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死者と踊るリプリー
死者と踊るリプリー
パトリシア・ハイスミス、佐宗鈴夫/河出書房新社
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総合評価

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    リプリーシリーズの5作目であり、最終作。 2作目『贋作』の続編にあたるため、3、4作目をすっ飛ばして、つい読んでしまった。 「ディッキー・グリーンリーフだ。おぼえてる?」リプリーが若き日に殺したディッキーを名乗る者から電話がかかってきた。一体誰が?なぜ…? 今まで殺人を犯しても罪悪感ゼロで過ごしてきたリプリーが、最終作では嫌がらせを受ける立場になる。 じわじわと追い詰められるリプリーを見ていると、最初は嫌いだった彼が可哀想に思えてきた。 シリーズを追うごとに、リプリーへの感情が「嫌悪」から「共感」へ、最終作では「応援」へと変化していったのは、自分でも驚きだった。 家政婦マダム・アネットの作る料理がとても美味しそう。今日のメニューは何だろう?と毎食ごとに楽しみになっていた。 朝食には庭で摘んだパセリと高級バターを入れたコドルドエッグ(半熟卵)、マダムが毎朝買いに行く焼きたてのクロワッサン。 庭に咲くダリアを一輪挿しにして食卓に飾ったり、庭の新鮮な花を友人宅へ贈ったり。 その日のメニューに合わせてワインを選んだり、フランスでの友人に囲まれた丁寧な暮らしが描かれている。 はじめはディッキーの真似から入ったけれど、いつしかリプリーらしい自分なりの優雅さを楽しんでいるように見えた。 リプリーは自分の邪魔をする相手には容赦ないけど、大切に思う人にはとても優しい。 はじめは損得感情で動いているように見えたけど、最終作では心から仲間を大事にしているように感じられた。その気持ちは家族や友人たちにも伝わり、リプリーが周りからも好かれている姿が印象的だった。 かつては誰も信じられなかった孤独なリプリーが、いまは妻のそばで安心して気を休め、家政婦マダム・アネットの献身的な働きぶりに癒され、友人たちに助けられながら、心から仲間を信じられるようになった。 その変化こそ、このシリーズの最大の魅力なんじゃないかと自分は感じた。(とはいえ、利己的な犯罪者であることに変わりはないけれど…) これだけ悪事を積み重ねてきたリプリーを最後にハイスミスはどうするのか…それがずっと気になっていた。 この作品を書いた4年後にハイスミスは亡くなっている。 もし、もっと長生きしていれば続編が生まれたのかはわからないけど、自分としては、ハイスミスがこれを最終話として意識して書いたような気もする。 36年間もリプリーの人生を描き続けた、リプリーの“生みの母親”でもあるハイスミスにとって、(ネタバレになるので詳細は控えるけど)この結末は愛情あるかたちに思えた。 だからこそ、私はこの終わり方で良かったと思う。 ハイスミスにとってリプリーは、寄り添い続けてきた愛する息子のような存在だったんだろうな。 ちなみに、もう1つのハイスミスの代表作『キャロル』は、異性・同性にかかわらず、私は恋愛小説がどうも苦手で、途中で断念しました。

    110
    投稿日: 2025.09.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    "天才犯罪者、最後の物語” リプリーの数々の悪が暴かれ、異常な日常が崩壊する様を 目の当たりにできるのか、というわけではない。 作者が亡くなったからシリーズが終わってしまった、 というだけ。 リプリーは過去の犯罪の暴露の危機(?)に 『ジワジワ』『執拗に』追い回されて 怯えたり焦ったりするかと思いきや、鬱陶しいと イラついたり、妙に興奮したり、解決するために 助力とを準備したり、でも日常はあくまで平穏に 普通の人として過ごしている。 過去が暴かれることより、日常が乱されることの方が 問題の様だ。 純粋で、俗で、あまりに普通なマダム・アネット (癒し系)があってリプリーの危ういバランスは 保たれているのではないか。 そういう混沌としたギャップの世界。 それにしても・・・ 『贋作』の続編的物語として成立しているが、グリーンリーフを語る電話、『太陽がいっぱい/リプリー』との繋がり(謎?)は不明確なまま(終わってしまっていないか?(永遠に)

    0
    投稿日: 2018.10.16
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    リプリー・シリーズの最終作、新装版。 旧版を読んだ時には余り感じなかったが、トム・リプリーという登場人物の魅力が最大限に発揮されているのは、実はこの最終巻なのではないか、と感じた。

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    投稿日: 2018.06.23