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15歳の寺子屋 ひとり
15歳の寺子屋 ひとり
吉本隆明/講談社
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総合評価

18件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

     司書の姉から、いい本があるらしいよ、と教えてもらった一冊。パラパラと数ページ流し読みしただけで、これはすごい本だぞと直ぐにわかった。  著書をほぼ読んだことがなかった。この方の考え方を知らないなんて、勿体なさ過ぎた。全ての15歳に、国からプレゼントしたらいいのにと思うほどの一冊。自分に余裕があれば、関わっている全ての子達にプレゼントしたいところだ。鬱陶しがられるとは思うが、そんなことどうでも良いほど、価値ある一冊だった。 大人が読んでも、親の立場の人が読んでも、もちろん良いと思う。早く読みたかったとは思うと思うが… 特に好きだったところ… ◯誰にわかってもらわなくてもいいから、自分がなぜそう感じるのか、自分の考えを自分で知っておく。書く事はそういうときの手助けになるはずです。自分と向き合うための方法でもあるし、そうやって、自分自身の実感を繰り返し探っていくことが心が鍛えられるというのかな。 ◯才能なんてものは問題にならない。問題になるのはせいぜい最初の2 、3年位のもので10年経ったらそんな事は全然問題じゃなくなる。結局は手の問題なんですよ。手が知ってる。手を動かしていると、2.3年は同じでも、10年経つとその人らしさというのかな。その人にしかできない表現というものが必ず出てくるものなんです。28 ◯人は自分が自分を思うほど、君のことを気にかけてるわけじゃないんだぜ。36 人がその人が1番重要だと思うことを大事にして生きてる。それが人間てものなんだ。 ◯「こうしたから、こうなった」なんて、何かを学んだ気になってると、人生まちがっちゃう。そんなふうに原因と結果が安直に結びつくことは、現実にはまずないんだって思ってた方がいい。45 ◯優劣があるわけじゃなくて、〈段階〉が違うだけ。63  夏目漱石の恋愛においての失敗のエピソードが紹介されていたが、普通なら今の時代だと、何かしらの発達障害だと一言で終わらせてしまうような漱石の言動も、吉本隆明は、 「漱石って人はきっと頭が良すぎたんでしょう。当人の中では、ちゃんと脈絡がついているんだろうけど、どうにも飛躍しすぎるところがある。それで副次的な考えが先走って、そのせいでことごとく失敗している」と分析している。なんて思索が細かいんだと、驚いた。  寺子屋の講義を受けた子供の感想が紹介されていた。その中で、 「吉本さんは経験の活かし方が違うのかもしれません。いずれにしても、経験を表現する時、他の大人とは違う表現をする、そんな大人に思えます。」 という言葉があった。吉本隆明さんの、ちゃんと平易な表現にして伝えようとしてくれる言葉が、確かに子供達にも届いたんだなと感じさせてくれた。 以下、備忘録… [話し言葉]が相手に何かを伝えるための道具なら、[書き言葉]は自分の心の中に降りていくための道具だと言ってもいい12 思春期と言うのは、[1人]から[2人]にスイッチが入る時期なんですね14 なんかよくわかんないなって思ったら、わかったふりをしないで、わかんねぇなって思ってる。そこでいいことを言おうとすると、大抵間違いだぞっていうのがある。21 今の若い人は、自分が本当に思っていることも、周りに遠慮していえないじゃないですか。若い人たちが謙虚になったといえばいえますけど、変にものわかり良くしないで、もう少し本当のことハッキリさせたほうがいいですよ。誰にわかってもらわなくてもいいから、自分がなぜそう感じるのか、自分の考えを自分で知っておく。書く事はそういうときの手助けになるはずです。自分と向き合うための方法でもあるし、そうやって、自分自身の実感を繰り返し探っていくことで心が鍛えられる。22 何になるにせよ、手をたくさん使えば誰でもなりたいものにちゃんとなれます。25 才能なんてものは問題にならない。問題になるのはせいぜい最初の2 、3年位のもので10年経ったらそんな事は全然問題じゃなくなる。結局は手の問題なんですよ。手が知ってる。手を動かしていると、2.3年は同じでも、10年経つとその人らしさというのかな。その人にしかできない表現というものが必ず出てくるものなんです。28 世界の信用するのはどこかに所属している人間なんです。自分では良いことをしたんだと思っていようが、組織を離れた人間が信用してもらうのは難しい。36 人は自分が自分を思うほど、君のことを気にかけてるわけじゃないんだぜ。36人がその人が1番重要だと思うことを大事にして生きてる。それが人間てものなんだ。 「こうするよりほかなかったんだ」とでもいうような消極性だけが唯一、自分の人生を決定づけてきた気がするんですよ39 「こうしたから、こうなった」なんて、何かを学んだ気になってると、人生まちがっちゃう。そんなふうに原因と結果が安直に結びつくことは、現実にはまずないんだって思ってた方がいい。45 子供の頃から「これを習わせておけば、こうなるだろう」みたいなことは、あんまりやらせない方がいいんじゃないかなぁ。それよりも、もう少し時間の隙間をあけてやったほうがいい。43 自分で、「自分はこうだ」とあんまりせっかちに決めないで、親の脛をかじれるうちは齧って、いろんなことを経験しながら成長するのが一番いいと思いますよ43 親鸞について調べる46 宮沢賢治春の修羅の一巻。速さ時間の戦い方っていうのがすごい。60 宮沢賢治は自分が文学者と言うより宗教家だと思っていた。あの人は「ほんとうのほんとう」にたどり着きたいと思って生きた人。61 優劣があるわけじゃなくて、〈段階〉が違うだけ。63 大人になるとはどういうことか75 問題は歴然としてあるんだけれど、それに対して、誰にも言わないでも、わからないでもいいから、自分はこういうやり方で緩和しているんだという、自分なりのやり方を編み出すようにするのが1番いいんじゃないか。やり方はそれぞれに違っていいと思うので、考えて考え抜いて、自分で確立できたら、それはもう、立派に大人になったと言えるんじゃないでしょうか。 76

    33
    投稿日: 2025.02.23
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    糸井さんとの共著である「悪人正機」と重複する内容もありますが、その中でも『才能』に関する吉本さんのお話は、やはり特に心に残りました。 例として挙がった、若い頃から才気溢れていた芥川龍之介と、若い頃は鈍いヤツと言われていた田山花袋が、晩年の作品で比べればどっちも同じようにいいようになってきた、という話には「続けること」の本当の意味を教えられた気がします。 「やってるうちに自分の姿が自分なりに見えてきて、鋭いのは鋭いなりに、鈍いのは鈍いなりに、なんともいえないその人だけの値打ちが出てくるものなんです。それこそがその人の〈才能〉であり、その人の〈宿命〉と呼べるものなんですよ。」 まだ何者でもない15歳くらいの年頃の人には、とても勇気をもらえる言葉ではないでしょうか。

    3
    投稿日: 2022.01.09
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    子どもとこういう方が直にじっくりと話ができる機会があるっていうのはすごくいいと思う。沈黙も言葉。とにかく手を使うこと。吉本さんの考え方はとても納得できる。そして語り口はとてもやさしい。もっともっとじっくり知りたいし読みたい。

    2
    投稿日: 2021.11.17
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    この本大好き・・・!吉本さんが15歳の子供たちにちゃんと向き合ってる雰囲気が伝わってくるし、吉本さんの言葉の使い方は、断定を避けて、言葉を慎重に選んで正直に使ってる印象があって好きだった。ぼくもこういう言葉の使い方が出来ればなぁ・・・。

    0
    投稿日: 2016.04.21
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    吉本隆明氏が15歳の男女を前に語った言葉の数々。 「行きがけの道」を歩きながら、道中見える景色や生まれる感情を噛みしめながら生きていくのが人生なんだろう。 正解なんて最後までわからないし、存在すらしないものだと思うと、諦めのような気持ちが生まれるけど、だからこそ人生には意味があるんだろうなというような救いのようなものを感じた。 沢山の気づきがあったので以下は備忘録として。 <話言葉>が相手に何かを伝えるための道具だとしたら、<書き言葉>は自分の心の中に降りていくための道具だと言っていい (P13) 人は誰でも、誰にもいわない言葉を持っている。 沈黙も、言葉なんです。 沈黙に対する想像力が身についたら、本当の意味で立派な大人になるきっかけをちゃんと持ってるといっていい。 (P23) 誰に才能があって、誰に才能がないとか、そんなことはないというのが僕の考えです。(中略)大事なのはしょっちゅうそのことで手を動かしてきたか、動かしてきていないかのちがいだけです。 (P25) 人は、自分が自分を思うほど、君を思っているわけじゃないぜ。 (P37) 「生きていくことは、たぶん誰にとっても行きがけの道なんですよ。(中略)人は誰しも行きがけの道を行く。そうして迷いながら、悩みながら、ただただ、歩きにあるいていくうちに、ああ、これこそが自分の宿命、歩くべき道だったんだと思うことがあるんじゃないか。 (P50) 創作の本質はこの<転換>にあるんですよ(中略)文学というのは、その<転換>のうまさ、巧みさに注目して読むと読みやすいんです。 (p55) 戦争が悪なら、僕だって悪党だ (P79) 人間っていうのはかわいそうなもんですよ。生きるっていうのはかわいそうなもんだ。それはもう、いたしかたのないもんなんだと思います  変更がきくもんでもないし、急に納得がいくもんでもないし、やっぱりかわいそうだなぁというのを一種の食べ物みたいにして生きていくよりはしょうがない。 それでもなんで生きていくのかっていったら、それは先があるからでしょう。(P83)

    0
    投稿日: 2015.12.10
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    悩める中学生の息子に 何か励ましの言葉をかけてやれないかと思って 頼ってみた本。 吉本さんは、 中学生たちの質問に対して わりとのらりくらりとした感じでお話されます。 こうしなさいよ、こうだよ、というよりは、 もう少しあいまいな、 ふわっとした、けれど自分が身をもって体験したからこそ言える言葉をかけてくれる感じ。 そうすることで逆に考えさせられるというか、 こういうことなのかな?と 自分で考えてみる余白を残してくれている気がしました。

    0
    投稿日: 2014.02.11
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    思想界の巨人と呼ばれるだけに、とっつけないでいたけれど、これならとっかかるのに良さげだと、ついにチャレンジ吉本隆明氏。 •沈黙も言葉。 •生きるとは、かわいそうなこと。 深々と沁み入りました。 ほんとうだ。

    0
    投稿日: 2013.11.24
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    吉本隆明氏が中学生の相談に答えているのですが、なかなか良いです。 僕は、自分のために読みましたが、中学生くらいの子どもをもつ親ならば「子どもにこういう風に話しをすればいいのか!」と参考なると思いますよ。

    0
    投稿日: 2013.01.03
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    ふわふわと考えていたいろいろに、言葉というかたちでヒントや答えを落としてくれた、宝物みたいな本だった。

    0
    投稿日: 2012.08.15
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    吉本さんの本をちゃんと読んだのはこれが初めて。 今までどうしてこの人はこんなにも崇められているのかなと思っていたけど、わかった気がした。

    0
    投稿日: 2012.05.09
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    15歳の寺子屋と銘打たれたシリーズの1冊。 自分というものを模索しはじめる思春期の中学生たちに、 吉本隆明さんが人生の先輩として行った 生き方の授業を採録したものです。 私はもちろんとうにすぎているのですけど、 当時の気持ちを思い出しながら読むと 今になってあぁそうかと腑に落ちることも多く、 非常におもしろかったです。 アンダーラインをひきたかったけれど図書館の本だったので、 代わりに付箋をたくさんつけてしまいました(笑) 自分は親とも友だちとも違う、 人間は完全には理解し合えない存在である。 その孤独の大きさに気づきいかに受け入れてゆくかで 今後の人生は大きく変わると、私も振り返り実感します。 大人になってもいつまでも苦しむひともいますから。 15歳はその長い孤独との戦いの入口かもしれませんね。 吉本さんの、子どもたちを前にしても先生然とせず、 いわゆる世間の常識ではなく、ご自身の経験から得た 真実の言葉だけで語られる授業は、 15歳の心にもきっとまっすぐに届いたことでしょう。 もっとも多感なこの時期に、 こんなふうに裸の心で向き合ってくれる大人がいるって、 それを知ることだけでも貴重なことですよね。 若い頃に読みたかった気もするけれど、今でも充分です。 付箋がいっぱいついていますから(笑) あらためて買って、手元に置きたいなぁと思います。

    1
    投稿日: 2012.04.17
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    この学生さんたちがうらやましいな~ 一年にわたり、4人の中高生と吉本さんが膝を突き合わせて いろんなことを考える「寺子屋」の記録。 自分の中にもちゃんと「わるいこと」を思う心あり。 沈黙もまた言葉なのだ、とも。

    0
    投稿日: 2012.03.26
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    中学生向けです。中学生の問いに吉本さんが答えられています。 ガラスの40代の(笑)おれにはとてもいい内容でした。 才能じゃなく手をどれだけ動かしたかなんだとか、とても説得力のある内容でした。 吉本さんの言葉は好きですが、本はおれには難しくなかなか読めませんでしたが、これはすらっと読めました。 中学生向けとはいえ大人に話すのと同じスタンスと思います。分かりやすく話されているとは思いますが。 参加している中学生達は皆すごくしっかりしている感じもあるので、普通の大人が読んでもしっくりと納得できる内容と思います。

    1
    投稿日: 2012.03.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    16日に亡くなられた吉本隆明さんの本です。 児童(中、高校生)向けの哲学書です。 この本の言葉は優しくて分かりやすく、そして子どもにも大人にも届く言葉で語りかけてくる。 生き方、考え方、人生、恋愛。それらについて語っています。私は思いついた様に時折この本を読みます。 目に見える事、瞬発力が重視されがちな昨今にこの本を読むと「そうでなくても良いのでは?」と思えたりします。 "人は誰でも、誰にもいわない言葉を持ってる。 沈黙も言葉なんです。 沈黙に対する想像力が身についたら、本当の意味で立派な大人になるきっかけをちゃんと持ってるといっていい" ー本文よりー

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    投稿日: 2012.03.17
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    同年代の子とあの吉本隆明が語りあったんだよ。おもしろいに決まってる。『蜜柑』『春と修羅』『三四郎』『それから』に興味をもつ。恋愛について大人と話すなんてすごい経験をしたもんだ。同年代でも、みんな考えていて悩んでいて、ひとりひとりすごいところがあって変なところもある。〈一般的な質問に対して、とても特殊な返答〉と村松くんは書くがそのとおり。吉本さんは自分で考えてこられたことしか言わないだろう。〈「経験」の濃度がちがう〉これは伊藤くん。何よりも大切なのは、経験したらこっそり考えること。吉本さんはそれをしてきた。

    2
    投稿日: 2011.10.24
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    この本を購入した理由は2つ。 ①糸井重里さんが吉本さんをリスペクトしているばっかりに、 どんな考え方の人なんだろう?と興味をもった ②思春期真っ盛りの妹にプレゼントするのにステキな本を探していた こどもたちから相談された悩みに、 吉本節でこたえていく問答集。 ①の理由がわかり、 そして②にも最適だということがわかりました。

    0
    投稿日: 2011.06.15
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    「人は誰でも誰にも言わない言葉を持っている。沈黙も言葉です。」15歳の子どもたちへの言葉は、大人の私のなかにも沁み込んでゆきます。昔は、生活の中でおとなたちの生き方や言葉に、生きていく為の指南の断片が散らばっていて、子どもたちは自然にそれを拾って自分の身につけていったのかもしれない。でも、現在の世の中にはそのような機会が激減してしまった。だからこそ、このような大人から子どもへしっかりと「伝えること」が必要なのかもしれない。時代にあわせた子どもへの伝え方があるのかもしれない、と思った。

    0
    投稿日: 2011.02.13
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    2011年1発目。 「15歳の寺小屋」シリーズのうちの1冊ということで、 32歳の私が読むのはどうかとも思いましたが、 いやはや深い話でした。 才能なんて関係ない。 「手」を動かせ。 「手」を動かせばなりたいものになれる。 「手」を動かさなきゃだめだ。 まったくもってそのとおりだと思います。 本気で何かになりたいと思ったら、 眺めているだけじゃダメなんだ。 「戦後思想界の巨人」と呼ばれている(らしい) 隆明氏がまるで「おじいちゃん」のように思えました。

    1
    投稿日: 2011.01.03