単なるエロス描写装置として使われがちなオメガバース設定を、産む性・産ませる性に基づく厳格な身分制度として作用させ、大正〜昭和初期の日本をモデルにした舞台の中で、翻弄され、抗う人々の意思と尊厳を描いた快作。登場人物ひとりひとりの造形や感情描写がすばらしく、すぐそこで生きている人の物語を覗き見したかのよう。

丸木戸マキ先生の作品。 ジャンルが女性漫画なのでBL漫画として読むとエロが確実に足りない。だがヒューマンドラマとして読むと面白い。昔の昼ドラみたいにドロドロ展開。 オメガバースの世界。優れた性とされるα(アルファ)が支配する世界。αを産む宿命を背負うΩ(オメガ)の人生は、αの子供を持てるか否かで人生が変わる。財閥一家の英(はなぶさ)家で子を生せず疎まれていたΩの犀門(さいもん)は、第一夫人だったが今は第三夫人に。子を産めないΩはオメガメガエラと呼ばれている。しかし現当主の命令で隠し子の馬宮を探し出したがΩの少年。だがαと偽り、英家当主の座を狙わせるが第一夫人のαの子供などくせ者だらけで…

「深窓の令息」「第一夫人（男）」という言葉に違和感を覚えてしまうのは、僕が文化的なジェンダーロールの軛に囚われているからなのだろうか。