
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
終盤があまりにも美しい小説だった。 不運に見舞われ太平洋の無人島に漂着した主人公。都市の生活から自然の生活に移ったことで、生きることが手段ではなく目的へと変わり、その生活にも慣れていく。 中盤に入ると、彼の周辺は一変する。島を移ったことで現代文明に触れ、そして文明人と出会う。 そのアメリカ人との邂逅が、自然と一体化した(そう思っていた)彼の心境までも変えてしまう。 彼の自然に対する虚構が暴かれ、向き合い直し、最後に見た悪夢。これらの一連の流れによって生じるカタルシスのようなもの。しっとりとした小説だったが、いつまでも残響が耳を漂っていた。
0投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログとても美しいタイトル。こういう言葉の使い方は、とても好きだ。 『スティル・ライフ』の次に読んだ池澤作品。 『スティル・ライフ』で池澤作品の世界観に触れ、そこから興味をもってこの本にたどり着いた。 美しいタイトルと、文庫本の装丁(真っ青なバックに、黄色いインクで無造作に点が打たれている、抽象的な絵)に惹かれて購入した。 使われている言の葉は、繊細で美しい。ただ、デビュー作ということもあって、その言葉の扱い方にどことなく微かにぎこちなさを感じる(ように個人的には思った)。 そのせいか、前半は無人島に漂着したたった一人の男の(あえて三人称表記ではあるが)独白形式なので、なかなか読み進められなかった。 ただ、中盤で彼がもう一人の男と出会ってから、つまり彼が文明との繋がりを徐々に取り戻してゆくところから、だんだんと話が面白くなってきた。 前半は読み進めるのに少々難儀したとはいえ、彼の「孤絶の生活への無意識の願望」には、個人的に共感を感じている。 彼が恐怖と混乱の中で夜の海を漂い、無人島に漂着し、時刻の感覚を失い、食べ物を探し、椰子の繊維を剥く過程を読みながら、自分も追体験しているような気持ちになっていた。 なお、以下は本筋ではないが、読んでいて印象に残った箇所がある。 1つは、p12の、言葉の限界について述べられた部分だ。 (引用) 「夕焼けがないところでは言葉で夕焼けを作ることもできよう。死んだもののことは言葉で語るほかない。しかしこの瞬間に目前にある物を捕える力は言葉にはない。記述や描写や表現は、過去の事物と、遠方と、死者を語るためのものだ。言葉の積木をいくら積んでも、この世界は作れない。」 この部分は、『二十億光年の孤独』の解説に書かれていた、谷川俊太郎氏の詩観によく似ていると感じた。 いずれも言葉を紡ぐことを生業としている人間が、言葉の限界について同じように感じている、ということが興味深い。 限界があるからこそ、限りのある中でいかに表現するか、言葉の紡ぎ方に細心の注意を払うのだろう。 煌めくような美しい言葉たちが、繊細で(しかしピンと芯のある)透明な糸で紡がれている、そんな文章が、私は好きだ。 本書のタイトル「夏の朝の成層圏」をとても美しいと感じるのも、そういうキラキラしたものを感じるからだ。 もう1つは、『スティル・ライフ』を読んだ時にも感じた、理系的な感性を感じる部分だ。 (引用) p73「彼は(中略)この建物の角ごとの精密な直角、壁の平面の仕上げ、左の方に二つ並んだ同じ大きさの窓の完全な合同などを感心してながめた。こんな平板な白さはこの島にはない。椰子の木も砂浜も彼自身の身体もこのように平面や直角からはできていない。この島にはあの二つの窓のようにまったく同じ形のものは絶対にない。二枚の葉も二個の貝も同じ形ではない。内側から生成してくるものは決して同じ形にはならない。外側から機械によって削りこまれ、形づくられるものだけが、まったく合同という、自然にない形をとるのだ。」 こういう物事のとらえ方は、理系の素養をもった著者の作品ならではのように思う。 また、この部分は、なんとなく福岡伸一先生の『生物と無生物のあいだ』を連想させる。 こうして、今まで出会ってきた別の作家の別の作品との繋がりを感じるところも、読書の面白いところだなと思う。 レビューブログ https://preciousdays20xx.blog.fc2.com/blog-entry-529.html
2投稿日: 2024.03.21
powered by ブクログ臨場感があって自分も漂流しているような気分になった。星や宇宙や内臓の話をミランダとしてるシーンが好き
3投稿日: 2022.10.05
powered by ブクログ何度目かの再読。 20代前半、図書館で背表紙を見て思わず手に取った。 南の島、土着の人の生活・文化に対するリスペクト、精霊たち、便利さの皮をかぶった資本主義の流入に対する抗えなさ。「マシアス・ギリの失脚」などのちの著作へ脈々と続いていく。 細かいところは忘れていたので、再読でも楽しめた。
2投稿日: 2022.07.28
powered by ブクログ新聞記者のヤスシ・キムラは、遠洋マグロ漁についてのレポート企画の準備をしているとき、誤って船から落ちてしまい、無人島に流れ着きます。彼は、自分が漂着した島を「アサ島」と名づけ、ヤシの実やバナナを食料に現代のロビンソン・クルーソーのような生活を送ります。しかし、周辺の島の探索をはじめた彼は、「ユウ島」と名づけた島に一件の家が建てられているのを発見します。そして、その家にアメリカ人の映画俳優であるマイロン・キューナードがやってきて、二人は出会うことになります。 彼は、文明社会へつながる導線を保ったままで島の暮らしをたのしむマイロンに、ときおり説明のできない反発をおぼえます。マイロンは、そんな彼の態度にロマン主義的な心情を見てとり、そのことを指摘しますが、彼にとってより大きな問題だったのは、マイロンに出会ったことでみずからの心情に説明がつけられてしまうことに対する疑いでした。やがてマイロンは島を出ることになりますが、彼はまだしばらく島に滞在すると告げ、自分自身の体験を記すことを決意します。 南洋での彼の生活は、文明と自然を対照する視座そのものを包むようなスケールを示し、彼はそれを前にして説明することばをうばわれながらも、表現を通じてその自然を包み返す試みへとつながるプロセスがえがかれているように感じました。
1投稿日: 2022.05.27
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ある男の漂流記。初めは巧みな情景描写に吸い込まれ自分も漂流したかのような不安感があったが、新しい環境にだんだん適応していく彼の冒険のような日常は発見と驚きに満ちていて、先が気になりどんどん読み進めてしまった。次はもっとゆっくり言葉を味わって読み返したいと思える作品。
0投稿日: 2021.12.23
powered by ブクログ文章がかなり好み。常夏の島の景色や、音や温度が脳裏によぎり、そこに自分も行ったように感じる。大変魅力的な文章。 彼のように全てを捨ててしまいたくなること、時々あるから、共感しながら読んだ。
1投稿日: 2021.10.03
powered by ブクログ最近は池澤夏樹にハマっている。なんとなく、彼の清潔で頭の良さそうな感じの物語世界が今の気分にぴったりな感じ。文明社会に組み込まれつつも少しだけ距離を取り、人間以外の世界の仕組み(動植物や星空や宇宙など)と対比させる感じが、巣篭もり生活の良き伴走者になってくれる感じがする。 本作は、文学版「あつ森」みたいな感じで、ちょっとした気の緩みから孤島に流れ着いた新聞記者が、島の生活に順応していくという物語。遠い南の島の孤独な生活がとても心地よい感じがする。 読後感は、ゴツゴツとした感触で、まさしく、処女作といった感じの小説だった。これから文章で身を立てていくという意気込みみたいなのがとくに後半部から書き連ねられており、その気迫みたいな熱さを感じた。 これから飽きるまで彼の作品を追っていくつもりでいるのだけれども、どうなるか気になる。
0投稿日: 2020.07.05
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情景が爽やかで、初夏窓辺で風に当たりながら読みたいなと思った本。 彼が無人島に流れ着き、1人で環境に順応しながら新しい生活を作っていく。 しかし、島本来の生きる姿になりきることもできず、過去の自分がいた世界を捨て切ることもできず自分がどう生きるべきかを模索する心理描写がとてもよかった。 そもそも自分が何者かなんて他人ありきで決まるものだし、彼のように真剣に考えたことすらなかったなぁ。 今の私が私である必要なくなった時、どう生きるかな。そんなことを考えて読んでいた。
0投稿日: 2020.06.24
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再読日 19940301 20000529 主人公のヤシが島で生きていくための知識をひとつずつ覚えていくのが、自分のことのように感じられて面白い。島の生活に馴れた結果、文明との距離の取り方、そしてラストで文明に回収されることを先延ばしにし続ける態度に共感できる。マイロンの別荘があるため、文明と完全に隔絶しているわけでもない、いわば中間の存在。このような島での生活ができれば、文明の日常に帰還する必要ってあるのだろうか? 20000723 ----- 20250903 とても面白かった。うまく言えないけれど、一度読んでさくっと「こんな感じかな」というふうに感想がまとめられる小説もあれば、なんだかわからないけれどものすごすぎて、どう自分の考えをまとめたらいいかわからないような小説もある。 これは明らかに後者。3回目位かな、今回で。なので色々と読みながら思い出したりとか、今回も結構たくさん線を引いて、なんとなく理解が進んでいると思う。でもまだこの小説の本質を捕まえられたかと言うと、そこまでいってない気がする。 解説の人の述べていることは正しいかどうかはわからないけど、ものすごく何か斬新な視点でぶっ飛んできた感じがして、結構インパクトがあった。 途中でメモしたけど、解説の人が最後に書いている「南方への憧憬」に加えて、「反近代社会性」とか「反物質文明」とか、そういうところがやっぱりこのデビュー作で既に現れているんだな。それが『すばらしい新世界』とか『光の指で触れよ』とか、そういったところにやっぱりつながっているんだなあっていうのが、今回改めて感じられた。 これは星5ですな。満点の5ではないんだけど、4.7とか4.8とかそのぐらいでいっちゃっていいと思う。また読み直すと思う。そのぐらい、やっぱりなんだろう、うまく言えないんだけど、ものすごく深く刺さる作品だった。やっぱり俺、池澤夏樹好きなんだなあ。 続いて『マシアス・ギリの失脚』を読むか。 ※音声入力テキストを「Claude」の日本語整理により作成
0投稿日: 2018.10.15
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「考えてみると昔からぼくは『あそこ』的な人間だった」 背景や詳しい状況がよく分からないところから始まり、引き込まれる。 現実離れしているようで妙に現実感のある独特の雰囲気。 漂着したすぐの頃の、椰子の実との格闘が面白い。
0投稿日: 2018.08.11
powered by ブクログ池澤夏樹氏の長篇デビュー作。 南の島に漂着した現代青年。いやおうなく始まった自然の中でのたった一人きりの生活は、試練に満ちたものでしたが、次第に自然に取り込まれたかのように本来の自分らしさを実感するようになります。 タイトルは、現代社会を離れた自然に囲まれた日々は、地上を離れて成層圏で暮らすようだという意味から。 青年と島を訪れた老人との風変わりな交流も見もの。青年をほめるでもなく、咎めるでもなく、ただ認める老人の度量の大きさは、自然の深さに匹敵するもののようにも感じられます。そうして彼が望む臨まざるにかかわらず、文明社会との接点も少しずつ再編されていきます。 青年は、その後どうなったのでしょう。かつての生活に戻るか島に留まるか悩みぬいた彼が最後に決断を下すところで、物語は幕を閉じます。 波間に浮かぶ水鳥、海に沈む太陽、風にそよぐ椰子の樹、手が届きそうなほどに近い星々。読んでいると現色の自然の美しさが見えてくるよう。 日常に疲れたときに読みたい一冊です。 詳細レビューはこちら⇒ シンプルライフのすばらしさ、「夏の朝の成層圏」 https://fpcafe.jp/mocha/510
0投稿日: 2018.06.26
powered by ブクログ状況は極端でも、彼の葛藤、気持ちの揺れに置いてきぼりにされず、半端な気持ちがリアルだった 2018.6.17
0投稿日: 2018.06.17
powered by ブクログ南の島に漂着した男の不思議な物語。刺激的な描写や、唸るような台詞があるわけではないけれど、全体として捉えた時に、淡く滲むように世界が広がる。 【いちぶん】 一時期ぼくの中にあった変身の願望、自然のすぐ近くで単純明快な生活者になるという願望は成就せず、ぼくは何歩も後退して、こんな形で島を出ていく。だが、それもいいだろう。長い目で見るならばぼくは、いつになろうとも、どこで何をしていようとも、この島の刻印を残しているだろうから。
0投稿日: 2017.04.11
powered by ブクログ・そうすると、運命の細い隙間を抜けるようにしてここへ来た以上、連れてこられた以上、僕の救出計画にこの島が指定してあったわけだから、この場所にはなにかとても重大な意味があるように思われてくる。漂着という大きな運命の重さに釣り合うだけdのものを僕はここでみつけなくてはいけないように思う。 考えてみるとぼくは昔から『あそこ』的な人間だった。つまり、今『ここ』で自分がやっていることはすべて仮のものであって、いずれ自分は『ここ』ではないところへ行って、そこで本当の生活をはじめるだろう、心の底ではいつもそう思っていた。彼岸を仮定することによって此岸の生活を真剣に見ることを回避してきた。つまり・・・・・ ・「時々ぼくは宇宙を裏返して考える」と彼は続けた。「つまりぼくのお腹の真中、それこそ内臓の中心を宇宙の中心として、全体をひっくりかえすんだ。そうすると、この世界はぼくの皮膚によってくるまれた球状の空間で、皮膚は無論内側が表になる。きみもこの島も太平洋も地球も太陽系も、最遠点まで含めた宇宙全体がこの球状の空間に入っている。遠い宇宙の果はこの球の中心になる。きみは、ミランダ、ぼくに一番近いから、この球の内側に寝そべっているんだ。だからきみの肌はぼくに触れている。そしてこの皮膚の外側は無限遠点までずっとぼくの内臓によって埋めつくされている。ぼくの内臓がきみたち全部を虚無から護り、宇宙の秩序を維持している。すべてのものはしかるべき位置にある。だから、きみはこのまま安心して眠っていいんだよ」
0投稿日: 2016.09.07
powered by ブクログ無人島漂流。 日々生きる為だけに活動する、生のシンプルさに惹かれた。生きることに必要なものはほんの僅かである。 なのになぜ都市へ人は群がるのだろうか。
0投稿日: 2016.08.08
powered by ブクログ文体も情景もすごく爽やか。スティルライフよりも爽やか。ライトなんだけれど南国気分に没入できる。リラックスしたいときのBGM的に是非。
0投稿日: 2015.09.26
powered by ブクログここではないどこかへたどり着いた彼。 つむぐ物語は無人島でなんとか生をつなごうとするところから、いずれ戻らなければならないところへたどりつくまでの休暇。 あとがきの池澤夏樹は「境界を描く作家」というのが心に残りました。
0投稿日: 2015.06.19
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あらすじは、「彼」が遭難して、無人島で暮らす。以上。その生活を見事な文章で綴りあげています。情景描写と心境語りのバランスが非常に良くて、するする入ってきて、共感を生みます。 そして何より、詩的です。この作品を読んだことによって、ピタゴラスイッチ的に伊坂幸太郎の「重力ピエロ」の評価が下がりました。「重力ピエロ」は筋書きは面白くないけど、時々びっくりするほど詩的なことを言い出す、それが唯一良いところだと思ってました。しかし、「夏の朝の成層圏」を隣に置いたら陳腐に見えます。「重力ピエロ」は、台詞に詩を仕込んでくるので非常に違和感があったのですが、こちらの作品がそこのバランスがとてもいい(無人島なのでそもそも台詞がない)。 非常に感動しました。美しい小説です。買います。
0投稿日: 2014.09.01
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この人の作品はこれで3冊目。 こちらは、池澤夏樹の最初の長編小説です。 文学に対する誠実さとストイックさを感じます 次の展開を楽しみにして読み進めるのではなく、 一文々々を感じながら読む本です。 読み手に集中力が要求されるので、少々疲れます。 でも、この人の作品は、 自分を不思議な世界に引き込んでくれるので、 読んでる間は幸せな感じがします。 最後の方は少し展開があるので、一気に読んでしまいました。 時間かかったけど、読んでよかった。 おすすめです。
0投稿日: 2014.03.04
powered by ブクログ大好きな大好きな池澤夏樹の処女作。南の島、自然と文明、個と全体、理系的な要素と紛れも無い文学性に溢れた文章、彼の作品を彩るエッセンスが剥き出しにぎゅっと詰まってる。その後の小説においてこれらの要素は洗練され、発展していくわけですが、ああここが原点だったんだなあ、って思ってしまって感慨深い。一文一文が染み渡るように、大事に読みました。わたしにとってたいせつな問題を捉えているのも、その問題に対するアプローチ方法も、物語に落とし込むスキルとそれを彩る文章の芸術性も、ぜんぶもっているのはけっきょくのところ、純文学なのかなあ、わかんないけど、池澤夏樹の文学がわたしは本当に好きです。個人として生きていくことを突き詰めて、突き詰めてしまうと、全体性に繋がっていく、そういうのを超えてどこへ行くのかなあっていうのをわたしはけっこう池澤夏樹に求めている気がする。うつくしい文章、澄み渡る空気、感覚的なものも含めて、ああすきだなあ、
1投稿日: 2013.06.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「ここではないどこか」の話。 「ここ」にいて、コーヒーを飲みながら心だけは「ここではないどこか」へ。 (ネタバレかな?以下、物語の終盤に出てくる言葉を引用します。) 最初は自然礼賛、文明批判の単純な話かな、そうだったらがっかりだな、と思って読んでいたけど、そうではなかった。 主人公である「彼」自身が「センチメンタル」というように、 また対話相手のマイロンが「高貴なる野蛮人。つまらぬ罠さ。」というように、 ロマンチシズムを自覚しながらも、言葉にできない何かを捉えようとする「彼」。 そして物語を綴り終わったと同時に「長い休暇は終わった」。 無人島への漂流を書きながら、どこまでも透明感のある観念的で美しい世界を感じます。 独身時代に購入して、10年近く積んであった本なんだけれど、買った当時に読んでおけばよかったな。 今家庭を持ち、「ここ」で地に足をつけた生活を何より守りたいと思っている私には「ここではないどこか」の遠く美しい話で終わってしまった。 それとも家庭は関係ないんだろうか。バブルも遠くなり、堅実を求める世の中の空気なんだろうか。 でも、読んでいる間「彼」のように実際に無人島に行かなくても心だけは「長い休暇」に出ることが出来ました。
0投稿日: 2013.04.11
powered by ブクログすごいすごい、素晴らしい。 無人島に漂着して、生命を維持することが目的の生活を送る。 その愉悦と現実に戻らないことへの背徳感。 想像力で人はここまでのものが書けるんだなあ。 本当にこの作家さんは素晴らしい。 世界と人間を手のひらにのせて、見せてくれる。
1投稿日: 2012.11.09
powered by ブクログ素晴らしい。哲学的であり、詩のようにも美しい小説。特にヤシが島で暮らし続けてマイロンと対話しながら深い自問自答を繰り返し、最後には「書く」ことに辿り着く過程は感銘を受けた。海外にいるときに読んだので色々と自らの体験に重ね合わせられることも多かった。
0投稿日: 2012.09.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
池澤夏樹さんのデビュー作。 無人島に漂流した主人公と自然との関わりを描いたもの。 最初は苦労しながらも何とか生き抜いていた。 そんな矢先、他の人が訪れたことで元の世界に戻れる機会を得る。 しかし、彼は帰還することなくあえて自給自足を続けた。それは何故か。 そうさせる力や欲求というのは簡単に説明することのできないものだ。しかし、最後には主人公はその生活で学んだことを表現しようと決意する。それは可能なのかどうか。 池澤さんは感覚と思考、この二つを両立させようと試みているように感じる。また、目に見えないもの、形を成さないものに対しても敬意を払っている。その大切さを感じているからだと思う。
0投稿日: 2012.08.05
powered by ブクログ独特な空気感と理屈が南の島という舞台に融合していて気持ち良く読めた気がした。 どっちが本当の世界なのか、どこからが日常なのか、境界線がないようであるものの、それも曖昧。 そんな感じが心地良い。
0投稿日: 2012.08.01
powered by ブクログ池澤夏樹のなかでも最もすきな本。 皮膚に迫ってくるようなリアルな自然。夢中であっと言う間に読み終えました。
0投稿日: 2012.06.12
powered by ブクログ抑制されたリズムの中に一言一言が重みを持っています。空気の薄いところで自分の現実に出会ったらこんなように際立って感じるのかな。無人島漂着した主人公、と設定やストーリーは物語世界のものですが、表現された肌感覚や主人公の思考には諸手を上げて共感。それが美しい言葉で。うーん、折々で読み返したい本になりました。
0投稿日: 2012.02.23
powered by ブクログぼくが彼になって、またぼくに戻ってくる話。 振り返ってみて後から「あれは幸せなことだったんだ」と気付くこと。生きることに一生懸命で居られることは幸せなんだと彼が気付くくだりに、自分を重ね合わせて少し泣いた。
0投稿日: 2012.01.18
powered by ブクログ初版は1990年、著者の小説デビュー作。 内容の概要を書いてもいいのだけれど、それを書いてしまうとこれから読む人たちのあの最初の印象を奪ってしまうことになるので、伏せておいた方がいい気がする。 そうなるとここに書くことは、一体どういうものがいいのだろう。わたしの、漠然とした、自分にしかわからないイメージや浮かんだ言葉の列挙か、もしくはどこかの引用か? とにかく、淡々とした描写の中に、具体的なものと漠然としたものが混在し、主人公の思考も、その思考の移り変わりも、かなり鮮明になって頭の中に浮かび上がる。 小説としてもすごくおもしろかったけれど、お金以外で量る幸福度を考えるのにもいい本じゃないかと思った。 一番好きな設定は、主人公の元々の職業が地方の記者だったってこと。
0投稿日: 2011.09.24
powered by ブクログ無人島に漂流した青年の島でのサバイバル生活の話。池澤夏樹さんの小説デビュー作。過酷な漂流から無人島にたどり着き、「生きる」。冒険物にあるワクワク感や緊張感を感じない、不思議な透明感ある小説。著者のメッセージや根底を探ると難しいので、さらっと読み進めた。再読だったが、いつかまた読んで探ろう。
0投稿日: 2011.07.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
無人島に漂着した青年のお話。 最初ロビンソンクルーソーのような物語かとおもいきやSFのようでもあり、実は現代のお話である。 自分の身に起こりえない設定なのだが、読み進むうちに「そうなったらこう思うかも」と思い始めてくるのが怖いところだ。 万人向けにすすめられるかと聞かれると悩むけど、個人的に面白かった。
0投稿日: 2011.04.06
powered by ブクログすごくすきだ。この透明感。 いざという時の道を確保しながらのサバイバルだし、現実逃避気味の楽園ラブな作品かもしれないけど、なぜか惹かれてしまう。 やしのサバイバル能力が素晴らしい。 パンの実っておいしいのかな、、、
0投稿日: 2010.06.26
powered by ブクログ無人島で生き延びるヤシの話。 天敵もいないし椰子の実もあるし、無人島でサバイバルという現象に変わりはないけれど、ちょっと楽しそうでもある。島の精霊(死んだ人々の魂?)は生きている孫子の生活を楽しみにしているというところが、なんだかすっと腑に落ちる感じだった。
0投稿日: 2010.06.08
powered by ブクログ南の島に漂流したお話。 この設定は、何個か読んだことがあるけれど、 このお話の彼、ヤシはとても冷静で前向きで暢気。 文章も不快(な状態の)描写が殆ど無く、 南の島に対する筆者の愛情が溢れ出ていて、美しい。 上質のファンタジーを読むみたいに、すんなりと世界に浸ることができた。 生きていくということ、社会と世界、人と人の繋がり、仕事、生活について とても真摯に向き合った作品。 とっても面白かった!気持ちいい読書、大好きです。 マイロンとヤシの関係が可愛いくて、ちょっとにこにこしてしまった。 池澤夏樹さんの本をもっと読んでみたい。
0投稿日: 2009.05.31
powered by ブクログ個人的に、そしてきっと多くの人が惹かれてしまうだろう南の島のロビンソン・クルーソー生活。憧れゴコロを満たす南の島の風物を十分に描きつつ、一人の男性の成長、友情などをさらりと織り込み、さらにこのベタなネタたちを冷静に(しかし冷徹ではなく)見つめる視線が心地よい。
0投稿日: 2008.06.16
powered by ブクログ「生きる」ことを目的に生き、自然の中にサイズをあわせていく彼と。 自分の孤島主義を客観視する目線をもち、脱文明にかぶれる自分を皮肉に思う彼と。
0投稿日: 2007.07.16
powered by ブクログ池澤夏樹の小説デビュー作が本作である。今年になって彼の作品を読み漁っているがやっとデビュー作に行き着いた。南洋の無人島、孤独、文明、精霊。それらを整理して彼の訴えかけようとする事を受け止めようとするが・・・まだ何か自分には足らないのだろうか。完全に作品に浸れない自分がいる。もう少し時間が必要なのかもしれない・・・
0投稿日: 2007.06.12
powered by ブクログもし漂流してしまったら……? そんなことを考えさせてくれます。 無人島の描写などがすごく細かくていいと思います。
0投稿日: 2006.11.23
powered by ブクログ正直きつかった。何がだろうね。相変わらず池澤夏樹好きなんだけど。いつものようない「いらないものが1つもない」という強烈なクリアーさは感じなかった。始まり数ページは池澤さんらしいんですが。
0投稿日: 2006.07.30
powered by ブクログ中学生のときにジャケ買いをしたら当たった。村上春樹の感じに似ていますが、もう少し硬質で透明な感じがしました。
0投稿日: 2005.12.22
powered by ブクログなんだか行き詰まった時に読む本です。 今まで何回かお世話になりました。 現実逃避じゃん!っていわれるとそれまでなんですが、読んだ後はなんだかすっきりするんです。
0投稿日: 2005.09.24
powered by ブクログ無人島に何か一つ持っていくとしたらこれ、と心に決めている本です。 この本が、船から嵐の海に落ちて無人島にたった一人で漂着した人の話だ、というのがその理由の一因なわけですが、やっぱり何度読んでもいいなぁ!!!!と思うので無人島で飽きないで何度も読み返せそうな気がするのでした。 とにかく文章が綺麗。タイトルからして素晴らしい。恐ろしく青くてまぶしくて冷たい感じ。内容のイメージともピッタリだし、ちょっと理系のニオイがするとことかが私のツボをぐっと押さえまくりなので、タイトルを見ただけでうっとりできちゃう珍しい本です。
0投稿日: 2004.10.18
