松尾芭蕉の最後の句は、 「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」 ではなくて、 「清滝や波に散り込む青松葉」 であるという。6月に詠んだ「清滝や波に塵なき夏の月」の改作が最後だなんてイメージが壊されたが、俳句は「読み込み」が前提の芸術なのだから、論旨に付き合おうではないか。この句は嵯峨の奥の清滝川を詠んだものだが、青松葉がどこまでも流れていくさまは松尾芭蕉そのものと重ね合わせることで深い感慨を覚える。