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痴漢外来 ──性犯罪と闘う科学
痴漢外来 ──性犯罪と闘う科学
原田隆之/筑摩書房
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総合評価

21件)
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    素晴らしい本だった 痴漢のみならず、性加害に走ってしまう人たちの心理や背景を、海外のものも含む多くの文献を参考に明らかにしている こうした書籍が2019年には刊行されているにも関わらず、性加害者への治療が進んでいないのは悲しいことでもある

    0
    投稿日: 2025.08.21
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    「痴漢外来」という聞き慣れないタイトルに興味を覚えて手に取った。痴漢は卑劣な人間による犯罪であり、治療できたり改心したりしないだろうから犯人には苛烈な処置をするべきだ、と考えていたが本書を読んで少し認識が変わった。 痴漢や盗撮は薬物と同様に依存症であり、「治療」により再犯率が低下するばかりか、刑罰のみでは再犯率はわずかに増加する。病気という視点であっても、責任能力とは関係なく罪が軽くなるわけではない。痴漢は女性の敵であるのは勿論、冤罪に巻き込まれる可能性という意味では直接的に男性の敵でもある。「被害者を出さない」「再犯を防止する」目的では、刑罰と治療の取り組みは私達の社会にとって有効な取り組みである。社会の安定のためには積極的に治療した方が良いとおもう。 心理検査で有名なロールシャッハテストは、正常な人でも80%が問題ありと診断されてしまう、明確な科学的根拠のない似非科学である。これには「やっぱりな」と感じた。

    16
    投稿日: 2025.07.12
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    行為依存について整理されており理解が深まった。再犯防止には刑罰も治療もという立場。ただし,やたらとエビデンスベースドを強調するのは,ちょっと引っかかる。メタアナリシスって結局統計だから,個別具体性を取りこぼすような気がするんですよね。統計学を理解してない門外漢の偏見かもしれないけど。 この分野にも自助グループがあるのには驚いたが,数は少ないようで,地方では繫がれないだろうなぁ。。。あと,性的衝動の強い人たちが集まることで,トラブルは起きないのだろうかと心配になるのも事実。 性犯罪の構成要件が厳しすぎるという主張は,その後の不同意性交罪の創設に繋がってますね。 読み終わってから気付いたのだが,人間の教授なのねw

    1
    投稿日: 2025.06.28
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    痴漢だけにとどまらず、あらゆる性犯罪・性的依存症に対する治療のアプローチを書いてくれている。 この本を読み、私もフロイトの精神科学に支配されていたのだと知った。性犯罪者は、幼い頃のトラウマがあり、自分達とは全く違う存在だと思っていたのだ。 しかし、痴漢や盗撮などの犯罪者は、私達の違いはほとんどない。そのため、彼らの犯罪開始年齢が24歳だと考慮すると、私も男である以上、性犯罪に走ってしまう可能性があることを知った。

    0
    投稿日: 2025.03.26
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    医療関係者の強調する「エビデンス」とか「科学的…」なんてそんなものなんだ、とわかったのが最大の収穫かな。

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    投稿日: 2024.09.16
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    タイトルは「痴漢外来」だが、痴漢を含む様々な性犯罪・性的依存症について、様々な角度から言及しており、大変参考になった。

    4
    投稿日: 2024.03.23
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    依存症の中でも性的問題行動の治療に関わる著者。痴漢(全てではないが)を依存症の観点から見ること自体、新しい知識だった。 読んでいくと、加害者の治療・再犯の予防が必要と著者が強く訴えることに納得できる。治療と聞き、加害者を守るのかと反感を感じた人ほど本書を読んで欲しい。新しい被害や再被害を防ぐ視点が社会に広まって欲しいと思う。 また、専門家の性犯罪再犯リスクのアセスメント的中が50%と言う話から「高い金を払って専門家を雇うくらいならば、ワールドカップのときに予想を次々と的中させたタコでも飼っておいたほうがよいだろう」に笑った。 批判的な一般人の意見はまだしも、経験則や感情のみで動く自称ベテラン専門家の存在が、支援や治療の邪魔になるのかもしれない。

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    投稿日: 2023.09.20
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    痴漢を処罰するだけではなくて、性的依存症の治療をする。それが、被害者をうまないことに繋がる。確かに其の通りだと思った。こういう活動が広がっていくといいな。

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    投稿日: 2022.09.15
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    新しい世界を覗いたような感覚でした。 犯罪心理学の中でも、 性犯罪は特に難しい分野なのですね。 科学的に、倫理的に、そして人情を捨てずに、 ひととかかわっていきたいとおもいました。 全ての人が出来るだけよりよく生きるための指南書としても、良いと思います。

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    投稿日: 2022.05.15
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    加害者の治療をもっと真剣に行っていくべきだと思う。それは加害者を守っているわけではなく、結果的に性犯罪被害を無くすことにつながる。 性犯罪だけではなく、加害者が生まれないように、再犯しないように、治療を行うことが重要 *性犯罪者のリスクファクター ①反社会的行動歴、②反社会的交友、③反社会的態度・信念、④反社会的パーソナリティ、⑤教育・仕事上の問題、⑥家族葛藤、⑦物質使用、⑧不適切な余暇活用 *犯罪者治療の三原則RNR原則 リスク原則、ニーズ原則、治療反応性原則

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    投稿日: 2022.01.11
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    性にまつわる問題は難しい。特にそれが問題行動にまで発展した場合。本書は性犯罪の加害者、性的依存症、強迫的性行動症に加えて性犯罪被害者の現状に触れ、現段階での科学的な到達点からその治療や寄り添い方を示している。センセーショナルに報道されたり、感情的な取り扱いをされがちな分野だけに冷静で温かな対応が必要だと感じた。

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    投稿日: 2021.11.02
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    とにかく加害者被害者ともに壮絶な体験をしている。それらを知ることが出発点だろう。 以下メモ 性犯罪の再犯率は5%。しかし痴漢や盗撮の再犯率は30~50%ほどある。厳罰化は再犯率を増加させるというエビデンスもある。(適正化は必要だか) DSM5にもICD10にも疾患(パラフィリア障害群)として分類されている。(ICD11では「強迫的性行動症」が新たに追加) 性犯罪のリスクファクターはその他の犯罪と基本的に変わらない。(反社会的な行動歴、交友、態度信念、パーソナリティ。教育や仕事上の問題、家族葛藤、物質使用、不適切な余暇活用。) 犯罪者治療には「RNR原則」というものがある。リスク原則は、リスクに逢わせて治療強度を変えるという原則(低リスク者に強い治療をすると再犯リスクがあがる)。 性的依存症の難しいところは他の依存症と違って被害者が生じること。だからリラプス(再発を意味する)をなんとしても避けねばならない。 思考ストップ法などコーピングを学習する。 性的強迫症者の自助グループもある。SCAという。

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    投稿日: 2020.10.17
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    性犯罪者をどう処するか、というのは「荒れる」議論になりがちだ。被害者に与えるダメージの大きさから、感情的な処罰が提言されることも多い。 しかし、厳罰化には抑止も再販防止の効果もなく、永久に施設に入れる(実際米国にはそういう施設がある)のは税金がかかりすぎる。 データが取りにくいなか、現状で最も効果が高いと思われるのが認知行動療法や弁証法的行動療法を通した治療である。性犯罪につながらなくとも、性にまつわる「逸脱した」行動(カッコ書きにしたのは回数や頻度の面などで明らかに社会的な生活に支障が出ている状態を指す)はアルコール依存症等と同じくAddictionの要素が強く、似たようなアプローチをとっていくことで改善が見込めるというわけである。 フロイトの潮流を汲む精神分析に鋭く批判を与ている点も見どころだ。ここ20~30年で心理学は大きくアップデートされたが、日本においては追いついていない治療者が多いという告発には唖然とする。 筆者の主張の根幹にある「処罰に加えて治療を」というのは日本だと浸透しなさそうではあるが、アプローチとして有効だと感じた。

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    投稿日: 2020.08.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    われわれにとって「性」の問題は、そのまま「生」の問題でもある。性は、われわれの人生を豊かで彩のあるものとしてくれる反面、大きな苦しみの源泉となることがある。 傷つけた人も、傷つけられた人も、人に受け入れられてはじめて、本当の自分を見出し、新しい人生を見据えて前を向かなければならない。

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    投稿日: 2020.08.21
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    今までなんとなく避けてきた話題だったけれど、読んでみて当事者の苦悩が伝わってきた。 痴漢を行う動機として、最初はのきっかけは性的な要素が強くても次第に薄れていく。そして、最終的に強迫、辛いことからの逃避行動、条件付けなどが要因となっているのだそう。 正直、単純に性的衝動に支配されているのだとばかり思っていたが、性的依存症も他のアルコールなどの依存症と同じなのだと知って驚いた。 その他勉強になったことを箇条書きにする ・依存症の人は、落ち込んだときのコーピングのレパートリーが少ない ・痴漢は刑罰を課しても犯罪は減るどころか僅かに増える一方、治療特に認知行動療法を行えば30%程度減少する ・家族や仕事など社会的つながりが消える方が犯罪率があがる ・さらに刑務所内での治療より社会内での治療の方が効果が大きい

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    投稿日: 2020.08.18
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    冒頭に"治療を伴わない刑罰は再犯防止効果がない"とあったが、重要な指摘だと感じた.性依存症の存在を否定する学者らの言い訳を、地道に確実に乗り越えて、再犯率の低下を得ている事実は素晴らしいことだ.フロイトの精神分析の欠点や過ちを認めないで、古い知識に拘泥している学者の存在を指摘していたが、どの世界でも常に新しい知識を吸収する努力は絶対必要だと感じた.性依存症にはパラフィリア障害と脅迫的性行動症があるとの指摘で、前者には痴漢や盗撮、後者には過剰なセックスやマスターベーション、風俗店通いを例示していたが、いずれも治療可能だと強調している.参考になった.

    0
    投稿日: 2020.07.13
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    ■強い意志を持つこと,我慢することは確かに重要。反省ももちろん重要。しかし,それで収まるなら苦労はなく,むしろそれで収まるくらいならそもそも依存症ではない。圧倒的な衝動に突き動かされて理性や意志の力がなぎ倒されてしまうのが依存症の本質。 ・脳が乗っ取られたような状態になり意志の力では太刀打ちできなくなる ・意志の力に訴えかけ反省を促す「処罰」だけではこの問題を解決できない ■痴漢の再犯率は30%とされているところ,痴漢外来で治療を受けた人の再犯率は3%弱。 ■DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)やWHO(世界保健機関)の国際疾病分類(ICD-11)には「窃触障害」という疾患がリストアップされている。 ・DSM-5ではその主な症状として「同意していない人に触ったり身体をこすりつけたりすることから得られる反復性の強烈な性的興奮が,空想,衝動又は行動に現れる」障害と記載されている ■窃触障害の診断基準 ・少なくとも6か月間にわたり,同意していない人に触ったり身体をこすりつけたりすることから得られる反復性の強烈な性的興奮が,空想,衝動又は行動に現れる ・同意していない人に対してこれらの性的衝動を実行に移したことがある,又はその性的衝動や空想のために臨床的に意味のある苦痛,又は社会的,職業的又はほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている ■窃触障害はDSM-5では「パラフィリア障害群」と呼ばれる一連の性的障害の中に含まれている。 ・対象の逸脱としては,子供,動物,物(下着や靴など)に対して性的欲動を抱くケースがある ・小児性愛(ペドフィリア) ・動物性愛(ズーフィリア) ・フェティシズム障害(対物性愛) ・手段の逸脱としては,窃触障害が代表的なもの。加えて露出障害,窃視障害(のぞき・盗撮) ■嗜癖性障害群 ・行動的依存症:ギャンブル,ゲーム ・物質依存症:アルコール,薬物,たばこ ■性的依存症の診断基準 ・渇望・とらわれ:特定の性的行動をしたいという強迫的な欲求を抱いている。また,常に性的とらわれ,ファンタジーを抱いている ・コントロール障害:その行動をしてはいけない,やめたいとわかっていても抵抗できない。その行動がネガティブ行動を繰り返してしまう ・頻度の増大:物質依存でいうと耐性に当たる症状であり,その行動の頻度が増大する。多くの時間を性的行動とその準備に費やす ・臨床的問題:性的行動は重大な心理・社会的問題を引き起こしている ■病気であるとみなされるのは次の二つを満たしたときのみ。 ・パラフィリア障害の場合,その性的対象や手段に逸脱や異常があるだけでなく,それが反復的になされる場合 ・強迫的性行動症の場合,性的衝動や行動の統制が欠如しているだけでなく,それによって本人が著しい苦痛を抱いているという場合 ■性犯罪のリスクファクター(危険因子) ・一般犯罪のリスクファクターのセントラルエイト ①反社会的行動歴  発達早期から反社会的行動を行っている ②反社会的交友  反社会的傾向を有する者との交友がある ③反社会的態度・信念  規範の無視や暴力の肯定など反社会的な価値観,態度,認識を有している ④反社会的パーソナリティ  共感性欠如,冷酷性,残忍性,自己中心性,自己統制力欠如などの傾向を有している ⑤教育・仕事上の問題  教育・職業上の成績が不良である。怠休,無職の状態にある,学校や職場での対人関係に問題がある ⑥家庭葛藤  家庭内に葛藤がある。家族関係が不良である。しつけ不足 ⑦物質使用  アルコール,違法薬物を使用している ⑧不適切な余暇活用  建設的な余暇活動を行っていない ■性犯罪特有のリスクファクター ・性的逸脱 ・反社会的態度 ・不適切な性的態度 ・親密性の欠如 ・小児期の環境不全 ・一般的な心理的問題 ■性犯罪治療の三原則 ①リスク原則  再犯リスクに応じて治療強度を変える ②ニーズ原則  リスクファクターのうち動的なものを治療の標的とする。動的なものとはセントラルエイトでいえば「犯罪歴」以外の7つ ③治療反応性原則  治療法を選択する際には相手が反応(変化,改善)するような方法を選らぶ ■「引き金」(性的欲求のスイッチを入れてしまうもの)を回避することが現実的に困難であれば,次善の策として「引き金」に対する効果的な対処法(コーピング)を考えて実行してもらう。場合によってはスムーズに実行できるようになるまで練習が必要なものもある。これをコーピング訓練と呼ぶ。 ■渇望へのコーピングで一番多用されるものが「思考ストップ法」である。これはあらかじめ手首に輪ゴムをつけておいて,渇望が生じ始めたと気づいたら即座にその輪ゴムをパチンと弾く。すると一瞬痛みの方に気がそれる。その数秒の余裕を使って何か15分以上集中できる別の行動を開始する。 ・なぜ15分かというと,どんな渇望も生理的には15分も続かないから ■性犯罪者のタイプ(自己統制のタイプ) ①回避受動型(統制力不足)  性犯罪をやめたいとの思いはあるが,統制できない ②回避積極型(不適切な統制)  性犯罪をやめたいとの思いはあるが,誤った統制をしている ③接近自動型(統制力欠如)  認知的・行動的問題が大きく,刺激に誘発され衝動的に犯行に至る ④接近確信型(統制の意図がない〔逆に十分に統制の取れた犯行をする〕)  確信と十分に練られた計画によって性犯罪に至る ■被害の前や最中で抵抗したり大声を上げたりすることは不可能である。 ・混乱のあまり相手に心理的に支配されたような状態に陥って自分の行動を制御することができなくなる。結果,相手の思うままになってしまう ■体だけでなく恐怖心から文字どおり頭の中が真っ白な状態になりしばらく意識が飛んでしまうようなことが起こる ・これは,心理学的には「解離」と呼ばれ一種の変性意識状態である ■解離状態の時の主な症状 ・受け答えが自動的 ・動きが止まり,視線が一転を見つめている ・無表情になっている ・感情表出が乏しく淡々と話をする ・目が半開きになっている ・まばたきが多い ・寝てしまう ・被害の話をしているにもかかわらず,にこにこ笑っているなどその場に不適切表情をしている

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    投稿日: 2020.03.01
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    性犯罪を繰り返す者は性的依存症の可能性があり、従来は刑罰を受けて社会に復帰をしていた。 しかし、依存症ならば治療が必要である。性犯罪を刑罰で更生させるのが難しいというエビデンスがあるらしい。 新たな犯罪を減らすため、性的依存症の理解が広がることを願う。

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    投稿日: 2019.11.26
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    JBpress(2019.10.28):刑罰だけでは繰り返す!痴漢は深刻な「病」である 「治療」することで、犯罪者は自分を取り戻し、被害者は減少する https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57963 NEWSポストセブン(2020.06.01):満員電車復活で「痴漢」の懸念 痴漢外来での治療法とは https://www.news-postseven.com/archives/20200601_1567170.html

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    投稿日: 2019.10.29
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    新井紀子先生がTwitterでおすすめしていたので購入して読んでみた。なるほど、おもしろい・・・とは言いにくいのだが、そういうこともあるのか、ということがわかった。帯にある「やめたいのに、やめられない」依存症なわけだ。認知のゆがみがあって、抵抗しないのは自分を受け入れた証拠だと考えてしまうようだ。著者が行う治療プログラムを実施することで再犯率が30%から3%に減るという。それはすごい。しかし、痴漢外来ということばは本書で初めて知ったから、全国で治療が行われているわけではないのだろう。もっとも、痴漢が起こりやすい環境は主に都会に多いのだろうから地方都市にはあまり必要ないのかもしれない。痴漢や盗撮から暴力・殺人とまではなかなか進まないだろう。一方、五章で扱われているハイリスク性犯罪者は高い塀の中で隔離されており、一生外に出られないものもいるという。再犯を考えれば致し方ないのかもしれない。それでも、毎日被害者の思いを想像してノートに留めていた性犯罪者が、刑務官の「つらいだろう」の一言で救われた様子が描かれている。そうやって変われる場合もあるのだ。何よりも印象深いのは、本書の最終章、被害者の声である。痴漢や強制性交に対し、なにも抵抗しないのは受け入れているわけではもちろんない。恐怖のために全く声も出なくなってしまうのだ。きちんと自分の身の上に起こったことを認識し、表に出せるようになるのに何年もかかることがあるそうだ。そういうことを第三者も知っておく必要がある。ましてや裁判官ともなればしっかり勉強してほしいものだ。泣き寝入りはよくない。逃げ得にもしたくない。

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    投稿日: 2019.10.25
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    性的犯罪者に対しては世論が感情的になり、厳罰化、隔離、ホルモン治療といった過激な治療がある。それより効果を持つのが本書で語られる認知行動療法と、自助グループでの活動だ。 性的犯罪者を他の犯罪者と区別せず、再犯リスクを低くして社会復帰できるようになるなら、是非ともこの治療や活動を応援したい。

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    投稿日: 2019.10.24