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タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
ピーター・ゴドフリー=スミス、夏目大/みすず書房
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総合評価

65件)
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    タコ。 何コラタココラと長州力と橋本真也が不毛かつ意味不明な問答を繰り返してから早20年(この文章読んでる人でこのネタがわかる人何割くらいいるんだ?)。時代は進み、タコの研究も進んだわけです。もうね、この本を読んだからには人のことを揶揄するときの言葉として「タコ」なんて口が裂けても言えなくなりますよ。それくらい、いかにタコが(イカにタコが)すごい生物なのか、奇妙な生態を持っているのかが語られております。なんと哲学者の言葉で。読み始める前までは、生物学者が書いた海外の科学本なのかーと思ってたのですが、いい意味で裏切られました。 著者の専門は「科学哲学」に加えて「心の哲学」とのこと。なるほど確かに生き物の「心身問題」を考えるあたっては生物学の知識だけでなく、心の哲学も援用する必要があり、その意味で著者の経歴はうってつけ。なんたってスタンフォード大学で科学哲学の教授を務め、スキューバダイビングをこなす方なので。 タコにとって腕は、それぞれが「自己」の一部であり、同時に「他者」であるとも言える。自己の一部として見るなら、目的を持って動かし、外界の事象への操作として扱うことができるからだ。しかし、身体全体を制御する脳からすれば、その腕はどれも自分が指令をしていなくても勝手に動きまわることのある「他者」とも言え、非常に特殊な生態を持っていると言えるだろう。 でも果たして本当にそれほど「特殊」なのだろうか。 著者はこの事象を人間に置き換え説明を試みる。例えばまばたきや呼吸は、通常、それを行うのに意思の力は不要だ。何も考えることなく半自動的に行える行為であり、かつ意識して行うこともできるわけで、つまりそれって「タコの腕」と似たようなものなのではないのか?と。 そしてさらに言うなら、私たちが何らかの行動を起こす際、果たしてどれほど「意識」が介在していると言えるのだろう。目の前にあるペンに手を伸ばして取る。この行為ひとつ取っても、脳の指令が半自動的に行っていることであり、情報処理の早さ以上に「手が勝手に」という印象の方が強いと感じる場合もあるのではないだろうか。タコの心身問題は、人間の心身問題を考えることと通じているのではないか? とまあ、こんな具合でタコ(およびタコに関係する生き物)の生態について、心の哲学を中心材料としながら見極めていこうとする筆致が斬新です。 スキューバ・ダイバーである著者ならではのタコに関するおもしろエピソードも豊富に盛り込まれており、たとえば、明らかに食事の目的以外で、おそらくはただの「興味本位」として人間に近寄ってくるタコの話や、水槽の中にいるタコが人間の顔を見分けて水をかけてくる話など、好奇心をくすぐられました。 心の問題を語るとき、多くは人間と哺乳類について焦点があてられがちだけど、本書では軟体生物である「タコ」の、しかも「腕」に目を向けており、心がいかに複雑なものなのか、心の在り方は私たちが想像するよりもっと多くの「パターン」があるのではないか、と思わせられます。 その相対化の視点は、人と人の違いだけでなく、人と他の生物の違いを知ることへとつながっており、いかに狭い世界でこれまでものを見てきていたのか、そのことを感じさせてくれました。意識や心について、人間から離れて知ることで、相対的に、より人の深層を知ることができるような、可能性がひろがっていく喜びの与えてくれるそんな本。 これを読んだらもうコラコラ問答のことを笑って見れなくなること間違いなしだ!

    5
    投稿日: 2025.06.16
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    タコの話だと思って読み始めたが、タコ(頭足類)の神経組織の複雑さをメインに、動物の進化について、老化のメカニズムについて、意識とはなにかについてなど、とても大きい問題について、詳しく考察してくれている。特に、老化のメカニズムの説明は、私にとっては目からうろこだった。大変面白い本だった。

    0
    投稿日: 2025.05.28
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    タコは人間と全く異なる進化の経路をと取ってきたにも関わらずまるで知性を獲得しているように見え、おそらく獲得しているのであろう。人間の認識している世界が真実であるかのように思ってしまうが、認識している世界や知性のあり方はあくまで相対的なものでありそこの絶対的な実在は存在しない。異なる知性とのファーストコンタクトというSFのような体験は宇宙に行くまでもなく身近な海の中で繰り広げれているのかもしれない。タコたちの生活の瑞々しい描写を通して意識や知性の存在について描かれていた。

    1
    投稿日: 2025.01.22
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    自分自身、長い年月に渡ってスキューバダイビングを楽しんできています。 魚だけではなく、エビ・カニや貝、サンゴなどなど、水中ではさまざまな生物を目にします。 なかには、怒っているような反応を示す動物もいるので、「どこまでの生物が、意識や感情を持っているのだろう?」と、疑問に思っていました。 この疑問に答えてくれそうな、この本の存在を知り、読むことにしました。 驚いたのですが、著者は哲学者で、オーストラリアを中心に活動しているそうです。 序盤は動物の進化の過程を追いながら、神経系がどのような必要から生まれ、発達してきたのかを解説しています。 そして、タコやイカといった頭足類が持つ身体的特徴と、それによりどのようなことができるかへと、話が展開していきます。 頭足類が持つ能力の中で、特徴的なものの一つが、体の色を変えられこと。 擬態とコミュニケーションという目的は推察されるものの、あまりにも複雑な表現の意味やそのメカニズムは、まだまだ未知の部分が多いようですね。 そして、人類が持つ特徴の一つとして挙げられる言語。 コミュニケーションの手段という役割だけでなく、自らの思考を整理するという役割が強調されていることが、印象に残りました。 進化の過程で、人類(脊椎動物)と頭足類(軟体動物)が分岐したのは、カンブリア紀。 その後、約6億年という時間をかけて、人類と頭足類がそれぞれ独自に、神経系を発達させてきたということに、奇跡と必然性の両方を感じました。 人類とは体の構造があまりに違う頭足類が、どのようなしくみで心身を制御しているか、研究している人や機関が多いというのも、本書を読んで納得しました。 物質の組み合わせである生物がどのようにして、心や知性を持つに至ったのか。 その要件は何で、どの生物が持っているのか。 この世界、宇宙に関する根源的な疑問について、考え方の方向性を示してもらえたように感じた一冊でした。 同じ著者の、続編に当たる書籍も邦訳されているようなので、探して読んでみようと思います。 .

    1
    投稿日: 2025.01.13
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    大分面白いな タコ(生物学/神経科学)を哲学の道具として使うだけでなく、人間の独善的(人間中心主義的)な視点を排そうとしてしっかり対象の生物の目線(気分?)からも探ろうとしていて丁寧で謙虚な姿勢が見とれた 哲学的な部分では生物学/神経科学の理論などからタコや彼らを初めとする動物全般における「心の進化」を解明しようと、従来の理論を踏襲するだけでなく最新の研究や、現場の協力者などからゴドフリー=スミス発の理論などを提示しているところも読んでいて楽しかった 単純に、古生代(エディアカラ紀やカンブリア紀)の神経系発達当初の奇妙な動物たちの描写や、ジャイアント・カトルフィッシュ(オーストラリアコウイカ)やオクトポリスについての描写はワクワクしたし可愛かった 正に生物学と哲学の両輪で「心の進化」を追いかけようと様々な可能性を示しながら書かれていて面白かった p.s.哲学が陥りがちな思索のみによる空理空論を、実際の生物に対する実験や常識的な考えから現実の舞台に降ろして考えているところに、学問に対する真摯な態度が見て取れた

    1
    投稿日: 2025.01.02
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    タコは不思議な動物である。頭足類であり、人間が属する哺乳類とは全く違う生物類に属している。しかしながら、著者が言うように「頭足類を見ていると、「心がある」と感じられる。心が通じ合ったように思えることもある」。もちろん、心 (意識や主観的経験、知性)については、いくつかの定義がある。また、ある生物種が心を持っているかという問いの答えはゼロイチではなく程度によって測られるものである可能性も高い。しかし、もしタコがこの本で書かれているとおり、個々の人間や同類の個々のタコを見分け、さらにその性格や行動も記憶し、相手がいるかいないかで行動を変えるというようなことを少なくともある種の心を持つものだと認識したとすると、次の重要な事実を認めることになる。 「進化が、まったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」 神経系の共通の役割は二つある。一つは、「知覚と行動を結びつける」ことであり、そしてもう一つは「行動を生み出すこと」である。結果として「心」のようなものが生み出されると考えられる。何も不思議なものではなく、知覚と行動を制御する神経系が進化の過程によって、目や翼が何度か独立に発明されたのと同じように収斂進化して別の形で同じ機能が生物として発明されるようなものであるということだ。つまり「心」を獲得するのは進化上偶然ではなく必然であったといえる。 著者は言う。 「頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう」 そして、 「哲学には他者の持つ「自我」」について考える「他我問題」というのがあるが、タコはこの他我問題の格好の題材と言える」 タコに関してそんなことを思ったことはこれまでなかった。著者はタコの海底コミュニティ(著者は”オクトポリス”と呼ぶ)を定点観測し、タコがいかに社交性があり、個性をもち、まるで心をもってお互いに行動を調整しあっているのかを実地で見た。驚くべきことにタコの寿命は二年以内と短い。そんな短命の生物であっても全身の神経系を発展させて「心」のようなものを持つことが生物学上費用対効果に見合うものとして進化させてきたのだ。このことは心(意識や主体)を考える上で多くの示唆をわれわれにもたらすことが期待される。 本書の原題は”Other Minds”。われわれの心とは別様態の心についてタコに基づいて考察した本である。意識問題へのアプローチとしては異質であるが、議論を避けることのできないテーマである。タコがどうやら「心」を持ったように、同じく神経系ということもできるであろうAIも「心」が生まれるのだろうか。それとも哺乳類と頭足類とで個別に収斂進化した「心」が生まれるためには身体や行動が必要となるのだろうか。そうだとして、AIは動物の「身体」や「行動」を模擬することで「心」を獲得するようにできるのだろうか。この興味深い議論が、ここからさらに発展することを望むし、そうなることが今や期待されているのである。

    9
    投稿日: 2024.12.30
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    哲学者が、タコの意識がどうなっているかについて、肉体や神経、生活などから主に生物学的に考える。 イカが色や表面を変えられることも驚き。

    0
    投稿日: 2024.12.22
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    話は面白い。 面白いけど、とっちらかっていて、全体として何が言いたいのかよく分からない。 タコが興味深い生物ということは分かる。 人類との共通祖先から枝分かれして、それぞれ別々に同じような形質を獲得したという話は収斂進化のよう。 タコの足には神経がたくさん通っていて、足が離れても感覚があり単体で運動制御ができる、という話は怖いというか、明らかに人間とは異なるというか、人間で切り離された足がぴょんぴょん動き出したらたまらんなという気がする。赤い靴じゃないんだから。 タコの老化の話も面白い。タコの寿命は2年くらいしかなく、生殖を終えるとすぐに老化して死ぬ。 これは老化に関する有害突然変異蓄積説と整合することが述べられている。

    0
    投稿日: 2024.10.24
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    タイトルは魅力的で、この地球の上に人類だけでなく哺乳類や鳥類もふくめ、われわれとは全くことなった心のありようがあるということが知れるだけでもワクワクするし、十分一読の価値はある。 一方、「ダコであるとはどのようなことか」を手っ取り早く知りたいと思ってこの本を読み始めるとその期待は裏切られると思う。材料が足りない。

    0
    投稿日: 2024.10.21
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    ヒト以外の生き物がどう世界を認識しているのか、ちょっと自分の外に意識が出るような感覚を与えられる ヒトのような脳がないはずのタコが知性を持つ不思議が印象的。 ちょくちょく進化生物学の話が入ってきて、知性と関係なく思えるところの詳細が多く、読むのがしんどいところも。

    0
    投稿日: 2024.07.07
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    神経系が非常に複雑に発達すると結果として意識が生じると直感的にも考えられるが、知性や認知力が鳥類や大型哺乳類などの脊椎動物とは別の進化系統であるタコやイカなど頭足類でも起きたということは非常に興味深い。脳で中央集権的な制御をしいる前者に対し、タコに代表される後者は分散的で全身に神経が張り巡らされており、触手一本一本が脳を持つと言われることもある。タコになるとどんな気分なのかを想像し、はるか古の単細胞生物からの進化史を思考実験的に味わうことができる本。著者は生物学者ではなくてスキューバが好きなオーストラリアの哲学者であるというのがまた面白い。

    2
    投稿日: 2024.06.12
  • タコ ≒ エイリアン?

    タコとコウイカの高い知能に絡めながら、主観的経験の起源について探る本。進化樹のとおい向こう側にいながら独自に高い知能を発達させたタコたちを研究することは、知能を持った異星人を研究するのに近いのだと なにか大きな謎が解かれるわけでもなく、結論めいたものが提示されるでもなく、いろいろ興味深い仮説や考察、観察を披瀝してくれる科学エッセイといったところなのだが、それでも面白い。コウイカが体色をさまざまに変えるが色盲であるらしいとか、多細胞生物に寿命がある理由とか、思わず「へーっ」となってしまう

    0
    投稿日: 2024.04.26
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    この本を読む前と後でタコの印象が大きく変わり、なんだか愛着を感じるようになった。すぐにでも生きてるタコを見に行きたくなる。 心身問題について論じる本はたくさんあるけど、下手に哲学的なものよりも、この本を読むほうが有意義かもしれない。単に知識が増えるだけではなく、これから先の生き物との関わり方が変わるかもしれない。少なくともタコが痛みをどのように感じているか、考えずにはいられなくなる。

    2
    投稿日: 2024.03.21
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    まず本書はタコメインではあるが同じくらいジャイアント·カルトフィッシュが良く出てくるので頭足類を主軸と捉えても良さそう。 哲学者が書く、思考や知覚に焦点を当てた進化論の本でもあるし、タコなどの頭足類という不思議な生き物たちへの愛を綴る本でもある。 本当にタコという生き物は面白い。あれだけ大きな目があるのに色覚は無さそうだし、色を変えるのは必ずしも擬態だけではないし、足は味覚だけではなく、個々でも動く、まるでタコの身体は指揮者のいるジャズバンドのようなものであったり。 心、本書では知覚·思考をすることを指すと思われるが、その進化を語るときは哲学的になるものだとは思う。数値化が難しく、感覚的に語るものになりがちだから仕方ないことだが、この手のものは生物学者が書くよりも哲学者が書くほうがこの点はわかりやすいかもしれないなと本書を読んで感じていた。 あと学者の方でもない限り、今後の人生で一番ジャイアント·カルトフィッシュという単語に目を通すことになる。

    2
    投稿日: 2024.03.16
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    メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1766277974020755576?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

    0
    投稿日: 2024.03.09
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    驚いたことにタコやイカは色の識別ができないらしいのだ。どうしてあんなに周囲に合わせて色を変えて擬態したり、威嚇のために体の色を変えるのだろう。 なんと、目による知覚で脳が指示するのではなく、皮膚細胞そのものが、周囲の色を感知して自律的に変化しているらしい。 これは“多くの動物では、脳と身体が明確に分かれるが、タコはその区別とは関係のない世界に生きている”ということの1つの証左なのだろう。 かといって、これはタコが感覚刺激だけで行動する、考えない動物だということではない。タコはじっくり目で見て観察してタコ同士や人間同士を区別できるし、食べられないものを使って遊ぶこともできる。 タコがあまりにも賢いため、つい擬人化したくなるが、タコは人や猫やカラスの親戚ではない。 なにせ、身体の中でどこからどこまでが脳なのかそもそも正確に定義できない、人を含む脊椎動物とは認知の仕組みが大きく異なる生き物なのだ。 筆者は生物学と神経心理学の面でタコを追求し、ダイバーとしてタコを愛する。しかし、哲学者たる筆者の面目躍如と感じるのは、ホワイトノイズから意識へと題された4章と、ヒトの心と他の動物の心の6章である。 極単純な進化的に初期の動物の中では、主観的経験はホワイトノイズに近いものだった。とりあえず常にざーと言う音が聞こえている状態に例えられる。その中で、痛みや快感といった根源的な感情、すぐに何かの反応を必要とするような感情が最初に生まれたのだろう。 これは既に主観的経験を獲得しているといえる。 主観的経験とは、「自分の存在を自分で感じること」という意味だ。別にヒトの特権ではない。 例えば、電気信号を発する魚は、主観的経験による認知がなければ、自分が発してている電気信号なのか、誰かが発した電気信号なのかの違いがわからない。つまり多くの動物たちは、主観的経験を備えているのだ。そうするとどの段階で、私たち人間が持っているような『意識』に近いものが生まれたというのが次の問いだ。 その道筋は1つではないだろう。ホワイトノイズから単純な形態の主観的経験、そして意識へと至る道は、進化の試みの中でいくつもあるはずだ。 帯びにも書かれた『進化はまったく違う経路で、心を少なくともニ度作った』ということ。 ではヒトの心と動物の心の違いを考えていくと、様々なレベルの意識が動物に備わっている中で、人間は高次思考ができる。 簡単にまとめると、「自分の思考についての思考」だ。 例えば、“なぜ自分は今、これほど機嫌が悪いのか”ということを人は考える 高次思考を行うためには、内なる声(インナースピーチ)が必要だ。言語は、コミュニケーションのための唯一の手段ではないのは事実だ。実際単純な言語手段しか持たない動物が複雑なコミニュケーションをとっている例はいくらでも見つかる。 しかし高次思考をするためには内なる声が必要であり、内なる声を獲得するためには言語化が必要である。ここが恐らくヒトの心に生じた特異性なのだろう。 “私たちは自分に向かって何かを問いかけることも多いし、自分に向かって説明や忠告をすることも多い。これは心に浮かんでは消える意味のないたわごとではない。 私たちの内面では絶え間なくおしゃべりが続く。そのおしゃべりから逃れるためには、瞑想の必要を感じるぐらいだ。” ここではちょっと苦笑する。 寿命を進化論で論じた章や、まだ見知らぬ海で起きている進化の壮大な実験など、読みどころが多くて学びの多い一冊であった。

    10
    投稿日: 2024.02.24
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    タコやイカは知性が高いと言われている。進化樹の中でははるか昔に枝分かれした人類とタコであるが、異なる進化の中で神経系をそれぞれで発達させているのが興味深い。人間は脳で集中制御しているのをタコでは腕部にも脳のような機能があるなど、違いはあるもののタコにはタコの心があるようだ。また、もし異星人が存在するのであれば、独自進化した異星人の心を知るためにもタコの心を研究するのは有意義だ。まずはタコになった気分を考えるというのは面白い思考実験になりそう。こんなことを考えられるのも人間の特権のようなのだけど。何冊か類書を読んだうえで、この本にたどり着いたが、読みやすくて分かりやすい。

    7
    投稿日: 2024.02.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    知らないことばかり,びっくりすることばかり。 タコやイカの寿命は1〜2年しかないらしい。 海は生命と心を生んだ場所で,心は海の中で進化した。 その海が酸性化しているらしい。 ジュンク堂からの新刊「メタゾアの心身問題」の案内でこの本をしって図書館から借用。

    1
    投稿日: 2024.01.25
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    タコの知性、なんて考えたことなかった。 それが、読んでみて驚き! 研究用に飼育しているタコが人の顔を一人ずつ記憶していて、嫌いな人がくると水をかける。 水槽の中の電球をわざと壊して遊ぶ。 食べ物でないものにも純粋な好奇心で近づいてくるように見える。タコの方から人間に近づいてきて,時には,探るように腕を伸ばしてくることさえある。手をつないで散歩をしたダイバーもいるらしい。 海は身近な小宇宙、というけれど、 ここまで知性をもつ動物がこの小宇宙にいたとは。 しかもイルカやクジラではなく、無脊椎動物ですよ?! 脊椎動物と無脊椎動物が枝分かれしたのは6億年前。 タコと合流することは、まさに「宇宙人との交信」しているようなものなんだと思う!

    1
    投稿日: 2024.01.18
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    科学史、科学哲学という分野。概念的な哲学ではなく、科学からスタートする意識の探索は、ある意味分かりやすくて面白い。タコを中心に頭足類の観察からの考察だ。 他の無脊椎動物と比べても、頭足類の神経系の規模は異常に大きく、短期記憶と長期記憶に明確な区別があり、目新しいものや、食べることはできずすぐに役立つわけではないものに興味を示し、コウイカにはREM睡眠らしきものがあるなど、人間の知性との類似点も見られるのだそうだ。 「身体化された認知」というのは面白い。脳だけではなく、身体も賢さの一部を担っていて、周囲の環境がどうなっているか、それにどう対処すべきかという情報は、実は身体にも記憶されていると考える。例えば手足の関節のつくりは、歩行などの行動を自然に生むようになっている。適切な身体をもっていれば、正しく歩くための情報のかなりの部分がそこに記憶されている、と。 頭足類のコミュニケーションを考察しながら、いったい何のためにこの信号(色が変わったりすること)を発しているのか?理由があるはず、と著者は考えるが、受け手となる相手がいなくても、なんだかつぶやいているような…という未だ解明されていない部分が神秘的で、素人にも面白い。 この本の原題は、”Other minds”. マインドという言葉を心、知性ととらえると、その境目はあいまいだ。著者のいう「主観的経験」、~になった気分、という考え方は面白かった。生きものの寿命も、持っている特徴も、すべてを「進化」というものさしの中で測る。ゴールも方向もない、試行錯誤を繰り返す生きものたちの中に人間もある。こうやって相対的に捉えて傲慢にならないことが、今の人間にとって一番大事なのかもしれない。

    3
    投稿日: 2023.07.05
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    著者は熟練ダイバーでもあるそうだが、「オクトポリス」でのタコに手を引いてもらった(と感じた)体験、ジャイアントカトルフィッシュという種のイカとの交感の描写が、実らない愛を感じさせ切ない。 頭足類が地球上の動物の中で極めて特殊な位置づけの生き物であることに改めて感心。ボリュームあり読むのはちょっと大変だが良書。 P10 頭足類を見ていると「心がある」と感じられる。それは何も私たちが歴史を共有しているからではない。進化的には互いに全く遠い存在である私たちがそうなれるのは、進化が、全く違う経路で心を少なくとも二度、作ったからだ。頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう。 P13 よい哲学は日和見主義だ。つまり、どのような情報であれ、どのような道具であれ、役に立ちそうであればすべて利用するということだ。 P40 クラゲのように上下の区別はあっても左右の区別はない構造の動物を「放射相称動物」と呼ぶ。一方、人間、魚、タコ、アリ、ミミズなどは「左右相称動物」と呼ばれる。【中略】元来、左右相称の身体は、移動に向いている。またこの身体の構造は、ほかにも多くの複雑な行動に適していた。 P65 タコは、ラットやハトなどに比べてはるかに、自分でこうしようという考えを強く持っているようである。【中略】タコの行動にどうも「いたずら」の要素が多くあり、また彼らには多分に狡猾な面もあるようなのだ。 P80 脊索は動物の背側にあり、身体の中央を貫く。瀬木作には神経が通り、一方の端には脳がある。一方、頭足類は、それとは大きく違った身体の設計、違った種類の神経系を進化させる。脊索動物の神経系を中央集権型だとすると、頭足類の神経系はそれよりも分散型だと言える。(はしご状神経系)【中略】頭足類の場合は(食道が)脳の中央を貫いているということだ。その位置関係はあまりにもおかしいように私たちには思える。そこは絶対に脳があってはならない場所だと感じるのだ。 P88 タコには余計なことをするだけの、内面の能力の余剰があるようだ。 P92 タコの身体には決まった形というものがなく、変貌自在だ。可能性のかたまりだと言ってもいい。決まったかたちを持ち公道をある程度決定する身体を持つと、そのためのコストが発生する一方で利益も得られるが、タコにはどちらもないということになる。多くの動物では脳と身体が明確に分かれるが、タコはその区別とは関係のない世界に生きている。 P163 ヒヒはメロドラマのような生活を送っており、おそらくストレスも多い複雑な社会にいる。にもかかわらず、情報を発信するための手段は非常に貧弱だ。反対に頭足類の場合、社会生活は非常に単純なもので、したがって言うべきことも非常に少ない。にもかかわらず異様なほど多くの表現をする。 P174 言語が思考のための重要な道具であることは間違いない。そして内なる声はただ泡のように無意味に湧いているわけではない。しかし、秩序だった思考をするのに言語が絶対に必要だとまでは言えない。言語は複雑な思考を一手に引き受ける媒体というわけではないのだ。 P191 皮膚に現れる色や模様は、たとえどれほど複雑なものであっても受取り手のいない一方通行のものである。頭足類は、自らの発する色や模様を、人間が言葉を聞くように認識するわけではないのだ。 P194 頭足類の多くは、その寿命の短さに比してあまりに大きく、あまりに賢いと言える。タコが卵からかえって2年以内に死んでしまうのだとしたら、彼らの高度な知能は一体何の役に立っているというのだろうか。 P253 この地球上では、少なくとも2回、同じような能力が、全く別のところで無関係に生まれ、進化したということである。【中略】頭足類は、独立して進化を遂げたにもかかわらず同じようなmindを持った非常に不思議な生物だ。昔から、異星人の想像図はタコに似た姿になっていることが多かった。偶然にしてはできすぎている。(訳者あとがき)

    1
    投稿日: 2023.01.15
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    スキューバをしながらオクトポリスというホタテの貝殻に敷き詰められたタコ達の住処や生態を眺め、哲学や生物学の授業を受けているようだ。タコを擬人化してその知性を探りながら、読書中、私自身の意識は海底にある。ダンゴムシに心があると言われれば、それはこじ付けだと感想を述べながら、タコに知性があると言われれば、それなら分かる気がすると興奮しながら一気読み。また面白い本に出会えた。 カンブリア爆発と呼ぶ生物多様性を生む時期より前、エディアカラ紀にも多様な動物がいた事がわかってきた。6億年前だ。カンブリア爆発は、生物同士の関係性、被食者と捕食者の競争により激化したと考えられる。攻撃や防御の手段、海中を泳ぐ進化を遂げ、その樹形図を辿りタコは生まれた。 タコのニューロン数は5億と人間の1000億より少ないが、犬にかなり近い。頭が良い。ビンの蓋を開けたり、巣穴を記憶できる。カラスのように遊んだり、仲間同士で戯れるような仕草も見える。人間の顔を区別する事もあるらしい。しかし、タコの寿命は1から2年。知性の機構を持つ必要があるのか。こういう話の展開は面白い。 著者は哲学者らしく、その切り口でも知性を探る。ダニエル・カールマンはシステム2思考(人間が意識的に行う速度の遅い思考の事)、システム1思考(習慣や直感に頼る高速思考)を分類したが、そもそも心の声、言語無く思考が可能かという点まで論が及ぶ。人間の失語症患者にも心はある事を例示し、必ずしも言語は必要条件にならぬ事を説明。 知覚と運動、思考を司る脳を持ちながら、思考の果てにも自我は見抜けず、何のために生きるのかという主客転倒な哲学を時々考える。1年や2年でその命を終えるタコからすれば哲学など無意味か。無邪気な好奇心を8つの腕に託すその生き様に、考えさせられる。

    4
    投稿日: 2022.12.25
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    まず、頭足類─タコやコウイカの観察があり、その後、知性 とは何か、何をもって意識とするかという科学的哲学的考察 に続き、さて頭足類に意識はあるのだろうか?と問う。簡単 に結論が出る問題ではないし、これからも観察研究が必要 なのは当然なのだが、何となく中途半端で終わっている感じ がしてしまった。進化の過程上、哺乳類・鳥類・頭足類と 別々に三カ所で意識が生まれたとすれば、それは偶然では なく、意識が生まれるのが進化のひとつの帰結なのかもしれ ないと想像するのは楽しかったが。あと、カラー口絵もある が、やはり動画で見たくなる。検索しまくりました(笑)。

    0
    投稿日: 2022.09.05
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    星10個あげたい! タコたちの楽園 オクトポリス この場所で、タコに「意識」が生まれる?! 全てのものは、連続的である。 人間が意識を持ち、言語を獲得したのも、 偶然の連続であり、突然空から意識が降ってきた わけではない。 タコは、人間と同じかそれ以上のニューロンを 持つという。人間にできて、タコにできない理由は ない。たまたまその機会に恵まれなかっただけ。 その機会を得たかもしれないのだ。 それこそがオクトポリス。全ての条件が揃った タコの楽園。 10万年後の地球は、タコ新生か?

    0
    投稿日: 2022.03.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    オクトポリスの話がとても興味深かった。生命の死や進化についてもタコという一種の視点から覗き込むような構図も勉強になる。 意識の、哲学部分については読者自身が知識不足のため、関連する知識分野の概要を理解してから再読したい。

    0
    投稿日: 2021.08.03
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    頭足類の多くの寿命は1~2年。その理由は殻を備えていない無防備さからくる淘汰圧によるもの。タコには約5億個にニューロンがあり、個人を識別できるくらい賢い。読んでるとタコが食べたくなる。

    1
    投稿日: 2021.04.17
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    『タコの心身問題』ピーター・ゴドフリー=スミス著、夏目大訳(みすず書房)なんだか色々煮詰まったので、タコに会いに。タコの本にジャズやカンディンスキーが出てくるなんて。笑 タコになったらどんな気分?というシンプルな問いから進化への深い問いかけへ。なんだか癒された。面白かった。#読書 #翻訳 #タコ#進化 #petergodfreysmith

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    投稿日: 2020.12.07
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    『タコの心身問題 - 頭足類から考える意識の起源』 ピーター・ゴドフリー・スミス 夏目大 訳 みすず書房 I felt the ability that far future octopus have something language and generate like police.  違った視点を求めて購入したんだと思う。人間に関する本ばかり読んでいてもひろがない気がしていた。それから忘れていて、Netflixのオススメで『オクトパスの神秘 海の賢者は語る』を観た。身体を周囲に擬態させたり、帆を開くようにして身体を大きく見せたり、その身体で獲物を一気に包み込んだり、行動を改善していく頭の良さ。食べるばかりだったけど、これほど魅力的な生き物だとは知らなかった。  タコの心身問題という邦題だけど、意識の起源を探ることが主題だ。進化の系統樹をみると、6万年前に人と頭足類とは分かれている。魚だった頃より前になる。人間も魚も脊椎動物で、軟体の頭足類にはそれがない。でもタコにも脳があり神経のネットワークをもっている。  脊椎動物もネットワークになっていて各機関が独自に動くこともあるけど、脳の中央集権的なところが大きい。一方のタコは足と脳はもっと独立しているようなのだ。ネットワークの複雑さを制御していて、そいの複雑さがタコの脳を発達させている。このような複雑さを成立させるために、発達していくというのは社会のコミュニケーションと相似ではないか。  単細胞生物が周囲の変化をかんじとるところから、コミュニケーションは始まっていた。それ以来、周囲の変化より感じとる仕組みを体内にいくつも取り込みながら生物は進化していった。でも、ずっと言葉は不在だった。著者はタコを通して言葉と心の関係を教えてくれる。言葉がないとコミュニケーションを取れないのではない。たしかに言葉はコミューニケーションの手段として進化した。でもそれは、そのままうちなる声として取り込まれていった。それが心を形成していったのだった。  最後の章は、パラレルワールドをみるようだった。オクトポリス、タコの都市についての興味深い論考だ。著者は海底のある一角にできたその都市にすいて仮説を述べている。なぜその都市ができたのか。都市といっても、貝殻のベッドがひかれてたくさんのタコが巣を設けているに過ぎない。でももしかすると数万年を経たのちに言葉のようなものをもつタコの末裔が存在するかもしれないと思わせるのだった。 #タコの心身問題 #OtherMinds #TheOctopus #ピーターゴドフリースミス #PeterGodfreySmith #夏目大 #みすず書房 #進化論 #進化生物学 #進化心理学 #タコ #Octopus #Netflix #オクトパスの神秘 #海の賢者は語る #書評というか感想 #書評 #読書の秋

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    投稿日: 2020.11.21
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    この本は、「意識」とはなにか?人類は進化のいつの時点から「意識」を持つようになったのか?なぜ人類だけがここまで「意識」を進化させることに成功したのか?という究極の問いに、人類とは全くことなる進化経路をたどってきたタコを研究することで解き明かしていくというユニークでありながらしかし真相をするどく突いた本です。 例えば、人間は言語を操る能力を持っているけれど、その言語は単に外に向けて誰かに発せられるだけでなく、人間の意識の中で内なる自分に向けても発せられていて、それは何かを思考する上で無くてはならない能力だけど、意識の中で自分自身に向けて内なる会話をする能力を人類はいかにして手にしたのか、それは脳や視聴覚機能がどう作用して実現しているのか、賢いタコにもその能力があるのか、といった問いに、実際にオーストラリアの海に潜ってタコを長く観察してきた著者が挑んでいる本です。 なぜ、著者は、この問いを解き明かすヒントをタコをはじめとする頭足類から得ようとしたのか。それは、タコが、類人猿から進化した人類とは全く違う経路の進化をたどりながら、しかしある意味では人類と非常によく似た脳の働きと大規模な神経系を持つ賢い生き物であるからです。 例えば、ある動物にプラスチックの棒を差し出した時、ほとんどの動物はそれが食べられないものだとわかるとその棒には一切興味を示さなくなるけれど、タコは、そうだとわかった後でも、その棒を8本の手で掴んだり蹴飛ばしたりして遊んだりするらしく、これはタコがそれだけ能力に内面的な余剰があることを示唆しているそうです。 この時、タコの内面になにが起きているのか? 棒で遊ぼうとする時、人類の場合は、その決定を絶対的な中枢機関である脳が決定し、それを筋肉に伝えて手足を動かすけれど、タコの場合は、ニューロンが集まった脳のようなものが頭部付近にあるにはあるけれども、それとは別に同じようなニューロンの集まりがあの8本足付近にもあって、足にある脳とも言える部分が独自に意思決定をして足を動かすというようなことが起きているそうです。この時、頭部付近の脳は意思決定にあまり関わっていない可能性があるのだとか。 もしこれを、タコの、脳から独立した足の個別意識だとするならば、その意識はどのように決定されて足の筋肉に伝えられているのか、長い進化の歴史の中で頭足類がそういう機能を持つように進化してきた理由は何かを探っていけば、この本が挑む問いである「意識」の起源に近づけるのではないか、という筆者の研究と考察の結果が約250ページに渡って記されています。 この本は、読むのにとても難しい本です。知らない言葉がたくさん出てきます。読むのには根気が必要な一方で得られるものはタコのことが好きになるぐらいしかないのですが、それでも、自分の普段の生活とは全く関係のないこういう研究の世界があり考え方があるんだということを知れて、読んで良かったと思います。あとは、本の表紙のデザインがなかなか良くて、みすず書房さん出版の他の本も読んでみたいという気持ちになりました。

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    投稿日: 2020.08.05
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    現時点における進化の最終形態は人間だと思いますか? 立派な神経系をもっているのは人間だけだと思っていますか? いえいえ、人間でなく哺乳類でもなく、脊椎動物でもない、頭足類「タコ」の神経系のなんと密なこと! タコが好奇心旺盛であること。いたずら好きで好き嫌いもあって、自分を研究する気に入らない研究者には容赦なく水をぶっかけたりすること。闖入者である自分の手を引いて海底散歩をしたことなど。 微笑ましいエピソードと進化ツリーの話が交互に語られています。 タコとの触れ合いに関してはとても興味深くて、カンブリア紀以前からすでに進化を着々と進めていたことなど、「へーーーー!」とワクワクしながら読みました。 まー、半分くらいは退屈なところがあったのですが、タコやらイカやらの話が面白くて読み切りました! 生物として驕っていたなと反省、考えを修正しました。

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    投稿日: 2020.03.26
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    とても興味深い本。 タコの気持ちは分からない。そもそも、タコに人間と同じような気持ちがあるかどうかわからない。 しかし、タコには知性があるようである。 哺乳動物とは、遥かに遠い昔に分岐し、別々に進化し、脳の在り方も違う。このように遠い存在に、人間と共通するうような気持ちがあるのではないかと感じるような振る舞いがあることが不思議なことである。 その謎が本書の中で解き明かされる訳では無い。 むしろ、海底で様々に色を変えるタコ、イカに対する、著者の愛の書。 フィードバックループが脳、神経系を発達させるという指摘は、その通りと思う。

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    投稿日: 2020.03.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    異文化体験というか、異生物を推測しないことの大切さというか。つい擬人化したくなるよね。それをしないということ。

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    投稿日: 2020.03.08
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    ヒトとはまるで違う進化を遂げたタコの生態から、「意識」を考察した一冊。小難しい話はさておき、読むにつれてタコの魅力にハマってしまいます。好奇心旺盛でいたずら好き、日和見主義だけど時に大胆。そして、たった2年で生を終える。これ何てラノベのヒロイン?

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    投稿日: 2020.02.23
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    信頼できる各方面の方々が絶賛していたので手に取った。 ゆっくり読んでいる。 私はタコの知能が高いこととタコが軟体動物であることを両方とも知っていたのに、「哺乳類や鳥からこれほど離れた無脊椎動物に知能の高い生物が孤島のように存在する」ということに疑問のひとつも抱かずにのうのうと生きていたのだ…と唸りながら読んでいる。 読了。いろいろと興味深い話が目白押しだったのだけれど(意識の起源とか)、読み終わってみると著者達がオクトポリスと呼ぶ貝殻のベッドで暮らすタコたちのファンタジーめいた奇妙に平和な風景ばかりが頭に残っている。タコに手を引かれて10分程度の海底散歩をしたローレンス氏の話など最高だった。 それだけに、オクトポリスのタコ達の寿命が2年程度というのは驚きだった。きちんと意味の説明はされていたものの、直感的には随分奇妙な感じがした。 タコのいたずらや奇妙な生態が面白すぎて他の部分を大分おろそかにしてしまった気がするけれど、でも本当にタコが面白い本だった。 まあ別に、すみからすみまで熟読して優等生めいた感想を持つために本を読んでいるわけではないし、これで良いのだ。

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    投稿日: 2020.02.17
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    タコって面白い!タコは知性的だけど進化の過程は脊椎動物と大きく異なる、その事実にハッとさせられた。そして著者の専門は哲学とのことで、切り口が新鮮。興味深く読めた。 後半の「心」や「老化」をテーマにした章はやや消化不良。

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    投稿日: 2020.01.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    全般的に面白かったと思う……が、これほど神経系の在り方やその別などを解説してくれながら、これほど頭足類に親しみを持ってくれながら、どうして後半においては人間を賢さの特異点に置いてしまったのだろうとなんだか悲しくなってしまう。私の読み方が至らないせいだろうか。 しかしわからないことはわからないという態度には好感が持てた。また、老化と突然変異の関連の項、自分の行動の「打ち消し」関連の項は非常に興味深かった。さらに進んだものも読んでみたい。

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    投稿日: 2020.01.02
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    腕で考える生き物への理解と、「老化」に対する見識は参考になった。若い頃の生存能力を優先した結果、後からようやく作動するリスクを許容してしまうことになるとは。

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    投稿日: 2020.01.01
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    科学哲学者の著者が、頭足類の心理について語ります。 タコやイカは賢いと知っていましたが、全体が脳とも言えるほど神経細胞だらけであることに驚きました。 哺乳類とは違う知的進化を選んだ彼らは、宇宙人ではありませんが別世界の知的生命体です。 地球にはまだまだ研究余地が残されていることを教えてくれる一冊。

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    投稿日: 2019.11.07
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    なかなか読み急いでしまったのと、ちと難しい部分があったけれども、純粋に「へ〜そんなことがあるんか」という知識としておもしろかった。タコの賢さ、考えたことがなかった……

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    投稿日: 2019.10.28
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    数年前から、タコやイカといった頭足類が、実は人間に匹敵する知性を持った生物であるという認識が深まってきている。この本は、その認識を広めるきっかけとになった本のうちの一冊で、スキューバ・ダイビングによる観察や多数の研究論文を通して、頭足類の習慣や「意識」について考察する。 脊椎動物が脳を中心とした中央集権的な神経系を発達させたのに対し、頭足類は多数の柔軟に動く足と体中に配置された分散神経系を発達させており、神経系という意味では収斂進化しているのは興味深い。他の軟体動物と異なり(人間のそれとはかなり異なるものの)目が発達しているのも特徴だ。「タコになったら、どんな気持ちがするのか?」という思考実験は、「意識」に関する考え方を一変させる。

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    投稿日: 2019.10.12
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    8/8はタコの日。 人間とは全く異なる心/内面/知性と呼ぶべきものを持つ頭足類を介し、 私たちの心の本性を覗き込む。

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    投稿日: 2019.08.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タコの行動・意識についての興味深い知見が数多く記載されている。「タコになったらどんな気分か」という問いに対して慎重にアプローチする著者の姿が印象的。著者の単なる仮説も多いので学術書とは呼びづらいが、意識科学、比較認知科学、神経科学、心理学などに興味のある人は心惹かれるかも。 タコは系統学的には人間とかけ離れた種だが、地球という環境に適応する過程で知能や意識をお互いが別々に発展させてきた点は興味深い。それらの実装方法は大きく異なるが、知能や意識にはある程度の普遍性があるのかもしれない。

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    投稿日: 2019.08.27
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    前半は面白いんだけど、後半は失速 事実は小説より奇なり 最終的な結論に至れていないのであれば、タコやイカの観測事実をもう少し詳しく話して欲しい そこから驚きが得られればよいのでは 著者がそれに驚いた様子や驚いて抱いた発想などは、最後にちょっとまとめてくれればいい 著者も人なので、タコの異世界感に比べて著者の解釈のなんと人間ぽいこと、と、胡散臭くなること多数 そのあたりが、著者が科学者でなくて哲学者なのでそんなもんか 後半、前半と同じ話をまぜっかえしたり、なんとも整理が中途半端でもある 単に、結論はまだ調査中、みたいな 意識の思索の怪しさに対して観察や観察に基づく洞察はみずみずしい 心身問題、人間のものが解決してないので、結論はまだまだ先 タコのを知ることから人を知ることもできるかもしれないが、そんなに昔に分岐したタコに人を投影しすぎるのも怪しい

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    投稿日: 2019.07.07
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    タコ・イカの生態が続いたあと、気づくといつの間にか意識に関する本になっていた、感じられる。タコを通じて、意識を考えさせられる。タコにとって、興味とはどのようなものなのだろうか。

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    投稿日: 2019.06.29
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    タコに興味を持てきれず挫折。哲学者のダイバーの著書ということで気になって読んでみた。生物や神経などに興味がある人が読むと、また違うと思う。

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    投稿日: 2019.06.17
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    タコ(や頭足類)にも高度な知能がある、という主題ではない。 もちろんタコには普通に人間が軟体動物に想像するよりも遥かに高い知性があるように思える。しかしそれは軟体動物にしては、というレベルではある。 しかし、軟体動物と哺乳類を含む脊椎類と進化の過程で分かれた後に我々人間とは異なった方法で知性を獲得したという事実は、知性というのは決してそれを獲得して磨き上げた人間が奇跡であったというわけではなく、偶然とはいえそれなりにありふれた出来事かもしれない、ということか。

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    投稿日: 2019.05.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タコの話だけではない,生物進化学,生物学,哲学,認知科学,心理学など 単細胞生物から動物が生まれた理由. 突然変異による多細胞生物の誕生,細胞間の分業の発生,神経系の誕生,脳の誕生.... あまり気に留めたことがなかったが観察によってかいま見せうタコの「知性」,振る舞い,生態,体の仕組みは非常に興味深い. 人以外の「主観的経験」 人の顔を覚えたり,好奇心をもって新しい人や物に近づいたり,時には水をかけたりする オクトポリス 一部生物を除いて,頭足類の寿命はとても短い. 生物が死ぬ理由も紹介されている. 高齢になると発現する生物への悪影響は淘汰では取り除かれにくく,その結果高齢になると発現するバグがどんどん蓄積されるため. オクトポリスという生活圏のようなものを形成し多くのタコが密集して生きる領域が存在している.これは自然発生したものというよりタコそこで暮らしていく過程で徐々に発展していきタコ以外の生き物や環境に影響をもたらしている.そこにいるタコはディスプレイを駆使した社交性があるような振る舞いもする. 猿が賢い,鳥が賢いとはいうが全く異なる進化の過程を辿った頭足類にもコレアに負けない賢さ,心のようなものが垣間見えるのは本当に興味深い

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    投稿日: 2019.04.24
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    タイトルや帯からは、頭足類の精神的な話や意識についてのみ語られてるように感じられるが、半分以上は進化の歴史や頭足類の特徴などについて述べられている。 ある程度知識があればすんなり入ってくるが、訳に少し癖があり、頭足類の基礎的な知識が無いと、少しとっつきにくいかもしれない。 生き物好きならば、一度は考えたことあるであろう話題についての本なので興味があれば読んでみるべき。

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    投稿日: 2019.04.15
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    オーストラリアの海底にタコのコロニーのような場所を見つけ、そこを観察している筆者がタコとイカ、いわゆる頭足類の魅力的な生態について語った本。 脊椎動物が全身の神経を脳に結びつけ、中央集権的に身体をコントロールするのに対し、無脊椎動物であり、軟体動物である頭足類は例えば、吸盤には多種多用な感覚器があるにもかかわらず、必ずしも脳にそれらの神経が集約されず、個々に独立して動いているかのように思われる。 また、タコは頻繁に様々な色に体色を変化させる複雑な皮膚の構造を持っているにもかかわらず、視覚には複数の色を識別できる能力がないため、自分の色の変化を自分では識別できない。それなのになぜタコはあんなに見事な擬態ができるのか? 興味深い生態や謎が提示されるのだが、それが解明されているわけではないので、謎の提示だけで終わってしまい、さらに後半は話題が尽きて少し息切れしている感じも、否めない。 前半が面白いだけに、惜しい。

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    投稿日: 2019.03.31
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    ・タコやイカなどを含む頭足類は非脊椎動物では例外的に神経系が発達している ・寿命が1年程度しかなく生活に社会性がほぼないにも関わらず、かなり頭が良い。人を覚えて特定の人物に水を吐きかけたり水槽から脱走したり。 ・分散的な神経系を持っており、各脚の自律性が高い。皮膚で匂いを嗅いだり脚だけで自立して運動制御したりできる。ただ中央制御的な動きをすることもある。 ・体の色を自在に変えられる。特に意味もなさそうなのに次々体の色を変えていく個体もみられる。つぶやきのようにみえる。言語のようだという研究者も過去にいたが、それはあまり信頼性の高い研究ではない。 ・意識はあるといえるか?「主観的経験」とは ・神経系 知覚→行動 と 行動→知覚 がループをおりなす。後者の役割を見過ごさないこと。著者は後者と意識、とくに「内言(ヴィゴツキー)」の進化的発達との関係を考えている。

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    投稿日: 2019.03.31
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    海洋生物学の本のようだけれど、やはり内容は哲学的だ。恐竜の出現する2億年ほど前の時代には、実は最も賢い生物だったのではないかという話。タコはあなどれない。

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    投稿日: 2019.03.20
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    タコはどうやらすごそうだ。 途中でイカの話にもなったが。 もうちょっとタコに絞った話が読みたかった。結局、タコの脳が脊索動物と違うと言いながらも、よく分んなかったのはその辺の図説とかがなかったからか。ブルーバックスっぽいものを期待してたんだな。 翻訳物は読みづらい。

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    投稿日: 2019.03.17
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    宇宙人のモデルとして、悪魔の使いとして、愛らしいキャラクターとして、様々な方面で活躍するタコ。人間からだいぶ遠い進化の系譜にある事が、人間にとって神秘的な感情を抱かせるのか。

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    投稿日: 2019.03.02
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    ヒトとは違う道筋で進化し、高度な神経系を保有するタコ(頭足類)から学ぶ意識・知性の発達論・進化論。ヒトとは全く異なるメカニズムの神経系ですが、タコは人間の顔を見分ける・道具を使うことができるのだそうです。進化の初期で分化した頭足類がヒトと異なる高度な神経系を持てたのであれば、同じ理屈で地球の生物とは違う道筋で進化した知的な宇宙人が存在するのかもしれません。 続きはこちら↓ https://flying-bookjunkie.blogspot.com/2019/02/blog-post_92.html Amazon↓ https://amzn.to/2T1gY4v

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    投稿日: 2019.02.20
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    心はどうして生まれるのか?他の動物との関わり合いの中で進化した。哲学だー! タコのニューロンの数は5億個。犬と同じくらいある。人間は1000億個。タコは腕にもニューロンが詰まっている。 タコの寿命は1・2年。大きな神経系を持ち、維持するのに高いコストがかかる。学習の有用性が低いのになぜ脳が大きいのか。メバルは200年生きる。成長速度が遅いかららしいけど、ちょっと食べたくない。 ヒト以外の生き物の知能を図ろうとするのは難しい。何故なら、それぞれの生活環境も得意とする能力も違うから。 タコはカニが一番好きな食べ物なのに、イワシを置いていてもわざわざ箱から出して食べようとはしない。取捨選択している。 知能が高く、人間が相手でも一人一人を区別できる。方向感覚も高い。食べ物でないもので遊ぶ。冒険心あり。心臓は3つあり、血液は青緑色(銅を使うから) 右目と左目が見たものを人間は脳で共有出来るが、鳥は片方ずつからの情報しか得られない。タコはゆっくり学習すれば分かるようになる。 イカは皮膚の薄い場所に色素胞がありそれを筋肉が伸ばす事で発色している。一つの色素胞が発する色は一色だけ。色素胞は上下の層になっている。

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    投稿日: 2019.02.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

     新聞の書評がきっかけ。  タコ・イカの寿命が1〜2年で、メバルが200年とは驚いた。著者は「心」をmind(思考、記憶、認識)と定義する。タコ・イカの体内に張り巡らされた神経系や独立に機能する細胞の記述は興味深い。  また、「色をつくる」の色素胞、虹色素胞、白色素胞の構造やメカニズム、色を感じる細胞についても面白い。  若い人たちに読んでもらい、まだまだ身近なタコ・イカの謎にチャレンジして欲しい。

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    投稿日: 2019.01.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    未だ研究途上のようで、期待していたほどの内容はなく、学術論文と観察の寄せ集めのような印象です。 3000円したのに!残念

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    投稿日: 2019.01.24
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    イカも結構出てきます。 タコもイカも好奇心旺盛で意外に友好的、そして賢い! 自然界の動物って、食糧確保に殆どの時間を費やしていると思っていたけど、食べられないと分かったモノでもオモチャにして遊ぶタコ…見てみたい。 気になるのが神経系の在り方で、脳に集約されず全身(吸盤とかにも!)分散されていると。ココから「身体化された認知」理論に繋がりそうなのに、タコの非形状性(グニャグニャ)が障壁となるらしい。何じゃそりゃ。著者は「形状はないがトポロジーだけはある」で済ませてますが。 短い寿命に不相応な知性を持つ生物の存在理由を思う時、進化の摩訶不思議さと自然の奥深さに感動しちゃうんだな、これが。 「主観的経験」と「意識」を別物とする著者のスタンスが語られる「4.ホワイトノイズから意識へ」は一見タコとは無縁な話のようだが、その主張に至るまでの著者の洞察過程にちゃんと関わってる。

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    投稿日: 2019.01.22
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    ===qte=== タコの心身問題 ピーター・ゴドフリー=スミス著 知性生んだ自然淘汰の妙技 2019/1/12付日本経済新聞 朝刊  思わず目を疑うタイトルである。タコとは、ブックカバーのイラストに明らかなように、あの頭足類のタコのことだ。そして心身問題とは、心と身体、なかでも知性と脳との関係はいかなるものかという、哲学における伝統的な大問題である。  すると、タコにも哲学的考察の対象となるほどの「心」があるとでも言うのだろうか。そのとおりである。本書は、タコが有する心のあり方と、それを生みだす身体のあり方を、進化論(自然淘汰説)を駆使して解き明かそうとする野心作である。  本書には、タコの知性の高さを示す事例がふんだんに紹介されている。飼育係のメンバーを識別し、特定の人物が来たときに水をかける。電球に水を吹きかけショートさせて照明を消す(タコは電球の光を嫌う)。極めつきは、嫌いなエサを与えられたときに、人間と目線を合わせながら、これ見よがしにエサを捨てたというエピソードだ。驚くほかない。  どれも我々人間と同じではないかと共感してしまいそうな事例である。だがここで、タコと我々が大きく異なる進化の道筋を歩んできたということにも注意を向けなければならない。タコをはじめとする頭足類と人類の共通祖先は、およそ6億年前までさかのぼる。その共通祖先はといえば、心を云々(うんぬん)するにはあまりに心許(もと)ない、ミリ単位の小さく平たい虫のような生物だった。つまり、生物の進化は、「まったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」のである。タコの知性の高さだけでなく、そのような生物をつくりあげてしまう自然淘汰の妙技にも驚くほかない。  著者は「頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう」と言う。昨年の11月3日に当欄で紹介した『見知らぬものと出会う』(木村大治著、東京大学出版会)は、地球人が異星人と出会う「未知との遭遇」を考察する書物だったが、タコとの遭遇もその一例に加えてよいのではないだろうか。そういえば初期のSF作品に描かれる異星人の多くはタコのような姿形をしていた。昔の人は直感的にこのことを理解していたのかもしれない。 《評》文筆家 吉川 浩満 原題=OTHER MINDS (夏目大訳、みすず書房・3000円) ▼著者は65年生まれ。豪シドニー大科学史・科学哲学スクール教授。 ===unqte===

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    投稿日: 2019.01.12
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    動物のなかで「知性」が発達しているのは、人間を含む哺乳類、鳥類などいわゆる脊椎動物だと思っていたら、軟体動物のタコやイカが実はかなり高い「知性」をもっているらしいという本。 たとえば、タコを研究で飼育していると、人間の個別の違いを区分しているみたいで、「嫌い」な研究者には、水槽から水をかけたりするらしい。あと「好奇心」があるみたいで、直接、食べたり、生存にはかかわらないことでも、なにか新しいものがあると、それがなんなのか知りたくなっちゃうらしい。 なぜ、そんなことになっているのだろうか、進化論とか、観察と実験、他の動物との比較などを通じて、探求していく。 ちなみに著者は科学者ではなくて、哲学者。 人間とは全く異なる「心」が存在することをしることで、人間の心をより理解しようというところにゴールはある。 といっても、そんなに哲学的にはならなくて、基本、一般むけの科学書として書かれていて、読みやすい。

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    投稿日: 2019.01.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タコ(頭足類)と人類がどれだけ遠い存在なのか、逆にどれだけ近い存在なのかがわかる。これまでタコについて知性があるとか、心があるかとか、考えたことも無かったので、知識を広げるという意味で非常に興味深い本だった。 特に興味深かったのは以下の記述。 ・タコのニューロン数は犬に近い。無脊椎動物の中でも頭足類の神経系の規模は大きい ・タコのニューロンは脳に集まっているわけではなく、腕に集まっている ・タコは人を識別出来る ・頭足類のほとんどは色の識別ができない。皮膚で光を感じ取っている可能性がある ・タコと人間は同じような能力が、まったく別のところで無関係に生まれて進化した

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    投稿日: 2019.01.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タコは動物の中でも高い知能を持つにもかかわらず、長くて3年程度の寿命である。高い知能を持つのは長生きするためでは?と思ってしまうが実は種として長生きするために短命にし、一度の交尾で大量に卵を産むという戦略という、一見逆説的な考えが面白かった。

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    投稿日: 2018.12.27
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    生物哲学・科学哲学界の雄にしてインテリジェント・デザイン批判の急先鋒の手による、タコを題材とした「意識の起源」論。意外にも著者の邦訳は本書が初と見える。著者はダーウィン的進化の過程そのものが複数の経路の競争により選別されたものであること、即ちダーウィン的な自然淘汰の産物であることを示す「ダーウィン的空間」の提唱で知られる。本書も直線的でなく複線的に、単発的でなく多発的に進化を捉えるアプローチのもと考察が進められる。曰く「進化が心を二度作った」と。 ダイビングを趣味とする著者はタコを観察するうち、彼らに「心がある」との抜き難い印象を抱く。そしてその「心」を「主観的経験(自分の存在を自分で感じること)」と一旦定義した上で、いかにそれが生じたかを生物史学的な観点から考察して行く。 この「主観的経験」の本書での語用は、通常「意識」という言葉でカバーされるよりはやや広義の概念を指しているようだ。高度な記憶機構をもつ人間のような高等生物が現れる前から動物に備わっており、「意識」では捕捉されない無意識の領域も含む、ある種の「気分」のようなものと説明されている。この「主観的経験」は、エディアカラ・カンブリア紀の生物群の相互影響に関する考察から、身体外部に起因するなんらかの変調(e.g. 痛み、快楽)に対する反応の結果生じたものと著者はみる。だとすればその経路を単路に限定する必然性は見出し難く、少なくとも脊椎、節足そして軟体動物それぞれに一度以上ずつ生じたのが現在の生物界の姿であるはず、と主張するのだ。 この「主観的経験」の発生メカニズムを考察する第6章が面白い。カンブリア紀以降、自分の内部における情報コミュニケーションと、自分と外部とのそれを区別する必要が生じた。そこで「自分用のメモ」として機能する「遠心性コピー(意図した行動を脳内に保持しておき実際の行動と照合する)」が用意され、これを利用することで自分の知覚と行動を媒介する受容と生成のフィードバックシステム「再求心性ループ」が形成される。これが無数に集まって複雑な意識の主体が形成されているというのが著者の主張だ。この点、タコは大規模な神経系や複雑な身体構造を持っており、豊かな主観的経験を蓄積する主体としての資格を十分有する、ということなのだろう。 本題と関連性の薄いエセー的な記述も多く、必ずしも意識論にのみフォーカスした本とは言い難いかもしれないが、逆に例えばタコの死を描写する箇所など、時折顔を出す叙情的な記述が良いアクセントとなっていると思う。また巻末の訳者あとがきも一読を。「タコ様生物」と「通常単数で用いられる単語の複数形」から、H.G.ウェルズの「宇宙戦争」を連想する訳者の発想力に驚かされる。

    3
    投稿日: 2018.12.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タイトルと表紙は秀逸だが、原題はother mindsであり、訳者というか、日本側の仕掛けである。タコの生活を見たときにそこに心を感じるというエッセイが結構長く続くが心身問題が中心に書かれているということはない。つまらなくはないけどね。

    0
    投稿日: 2018.12.12
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    サルに心があるとか、カラスに高度な知能があるとかいう話を聞くと、それなりに感心はするけれど、ものすごく驚くというほどではない。彼らはヒトと近縁で、脳の構造もヒトと似ている。サルに心があるとしたら、おそらく私たちヒトの心と似たようなもので、同じ起源をもっているものだろうと想像できる。 だが、タコに心(らしきもの)があり、ヒトと心を通わせることができるとなると話は別だ。ヒトとタコは進化の歴史上、約6億年前に袂を分かったとされる。その頃の動物はやっと原始的な目を持ち始めたという程度で、単純な体をしており、神経細胞は一応持っていたらしいが脳はなかった。ヒトとタコの共通祖先に心はまだ無かったのだ。だから、タコに心があるとすれば、それはヒトの心とは異なる起源を持ち、別個に生じたということになる。「進化はまったく違う経路で心を少なくとも二度、つくった」のだ。 ヒトの心は進化の副産物に過ぎないという考え方があるという。大きな脳と複雑な神経系、それによって可能となる洗練された行動や高度な知能こそが主産物であって、心はそれに付随して生じた偶然の産物だというのだ。 だが、もしタコに心があるならどうだろう?歴史も環境も身体の構造も共有していない2つの生き物が、心と呼ぶべき類似した精神活動を共におこなっているとしたら?それは、心というものが偶然の産物などではなく、進化の歴史の中で必然的に生まれたものだということの傍証になるのではないか。そんな想像を掻き立てられる。 本書ではまず、タコが心を持っていると思わせるような行動をとることが紹介される。また、ヒトとタコが進化上かけ離れた存在であることを示し、全く異なる生き物である両者が「心を通わせる」ことができる不思議さについて触れている。そして、その後の数章では、生物の進化の歴史を数億年の単位で遡り、心の起源について探っていく。 ヒトとタコは何もかも違うと言って良いほど違っている。たとえばタコは原口動物で、ヒトは新口動物だ、というレベルで違う。神経系について言えば、タコにも脳と呼べる構造はあるが、脳とそれ以外の神経系にヒトほど明確な境界線はない。また、驚くべきことに、消化管が脳の中を突き抜けるような体の構造をしているという。しかも、「中央集権的」なヒトの脳と異なり、タコは脳よりもむしろ8本の腕に神経が多く分布しているらしい。 進化について述べられている章では、この分野における著者の造詣の深さに驚嘆させられる。著者の専門は哲学というからびっくりだ。進化生物学者だと言われても違和感がない。最近の論文も引用されており、その分野が現在進行形で研究されていることが良く分かる。ただ、この進化に関する数章は、ヒトとタコの心の違いを考えるという本書の主題からはやや脱線する部分もある。もし退屈に感じたら、最後の2章を先に読んでもいいかもしれない。この2章に、タコの持つ心の不思議さが凝縮されていると思うからだ。 第7章「圧縮された経験」では、なんとタコの寿命がわずか2年ほどだということが説明される。それだけの期間で心を発達させることができるのも興味深いが、それ以前の問題として、そもそもそのような短い寿命の生物で心や知能が進化しうるのか、という問題がある。複雑な神経系は、経験や学習を蓄積させるほど能力を発揮できるので、基本的に寿命が長いほど価値を持つ。一方で、脳が大食いの器官と評されるように、神経は「維持費」が多くかかる。2年という短い期間では、複雑な神経系は、メリットよりもコストの方が大きくなってしまうように思われる。それにもかかわらず、なぜこれほどの高度な神経が進化したのか。 最後の章「オクトポリス」では、頭足類の心について、より詳細に触れられている。タコとイカは頭足類に分類される近縁の動物だが、それぞれの高い知能が独立に進化した可能性があるという。また、頭足類にもエピソード様記憶という、ヒトと同様の記憶の能力があるという。心は、進化の歴史の中で、二度どころかもっと多くの回数生まれた可能性があるのだ。全く異なる起源をもち、異なる構造をしているにも関わらず、似た心や知能を持つに至ったのであれば、それは心にも収斂進化が起こっていると言ってもよいのではないか。 最後の訳者あとがきも素晴らしい。本書の原題はOther Mindsだが、これがMind"s"と複数形になっていることの意味について書かれている。 タコという不思議な動物についてよく知ることができるだけでなく、タコを通して私たちヒトの心について考えることができる本。面白かった。進化や、私たちの心がどこから来るのか、ということについて興味のある人は楽しめるのではないかなと思います。

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    投稿日: 2018.11.26