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powered by ブクログ企業の組織環境における「規模」や「相互依存性」「ダイナミズム」を把握し、そうした状況下で変革を実現するための方法を理解することには困難がつきまとう。使えるのが従来の技術と概念的なツールだけなら、なおさらだ。これこそが、実践者のまえに立ちはだかる「変革のジレンマ」の本質だ。 ジョン・コッターはチェンジマネジメントの創始者とされている(実際、そのとおりだ)が、彼が考案した組織変革のための有名なフレームワーク「8つのステップ」は、その性質上、直線的なプロセスを採ることになる(注12)(図表1-8)。しかし、デジタルビジネス・トランスフォーメーションとは、事業の「複数」の側面に大きな変化を起こすことだ。だからこそ、複雑にもつれた組織に大きな変化を起こすためにも、従来のチェンジマネジメントは不向きなのだ。広範かつ全社的な変革ではなく、分離した単独の変革努力に一貫して集中しているからこそ、企業は従来のチェンジマネジメント手法(たとえば、プロサイ社のADKARモデルなど)に頼り、そうしたモデルに頼ってしまうからこそ、単独の変革努力に集中してしまうとも言える(注13)。以前から考えられてきたように、組織のもつれがなく、機能的に自律しており、変革の対象範囲がかぎられているなら、チェンジマネジメントで事足りるだろう。しかし、こうした条件がそろっていても、大半の組織変革が失敗に終わる。「足元に火がついている」と従業員に奮起を呼び掛けたり、変革を先導するチームをつくったりするなど、効果実証済みの手法がまちがっているわけではないが、それでもほとんどの大組織は、デジタル・ボルテックスという緊急事態を踏まえて大規模な変革をおこなうために必要な理解とアジリティ(くわしくは後述する)を有していない。 そうした変革を実行するには、従来のチェンジマネジメントの先にある領域に足を踏み入れなければならない。それが「オーケストレーション・ゾーン」(図表116の右上部分)だ。このゾーンに入ることで企業は、組織が持つネットワーク的な性質に対処し、いま求められている前例のない規模の変革に取り組めるようになる。企業は、組織を横断するかたちで変化を促し、多方面で事業の成果をあげる。それを何度でも繰り返せる。オーケストレーション・ゾーンでの変革は、高度な結びつきのアプローチを採ることを意味している。 「オーケストレート」とはどういう意味だろうか。DBTセンターでの定義は、「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」だ。 ▫️変革目標 変革目標の第1の要素は、カスタマーバリュー創出のための組織的アプローチだ。リーダーは何よりもまずこれを念頭に置き、「顧客にとってどんな価値があるか」を明確に定義しなければならない。顧客第一主義を標榜する企業は多いが、これは遵守するよりも違反するほうが名誉になるといった類いのものだ。とはいえ、変革を成功させたいのであれば、カスタマーバリュー創出は絶対に不可欠だ。 ディスラブションの核にあるのは、新しい、よりよいかたちのバリューを創出することだ。これは、収益や利益ではなく、最終顧客のための価値だ。シンプルに言えば、ディスラブターは、よりよいカスタマーバリューを提供する方法を発明して、市場に変化をもたらしている。 前著の執筆準備中、私たちは、大きな成功を収めているディスラプター100社以上を研究して、彼らの「やり口」に共通する特徴を3つ発見した(図表2-1)。彼らが顧客価値を創出する方法は、コストを下げる、もしくはなんらかの経済的見返りを生み出す(コストバリュー)、②より迅速で、より便利な、よりパーソナライズされた顧客経験をもたらす(エクスペリエンスバリュー)、③たとえば買い手と売り手、講師と受講生のあいだに、これまでなかったつながりを創出する(プラットフォームバリュー)の3つだ。 ▫️トランスフォーメーション・オーケストラ ここで、私たちが「オーケストレート」という言葉を「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」と定義していたことを思い出してみよう。これはまさにオーケストラを率いる指揮者がやっていることだ。マエストロは演奏家たちの活動を監督し、彼らの能力の最もよい部分が表れた演奏を生み出す。全体として見れば、演奏は部分の総和を上まわるものになるはずだ。 変革目標の設定は、曲づくりに似ている。オーケストラの各部門(弦楽器や金管楽器、木管楽器など)に対し、適切なタイミングでそれぞれのバートを演奏するよう呼びかけるからだ。曲が完成したら(将来、どのような競争上の地位を達成したいかを決めたら)、次はそれを演奏(実行)しなければならない。 しかし、どうやったら演奏(実行)できるだろうか。どんなに美しい楽譜でも、楽器がすべて同時に演奏をはじめたら、もしくは全員が「楽譜の同じページ」を弾いていなかったら、耳障りな曲になってしまう。事業部門ごとの方向性を示した変革目標は、交響曲の「楽章」に該当する。これらをすべて集めると、企業が演奏しようと考えている交響曲(変革理念)となる。 私たちは、このフレームワークを「トランスフォーメーション・オーケストラ」と命名した。オーケストラを構成する8つの楽器は、組織内の8つの要素に対応している(図表4-1)(注1)。それぞれの要素には、会社の主力市場のモデリングや、利害関係者との関与の仕方、組織づくりの方法といった、リーダーにとって重要な検討事項が含まれている。トランスフォーメーション・オーケストラのフレームワークを使えば、リーダーは「脱部門的」な考え方で組織のサイ口から抜け出し、会社の目標を達成するために必要なあらゆるリソースをかき集め、活用できるようになる。 「楽器」は、組織リソースを合理的に分類したものだ。各楽器は、新しい製品やサービスの立ち上げや、デジタルによる新たな顧客経験の提供、企業文化の変革といった特定の仕事を実現するために連携する。変革に取り組むには、組織内のいたるところにあるリソース(楽器)をオーケストレートしなければならない。楽器は、部門や部署とイコールではないことに注意してほしい。これについては後述する。 華麗なオーケストラの演奏と同じように、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを成功させるには「必要なとき」「必要な場所」に8つの楽器を参加させる。改革が必要な領域に優先順位をつけて、その順番を決めなければならないが、良質なオーケストレーションにするにはそれだけでは不十分だ(たとえば、弦楽器だけの演奏のあとにホルンの音だけが聴こえてくるような曲はめったにない)。 音楽における楽譜と同様、デジタルビジネス・トランスフォーメーションにおいても、組織内の異なる要素が調和して(同じタイミングで協力し合うかたちで)奏でられることが求められる。バイオリンのソロは力強いかもしれないが、ひとつの楽器だけではフルオーケストラのインパクトには到底およばない。製品やサービスを変えるだけ(たとえば製品とつながるようにするだけ)では、そのインパクトはかぎられている。私たちの調査によると、最良の変革(最も成功確率が高い変革)は、会社全体を対象としている。「組織全体」と「すべてのリソース」が関与するのだ。 私たちがトランスフォーメーション・オーケストラの核となる楽器を特定できたのは、DBTセンターの設立以来、さまざまなエグゼクティブたちと何百回にもおよぶ交流ができたおかげだ。そうして得た私たちの結論はこうだ。変革の成否は、トランスフォーメーション・オーケストラの3つのセクションに分類される8つの楽器がどれだけ必要かというバランスに左右される。 市場開拓セクション 1 製品・サービス(あなたの会社が売る製品やサービス) 2 チャネル(製品やサービスを顧客に届ける方法、市場までの道筋) エンゲージメント・セクション 3 顧客エンゲージメント(顧客とどうかかわっているか) 4 提携業者エンゲージメント(提携業者のエコシステムとどうかかわっているか) 5 ワークフォース・エンゲージメント(従業員や契約スタッフとどうかかわっているか) 組織セクション 6 組織構造(事業部門やチーム、命令系統、プロフィットセンター、コストセンターの構造)やふるまいがどう報奨されるか) 7 インセンティブ(従業員のパフォーマンス 8 文化(会社の価値観や態度、信念、習慣) トランスフォーメーション・オーケストラによって、変革の境界線を設けることもできる。多くのエグゼクティブにとって、デジタルビジネス・トランスフォーメーションは曖昧で、抽象的で、不安を掻き立てるものだ。そこに何が含まれていて何が含まれていないのか、あるいはどこから手をつけるべきなのかよくわからないが、「(3でも10でもなく)8つの楽器だけに集中すればいい」と示してやれば、そんな懸念を払拭できる。変革目標を実現するためにどう組織を変えればいいのかというタスクの範囲と構造がよくわかるからだ。 ▫️変革目標を実行プログラムに落とし込む ①カスタマージャーニー・マップ作成 ②ビジネスモデル設計 私たちが推奨するのは、少数の者たちにデザイン思考のトレーニングを受けさせることだ。そうすれば、彼らが社内外の人々に対して「ソリューショニング」することができる。 … 変革ネットワークから生み出されるのは「プロセスの変化」と「よりよい能力」である。したっがって、このプロセスと能力の「ビフォー」と「アフター」を測定できる基準を設けておくべきだ。 たとえば、「この変革がおこなわれるまえはサービスコール1本当たりのコストは59ドルだったが、変革後は35ドルになった」というように。ただし、最初はゆっくりと物事を進め、関連するプロセスと能力の「ビフォー」を測定できるようにしておこう。 ③ビジネスアーキテクチャ ④能力評価 ⑤コミュニケーションとトレーニング ⑥社内プラットフォーム ⑦社内ベンチャーファンド ⑧アジャイルな作業方式 ▫️デジタルビジネス・アジリティー変化するための組織能力 前著『対デジタル・ディスラプター戦略」の後半(第Ⅱ部)は、私たちが「デジタルビジネス・アジリティ」と呼ぶ組織能力の説明に割いた。私たちはそれをシンプルに「変化するための能力」と定義し、どうすればデジタル・ボルテックスによって変化しつづける市場に組織が適応していけるかを説いた。 デジタルビジネス・アジリティには、「ハイパーアウェアネス(高度な察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」という核となる3つの能力があり、これらが調和することで組織にアジリティが生まれる(図表514)(注12)。 ハイパーアウェアネス(察知力)は、自社を取り巻く環境やワークフォース、顧客起点の変化を察知する能力だ。バリューチェーン上のどこにあろうと、競合他社や顧客、サブライヤー、物理的資産に関する情報を収集する能力がこれに含まれる。情報にもとづく意思決定力は、ハイパーアウェアネスによって得られた情報を使い、考えられるかぎり最良の意思決定をする能力だ。この能力を実現するには、きわめて包括的になり、集合知や専門知識を活用して、適切な決定をするために必要な情報や視点、意見を探し求める必要がある。また、データ解析の力も借りなければならない。 迅速な実行力は、デジタルビジネス・アジリティの3つ目の要素で、時宜にかなった効果的な方法で意思決定を実行する能力を指す。適切なリソースを必要な場所に動的に割り当てることも、これに含まれる。事業プロセスも動的でなければならない。迅速に実行するには、ンスが生まれたらすぐに新しいプロセスを生み出し、それを展開してテストし、変更し、さらに学習しなければならない。でなければ、破壞的な企業にチャンスを奪われてしまう。高レベルのアジリティを備えるディスラプターたちと渡り合うには、デジタルビジネス・アジリティこそが要であると私たちは考えてきた。私たちの調査と、世界中の何百もの企業と交流をしてきた経験も、その考えを裏づけている。アジリティは、デジタル・ボルテックスの渦中にある企業にとって本当の意味で成功の礎となるものだ。こうした変化するための能力があれば、オーケストレーターは必要に応じてリソースを活用して変革に引き込み、たとえ一時的であるにしろ、特定の需要に対処させることができる。 人のリソースのエコシステムから瞬間的に高レベルの専門知識を引き出す能力、私たちが前著で「人材クラウド」と呼称した能力は、変革ネットワークの機能に計り知れない恩恵をもたら組織リソースとしてのデータも、また重要だ。トヨタ・モーター・ノースアメリカのCDO.ザック・ヒックスは言う。「たくさんのデジタルビジネス・トランスフォーメーションがデータの力を解き放ち、サイロから奪い返しています。データと洞察が自由になることで、企業はよりよい、より迅速な意思決定ができるようになります」インフラ、とりわけIT資産は、優先順位の変化に合わせて動的にオーケストレートし、迅速かつシームレスに転用しなければならない。デジタルビジネス・アジリティは、結びつきを強化し、いつでも変革可能な企業を生み出す。新たな情報や関連する情報をもたらす「弱い結びつき」と、組織に信頼と連帯感をもたらす「強い結びつき」をつくり出すのだ。 弱い結びつきは、情報源の巨大なエコシステムからアイデアとデータを集めることで、私たちを「ハイパーアウェア」な状態にしてくれる。そのため、ビジネスの必要に応じて専門知識と洞祭にアクセスし、「情報にもとづく意思決定」ができるようになる。弱い結びつきが、分散したリソースを必要なときに必要な場所に転用できるようにすることで「迅速な実行」が可能とな強い結びつきは、変革プログラムの実行を妨げる組織的、技術的、個人的な障壁を乗り越えるために、情報をより効率的に伝達することで「ハイパーアウェアネス(察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」を生み出す。 ▫️企業がとるべき21のアクション | 一般原則 1.デジタルビジネス・トランスフォーメーションを追求する際には、チェンジマネジメントに頼るのでなく、変化するための「結びつきのアプローチ」の必要性を受け入れ、オーケストレーション・ゾーンで活動する。 8.経営陣は「変革の方向性を強化する」と一貫して明言する。マネジャーや従業員に対しては「その方向性をサポートするよう計画し、投資し、実行してほしい」とはっきり伝える。 21.CTOが他の主要なリーダーたち、とりわけCIOやトランスフォーメーション・リードたちと協働できるようにして、会社全体のアジリティのレベルを高める。これは変革のための基礎能力となる。新たな情報もしくは関連した情報を提供してくれる組織リソース同士の「弱い結びつき」や、結びつきのアプローチに必要な信頼と連帯感を育む「強い結びつき」の促進もここに含まれる。 | 変革目標を設定する 11.顧客を、デジタルビジネス・トランスフォーメーションの中心に据える。新しい価値もしくは改善された価値をどうやって最終顧客に届けるか、顧客視点からさかのぼって考える。 12.変革目標を設定する。これには、「カスタマーバリュー」を創出し、供給、実現するための適切な「ビジネスモデル」と、それを実現するための「対応戦略」が含まれる。変革目標は事業分野ごとに設定すること。各事業分野のリーダー(ならびに経営陣)は変革目標をサポートしなければならない。各事業の変革目標を定めるのはCTOの仕事ではない。 13.事業分野ごとに異なる変革目標を立て「対応戦略のポートフォリオ」を作成する。 | 変革理念を明確に伝える 14.変革理念(会社全体の変革ゴール)を明確に伝えること。理念は、正確で、現実的、包括的で、簡潔、測定可能(PRISM)なものでなければならない。上級リーダーたちに変革のアンバサダー役を務めてもらい、それぞれのチームのコミュニケーションやブランニングの場で変革理念を強調してもらう。 | オーケストレーション能力 10.社内のあちこちで進行している大きなデジタル・プロジェクトを文書にまとめ、見通しをよくし、相乗効果を生みやすくする。しかし、オーケストレーターはこうしたブロジェクトを「所有」すべきではない。 9.適切な規模の「社内ベンチャーファンド」をつくり、部門間横断型の取り組みと事業成果を加速させる。 6.変革ブログラムがバリューに与える影響をモデリングできるリソースを従事させる。これにより、変革に向けた努力を軌道に乗せ、利害関係者、とりわけ上級管理職と取締役会のサポートを獲得できる。 | リソースを動員し、結びつきを機能させる 15.トランスフォーメーション・オーケストラのすべての楽器を網羅した「ビジネスアーキテクチャ・マップ」を作成する。存在している人やデータ、インフラのマップの他、それらの関係性とワークフローについてもまとめる。 16.変革目標から浮き彫りになった課題と最も関係が深い「楽器(あるいは組織リソース)」を突き止める。 17.変革を進める際に直面する課題に取り組むために、複数の「楽器」で構成された「変革ネットワーク」をつくる。それぞれのネットワークは俊敏に動けるよう小規模にとどめ、的を絞った特定の課題だけに注力させる。こうすることで、変革の進捗や影響が測定しやすくなる。 | オーケストレーションのための組織づくり 2.CTOを任命する。謙虚で、順応性があり、ビジョナリーで、積極的に関与してくれる人物を雇う。 3.デジタルビジネス・トランスフォーメーションをオーケストレートし、組織リソースを動員してその結びつきを機能させる責任を、CTOに与える。一方で、変革の結果については責任を分担し、共通のKPI(主要業績評価指標)を用いる。社内の各部署・部門は、それぞれの領域にデジタル能力を実装し、変革を推進することに集中する。 4.CTOに高いレベルの序列を与える。中間管理職やコルディナティ(調整役)としてではなく、組織内に大きな影響力を持つ経営幹部の一員として扱う。 5.CTOの下に「変革推進室」を立ち上げる。チームは小規模にとどめること。このチームには変革を実行させるのではなく、変革に関係する業務の大部分をオーケストレートさせる。 7.変革推進室に、「デザイン思考」や「ビジネスアーキテクチャ」などのオーケストレーション能力を持った人材を引き入れることを最優先する。能力ギャップを埋めてくれる人材がいないかどうか、エコシステムにも目を向け、機敏に人材を引き入れる(貴重なスキルや高額なスキル、たまにしか必要としないスキルを持った人材の「タレントブール」を開発するなど)。 18.CTOが他部門や他部署のリーダーたちと強力な信頼関係を築けるようにする。変革推進室は、他の事業と張り合うものではなく、イノベーションやアジリティ、スピードの源泉だと考える。 19.他のチームから「トランスフォーメーション・リード」を指名し、グループをまたいだ実行の「縫い合わせ」をサポートさせる。サイロ化した部門をつくるのではなく、「結びついた実行」をおこなうために「組織のファブリック」を織り、それを既存の組織構造の上にかぶせる。 20.変革推進室は、「新しいプロセス」と「よりよい能力」のインキュベーションに注力する。成熟期に入ったら、こうしたプロセスと能力の管理は事業部門に引き継ぐ。変革推進室はその後も時間をかけてアウトプットの調整に従事する。 ▫️日本企業をがんじがらめにする「もつれ」 1強力なタテ構造 2組織人のメンタリティー 3ソフトウェアの価値に対する理解 3つ目は、ソフトウェアの価値に対する理解度が低いことである。たとえば、いまや、ソフトウェア能力でクルマが選ばれる時代になりつつある。消費者は、エンジンやボディーなどのハードウェアが優れているかどうかよりも、(それらについては一定の水準を満たしているという前提のもとで)ナビゲーションやインターフェースなどの機能性、すなわちソフトウェアの使いやすさを重視している。テスラがすごいのは、同社のクルマが、まさに優れたソフトウェアのかたまりだからである。にもかかわらず、日本企業でソフトウェアの価値に対する理解度が低いのは、なぜか。その理由は、そもそも経営層がこれまでITにあまり興味を持ってこなかったからである。多くの場合、日本企業ではシステム子会社に丸投げしてきた(だから日本企業のIT部門は欧米企業に比べて極端に小さく、経営者から遠い位置にある)。欧米企業の経営者は、ITやデジタルの価値をよく理解しているか、理解していなくても学ばなければいけないという意識が強い。このことは、日本企業が今後DXを推進するにあたって致命傷となる恐れがある。
0投稿日: 2024.07.31
powered by ブクログ●一分野マスター読書「DX」16冊目。3つのバリューと15種類のビジネスモデル、4つの対応戦略を組み合わせて、「結びつきのアプローチ」で変革を目指すことをテーマにしたDXの本。
0投稿日: 2023.05.11
powered by ブクログDX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる 読者想定は大企業、イメージ員数500名以上のイメージです。 ヒアリング、調査対象がグローバル企業であるため、中小企業に置き換えると対岸の風景に見えてしまう可能性ありです。 一方で、大企業ですら、DXなるものが未完成でありつづけている現状は、DXがビジョンを含めた戦略であることと理解できます。 1.定義 DXとは、ビジネスモデルと組織を環境に適応。変化させて、業績を向上させることです。 2.ビジネスモデル。3つの方向性 ①コスト削減。 ②顧客体験向上 ③プラットフォーム価値向上 欧米スタートアップは、この1.2.3.の合算で既存市場の破壊を行なっています。 大企業、歴史ある企業の方向性も同じく1.2.3.の合算が望ましいです。 3.DXを組織で実行する。2つの要素。 どの企業にも下記の2つの要素が存在します。 時間は要しますが、DX実行にあたっては、この全てを明らかにすることとあります。 アドビは、それを行ったうえで、プロジェクトベースで①②含めた可視化のしくみ/コックピットを作りました。 ①ノード/リソース ひと、データ、システム ②①のリンク/関係性 強い、弱い 4.ネスレ グローバル企業の取り組み カスタマー(推察/小売、個人そして企業内個人)の体験をさらに適切なものにするため、毎週寄せられる苦情、要望を集計、分析そして活用しています。 大企業かつブランド浸透企業ですらこの水準までやっていることは、驚異であり、かつ脅威です。 5.わたしの実務に置きかえて 2.の顧客への提供価値。コスト、体験、プラットフォーム。 そして、3.のノードとリンク。 3.リンクを強く、太くするために、外部から教えてもらう/ヒアリングする機会を増やしていきます。
7投稿日: 2021.11.23
powered by ブクログなぜDXなのかを紐解きながら、オーケストレーション(結びつきのアプローチ)で経営層としての意思決定者は全体で推進させる力となることの重要性がよく分かった。そのうえで、各組織がデジタル化プロジェクトを推進する責任を追うという分担は理にかなっていると思った。ただ、なかなかこれを伝えることの難しさ、特に各組織・更にはその所属員たる社員にどのようにミッションを追わせていくのか、難しい問題に思った。会社の方針としてDXやデジタル化などが言われているが、実際の自分の業務として捉えてもらって、社員がデジタルの協力者や推進者になってもらうにはどうしたらよいのか、そのメッセージや進め方は更に考える必要がありそうだ(会社の風土にもよるだろうが、どのようなパターンが考えられるのだろうか)。
3投稿日: 2021.07.05
powered by ブクログdegital transformation 既存の組織をデジタルで稼ぐ組織に作り変えるための考え方を述べた内容 orchestration 各部門が個別に対応するのではなく、オーケストラのように各部門が協同することで漸くDXは成し遂げられる。 ツールとして、デザイン思考、カスタマージャーニーマップなど登場。 humble 謙虚さ adaptable 順応性 visionary 長期の方向性に明確な意識を持つ engagement 積極的な関与
0投稿日: 2021.05.03
powered by ブクログ2019年出版の本だけど、これまで読んだDX系の本の中では一番よかった。 英語ができると、この本をもっともっと前に読めたんだろうなとか思う。 何度か読み返したり、手元に置いて見返したりしたい一冊。 #DX
1投稿日: 2021.04.03
powered by ブクログ企業がデジタル変革を成功させるには、どうすればよいか?組織のリソースを活用し、協働させることで変革に導く「オーケストレーション」について解説した書籍。 「デジタル・ディスラプション(デジタルによる創造的破壊)」が進む今日、様々な企業にとって、デジタルによる「トランスフォーメーション(変革)」の実行は急務。 自社を変革するには「カスタマーバリュー創出」「ビジネスモデル」「対応戦略」の3 要素を合わせた「変革目標」を設定し、変革プログラムを実行する必要がある。 大きな成功を収めるディスラプター(破壊的な企業)は、次の3つのカスタマーバリューを創出している。 ①コストバリュー: コストを下げる、もしくは何らかの経済的見返りを生む。 ②エクスペリエンスバリュー: より迅速で、より便利な、よりパーソナライズされた「顧客経験」をもたらす。 ③プラットフォームバリュー: 買い手と売り手の間に、新たなつながりを創出する。 組織変革とは、交響曲の「オーケストラ」のようなもの。指揮者の下、各部門の楽器は調和のとれた演奏に貢献する。このように、組織のリソースを動員し、機能させることで、望み通りの効果を得る手法を「オーケストレート」と呼ぶ。 企業がオーケストレーションを機能させ、変革目標を実行に移すには、次の8つの能力が必要となる。 ①カスタマージャーニー・マップ作成 ②ビジネスモデル設計 ③ビジネスアーキテクチャ ④能力評価 ⑤コミュニケーションとトレーニング ⑥社内プラットフォーム ⑦社内ベンチャーファンド ⑧アジャイルな作業方式
0投稿日: 2021.03.04
powered by ブクログDXは今どの企業も(デジタルネイティブ企業以外)躍起になって実行しようと空回りをしているテーマ。 わたしも実務遂行の中で体感があるが、DXをIT部門、ましてや他のどこかの一部署に委ねては決して実現しない。 それに対してどのような打ち手があるのか。。とあいうことをイメージする一つの材料にはなったと感じる。
0投稿日: 2020.12.02
powered by ブクログDX実行に必要なのは結びつきのアプローチ。複数のリソースが結びついたネットワークとしての組織にて相乗効果を起こしていくことが必要
0投稿日: 2020.11.02
powered by ブクログ既存の大企業におけるDX推進の方法について書かれている。 特にDXを各個人・各部門の仕事としてではなく全社の仕事として捉えるオーケストレーションというモデルが印象的。 デジタル推進などの新規課題は経営層が社内リソース(データ、人、インフラ)を把握し、自らが指揮をとる必要があると言うことを、ぜひ経営層には今一度認識してもらいたい。またそれぞれの楽器(部門・個人)のつながりを促進する責任の所在について明確にする必要があると認識した。 またコルディナティという部門間の橋渡し役についてもその付加価値の無さなどについて記載されており、自身の上司と重なる部分があった!笑 DXの導入や推進の具体的な方法というより、大企業の中で何かを成すノウハウという点での抽象的な考え方は大変参考になる本であった。
0投稿日: 2020.07.25
powered by ブクログ既存企業のDXにおける振る舞いを詳説。ディスラプターが、顧客価値を創出する方法は、 ①コストバリュー ②エクスペリエンスバリュー ③プラットフォームバリュー の3つ。伍していくには、4つの対応戦略「収穫」「撤退」防御戦略「破壊」「拠点」攻撃戦略を実行する。ここまでは、最近よくある論調。 その実現性は、一重にトップの力とオーケストレーションにかかっている、との論旨がこの本を特徴づけている。この部分、正直ぴんと来なかった。
0投稿日: 2020.05.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
DXというバズワードとそれを実行するという、企業内部でのありがちな実践例を架空の企業(ベースあり)をモデルに読み解いていっている。 新規事業の立ち上げというレベルではなく、今回は「ディスラプション」ということで乗り遅れるとやばい、というレベル間の中かなりの企業が失敗しているという状況 ポイントはあまりにも大横断すぎる「既存企業」が対象となるため、これまでの一点突破アプローチでなく、全体突破でのアプローチが必要ということ。一点突破では単なる部門のデジタル化で終わってしまう。が、ここが難しい要素。 しがらみも多く、更に日本ならではのしがらみもあり、一筋縄ではいかないのがCDO(CTOなど)であるという。 ゆるい紐帯と強い紐帯を持ちつつ、各部署に潜伏し、業務を遂行していく。 今回は全体突破の考え方を知れたのが一つポイント、またマッピングでの全体見えるかも面白い。 これを乗り越えた既存企業と、デジタルネイティブな企業とでは何が違うのだろう。単に追いつく、ということだけではあまりにも手強い。仕組み化しておくことまで持っていけば、既存大企業でも対抗しうる?のか
0投稿日: 2020.05.10
powered by ブクログとても実践的な内容で、「デジタル化は目的ではないよ」という主張はそれを裏付けていると思う。 ただ、全体を俯瞰した説明がないように感じられるのと、前書を横に置いておかないとわからないので、理解するのが難しかった。手順だけまねしてもだめなのだろう。
0投稿日: 2020.01.24
powered by ブクログDXの壁に直面している。縦割りの組織は断じて交わろうとせず、各々の利益のためにのみ行動する。それは顧客のためという建前さえ持たず、つながることが目的だと言う始末。 デジタルビジネス・トランスフォーメーションはこれまでのチェンジマネジメントとは異なるという。非線形な変化?らしい。→概念すぎてわからない。 読んでいていまいちしっくりこなかった。組織の壁、エントロピーの大きさ、もつれが大事なのはそうなのだが、自分ごとに落ちない。理論の話なのだろうか? ■ デジタルビジネス・トランスフォーメーションにどこから着手すればいいか、どうやってロードマップを策定すればいいか デジタルボルテックス:市場に起きる破壊現象であり、デジタル化できるものはすべてデジタル化されるという一点に向かって企業を否応なしに引き寄せる ■本書でのデジタルビジネス・トランスフォーメーションの定義 デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること 第一に企業業績を改善することがその目的であり、第二にデジタルを土台にした変革であること →日本で言うデジタルトランスフォーメーションの定義と少し異なる。 ■ 直面している問題と組織が持つ3つの特徴 ・規模 ・相互依存性 ・ダイナミズム 旧時代の競争力学に成り下がったコスト構造とバリューチェーンを背負い込んでいる。こうした構造やバリューチェーンが競争力を高めたい企業の足かせになっている ■ カスタマーバリュー3つの形態 ・コストバリュー(コストを下げる、もしくはなんらかの経済的見返りを生み出す) ・エクスペリエンスバリュー(より迅速でより便利なよりパーソナライズされた顧客体験をもたらす) ・プラットフォームバリュー(買い手と売り手にこれまでなかったつながりを創出する)
1投稿日: 2020.01.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
アカデミックな文章。 いかにも海外の大学教授の論文を訳した本という印象。 組織・リソースをオーケストラに例えるフレームワークは新しさを感じた。 その上でマエストロ=経営者目線。 現場の課題解決といった点では少し視野が広いが、それだけの規模の取り組みということを認識させられる本。 担当レベルでは実践できることは少ない。 導入はとっつきやすいが、徐々に読みにくくなる印象。 終章〜巻末を読んでから、索引や目次で振り返る方が効率よく知識が線になっていくと思った。 根来教授の解説は最も分かりやすい。
0投稿日: 2020.01.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
DXをお客様に提案していかねばならない立場であって、でも正直なところよくわかっていないところあり、わからないなら勉強しよう、ということで教科書的な本があったので購入した2019年8月の本。 結果としてよくわからないということがわかったということはありがたかったし、本の中に明確に「ほとんどの企業でDXはうまくいっていない」ということが明確に宣言されている、ということではある意味安心になった。 そんな中でもデジタルボルテックスの中、もがきながら前に進まなきゃいけない、というところもよくわかった。 レビュという意味では、巻末の日本人が書かれた「解説」を二つ読んでから、改めて頭からスタートすると読みやすい。日本特有の難しさが記載されていて、うーんなるほど、となるため。 新しいことの先行的な取り組みなのだから、うまくいかなくてあたりまえ、でもそれをオーケストレートして全体として推し進めるしかないんだ、というところがなんとなくわかりました。 数年後に振り返ったらどういう思いで読み返すかしら。
1投稿日: 2020.01.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
## 感想 架空の企業を元にDXしていくためのステップが書かれた本。いろいろチェックリスト化されていて、いざその時の視点獲得として活用する、という趣旨だとは思うが、正直ちょっとキレイな話且つ組織視点も多くイメージわきにくい、かも。 読むなら、ストーリー調になっている終章を先にいくのが良さそう。監訳者が書いてる別の本で「集中講義デジタル戦略」の方がインプットとしてはしやすかった。 ## メモ ・コストバリュー ・エクスペリエンスバリュー ・プラットフォームバリュー どれか1つでは足りない。最近はプラットフォームバリューが強い(SaaS。ネットワーク効果によって競合に参入されにくい) 上記3つの観点について、防衛的戦略(撤退、収穫)か、攻撃的戦略(拠点、破壊)か、4つのどれで行くかを考えていくのが戦略の方向性を決める。 ■オーケストレーションの8つの観点 - 市場開拓セクション - 製品・サービス - チャネル - エンゲージメントセクション - 顧客エンゲージメント - 提携業者エンゲージメント - ワークフォース(従業員)エンゲゲージメント 組織セクション - 組織構造 - インセンティブ★超重要 - 文化 - デジタルビジネスアビリティ(変化対応力とは) - ハイパーアウェアネス(察知力) - 情報に基づく意思決定力 - 迅速な実行力 - CDO(最高デジタル責任者)3つのタイプ 1. CMOや広告・クリエイティブ出身の顧客経験のエキスパート(25%) 2. CIOが兼務しているだけ(33%) 3. アジテーター(撹拌)で攻撃的戦略をとりがち。スタートアップや経営コンサル出身多い(10%)
1投稿日: 2020.01.03
