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花づとめ
花づとめ
安東次男/講談社
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総合評価

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    このレビューはネタバレを含みます。

     春の岬旅のをはりの鴎どり  浮きつつ遠くなりにけるかも 三好達治の処女詩集「測量船」巻頭を飾る短歌風二行詩。 昭和2-1927-年の春、達治は伊豆湯ヶ島に転地療養中の梶井基次郎を見舞った後、下田から沼津へ船で渡ったらしく、その船中での感興であると紹介されている。 梶井基次郎と三好達治はともに大阪市内出身で、明治34-1901-年2月生まれと明治33-1900-年8月生まれだからまったくの同世代だし、同人誌「青空」を共に始めている親しい仲間。梶井は三高時代に結核を病み、昭和2年のこの頃は再発して長期療養の身にあり、不治の病との自覚のうちに死を見据えた闘病の日々であったろう。「鴎どり」には湯ヶ島に別れてきたばかりの梶井の像が強く影を落としているにちがいない。 梶井は5年後の昭和7-1932-年、31歳の若さで一期となった。 奇しくも今日3月24日は梶井基次郎の命日、いわゆる檸檬忌にあたり、所縁の常国寺-大阪市中央区中寺-では毎年偲びごとが行われている。

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    投稿日: 2023.02.10