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異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが~職業街の人でも出来る宿屋経営と街の守り方~(ブレイブ文庫)1
異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが~職業街の人でも出来る宿屋経営と街の守り方~(ブレイブ文庫)1
影木とふ、クロがねや/一二三書房
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総合評価

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     面白かったです!  異世界なのに、日本で経験できるものがほとんど揃っているあたり、不思議でおもしろいなぁと思っておりましたが、秦氏と日本の長い歴史などを鑑みますと、むしろ、醸造の文化と牧歌的な農耕というのは、とても馴染みがあるので、読みやすかったです。詳しくは、茂木誠さんと田中英道さんの共著や、中井久夫さんの『分裂病と人類』をご覧ください。  なろう小説だけあって、苦手意識がある人は、恵まれた主人公の境遇と言動に抵抗があるかもしれません。ですが私は、そうした側面も若干感じましたが、素直に楽しむことが出来ました。是非ともそうした人たちにも読んでもらいたいです。  ヒロインふたりの視点で語られる場面を読んだら、ふたりとも好きになってしまって、もう、『俺』くんに恋してるふたりがかわいくってもぅ!照 私が なろう の苦手としているところは、記号が会話してるように見えるところです。ツンデレはこう、テンプレはこう、という具合に、決まった定石をなぞるだけで、何故、その人がこの人に想いを持つのか、臨場感がないためです。  その点、本作はその真逆を行きます。  御涙頂戴展開、上等じゃないですか。  そうまでして、誰かに好きだと伝えたい……まさに、それこそが、記号では決して出来ない、血の通った、生きている人だからこそ出来る、ロマンです。ときめきです。感動なのです。  是非とも一度、読んでみてくださいませ。  図書館で気軽にリクエストするのもおすすめです。  ※  以下、ネタバレを含みます。  感想兼雑記です。  時間の許す方のみお付き合いください。 ・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・  ラビコさんのなりふり構わない求愛がかわいい!  ロゼリィさんの幼い恋心がかわいい!  も〜、きゅんきゅんです!  どっちも好きすぎて推したい……しんどい……。  私も、一緒にいたいと思える人は、どちらかというとロゼリィさんなのですが、女の魅力で勝てないと分かっていても、なりふり構わず、身体で誘惑していくラビコさんの一生懸命な様子がもう、かわいくてかわいくて……。余裕があるふりをしているだけで、家庭に認められているロゼリィさんがいつ誘惑するものかと、気が気じゃないのよね……かわいいすぎます……。 「いいんだよ。  変な噂になろうが、そう俺が祈っていたって広がれば。  祈りってのは、多くの人の中に俺の願いが残ったほうが、より届くんだよ」 P94  このあたりの俺(アサヒ)くんの言葉も、影木とふさんの哲学が込められているように感じました。  せっかくの異世界描写なのに、驚くほど、日本の文化を大切に描いてくれていますもの。祈りこそ、縄文時代よりさらに遥かから続く、海洋民族日本の伝統であり、天皇陛下が紡いできた歴史そのものですから。  望まぬことも、そう噂されることも、それすらも、誰かと繋がっていられる貴重な縁。  本当は、人が簡単に死んでしまうということを思い出すだけで、もっと、人は人を互いに大切に出来るのです。  財務真理教にも同情はしますし、ディープステートに至っては、もともと犠牲者ですから、彼らも救われて欲しいとは思うものの、それでも、それでも、、、もう、こんな、金のために、命が軽んじられる時代は、終わりにしたいと思います。  本作で、金は生活に入り用であるものの、借金を踏み倒す扱いすら、気に止めるどころか、「あなたのためなら」と働いてくれるラビコさんとアサヒくんの関係や、提案した出資を躊躇いなく成し遂げてくれるオーナー夫婦の様子など、金はきっかけに過ぎず、人との絆や、思い出を育んでいける愛情こそが一番大切であると、間接的に描いてくれているように見受けられました。  遺伝子組み換え○クチンの死亡者数、副反応の潜在的件数は、かの原子爆弾の被害者の数をゆうに上回ってしまいました。  私たちが生きていることは当たりまえではありません。ホエー鳥からおじいさんを守ったアサヒくんの姿から、ハーメルくんのやさしさと仲間たちの武力によって野生動物の棲み分けを伝える様子から、「生きるための食べ物、水」が、いかに大切であるあるか。それが失われるだけで、簡単に人は死んでしまうのか。だからこそ、日々生きていることを確かめ合える人たちは、大切にしていこうと……教えられた気がするのです。  特に好ましく思えたのは、野生動物たちを悪者にするのではなく、彼らも一生懸命であり、私たちはあくまでも自分たちの作物のために土地を借りているに過ぎないこともまた、表現してくれていたことです。  先の中井久夫さんの著書を例に挙げるなら、キリスト教の魔女狩りとは、常に灰色狼であり、森に住む者を指していました。教会の洗礼を受けない者というのが、日本で言う、戸籍を持たない人というような、潜在的疑念を持つのは仕方がないとしても、それ以上に、彼らにとって明らかであったのは、狼と共存できるような者は人間ではないと思い込んでしまうほどに、狼を恐怖していたことが理由なのでしょう。つまり、野生動物への敬意より、恐れを取り除きたい気持ちの方が優ってしまったのです。  もちろん、現代でいえば、大切なお子さんが帰り道に食われることがないのは、保健所の皆さんが、やりたくない汚れ仕事を負ってくれているからです。そうした恩恵を受けておきながら、殺処分に残酷だ!と一事実で非難することは、かえって良識に欠けるふるまいだと思います。そのことを思えば、当時の人たちが、狼をどれだけ恐れたのか、またその背後にある子どもたちの死はいかほどであったか、同情するばかりです。  けれど、それでも、なのです。  日本も、当然、狼の被害に遭ってきました。  それでも、狼の糞を焚いて煙を起こすから「のろし」と読む読むように、日本では、作物を奪う動物たちや、自分たちを襲う獣すら、身近のものとしてふるまい、ときに敬い、祀ってきたのです。なんとも不思議なことです。  人が人の命の大切さを思い出すために、多くの命が失われなくてはならないのは、なんとも悲しいことですが、それでも、現代の多くの人たちが、そのことを思い出し始めたのは、良い傾向です。  お金と食べ物と命について、大切に描いてくれている本作の魅力が、少しでもそうした意識の助けになってくれたら幸いです。※お金については、『お金のむこうに人がいる』田内学 が参考になりました。  まだまだ書きたいことがありますが、今回はこのあたりで。  最後に、脳内劇場配役紹介です。  敬称略。  アサヒ:福島潤 ベス:朝井彩加  ラビコ:高橋李依 ロゼリィ:雨宮天    

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    投稿日: 2024.12.21