
総合評価
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powered by ブクログこの書籍は、ロシアが21世紀に展開している「ハイブリッド戦争」という新しい国家戦略を多角的に分析した重要な研究です。ハイブリッド戦争とは、軍事、外交、経済、情報戦、心理戦、テロ行為など、あらゆる分野のツールを組み合わせて政治的目的を達成しようとする戦略であり、ロシア軍は「非線形戦争」または「新世代戦争」と呼称しています。この戦略の理論的支柱となっているのが、ヴァレリー・ゲラシモフ総参謀長が提唱した「ゲラシモフ・ドクトリン」で、非軍事手段の重要性を強調し、戦争と平和の境界を曖昧にする現代戦争の概念を示しています。2014年のクリミア併合は、サイバー攻撃や情報戦を伴うハイブリッド戦争の具体的な実践例として位置づけられています。 書籍では、プリゴジンという人物が重要な役割を果たしたことが詳述されています。彼は単なる「大統領の料理長」ではなく、プーチンの側近として海外での民主主義攪乱や組織犯罪に影響力を持つ人物で、インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)を通じて2016年の米国大統領選挙に介入し、偽のSNSアカウントや偽情報拡散を行いました。また、彼が関与したワグネルなどの民間軍事会社(PMC)は、ロシアのハイブリッド戦争において重要な役割を担っており、低コスト、迅速な展開、国家の責任回避(デニヤビリティ)といったメリットを提供しています。 ロシアのサイバー攻撃と情報戦は、ハイブリッド戦争の中核的手段となっています。FANCY BEAR(APT28)やCOZY BEAR(APT29)などの高度持続的脅威(APT)グループが、フィッシング、マルウェア、DDoS攻撃、IoTデバイスの脆弱性悪用など多様な手法を用いて活動しています。2007年のエストニアに対する大規模サイバー攻撃や、2008年のジョージア紛争では、軍事行動と並行したサイバー攻撃が実施され、ハイブリッド戦争の「実験場」となりました。さらに、COVID-19に関する偽情報拡散など、フェイクニュースと情報操作も積極的に展開されています。 ロシアの外交政策の背景には、アレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義的思考が強く影響しています。ドゥーギンは、ロシアがユーラシア大陸の盟主となり、西側の大西洋主義に対抗するユーラシア連盟を形成すべきだと主張し、ウクライナを「人工的な国家」として自国の勢力圏に属すると考えています。この「勢力圏」の維持戦略により、ロシアは旧ソ連圏における影響力を再構築しようとし、バルト三国やウクライナ、ジョージアなどの「狭間国」が西側と連携することを防ごうとしています。 地政学的には、ロシアは北極圏、中南米、中東、アジア、特にアフリカを重点領域として影響力拡大を図っています。北極圏では豊富な資源と戦略的輸送ルートを確保するため軍事インフラを強化し、中南米では反米的政権との軍事・経済協力を進めています。アフリカでは、「安全保障輸出」、武器輸出、PMCの活動、政治コンサルティングという「三つの柱」を通じて影響力を拡大しており、ワグネルなどのPMCがスーダンや中央アフリカ共和国で軍事訓練や資源採掘活動に関与しています。また、IRAを通じて反米プロパガンダを拡散し、アフリカにおける米国の影響力を弱める情報戦も展開しています。 書籍は最終的に、ロシアのハイブリッド戦争が一部で成功を収めている一方で、長期的な経済的影響や国際社会からの批判という限界も指摘しています。特に日本については、ITインフラへの依存度の高さや情報戦・フェイクニュースに対する国民の意識の低さが脆弱性となると警告し、サイバーセキュリティの強化、情報リテラシーの向上、同盟関係の強化、包括的な防衛戦略の構築が不可欠であると結論づけています。ハイブリッド戦争は軍事行動に限定されない多様な非軍事手段を用いる新しい脅威であり、国際社会は協力と理解を通じてこの課題に対処する必要があることが強調されています。
0投稿日: 2025.06.15
powered by ブクログロシアの国家戦略について。 2021年出版なのでウクライナ戦争の直前であり、今となっては若干古いことは否めないが、その緊張状態を表していた。
1投稿日: 2025.04.20
powered by ブクログ武力行使と情報戦を組み合わせた「ハイブリッド戦争」の実態と、ロシアの外交・軍事戦略を解説した本。 本書を通じて、低コストでダメージを最大限与えられるハイブリッド戦争への理解は深めておく必要があります。日本にとっても対岸の火事ではないので。
0投稿日: 2025.01.15
powered by ブクログ登場国、登場人物などが多い故にやや困難な1冊でしたが、2023年に読むと改めて国際社会におけるロシアの位置づけや国家としての狙い、その強かかつ批判を恐れない方法などがすっと理解できます。
0投稿日: 2023.09.25
powered by ブクログ2023年4冊目。満足度★★★☆☆ 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、テレビにもよく出演する慶應義塾大学の教授が著者 今から2年前、上記戦争の約1年前に出版されたもの ロシアが得意とするいわゆる「ハイブリッド」戦争を中心とする現代のロシアの国家戦略について、豊富な事例をベースに説明 かなり多くの国・人名などが登場するため、読みこなすのは労力を要するが、特にアフリカの国々とロシアの間では、お互いにウイン・ウインの関係にあることなど、一定の知見を深めることが出来た
0投稿日: 2023.01.29
powered by ブクログちょっと硬い本だが、要は超限戦。 わりに子供っぽいことをやってるという気はするが、なんつか、豊臣滅ぼす前の徳川みたいな愚策のゴリ押しが効くみたいな感じもある。 地政学的な切り口なんか、ワガママの極みみたいな印象なんだが、それが事実なんだろうねえ。 日本は生き延びれんな。 つか、生き延びる意思を感じないところが、極めてやばい。
0投稿日: 2022.09.01
powered by ブクログウクライナで顕在化した、現代の戦争。いわゆる「戦争」が始まる前に始まっている。こういう本が多くの人に読まれ、日本人の中にも防衛、情報セキュリティに関するリテラシーが高まればいい。自分も含め。
0投稿日: 2022.08.30
powered by ブクログプーチンの考えていることを知るならイズムィコ同士の本を読んだ後に読むべきはこれかなぁと思って手に取りました。ハイブリッドと言うとリアル空間とインターネット空間のハイブリッドを考えますが、それだけでなくアフリカの安定してないところに介入して属国を増やす作戦もあるのかと。美しいやり方とは思えないですが、国連の多数決で勝つためには子分を沢山作るのが有利なのも確かで、こういう帝国主義的行動をとる国はまだまだ出てくるのでしょうな。
0投稿日: 2022.08.17
powered by ブクログロシアの外交政策とそのひとつであるハイブリッド戦争について知りたい人におすすめ。 【概要】 ●ロシアのハイブリッド戦争とは ハイブリッド戦争の現状、脅威 ●ロシアのサイバー攻撃と情報戦・宣伝戦 ●ロシア外交のバックボーン ●重点領域-北極圏・中南米・中東・アジア ●ハイブリッド戦争の最前線・アフリカをめぐって 【感想】 ●ロシアとウクライナの紛争が顕在化した2022年以前に書かれた本 ●ロシアが実施するハイブリッド戦争の内容がよくわかる。 ●中国と同じく、ロシアの地政学的計算による世界への進出について地域毎にまとめられていて理解しやすい。 ●日本では国内の些末な問題ばかりメディアで取り上げられているが、世界的な各国の活動を見ていると、日本は現状で大丈夫なのかと心配になってくる。 マスコミによる情報配布に偏りがあるのか、それとも報道されるように足の引っ張り合いのような議論しか国会ではなされていないのか。
0投稿日: 2022.05.28
powered by ブクログ2022/4/18読了。まさに旬な話題で非常に説得力があり分析力も明快で現代の武力戦を多面的(サイバー攻撃、情報戦と宣伝戦)に見る思考がいかに重要になって来ているか恐ろしさと併せて興味深く読ませてもらいました。特に、第二章と第三章 ロシア外交のバックボーン-地政学は、今のプーチンロシアを知る上で参考になった。廣瀬教授の『コーカサス 国際関係の十字路』と『未承認国家と覇権なき世界』『ロシアと中国 反米の戦略』は読書予定に加えたい。
0投稿日: 2022.04.14
powered by ブクログ「ハイブリッド戦争」の定義が広すぎる感がある(この批判は志田淳二郎の本でされてたように思う)が、ロシアの安全保障戦略において軍事力と非軍事的な力を巧妙に組み合わせ、使い分けて影響力を行使している実態はよくわかる。
0投稿日: 2022.01.30
powered by ブクログプーチン以後のロシアの外交戦略を調べると、国力の不足する中でハイブリッド戦争の手法を編み出してきたことがわかる、そのキーワードはサイバー戦・PMC・政治技術(世論誘導攪乱)である、と言うあたりが著者の主張で、流れや事例を鳥瞰しているところに価値があると思う。 概観なのでここの事例については踏み込む紙幅がなかったようだ。 世界情勢やサイバー戦に興味のある方にお勧めする。
1投稿日: 2021.06.28
powered by ブクログ明確に定義付けされていないハイブリッド戦争、特にロシアのそれについて、実例豊富にわかりやすくまとめている。 正規戦・非正規戦の境を越え、ありとあらゆる手段を用いて政治的目的を達成しようとするハイブリッド戦争。ジョージアとの戦争で実績を積み、ウクライナで花開かせたと言われる。そしてシリアへこ介入もハイブリッド戦争の一環であり、かなりの部分がPMCに担われている。現代のロシアの戦争目的は領土拡大自体ではなく敵対的な同盟の弱体化、自身の同盟の拡充である。面白いのはロシア自体は自身の戦略をハイブリッド戦争と呼びたがらず、むしろ西側諸国からハイブリッド戦争を仕掛けられていると考えていること。ハイブリッド戦争にはprobing、探りとしての手段という側面がある。 コサックの由来やPMCが持つ魅力、ソフトパワーの悪質版であるシャープパワー、サイバー戦とタリン事件、北極圏や南米、アフリカ等での地域ごとのロシアの活動、についてもまとまっていてわかりやすい。
1投稿日: 2021.04.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2013年 ウクライナ危機 プロパガンダ、親露派政治家、民兵、フェイクニュース、サイバー攻撃、経済脅迫 領土拡大ではなく、旧ソ連地域での影響力の拡大による一極を目論む PMC 民間軍事会社 最前線で戦う戦士一人につき100人の後方支援。 ロシアでは非合法事業 ワグネル 5000人以上? 2000人以上が戦闘要員 シャープパワー ソフトパワーの悪質版 フェイクニュース クリミア併合 サイバー攻撃 攻撃範囲が無限大、相手の特定困難、小が大を攻撃、不可視、法的グレーゾーン ロシア サイバー軍1000人 中国10万人、日本500人へ APT28 ファンシーベア、APT29 コージーベア、ブーデゥーベア、ベノモウスベア DDoS攻撃 IRA 大統領選挙操作 エストニア 2013年タリンマニュアル NATOサイバー防衛協力センターCCDCOE ジョージア 2011年CERTサイバートラップ ロシアのハッカー情報取得 中露 2015年サイバーセキュリティ協定 北極圏 温暖化による天然資源 北極海航路=北方領土の主点 択捉国後 潜水艦航路 軍事砕氷船、ミサイル防衛、航空機ツボレフTu160、極地戦車リザル、 空中発射弾道ミサイル キンジャール ニカラグア 軍事支援 2017年グロナス(≒GPS)基地「チャイカ」 インド 軍事深化 70%がロシア製兵器 地対空ミサイル トリウームフ 原発2+5基導入へ 中東 シリア紛争への介入 海軍空軍基地 トルコへ接近 地対空ミサイル導入 武器大国 通常兵器で劣る面を ミサイル防衛、極超音速、核搭載型の新型兵器 極超音速滑空体 アバンガルド 極超音速ミサイル キンジャール 原子力推進魚雷 ポセイドン 原子力推進巡航ミサイル ブレベスニク 新型ICBM サルマト アフリカ 最前線 地域紛争に関与 軍事拠点 天然資源 鉱物の輸入 非国家主体との対決の経験 欧米の価値観を共有できない非民主体制国 表面的に同じ方向の中国とも対抗し、中国一片道倒を避ける心情を利用 ①武器兵器販売 原子力発電の輸出 ②安全保障(反乱やテロ対策コンサルティング:グレーゾーンPMCとの連携) ③国連で65票の政治的ツール 影響力 フェイクニュースのフランチャイズ化 対抗策 ・敵を知る ・サイバー領域レッドラインを設ける ・敵の負担コストを上げる ・防衛強化(サイバー衛生):情報リテラシー教育 ・攻撃(インフラへのサイバー攻撃):反撃用ウイルス ・結果の警告(抑止効果) ・サイバー、宇宙条約(ジュネーヴ条約) ・同盟維持強化(中露対抗) ・リーダーシップ(国民への認知):ホワイトハッカー
1投稿日: 2021.03.27
powered by ブクログ「ハイブリッド」というのは「異質なモノが交じり合って成立している」という程の意味で、現在では広く用いられている表現になるように思う。それが付せられた「ハイブリッド戦争」ということになれば「??」という感だ… 「ハイブリッド戦争」というのは、正規軍による活動、非正規な武装勢力による活動、所謂“情報戦”ということになる情報操作等のあらゆる活動、陣営に有利になり得る勢力が権力に近付くことが叶うような、所謂“情報工作”というようなこと等、様々な要素を織り交ぜて「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」という事柄の総称ということであるらしい。本書によれば、ロシアは21世紀に入ってから、場合によってはその以前から、利用可能なあらゆる資源を使って、そうした「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」に努力していて、それを<ハイブリッド戦争>と呼ぶようになっているということであるようなのだ。 “戦争”とでも言えば、軍艦が列になって航行する様、軍用機の編隊が上空に飛び交う様、物々しい車輛の一群が街や原野を行き交う様を想うが、実はそれは「末端の事象」で、陸海空軍の兵器が動くに至るまでの「余りにも多彩な様々な事柄」というようなモノが存在する。そういう意味では、“戦争”というモノは何時の間にか「様々な要素が組み合わさる」という意味では「かなり以前から“ハイブリッド”」なのかもしれないと思っている。自身の中にそうした問題意識も在るのだが、それはそれとして、本書をなかなかに興味深く拝読した。 近年、ロシアでは「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」に努力が執拗なまでに重ねられているのだという。それを本書の著者自身を含む論者が<ハイブリッド戦争>と呼んでいるということになる。 そういう<ハイブリッド戦争>というような展開の中に世界の様々な地域が関わるのだが、実は日本もその関りと無関係でも居られないのである。 色々な意味で「広く読まれるべき研究」というように思った。そういうことで広く薦めたい一冊だ…
3投稿日: 2021.02.27
