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powered by ブクログ文明の興亡は「土壌」および「食糧生産の方法」によって左右される。 文明の興亡を食糧生産の側面からパターン化し、科学技術によってあたかもそのパターンを克服したかに見える現代においても、このままいけばやはり人口を養えなくなる未来が訪れると警鐘を鳴らす。 定住文明の興亡は、概ね以下のパターンを経る。 最初に農耕に適した低地で集落が営まれる→人口が増加するにつれ耕地が不足し、斜面地に耕地が広まる→斜面地の木々を伐採し耕作することで土壌の流出が激化し、いずれ耕作不適地となる→人口を養いきれなくなり集落は放棄、あるいは人口が大幅に減少され人口密度の低い時期が続く→長年かけて土壌が蘇り、その地にまた文明が興る。 メソポタミアや古代ローマ、ヨーロッパ各地、マヤ文明やアマゾンで同一のパターンが見られることを、繰り返し実例を挙げながら説明していく。 一方で、例外的にサステナブルな手法を発見し、長期間にわたり文明を維持した古代のイスラエル王国などの例も挙げられる(斜面地に段々畑を用いたり、土壌を回復させるマメ科植物を休耕期に植えたり、家畜の厩肥を活用したり・・・)が、これは少数のようだ。 更に、一定規模以上に成長した巨大文明はさらなる土壌疲弊を呼ぶ手法が取られる。 集約型の農業である。 それは古代ローマが属州拡大の末生み出したラティフンディア、大航海時代以降ヨーロッパが植民地で生み出したプランテーション、アメリカ合衆国が西漸運動により生み出した大規模農場・・・ つまり、モノカルチャー式の農業である。 モノカルチャー式の農法は、経済的利得を追い求め休耕期間を置くことも少なく、また単一作物を育てるがゆえに土壌の養分の枯渇も早ければ、雨風をしのぐほど草丈が育っていない期間が必ず一定存在するため、浸食が異常に速い。 これらの問題に直面し、アメリカでは19世紀には、古来用いられていたサステナブルな手法(有機農法)に一度注目が集まりかけるが、化学肥料の進展がそれを一蹴してしまう。 その後20世紀まで続いてきたのが化学肥料による食料の大増産である。 しかしこれは根本的には土壌の回復には何一つ寄与せず、高いコストを払って農業を工業化しただけで、投資ができない小作農を廃業させてしまい、飢餓は解決していない。それに化石燃料が尽きれば維持できない手法でもある。真の意味で、文明の衰亡のパターンから逃れられた訳ではないと説く。 結局のところ、土壌の肥沃度を保ちながら、その土地に合った手法と作物を選んで、自国民に行き渡る範囲程度での規模の有機農法を行うことが、将来的に人類を養っていく有効な方法であると結論する。 様々な文明の衰亡を耕作方法、土地利用方法の側面から振り返るだけでも興味深いし、将来への示唆に富んだ面白い一冊であった。 ただ、世界各地の土壌の質の違いに対する言及はほぼなされておらず、地域による実情の違いや今後取るべき進路については概括的な主張にとどまっているのが少し物足りないところか。 本書が発行されたのは2010年。 果たして、2025年現在、世界の(せめて先進国の)農業は持続可能な有機農法の必要性に開眼しているのだろうか。 著者のこの次作(2018年刊)も読みたくなってきた。
1投稿日: 2025.09.28
powered by ブクログ食い物にされる植民地 土 — 軽視される天然資源 土壌侵食は土壌生成速度を大幅に上回る 土壌酷使が招いた古代文明の衰退 土地に再投資して土壌を維持する方法 地球の皮膚(ダーウィン) 生命と泥(土壌)は共に土壌を作る 生命は見えない微生物たちの世界の上に成り立つ 土壌生物相が提供する不可欠なサービス 表土の自己保存プロセス 塩害が徐々に土地を蝕む(メソポタミア) ナイル川の氾濫原:持続的な農耕の理想 地上河川(黄河の危険な状況) 青銅器時代の土地利用がすでに土壌を劣化させた(ギリシャ) ローマによる北アフリカでの土壌劣化の長期的な影響 マヤ文明衰退の一因は土壌侵食 家畜化と農耕の融合(人口増加と文明発展の支え) マメ科植物による土壌窒素の補給(輪作の可能性) モノカルチャーと土壌疲弊(米国南部) ダストボウル:剥き出しになった乾燥土壌が吹き飛ばされる災害 土壌の質と人口の基本サイクル グローバル化農業は植民地プランテーションの遺産 食料輸入と人間の輸出(ヨーロッパの飢餓対策) ヨーロッパ式の農法が熱帯で深刻な侵食を引き起こす 緑の革命:生産性向上と化学肥料・市場への依存 現代の土壌侵食速度:地球規模の生態学的危機 都市化による農地の永久喪失 小規模農家は単位面積あたりでより多くの食料を生産できる 有機農業:エネルギー効率と土壌の質の向上 不耕起栽培:土壌侵食を減少させる効果的な方法 伝統的な土壌管理の知恵(輪作、休耕、厩肥、灰など) 農業を土地に合わせるという「哲学的な視点転換」 労働集約的な農業は飢餓・貧困を救い、土壌を再生する可能性 島を全て食べ尽くす(イースター島の教訓) 土壌保全への投資の必要性 短期的な利益と社会の長期的な利益の対立 土壌は文明の基盤であり、その衰退を左右する 歴史は繰り返す:現代も土壌酷使は脅威 土壌とその生物は生命維持システム 持続可能な未来のための土壌再生
1投稿日: 2025.04.29
powered by ブクログ土壌肥沃度を改めて考えさせられた。 作物はどこに植えても育つわけではない。肥沃度が高いから育つのだ。土壌から養分を得て作物が育ち、その作物を我々動物が食し糞尿としてまた養分を土壌に還す。これが本来のサイクルなわけで、それが破綻した文明が崩壊していくのだ。 鋤などの土壌を耕す行為ですら肥沃度を低下させるのは意外だった。確かに空気を含み表面積が増える事で雨風に晒されやすくなる。その結果土壌が失われていき、作物が育たなくなる。不耕起栽培というのが土壌の事を考えたら最良の栽培方法なのだろう。学びのある本だった。
0投稿日: 2024.12.23
powered by ブクログ肥沃な土壌は有限な資源であり、人類の持続可能性のためには土壌を意識する必要があるというのが本書の趣旨。 持続可能性の概念が広まった現代においては、「それぐらい知ってるよ」と感じる人が多いかもしれないが、さて、どれぐらい知っているのだろうか? 本書を読んでいて第一に驚いたのは、「土壌とはこれほど失われやすいものなのか」ということだ。農地を耕すことは良いことだと想像していたが、耕すことが土壌の侵食を数十倍に早め、農地の寿命を短くすることがあるということも、都会暮らしの私には知らないことだった。 本書では取り上げられていないが、以前、オーストラリアに行った際にアボリジニは6万年にわたり、持続的な土地利用をしてきたという話を聞いた。当時はその凄さがあまり理解できなかったが、本書を読んでその圧倒的な実績がやっと実感された。 第二に驚いた点としては、食料需給の問題について。 化学肥料無しで現代の食料需要を賄うことは不可能だと思い込んで生きてきたが、有機農法は必ずしも収量を減らすわけではなく、むしろ長期的には経済性も含めて慣行農業より優れた結果を出しうるという指摘。私の今の思い込みがなぜ形成されたかが察せられるようなアメリカにおける政治的な知識形成についての記述も興味深かった。 最後に、本書を読むと景観を見る目が変わるなと。 地形の凹凸を見るにしても、雨の日の川の濁り具合を見るにしても、地面に生えるクローバーをみるのも、土壌に関わる示唆が得られるようになり、散歩がさらに楽しくなる 著者の新作が本屋に並んでいたのでそちらも読んでみたいと思う
1投稿日: 2024.09.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
・気候変動が今後どのような影響を人類に及ぼすかという疑問から手に取った一冊であったが、私にはいささか難しいすぎ、また自分の知りたかった部分の記述は意外と少なく流し読みになった。 ・しかし学びは幾つかあった。土地が支えられる以上に養うべき人間が増えた時、社会的政治的紛争が繰り返され、社会を衰退させた。 ・肥沃な谷床での農業によって人口が増え、それがある点に達すると傾斜地での耕作に頼るようになる。植物が切り払われ、継続的に耕起することでむき出しの土壌が雨と流水にさらされるようになると、急速な斜面の土壌侵食が起きる。その後の数世紀で農業はますます集約化しそのために養分不足や土壌の喪失が発生すると収量が低下して人口を支えるには不十分となり、文明全体が破綻へと向かう。 ・人口統計学によると2050年までは世界人口は増え続け、人口が増えると経済活動は活発になるという。経済活動は環境への影響のみを考えるとマイナスに働く。 ・つまり環境難民は今後もっと増加するだろう。世界は人口を減らすための方策を分からないように取るだろう。そうなった時の今後の自分の身の振り方を考えなければいけないと思わされた一冊であった。
0投稿日: 2024.03.19
powered by ブクログ原題は「Dirt:The Erosion of civilization」=「泥:文明の浸食」。その名の通り、文明がいかに表土を侵食し、貴重な資源を食いつぶしてきたかという歴史である。人類が農耕を始め、鋤を使って土を耕起するようになってから表土の流出が始まった。それは、ローマ帝国やマヤ文明を滅ぼし、今もアフリカの飢餓を招き、アメリカや中国を衰退させようとしている。それに拍車をかけたのが、石油から生み出した肥料を土に施して収量を増やす「緑の革命」だった。しかし、遺伝子操作と農業化学による収穫増は、もはや限界に来ている。有限の資源である土を、いかに保全し持続させてゆくか。そこに人類の未来がかかっている。
0投稿日: 2022.09.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
土壌を大切にしなければ、文明は崩壊するということがこの本では伝えています。私は、ジャレドダイヤモンド氏の著書を読むなかで、土の大切さに気づき、より詳しく知りたいと考え、「土の文明史」を読むことにしました。ただ、中盤の内容がほとんど繰り返しになっており、冗長でそこまで面白くはありませんでした。 しかしながら、土壌やミミズの説明。表土を大切にするためには、自然農法が効果的であること。現在の二酸化炭素の三分の一は土を掘り起こすことで発生している。現行農法は必ずしも正解ではないこと。など、参考になる視点は多くありました。 私はこの本を通して、自然農法により興味を持つことができたので感謝しています。
0投稿日: 2021.09.23
powered by ブクログ土壌流出が農業をする限りは宿命的についてまわる問題であり、過去の文明に大きなダメージを与えてきたことを明らかにしてくれる。 しかしながら冗長かつ散漫な書きぶりもあって、今日の文明にとってもどれくらいの深刻度の問題となっているかが今ひとつ見えてこない。著者は緑の革命の成果などに否定的なのだが、いまだ農業生産は右肩上がりに増え続けているしねえ。
0投稿日: 2021.07.31
powered by ブクログ非常に面白いテーマだが、古代帝国から近代国家まで、土壌の侵食が進んだ経緯や斜面耕作地や限界地まで切り詰めて行った流れが繰り返し同じであり、読み物として退屈させる内容だった。 シュメールやローマ、帝国時代の欧米など、根本を辿れば侵食で土壌喪失したことが文明崩壊や人口破綻の原因となった印象を受ける。 共通して言えるのは侵食の進行はある程度時間を伴うため、どの社会も目先の利益を優先させてしまう点。 これからの人口を養うための取り組みとして、小規模で有機・不耕作のシステムを提唱している
0投稿日: 2021.06.30
powered by ブクログ他のレビュワーも触れている通り『文明崩壊』でそのエッセンスは要約されているので、趣味の読書の範囲においてはそちらを薦める。
0投稿日: 2019.07.16
powered by ブクログ『銃・病原菌・鉄』を補完するという評もあったので読んでみた。さすがに、ずーーーーーーーーと土の話で、まいった。途中からはとばし読み。もっと土が好きになったら読み返す。
0投稿日: 2018.11.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かったけど、後半に向かうにつれてちょっとタレた。先に『文明崩壊』を読んでいて、巻末の参考文献リストから飛んできて手に取った本でしたが、この本における主要なエッセンスはがっつり『文明崩壊』の方で要約されてしまっていたということが読み進めるごとに明らかに。 つまるところ、程度の差こそあれ、過去に崩壊した様々な文明や、現在進行形で消滅の危機にある地域の疲弊の原因は良質な土壌の流出によるものなんですよ、ということを一冊を費やして何度も何度も繰り返し論じている、というのがこの本の軸です。中盤あたりでそれが読み取れてしまうので、あとは章ごとに新たに出てくる各地の事例を各論として読むだけ、となってしまいます。 土のことだけ抜き出して詳しく知りたい、という方にとっては良質な参考書となるでしょう。土以外の要素も含めて文明の疲弊や崩壊について知りたいのなら、包括論になっている『文明崩壊』を読んだほうが参考になります。
1投稿日: 2017.04.23
powered by ブクログ著者のモンゴメリー氏は地形学の専門家だが、人類学や社会学等幅広い視点から、土壌の大切さを訴えている。300ページを超える大著だが、著者の主張を一言で伝えると「土壌は有限の資源であり、消失速度が生成速度を上回れば、いずれ土壌は枯渇し、その文明は消え去る運命になる。」 農業というと他の産業よりも環境に優しいイメージがあったが、実は有史以来自然を最も破壊した産業はこの農業だった。機械や薬剤に頼った現代の農業だけでなく、天然素材だけで行われた古代の農業も含め、土壌に対する配慮を忘れ土壌を消耗すれば後に残るのは不毛の大地だけ。メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマ…古代の文明が栄えたこれらのエリアが現在、一面の砂漠や荒涼とした大地になっているのは、無秩序な農業のせいだった。古代文明は土壌の消失により衰退したが、近代の欧州では失われた土壌を補うために植民地支配へとつながった。そして、現代は経済性を重視し、機械と薬剤で土壌の消失を加速させている。土壌はただの土でなく、再生困難な希少資源であり、食糧生産や人口を通じて、経済や社会に如何に大きな影響を与えている現実を直視しなけれなならない。 本書を通じて、著者は土壌枯渇の危険性に強い警鐘を鳴らす一方で、リスク回避のための処方箋も提案している。それは古くて新しい農法、有機農業である。有機農業では土壌を生物学、生態学的にとらえ、土壌の生産性を維持しながら作物を収穫する。正しく実践すれば、その生産性は現代の慣行農法を上回るポテンシャルがあるという。薬剤に頼らずに厩肥や被服植物を活用する有機農法は農家にとって負荷がかかるが、経済重視の米国でも有機農法が広がりつつあるという事実は、本書で述べられた数少ない安心材料である。 著者は時間、空間的に幅広い調査を行っているが、いずれも畑作の事例が中心で、アジアで盛んな米作に関する記述はない。日本で古来から続けられている米作は地形や気象の条件等の制約はあるが、持続的な食料生産に対する別解なのかもしれない。この点については著者の今後の調査活動に期待したい。 日本は地理的に高い土壌回復力に恵まれ、米作の文化が持続的な食糧生産を支えてきた。しかし、その恵まれた環境こそが、土壌資源が恒久であるかのような錯覚をもたらしているかもしれない。自分がそうであったように。足元の問題を再認識するためにも、是非、本書をお勧めする。
4投稿日: 2017.03.23
powered by ブクログ地質学者が論じる土壌開拓、農業の歴史を記述した本。土壌は有限の資源であり、文明の存続可否は土壌を再生可能な状態で維持できるか否かにかかっているという。思えばアルキメデスの示した四元素のひとつでもあり、先人は遥か昔からそのことに気づいていたのではないだろうか?にもかかわらず、人口は爆発的に増加の一途を辿り、土壌の汚染、崩壊は止まるどころか加速しているようにも見受けられる。人間視点ではなく地球視点、宇宙視点で農業のあり方、人類のあり方を見つめなおさなければならないように思う。
1投稿日: 2013.07.18
powered by ブクログおもしろい! 歴史を土壌の変化からひも解く本ははじめて。 これを多くの人に読んで欲しい。 いかに現代に生きる私たちの生き方が間違っているか、と考えさせられる本。 自然から離れ、緑を減らし、どこかで集中的に農作物を大量生産させることがいかに人類を破滅に導くことなのか、よくわかる。
0投稿日: 2012.12.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
歴史軸、地理軸で、土壌がいかに大切か、を解説した本。でもどの時代も、どのエリアも結局その解説は結局は同じになってしまうので、読了に時間がかかる割には、内容の薄い本でした。
0投稿日: 2012.12.09
powered by ブクログ要約:土壌は食料生産の根幹であり、人類生存に欠かせないものだ。人口増加に伴い過度の耕作をし、土壌が流出・枯渇したために人口を支えられなくなり衰退した文明は枚挙にいとまがない。現代文明も同じ轍を踏みつつある。 メモ: アダムとイブのアダム←adamaヘブライ語の土・大地 ホモサピエンスのホモ←homusラテン語生きた土壌 人口増・狩猟対象動物の現象を受けて農業を始めざるを得ずに人口増につながった、という説 氾濫原の生産力を人口が凌駕し→斜面耕作→土壌流出→生産量減少→文明崩壊、というパターン 大航海時代の背景には人口増があったというが、それと同時に欧州の土壌流出も激しかった 中国には40世代以上に渡り安定して収量を確保できている地域がある。そこでは豊作の時も作物を外部に売らず、自分たちで食べて糞尿を堆肥にしている。地域循環が実現されている。 グアノ、ナウル、ハーバー・ボッシュ法、BASFという懐かしい名前もちらほら。つながってくるなぁ。 飢餓の解決は生産量を増やすことではもたらされない 都市農業でカロリーベースで自給率どこまで上がるものなのだろうか
0投稿日: 2012.09.20
powered by ブクログ現在では森や木に恵まれているのは日本をはじめ少数の国しかありませんが、かつては地球上の殆どの地域は緑に覆われていたことでしょう。 砂漠や禿山となってしまったのは、気候変動によるものもあるかもしれませんが、基本的には人間の活動(農業革命)による土壌の酷使にあるのでは、というのが私がこの本から受け取ったメッセージです。 ローマ帝国を初め、各文明の盛衰のカギを握ってきた「土」について興味深い話が多くありました。特に驚いたのは、単位面積当たりの栽培量は、小規模農家の方が大規模農家よりも高い(p216)という事実でした。 以下は気になったポイントです。 ・1年で1エーカあたり、ミミズは10-20トンの土を押し上げいることに、ダーウィンは気づいた、これは1年に3-6ミリ程度堆積することを意味していて、ローマ時代の廃墟が埋もれたことを説明する(p13) ・ミミズはわずか2-3世紀で、土を完全に耕したことを近年の研究は証明した(p16) ・皮膚は、私たちの身体と重要な臓器を紫外線で守っている一方で、健康な骨を作るために必要なビタミンDの生成のために、日光を通す必要がある、この両者の綱引きにより、肌の色が変わった(p36) ・殆どの家畜は、紀元前1万年から6000年の間に家畜化された、例外は2万年以上前からの犬(p45) ・ヨルダン中部の表土の浸食と土壌の生産性低下は、集約的農業とヤギの放牧が引き起こした(p47) ・シュメール文明の農業が塩類化に弱かったのに対して、ナイル文明は強かった、ナイルの洪水が毎年川沿いの農地に新しい土壌を運んできた(p53) ・ローマの農業が衰退(浸食を促進した)理由として、都市に住む地主が広い農場を奴隷監督に任せたため、プランテーション所有者も同じ(p81、182) ・北アフリカの属州は可能な限り穀物を生産する圧力にさらされていた、政治的配慮から帝国は穀物を無料でローマ全市民に供給することを強いられていたから(p85) ・農場の奴隷を働いている土地から引き離すことを禁じるローマ法が制定され、これが農奴と土地を所有する中世の農奴制の基礎になった(p89) ・マヤの農民は丘斜面を段にして作物を植える平らな地面を作り、地表を流れる水による浸食を遅らせると同時に、水を畑に導いた(p101) ・ヨーロッパの壊滅的な打撃を与えた1315-17年の飢饉は、人工が農業システムの支えられる限界に近づいたときに天候不良が影響すればどうなるかを示している(p122) ・アイルランドはジャガイモのみに依存していた(牛肉、豚肉、青果はほとんどがイギリスへ輸出)、1845-46年のジャガイモの収穫が壊滅的となり、100万人が死亡、100万人がその間に移住、さらに300万人が50年間でアメリカに向かった、1900年の人口は1845年の半分程度(p145) ・欧州は繰り返される飢餓問題を人間の輸出(移民)で解決した、1820-1930年にかけて、5000万人が移住した(p148) ・アマゾンの移民は、一度に広い範囲を伐採し、過放牧で浸食を加速させて土地から生命力を搾り取っている(p157) ・アメリカでは圧倒的な利益をタバコが生むので、多様な作物を栽培することはなかった(p160) ・フランクリン・ルーズベルトは、移民開始から20年程度で砂漠化していることに直面し、1934年11月に残った公有地への入植を停止して、開拓移民の時代を終わらせた(p207) ・1992年の報告で小規模農家は、大規模農家に比べて単位面積あたり、2-10倍の作物を栽培していることが判明した(p216) ・稲作は当初は乾燥地農業であったが、2500年程前に水田での栽培が始まることで、悩みの種であった「窒素の減少」を解決、よどんだ水が窒素固定作用を持つ藻を育て、それが肥料として機能した(p245) ・リン鉱石を硫酸で処理すると、すぐに食物が利用できる水溶性のリンが生成される、これば肥料の始まり(p250) ・1838年に肥料以外では、マメ科植物を栽培すると土壌窒素を保持するが、麦類には無いことを発見した(p251) ・1850年代には、アメリカとイギリスは肥料として、ペルー産のグアノを年間100万トン輸入した(p252) ・1881年にボリビアはグアノの島への経路をめぐる戦争に敗れてチリに太平洋岸を奪われた(p254) ・草刈をした後は、その草は腐るにまかせている、1週間としないうちにミミズの穴に引き込まれるので(p276) ・産業革命以降、大気中に蓄積した二酸化炭素の3分の1は、化石燃料ではなく土壌有機物の分解に由来する(p292) ・キューバは農業を現地の条件に適用させることで、生物学的な堆肥と害虫駆除の手法を開発、砂糖の輸出をやめて、食糧を輸入せず、農業用化学製品を使用せずに食生活は10年で戻った(p317) ・文明の寿命は、最初の土壌の厚さと、土壌が失われる正味の速度の比率によって決まる(p323) 2012年6月10日作成
1投稿日: 2012.06.10
powered by ブクログ面白いんだけど、ちょっと眠かった。 文明史と言うより土・土壌の保全についての本。 タイトルと副題は売らんがための意訳かな?
0投稿日: 2012.06.05
powered by ブクログきわめて地味な存在ながら、まさに陸上生命の基盤である土が、歴史を通していかに収奪されてきたかが繰り返し説明されている。 人口も土の肥沃度とともに周期的に増減を繰り返してきた。初期のヨーロッパの集落では、人口が増加して土地の利用が拡大した後、土壌浸食によって人口が減少するパターンが青銅器文化が出現するまで続いた。農耕の開始時期や古代文明の繁栄の時期に土壌の喪失がピークを迎えると、その後人口は低迷。中世にはまた人口が増加して、現在は第3のサイクルにある。 ヨーロッパでは時代を追うごとに、中世の三圃式農業、根粒菌が共生するアルファルファとクローバの導入、17世紀初頭の穀草式農法によって収穫を高めてきた。土壌の肥沃度を維持、回復させるための試行錯誤がうかがえる。 今日の人類の繁栄を支えている工業的農業についても、その歴史を説明し、限界を論じている。1843年、イギリスで窒素とカリウムを添加した過リン酸肥料を製造が開始された。1913年には、ハーバーボッシュ法による工業用アンモニアの生産を開始。1929年には、天然ガスによるアンモニア生産が始まった。アメリカでは、1960年代末には農業機械と農薬を用いる企業経営の工場式農場が支配しはじめた。緑の革命により、1950年から1970年代前半の間に全世界の穀物生産量は2倍近くになった。しかし、人口が並行して増えたため、緑の革命が届かなかった中国を除けば、1970年から1990年にかけての飢餓人口は10%以上増えている。 農業は石油消費の30%を占めている。第二次世界大戦前、穀物を輸入しているのは西ヨーロッパだけだったが、現在は北米、オーストラリア、ニュージーランドといった一握りの国だけが大規模な穀物輸出国である。タバコは代表的な食用作物の10倍以上の窒素と30倍以上のリンを土壌から奪うとか、綿花は天然の草地よりも1万倍速く浸食するといった記述も胸が痛い。 全世界で1ヘクタールあたり年間平均10〜100トンが浸食されており、土壌生成速度の10〜100倍速い(ページによっていろいろな数字が記載されている)。アメリカでは、独立から2世紀の間に表土の3分の1が浸食された。土壌浸食と土地の劣化により、世界の利用可能な土地面積の1%にあたる毎年1200万ヘクタールの耕地が消えている。過去50年間に放棄された農地の面積は、現在の耕地面積に等しい。1980年代には、耕作地の総面積が歴史を通して初めて減少に転じた。 文明が存続する長さは800〜2000年(30〜70世代)で、30cm〜1mの土壌が完全に侵食されるのにかかる年数と一致する。文明盛衰の原因は気候変動ではなく、土壌であるとの主張は説得力がある。著者は、化学肥料に依存した農業から、土壌を地域に適応した生物システムとして扱う農業への転換が必要だと主張する。そして、政府の補助金や税制上の優遇措置によって、短期間しか農業で収益を得られない土地での伐採や耕作を批判している。国際社会による経済封鎖によって、やむを得ずながら生物学的な施肥と害虫駆除の手法を導入したキューバの例が興味深い。 内容は非常に満足だが、訳が読みにくいのが残念。何度読んでもさっぱりわからない箇所も何か所かあった。
0投稿日: 2012.03.24
powered by ブクログ耕作が引き起こす土壌侵食が、いかに文明を滅ぼしてきたのか。そして今の地球に、増え続ける人類を支える土壌があとどれ程あるのか。土壌は戦略資源であり、人口を支える基礎である。この視点は持ってなかった。間違いなく良本!
0投稿日: 2012.01.29
powered by ブクログ人間にとっての基礎的資源、土。これが古代から現代までの文明の栄衰を司ってきたとして歴史を読み直す。土は時間を区切って観察できないもっともゆっくりした変化であり、この変化に気付けるかが文明の寿命を左右するとする。先人が自然のバランスを崩して滅びてきたケーススタディから現代の成長至上主義に警鐘を鳴らす。
0投稿日: 2011.11.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
銃、病原菌、鉄、さらに土。「文明崩壊」にも記述される、土壌劣化による文明崩壊の例示が、古代ギリシャ、ローマから現代アメリカ、ハイチまでこれでもかとばかりに示される。見落としがち、というか、逆に誰でも思いつくがゆえに深く考えてこなかった当たり前の要素。インテリの思想がここに至った時に、計画生産という結論に飛びつきたくなるのもわかる。しかし、解法はおそらく、個々の人々の知性に委ねられるのだろう。間に合うかどうかは別として。
0投稿日: 2011.09.15
powered by ブクログ内容は★5つレベル。しかし、翻訳がカタイため、非常に読みにくい。そのため★3つ。 土壌の大切さが身にしみる。土壌は胎盤、という考え方にとても共鳴。
0投稿日: 2011.09.06
powered by ブクログレビューはブログにて http://ameblo.jp/w92-3/entry-10995840918.html
0投稿日: 2011.08.27
powered by ブクログ北米大陸について、あらためていろいろと考えさせてくれる良書です。とくに南北戦争のころの切り口は、土壌をテーマとしているだけあってスリリングにまとまっています。ただ、日本への言及はありません…。
0投稿日: 2011.08.21
powered by ブクログ第1章 泥に書かれた歴史 第2章 地球の皮膚 第3章 生命の川 第4章 帝国の墓場 第5章 食い物にされる植民地 第6章 西へ向かう鋤 第7章 砂塵の平原 第8章 ダーティ・ビジネス 第9章 成功した島、失敗した島 第10章 文明の寿命
0投稿日: 2010.09.28
powered by ブクログこれからの農業は不耕起農法によって土壌の肥沃度を回復するとともに地球温暖化の抑止にもつながっていく方向に進むべきであると主張している。『究極の田んぼ』の著者も自ら不耕起農法と冬には田んぼに水を張ってみみずの糞を肥料として米を作るようです。考え方は同じなんだ!
0投稿日: 2010.07.17
