
総合評価
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powered by ブクログ今日も実話怪談を読んでいる。我妻俊樹さんの2019年リリースの一冊。 裏表紙にも取り上げられている「ヒロエおばさん」が凄かった。どうしても詳細が思い出せない記憶、突然の不幸な出来事、記憶を辿ろうとすると起きる思いがけない出来事と影響、数十年後の怪異の噂。オーセンティックなスタイルで整った文章は読みやすいし、それぞれのエピソードのわからなさはまだ受け止められるけれど、それが因果も不確かに連なって書かれるとわからなさがにブーストがかかって、受け止めきれない気がしてくる。文章が整っているだけに混乱してくる。秩序が表す混沌。脳の何処かが捩れる気がして焦った。世界の見方というか、世界の中でわたしが変わってしまうようで震えた。 そして最後に収録されている「ガタガタ」が更に凄まじかった。完全に大ネタ。体験者の姉から報告者の妹へ更に報告者であった妹もが体験者になる展開のさせ方は気持ちが良いほど巧みで。そこで連続して起こる怪異は単体でもとても不気味だし、因果に意味も関連性もありそうで全くわからないまま起こり続ける怪異を読んでいくのは完全に怖かった。ここにも秩序が表す混沌があった。そして、姉妹共に“わからないサイド”へ行ってしまったような妹の一言のコメントに再度震える。最後の我妻さん自身のその言葉の意味を考えさせるような一言も効果的だった。もちろん考えはじめてもわからないはずだけれど、もしわかってしまったら捻れた脳の何処かが千切れてしまうような気もする…これは実話怪談でしか味わえないような感覚、体験だった気がします。 そして買ったときには気がつかなかったけれど、この文庫本は後半のページがなにかで濡れて歪んでいるのだった。なんだこれは、と気がついたときにまた震えた。これもフィジカルの魅力、ではないですね。それも含めて怖い読書だった。
7投稿日: 2024.12.20
