこうした人間絵図が、本三部作では簡潔でスピーディな語り口で描かれてゆく。 マフィアという過去を隠し去りながらアイリッシュもイタリアンも、ベガスを舞台に金を積み上げて、これでもかというほどの小競り合いを繰り広げる。過去を引きずってきた戦士たちが金のなる大都会を舞台に、互いにしのぎを削るなか、闇から闇へと蠢き、やがて葬り去られゆく男や女の数は大変なものなのであり、一部と二部で登場してきた古い戦士たちは暗闇のなかで次々と命を捨ててゆく。後半部分、彼ら多くの馴染みのキャラクターが破滅してゆくシーン。その展開のスピードとスケール。人間の経済闘争が生む犠牲者や家族の不幸が何ともやるせない。アメリカ暗黒史の傑作がまた一つここに誕生したのだ。 巨大な国家の経済が生む大きなうねりを、個々のキャラクターの行動で描き切ることで、作者が展開してみせた移民闘争の地獄絵図。それを乗り越えられ生き延びることのできた者は少なく、そのために失われた命は計り知れない。ギリシア悲劇を底本にしたという、新大陸アメリカが完成(?)するまでの人間悲喜劇。それを個人という人間の、活きた目線で描いた大宗教画のような三部作がここに終わりを告げる。ウィンズロウは最後のペンを置く。半世紀近くに愛読してきたこの作家。その全作品に触れられた幸せに、ただただ感謝したい。
8投稿日: 2024.10.19
powered by ブクログはい、完結しました。回収しなかった伏線もある様にも感じましたが、なんせ年なもので、そこまで細かいことは問題ありません。素晴らしい三部作でした!
1投稿日: 2024.08.31
powered by ブクログCL 2024.8.15-2024.8.18 ダニー•ライアン三部作の完結編。 まっとうでない世界でまっとうに生きようとしたダニー•ライアンの一代記。 どれほど成功して富を得ようとも、ダニーをまとう哀しさはなくなることはなく、どこか切ない。 ジミーやアルター•ボーイズたちが集まってきてからの後半が断然面白い。 ドン•ウィンズロウ最後の作品。残念すぎる。ある書評家が書いていたようにいつだって戻ってきてくれていいんだよ。
1投稿日: 2024.08.18
powered by ブクログあぁ、読みだせばあっという間だったな。 分厚さを感じさせないのは流石のドン・ウィンズロウと言ったところか。 70歳か。パスコよりまだ若いんじゃない??笑 アルター・ボーイズの友情、美しかったなぁ。 自分も友情に対してはかくあるべしと思ったよね。 生き死にの話はともかく、似たシチュエーションはありうるよ。 いやぁ、やはり真骨頂はリカタが乗り込んできてからだよね。 そうそう、これを待っていたと。 ドン・ウィンズロウの小説はヒリヒリしながら読みたいんですよ。笑 さっきまで笑ってた人がページめくったら死ぬ可能性あるって頭のどこかで準備しながら読みたいし、この人殺さないでって人が殺されていくところを、読みたいんですよ。笑 大満足でございました。 ロードアイランド、行ってみたいねぇ。
2投稿日: 2024.08.03
powered by ブクログ三部作、 やめられなくて短期間で読みました。 すっきりと品がある文体読み易く、 殘酷な描写も 相殺されてしまうかも。 あとストーリーに夢があるのがいいですね。
1投稿日: 2024.07.21
powered by ブクログドン・ウィンズロウ『終の市』ハーパーBOOKS。 ダニー・ライアンを主人公にしたギャング小説、三部作の完結篇。 またまた、しばらく本棚で寝かせていた。最近は本を読む力が衰えたのか、読み易い国内作品ばかり先に読む悪い癖が付いてしまった。 前作『陽炎の市』の巻末に収録されていた本作の一部抜粋は、タイトルが『荒廃の市』だったのだが、またも『終の市』にタイトル変更されたようだ。気になるのは、帯に踊る『犯罪小説の王ドン・ウィンズロウ、最後の大作!』の文言。本当だとしたら、余りにも悲しい。 やはりウィンズロウの小説は面白い。ダニー・ライアンの激動の人生をその結末までをじっくり描いてくれた。そういう意味では、この最終巻は単なるギャング小説ではなく、人生訓めいたものまで感じさせる深い物語であったと言えよう。 東海岸で一人の女性を巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれたダニー・ライアンが仲間と共に自由を求め、逃亡する。仲間たちと麻薬カルテルから隠し金を強奪したダニーはラスヴェガスに王国を築き、カジノホテル業界の陰の大物にのし上がる。 しかし、ダニーの飽くなき欲望から取った強引な手段が、商売敵のホテル王であるヴァーン・ワインガードとの関係に禍根を刻み、平穏な生活は終わりを告げる。FBIとマフィアにつけ狙われ、仲間を惨殺されたダニーは、再び血の抗争に身を投じていく。 果たして、ダニー・ライアンに安息の時は訪れるのか…… 本体価格1,680円 ★★★★★
69投稿日: 2024.07.19
powered by ブクログ『業火の市』、『陽炎の市』からなる三部作の最後を飾る本作。そしてドン・ウィンズロウの作家引退作。主人公ダニー・ライアンがラスヴェガスでカジノホテル業界で大物になり、そこからさらに事業を拡大させようとしていく今作。そのために避けられないマフィアとの因縁やアメリカの権力を握っている者たちとの駆け引き。犯罪小説の面白さが存分に詰め込まれていて600ページが短く思えるほどに圧倒される。これでもう読めなくなるのが本当に残念。
1投稿日: 2024.07.18
