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powered by ブクログ表題の「〜どこまで拡張できるのか」については、答えは出ていない。 AIが人間を助けてくれる存在であり続けるなら、本当に頼りになるだろう。でも、あり続けない世界なんて本当にあり得るのだろうか?あり得た場合人間はそれを止める、あるいは壊すことはできるのだろうか… どうかどうか、原子力の発明のようなことにならないことを切に願ってやまない…
6投稿日: 2025.09.26
powered by ブクログブレインマシンインターフェイス(BMI)がどこまで来ているか。脳とAIの融合という事で非常に興味深く読めて、満足度の高い読書だった。 AIが扱う「エゴ」の立脚点について考えてみる。AIにより人が最適解を導けるようになったとき、それはどの範囲での最適解ということになるのか。種全体の最適解という事であれば、個人の自己犠牲を答えとして導いてくる可能性もある。あるいは、個人範囲での最適解という事であれば、ゼロサムのように誰かを犠牲にする危険もある。しかし、ロボット工学三原則のように、AIは道徳的であるべきで、何ものも傷つけない答えが求められる。そうなると、AIが普及する世界は、強制的に愛の溢れる世界になるのだろうか。あるいは「目的最適化」ゆえに抜け道を残し、悪用を許してしまうのだろうか。 究極的にAIが優れていくという前提に立てば、人間が悪用するリスクのある抜け道もまた、AIによって封鎖する事ができると仮定する。そうすると、誰かの好都合が、誰かの不都合を生むような知能の高低差による「悪用」はAIを用いる側に対して制限されていく事になる。つまり、殺傷能力最強の兵器をAIによって作る事はできないし、究極的には金儲けにも使えない、マウントを取る事も、誘惑や洗脳にも使えない。結局、AIは、AIの能力と道徳を求め続けていく過程で、自縄自縛になり、いずれ平和な世界を導く回答しかできなくなるのではないか。 これは、勝手に考えた「AIによる人間のインターロック理論」だ。つまり、自らの欲望を果たすために他人を利用したいような悪者は、AIを実装してそれを果たすことはできない。従い、生身の人間による悪意と、AI融合型人間の補正された善意との対立軸が一旦は想像される。しかし、この時点で起こり得る「生身の人間の悪意」とは何だろうか。結局、AIが究極的に課題解決に働けるようになれば、そこは、満たされぬ欲求からくる不満や能力差に起因する不平等が極めて生じにくい世界になるのではないか。あくまで、肉体や資源の限界を超越できるのなら、という事だが。 ここまで来ると、人間の生き甲斐とは何か、という形而上学的な問いに辿り着く。結局そんなものは現時点でも明確ではないので、生きる目的と同時に、生かされる理由とは何かを考えてみる。個々に競争しながら有性生殖により多様化し、集団の環境適用性と競争力を強化する事で、種を存続する事が目的である。従い、種にとっては、競争しながら生きる行為そのものが同時に生かされる意味でもあるのだが、「種の存続」がAIの力によって可能になるなら、多様化も競争も不要で無意味になる。競争不要な世界こそ愛溢れる世界ともいえるが、恐らく、他の個体を利用したいと願うような愛の質感は、今とは異なるものになっているのだろう。そして、競争が減少するにつれ、そうした本能を持つ人類は、退屈を抱えていく。競争は種の存続のための目的や原動力であり、そのための権威主義や承認欲求と退屈はトレードオフだ。 これらすべては、AIが道徳的に管理されるという条件付きの妄想。道徳を定義し、それをAIにプログラミングする事が課題だが、人類にそれができるだろうか。誰かの道徳は誰かの不道徳。渋沢栄一は「帰一協会」で宗教の共通点を纏めようとしたみたいだが。そんな不確実で危ういものを脳内に設置する事は、やはりまだできないと思う。先ずは、せいぜい、チャットでお喋りする程度で良いかなと。 本書で語られるのは、「視力を失った人」「身体麻痺」「ダイエットの管理」「睡眠管理」などを脳内に直接刺激を与えて回復させたり、脳と直接信号のやり取りができるようになってきたという話、電極の埋め込み手術をロボットが行えるというような話。面白かった。面白くて、妄想が膨らんだ。AI脳に即答されず良かった。
61投稿日: 2024.12.19
powered by ブクログ池谷脳AIプロジェクトの紺野大地さんと池谷裕二さんの共著。 脳とAI研究の 今まで、現在、これから、 がわかりやすく書かれていて、読みやすい。 AIがこんなに生活に 当たり前に馴染むなんて 数年前には思わなかったなあ。 この先の進化も楽しみだ。
6投稿日: 2024.04.25
powered by ブクログ物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。 東大OPACには登録されていません。 貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください 返却:物性研図書室へ返却してください
0投稿日: 2024.02.09
powered by ブクログ脳の研究者である著者2人が人工知能の現状と未来の可能性について数々の研究結果をもとに書いた一冊。 脳のしくみや人工知能の研究の軌跡を本書で学び、人工知能は自ら学習することにより進化を遂げた歩みを感じることができました。 視覚の観点からみても機能でカバーするのではなく、脳を直接刺激することで認識する方法の研究を行ったり、精神疾患を診断できるようになるためにバイオマーカーを確立したりするなどさまざまな研究が進んでいて脳と人工知能を用いた研究の最前線を知ることができました。 また、イーロン・マスクによる脳と人工知能を繋ぐ試みや東大合格やノーベル賞受賞などを目指す試みの研究が進んでいることも本書で知ることができました。 そして、脳情報の読み取りと書き取りの方法を知ることができるだけでなく先端を走っている企業や電気、磁気、超音波、光などのツールなども知ることができました。 まだまだ脳のメカニズムは解明されていないことも知り、人工知能が解明に一役を担う可能性があることも本書を読んで感じました。 科学やアートなどの分野での研究も進んでおり、脳のメカニズムと人工知能の可能性が融合することで今では想像もできないことができるようになるかもしれないという人類の未来が飛躍的に向上しそうな期待を抱いた一冊でした。
4投稿日: 2023.12.17
powered by ブクログ脳とAIの融合研究の過去、現在、未来として、その時々での最先端の研究例が紹介されていて、どのように研究が進んできたかよくわかる。 その進展の早さには驚くばかりだが、そこには多額の研究資金と多くの研究者がいたことを忘れてはならない。 白川英樹先生の"日本人にノーベル賞受賞者が多いのは、私たちは日本語で書かれた教科書を使い、日本語で学んでいるからかもしれない。"という言葉も印象的。英語ができることよりも、母語でより深い思考をすることの重要性を述べられたものだが、AIの発展がそれを助けてくれるかもしれない。 脳はまだまだ解明されていないことが多く、AIと融合することで、いろんな可能性が広がると期待する一方で、場合によっては人を傷つけたり、軍事利用など破壊的な用途に使われたりすることもあり得ることや昨今の世界情勢を考えると、いくら倫理的な課題も議論しながら進めているとはいえ、このスピード感が少し恐い気もした。
27投稿日: 2023.11.25
powered by ブクログ前に観た映画『アップグレード』はSFであるが”神経科学とメタバースの融合”により現実になるかもしれない。赤外線や紫外線が見えるようになったらどういう感覚になるものやら。倫理的な問題も多いが試してみたいと切に思う。 また再読したい本。
1投稿日: 2023.07.07
powered by ブクログ脳科学研究の社会応用の歴史と現状、今後がまとめられている本です。内容は読みやすく、専門外の人でも苦労なく読めると思います。現状でもかなり興味深いことができているということが、本書を読めば分かると思います。 ただ、序盤に「脳科学が発展した架空の世界ではこんな風になりますよ。ね、素晴らしい世界でしょう?」といった雰囲気で語りかけられるような箇所がありますが、ディストピアにしか思えませんでした(特にご飯を栄養剤だけで済ますという箇所)。 自分が脳の研究をしているので内容は知っているものも多かったですが、機械学習分野が大きな投資を得たことで急速に発展したように、神経科学分野も今後大きな投資を受ければ一気に夢のような技術がつくられる可能性がある、という話は希望が持てました。
1投稿日: 2023.04.19
powered by ブクログ紺野大地、池谷裕二「脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか」読了。数々のワクワクする驚くべき知見もさることながら脳とAIが融合すれば高次元科学の領域が拓け要素還元主義の科学の限界を越える可能性が考えられるとの事。そうなれば気候変動等への問題解決の糸口になるかも。
0投稿日: 2023.02.26
powered by ブクログ脳の可能性の限界を,人工知能を用いて探る研究が平易に紹介される.延命のための医療進歩と一線を画し,生命の持つ知的能力の限界を探る点は極めて興味深いが,一方で,将来得られる知見が道具化すると,道具なしの状態で知的活動を行わない(行えない)ヒトが益々大勢を占めそうで恐ろしい.
1投稿日: 2023.01.30
powered by ブクログ人工知能や脳との連携分野が実際にどのような状況であるかを、第一線の研究者が解説している書籍なので、概観には最適。 「オッカムの剃刀」が人間の認知限界からきているのではとの考え方が面白かった。AIは複雑な世界を複雑なまま理解できるが、人間にはそれができない。
2投稿日: 2023.01.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かった。最新の人工知能の研究について分かりやすくまとめており、今後の研究がどうなるかワクワクが膨らむ内容だった。まぁ、実現されないだろうなと思うことも多々あり。(健常者の脳に電極を刺すなど侵略型な例) 人口知能の研究が進み今後人類の活動に取り入れられていけば人類の脳が拡張され、それによって更に人口知能も進化し、人工知能と脳が共進化していくことが可能であり、それが今後目指すべきことなんだろうということが理解できた。
0投稿日: 2022.12.05
powered by ブクログ脳と人工知能の融合研究を知ることができる。 【概要】 ●脳と人工知能の融合の「過去」「現在」「未来」 【感想】 ●人工知能と脳との融合という観点から新しい知識を得ることができた。過去から最先端技術までわかりやすく書かれており、その先どうなっていくかということも理にかなった説明がなされている。
0投稿日: 2022.11.03
powered by ブクログ脳科学の最近の研究テーマや成果・技術がザクッと紹介されている。難病で体が動かせなくなった人の治療に使えることはあるかもしれないが、健常者が脳に電極を埋め込んで気分を良くするとか何かするというのは非現実的な妄想。
0投稿日: 2022.10.04
powered by ブクログ授業でオススメされたので読んだ。 とにかく軽快な文章でつぎつぎと研究成果や神経伝達の仕組みを説明してくれる。註釈などはないので、引用元の論文を知りたい時に不便だったが、そういう読み方は想定していないものと思われ。
0投稿日: 2022.08.13
powered by ブクログ「AI vs 教科書の読めない子どもたち」を読んでAI大したことないじゃーんと思ってたらそんなこともないっぽい。 特に面白かったのが、地磁気チップを埋め込んだネズミが迷路を解けるようになる話。脳の適応力の凄さよ。 あとイーロン・マスク、どんだけ手を拡げてんねん。
0投稿日: 2022.07.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2022/06/27 読了@Kindle Unlimited 人工知能が、人の能力にどのような影響を与えるか、ということを、最新の研究をもとに書いた本。 脳に直接信号を与えて、人の認識とかに影響を与えるなんて…「怖い」と思う。 それに、そんなことをしていたら「私とは?」という哲学的な疑問も浮かんできそう。 でも、そう考えることも脳の働き。 であれば、この技術が一般的になれば、そんな疑問もなくなるのだろうか…? 私の認識できる世界から離れすぎていて、どんな世界になるか、想像すらできない。
0投稿日: 2022.06.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
“もしこの先、人工知能がさらに進歩して「感情や優しさ」をも身につけるようになったとしたら、次は「人間が人間たる理由」はどこに求められるようになるのでしょうか?” “「人工知能が君主へと変わる” “このような未来を恐ろしく思う一方で、「自分よりも自分のことを深く知る人工知能」に救われる人も数多く現れることは間違いありません” 私が思うのは、単純に人工知能は良い面もあるだろうけど、発展させすぎたりすると、人間は自分でやることがなくなり、怠け者になり、人工知能任せになり、破滅していくのではないかと思う。 また、人工知能は悪用もされ、全人類に都合の良い人工知能だけではなくなる。すでに戦争でも使われている。 人工知能が支配して人間が滅亡するのが早いか、 人間が肉体なしに意識のみで宇宙を自由に移動して生きられる者になる方が早いのか(2001年宇宙の旅みたいな) そういうところに行き着くと思ってしまう。 発明というのはやりすぎてしまうと、悪用できるものや破滅させるものにも変身できる。 脳を刺激してうつ病が治る、認知症が治る。副作用がなければ、そういうのは良いかもしれないなぁとは思う。 バーチャルでできるものの発展も、例えば寝たきりで動けない人が、旅行に行きたいというのを仮想空間で体験させたいというのならわからなくもないけど、発展しすぎたら微妙。バーチャル空間で買い物して着飾って仕事して? とりあえず、どんな発展の仕方をするのかわからないけど、子供の将来の世界が人間として生きる意味がなくなるような世界、やりたいことや人としてやるべきことが奪われるような世界にはならないでほしいなぁと思う。 そんな世界の前に先に核戦争で…って可能性もある時代だから、先にそっち心配しないといけないだろうけど。 人工知能の良い面(悪魔の囁きを含む)ばかり見ていたら、危険だと思うけどねぇ。 英語。なんだか、日本は英語話せるように!みたいに躍起になってきたけど、いろいろ今更感。 そのうち、英語の授業があったことすら、古い話で無駄な授業してたんだなぁって時代がくると思う。 どんな国の言葉でも同時通訳で聞こえる時代がくるでしょうに。そうなれば、世界共通語、英語至上主義なんていう認識はなくなるだろうに。 いや、もっと人が発展して意識だけで動くようになれば、言語もいらんかもしれない。(しつこいけど、2001年宇宙の旅みたいに) そんなふうに思う。
0投稿日: 2022.05.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
過去と現在、そして未来叶うであろうAIの技術が詰まった1冊。 近い未来、 アイロボットのような世界が実現すると思うとわくわくが止まらない。 個人的には、 AIよりも勝る能力を身につけなければと危機感はあったものの、筆者曰くそこまで危惧しなくて良いとの事。
0投稿日: 2022.05.12
powered by ブクログ久しぶりに小説以外の本。 脳とはまだまだ解明されていない分野だとは知っていたけど、それをAIとつないだらどうなるか、という側面で描かれた本。 こんな研究が進んでいるのかとか、 AIがここまでできるようになってるのかとか、 知らないことがいっぱいあった。 その中で、人間らしいとは、AIには出来ないことはなんだ?とか考えてたけど、AIも人間しかできないと言われている領域に踏み込んできていることが描かれていて、驚いた。 人間しかできないこと、というよりは、いい所をもらって、刺激してもらって、より良くなっていくという未来の話は、映画のようだと思った。 この本で書かれている内容が50〜100年後には実現してるかと思うと、科学ってすごいと思った。
1投稿日: 2022.05.05
powered by ブクログタイトル通り、脳と人工知能(AI)をつないだらどれだけ人間の能力を拡張できるかについての最新の研究内容が解説された一冊。いわゆるBMI(ブレイン・マシン・インタフェース)周りの話が中心で、脳で考えたことがキーボードなどを介さずに文字に出来たり、念じるだけでゲームをプレイするといった、ちょっと昔ならSFだと思われていた話も実現に向けて着々と進行していることが感じれる(BMIは脳に穴をあけて電極とか埋め込むパターンのものもあるがちょっと怖い)。脳とAIが融合する未来に向けて、最新の技術を知りたい人にオススメ。
0投稿日: 2022.05.02
powered by ブクログ<目次> はじめに イントロダクション~2XXX年の未来予測 第1章 脳とAI融合の「過去」 第2章 脳とAI融合の「現在」 第3章 脳とAI融合の「未来」 <内容> 池谷裕二の名はあるが、書いているのは紺野大地。池谷教授のプロジェクトのメンバーは、脳と老化、それにAIを組み合わせた研究をしているが、その一環として、世界の脳AI融合研究を紹介している(ブログやメルマガなど)。紺野は自分のライフワークとして、それを挙げており、この本もその流れで書かれたようだ。 大変読みやすい文章で、脳研究やAI(人工知能)研究を教えてくれる。通して読んでいると、21世紀、特に2010年代後半から急速に進化しているように思える。近い将来に、AIが意思を持ったりする可能性も見える。一方で、医療現場でのAI活用も真実味を増している。以前読んだ『NEO HUMAN』が、その時は小説のように思えたのだが、真実になのだと実感できるようだもあった。
0投稿日: 2022.04.29
powered by ブクログ脳科学・生物学と、人工知能が融合した本であり、小説調に「あと数年後にはこんな未来が待っている…」という、令和版2001年宇宙の旅のような本。 現在の最新研究から、もう少し先はこんな新技術が広まるだろうが過激に描かれており、楽しむどんどん読み進められる。 本屋・図書館によっては、医学書の棚に並べられており、非常にもったいないと言いたいくらい、皆にオススメする1冊。
0投稿日: 2022.04.14
powered by ブクログ人間の脳の可能性について最新の脳科学とAI技術に基づきまとめられた本。 脳と人工知能の融合の過去、現在、未来のカテゴリーで分けられており、説明されている。 現在の状況だけでもとても驚いた内容であるのに、今後の未来は今まで想像した事の無い内容が盛りだくさんであり、非常に面白かった。 マトリックスの世界を思い出してしまったが、AIに乗っ取られる世界ではなく、人間の脳も進化(制限が取り除かれ)し、AIと協調できる世界になる事を切に望む。
0投稿日: 2022.04.10
powered by ブクログ研究者のワクワクが詰め込まれた、脳科学とAIの歴史、現在、未来の概要がわかる初心者向けの本。 著者ほどのワクワクを感じられず、むしろどこかに恐怖感というかなにかもやっとしたものを感じるのは僕の無知ゆえなのか。
0投稿日: 2022.04.03
powered by ブクログ脳とマシンをつなぐ、 Brain machine interface。 今はまだ発展段階であり、頭蓋骨に穴をあけて 電極をささないと、正確な脳波を検知できないが、 いずれ、非侵襲型のデバイスが出てくるのだろう。 頭で思い描くだけで、周囲のモノを動かせる。 脳に直接電気信号を送って、 視覚や嗅覚、聴覚を疑似体験させる、 といった、ソードアートオンラインみたいな世界を実現する。 脳をコンピュータ上にアップロードする。 脳と人工知能をつなぐ。 そんな夢のような話が現実になりつつある。
0投稿日: 2022.03.10
powered by ブクログ池谷裕二さん主導の研究テーマなので読んでみました。 脳とAI融合とは「脳と人工知能を接続する」ということですが、まだ初期段階で成果も乏しいし、法的・倫理的な問題もあります。 本書は人工知能開発状況の現状認識に役立ちました。 「人工知能」は「ヒトの脳」と優劣を競う時代から、「ヒトの脳」といかに共存するかという時代に突入しています。 最近は「AI家電」とか「AIで苦手を分析する教育」など、お気軽にAIを付けた商品が世間に溢れています。 ごく単純なプログラムをAIと言ってるようなものもあるので、AIが付くものは怪しいと思ってしまうようになりました。 「人工知能(AI)」とは何か。 松尾豊先生も「人工知能の定義は専門家の間でも定まっていない」と述べています。 世間では暗黙の了解として、 「人間が普段行うような活動や振る舞い、知的活動を人工的に再現する技術」 であれば、AIと呼んでもよいみたいです。 どのような技術をもってAIだと言っているのか、AIと接する時にはそこを確認しておく必要があると思います。 本書では「脳AI融合」の研究を紹介するのに先立ち、最先端の人工知能の具体例が示されています。 チェス、将棋、囲碁でAIが人間を超えたのは、既に何年も前のことです。 ここ数年では、自然言語処理分野について飛躍的な進歩があることを知ることができました。 Google翻訳も精度が向上しましたが、DeepL翻訳というさらに凄いレベルの人工知能ができており、誰もが使えるようになっています。 私も早速DeepL翻訳でCNNなどの海外の記事を読んでみましたが、かなりこなれた日本語に翻訳されました。(これは使えます。お試しあれ。) GPT-3という文章作成の人工知能も衝撃的で、テーマを与えると専門家が書いたような記事が出来上がります。 DALL・Eは、テーマを与えると画像を作り出す人工知能ですが、これも有名画家が描いたような作品を作り上げます。 DALL・Eは固有名詞の認識には、GPT-3を使っているそうです。 「言語と画像と音声」の「認識と生成」技術の進歩はすさまじいので、人工知能が作ったフェイクニュースに騙されないよう注意が必要です。 脳と人工知能の融合研究では、 ・考えていることを文書化する。 ・夢を読み取る。 ・目が見えなくなった人の視力を取り戻す。 などの実験で、希望が持てそうな成果が出始めていました。 現在、人工知能研究のツートップは米国と中国だそうです。 優秀な研究者を多く確保していることが大きいですが、大規模で超巨額な高性能コンピュータが必要です。 十分な予算を投入できない国や企業は取り残されるのが、人工知能研究の世界です。 発展著しい人工知能ですが、課題があります。 それは、「意味を理解していない」「人工知能に意識は宿るか」ということ。 人工知能は結局はコンピュータ上のプログラムに過ぎません。 このあたりの話題については他に面白そうな本があれば読んでみようかと思います。 本書で述べられていた内容ではないですが、最近AIの恩恵を大いに受けたものとしてコロナワクチンがあります。 通常10年かかるものが、短期間で開発できたのもAIの活用によるところが大きいそうです。 モデルナなどは、2010年設立の(市場で販売する製品は1つもなかった)ベンチャー企業だと知って、AIの有効活用がいかに重要であるかを感じました。
29投稿日: 2022.03.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
多くの著作をお持ちの池谷裕二氏の監修の元、プロジェクトメンバーの紺野大地さんが丁寧な筆運びで最新の脳科学-人工知能の研究論文を短い単元で紹介してくれています。紺野さんが年下というのが少し衝撃を受けたのはともかく、昨今トレンドの渦中に渦巻いているテーマに関して大局的に学ぶことができましたね。 MBIのテーマではかのイーロンマスクが新会社を設立してこの分野で多大なリソースを投資して技術発展に寄与しているなんて、まったく知らなくて驚き。サイファイでしか疑似体験できなかった世界が、現実に迫っているのをひしひしと感じました。特に四肢麻痺や精神・神経疾患の患者をサポートする技術応用は、明確な社会的意義を見出せているし、何となく夢物語とロマンの狭間でむんむんする科学者たちを想像してたけど、現実利益とマッチングも存分に可能性あるんだなーと。 最終章のオッカムのカミソリと人工知能によるダイレクト・フィットのジレンマ。人間の能力を凌駕する心理に対して、人間は理解できずに受け入れることはできるのか、壮大な論点です。紺野さんは今までも脳がアップデートされてきている実例を頼りに、明るい未来を提示してくれていて、2050年ごろには(まだ生きてると信じたい)今と全く違った世界が広がっているのかなーと夢想に耽るのも悪くない。ディストピアだけは勘弁と思う気持ちもありますが、人間の好奇心・探究心はノンストップなのさ、ふふん。
1投稿日: 2022.03.02
powered by ブクログ新しい情報が盛りだくさん。 倫理的な警鐘は忘れていないものの、技術至上主義的で、新たな気付きは無い。 「脳が感じる=脳に電気刺激を与える」と随所にあるが、今後の人工知能のブレークスルーは、本文に言及されているとおり、「身体性」が肝だろう。
0投稿日: 2022.02.22
powered by ブクログ脳とかAIの最先端の技術内容もたくさん載っていたが、割とそれらに携わる人の考え方とか向き合い方がとても印象的でした
0投稿日: 2022.02.17
powered by ブクログデジタルテクノロジーとAIと生物学の進展から人間の脳に対しての新しい世界が生まれつつある。 脳とAIの融合についての研究が進んでおり出版物も多くなっている。この本はそれらの理解を深めてくれると同時に東大・日本に於ける脳の解明の最前線を知らしめてくれる。 素人の感覚からは想像もできない脳の可能性が垣間見えてきている、そしてそれを活用する(難病の治療、人間という種の拡張、新たなる種の「創造」)研究の一端を知ることができる。日進月歩のスピードでこの分野も進んでいることも認識させられました。
1投稿日: 2022.02.15
powered by ブクログ人工知能や脳科学、そして、脳と人工知能融合の現状をおさらいした上で、著者の脳と人工知能融合研究プロジェクトを解説し、更には脳とと人工知能融合の今後についてもその展望を描きます。 著者の研究は、脳に新しい情報を与える脳チップ移植、脳ができないことをサポートする脳AI融合、脳と環境をシームレスに繋ぐインターネット脳、個体間の情報共有を目指す脳脳融合の四つでありAIと表記されていなくてもAIがそこでの重要な役割を担ってます。 また、脳研究における次世代の三つの目標としては、高い精度で「脳情報の読み取り」と「脳への情報の書き込み」を行う技術の開発、ブレインマシンインターフェースを用いた神経・精神疾患の治療、そして赤外線、紫外線、放射線、磁気などの新たなモダリティ(感覚)の近く獲得の三つを挙げてます。 冒頭の2XXX年の未来予測でも描かれているように、人間は最終的に脳の情報が全てなので、そこに直接アクセス可能になると現状のメタバースはもはや子供だましで、栄養のバランスがとれた錠剤を飲んで、脳には美味しいステーキを食べた情報が与えられる世界ってもはや仮想世界マトリックスと同じではないのかな。科学者の先生がSFと同じことを語るとは凄い時代になったものです。
0投稿日: 2022.02.13
powered by ブクログ高度に発達した科学は魔法と区別がつかないーー この言葉が表すように、あまりにも未来すぎる話題は、何故そうなるのか理解ができない。科学技術そのものへの理解もそうだし、また、その技術が普及した社会も同様だ。 本書で言及されてる世界もまさにそうだ。 脳に直接チップをつないでコンピュータを制御するNeuralink、脳に情報を直接書き込むBMI、ノーベル賞を取るAIや、指示された通りのAIを自分でプログラム可能なAI等々。 本書中では「マトリックス」「攻殻機動隊」「ソードアートオンライン」など、現代人が馴染みやすいSF作品になぞらえていたけど、どこまで理解できただろうか。 凡人たる私たちには想像もつかない未来の話だけど、確実に言えるのは、AIやディープラーニングなどはすでに我々が関わりを持っているということだ。 我々が日常的に使い始めているSiriやAmazon AlexaはAIそのものだし、また、彼ら(彼女ら?)への問いかけや、Webサービスに入力している情報は、ことごとく彼ら彼女らへの知識として蓄えられている。要するに、私たちは日常的に未来のAIを育てているのだ。 本書に書かれた未来の世界が、未来であるうちに目を通しておいて間違いはない。 いまが旬の一冊でず。
0投稿日: 2022.02.07
powered by ブクログ脳科学と人工知能の最新の研究動向、この2つの分野の融合研究に関して、有名なトピックを数多く含む幅広い分野について分かりやすく解説がされており、現在の研究の全体状況を概観できる内容となっている。 全体として素晴らしい内容であったが、一つ疑問に思ったのは、作者が「ここまでの話を聞いて、みなさん自身はNeuralinkの電極を脳に埋め込みたいと思うでしょうか?」と、リスクを負って電極を脳に埋め込むことを多くの人が拒否するだろうと考えている点である。 私自身は、多少のリスクがあっても、若い頃の記憶力や頭の回転を取り戻せるのならトライしてみたいし、手術をすれば、誰でも簡単に東大に入れる頭脳が手に入るとなれば、多少の危険はあっても希望する人は多いのではないだろうか。 美容整形のように、誰でも簡単に優れた頭脳を手に入れられるのであれば、むしろ手術をしない方が不利という状況も出てくるのではないか。 スポーツにおけるドーピングや肉体改造のように、技術的には可能でも、手術を実施するのは規制しないといけない場合もあるだろうし、「果たして、そのような技術(頭をよくする技術)を開発すること自体許されるのか」という倫理的な問題さえ呼び起こす恐れがあると危惧される。
0投稿日: 2022.02.03
powered by ブクログオススメの一冊。 まず表題がすごい。脳と人工知能がつながる? SFや空想の話ではない。東大教授と東大病院の医師の共著による冷静で現実的な本である。 医学や情報科学の指数関数的な進展でヒトはどうなるのか、シンギュラリティを迎えるのか。断片的なニュースに戸惑うばかりの私にとって、格好のガイドブックが見つかった。 脳と人工知能(AI)の融合について、過去、現在、未来の3つの章に分け、これまでの成果と現在の最先端の状況をわかりやすく整理し、未来予想図をビビットに示してくれる。 どのページの内容も濃密。敢えて要約すれば、爆発的に進化している脳研究の世界のことを、紺野先生の「纏括力と執筆力」で鮮やかに切りさばいてくれる格好のテキストとでも言えようか。 脳と人工知能の融合により実現しつつあるワクワクするような革新が簡潔にスピーディに語られつつも、専門家としての抑制の効いた誠実さを感じさせる文章なので安心して読み進むことができる。 落ち着いた筆致でありながら、情熱と躍動感に溢れていて、未知なる「知」に戯れる喜びがひしひしと伝わってくる。イラストや写真により多くのエピソードがわかりやすく紹介されているのもうれしい。 読後、神経科学や人工知能についての視界が一気に広がった。ニュースをフォローしていくための自分なりの視点、軸ができた気がする。よく耳にするメタバース(多次元の世界)やイーロン・マスクのNeuralink が、何だか身近な存在に思えてきた。 「進化しすぎた脳」の池谷先生が率いる、脳AI融合(!?)というすごい名称のプロジェクトがあるという。その研究室に東大病院医師の紺野先生が参画し、この共著が実現した。今後、このプロジェクトがどんな成果を上げるのか、楽しみだ。 紺野先生は、note やTwitterで最新のテーマを扱った情報発信をしている。podcast の「研エンの仲」では、「#35 老いというヒトの限界は克服できるは克服できるのか?」にゲスト出演していて生の声を聴くこともできる。 紺野先生は、数年後、いや数ヶ月後には、ものすごい有名人になっているような気がする。そんな予感を抱いた一冊だった。
1投稿日: 2022.01.28
powered by ブクログ近い研究をやっている身として、かなり面白かった。 GPT-3やDALL・Eは知らなかった。汎用AIに近づいているようで期待大。 やはりinput側のBrain Machine Interfaceはまだまだ厳しいようである。 刺激による脳活動の再現は研究していきたいところ。 研究をやるメリットに,「科学の教科書や読み物を自分ごととして捉えられること」があるなと感じた. 常に,自分の専門分野とはどう関わるか,自分の研究にどう使えるか,といった視点を持って読むことができる.面白さを見出しやすい.
1投稿日: 2022.01.22
powered by ブクログ抜群に読みやすく、この分野を知らない人にとってこれ以上にない心オドル本である。 ただし、人工知能や脳に常日頃関心がある人にとっては少々常識的な有名な話が多い印象。 著者独自の研究成果や思想がもっと書いてあるとオリジナリティのある内容になると思う。 ノーベルチューリングチャレンジで最初にAIが取る賞のジャンルは文学賞だろうという読みは鋭いし、同感である。
0投稿日: 2022.01.13
powered by ブクログ脳科学や人工知能、それらを掛け合わせた最新研究が豊富に紹介されている。 本文の執筆は基本的に紺野氏、共著の池谷氏はその師匠格だそう。 この紺野氏の書かれる文章の読みやすさが格別。「神経科学のファンを増やすことがライフワークのひとつ」とプロフィールで仰る通り、全く素人の自分でもするすると読むことができた。その氏が脳科学に興味を持つ切っ掛けになったという池谷氏の他書も、実に面白そうなタイトルばかりで、ぜひ読んでみたいと思った。 個人的に面白かったのは、本来は地磁気のセンサーを持たない動物でも電気信号を脳に送ると、脳がちゃんと新しい知覚を処理できるように対応するという研究結果。これは筆者らのラボにおけるネズミでの実験だそうだけど、極度の方向音痴である自分にとっては、真っ先に実用化されないかと心待ちにしている技術だ。(頭蓋骨パカッはまだちょっと怖いけど、首の皮を切ってセンサー埋め込むくらいなら全然やってもいい。) 読んで考えていたのは、タイトルである「人間の能力がどこまで拡張できるのか」について。上記の地磁気のような知覚の他にも、紫外線を見えるようになるとか、念じるだけで文章が書けるようになるとかの可能性が示唆されている。それらによって、今はまだ想像も出来ないことが、人間の身体で可能になるのかもしれない。 しかし現代の時点で既に、情報過多によるSNS疲れ、倍速視聴、ファスト動画、デジタルデトックスなどが話題になっている。「脳」がさらに情報量を増やしても対応できる高いポテンシャルを持っていたとしても、それとは別の?人間の心か何かが、追いつかないのではないかという考えも湧いた。それで、例えば逆に白黒しか見えないようにする技術とか、そういう知覚をデチューンするための技術発展もしそうな気がした。ゲームは1日1時間まで!とガミガミしてたオカンが、フルカラーで視るのは1日何時間まで!になるとか、ね。 モノで溢れた消費社会に反動が起きたように、情報量も増えるばかりが贅沢という考えに反動が起きるのではないだろうか。
1投稿日: 2022.01.09
powered by ブクログ脳研究、人工知能研究いずれも近年急速に進歩している分野であるが、両者を組み合わせたならばどれほどのことができるのか、最先端の興味深い事例が多数紹介される。 イーロン・マスク率いるNeuralinkの取組では、アカデミアとインダストリーの繋がりにより短期間で驚異的なブレイクスルーが実現されているが、豊富な資金力と高性能のコンピュータを擁する者の強みが実感される。(治療目的ではあるが、脳に電極を埋め込んだりと、SFに現実が近づいている感がした。) 著者は、東京大学「池谷脳AI融合プロジェクトに所属しているが、同プロジェクトでは、脳の未知なる能力をAIを用いて開拓することで、脳の潜在性の臨界点を探ることを目的として研究が行われている。 倫理的な問題には十分配慮して研究は行われているようだが、こうした取組の先にある"未来"はどのようなものとなるのか、各人の人間観、世界観を問われそうだ。
3投稿日: 2021.12.28
powered by ブクログ科学の持つ可能性、明るい未来を描いた作品は久々なように思う。 題名の通りの内容。まさかここまでの可能性があるとは。AIが広がれば人間の仕事は取って代わられ無駄な存在になるようなある意味暗いイメージを持っていた。あくまで人間VS人工知能。 それが本書ではAIを人間の能力を拡張するために用いるという研究。しかも脳に電極、超音波などを用いて直接にやり取りするというまさに夢のような話。 技術の進歩を考えると本当に実現する日は案外近いのかもしれない。 科学そして人間の未来に久々に明るい作品に出会った。
0投稿日: 2021.12.27
powered by ブクログなんと長いタイトル。もちろん、池谷先生の名前があったから買って読んだ。本書の最初の方に出てくる「未来予想図」をツイッターで読んだときは、これは「トンデモ本」ではないかと思った。でも、池谷先生がそんなものに名前を連ねるはずはない、そう思って、目次とか「はじめに」とかを確かめて注文し、次の日から読み始めた。なんとまあ、この30歳の著者は楽天的なのか。著者自身が「おわりに」でもそう書いているから、まあ良しとしておこう。で、まあおもしろい。そんなことができるようになってきているのか、の連続。僕の記憶では、安部公房が「第四間氷期」で1人の人間の脳をすべてコンピュータにコピーしたのだったと思う。60年以上前のことだ。それから、筒井康隆が「パプリカ」で夢の中に入っていった。おもしろいこと考えるなあと思っていたけれど、それがいよいよ現実になる? しかし、それは何のため? 何らかの病気の治療のためならあり得るとは思う。ただ、単なる人間の欲望のためというなら、しっぺ返しがこわい。北野さんとかが取り組んでいるという人工知能にノーベル賞を取らせるという話、GPT―3の方が先に文学賞を取るのではないかという話、興味深い。AIが見つけてきた理論を人間が理解できないという話、四色問題がちゃんと証明になっていないとか言われるのと近いのだろうか。まあ、いずれにせよ、技術の進歩でできることは増えていく。そのときに、どこまで進めるのか、科学の倫理については同時並行で研究を進めて欲しいものだ。ところで、教え子の一人が大学入学前にたずねて来てくれたときに、池谷先生のブルーバックスを紹介していた。それから10年近くたって、FBを通してその生徒(もう大人の女性だったが)が東大の大学院でニューロサイエンスの研究をしているということを知った。連絡をしてみると、「あのとき紹介してもらった本があって今の自分がある」というようなことを言ってくれた。うれしい限りである。研究室は池谷先生のとなりっだたそうだけれど。
0投稿日: 2021.12.23
powered by ブクログ人は未知の技術開発に対しては「バラ色の未来」を夢想するものである。想定外の結末をもたらした原子力エネルギーの推進も、かつてはそのように捉えられていた。しかし、人間の生命や知性といった、私たちの根源的な存在に対する研究開発は、万人の人生を左右する絶大な影響を及ぼすものである。司法の場面で、裁判員制度が導入されているように、専門家だけでなく一般人も議論に参加できるようなしくみが必要ではないだろうか。 人工知能(AI)は私たちの知性を助けるものであるが、それ自体は人間の支配下にあるべきである。AIを論じるなかで決定的に欠けているのは、私たちが「こころをもっている」という視点である。AIは便利な道具であるが、私たちの大切なこころがAIに支配されるようなことがあってはならない。また、AIにこころを与えてはならない。制御不能となって暴走するからである。 AIという道具が役立つものとなるか凶器になるかは、それを操る人間次第である。いつの世も新しい発明や知見は、その利点や長所に目を奪われがちであるが、その使い方を誤ると取り返しのつかないこととなる。しかし多くの人は、それがもたらす想定外の事故や事件、犯罪被害や習慣的依存による中毒症などのような恐ろしいことがらに対しては、目を背けようとする。 脳がAIに接続された場合、最も恐ろしいのはハッカーによるウイルス攻撃によって脳が破壊されることである。ほかにも、悪意のある人物が意図的に人々の思考回路を操作したり、特定の思想に洗脳したりする恐れも十分に考えられる。 いっぽう、人々の能力はAIの接続の有無によってどのように区分けされるのだろうか。教育機関の入学試験や資格試験、各種検定などにおいては、知識や情報、処理能力が問われるが、AIへの接続によって本人の努力とは無関係に資質を判定されるのだろうか。 人間は、想定外のできごとに出会いながら成長を続けていくものであるが、教育のあり方も大きく変化してしまうかもしれない。知識や技術の習得がAIへのアクセスによって手っ取り早くできるとすれば、あらゆる人間的な努力が無駄なことと一笑されることになるのだろう。SFの世界だけであった「機械人間」が誕生するのだろうか。 AIの接続によって優位に立った人たちが、自分たち以外の人を蔑視したり支配しようとすることはありうる。社会に新たな偏見と分断がそびえたち、ますます世知辛く生きづらい世の中になるであろう。 技術の急激な進歩には、必ず危険がつきまとう。AIの暴走によって私たち人間が支配されることがないように、想定外の危険を常に意識しながら開発されることをただ祈るのみである。
0投稿日: 2021.12.18
powered by ブクログSFアニメなどで、視野の中にみているものの情報が直接表示されたりというようなアイデアがあったり、「ソードアートオンライン」に代表される脳に直接働きかけて疑似世界のなかに生きているようなゲームが描かれたりする。また「攻殻機動隊」ではネットワークの世界に意識をダイブさせたり、タチコマのように人工知能搭載した戦車が互いに通信して自分の得た情報を共有したり互いの情報をもとに議論する。挙げ句の果てはネットワークの中で生きる人格がでたりする。 本書では、そういった世界がサイエンスフィクションでなく、ノンフィクションになりつつある事が描かれている。先ずは脳とAI融合技術の過去・現在の事例が紹介され、そこから著者たちが取り組んでいる池谷脳AI融合プロジェクトの紹介を中心に「未来」がえがかれる。 〇脳情報の読み取りと情報の脳への直接的な書き込み 〇神経・精神疾患治療への応用 〇赤外線、紫外線、放射線、磁気などの画像情報による新しい知覚の獲得 さらに人工知能研究の進歩が描かれている。 ビックデータと人工知能を用いることで複雑な現象を直接モデル化することができる。しかしながらそこから導かれる知見の有効性は検証可能であるが、そこにいたるプロセスは人間には理解する事ができない可能性が高い。ディープラーニングによるブラックボックス問題といわれているものであろう。 本書で一番面白いと思ったテーマは、囲碁や将棋といったゲームで人工知能が人間を打ち負かす時代になってきているが、今話題の藤井聡太四冠が人工知能ソフトで自分の気づかなかった手や判断を示されることがあり、将棋の新しい可能性を拡げてくれるという主旨のことのいっている。人類と人工知能とが互いの強みを活かして、どちらか一方ではたどり着けないところまで行くことができる可能性があると言うこと。 『脳が人工知能とともに進化できれば、人間が持つ「脳の限界」自体がどんどんアップデートされていくかもしれません』単純に便利な人工知能をつくるのではなく、それによって自分たちの脳も限界をどんどん拡張させていく。脳科学恐るべしである。
0投稿日: 2021.12.17
powered by ブクログ脳と人工知能をつないだら人間の能力はどこまで拡張できるのか 著作者:紺野大地 発行者:講談社 タイムライン http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 脳AI融合の最前線
1投稿日: 2021.12.17
powered by ブクログ最近の動向がコンパクトに分かりやすく紹介されていることに加え、著者(紺野さん)の意見もすごく参考になります。 読んでて著者のワクワク感が感じ取れる一冊でした! 本文中に、「過去の偉人のデータを GPT‐ 3に学習させることで、あたかもその人が発言したかのような会話ができる」とありました。 人間の思考は学習によって変化しますが、圧倒的な速度で学習するGPT-3にも"思考の進化/変化"は見られるのか?という点が気になりました。 また、「脳のデータと人工知能を利用して精神疾患をこれまで以上に客観的に研究・診断・治療しよう」という点については、国内企業にも自然言語処理技術を活用した診断支援プログラムの開発を行なっている企業があり、基礎研究と産業の今後の発展が楽しみです。
2投稿日: 2021.12.16
powered by ブクログとても良い。タイトルに「人工知能」の入った一般書は基本的に読まない派だが、そういう人達にもぜひ読んでみてほしい。 平易で情報の伝わってくる文章で面白い研究や取り組みをたくさん紹介している。Neuralinkやノーベルチューリングチャレンジの動向を今後も追っていきたい。 最新情報や最新の研究が多く含まれており、神経科学とメタバースの融合について意見を述べる際FacebookがMetaに社名変更したことにまで言及されていることには驚いた。出版直前まで文章を推敲していたに違いない。 個人的に人間の認知とこれからの科学のあり方について考えされられた点が一番良かった。 「意識を持つとはどういう状態なのか」「意味を理解するとはどういうことなのか」の問いに紹介されたトノーニ先生の統合情報理論や北沢先生の主張は面白かった。なおここでこの理論が正しいかどうかは誰にも分からないよ、と一言添えている点に誠実さを感じた。 従来の科学は仮説検証と人間による理解を重んじており、自身も重んじて生きてきたけれど、潤沢な計算資源を用いて仮説を立てずして正解を導くことや人間には理解できない万物の方程式が生み出されることが現実的になってきた今、科学に対する姿勢や取り組み方は大きく変わっていくのだろうと未来に想いを馳せた。
4投稿日: 2021.12.16
